第19回教育研究公開シンポジウム
新しい教育課程の創造
−基礎・基本の充実と総合的な学習の時間の展開−
実施期日●平成13年2月 開催地●大村市
平成13(2001)年3月
国立教育政策研究所
はしがき
国立教育政策研究所では、所内で行われる教育研究の成果を広く社会に還元するた め、平成2年度から、各地の教育センターなどの協力を得て「教育研究公開シンポジ ウム」を実施している。
第19回シンポジウムは、「新しい教育課程の創造」をテーマに、香川県教育センター、
国立教育政策研究所との共催で、平成13年2月23日に、長崎県シーハットおおむら(大 村市体育文化センター)において開催し、長崎県、近隣各県の小・中・高等学校の教員 等約400名の参加者を得た。
本報告書は、このシンポジウムにおける発表内容をコーディネーター、パネリスト にまとめていただいたものである。
当シンポジウムは、共催機関の全面的なご支援と関係者の方々のご努力により、熱 心な多くの教育関係者の参加を得て実り多いものとすることができた。末尾ながら、
関係者各位に心からお礼を申し上げたい。
平成13年3月
国立教育政策研究所長
富 岡 賢 治
目 次
はしがき
第19回教育研究公開シンポジウム 新しい教育課程の創造
−基礎・基本の充実と総合的な学習の時間の展開−
・「総合的な学習の時間」を全生徒・全職員のものにするために
−文部科学省研究開発学校(平成11年度〜13年度)としての取り組み から−(石井勝典)………1
・学校・社会の現実と新教育課程(宇田川 眞) ……… 17
・実際に指導していることを評価する
−「総合的な学習の時間」が導入された新しいカリキュラムにおける
新しい評価の在り方への提言−(清水克彦)………33
・総合的な学習カリキュラムづくりと評価(奈須正裕) ……… 45
【付録】プログラム
パネリスト フロフイール
第19回
教育研究公開シンポジウム
新しい教育課程の創造
−基礎・基本の充実と総合的な学習の時間の展開−
「総合的な学習の時間」を全生徒・全職員のものにするために
−文部科学省研究開発学校(平成11年度〜13年度)としての取り組みから−
石井勝典(長崎県立上五島高等学校)
1 学校の概要
本校は五島列島の北部に位置し、長崎県のしま地区における4番目の高等学校とし て昭和27年に設立された。「しま地区」では県内でも大規模校で卒業生も平成13年3月 で15,261名を超える。生徒は、五島列島の中通島(全5町、人口約3万人、中学校6 核、高校2校)全域の中学校から進学してくる。
中通島はかつて水産業を中心に成り立っていたが、このところの水産業の不振によ り、建設業とサービス業が主要産業になりつつある。また生徒の卒業後の進路につい ても、進学する生徒と就職する生徒がほぼ半々であるが、その9割以上が島外に流出
していく。結果的に過疎化・高齢化が進み、人口はこの40年間で約半減した。
学科構成 1学年普通科:5学級工業科:電気科1学級、情報技術科1学級
[至学級数 生徒数 21学級 819人
[職 員 数 校長1教頭1教員51養護教諭1実習助手6事務員5用務員
2 研究開発のねらい
研究開発のねらいを策定するにあたってまず本校で検討したことが、「われわれは どういう生徒の育成を目指すべきか」である。「総合的な学習の時間」のねらいや育て る力の方向性は学習指導要領にしめされているとおりである。しかし、具体的に何を どうようにのばすかについては、各学校がおかれている環境や生徒の実態により異な ってくるはずである。そこで、本校は、上五島高校がおかれている地域性、これから の上五島高校に求められるものは何かを考えることから取り組んだ。その結果本校で 必要だと考えられたのが、「問題解決能力」の育成であり、具体的には以下の3点に要 約することができる。
①「情報収集能力」を高めること。
②狭い地域(離島)から外に出るに当たって、「豊かな表現能カ」を身に付ける
こと。
③広い外の社会でやっていけるような「社会性」を身に付けること。
この3つを、特に高校時代に育てたい基礎的な力としたが、これは本校の校訓であ る「進取(進んでことをなす)」とも相通じるものがある。そこで本校では目指すべき 生徒像として「進取の気象を受け継ぐ生徒」をスローガンとし、生徒の要望もあって
「総合的な学習の時間」を「進取の時間」と呼ぶこととした。
‑1‑
く21世紀前半の社会>
高度情報化やI T革命,国際化,環境問題,
少子高齢化(福祉問題)などへの対応を迫られる時代
