新引用索引ファイルEmerging Sources
Citation Index(ESCI)の概要
Web of Science Core Collectionのジャーナル収録の
強化と最新収録基準
Overview of the Emerging Sources Citation Index
Enhancement of journal selection and the latest Journal Selection Process of Web of Science Core Collection
安藤 聡子
1澤 綾子
1エドモンズ,マチルダ
1ANDO Satoko1 SAWA Ayako1 EDMUNDS, Mathilda1
1 クラリベイト ・ アナリティクス 学術情報事業部 1 Clarivate Analytics, Scientific and Academic Research
クラリベイト・アナリティクス社が提供する学術情報プラットフォーム「Web of Science」上の引用索引データベー ス「Web of Science Core Collection」に追加された,新しい引用索引ファイル「Emerging Sources Citation Index(ESCI)」 を概説する。同時に引用索引の有用性検討の歴史を振り返るとともに,ESCIと従来のジャーナル引用索引である Science Citation Index(SCI),Social Sciences Citation Index(SSCI)等との違いやインパクトファクターとの関係, ESCIの登場に伴う最新のジャーナル審査基準および審査プロセスの変更点を概説する。
Web of Science,Web of Science Core Collection,Emerging Sources Citation Index,Journal Selection Process,ジャー ナル収録基準,インパクトファクター,Journal Citation Reports,データベース,引用,引用索引
原稿受理(2017-07-20)
情報管理. 2017, vol. 60, no. 7, p. 502-511. doi: http://doi.org/10.1241/johokanri.60.502
1.
はじめに
クラリベイト・アナリティクス社が提供している 「Web of Science Core Collection」は世界中の研 究コミュニティーにおいて,信頼できる学術情報デー タベースとして利用されている。また同時に研究分 析 の 標 準 情 報 源 で も あ る。60年 に 及ぶWeb of Science Core Collectionの一貫した収録の基本方 針は,「学術コミュニティーにとって最適なデータ ベース」を構築することであり,常に進化し続けて いる学術コミュニティーの要望を実現する形で発展 してきた。 最近の学術コミュニティーの進化を表現するキー ワードとしては,研究の専門化と融合,グローバル化, オープン化などが挙げられる。本稿では,Web of Science Core Collectionへの機能や情報の追加と 学術コミュニティーの変化への対応,および,2015 年に追加されたEmerging Sources Citation Index (ESCI)の概要やESCIと従来の引用索引との違い,
ま た 関 連 す る 最 新 の ジ ャ ー ナ ル 審 査 基 準 お よ び ジャーナル審査プロセスの変更点を概説する。
2.
Web of Science Core Collectionとは
Web of Science Core Collection(WoS Core Collection)は,多様な学術情報を幅広く提供してい るプラットフォームである「Web of Science(WoS)」 上で提供されているデータベースの中心をなす引用
た引用索引「Science Citation Index(SCI)」が発 展進化した,8つの引用索引ファイルの総称,それが WoS Core Collectionである(図1,表1)。
厳密にいえば,WoS Core Collectionには引用索 引ファイルに加えて化学反応を収録した「Current Chemical Reactions」および化合物情報を収録した
引用索引ファイルのみを対象として扱う。また,プラッ トフォームであるWoSには,WoS Core Collection の他に特許(Derwent Innovations Index),研究 データ(Data Citation Index),各国・地域から独 自に提供されたデータベース(Chinese Science Citation Index他 ), 専 門 デ ー タ ベ ー ス(BIOSIS
