• 検索結果がありません。

アメリカ銀行業の保険戦略

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "アメリカ銀行業の保険戦略"

Copied!
19
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

著者 宮村 健一郎

著者別名 Miyamura Kenichiro

雑誌名 経営論集

号 63

ページ 141‑158

発行年 2004‑11

URL http://id.nii.ac.jp/1060/00004899/

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja

(2)

アメリカ銀行業の保険戦略

宮 村 健一郎

1 はじめに

2 アメリカ銀行業の保険業参入  (1) 銀行業保険手数料収入の伸び  (2) 商品種別の保険料伸び率とシェア  (3) 損害保険取り扱い銀行の比率  (4) ターゲット顧客の特性 3 個別銀行の保険戦略

 (1) 代理店を大量買収するBB&T

 (2) 保険戦略の中心にAcordiaを据えたWells Fargo  (3) ネット保険にも注力するWachovia Bank  (4) 個人のみのBank of America

 (5) 生命保険引受会社を買収したBank One、Bank Oneを買収したJ P Morgan Chase  (6) 生命保険会社の銀行業進出

 (7) モゲージバンカーCountrywideの保険戦略 4.おわりに

1 はじめに

 本稿は、アメリカにおける1990年代末からの銀行による保険業兼営の盛行について、その戦略を 探り、体系的に整理する。

 1996年、フロリダ州内小都市での銀行子会社保険代理店の営業可否について、Barnett Bank of

Marion County

は、州法に基づき銀行子会社保険代理店の営業を差し止めたフロリダ州保険庁に最

高裁で勝訴した。このときから、アメリカ全州で銀行が保険代理店を子会社とする動きが始まった。

その後1999年の

Gramm-Leach-Bliley

法(GLB 法)成立によって、銀行は、その親会社の金融持株 会社を通じて、保険引受会社、保険代理店などを含む金融サービス会社を系列下に置くことが可能 となった。

 当初、この法律の施行により、銀行、証券、保険引受を含む総合金融グループが

M&A

を通じて 多数成立するのであろうかと、人々は漠然と予想していたが、特に保険引受会社については、この 予想は大きく外れた。というのは、GLB 法成立の一年前の1998年に行われた

Citibank

の持株会社

Citicorp

と損保・生保の引受・販売を行う

Travelers Group

との合併はあったが、保険会社と銀行

(3)

M&A

はほとんどない。Citi にしても、合併後成立した金融持株会社

Citigroup

は、Travelers

Group

の生命保険子会社である

Travelers Life and Annuity

は保有し続けているが、2002年には、

Travelers Group

の損保子会社

Travelers Property Casualty

を市場で売却し、同社を完全に独立させた。

このことは、2001年9月のテロを目の当たりにして、金融持株会社の下に収益が不安定な損害保険 引受子会社を保有するメリットがほとんどないという見方が支配的になったからである。

 このような不安定な情勢と、そもそも保険引受会社の自己資本収益率は代理店よりも低いことに より、アメリカ銀行業の保険戦略は、生命保険、損害保険ともに、後述の

Bank One

などいくつ かの少数の例外を除き、ほとんどが引受にはかかわっていない。他方、最近では企業向け生命保 険・損害保険販売の強化のために、代理店の買収は盛んに行われている。本稿はこのようなアメリ カ銀行業の最近の保険戦略を理解することを目的とし、そのために、全体的かつ個別的にアメリカ 銀行業の保険業進出戦略を考察する。

 本稿の構成は以下のとおりである。第2節はアメリカ銀行業の保険業との係わり合いについて全 体的に考察する。第3節は個別銀行の保険業兼営の事例と、生命保険会社の銀行業兼営についての 戦略を考察する。第4節は全体をまとめるとともに今後の展望を述べる。

2 アメリカ銀行業の保険業参入

 保険の拡大戦略は、生命保険分野と損害保険分野とで異なる。生命保険分野については、たと えば販売経験のある人を採用して富裕層に売り込むというような方法でゼロからのスタートは可能 であるが、非常に専門化・細分化されている損害保険分野については買収を主体として拡大するの が基本である。

表1 1997年以降のアメリカ銀行の保険代理店買収数

順位 銀行名 2004年6月末資産規模

(億ドル) 買収数 最初の買収時

BB&T Corp. Winston-Salem, NC 1028.9 48 1997年11月

Community First Bankshares Fargo, ND 55.2 22 1997年12月

Wells Fargo & Co. San Francisco, CA 4091.0 16 1999年8月

Commerce Bancorp Inc. Cherry Hill, NJ 270.2 10 1997年1月

Wachovia Corp. Winston-Salem, NC 3786.7 10 1999年7月

F.N.B. Corp. Hermitage, PA 45.9 10 1999年6月

Sky Financial Group Inc. Bowling Green, Ohio 120.7 8 1999年3月

Webster Financial Corp. Waterbury, CT 169.8 8 1998年4月

10 Compass Bancshares Inc. Birmingha, AL 278.5 7 1999年4月

11 Cullen/Frost Bankers Inc. San Antonio, TX 96.0 7 1999年3月

注) データ期間は、1997年から2004年8月24日まで。

出所)American Banker September 9, 2004、FDICの銀行財務データから作成。

(4)

 はじめに述べたとおり、現在の保険業兼営ブームは1996年の最高裁判決後にはじまり、その方法 は、既存の保険代理店の買収という形、具体的には、銀行の金融持株会社に保険代理店子会社とし て追加するか、または既存の保険代理店子会社との合併という形での系列化である。表1は、1997 年以降の銀行、S&Lの金融持株会社の保険代理店買収数・買収額のランキングである。この中で、

