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―台東区における住環境評価― 

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Academic year: 2021

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既成市街地における住環境評価に関する研究 

―台東区における住環境評価― 

      日大生産工(院)     ○中村    高広    日大生産工          宮崎    隆昌     

1  研究背景・目的 

我が国は大都市への人口集中・機能集積と それによる密集市街地の形成,都市機能の拡 大にあわせて市街地がスプロールし,都心か ら郊外住宅地まで,市街地が連担していった.

しかし,1990 年代以降の低成長時代において より安全・安心で快適な生活環境を実現する ことが求められている. 

本研究では,WHO(世界保健機構)が住環 境の基本理念として提案した「安全性」「快 適性」 「利便性」 「保健性」の 4 理念と,地域 に生活,活動する者が将来の地域社会に対し てどのような貢献が可能かという「持続可能 性」を加えた 5 理念で地域の住環境を分析・

検討する.そして,今後の整備方針やその有 効な計画手法,配置の適正化を提案するため の基礎資料とし,生活者の立場として住環境 水準の向上を目指している. 

 

2  研究概要  2−1  研究方法 

本稿では数値地図 2500 注 1) を基盤とし,

GIS(地理情報システム)を用いてデータ解析 し,住環境指標の 5 理念を物的な評価項目と して 17 に分類し、その項目をもとに住環境 を評価する(Table.1).また,住環境に関す る様々な個別指標から総合的に判断するた め,評価項目を総合化可能な尺度に変換する 必要がある.よって,各項目の数値を 10 段 階に分け基準化することで台東区における 住環境がより明確に表わされる. 

   

2−2  研究対象領域 

研究対象地区として台東区を選定する.台 東区は,23 区のほぼ中心に位置し,面積は 23 区中で最小だが,地区の成立や変化過程に 固有性を有した地域が形成され,一様な戸建 住宅地は一部地域を除いて少なく,ビルやマ ンションなど土地の高度利用が進んでいる.

また,戦前から日用雑貨を中心とする地場産 業が集積し,同地域に居住する職住近接型の 地域社会が形成されてきた.それゆえ都心部 にしては常住人口が多く,定住志向が高いこ とから高齢化率 21.1%と 23 区中最高値を示 し,近年も人口及び世帯数は年々増加を続け ている. 

A study about the house environment evaluation in established city area Takahiro NAKAMURA and Takamasa MIYAZAKI

住環境指標 評価項目 評価方法

防犯施設 警察署・交番・消防署などからの距離 建物倒壊危険度 建物の耐震性・地盤の良し悪しを基準

火災 木造建築物の地区比率・延床面積率 緊急避難時 地区内残留地区を除く広域避難場所への距離

緑被率 航空写真を用いた地区ごとの緑地比率 放置自転車 放置自転車が多い駅近辺の放置自転車台数

人口密度 建蔽率 公共施設 交通機関 教育施設 医療施設 食品販売施設

建蔽率 建蔽率により通風や採光等が確保しやすい 工場密度 工場密度=工場件数/地域面積 人口密度

昼夜間人口比率 保健性

持続可能性 人口構成のバランスを求める指標 昼夜間人口比率(%)=昼間人口/夜間人口 安全性

利便性 快適性

各評価項目の台東区内の施設を誘致距離を用 い46種類1127施設から評価する.

ただし、交通機関・医療施設・食品販売施設は隣接する区の施設も 対象とする.

オープンスペースを知るための各地区の比率

Table.1    住環境指標及び評価項目

Fig.1    台東区における人口推移

(2)

3  分析結果及び考察  3−1  安全性での評価 

  安全性の評価では最低値が谷中 3 丁目で最 高値は上野公園西部だった.防犯施設での評 価では台東区全域に施設が分散していたが,

谷中地域に施設が少なかったため評価が低 くなった.建物倒壊危険度では北部地域の危 険度が高いことが顕著にみられた.木造建築 物の比率では谷中地域が多かった.緊急避難 場所は地区ごとに指定の場所があり,区の中 心部や商・工業地域において広域避難場所が 存在しないため,区南部の評価が低くなった (Fig.2). 