<何を本校の生徒に身につけさせるべきか>
①情報収集力の育成
②表現力の育成(プレゼンテーション能力,コミュニケーション能力)
③社会性の育成(身近な所からの活動=郷土を基調とする学習の展開)
<育成すべき生徒像>
校訓の「進取」の気象を受け継ぐ生徒
※生きるカ(問題解決能力)をもつ生徒
3 系統性をもった3か年育成のプログラム
研究開発のねらい、すなわち目指すべき生徒像が明確になると、次に問題となるの は、高校生活3か年の間で、どの段階でどういう力を身に付けさせていくかという、
系統性だった3か年育成のプログラムの具体化である。検討の結果、以下のような育 成プログラムを実施することにした。
①1学年
「学校改善」という共通テ」マの下、問題解決のために不可欠な情報収集と調 査能力に関する基本的技能を育成する。
②2学年
「地域活性化」という共通テーマの下、具体的な地域社会の問題点などを考え させながら、調査・分析・企画・発信などの表現力を育成する。
③3学年
「社会と自分」という共通テーマの下、1,2年で身につけた能力を生かしな
がらディベートを行い、論理的思考力や表現力を養う。
4 全教職員のものにするための組織作り
本校での「総合的な学習の時間」の実践は、後で詳しく説明するが、教科の枠を取 り払い、学年ごとに同一テーマで取り組んでいくスタイルを採っている。そのため、
教職員間の理解と共通認識が重要なポイントとなってくる。そこで、まず3学年を見 渡した全体的な視点に立って研究を深める組織、そして実際に生徒を指導する先生方 が授業の具体案を検討する組織など、必要に応じていくつかの組織を設けた。以下の 図はその組織図である。
(研究企画委員会) 役割:研究企画案作成・広報(平成11年度のみ設置)
構成(校長、教頭、教務正副主任、研修正副主任で構成)
研究推進委員会 役割:研究企画案の検討、学習活動の調整等
構成:企画委員十各学年主任、工業科・家庭科主任、各学年推進担当
*各学年推進担当は平成12年度追加
各研究学年会 役割:研究企画案をもとに授業展開案の検討 構成:学年推進担当を中心に各学年団
研究全体会 全職員で学習活動の支援
まず初年度(平成11年度)は、少人数で構成される研究企画委員会を基幹会議と位 置付け、ここでは目指すべき生徒像や各学年の課題や到達目標など研究の骨子を立案 した。次に研究企画委員会で立案したことを授業担当者も加わった研究推進委員で練 り、最後に研究学年会で企画案をもとに具体的な授業展開を検討した。
研究企画委員会を少人数にした理由は、理論研究を進めながら頻繁にミ]ティング を繰り返す必要があったこと、「総合的な学習の時間」に対する理解がまだまだ全教職 員に浸透していなかったことなどである。しかし、この体制では、教職員間の共通認 識が深まりにくいという欠点があった。そこで平成12年度は、研究企画委員会を発展 的に解消するとともに、研究推進委員会に各学年担当の推進委員を増員させる形で組 織改編を行い、これを基幹会議とした。つまり企画立案に重点をおいた組織から実践
に重点をおいた組織への移行である。
5 各学年のねらい・取り扱うテーマ・発表形式
3か年育成のプログラムができると、今度はプログラムにもとづいた具体的な実践 計画の作成である。そこで各学年ごとに、①ねらい、②方法、③学習テーマ、④発表 形式などについて検討した。留意点は以下の5点である。
①平成11年から、学年進行で研究を実施する。
‑3‑
②学年で共通のテーマを設定し、教科の専門性にとらわれずに学習活動に取り組む。
③活動の成果を発表会あるいは冊子の作成をとおして情報として発信する。
④正副担任をとわず、教職員全員が指導にあたる。
⑤配当単位は卒業までを3単位とし、各学年1単位ずつ均等に当てる。
この5点に留意しながら作成した実践計画が下の表である。
①ねらい……課題解決のために不可欠な情報収集に関する様々な基本的技能の育成
・情報収集技能(聞き取り、図書館等の文献情報、インターネット検索等)
・分析技能
②方法……活動が比較的容易で、身近で価値ある情報を収集・分析しやすいものとして、
学校生活に関わりのある題材を使用する。
③学習テーマ……「見つめよう高校生活−上高を知ろう−」
(アプローチの視点)
・上高の歴史や心温まる出来事、地域の上高への声などを調査
・上高生の学校生活に関する調査 (まとめの視点・テーマ)
・「上高を魅力的な学校にしよう」というテーマで各班が提言