大手銀行の中では、BB&T、Wells Fargo、Wachoviaが保険代理店買収に積極的であることがわかる。

トップの

BB&T

は東部と南部諸州を中心とする金融持株会社であり、保険業に力を入れているこ

とで有名である。これに対して

Citigroup

はこの間保険代理店の買収をしていない。また、Bank of

America

は今のところ個人向けのみの保険販売しかしておらず、大手銀行の中では出遅れている。

これらについては個別に第3節で詳細に説明する。

 では、アメリカ銀行業の保険業とのかかわりを全体的に見るために、Reagan Consulting と

American Banker

が行った共同アンケートの調査結果をみてみよう。このアンケート調査に応じた

銀行の構成は表2-1、2-2に集約されている。

表2-1 アンケート対象銀行の構成

地域別

地域 銀行数

中西部 130 北東部 104 南東部 71 南西部 52 西部 49

406

出所)"2003 ABIA Study of Lead Banks Insurance"

Reagan Consulting, Inc. October 2003

(1) 銀行業保険手数料収入の伸び

 図1によれば、銀行による保険手数料の伸び率は、2000年以降、毎年20%を超えている。これは、

生命保険については、わが国のような何らかの生命保険への加入率が100%近い国とは異なり、ア メリカにおける世帯の生命保険加入率は1998年は72.0%、2001年は69.3%というように、個人生 命保険市場の拡大余地があることによる。また、企業向け保険拡大の背景としては、企業に強い代 理店を買収して銀行の取引先に対してクロスセルすることにより、いままで保険との付き合いが薄 かった小企業の保険加入という新たな市場を開拓していることによる。これについては後で詳しく 説明する。

表2-2 アンケート対象銀行の構成

資産規模別

資産 銀行数

100億ドル超 24 10-100億ドル 70 10億ドル以下 312

406

出所)"2003 ABIA Study of Lead Banks Insurance"

Reagan Consulting, Inc. October 2003

(5)

図1 銀行が獲得した保険料の対前年伸び率

出所)"2003 ABIA Study of Lead Banks Insurance" Reagan Consulting, Inc.

    October 2003

図2 商品種別成長率(2002年)

出所)"2003 ABIA Study of Lead Banks Insurance" Reagan Consulting, Inc. October 2003

(2) 商品種別の保険料伸び率とシェア

 商品種別の保険料の伸び率をみると(図2)、年金とビジネス保険が平均の26%を超えている。

これは、日本人からみると意外な感がある。わが国においても、2004年12月には保険販売が銀行に 全面的に解禁されるものの、実際の販売の中心は個人向け保険である。しかしながら、アメリカの 例からみると、銀行の保険業務は、個人対象の保険のみに強みがあるというわけではないことがわ かる。もちろん、後でみるように、各銀行によって、個人、企業の一方により注力するという戦略 の違いはあるものの、保険業としての専門性が強いビジネス対象の保険市場においても、十分に力 を発揮している。最近の傾向としては、個人よりもビジネス向けの保険販売、なかでも各種の雇用 者給付保険(employee benefits,健康保険、歯科保険、短期・長期障害保険、年金保険、その他)

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

1998 1999 2000 2001 2002

平均 26.0%

29.5%

年金 28.6%

個人損害 22.4%

個人生命健康 21.7%

クレジット -10.7%

-20% -10% 0% 10% 20% 30% 40%

ビジネス損害・雇用者給付

(6)

へ重点が移っているといわれている。もちろん、その理由は、個人向け商品は規格品的であるため に個人は価格に敏感であるために利幅が薄いこと、企業保険においては、各種雇用者給付保険の収 益性が高いことなどがあげられる。

 保険料の商品別シェアからみると(図3)、やはり以前から取り扱われていた年金のシェアが高 いものの、次点としてビジネス向けの損害保険がランクされている。すでに指摘したように、ビジ ネス向け損害保険は専門性が高いので、そのノウハウは保険代理店の買収を通じて獲得し、ター ゲットは銀行のビジネス顧客にクロスセルする、という方法で、シェアおよび伸び率を確保してい るものと思われる。

図3 保険料のシェア(2002年)

出所)"2003 ABIA Study of Lead Banks Insurance" Reagan Consulting, Inc. October 2003

(3) 損害保険取り扱い銀行の比率

 個人向け生命保険については、ほとんどすべての銀行が取り扱っているので議論を省略し、個人 向けまたは企業向け損害保険の取り扱いがどのように進んでいるかについてみてみよう。基本的に は、損害保険の取り扱いは、その複雑さのために、銀行員にとって個人向け生命保険よりも取り扱 いが困難であるため、ゼロから立ち上げるにはある程度の時間がかかると考えられる。よって、代 理店買収がもっとも手っ取り早い手段となる。

 図4を見てみよう。資産規模100億ドル超の銀行は、1998年と1999年でともに90%前後の取り扱 い比率で、ほとんど変化がなく、資産規模10億ドル以下の銀行も30%前後で変化はない。その中間

16.6%

クレジット

4.0% 3.6%

7.2%

68.6%

個人生命保険 健康保険

個人損害保険

ビジネス損害

・健康保険

年金

68.6%

(7)

図4 損害保険取り扱い銀行の比率

出所)"2003 ABIA Study of Lead Banks Insurance" Reagan Consulting, Inc. October 2003

の10-100億ドルの銀行のみが取り扱いを増やしている。この解釈としては、大手は買収や既存の フィナンシャルプランナーなどを通じて1997年ごろから損害保険を急拡大し、他方、小規模銀行は 取り扱いをあきらめているが、中堅銀行は保険業拡大のための資金やノウハウを充実させながら、

この期間に少しずつ損害保険取り扱いに努力しているということなのであろう。

(4) ターゲット顧客の特性

 まず、銀行がどのような個人顧客をターゲットにしているかをみてみよう。図5から、損害保険 については特に富裕層を重視というわけではないが、生命保険については富裕層重視であることが わかる。特に、大銀行であれば、生命保険販売のターゲットとして富裕層の重視が高まる。これは、

