総研大共通専門科目 加速器概論 RF-II
電子線形加速器、加速構造
紙谷 琢哉
まず、 典型的な線形加速器として、
KEK の電子陽電子ライナック の紹介をし、
線形加速器と円形加速器の
RF の違いを説明します。
KEK の電子陽電子系 加速器群
SuperKEKB
リング(LER, HER)
周長3km
の円形加速器(ビームエネルギーは一定)
e+
ダンピングリングAR
放射光リング6.5GeV
PF放射光リング
2.5 GeV e+ 4.0GeV/e- 7.0GeV
入射
Linac HER 7.0GeV
LER 4.0GeV
KEK 電子陽電子線形加速器 (Linac)
4.0 GeV e+
4nC x 2 3.3 GeV
10nC x 2 (prim. e-) 5nC x 2 (inj. e-)
1.1 GeV
Damping Ring circ. 136 m
ECS
Energy-spread Compression System Bunch
Compression System
7.0 GeV e- 5nC x 2 Photo-cathode
RF gun
e+ target &
LAS capture section
50 Hz (e+ or e-) pulse-by-pulse mode switching
S-band linac
2.5 GeV e- 0.1nC x 1
PF
HER
LER
AR
6.5 GeV e- 3Tgun
Thermionic gun +RF bunching
B A
C 1 2 3 4 5
Linac 加速ユニット
40 MW S-band klystron SLED
rf pulse compressor
wave
guide
system
ライナック ビームライン
(地下トンネル内)マイクロ波源(地上階クライストロンギャ
ラリー)
RF パルス圧縮空洞 (SLED)
導波管(立体回路)
S-band 加速管
C-band 加速管
ダミーロード (RF 吸収体 )
線形加速器の利点
(Wangler
先生の受け売りです)1.
大電流のビームを保持するための強い収束が可能2.
ビームが1回しか通らないので電磁石等の設置誤差の影響が弱い
3.
ビームをほとんど曲げないので光の放射によるエネ ルギーロスが小さい4.
ビームの入射、出射が単純5. duty cycle
が低いもの(パルス運転)も高いもの円形加速器の RF の特徴
円形加速器[
例. SuperKEKB]
の
RF
システムでは cavity
にはビームが繰り返しやって来る。一回当たりは低い加速電圧でもよい。
しかも多数のバンチを蓄積するので、最短では
2ns
間隔で次のバンチが来る可能性がある。 RF
は連続波(continuous wave)
として生成される必要 がある。 cavity
内の定在波(standing wave)
で加速する
円形加速器のビームラインレイアウトは(単なる紙谷の個人的な感想です。)
Bending magnet
が大きな部分を占め RF cavity, Q magnet
他の占める領域は小さいRF cavity
Beam 間隔( Ring の場合)
わずか
1 μs
の間にもビームがどんどんやってくる!線形加速器の特徴
線形加速器[
例. KEK e-/e+ Linac]
の
RF
システムでは
ビームは間欠的にやって来る同じビームは加速管を1回しか通らない
RF
はパルス波(pulsed wave)
として生成される必要がある
加速管内の進行波(travelling wave)
で加速する
線形加速器のビームラインレイアウトは
加速管が大きな部分を占め Q magnet
他の占める領域は小さい、Bending magnet
はほんの少ししかない
例えば、加速ユニットの長さ9.6m
のうち、8.0m
を加速管が占める(83% !)
加速管 50 Hz (20 ms interval)
Beam 間隔( Linac の場合)
20000 μs
経ってようやく次のビームがくる!Linac の RF の極意(その1)
Linac
の加速管では、あるビームは1回しか通らない→ 一発勝負で目一杯加速するしかない。
2m
長の加速管をビームが通り抜けるのに要する時間は2.0(m)/3.0x10
8(m/s) = 6.7 (ns)
であるから、この時間内だけ加速できれば良いはず。
しかし、実際には加速管にRF
を充填するには600 ns
かかる(filling time)
ので、それだけの持続時間は必要。
つまり、次のビームが来るまでの20 ms
の間、電力
(=power)
を貯めて、600 ns
の短い時間内に加速管 に送り出せば、非常に高いpeak power
が得られる。(詳しくは、三浦さんの
RF
源のお話で聞いて下さい。)
あるRF power
でなるべく加速効率を高くするにはどうすれば良いか(
=>
進行波型加速管)(今回の紙谷のお話)Linac の RF の極意(その2)
加速電界の強さはRF power
の平方根に比例する。20 MV/m 20 MV/m
40 MW
20 MV/m x 2 m = 40 MV
の加速エネルギー14 MV/m
14 MV/m 14 MV/m 14 MV/m
20 MW 20 MW
14 MV/m x 2 m x 2
本= 56 MV
10 MW 10 MW 10 MW 10 MW
1
本の2m
長の加速管に全部のPower
を投入した場合2
本の加速管に2
分割して投入した場合4
本の加速管に分割して投入した場合マイクロ波の面白いところ?