3−2  快適性での評価 

台 東 区 に は 都 市 計 画 決 定 公 園 が 隅 田 公 園・上野公園・谷中霊園と 3 つ存在するため,

緑被率・人口密度・建蔽率での評価の差が大 きく表れた.緑被率では大きな公園付近も評 価が高かった.これは近隣住民や行政が景観 を守るため,植栽を増やしていると考えられ る.また,南部から北部に向かって人口密度 が高くなっていた.これには南部の土地利用 などが関係していると考えられる.全体での 評価をみると上野公園が最高値で,南部地域,

根岸・下谷地域の評価が低いのが顕著にみら れた(Fig.3). 

3−3  利便性での評価 

Fig.4 より,東上野地区中央部は全評価項 目で高い値を占めていたので台東区全域で 最も住環境が優れていた.次に,評価の低い エリアは谷中地域・北部地域だった.谷中地 区には寺院などが多く,道路率が低いため施 設配置が難しいのが原因であると考えられ る.また,それぞれ 5 項目のうち 2 項目ほど 低評価として上げられるエリアであった.最 低評価の橋場 1 丁目東部では 6 項目のうち低 評価だったのは交通機関と 1 項目しかなかっ たが,他の 4 項目に特に高い評価ではなかっ たため,住環境の数値が最も低くなったと考 えられる. 

 

 

                                                                                   

 

谷中地域 根岸・下谷地域

北部地域

上野地域

南部地域 浅草・

中央地域

Fig.3    快適性による住環境評価

谷中地域 根岸・下谷地域

北部地域

上野地域

南部地域 浅草・

中央地域

Fig.2    安全性による住環境評価

谷中地域 根岸・下谷地域

北部地域

上野地域

南部地域 浅草・

中央地域

Fig.4    利便性による住環境評価

評価項目 防犯施設 建物倒壊危険度

火災 緊急避難時

評価項目 緑被率 放置自転車

人口密度 建蔽率

評価項目 公共施設 交通機関 教育施設 医療施設 食品販売施設

(3)

3−4  保健性での評価 

  保健性では工場密度を評価項目に取り入 れることで間接的ではあるが騒音や悪臭等 の発生を定量的に抑えることが可能である と考えられる.Fig.5 より上野公園と上野桜 木一丁目が最も評価が高かった.次に最も評 価の低い地区は鳥越一丁目だった.また,地 域別にみると谷中地域が全体的に高く,この 地域は公園面積が広く,寺院などが多いため,

建蔽率と工場密度が低いと考えられる.一方,

区の南部地域西側や北部地域に評価の低い 地区が集まっていた.共に建蔽率が高く,南 部地域西側には問屋街に付属する工場が多 く,北部地域には皮革工場が多いためである. 

3−5  持続可能性での評価 

  都市地域では夜間人口の減少が問題とな っており,地域持続などの観点から問題が発 生すると考えられる.本稿では昼夜の人口格 差が無い方が人口の流出,流入のバランスが 取れていると考え持続可能性の評価とする.

評価結果では谷中地域,北部地域に高評価の 地区が多く見られ,最も評価の低い地区が駒 形一丁目,下谷一丁目だった.戸建住宅や木 造住宅が多く立地している谷中地域には商 業施設が少なく,北部地域は皮革産業が盛ん で,同地域に居住する職住近接型の地域社会 が形成され,人の流動性があまり見られない ために高評価だったと考えられる.一方,商 業地や観光地である上野駅・浅草駅付近,南 部地域の地区は人の流動性が激しいため,評 価が低くなったと考えられる (Fig.6).

 

3−6  総合評価 

  全ての住環境指標を平均化し加算するこ とで総合評価とした.Fig.7 より区全体でみ ると西側の評価が高く,次に評価が高いのが 東側,中央部が全体的に低い結果となった.

また,丁目別に値をみると高評価順に上野公 園,上野桜木一丁目,浅草七丁目で,低評価 は台東三丁目,小島一丁目という結果が表れ た.高評価の地区は駅から多少距離をとった 場所である.これには駅周辺は商業施設など の土地の高度利用が盛んだが,距離を保つこ とで総合評価が高くなったと考えられる. 