大銀行は顧客に占める富裕層の割合が概して高めであるためと考えられる。

 企業への保険販売については、大銀行と小銀行では大きくターゲットが異なる。つまり、大銀行 の過半は、小企業をメインのターゲットとしているが、全く対照的なことに小銀行は中企業以上 を保険販売のターゲットとしている。これは、大銀行は、小銀行に比べて早く保険に取り組み始め たため、中企業以上の保険はすでにある程度獲得しているので、さらに保険取り扱いを増やすため に小企業に関心が向いていることによるものと考えられる。

 小企業側の事情としては、特に2001年9月11日の事件以降、損害保険料率が15%から100%以上 も上昇したということがある。そのため、小企業側は、より条件のよい保険を求め、保険契約は 一挙に流動的になった

91%

66%

33%

89%

49%

35%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

100億ドル超 10-100億ドル 10億ドル未満

2002年 1998年

銀行の資産規模

(8)

図5 個人保険のターゲット顧客

注)富裕層は、運用可能金融資産100万ドル以上の層。

出所)"2003 ABIA Study of Lead Banks Insurance" Reagan Consulting, Inc. October 2003

図6 企業保険のターゲット顧客

注)「小企業」は"Small Business Act 定義の企業。

出所)"2003 ABIA Study of Lead Banks Insurance" Reagan Consulting, Inc. October 2003

3 個別銀行の保険戦略 (1) 代理店を大量買収するBB&T

 ノースキャロライナ州

Winston-Salem

に本拠を置き、東部と南部11州とワシントン

DC

に1400超 の銀行支店を保有する

BB&T Corporation

は、1989年から2003年半ばまでに57の銀行や

S&L、70以

上の保険代理店を買収により傘下に含めてきた。2004年3月末での銀行持株会社としての資産規 模順位は全米で16位である。表1からわかるように、この銀行は保険事業の強化に力を入れており、

保険リテールブローカーとしての順位は全米8位であり、銀行系保険業としては、Wells Fargo、

Bank One

に次ぐ3位である。主要な買収先は、比較的小規模で、主に企業向け損害保険を扱う代

48% 50% 59% 71%

全銀行 資産100億ドル超 全銀行 資産100億ドル超

大衆層 富裕層 生命・健康保険

損害保険

70%

29%

64%

25%

全銀行 資産100億ドル超 全銀行 資産100億ドル超

小企業 中企業 以上

損害保険 雇用者給付

(9)

理店であり、銀行の営業範囲と重複する地域の小さい代理店を買収し続けている。すなわち、銀行 との取引のある企業に対する保険のクロスセル目的である。

 しかし、2003年6月から7月にかけて、BB&Tは、営業地域でなかったテネシー州東北部の銀行 持株会社

First Virginia Bank Inc

および同地域で営業する保険代理店持株会社

Stharco Inc

を、ほぼ同 時に買収した。従来、銀行の保険代理店買収は、「クロスセル」で説明することができたが、これ らの買収についてはクロスセルで説明することはできない。BB&Tは、自身が成長する手段として 銀行を買収し、そのときに、クロスセルを含む蓄積した銀行業と保険業兼営のノウハウを生かして、

保険業を含めて買収することにより買収後の付加価値を高めようとしたと考えられる。

 もうひとつの

BB&T

の他と異なる行動は、2002年に当時全米4位のホールセールブローカーで あった

Cooney Rikard & Curtin

を8560万ドルで買収したことである。同社は、現在、CRC Insurance

Services(以下 CRC)という名称で BB&T Corporation

の子会社となっている。CRC はホールセー ルブローカーであり、保険代理店のために、特殊なリスクに関する保険について、それを引き受け る保険会社を見つけて仲介する。この業務は、一般に、excess and surplus(E&S)と呼ばれている。

 この背景は以下の通りである。BB&Tは、保険業務に重点的に注力しているが、さらに優位を高 めるための手段として、保険引受会社や

E&S

ブローカーの買収が必要であると考えた。そうすれ ば、主に企業顧客のリスク引受に今までより大幅に柔軟・迅速な対応が可能になるからである。

よって、これらの買収の損得を2000年ごろから検討した。

 保険引受会社を金融持株会社の子会社に組み入れることのデメリットとしては、保険引受会社に 大きな損失が発生した場合に、グループ全体に危機が生じたり、そこまでいかないとしても、グ ループの評価に影響することである。BB&T も、保険引受会社の保有は得策ではないと判断し、

よって、大手のホールセールブローカーの買収のみを行うことになった。BB&T は、CRC を買収 する以前、年間1億ドルの保険料をホールセールブローカーに支払っていたので、手数料収入と

CRC

の買収額を単純に比較しても合理的な選択であることが一目瞭然だろう。その後、CRC はよ り小規模のホールセールブローカーを買収し、また

BB&T

の営業地域に支店を開設するなどによ り、CRC の2002年の年間受入保険料は前年比およそ2倍の10億ドルとなり、2003年は16億ドルに 達した。また、BB&T傘下に入ってから買収を繰り返したことにより、2003年には、受入保険料で 全米第2位のホールセールブローカーになった。銀行持株会社全体としても、保険料収入は全米4 位である(表3)。

 2003年11月には、保険ブローカーMcGriff, Seibels & Williams Inc10を3.04億ドルで買収した11。こ の買収額は、アメリカ銀行の保険会社買収の歴史において、次項で説明する

Wells Fargo

による

Acordia

買収の次に大きい。同社は当時全米13位の保険ブローカーであった。その営業基盤は

(10)