マイクロ波の面白いところ
可視光線のような波長が短い波やラジオ放送の電波のような 波長がとても長い波とは異なり、マイクロ波の波長はちょう ど我々人間が簡単に取り扱えるような物体と同程度の長さであ る。S-band 2856 MHz => 10.5 cm
マイクロ波を波長と同じ程度の大きさの導波管などに閉じこ めると、面白いことが起こる。=>
反射波を完全に打ち消すことができる!(波として見ると波長より細かい構造は位相にのみ影 響する)
S
バンド(2.856 GHz)
C
バンド(5.712 GHz)
X
バンド(
11.424 GHz
)撮影日: 2019年8月28日 撮影者:阿部 哲郎
【補注】上図に写っている手は全て阿部哲郎の左手(2019年8月28日現在)
KEKB
の阿部さんよりいただいた資料(各周波数帯での空洞の大きさの比較)
wifi 11g/11b ~ 2.4 GHz, Bluetooth ~ 2.4 GHz,
電子レンジ~ 2.45 GHz
携帯電話4G ~ 3 GHz
wifi 11a/11ac ~ 5 GHz
携帯電話
5G : 3 ~ 6 GHz + 28 GHz
マイクロ波の教科書
マイクロ波(RF
)の教科書はたいてい無味乾燥で、名著と言わ れているJ. C. Slator
の"Microwave Electronics"
でも、私が 最初にセミナーで読んだ時には意味がわからないことがほとんど でした。実際のハードウエアの経験を積んだ後でようやくその味わい深さ がわかりました。でも、この本は独学すると挫折すると思います。
線形加速器におけるRF
について勉強するための教科書もあまり 無いのですが、T. P. Wangler
の"RF Linear Accelerator" (Wile y-VCH)
が良いと思います。
マイクロ波のことについてわかりやすいイメージを提示して説明 している文献はなかなか有りません。せめてこの講義では、皆さ んにイメージをつかんでもらうことを心がけたいと思います。線形加速器で電子を加速する
にはどうするのが一番良いか?
RF で電子を加速するための3つの条件
A) 縦方向(ビーム進行方向)の電界成分を持つ !
B) 高い加速電界 を作るために
microwave energy を集中させる !
C) RF の波の進行速度をビームの進行速度に
同期させる !
自由空間での電磁波
自由空間を伝わる電磁波は進行方向に対して 横方向の電場成分のみを持つfrom:http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Light-wave.svg アンテナ内の電子を横方向
antenna
進行方向の電場成分を作るには?
from : http://www.eng.cam.ac.uk/DesignOffice/mdp/electric_web/AC/AC_14.html
TE
モード 電場は横方向 磁場は縦方向TM
モード 電場は縦方向 磁場は横方向導波管の中を伝わる波のうち
TM
モード は波の進行方向の電場成分を持つ→加速に使えるのではないか?
Rect WG TE-mode E-field
Rect WG TE-mode H-field
Rect WG TM-mode E-field
Rect WG TM-mode H-field
Circular WG TM-mode E-field
Circular WG TM-mode H-field
導波管中の電磁波の位相速度は超光速!
電磁波を導波管の中を走らせると、管壁で反射しながら進ん でいき、進行方向の電場成分を持つ(ようなモードが存在す る)
しかし、その位相速度は光速を越えてしまう。
右図のように反射している波 青色と赤色の重ね合わせになっているとすると、それぞれ の波は光速度より低い速度
(群速度)で進んでいるが、
重なった波の山、谷は光速
より早く進んでいくように見え る(位相速度)
Dispersion curve ( 導波管 )
自由空間の波の場合、周波数ω
を決めると波数k
(波長の逆 数)は比例して決まる。
導波管の場合、cutoff
周波数より低い周波数の波は通らない。
位相速度vp = ω/k
群速度vg = dω/dk
(dispersion curve
の傾き)で与えられる
電場の強さはstored energy U
で決まる。ある投入
RF power Pw
に対してU = Pw/vg
なので
vg
を下げた方が 電場が強くなるが、vp
はどんどん大きくなる。
ビームと同期しない!電磁波の位相速度を調整するには?
ビームを加速するには円形導波管のTM01
モードを使うのが 都合が良い。
しかし、単なる円形導波管内を伝搬する電磁波の位相速度は 光速を越えてしまい電子ビームの進行と同期させられない。
そこで導波管内に邪魔板をいれてやることで、位相速度を下 げて、ちょうど電子ビームの進み方と同期するようにするこ とができる。disk loaded waveguide
とよばれる。
邪魔板(ディスク)の真ん中に孔をあけておくと、電磁波だ けでなく、ビームも通すのに都合がよい。
では、どんな間隔で入れるのがよいのか?RF の反射
伝送線に不連続なところがあるとRF
は反射する。
ハイパワーの反射はクライストロンにダメージを与 えるし、加速に使うべきパワーをロスすることにな る
なるべく反射は無くしたい。
うまく形状を工夫 することで、反射波を 完全に消す
ことができる。
waveguide
microwave
反射を相殺する
2つの波源に適切な間隔、位相差を設定すると重ね合わさった波は強め合ったり、弱め合ったりす る。
進行波のみ残して、後進波は消すことができる。→反射を消すことができる!
