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新潟リハビリテーション大学 医療学部 リハビリテーション学科

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Academic year: 2021

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新潟リハビリテーション大学は2010年の医療学部開 設(言語聴覚学専攻・理学療法学専攻)後,2013年の 作業療法学専攻設置を経て,2016年 4 月,リハビリ テーション心理学専攻を開設した.

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を養成するた めのリハビリテーション単科大学において,心理学に 関する専攻が併設されることはどのような印象であろ うか.一見すると不自然さはないようにも感じるが,

必ずしも一般的とはいえないところがある.なぜ一般 的ではないのか.このことを考えながら,リハビリ テーション心理学専攻が設置された意義や今後の課題 を俯瞰したい.

心理学のおかれた位置

心理学という学問領域は主に人間の心と行動の関係 性(法則)を求める学問であり,そのためには科学 的・実証的な方法が用いられることが基本となってい る.その意味において心理学は自然科学(理系領域)

の仲間だと考える立場があり,量的研究としての色合 いが強い.その一方で,心理学の起源が哲学に求めら れることを象徴としながら,人文科学(文系領域)の 仲間であると考える場合もあり,質的研究手法も重要 である.

ところで,心理学の印象形成についてより影響力が 強いと思われる意識として,「人間の心と行動の関係」

というテーマにおける「行動」という現象の捉え方が あるかもしれない.つまり,「行動」とは広い意味合 いをもつ現象だが,通常は「遊ぶ・働く・観る・聴 く・話す・感じる・考える」などといった,中立的と いうか,さほど強い意味合いをもたない現象を指すこ とが多い.けれども,心理学に興味関心をもつ高校生 や社会人に心理学が扱う行動のイメージを聞いてみる と,大枠において「悩む,(心を)病む,(よくない)

性格で困る,人間関係がうまくゆかない,(行動が)

困った人々」など,ネガティブな結果と関連する現象 としての行動を指していることが多い.

Corresponding author:

新潟リハビリテーション大学 医療学部 リハビリテーション学科

〒958-0053 新潟県村上市上の山 2 -16 Tel:0254-56-8292

Fax:0254-56-8291 E-mail:[email protected]

カレントトピックス

「リハビリテーション心理学専攻」設置の意義と課題

Signification and agenda, of establishment of a rehabilitation psychology major

若 松 直 樹

新潟リハビリテーション大学 医療学部 リハビリテーション学科 リハビリテーション心理学専攻(専攻長・准教授)

〔受付:平成28(2016)年 7 月28日〕

〔受理:平成28(2016)年 9 月 7 日〕

キーワード:リハビリテーション心理学専攻,心理学,公認心理師

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若松直樹

言い換えれば,心理学が一般的な,中立的な行動を 取扱っているというイメージはそもそもなく,むしろ 積極的に特殊な(異常な)行動を取り扱う学問である と感じているかのようでもある.そして,そこには巡 り巡って自分の性格をよくするとか,人間関係を円滑 にして得をするためのものといった本音も見え隠れし ているようである.

このようなイメージの延長には「悩んでいる人,心 を病んでいる人,困っている人」を助けたいという動 機も生じる.そして,そのための援助技法としてのカ ウンセリングや心理検査などに焦点が集まり,結果,

心理学は心の悩みや人間関係を改善させるための学問 であるという認識が定着しているようにみえる.

このような認識も理解も決してすべて誤りではない ものの,心理学の一側面をみているに過ぎない.そし て,こうした認識からは心理学が理系の自然科学であ るという気分は生まれにくい.どちらかといえば質的 でデリケートな事柄を扱うものであり,言葉や感性,

他者との関係性,内面の葛藤などを取り扱う,まさに 文系的視点の学問として認知されているのではないだ ろうか.さらには,現在のところ心理学系の多くは大 学における文学部に籍をおくことが多い.加えて,そ うした大学(文学部)を目指す受験科目は国語・英 語・社会が中心となりやすく,これも心理学が文系領 域とされる所以であろう.

ただし,実際のところでは心理学が自然科学か人文 科学かについて研究者自身はさほど強い意識はないは ずである.そのどちらにも関与していると考える立場 も,どちらでもよいと考える場合も少なくないような 気がする.結局,心理学という領域の位置づけは,そ の内部からではなく外からの見え方であるといえるだ ろう.

リハビリテーション学科における心理学

ところで,我々リハビリテーション心理学専攻が籍 をおくリハビリテーション学科が理系領域に属するこ とは間違いない.リハビリテーションは医療の一部で あり,その使命はリハビリテーション・スタッフ(医 療人)の育成にほかならない.我々は医療学部リハビ リテーション学科に属している以上,リハビリテー ション心理学専攻は理系領域に存在することになる.

先に述べたとおり,大学教育における心理学は文系で あることがほとんどである.その意味では,我々リハ ビリテーション心理学専攻は,木に竹を接ぐような挑 戦であることも事実なのかもしれない.

とはいえ,リハビリテーションを含む保健・医療者 教育において心理学は無関係ではない.教養としても それぞれの専門を支える基礎としても心理学の知見は 必須であり,「心理学概論」といった科目は養成カリ キュラムにも通常含まれている.

そもそも,リハビリテーションの対象は疾病の回復 や残存する機能をとおして生活上の障害に立ち向かお うとしている人々である.こうした人々にとって,疾 病や障害の受容,必要への挑戦こそが行動である.そ の行動を内面から支える心理的過程の支援こそリハビ リテーションの端緒であろう.また,リハビリテーショ ンには「魂の尊厳の回復」という意味が含まれている.