表1 Web of Science Core Collection 8つの引用索引ファイル
収録源 引用索引ファイル名 略称 収録
開始年 JCR 対象 ①自然科学分野ジャーナル Science Citation Index Expanded SCI-E 1900 ○ ②社会科学分野ジャーナル Social Sciences Citation Index SSCI 1900 ○ ③人文科学分野ジャーナル Arts & Humanities Citation Index A&HCI 1975 × 会議録 科学分野 Conference Proceedings Citation Index - Science CPCI-S 1990 × 社会科学分野 Conference Proceedings Citation Index - Social Science & Humanities CPCI-SSH 1990 × 専門書 科学分野 Book Citation Index - Science BKCI-S 2005 × 社会科学分野 Book Citation Index - Social Sciences & Humanities BKCI-SSH 2005 × ④現在は特定の地域で注目
されている/発展が期待さ れる分野のジャーナル
Emerging Sources Citation Index(*2017年中に2005年まで遡及予定) ESCI 2015(*2005)×
①~④は, ジャーナルを対象とするファイルで, そのうち①~③を 「3Files」 と呼ぶ。 ①と②はJournal Citation Reports (JCR) の対 象となっている。 JCRの対象については6章を参照されたい。
図1 Web of Scienceと Web of Science Core Collection
Citaion Index等)が多岐に登載されている。 前述したようにWoS Core Collectionは8つの引 用索引ファイルで構成されているが,WoS上では, 必要に応じて複数の引用索引ファイルの同時検索や, 任意の引用索引ファイルのみを選択しての検索が可 能である。これら8つの引用索引ファイルはSCIから 始まり,順次追加されてきた。2017年7月現在,4 つのジャーナル,2つの会議録,2つの専門書の引用 索引ファイルで構成されている。
またWoS Core Collectionは,各種のデータベー ス の 情 報 源 と な っ て い る。 具 体 的 に は「Journal Citation Reports(JCR)」はWoS Core Collection の情報をジャーナル単位で集計したデータを収録した データベース,「InCites Benchmarking」はWoS Core Collectionの論文単位の相対的な指標等を収録した データベースであり,「Essential Science Indicators (ESI)」は,研究業績に関する統計情報と動向データ
を集積したユニークなデータベースである注1)。
3.
Web of Science Core Collectionと
引用索引の開発
WoS Core Collectionは,ユージン・ガーフィー ルドが設立したInstitute for Scientific Information (I S I)社(現クラリベイト・アナリティクス社)注2) が1964年に提供を開始したSCIが発展したものであ る。ガーフィールドはS C I注3)の基礎となる引用索引 の科学分野の情報検索への適応の可能性について 1955年にScience誌1)に発表した情報科学者で,急 増する学術情報から研究者が必要な情報を効率的に 見いだす手段として,「引用索引」を考案した2)~5)。 また,研究が最先端であればあるほど概念がまだ「用 語」として確立していないため,用語の情報検索の みでは不十分となる網羅性を引用索引で補完できる ことを証明した。そして引用索引の品質を保つため には,学術コミュニティーが必要とするジャーナル を対象とすることが重要であると考えていた。同時 に学術コミュニティーは常に進化し,引用索引に収 録すべきジャーナル群は常に流動的であるが故に, 必要とされる最新のジャーナルを選択する方法が必 要であると考えていた。その結果考案された指標の 一つがインパクトファクター注4)であり,現在JCRで みることができる6)。またガーフィールドは引用デー タの研究評価への可能性についても早期から研究し ていた注5)。
4.