ジョージア州アトランタ、アラバマ州バーミンガム、テキサス州ダラス、ヒューストンであり、テ キサス州については

BB&T

の営業地域ではない。同社はエネルギーなどの大口企業保険に特化し ており、BB&Tの持つ従来からの中企業以下向けの損害保険に加え、取り扱い商品の幅が広がった。

表3 保険料収入の多い銀行持株会社・金融持株会社(2003年1-12月)

億ドル 順位 銀行持株会社・金融持株会社名 収入額

Wells Fargo & Co., San Francisco, CA 10.71 Countrywide Financial Corp., Calabasas, CA 7.84

Bank One Corp., Chicago, IL 5.01

BB&T Corp., Winston-Salem, NC 3.96

Wachovia Corp., Charlotte, NC 3.06

J.P. Morgan Chase & Co., New York, NY 2.69

MBNA Corp., Wilmington, DE 2.32

Bank of America Corp., Charlotte, NC 1.51 National City Corp., Cleveland, OH 1.21 10 Greater Bay Bancorp, Palo Alto, CA 1.17 11 FleetBoston Financial Corp., Boston, MA 1.14

12 HSBC Holdings PLC, London 0.97

13 U.S. Bancorp, Minneapolis, MN 0.83

14 Regions Financial Corp., Birmingham, AL 0.76

15 ABN Amro Holdings, Amsterdam 0.72

16 Commerce Bancorp Inc., Cherry Hill, NJ 0.66 17 PNC Financial Services Group, Pittsburgh, PA 0.66 18 First Tennessee National Corp., Memphis, TN 0.64 19 Mitsubishi Tokyo Financial Group, Tokyo 0.63 20 Canadian Imperial Bank of Commerce, Toronto 0.63 出所)"Top 40 Banks by U.S. Insurance Revenue" American Banker

May 7, 2004

(2) 保険戦略の中心にAcordiaを据えたWells Fargo

 Wells Fargo は大手の中ではもっとも保険代理店の買収に力を入れているが、BB&T のように小 さい代理店を多く買収するという戦略とは異なっている。特に2001年には世界第5位の大手保険代

理店

Acordia

12を買収した。Acordia のターゲット顧客は小企業より上層の企業であり、収益性の高

い雇用者給付分野全体に強みがある。Acordiaの買収後、Wells Fargo は、その保険事業を、主に個 人へのダイレクト販売と農業向け保険とを取り扱う

Wells Fargo Insurance Services と、企業顧客

向けにコンサルティングベースのサービスを行う

Acordia

に整理した。

 Acordia の2002年の所得は5.33億ドルであり、前年より10.7%の増益であった13。この間、買収 等は行わなかったので、この増益は主に

Wells Fargo

Acordia

の間のクロスセルの効果、すなわ

Wells Fargo

の企業顧客を

Acordia

に紹介することによっての増収であった。Wells Fargo と

Acordia

の保険料収入の合計は、2002年にほぼ10億ドルに達した。

 もともと

Acordia

M&A

を通じて成長した保険代理店であったが、2003年から再び

M&A

を繰

(11)

り返し、Wells Fargo の営業地域内の企業顧客対象の代理店を10以上買収した。さらに、BB&T の 戦略と同じように、E&Sブローカーの買収も行い14、もともと

Acordia

が所有している

E&S

ブロー カー子会社

American E&S Insurance Brokers

と合併させた。

 Acordiaの

BB&T

と異なる戦略としては、買収だけでなく、新規設立も行っていることである。

ただし、新規設立はリテールの代理店ではない。2002年10月には、再保険ブローカーAcordia Reを

Princeton, NJ

に設立し、その後も新規設立があるだろうと予想される。これは、最近は、独立した

保険代理店やブローカーの買収合戦が過熱しているため、優良な売り物が極めて少なくなってきた という事情がある。

(3) ネット保険にも注力するWachovia Bank15

 Wachovia は、BB&T と同じノースキャロライナ州に本拠を置き、東海岸を中心に活動している 大手銀行持株会社であり、保険に力を入れている。この銀行の特徴としては、インターネット上で の保険販売に力を入れていることであり、それは個人向けインターネット保険代理店

Pivot

を2000 年7月に買収したこと、そして、インターネット上でリテール代理店とインターネット関連のリス クに関する企業保険を仲介する

MGA(managing general agent)の E-Risk

社を2002年9月に買収し、

保険商品の幅を拡大したことである。

 2002年12月には、北アメリカの損害保険を中心に損害保険全般を扱うロイズ保険市場のブロー カー、Besso Limitedの親会社、Besso Holdings Limited への出資を49%にまで増やし、保険の引受 先の拡大に努めた。

 Wachovia の2002年の保険料収入は2億ドルで、この半分が銀行顧客へのクロスセルによるもの

である16。CEOの

McDowell

は、この比率は高すぎ、Wachovia銀行の影響下以外からの収入がクロ

スセルの倍になるくらいが望ましいと考えている。このように、最近では、クロスセルの提唱のみ では保険事業の拡大が望めないのではないかというような意見もしばしばみられる。なお、2003年 の保険料収入は3億ドルであるが、クロスセルによるものとそうでないものとの内訳は不明である。

(4) 個人のみのBank of America

 表3からわかるように、Bank of Americaの保険料収入は全米8位であり、全米第2位17の銀行規 模から考えると保険料収入はかなり小さい。この理由としては、Bank of America が企業保険を 扱っていないこと、そして個人生命保険についても出遅れたことが大きい。Bank of America の保 険取り扱いは、生命保険、年金、自動車、ローン関連などの個人向けのみである。この生命保険に ついても、強力に販売を進めたのは2002年の後半からである18。チャネルとしては、同行が抱えて

(12)