④発表形式……体育館で校内発表会を実施。また各班の研究活動を冊子にまとめ提言。
①ねらい……地域社会への視野を拡大させ、体験活動を重視しながら課題解決のための調 査活動、分析・研究活動、表現能力を育成する。
②方法……家庭や学校を取り巻く地域社会が抱えている様々な課題を調査・分析し、ふる さとの活性化を図るため、高校生の目からみた様々な解決案を提唱発表する。
(アプローチの視点)
ア 環境問題からのアプローチ
イ 福祉・健康面からのアプローチ(含:ボランティア活動) ウ 国際理解からのアプローチ
エ 情報化からのアプローチ
オ 海洋資源(自然資源)からのアプローチ
カ 郷土研究からのアプローチ(観光・芸能・歴史・料理・特産物)
③学習テーマ……「ふるさとを見つめ、これからの社会的課題について考えよう」
−どうすれば上五島地域を発展させることができるか−
④発表形式……中間発表会(校内)を経て、公開発表会(地域)では研究成果を冊子にま
①ねらい……3年間のまとめとして、特に表現力(プレゼンテーション能力、コミュニケ ーション能力)の育成をはかる。
②方法……地域に関するテーマでディベートを行う。
③学習テーマ……「社会と自分」
・社会と自分、地域と自分、将来と自分等 (視点)「地域のために自分はなにをできるか」
④発表形式……学級別ディベート、学級対抗ディベート
上の実践計画は平成12年度の実施内容であるが、平成11年度も基本的には同じスタ イルをとった。平成11年度と平成12年度の大きな変更点は以下の2点である。
(1)テーマの一本化
平成11年では、前期と後期にわけ前期を「上高を知ろう」・後期を「知ろう職業と適
第1学年 第2学年 第3学年 基礎的学習 応用的学習 発展的学習
性」というテーマで実施した。しかし、内容的に現状分析でとどまっているレベルが 多く、「総合的な学習の時間」には関心を示しているが、テーマ自体に対する関心は低 かった。そこで、平成12年度は1年・2年ともそれぞれ同一テーマを通年で実施し、
単に調査・分析にとどまらず、「どうすれば上高を魅力ある学校にできるか」あるいは
「どうすれば上五島地域が活性化できるか」という提言にまで踏み込んで指導してい くこととした。
(2)最終目標の明確化
平成11年度においては、前期・後期ともクラス単位で授業を実施し、最終段階の発 表会もクラス別に実施した。そのため、クラスごとの生徒の目標や到達度や暖昧であ った。そこで、平成12年度では1年は校内体育館で、2年は地域にある公会堂で、地 域の方を招待して発表会をおこなった。これにより、生徒や教職員の共通認識の深ま
りと生徒の達成感の充実をはかった。
また、発表会と並行して、生徒の活動結果を「提言集」という形で冊子化すること もおこなった。
6 実施時間・指導形式
1 【実施時間】 木曜日の6校時に一斉に実施
年 【指導形式】 担任、副担任のティームティーチングで実施。
(前期は学級を基本単位、後期はテーマ別とする。)
2 【実施時間】 Aブロック(1〜3組) 金曜日の6校 Bブロック(4〜5組) 金曜日の4校時 Cブロック(6〜7組) 金曜日の2校時 年
【指導形式】 各ブロック内で学習テーマごとに担当者を決めて支援。テーマごとに 情報交換
3 【実施時間】 毎週3時間(1学期のみ)、文化祭
年 【指導形式】 担任、副担任のティームティ」チング(学級を基本単位とする)
実施時間は1・2学年とも、週1時間である。指導形式は、まず1学年では1年間 を前期と後期にわけ、前期では学級を基本単位とする担任・副担任によるチームティ ーチング、後期はクラスを解体し、類似のテーマごとに八っに分類されたグループ(生 活マナー・施設・授業スタイル・学校行事など)を基本単位として、各グループ2〜
3人の教職員によるチームティーチング形式を採った。前期と後期を異なる指導形式 にした理由は、今年度の1学年テーマが前述のとおり「上高を知ろう」に一本化した ため、より深い探求を可能にする指導体制を検討した結果である。すなわちクラスを 解体し類似のテーマごと再編することで、教職員が得意とする分野を専門的に指導し
ていけることが可能になる。
2学年では、1学年の後期のスタイルに近いが、パソコン室や視聴覚室など各種機
‑5‑
器を利用する機会が多くなるため、施設を有効に利用できるよう、学年を1〜3組・