Emerging Sources Citation Index
(ESCI)の概説
4.1 ESCIとは
WoS Core Collectionの新引用索引ファイルであ るESCIは,2015年に追加された,ジャーナルを収録 対象とする引用索引ファイルである。既存の①自然 科学(Science Citation Index Expanded(SCI-E)), ②社会科学(Social Sciences Citation Index (SSCI)),③人文科学(Arts & Humanities Citation
Index(A&HCI))の3分野のジャーナルの引用索引 ファイル(以下3Files)注6)とは別に,特定の地域や 分野において学術コミュニティーで認知されている, 今後さらなる存在感が期待されるジャーナルを収録 している(具体的に収録するジャーナルについては 「4.3 ESCIの収録基準」を参照)。当初の収録は5,000 誌を予定していたが,多様な情報へのアクセスの充 実を目指し,2017年中に7,500誌まで拡大すると同 時に,2005年まで遡そ及きゅうして収録する予定である。
4.2 ESCIの誕生とその背景
WoS Core Collectionの収録対象となるジャーナ ルは,1964年にS C Iの提供を開始して以来,電子 ジャーナルなどの学術流通に関する技術的進歩に合 わせた基準等の追加はあったものの,一貫した基準 を順守してきた7),8)。しかし,多様化した学術コミュ ニティーからは,急増する情報の中から高品質なデー タのみを集めたデータベースと同時に,できるだけ 多様なジャーナルを収録対象としたデータベースの 提供,いわば質と量を同時に満たすことを求められ るようになった。WoS Core Collectionの収録対象 は初めてリリースした600誌から1万2,500誌(2017
については継続的に専門部署が評価をし,新規収録 および収録中止の判断を行っている。既存のジャー ナル引用索引ファイル(3F i l e s)の収録基準は国際 性や引用などについて高い基準が設定されている (図2)。言い換えると,学術コミュニティーの中で国 際的に認められ,引用という形で一定の存在感のエ ビデンスが出て初めて,WoS Core Collectionへの 収録を決定しているといえる。
WoS Core Collectionのジャーナル収録ポリシー は,「研究コミュニティーにとって最善のデータベー スであること」「学術ジャーナルとしてふさわしい ジャーナルをデータベースに収録すること」,そして 「研究コミュニティーの興味や関心に適合するジャー ナルを収録すること」の3点である。ジャーナルの基 本的な発行基準から,編集の内容,著者や編集者の 国際性,そして引用分析に至るまで図2に示したすべ ての要素を考慮の対象にしている。一つの要素だけ で決定することはなく,分野によって重視する要素 は異なり,複数の要素を組み合わせて相互関係を検 証することにより,ジャーナルの長所と短所を特定 し評価を行っている。従来の評価結果に基づく,近 年のWoS Core Collectionへの採択率は10~12% 程度にとどまっており,毎年新規に収録されるジャー
一方で,近年,世界中で急速に新興の学問領域が 勃興してくるにしたがって,今は限定された地域で の 学 術 コ ミ ュ ニ テ ィ ー で 認 知 さ れ て い る よ う な ジャーナル,すなわちWoS Core Collectionの中で の引用実績はいまだ不十分であるが,潜在的な発展 の可能性を秘めているジャーナルがイノベーション の観点などから重要性が増してきた。
そこでWoS Core Collectionのコンテンツチーム は,従来とは別のジャーナル選択基準を適用した新 引用索引ファイルE S C Iを創設して,現在は特定の地 域においてのみ,その重要性が認知されているジャー ナルや新しい注目分野のジャーナル群をそこに追加 することで,質と量のバランスをとりながらW o S Core Collectionを学術コミュニティーが求める選択 的で包括的なデータベースにできると考えた。
4.3 ESCIの収録基準
E S C Iの収録にあたっては,厳しい選定基準を適用 した従来の3F i l e sと同様な検索を可能にすべきだと 考えた。その結果,E S C Iに収録するジャーナルは, 質の維持と適切なジャーナルのコレクションのため に,3Filesの収録基準の一部を適用することとした。 具体的には,図2中,◆印で示した5項目である。す図2 Web of Science Core Collectionのジャーナル収録基準
ジャーナルの 基本的な 発行基準 編集内容 国際性 引用分析 •ジャーナルは国際 的に利用されるこ とを前提としてい るか,それとも地 域での利用が前提 •著者および編集委 員会のメンバーの 国際的な存在感 は? •総被引用数等 •最近の引用動向等 •著者および編集員 会のメンバーの引 用 •他のどのような ジャーナルから引 用されているかな ど ピアレビュー(査 読)の実施 出版倫理の順守 電子ファイル(XML / PDF)で入手可能 • ジャーナルが定めら れた期日どおりに発 行されているか 学術コミュニティー からの要望があるか, すでに関心がある内容 か? •他の類似ジャーナ ルと比較してどう か? •すでにもっと良い ジャーナルがない か? • Web of Scienceに とって新規の内容 をもたらすか? •国際的な編集慣例 英語による書誌事 項,抄録,参考文 献,キーワード ◆下線のある項目が ESCI 収録基準適用項目 ・SCIE/SSCI/A&HCI (3Files)収録基準 http://wokinfo.com/essays/journal-selection-process/ http://wokinfo.com/products_tools/multidisciplinary/esci/ か?