いる1100人のフィナンシャルアドバイザーによる販売と、ダイレクトメールである。

 なお、Bank of America のローンに伴う生命保険については独自の工夫がある19。2001年から、

Bank of America

はモゲージ実行に生命保険をつけることをやめて、Borrowers Protection Planという 商標で、病気や失業のときは最高12ヶ月まで、死亡の場合は全ての返済をしなくてよい、というオ プションを借り手が任意で入ることができるというプランを導入している。このプランは、一般に は、「債務キャンセルプラン」(debt cancellation)と呼ばれている。

 このプランは機能は生命保険に似ているが、二つの点で大きく異なる。まず保険料は月々の返済 金の中に組み込まれている。第二に、このプランを「保険商品」の契約、すなわち事故の際に保険 金を支払うという契約ではなく、「事故の際にはその後の債務の返済をキャンセルできる」という 保険とは異なる契約にすることにより、各州の保険規制から逃れていることである。アメリカは州 ごとに保険規制が異なるので、後者の点により、モゲージ生命保険よりも取り扱いが簡単である。

Bank of America

は、このプランの引受、事務処理など全てを自分で処理している。現在、このプ

ランは、自動車保険、モゲージなど、各種のローン商品で利用可能となっている。利用は任意であ るが、たとえば、同行のモゲージでの利用率は25%程度である。

 この商品については、他の金融機関も大変な関心をもっている。前述の

Reagan Consulting

American Banker

の共同アンケートによれば、回答した406行のうちの4.1%が現在販売しているが、

総資産100億ドル以上の金融機関24行に限ると24.8%が既に販売し、計画中が26.2%で、あわせて 50%を超える(図表は省略)。大手金融機関に限ると比率が高まるのは、もちろん大手金融機関が 複数の州で営業しているからである。なお、Bank of America は自らこのプランのリスク引受を 行っているが、それは、同行の場合、個人ローンの取り扱い件数が極めて多いため、自行でリスク を相殺できるためである。実際には引受は要件ではなく、Aon Integramark20のような専門の保険会 社が存在し、小さい銀行のリスクの引受を行っている。

 かつて(2001年3月)、Bank of Americaでは、個人向け損害保険について、実験的にロサンゼル スの個人保険代理店 Farmers Insurance group と業務提携し、同社のエージェントが

Bank of

America

の20の営業店に常駐して自動車保険、住宅保険などを販売しようとしたことがあったが、

結局失敗に終わった21。現在は

Bank of America

の支店にエージェントはおらず、個人に販売する損 害保険は、Bank of Americaのモゲージを利用した個人への住宅保険が主である。

 Bank of America のような大手銀行が企業向け保険を取り扱わないという戦略はかなりの謎であ る。まず、図3からもわかるように、銀行の保険料収入の大きな部分は企業との年金保険や損害保 険から得られているので、大きな手数料収入源を失っている。次に、リレーションシップマーケ ティングの点から考えると、企業顧客と銀行との長期的なリレーションシップは個人客とのそれに

(13)

比較して強固であるから、相対的に銀行へのロイヤルティが低い個人客に保険商品をクロスセルす るよりも、企業顧客にクロスセルするほうがより効率的であろうと考えられる。また、自動車保険 や住宅保険のような個人向け商品は規格品となるので価格競争が激しく、たとえ

Bank of America

のモゲージを利用した客であってもクロスセルが難しいであろう。

 ただ、Bank of America のように取引世帯数3000万超の銀行であれば、このようなマス商品の提 供についても、保険会社との交渉によるディスカウントを引き出すことができるという点で、他の 銀行や代理店に比べれば有利なポジションにあるかもしれない。

 また、企業への保険商品の売り込みは専門性が必要となるので対個人への販売と比較するとより 難しい。しかしながら、Bank of America の規模と人材から考えて、このような人材面の不安が企 業向け保険の展開のブレーキになっているとは考えにくい。

 2003年10月、Bank of Americaは

Fleet Boston Financial

を買収した。表3からわかるように、この 取引によって、営業地域は狭いものの東海岸に300以上の代理店を持ち、企業保険に注力していた

Fleet Boston

の保険事業を得ることになる。Bank of America には企業保険に関する戦略が全くな

かったと思われるが、今後は、企業保険戦略の見直しが進む可能性がある。

(5) 生命保険引受会社を買収したBank One、Bank Oneを買収したJ P Morgan Chase

 2004年7月に、JP Morgan Chaseは、シカゴを本拠地にしている

Bank One

22の買収を完了した。

買収される以前の

Bank One

は、もともと1800の支店と3000人の資格のあるエージェントを擁し、

銀行商品とのクロスセルでリテール保険商品をリテール市場とミドルマーケットで販売することに 強みがあった。

 Morgan Chase による買収の一年前の2003年5月、5億ドルで、Bank One は

Zurich Financial Services Group

の生命保険引受会社

Zurich Life

の個人部門の買収を発表し、9月に買収を完了した23。 当時、Zurich Life は、個人生命保険、年金、企業生命保険の引受を行うとともに、全米50州で 40000のブローカー、代理店、優れた直販システムを抱えていた。CEO の

J. Dimon

American

Banker

の取材に対し24、Zurich は商品とともにシステムが魅力的であり、また、引受と販売はとも

Bank One

にとって重要である、と述べている。また、生命保険引受のリスクは銀行融資よりも

リスクが大きいということはない、とも主張している。もっとも、このような発言の背景としては、

彼はそもそも

Citigroup

そしてその合併前の保険会社

Travelers

の出身なので、大手銀行の

CEO

と しては保険業に詳しい、比較的珍しい経営者であることが指摘できる。

 この戦略に対しては異なる見方も可能となる。たとえば、買収価格が安かったために引受部門を 保有するリスクのマイナス分を補うだろうという見方である。なぜなら、現状でも、買収された部

(14)