4〜5組・6〜7組の三つのブロックに分け、各ブロック毎に異なる時間帯で授業を おこなった。各ブロックごとにテーマ別のグループ(環境・国際化・情報化など)を 編成する点は1学年後期と同じであるが、基本的に各グループの教職員の担当者は1 人で、チームティーチングではなく、いわばゼミ形式である点が異なっている。ゼミ 形式を採用した理由は、三つのブロックを設けたために、各ブロックでチームティー チングを実施すると、設置できるグループの数が限られてしまうからである。生徒の 多様な二一ズに対応するためにはより多くのテーマ別グループを設置することが望ま しく、そのためにはグループの担当教職員を1人にした方が都合がよいと考えたので ある。担当教職員の負担は、責任が明確になるという点では重くなるが、担当する生 徒の人数が、1人平均18人と、より細分化された点では軽くなった。
3学年は13年度から実施の予定で、細かな点の詰めを行っている。
7 年間授業計画
第1学年 第2学年 第3学年
①ガイダンス 全体 ①ガイダンス 全体 ①ガイダンス 全体
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
②班編制及び課題検討 学級内 ②テーマの設定 学級内 ②仮テーマの設定 学級別
↓ ↓ ↓
③調査活動計画書作成 ③班編制 ③練習ディベート ↓ ↓ ↓ ↓
④調査活動<探究I> ④テーマ別 ブロツク内 ④評価・研究 ↓ オリエンテーション のテーマ別 ↓
⑤中間発表I ↓ ⑤テーマ設定 ↓ ⑤研究企画書作成 ↓
⑥評価・検討会 ↓ ⑥準備
↓ ⑥調査活動計画書作成 (資料収集・検討)
⑦中間発表II テーマ別 ↓ ↓
↓ ⑦調査活動<探究I> ⑦学級ディベート
⑧テーマの再設定 ↓ ↓
↓ (深化) ⑧中間発表I テーマ別 ⑧学級対抗ディベート
⑨再調査〈探求Ⅱ〉 ↓ ↓ (予選)
↓ ⑨評価・検討 ⑨評価・まとめ ⑩まとめ ↓ ↓
(報告書作成) ⑩中間発表II 全体 ⑩学級対抗ディベート
↓ ↓ (決勝)
⑪最終発表会Ⅲ 全体 ⑭再調査<探究Ⅱ> ↓
↓ ↓ ↓報告書作成 ブロック別
⑫評価 テーマ別 ⑫校内最終発表会 テーマ別
↓選考会(3次)
⑬地域公開発表会 地域
↓
⑭評価 ブロック別
前ページの表のとおり、1・2学年の基本的な流れは、①班別テーマの設定、②活 動計画書作成、③調査活動、④分析・まとめ、⑤発表会、⑥評価という展開である。
この①〜⑥の展開を1サイクルとし、1・2学年とも中間発表会(1〜2回)をはさ んで年間に2サイクルする点が本校の特徴である。年間に2サイクル展開すると、1 サイクル目の発表会が中間発表会となり、生徒が自分の発表と他者の発表とを比較し、
自分の到達度や方向性のチェックをおこなえるようになる。その結果、より内容に深 まりがでてくる。また教職員にとっても、中間発表は共通理解を深め、同レベルの指 導を実現するための機会となる。付録の資料1は1学年の中間発表で用いた相互評価 表、資料2は1学年の授業の流れを図式化したものである。
1学年と2学年のもっとも異なる点は、1学年の活動の場が大半が校内であるのに 対し、2学年では調査活動など、積極的に校外に活動の場を広げていく点である。例
えば、郷土芸能の復興というテーマから上五島地域の活性化を検討していった班は、
夏休みを利用して、地域の郷土芸能の伝承者のもとに通って、芸能の継承に取り組ん だ。また上五島地域のバリアフリー化をめざす班は、地域の主な店舗をまわって、各 店舗のバリアフリーの実態を調査した。そして校外での活動を行った後は、活動に協 力していただいた方へ生徒の活動に対するアンケートをお願いし、今後に向けてのア ドバイスや批判をいただいた。発表会についても、すでに述べたように、2学年は地 域の方や保護者を招いて、学校外の施設で実施した。資料3は提言集の目次の引用で ある。第3学年については、多くの生徒が島外にでて自立していく状況をふまえ、自 己をアピールできる表現能力の育成に焦点を絞っている。そのためディベートを中心 に授業を編成している。
8 生徒・教師の変容および地域の反響
(1)生徒の変容
1年生へのアンケートの抜粋(実施時期2月)
①授業の進め方はどちらが好きか
平成11年度 平成12年度
0% 20% 40% 60% 80% 100%
②調査に積極的に参加したか
平成11年度
平成12年度
190 80 総合的学習 211 60 従来の学習
82 116 77 22
80 136 47 12 はい まあまあ すこし いいえ
0% 20% 40% 60% 80% 100%
‑7‑