                                                                                       

谷中地域 根岸・下谷地域

北部地域

上野地域

南部地域 浅草・

中央地域

Fig.7    総合評価による住環境

谷中地域 根岸・下谷地域

北部地域

上野地域

南部地域 浅草・

中央地域

Fig.5    保健性による住環境評価

Fig.6    持続可能性による住環境評価

谷中地域 根岸・下谷地域

北部地域

上野地域

南部地域 浅草・

中央地域 評価項目

建蔽率 工場密度

評価項目 人口密度 昼夜間人口比率

住環境指標 安全性 快適性 利便性 保健性 持続可能性

(4)

4  総括 

  本稿では台東区における住環境を 5 指標,

17 項目から評価することで地域の特徴,特性 また,問題点などが明確に表れた.Fig.8 で は住環境の 5 指標を地域別に台東区の平均値 と比較することでそれぞれ微量ながら差が 見られた.上野地域は持続可能性では区の平 均を下回るが,他の 4 指標では平均を上回る 結果が表れた.これは区の中心駅である上野 駅近辺に様々な施設や新しい建築物が建て られることで 4 指標が平均を上回ったが,昔 から商業地であるがゆえに人の流動が激し いため持続可能性だけが平均を下回ったと 考えられる.次に谷中地域は 6 地域の中で最 も平均値が高く,安全性と利便性ではやや平 均を下回るが,他の 3 指標は平均を大きく上 回る結果が顕著にみられた.谷中地域は他の 地域と違い人口推移にあまり変化が見られ ない(Fig.1).つまりそこで生活する人達が 昔からの街並みを守りつつ,住民の住みやす い環境を作ってきたことが考えられる.次に 浅草・中央地域では最も平均値に近い形とな った.この地域は観光地であり人の流入が激 しいが,そこで働き,住む人も多いためそれ ぞれの指標が平均値に近くなったと考えら れる.次に根岸・下谷地域は持続可能性では 平均を微量ながら上回り,他の 4 指標はほぼ 平均値と一緒の値となった.この地域は隣接 区である荒川区に多くの面積が接している ため,多少の影響を受けた結果,台東区の平 均値と微量ながら差が表れたと考えられる.

北部地域は持続可能性では平均を上回るが,

他の指標は平均を微量ながら下回る結果と なった.この地域は職住近接型の地域社会が 形成されてきたが,同時に老朽化した低層住 宅が多く,街区の区画道路の一部に狭いため にこのような結果が出たと考えられる.最後 に南部地域では利便性以外の 4 指標が平均を 下回った.この地区は春日通りや江戸通りな どの大通りに面している地区が多く,オフィ ス街でもあるためこのような結果が出たと 考えられる. 

 

5  今後の課題 

  本稿では

5

指標を

17

項目から評価したが,

さらに項目数を増やすことで,より現実に近 い問題点が浮かび上がると考えられる.さら に台東区は歴史のある街であり,本稿ではわ からない目に見えない多くの問題点も抱え ている.また,それぞれの地域や台東区全体 が持つマスタープランや住民たちの目指す 住みよい街との比較も必要ではないかと考 えている.さらに,研究対象地を広げ,23 区同士を比較することで,各区の新たなポテ ンシャルや問題点が浮き彫りにされ,今後の 都市計画による誘導すべき整備課題が考え られよう.

             

〔注釈〕 

注1)  数値地図 2500:国土地理院,平成 15 年 2 月 1 日発行 

      GIS(地 理 情 報 シ ス テ ム)の 基 盤 デ ー タ と し て 作成 された地図データ 

〔参考文献〕 

1)  東京都台東区ホームページ:http://www.city.taito.tokyo.jp/ 

2)  デイリータウンページ'06  荒川・墨田・台東区晩:NTT東日本  3)  青山吉隆・近藤光男(1986):都市公共施設の最適誘致距離の設定方法,

日本都市計画学会学術研究論文集,第21号,pp295〜300 

4)  福富・柳・山本(1973):「子供の遊び場の構成」,都市計画学会,第76 号,pp.29〜35 

5)  渡辺・森地・中島(1971):「観光レクレーション施設の誘致圏に関する 研究2」,都市計画学会,第64号,pp.3〜10 

6)  浅見泰司(2001):住環境-評価方法と理論-,財団法人  東京大学出版会  7)  台東区住宅整備指針基礎調査:台東区都市整備部住宅課,平成9年3月発

行  

8)  データで見る台東区ʼ06 

9)  鈴木竜太・谷村秀彦(1997):「GISを利用したコンビニエンスストアの 出店に関する研究」,日本建築学会計画系論文集,第499号,pp57〜628)    10) 国税調査報告,東京都台東区,平成12年10月発行 

11) 工業統計調査報告, 東京都台東区,平成10年発行 

   

Fig.8    地域別の住環境評価

上野地域

南部地域 谷中地域

浅草・中央地域 根岸・下谷地域

北部地域

参照

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