分は毎年500万ドルの手数料収入が見込め、その上で

Bank One

とのクロスセルが上乗せされれば、

まずまずの収益性が期待できる。この見解にたてば、大手銀行が保険引受部門を買収したというこ とで話題にするほどのことはないということになる。

 2004年7月の買収により、単純計算で保険料収入は800万ドル前後になるものと推定される25。 また、合併効果は規模の拡大のみの指摘では不十分である。Morgan Chase の保険は富裕層向けに ほぼ特化していたが、前述したように

Bank One

はリテールから大衆富裕層までであり、顧客層が 異なるので無駄のない組み合わせとなっている。

(6) 生命保険会社の銀行業進出

 話としては脇役であるが、1999年の

Gramm-Leach-Bliley

法成立により、保険会社による銀行子 会社保有も認められることになったので、大手生命保険会社の銀行子会社の例もみてみよう。

 表4は、大手生命保険会社の主要銀行子会社4社の一覧表である。発足してから間もないことも あり、各銀行の成長率は高いが、今後は成長率が鈍ると思われる。もっとも、大手であっても、

Prudential

26、Axa Equitable27、New York Life28のように、銀行業を兼営していないところが実際には 大半である。

表4 主な生命保険会社子会社銀行

(単位 億ドル)

名称 Metlife1) ING2) Principal Allstate3) State Farm USAA

生命保

険会社 アメリカ国内

admitted assets (04年3月末)

2565 1005 930.7 706.6 356.1 97.2

名称 Metlife Bank ING Bank

(INGDirect) Principal Bank Allstate Bank State Farm

Bank USAA Federal Savings Bank

総資産額(04年6月末) 24.9 292.6 23.4 9.5 90.6 155.2

うち貸出額 12.0 73.7 12.0 0.5 51.6 136.3

預金額(04年6月末) 20.6 223.5 22.0 8.3 60.2 121.5

総資産額(03年6月末) 9.4 161.4 19.7 7.9 61.3 132.0

総資産額(02年6月末) 3.3 92.9 14.2 3.7 31.1 116.8

総資産額(01年6月末) 2.1 22.5 8.8 0.8 8.5 103.0

銀行の本拠地 Kingston,

NJ Wilmington

DE Moines,

IA Vermon Hills,

IL Bloomington,

IL San Antonio

TX 子会社

銀行

店舗数 3 1 1 1 1 1

1)MetLifeMetropolitan Life Insurance Co. Tampa、Metlife Investors Life Insurance Co. Tampa、Metlife Investors USA Insurance Co. Tampa、Metropolitan Insurance and Annuity Co. Tampaの合計。

2)INGING Life Insurance and Annuity Co. Atlanta、ING Life Insurance Co. of America Atlanta、ING USA Annuity and Life Insurance Co. Atlantaの合計。

3)AllstateAllstate Life Insurance Co. Northbrook, Ill.、Allstate Life Insurance Co. of New York Hauppaugeの合計。

出所)各保険会社ホームページから作成。

(15)

 Metlife29は2000年8月に、ニュージャージー州の小銀行30を買収し、2001年から

Metlife Bank

と改 名して、保険業としては初めて金融持株会社を設立し、銀行業に進出した。2004年6月末には総資 産額24.9億ドル、総預金額20.6億ドルで、3年前と比較するとそれぞれおよそ10倍の成長を記録し ている。この成長は主に、預金金利が高めに設定されていることも原因の一つではある。しかしな がら、預金金利が高めに設定されているようなインターネット専業銀行は多々あるので、預金金利 の高さのみが高成長を促したのではないだろう。つまり、生命保険会社の銀行子会社は、消費者向 けのブランドとしては絶大な知名度と信頼を誇るという点と、保険契約者向けのクロスセルが立ち 上がり時には非常に有効であったといえるだろう。

 Metlife Bank の店舗数は3であるが、当然のことながら、インターネット、ダイレクトメール、

コールセンターなどのダイレクトチャネルはそろっている31。さらに他のダイレクトチャネル重視 銀行にはない、クロスセルのためのチャネルが二つある。まず、第1は、MetLife と関係している 10000のフィナンシャルアドバイザーである。第2は、企業年金について40000以上の企業を通じて そこの従業員と関係があることである。MetLife を利用している企業では、従業員がイントラネッ

トで

MetLife Bank

の情報を読むことができる。

 銀行口座を提供することによって、顧客が受け取る保険金や年金の受け皿を確保できる。従来、

保険会社は、保険金の支払いによって顧客との付き合いが終了してしまうことが少なくなかったが、

銀行口座で資金を受け止めることにより、取引を継続することができるという点で、銀行口座は、

生命保険会社にとって強力な顧客リテンション手段となる。

 しかしながら、これらの二つのチャネルに関する問題点としては、フィナンシャルアドバイザー や取引企業の所在地が拡散していることである。これら二つのチャネルで銀行商品を販売するため には、フィナンシャルアドバイザーを教育したり、企業に出向いて説明したりしなければならない。

そのため、特に銀行業への参入時期には、訓練や説明を行うための費用が嵩んだといわれている。

 次に、インターネット専業銀行の

ING Bank

をみてみよう。ING Bankは、ING Direct 32というブ ランドで、アメリカ、カナダ、オーストラリア、スペイン、フランス、ドイツ、イタリア、イギリ スの8カ国で活動している33。この銀行の戦略は、もっぱら「単純化」と「コスト削減」に徹する ことである。イタリアとイギリスは営業開始からそれぞれ4年と1年しか経過していないことも あって赤字であるが、現在、これら8カ国の合計で、対前年比税引前利益は433.3%増加して1.57 億ドルとなっている。この値は、たとえば大成功を収めたアメリカの大手インターネット専業銀行 メリルリンチ34の税引前利益4.2億ドルに比較すれば小さいものの、十分に成功したインターネッ ト専業銀行といってよいであろう。また、複数の国々の間で同じビジネスモデルで収益が上がるこ とも大変興味深い。

(16)