なわち「査読誌であること」「独自性があり,学術コ ミュニティーの関心を反映していること」「書誌,抄 録,引用文献が英語であること」「コンテンツが電子 的に入手可能であること(X M L,P D F等)」「出版倫 理の基準にのっとっていること」である。なお,「電 子的に入手可能」は,索引作成に必要なデータの取 得が電子的に行えることを意味している。特にP D F ではパスワード等のセキュリティー関係のすべての 設定を外す必要がある。 現時点(2017年5月)までのESCIの採択率は,約 60%まで上昇している。この採択率の高さは,採用 している評価項目が3Filesに比べて限定的であるた めと考えられる。 E S C Iのジャーナルの評価は3Filesの評価を行うエ ディトリアル担当部署が,3Filesと同様に行ってい る。エディトリアル担当部署は中立で,独立した立 場で評価を行う。そのため担当者は各専門分野にお ける経歴はもちろん,情報科学分野における知識と 経歴も必要である。
4.4 ESCIの索引
ESCIに収録されたジャーナルの索引は,3Filesと まったく同様に作成される。つまり,ジャーナルに 含まれるすべてのレコードが収録され(C o v e r t o Cover),各レコードについて全書誌事項に加え,全 著者・全著者所属機関,助成金情報,引用情報など が収録される。また機関単位の検索を効率化する著 者所属拡張等の機能も利用できる。したがって,各 研究機関は,従来のジャーナルだけでなく新興の ジャーナルに自機関からどのぐらい発表しているか などをWoS上で検索することが可能になる。さらに 3F i l e sに発表された研究が新興の研究にどのような インパクトを与えているかなどの詳細な検討も可能 になる。なお,WoSには,WoS Core Collectionと同一の 検索プラットフォームで検索することで,より多様な 文脈から関連性の高い文献の検索を可能にしている4 つのRegional Citation Indexがある。クラリベイト・ アナリティクスはこれらの提供のみを行っている。こ
れらは各国・地域の製作者による収録基準と方針で 作成しているデータベースであり,E S C Iで定義して いる,地域において認知されているジャーナルとは 異なる。また索引内容についてもそれぞれの製作者 の責任範囲で行い,WoS Core Collectionとは異な る。現在は,Chinese Science Citation Database(中 国),KCI Korean Journal Database(韓国),Russian Science Citation Index(ロシア),SciELO Citation Index(ブラジル)が利用可能である。
5.
Web of Science Core Collectionの
収録ジャーナルの審査プロセスの変更
ESCIが加わったことで,ESCIへの収録の可否がい わば従来のジャーナル審査プロセスにおける予備審 査の役割を果たすことになった。現在,3F i l e sへの ジャーナル収録の審査申請を行うと,最初は,すべ て自動的にESCIの審査に進む。ESCIの審査は半年以 内の終了を目指している。 E S C Iの審査を通過するとそのまま従来のジャーナ ル審査のプロセスに進む。審査は,発行頻度等さま ざまな要因で必要な時間は異なるが,申請者は,エ ディトリアルに直接問い合わせることが可能であ る。ちなみに,現在までに収録申請したジャーナル はすべて,ESCIの審査も行っているので改めて申請 する必要はない。一度WoS Core Collectionに収録されたジャーナ ルは,定期的に再評価が行われる。これまでは基準 を満たさなくなったジャーナルは収録を中止してい たが,今後は3F i l e sの収録基準を満たさなくなった 場合でも,ESCIの収録基準を満たしていればESCIの 収録誌として収録され続けることになる。
6.
