[ 東京工業大学 2008 年 第1類特別入試 2 ]
nを自然数,P x( )をn次多項式とする。P(0), P(1),, P n( )が整数ならば,すべての自然数kに 対し,P k( )は整数であることを証明せよ。
「n次多項式P x( )に対して,P(0), P(1),, P n( ) が整数ならば,
すべての整数kに対し,P k( )は整数」…① であることを,次数nに関する数学的帰納法で示す。
(ⅰ) n1のとき
( )
P x ax b とおくことができる。
(0) , (1)
P b P a b がともに整数なので,
(1) (0)
aP P ,bP(0) はともに整数である。
よって,すべての整数kに対し,P k( )akb は整数であるから①が成り立つ。
(ⅱ) nm(≧1)のとき,①が成り立つと仮定する。
R x( )を「m1 次多項式で,R(0),R(1),, R m( 1) は整数」…② を満たすものとする。このとき,
1 1
( 1) ( ) { ( 1)m } ( m )
R x R x a x ax (m次式)
であるから,m次多項式 P x( ) を用いて
( 1) ( ) ( )
R x R x P x …③ と表すことができる。
よって②より,P(0),P(1),, P m( ) は整数
であるから帰納法の仮定①より,すべての整数kに対してP k( )は整数である。
よって③より,R( ) が整数ならば,
( 1) ( ) ( )
R P R ,R( 1) R( ) P(1) はともに整数である。
これと,R(0)が整数であることより,帰納的にすべての整数kに対し,R k( )は整数となる。
従って,n m 1 のときも①は成り立つ。
(ⅰ)(ⅱ)より,数学的帰納法によって題意は示された。
[別解]
「n次多項式P x( )に対して,P(0), P(1),, P n( ) が整数ならば,
すべての整数kに対し,P k( )は整数」…① であることを,次数nに関する数学的帰納法で示す。
(ⅰ) n1のとき
( )
P x ax b とおくことができる。
(0) , (1)
P b P a b がともに整数なので,
(1) (0)
aP P ,bP(0) はともに整数である。
よって,すべての整数kに対し,P k( )akb は整数であるから①が成り立つ。
(ⅱ) nm(≧1)のとき,①が成り立つと仮定する。
このとき,
「m1次多項式P x( )に対して,P(0),P(1),, P m( 1) が整数ならば,
すべての整数kに対し,P k( )は整数となること」を示す。
R x( )P x( 1) P x( ) とおくと,R x( )は(高々)m次式であり,仮定より R(0)P(1)P(0)
(1) (2) (1) R P P
R m( )P m( 1) P m( )
はすべて整数であり,m次多項式に対する仮定からR k( )は整数となる。
任意のkに対してR k( )が整数なので,
( )
P k の階差 ,P( 1) P( 2), P(0) P( 1), P(1)P(0), がすべて整数になる。
(0)
P が整数なので,帰納的にすべてのkに対してP k( )は整数となる。
(ⅰ)(ⅱ)より,数学的帰納法によって題意は示された。
[別解2]
まず,次の補題を数学的帰納法により証明する。
(補題) 0以上の整数iに対し,
0( ) 1
( 1)( 2) ( )
( ) ( 1)
i ! p x
x x x i
p x i
i
≧ とおく。
このとき,一般のn次多項式P x( )(n≧0 )は,p xi( )の線形結合として表される。
すなわち,適当な実数ciを用いて,
0 0 1 1
( ) ( ) ( ) n n( )
P x c p x c p x c p x
0
( )
n i i i
c p x
(ⅰ) n0のとき
0 0
( ) 1
P x c c より成り立つ。
(ⅱ) n0, 1, 2,, kのとき,補題が成り立つと仮定すると,
任意の(k1)次多項式 f x( )ak1xk1a xk k a x1 a0 に対して
1 1
( ) ( ) k ( 1)! k ( )
g x f x a k p x とおくと
( )
g x は高々k次の多項式で,帰納法の仮定よりg x( )はp xi( )の線形結合として表され,
1 1
0
( ) ( 1)! ( ) ( )
k
k k i i
i
f x a k p x c p x
と表せることになる。
1( 1)! 1
k k
a k c とおくことにより(k1)次多項式 f x( )もp xi( )の線形結合で表されること がわかる。
よって,(ⅰ)(ⅱ)より数学的帰納法により補題は示された。
( )
P x を補題のp xi( )を用いて P x( )c p x0 0( )c p x1 1( ) c p xn n( ) とおく。
このとき,P(0) c0 c1 c2 c3 cn1
(1) 0
P c
0 1
(2)
P c c
0 1 2
(3) 2
P c c c
0 1 1 2 2 1
( ) n n n
P n c Cc C c c
となるので,
「 P(1), P(2),, P n( ) がすべて整数」⇔「 c0,c1,,cn がすべて整数」
が成り立つ。
また,連続するm個の整数の積は,m!の倍数であるから,任意の整数kに対してp ki( )は整数で あるので,P k( )c p x0 0( )c p x1 1( ) c p xn n( ) は整数である。
よって題意は示された。