 基本的に、ING Direct の商品構成は、手数料完全ゼロの貯蓄性預金、CD、モゲージ、そして投 資口座であり、大手としては極端にシンプルである。そして、小切手口座を思い切って切り捨てた ことにより、小切手処理にかかる膨大なシステムコストや運用コストを削減するという大胆なコス ト削減を成し遂げた。さらに、この単純な構成が、同じシステムで複数の国に対応しやすく、それ によるシステムコスト削減というメリットも生む。このようなコスト削減によって、預金金利は平 均と比較すると非常に高く、全国で1位になることもある。特に、アメリカ、カナダ、オーストラ リアのようなモゲージ市場が整備されている国では、モゲージ商品がよく売れることにより、この ビジネスモデルは大変うまく機能しているといえよう。

 ING はオランダの銀行と保険会社の合併から生まれた企業であるので、インターネット専業銀 行と保険のクロスセルを行うに違いない、という予想が自然に浮かぶが、実際にはまったくそのよ うなことを行っていない。このインターネット専業銀行の成功の秘訣は、多数の国で同じシステム を立ち上げることによって早期に規模の経済を享受するという、他では見ることのできない独創的 なビジネスモデルによるものということができよう。

(7) モゲージバンカーCountrywideの保険戦略

 独立系モゲージバンカーとしてアメリカ最大の

Countrywide

35は、2000年前後から本業のモゲー ジ以外の業務に本格的に参入を始めた。このような業務多様化の理由は、モゲージが金利変動に大 きく影響されることにより、収益の変動が大きいことによる36。2002年には、5年以内にモゲージ 以外からの収益を50%以上にするという目標を立てていた。

 まず、保険についてみてみよう。保険の提供は1969年の

Countywide

創業当初から行っていたも のの、本格的な保険業や証券業を開始したのは1990年代後半であり、参入規制が厳しかった銀行業 への参入よりも当然のことながら早い。また、1999年には多くの金融機関の個人損害保険の引受を 行っている保険会社

Balboa

37を4.25億ドルで買収している。Balboa はその後も

Countrywide

以外の 金融機関、たとえば

GMAC

Bank of America

などの取り込みに成功し、Countrywide内のクロス セルというレベルを超えて保険業を拡大している。また、Countrywide グループ内の保険代理店と しては、Countrywide Insuranceを持ち、これも成長を続け、2001年には顧客数50万を超えた。

 最後に、Countrywide グループの銀行業について説明しよう。同グループは2001年5月にワシン

トン

DC

の小銀行

Treasury Bank

を買収し、銀行の兼営を開始した。以後、Treasury Bankは二つの

ブランド、すなわち地元の小銀行

Treasury Bank、さらに Countrywide

の顧客のための別ブランド

Countrywide Bank

で営業している。この銀行は、合併前の総資産0.78億ドル(2001年3月末)から

271.8億ドル(2004年6月末)へと大変な急成長を遂げたインターネット専業銀行であり、モゲー

(17)

ジと銀行業のクロスセルの効果の証明となっている。なお、クロスセルの母体である本体、

Countrywide Financial

は300万の顧客を持つ金融持株会社であり、保険会社を除く金融持株会社中で

の保険料収入は第2位である(表3)。

4.おわりに

 本稿は、アメリカ銀行の最近の保険業戦略およびそれに付随する話題について整理した。いささ か無理があるが、全体をまとめてみよう。

 アメリカ保険市場はいまだに飽和状態になく、市場によっては小企業保険市場のように拡大余地 が大きい。そこで、大手アメリカ銀行業は、当初はクロスセル目的で保険業に参入したが、しばら くするうちに、単にクロスセルを行うというレベルを超えて、収益力の強化のために新しい地域に 新規参入を行うというのもしばしばみられるようになった。一部の銀行は引受会社の買収も行って いるが、大多数の銀行はリテールやホールセールのブローキングまでを自らの業務範囲に設定し、

主に代理店の買収を通じて保険販売を拡大している。このように、自由化されたといっても、各銀 行は保険引受も含む保険業への全面的参入には自重しているという点で、業態間の新しい均衡状態、

すなわち棲み分けができつつあるといえよう。また、このような銀行による保険業への参入により、

今後、アメリカでの保険の浸透率は上昇していくだろう。

1 形式的には、Citicorpは、存続会社Travelers Groupに合併吸収され、存続会社はCitigroupと名称変更した。

よって、この存続会社は、保険会社やSalomon Smith Barney関連企業を子会社とする持株会社から、銀行 持株会社(Bank Holding Company, BHC)となったことになる。GLB 法成立前の当時の銀行持株会社法で は、もちろん、保険会社を子会社とすることはできなかったが、銀行持株会社法で認められていない事業 の処分は数年間延期できる規定があり、これに基づき保険事業や証券事業を維持するとともに、予想され ていた金融持株会社設立解禁を期待して、GLB法成立前に合併を行ったのである。Citigroup(1998)参照。

2 一般に、引受会社の ROEは12-15%で、それに対してブローカーの ROEは20%程度である。Citigroup 場合、Citigroup 全体の ROE は2002年は20%超であったが、Travelers の損害保険部門 Travelers Property CasualtyROEは15%で、全体の足を引っ張っていた。American Banker. January 14, 2002参照。

3 以下は、"The Builders' Blueprint for Agency Growth" American Banker. October 16, 2003に基づく。

4 Reagan Consulting(2003)参照。

5 Federal Reserve(2001)参照。

6 Small Business Administration定義のsmall business。

7 以下は、"Premiums: Jump in Premiums Following Attacks Lead to Reshopping: Opportunity seen for financial services firms as business owners shop for lower prices" American Banker. December 1, 2001に基づく。

8 以下は" Price Rises Seen Giving Banks Small-Biz Cross-Sell Opening" American Banker. August 14, 2002に基づく。