③活動計画などの作成を通して、企画カや計画性が身についた
平成11年度 8.4 49.6 39.2 2.8 平成12年度 23.8 48.4 23.8 4
はい まあまあ すこし いいえ
0% 20% 40% 60% 80% 100%
④課題追求のための情報や収集が適切にできた
平成11年度 15.3 47.9 32.2 4.6
平成12年度 28.6 51.6 17.9 1.8
O% 20% 40% 60% 80% 100%
はい まあまあ すこし いいえ
⑤様々なメディアを適切に活用し、多角的に考察を進めることができた
平成11年度 11.6 31.3 48.6 8.5
平成12年度 15.1 44.9 34.6 5.5
0% 20% 40% 60% 80% 100%
はい まあまあ すこし いいえ
⑥資料を効果的に活用し、学習課程や結果をわかりやすく表現できた
平成11年度 6.2 44.8 45.9 3.1
平成12年度 17.8 51.6 26.7 4 はい まあまあ すこし いいえ
0%
20% 40% 60% 80% 100%
2年生へのアンケートの抜粋(実施時期平成13年2月)
①自分で課題が発見できたか いいえ
30%
はい 70%
③調査活動の質問が的確にできたか
いいえ 25%
はい 75%
②見通しを持った計画をたてられたか
いいえ 44%
はい 56%
④収集した情報を取捨選択できたか いいえ
27%
はい
73%⑤提言内容をわかりやすく発表できたか
いいえ 40%
はい
60%⑥コンピュータで文書の作成ができたか いいえ
4%
はい
96%⑦コンピュータでグラフが作成できたか
はい 38%
いいえ
62%
⑧インターネットで情報を収集したか
はい 41%
いいえ
59%
‑9‑
平成11年度から学年進行で取り組んでいるが、アンケート結果の抜粋からも分かる ように生徒の興味・関心、取り組み方や積極性も高まってきたことがうかがえる。
また、パソコン処理能カ、調査能力、まとめる力等も向上しており、2学年の提言 集は、生徒自身がワープロソフトや表計算ソフトを使って作成した。体験活動や他者
との比較によって、さらに高い次元への向上心が芽生えた生徒も多く、学校や地域社 会の改善という活動を仲間と一緒に行うことで、社会性も身に付いてきた。
(2)教職員の指導カの向上
新しい取り組みの連続で負担感はあるが、自分たちがどのような生徒を育てたいの か、高等学校が地域にどのような貢献ができるかなど、これからの目指すべき方向性
(スクール・アイデンティティの確立)について関心が高まり、話し合う機会も増え
てきた。
また、生徒の支援に際して教師自身のパソコン処理能力も向上し、個に応じた適切 な指導の在り方についての認識も深まった。さらに、教師間の支援や情報交換も積極 的になった。
(3)保護者一地域の反響
本校の「総合的な学習の時間」では、特に第2学年の活動が地域社会に密着した内 容になっている。まさに「地域活性化のために高校生になにができるか」という内容 で、そのための校外での調査活動の段階からほとんどの生徒が多数の地域住民にイン タビュー活動、アンケート調査、訪問体験等の様々な形で協力を得ることができた。
また、貴重なアドバイスや、励ましの言葉を受けた生徒も多い。
高校生による地域活性化というテーマは、地域住民ばかりでなく地元の行政や商工 会にも好意的に受け止められ、さらには行政、商工会等の地域活性化施策にも刺激を 与えている。
「21世紀のふるさとへ〜どうすれば上五島地域をさらに発展させることができる か〜」というテーマで、2月に地元の公会堂で実施した研究発表大会には一般の住民 ばかりでなく、各町の行政関係者等も訪れ大好評を博した。生徒達自信がパソコンを 利用してまとめた提言集については発表会後も地元商工会、町議員等、各所から資料 提供の問い合わせが続いている。
また、地域からは、提言だけに止まらずに、実現に向けた企画・立案の要望も出て
いる。
こうした声は、本校生徒に自信を与え、地域社会への寄与意識を高めさせている。
9 実践から見えてきた効果的指導ポイント
生徒の興味・関心、意欲、達成感、共通理解や取組の質的深まりを進めるためには、
次のようなポイントを押さえることが重要であると思われる。
(1)やる気がでるような魅カあるテーマを設定する
「社会的に価値のあるもの」、「地域に結びつくもの」、「成果が見えるもの」の3点 に留意したテーマを設定することが、取組の意義や意欲を増進させるとともに、達成 感を味わうことや社会と共有できる喜びなどにっながっていく。