ESCIとインパクトファクター
JCRは,WoS Core Collectionのデータを基に ジャーナルの評価指標やジャーナル間の引用・被引 用関係を収録したデータベースで,インパクトファ クターはその中の一つの指標である。しかしE S C I収
したがってインパクトファクターは付与されない。 なお3F i l e sの収録誌の中でもS C I - E,S S C Iの収録 ジャーナルにのみインパクトファクターは付与され, 人文学の引用索引ファイルであるA&HCIの収録誌に はインパクトファクターは付与されない(なぜなら, 人文学における引用動向は,社会科学や自然科学と は異なるので,人文学のジャーナル評価については, 引用が社会科学や自然科学ほど重視されないからで ある)。なおA&HCIに収録する人文学のジャーナルは, 人文学の索引を作成するスタッフの協力の下,専門 の編集者によって選択され,幅広い分野にわたる文 化現象の複雑さを反映する引用索引ファイルを目指 している。 最新のインパクトファクターは,2017年6月に公 開されたJ C Rに収録されている2016年インパクト ファクターであり,81か国に及ぶ約1万1,500誌に 付与されている。 前述したようにE S C Iの収録誌にはインパクトファ クターをはじめとするジャーナルの指標は付与され ないが,ESCIの収録誌がSCI-E,SSCIのジャーナル を引用することによって,SCI-E,SSCIのジャーナル のインパクトファクターをはじめとするジャーナル の数々の評価指標に影響を与えることになる。
またESCI に収録されることによってWoS Core Collectionの自誌引用を含むデータが利用可能にな るので,インパクトファクターのシミュレーション が可能になる注7)。
7.
Web of Science Core Collectionの
ジャーナル収録概要
ジャーナルの出版国分布でみると,現在3F i l e sの 収録誌はヨーロッパおよび北米が87%を占め,アジ ア発のジャーナルは8%,ロシア,中南米,アフリカ のジャーナルは合わせて5%にすぎない。一方E S C I の収録誌は,ヨーロッパ,北米のジャーナルの割合 は69%に低下し,アジア発のジャーナルが15%を占 めるとともに,新興国から出版されているジャーナ つのジャーナル引用索引ファイル全体では,ヨーロッ パ,北米のジャーナルの割合が81%,アジア発の ジャーナルは10%を占める。 日本発のジャーナルについては,3F i l e sに収録さ れているのは247誌であるが,E S C Iには現在すでに 41誌が収録されており,また,58誌の追加が決定し ているため,2017年中に少なくとも346誌に到達す る。これに加え197誌が現在評価中であり,さらな る収録の拡張が期待される。2017年5月現在,WoS 全体では日本のジャーナルは904誌が収録されてお り,2017年末には1,000誌の大台に到達する可能性 が高い。 収録誌を分野別にみると,ESCIは,3Filesに比べ て社会科学や人文科学のジャーナルの割合が高く, 両分野で53%を占める。その結果ESCIを含めたWoS Core Collectionのジャーナルの分野構成は,社会科 学や人文科学分野が3Filesでの27%から32%に増加 していることから,WoS Core Collectionはより学 際的で包括的な学術情報の収録源といえるだろう。8.