(18)

9 以下は、"Wholesale Division Changing BB&T's Philosophy" American Banker. October 7, 2003に基づく。

10 本部はアラバマ州バーミンガム。1886年の創業。エネルギーや商業などの大口企業保険が中心。

11 以下は、"BB&T Shifts Strategy in Its Biggest Agency Deal" American Banker. November 12, 2003に基づく。

12 1989年創業の保険ブローカーであるが、その後買収を繰り返し、現在世界第5位のブローカーである。

13 American Banker. Sep 9, 2003.

14 Excess and surplusブローカー、RMC2, LLC. Chicago and West Palm Beachを買収した。

15 本部はノースキャロライナ州シャーロット。2004年6月末の総資産3787億ドル。

16 以下は、"Wachovia Scouts Deal To Transform Insurance: Unit's chief "open to anything" but leans toward one big buy" American Banker. December 19, 2003に基づく。

17 Bank of America の総資産額は当初3位であったが、Fleet Boston Financial Group の買収後に、JP Morgan

Chaseを抜いて、Citigroupに次ぐ2位に浮上した。

18 以下は、"A Matter of Faith: Banks Will Sell Plenty of Life Insurance" American Banker. October 13, 2003に基づく 19 以下は、"B of A: Debt Cancellation Product Equals Credit Life" American Banker. October 20, 2003に基づく。

20 2000年9月、保険会社 Reliance National Insurance は破産状態となり、保険会社 Aon(本部シカゴ)は Relianceの子会社Integramark(本部ジョージア州Alpharetta)を買収し、Aon Integramarkとした。同社は全 米で唯一の債務キャンセレーション専門保険会社である。

21 以下は、"B of A Insurance-Sales Play: Commercial-Free" American Banker. August 11, 2003に基づく。

22 本部はイリノイ州シカゴ。2004年6月末の総資産額は3288.0億ドル。2004年7月1日にJ. P. Morgan Chase と合併。

23 "Bank One to Purchase Zurich Life from Zurich Financial Services" Press Release. Bank One May 30, 2003を参照。

24 以下は、"Several Surprises in Bank One-Zurich Deal" American Banker. June 02, 2003に基づく。

25 以下は、"Morgan, Bank One Differ in Approaches To Retail Brokerage and Insurance" American Banker. March 1, 2004に基づく。

26 Prudential Insurance Co. of America。本部はニュージャージー州 Newark。2004年3月末のnet admitted asset は2000億ドル。全米2位。

27 Equitable Life Assurance Society of the U.S.本部はニューヨーク。2004年3月末のnet admitted assetは993.0 億ドル。全米6位。

28 New York Life Insurance Co.本部はニューヨーク。2004年3月末のnet admitted assetは937.8億ドル。全米 7位。

29 正式名称はMetropolitan Life Insurance Co。本部はフロリダ州Tampa。総資産額2333億ドルで全米1位の生 命保険会社である。

30 ニュージャージー州Kingstonにある、Bank, N. A. of Kingstonという、当時は本店のみの銀行である。2000 年6月末の総資産額は8026.5万ドル。2004年6月末の総資産額は24.9億ドルで、本支店数は3店舗に増加 した。現在の本部はニュージャージー州Bridgewater。

31 以下は"For MetLife, Its Bank Is a Distribution Engine" American Banker. September 28, 2004に基づく。

32 ING Group が世界各地で統一ブランドで展開しているウェブサイト。ING はオランダを本拠地とする、銀 行、保険、資産管理を行う金融業で、1991年にオランダの保険会社と銀行が合併して誕生した。

33 以下は、" In Brief: ING Direct Profits Surge 433% " American Banker. August 9, 2004に基づく。

(19)

34 本部はユタ州ソルトレイクシティのインターネット専業銀行。業態はindustrial bankである。2004年7月の ユタ州法の修正により、業態名がindustrial loan corporation(ILC)からIndustrial bankに代わった。2004年 6月末の総資産残高664.2億ドル。

35 1969年創業のモゲージバンカー。本部はカリフォルニア州 Calabasas。現在、独立系モゲージバンカーとし ては全米最大、モゲージバンカー全体の中でも3位である。金融持株会社 Countrywide Financial を中心に グループを形成し、銀行業、保険業、証券業を兼営する。

36 以下は "CCI Goal: 50% Diversification" National Mortgage News, March 4, 2002に基づく。

37 Balboa Life & Casualty は1948年創業で、2003年の個人損害保険会社保険料ランキング138位。本部はカリ フォルニア州Irvine。1999年にCountrywideに買収される。

参考文献

American Banker 各号 Thomson Corporation National Mortgage News各号Thomson Corporation

Citigroup(1998) "Citicorp and Travelers Group to Merge, Creating Citigroup: The Global Leader in Financial Services"

Citigroup Press Room (www.citigroup.com) April 6, 1998.

Federal Reserve(2001) "Survey of Consumer Finances" Federal Reserve Board

(2004年10月6日受理)

参照

関連したドキュメント

前述のように,本稿では地方創生戦略の出発点を05年の地域再生法 5)

Collins Aerospace AIRBUS BOEING SAFRAN Rolls Royce.. Directed

当第1四半期連結累計期間における当社グループの業績は、買収した企業の寄与により売上高7,827百万円(前

HW松本の外国 人専門官と社会 保険労務士のA Dが、外国人の 雇用管理の適正 性を確認するた め、事業所を同

のうちいずれかに加入している世帯の平均加入金額であるため、平均金額の低い機関の世帯加入金額にひ

者は買受人の所有権取得を争えるのではなかろうか︒執行停止の手続をとらなければ︑競売手続が進行して完結し︑

年のウィーン売買法条約では︑.

6 保険料の納付が困難な場合 災害、生計維持者の死亡、失業等のため、一時的に保険