(2)まとめの最終的な形を明確にする
年間を通した活動がどういう形にまとめ上げられるのかを生徒達に明示しておくこ とが、全員の力を一つに収束する力となる。例えば、最終的に冊子をつくるとか、発 表会を行うとか、ホームページを完成させるとか、そういうゴールを明らかにしてお
くと、取り組みの方法やレベル、方向性が見えてきて、活動が安定する。
(3)中間発表会を適切な時期に設ける
中間発表会を設け、自己評価や相互評価を積極的に取り入れることで、ゴールまで の到達度や方向性のチェックがおこなえるのと同時に、他の班が行っている内容やレ ベルが生徒・教師全員に共通理解でき、一層の質的深まりにつながる。
10 今後の課題
評価について、第三者が見て明確に分かるようなもの、学校が進学先や就職先に自 信をもって説明したり、推薦したりできるような評価表現の方法を研究する。
具体的には、学習途中の経過を見れるような評価法、パソコンやインターネットの 習熟、レポートの書き方やまとめ方などについて到達度を明示できるような評価の在
り方について検討する。
‑11‑
資料1
プレゼンテーション 相互評価票
発表者 班
テーマ
【評価項目I:内容】 はい いいえ
◇テーマに即した内容であったか □ 口
◇調査が十分行われていたか 口 口
◇資料の分析は十分なされていたか 口 □
◇明快な結論が示されたか 口 □
◇今後の課題や展望が示されたか 口 口
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
Iの評価 5 4 3 2 1
【評価項目Ⅱ:表現方法】 はい いいえ
◇落ち着いて話していたか □ 口
◇適切な言葉遣いができたか 口 口
◇大きな声でわかりやすく表現していたか □ □
◇視覚的に資料をわかりやすく見せる工夫があったか □ □
◇強調すべきところがきちんと強調されていたか 口 □
◇発表の時間配分が適切であったか □ □
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
Ⅱの評価 5 4 3 2 1
総合評価 5 4 3 2 1
◎ここが良かったという点、あるいは今後の参考になった点を書いてくださ
い。
◎ここを改善したらよい、あるいはこんな工夫があるのではというアドバイ スを書いてください。
*評価基準:5=よい 4=まあまあ 3=ふっう 2=もう少し 1=努カ不足
1年生の授業の流れ
班別テーマ設定 調査・まとめ 中間発表 班別テーマ再設定 調査・まとめ 本発表
サンプル1(施設・備品に関するテーマ)
上高の水道料金に
ついて ⇒
↑ 調査場所や資料の見 教師の支援 方、効果的な資料の 作り方などを助言
水道の使途・毎月の水道使用
状況などを調査・発表 ⇒
⇒発表結果をどう上高の改 善に活かすことができる か検討させる
↑
節水の具体的対策を提言
・実現可能な対策であるか 検証へのアドバイスをお
こなうサンプル2(上高生の実態に関するテーマ)
上高生の運動能力 について
⇒
県平均や都市部の学校との体カ テストの結果との比較結果を発
表↑
教師の支援 ・資料の収集方法や比較の 。 方法などを助言
⇒
↑
発表結果を使って何が可 能か考えさせる
⇒
↑
今後活躍が期待できる部活と 優勝にいたるプランを発表
上高生の特性を活かした競技の検討 と、その競技の優勝経験校へのイン タビューのやり方などを指導する
サンプル3(行事に関するテーマ〕
上高の修学旅行に ついて
⇒
↑
過去数圭年の本校及び県内の他 校の修学旅行の行き先・日程な
どを発表
⇒
⇒ 日程・費用・目的などを考慮
しながら生徒自身で作成した プランを発表
教師の支援 他校の旅行を知るため のアンケート・手紙の 書き方や効果的な発表 の仕方などを助言
修学旅行の目的や様々な 制約(費用など)につい て助言する
↑
時刻表の見方やインターネットを
利用しての交通手段・旅行先・費
用などの情報収集能力を身にっけ
させる
資料3 2学年提言集の目次から引用 環境問題からのアプローチ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
L e t s S E A −海ろうぜ−
自然をこのまま残すには −開発と自然環境の調和−
ゴミを減らすには −生ゴミの肥料化について−
ダイビングスポットを発見しよう リサイクルでゴミを減らそう!!