3dB ハイブリッドカプラー
入力したRF
パワーが半分ずつ(3dB
)に別れて出 てくる。
位相差は90
度。
反対向きのポートにはRF
が出てこない。
逆に使うと位相が90
度ずれた2つのRF
パワーを合 成して片方からだけ取り出すことができる。モード変換器(入力 / 出力カプラー)
導波管を通ってくるTE10
モードを加速管内の
TM01
モードに反射無く、変換する
実際には反射が無いの ではなく、2ヶ所から の反射が打ち消しあっ て、先へ進む波だけになる電場の向き
カットオフ波長
RF
の波長が導波管のサイズから決まる限界値より長 いと波は伝搬しないで全部反射してしまう。
より詳しく言うと、各モードについてこの限界値(カットオフ波長)は異なっている。
一般的に導波管はモードが1つだけ通せるような周波 数で使う。waveguide
microwave
薄い穴あきディスクを入れた場合
穴のサイズで決まるカットオフ波長よりも波の波長 が長くても、それが薄い板であれば漏れ出し(しみ 出し)によりRF
は透過していく。
ディスクにより位相速度が下げられる。waveguide
microwave
共振空洞
もしもディスクで区切った導波管の端部が空洞となって、その共振周波数が送り込む
RF
の周波数と一 致していると、RF
のエネルギーは空洞内に蓄積され ていく。waveguide
microwave
定在波空洞と
進行波型加速管への
RF
パワーの入り方の 違い円形加速器の加速空洞 ではビーム加速及び 空洞壁でのパワーロス の分だけ
RF
を供給して つり合わせる。空洞内の波は定在波
になる。
周期構造
複数の穴あきディスクで区切られていると、それぞれのセルが共振空洞となって、
RF
のエネルギーが蓄積されていく。
うまく工夫すると、反射無くRF
パワーが 下流の方へのみ伝わっていくwaveguide
microwave
3つの波源の場合の相殺
3つの波源でも、うまく反射波を相殺させることが できる。
ディスクを波源と考えると、1/3
波長間隔で置くと、それぞれのディスクからの後進波は打ち消しあい
、進行波のみが残る。
http://www-linac2.kek.jp/~kamitani/wave03.html
shunt impedance & disk interval
ディスク間隔(=
空洞セル長) L
は波長を整数で割っ た長さ(λ/N
)にすることでうまく相殺がはたらく。
例えば、N = 2, 3, 4 ,,,
N = 3
の時に加速効率が一番高いのでこれが用いられることが多い。
2π/3-mode
と呼ばれる。
シャント・インピーダンス(R
sh)
と呼ばれる量が、加速管に投入した
RF
パワーがどのぐらい、うまく加 速電界に使われているかを表している。E
0 :加速に寄与する基本波の
R = E 0 2
空間高調波のシミュレーション
See animation: http://www-linac2.kek.jp/~kamitani/SpaceHarmonics.html
定在波による加速
定在波加速では、最大電界の位置にビームが常にいるわけでは ない。
定在波は進行波と後進波を同じ割合で足し合せたものと見なせ進行波による加速
進行波加速では、ビームは常に最大加速電界の位置にいる。
進行波だけが存在するので、加速効率(シャント・インピーダ ンス)については有利である。(厳密にいうと少し異なる)
加速構造を透過したRF power
は、加速管の一番後ろにある出 力カプラーを通って外に出てダミーロードに捨てられる。空間高調波
ディスクロード型進行波加速管には、加速に寄与する基本波 成分に対して加速に寄与しない空間高調波と呼ばれる成分が ある。
それらも同じ周波数で振動するが、波長と位相速度が異なる ためにトータルでは加速に寄与しない。
空間高調波のせいでシャント・インピーダンスが少し低下す る。
空間高調波成分の無い加速管は作れないか?n=0
の項のみ、位相速度が光速度c
になる。他の項は局所的には寄与 するが平均的には寄与がゼロになるv
p,n= w b
n=
w b
0+ 2 p
n
b
n= b
0+ 2 p d ´ n = 1
3 + n æ
è ç ö
ø ÷ ´ 2 p d
E
z(r , z ) = a
nJ
0( k
rnr)e
j(wt-bnz)n=-¥
n= +¥
å
Dispersion curve (周期構造の場合)
基本波
空間高調波