Web of Science Core Collectionの
進化する学術コミュニティーへの対応
急速に増加する学術情報から効率的に必要な情報 を入手するために,学術コミュニティーが学術デー タベースに求める機能を強化した近年の事例を紹介 したい。8.1 速報性
WoS Core Collectionはジャーナルデータを収録 する場合,後世に残る形式が定まってから,つまり巻, 号,ページ等が決定してから収録していた。しかし今 後は,巻,号,ページが未定でも,最終的なDOIが定 まった時点で収録する方針に変更した。この場合 WoS Core CollectionのAccession Number注8)は
保持され,その後,巻,号,ページ等を追加更新した 形で収録される。この変更により情報が検索できるま でのタイムラグが小さくなることが期待できる。
8.2 オープンアクセス・オープンデータ
2011年から提供を開始したData Citation Index とWoS Core Collectionとのリンクの強化がすでに 進行中である。Data Citation Indexはオープンサイ エンス,オープンデータの流れをくみ,論文執筆に 用いた研究データリポジトリを収録した引用索引 ファイルである。同時にオープンアクセスジャーナ ルのレコードについては,従来検索のみ可能であっ たが,現在はWoS Core Collectionからのダウン ロードデータにオープンアクセスジャーナルのレ コードである旨の情報が追加された。今後は論文単 位のオープンアクセスの情報も追加する予定である。
8.3 相対指標と利用回数
研究コミュニティーの相対指標に対する注目度が 高まっているが,相対指標へのアクセスの向上につ い て も 機 能 強 化 が さ れ た。2014年 か らEssential Science Indicators(ESI)の中で特定されている, 相対指標である高被引用論文(Highly Cited Papers) およびHot Papersをユーザーインターフェース上に 表示して,絞り込み可能にしていたが,ダウンロー ドした場合も高被引用論文あるいはHot Papersのフ ラグが2017年6月に追加された。また引用という形 で研究のインパクトが現れる前に研究者の興味を示 す指標として「利用回数」を追加している。9.
おわりに
2017年6月,クラリベイト・アナリティクス社は ブラウザの拡張機能としてW o Sの検索窓の設定を可 能にするとともに,2つの学術情報に関する発表を 行った(図3,図4)。 一 つ がPublons社注9)の 買 収 で, も う 一 つ が図4 Web of Science Core Collectionの検索窓
Web of Science - Quick SearchをGoogle Chromeにインストール した状態
図3 学術情報に関する発表
上 : Publonsの共同創設者 (左) とClarivate CEO (右)。 下 : Impactstory助成のニュースリリース (ともに,Clarivate AnalyticsのWebサイトより)
Prestonが2012年に設立した企業で,研究者の査読 活動を支援するプラットフォームを提供している。 査読は,ジャーナルを中心とした学術コミュニティー にとって必須でありながら,学術コミュニティーに 果たす貢献を測る手段がなかった。どのようなジャー ナルの査読をしているのかはジャーナルの指標を収 録しているJ C R等との親和性も高いことから,将来 的には引用情報との統合等が期待される。 Impactstoryは質の高いオープンアクセスのDOI を収録したoaDOIを提供している。oaDOIはプレプ リントリポジトリや出版者といった信頼できるオー プンアクセス情報を収録している注10)。o a D O Iの情
報がWoS Core Collectionと融合することで,情報 のオープン化に対応する学術コミュニティーに貢献 できることが期待される。
謝辞
この報告は2017年5月から6月にかけて,WoS Core CollectionおよびWoSのコンテンツ開発についての 意見交換会における最新の紹介事項および参加者か らの質疑応答等を基にまとめたものである。意見交 多数の方が参加され,貴重なご意見をいただいた。 参加された皆さまに改めてお礼申し上げる。 本文の注 注1) 利用可能な引用索引ファイルおよび年代は,クラリベイト・アナリティクス社との契約により異なる。 注2) ISI社は1958年にガーフィールドが創立。その後1992年にトムソン・サイエンティフィック社の傘下に入ったが, トムソン・サイエンティフィック社は2008年ロイター社と合併して,トムソン・ロイター社になった。2016 年トムソン・ロイター社の知的財産・科学(Intellectual Property & Science)部門がトムソン・ロイター社 から離れ,クラリベイト・アナリティクス社となったことによりクラリベイト・アナリティクス社の学術情報事 業として存続している。注3) 最初のSCIは5巻のプリント版からなる,約600の学術ジャーナルの引用索引であった。その後SCIは,Dialog等 のオンラインベンダー等に供給されるとともに,1988年にCD-ROM版が発表された。1997年には 「Web of Science」としてWebで提供が開始された。なお,2015年までは,学術情報プラットフォームは「Web of Knowledge」いう名称で,「Web of Science」はプラットフォームではなく現行のWeb of Science Core C o l l e c t i o nという引用索引ファイルの総称と同義であった。2015年の呼称変更に伴い,プラットフォームは Web of Science,引用索引ファイルはWeb of Science Core Collectionとなって現在に至る。