ゴミとリサイクルについて
美しい海を守り残すために −洗濯用洗剤の研究−
有川町のゴミ事情 −今私たちにできること−
下水道を考えよう 蛤浜のゴミ事情
埋め立ての変遷と必要性
クリーンエネルギーを上五島へ −環境にやさしい電力源の研究−
赤潮の発生を無くそう −赤潮の発生原因の研究と対策 昔の川を取り戻そう −現在の川の状況と今後の対策−
海産物を増やそう −環境と海産物の研究と今後の対策
下水道施設について −下水道処理と環境への影響について−
海きれい!もっとキレイ! −海の状況について−
福祉・健康面からのアプローチ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
11
少子化への対策
高齢化の対策 −新しい福祉施設−
高齢者や身障者が楽しく過ごすための対策 車に乗れない人にも使いやすい交通体系
医療設備を充実させる −上五島病院の活性化−
老人福祉の充実に向けて −老人保健施設の現状から−
ふるさとのバリアフリーについて
ふるさとの児童福祉と児童問題について バリアフリー商品について
ふるさとの介護について 福祉について学ぼう
国際理解からのアプローチ
2 1 4
3 56外国人との交流の場を増やそう!
外国の文化を取り入れよう!
上五島国際TOWN計画
L e t s B e g i n 上五島国際化 Let s Begin for Kamigoto
Let s Learn English
情報化からのアプローチ
1 2 3 4 5 6 7 8 9
10 11
おみやげ開発 −上五島らしさを求めて−
福祉と情報社会 −上五島の福祉が情報化に対応していくために−
上五島を拓こう!−情報教育推進のために−
未来のイベントを考えよう −イベントをみんなのものに−
近未来のテーマパーク構想
上五島の情報化とその未来 −上五島の現状から−
上五島高校紹介ホームページの作成 −「進取の時間」を中心に−
ホームページを作ろう −上五島を世界に発信−
上五島高校のホームページを作る 上五島の海を知ろう
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若者が少ないという現状
学校・社会の現実と新教育課程
宇田川 眞(長崎県教育センター)
I.はじめに
新しい学習指導要領が移行措置期間に入り、ほとんどの学校が「総合的な学習の時 問」に取り組んでいる。しかし、実際には、活動のねらいや学年間の系統性、学校全 体のテーマを明確にした上での取組は少なく、活動先行の感は否めない。
一方、新学習指導要領が、内容を厳選し、授業時間を大幅に削減したことから、「学 力が低下するのではないか。」との不安や批判の声が聞かれることも多くなった。
第三の教育改革と言われるほどの変革期を迎えて、直接学校教育に携わる私たちは、
教育改革の趣旨を積極的に受け止めるとともに、新学習指導要領への批判や不安に対 しては謙虚に耳を傾け、具体策をもってきちんと説明すべきである。
I. 総合的な学習の時間 の背景を検証し、成立の要件と方向性を探る。
新しい学習指導要領が示される度に、従来の学習指導要領は批判の対象となってき た。今回の改言丁についても同様である。
現行を批判しなければ、新しいものが提示できない事情は分かる。しかし、新学習 指導要領をよく見せるために、これまでの学習指導要領を一方的に批判したり、 総 合 のすばらしさを言うために教科の学習をないがしろにしたりすることは、現実を 歪めることであり、公正さに欠ける行為である。新しく登場するものにも不安材料や 負の要素はあるはずである。このことを論じないのは、著しくバランスを欠いており、
あまりに政治的と言わざるを得ない。
実は、このようなやり方が、戦後の学習指導を経験重視と系統重視との両極を大き く行ったり来たりさせた元凶となったと考える。これは、子供や教師にとって大変不 幸なことである。
例えば、 「生きる力」提唱の反対軸に「知識を一方的に教え込む教育」という面が ある。しかし、知識を『一方的に』教えていたという現実は、どこに存在していたの だろうか。また、いっの学習指導要領が、 「知識を一方的に教え込む教育」を主張し たのだろうか。小学校に30年勤務した私自身の経験から言って、知識を『一方的に』
教えている教師には、今まで出会ったことはない。
新しい学習指導要領の提示は、「学校説明会」と同じであってはならない。っまり、
長所ばかりが強調され、問題点は無視するようなものであってはならない。正負の要 素が示されてこそ、現実味のあるものとなる。
この学習指導要領はこの点で評価できる、しかし、この点が不十分だったから次回 はこのような学習指導要領にする、となぜ言えないのだろうか。教育の継続性とは、
これまでのものの土台に立って、成果は積み上げ、問題点は改善するという発想に立 つべきである。
‑17‑
(1)学カと評価、学習意欲の問題
新教育課程の編成にあたって、学力と評価の問題は避けて通れない問題である。と いうのは、学力と評価はもともと教育課程と不可分の問題であるし、今回の改訂では
「学力が低下するのではないか」という批判や不安が、これまで以上に大きな問題と なっているからである。
さらに、 総合 創設を目玉とする今回の改訂の背景には、『学習意欲低下』への 対策という考え方があり、 総合 の評価を考える上で議論になっているのも、 『意 欲』の評価の問題である。即ち、新教育課程に関しては、学力をどうとらえ、それを
どう評価するかという問題と、学習意欲の問題が密接に絡み合っているのである。
この種の議論は、実は、戦後の教育界で繰り返されてきた問題でもある。即ち、学 習指導理論における経験重視と系統重視の相克が、今再燃しているのである。
この論点を整理すると、図1のようになると考える。
図1《学習における経験重視と系統重視及び評価》 (論点の整理)
○主体的学習の推進
○関心・意欲・態度の重視
○個性の重視
○系統的指導の重視
○知識・技能の定着
○基礎・基本の充実 ││
総合的な学習
☆過程の重視
☆見えない(測定不能)学力観
☆足跡保管・文章記述
☆個人内評価など ↓
○それぞれの良さ
○差のない評価=みんな平等
○ゴール・フリー
││
各 教 科
★知識量(結果)の重視
★見える(測定可能)学力観
★○×式チェック
★絶対・相対評価(数値化)
↓
●できる・できないの区別
●観点・基準に基づく差
●チェックによるパス・
フイードバツク
『経験重視』の立場は、学習者である子供の自主性・主体性を尊重して学習を仕組 もうとする立場である。
学習者の自主性・主体性を尊重するのだから、何を学習させるかという学習内容よ
りも学習に取り組む子供の意欲を重視することになる。また、一人一人の興味・関心
を大事にしようとするので、画一的な学習を避け、コース別学習など学習の個別化を 図ろうとする傾向もみられる。
このような学習では、学習を強制することや教師が学習にかかわることは極力抑え られることになる。
学習の評価についても、学習の結果としての知識や技能の習熟度よりも、学習の過 程でいかに意欲的に学習に取り組んだかが問われることになる。さらに、集団の中で 他と比較して学習内容の定着度はどうかというよりも、学習の前後に児童生徒自身が、
どの程度変容・向上したかといった個人内評価が重視される。つまり、『それぞれの よさ』が評価されるのである。したがって、評価で明確な差ができることはなく、「み んな平等」であるとも言える。
一方、『系統性重視』の立場は、子供にどんな力を付けるのかということから、学 習を考える。体系化された学習内容を、いかに効率よく習得させるかという点に重き を置く。っまり、各教科等の基礎的・基本的な知識・技能を体系的・系統的に学ぶこ とが重視されるのである。したがって、子供が望もうが望むまいが、学ぶべき事は、
学習者に強制的に課すことになる。
この.仁うな立場では、学習した結果、知識や技能がどれだけ身に付いたかが評価の 対象となる。それを測定するためのテストが作成され、観点に沿って「できる・でき ない」が○Xでチェックされる。
この場合、評価は、設定した目標に対してどれだけ到達したか(到達度評価)や、
学習集団の中で習熟の程度はどこに位置付くか(相対評価)といった、主に二通りの 方法で行われる。習熟のレベルが低ければ、フィードバックして学習することが必要
となることもある。
後者の教育方法が、子供の学習意欲を減退させたとして学習指導要領が改訂された わけであるが、それを図示すると、図2のようになる。
‑19‑
図2《評価と子供の学習意欲》
詰め込み教育
↑
知識偏重
↓