注4) インパクトファクター:http://clarivate.jp/ssr/impact_factor/ 注5) 最初の着想から実際の提供までの間に,ガーフィールドは引用索引の有用性や可能性について多様な研究を行っ ている9)。引用の有用性の代表的な例として,ノーベル賞受賞者予測として毎年9月に発表している引用栄誉賞 が挙げられるが10),他にも引用索引の有用性の証明や,特定の分野であっても,適切なジャーナルを収集したデー タベースが最も包括的で最も有用であることなどの検討を行った。研究評価や分析の実際の応用としては, 1972年の米国国立科学財団による科学指標関連の報告書が最初である11)。 安藤 聡子(あんどう さとこ) Satoko.ando thomsonreuters.com 筑波大学第一学群自然学類卒業,図書館情報大学(現筑波大学)情報 メディア研究科修了。協和発酵工業(現協和発酵キリン)にて知財調 査および臨床試験支援に従事。2010年トムソン・ロイター(現クラ リベイト・アナリティクス)入社。学術データの提供・分析・活用等 を担当。学術情報事業部 シニア・データコンサルタント。 澤 綾子(さわ あやこ) Ayako.sawa clarivate.com 筑波大学大学院生命環境科学研究科修了。アップル・ジャパン(現 Apple)にてMac・iPadなどを文教市場に販売するエデュケーショ ン本部営業に従事。2011年トムソン・ロイター(現クラリベイト・ アナリティクス)入社。研究機関や大学市場への学術情報営業を経て, 学術情報事業部 研究支援マネージャー。 EDMUNDS, Mathilda(エドモンズ,マチルダ) mathilda.edmunds clarivate.com
Temple University卒業。Drexel UniversityでMaster of Science in Information Systemsを修得後,2002年トムソン・サイエンティ フィック(現クラリベイト・アナリティクス)入社。入社以来,一貫 して学術情報,学術管理製品担当。2015年以降,Web of Science 全体の幅広いコンテンツの収録評価全体の責任者。D i r e c t o r , Content Management。
注6) Web of Science Core Collectionに収録されているジャーナルには,最大6つまでのWeb of Science分野が 付与されている。3Filesは相互に重複がある。
注7) ESCIが2005年までの収録遡及を終了する2017年末以降はシミュレーションの幅も広がり,2017年に発表され た2016年インパクトファクターもシミュレーションが可能になる。
注8) 「WOS:」で始まる15ケタのWoS Core Collectionのレコード番号。UT番号とも称す。 注9) Publons:https://publons.com/home/
注10) Introducing oaDOI: resolve a DOI straight to OA:http://openaccessweek.org/profiles/blogs/ introducing-oadoi-resolve-a-doi-straight-to-oa
参考文献
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Author Abstract
The recently launched "Emerging Sources Citation Index (ESCI)" is a new journal citation index database available in the "Web of Science Core Collection" on the "Web of Science" scholarly information platform provided by Clarivate Analytics. This article outlines the history of this new citation index and explains the latest journal evaluation and selection processes. In addition, it shows the difference between ESCI and the Science Citation Index, Social Science Citation Index, and Arts and Humanities Citation Index editions in terms of selection criteria and its relationship to the Journal Citation Reports. The ESCI journal selection criteria is a subset of the selection criteria for the other three journal index editions, providing a complimentary collection of journals in the Web of Science Core Collection.
Web of Science, Web of Science Core Collection, Emerging Sources Citation Index, Journal Selection Process, impact factor, Journal Citation Reports, data base, citation, citation index