人間の「からだ」と「こころ」を支える働きかけなく して,リハビリテーションとはいえないはずである.

こうした背景からみても,リハビリテーション領域 において心理学の知見が積極的に介入することはすぐ れて自然なことであり,スクール・モットーである

「人の心の杖であれ」は,我々リハビリテーション心 理学専攻誕生の予見でもあったのである.

「公認心理師」資格の誕生

リハビリテーション心理学専攻設置の準備が進むな か,心理学の世界にとって2015年 9 月16日は記憶され る日となった.この日,平成27年法律第68号として

「公認心理師法」が公布されたからである1 )

ただし,公認心理師は心理学全体にかかわる国家資 格であるというよりは,心理学による対人支援の領域 に限定された国家資格である.もちろん,その他多く の国家資格は,その資格を用いて要援護者を支援する ことを担保するものであるから,あえてこのように断 り書きをする必要はない.けれども,先に述べたとお り,心理学には大きく二つの領域がある.人間の一般 的行動の原理や法則について関心を寄せる基礎の心理 学領域にとっては,この資格がなければ研究や実践が 出来ないというものではない.基礎の心理学を理論背 景としつつ,対人支援に関心を寄せる応用の心理学領 域にとって,この資格の誕生は大きな節目となったの である.

公認心理師資格が特に大きな意味をもつのは,応用 の心理学領域に含まれる臨床心理学であろう.臨床心 理学はその名称のとおり,心理学を臨床的に用いる実 践であり,主たる対象は心の課題や病を有する人々で ある.対人支援の心理学領域としては代表的であり,

心の課題の対人支援を遂行するための国家資格も永年 求めてきた.その歴史は30年とも50年とも言われる

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が,それを概括する力も筆者には乏しいため多くを割 愛する.

ただし,1988年,対人支援の心理学としての資格と して「臨床心理士」制度(日本臨床心理士資格認定協 会による民間資格)が生まれ,2016年現在,約31,000 人の臨床心理士が存在していることは,今回の公認心 理師資格の誕生に大きな歴史的関わりがあることとし て無視できないだろう.

巨視的には臨床心理士資格が国家資格として認めら れることが理想ではあったが,先発する民間資格が 追って国家資格化されることは無理であった.結果と しては資格の名称を公認心理師としながら,臨床心理 士が約30年にわたって培ってきた実績を国家資格へと 結びつけた形である.けれども,心理学による対人支 援を国家資格化するにあたっては多くの議論があり,

今でも慎重な検討が続いている.

我々リハビリテーション心理学専攻設置との関連を 意識しながら論点のひとつを取り上げるならば,対人 支援の心理学(公認心理師)と医学の関わり方である.

具体的には医師と公認心理師の関係性であり,他の国 家資格とは異なるといっても過言ではないほどの議論 が続いた.

今年度(2016)報告された一般社団法人日本臨床心 理士会による『第 7 回「臨床心理士の動向調査」報告 書』2 )によれば,現在,臨床心理士が活動する領域 としては保健・医療領域(41.9%),教育領域(36.0%),

大学・研究所領域(25.3%),福祉領域(18.7%)が上 位から順に比率を占めている.この比率は2012年の第 6 回動向調査とも大きな違いを認めないとされる.つ まり,概括すると臨床心理士は保健・医療領域に 4 割,その他領域に 6 割が関与しているとみることがで きるだろう.それは, 6 割の臨床心理士にとって医師 は業務上直接の関わりがないことを示している.

その一方で,公認心理師法第42条 2 は,「公認心理 師はその業務を行うに当たって心理に関する支援を要 する者に当該支援に係る主治の医師があるときは,そ の指示を受けなければならない」と定めた.主治の医 師(主治医)の指示.この明文化が国家資格化を促進 させなかった大きな理由のひとつである.保健医療領 域で活動する臨床心理士にとっては,主治医の指示の 存在は自然なことでもあった.けれども,約 6 割を占 める非保健・医療領域の臨床心理士にとっては,これ までの自らの心理臨床実践へ影響を与えかねない重大 な条件であるとして,国家資格制定後もこの条文の慎 重な運用が強調されている.

そうした中にあって,リハビリテーション心理学専 攻は,必ずしも心理学を用いた対人支援の領域に特化 した専攻ではないものの,少なくとも,他専攻(言語 聴覚士・理学療法士・作業療法士)と同様にチーム医 療の一員となることを目的のひとつとしている.その 意味で公認心理師資格の誕生は,リハビリテーション 心理学専攻にとって目指す目標の誕生でもある.我々 だけではなく,心の支援を職業として人生を歩んでゆ こうとする若者にとって,大きな後ろ盾になるはずで ある.保健・医療をはじめ,教育,福祉,産業,司法

・ 法務 ・ 警察などさまざまな領域で心の支援は必須で ある.乳幼児から高齢者,ジェンダーや社会的役割な どすべての要素をめぐって,心の課題が存在しないこ とはない.

そして大切な視点であると考えているが,心の課題 はすべての人間にとって自らの課題でもあり,身近な 他者の課題でもある.そうした心の課題は,それを一 部の専門家にのみ任せていればよいのだろうか.ま た,心の課題は課題を抱える個人のみが変化する対象 ではないだろう.心の課題を抱える個人に関与する他 の人々が変化したり,ものの見方を変えたりすること も解決につながるはずである.心は自分自身のみでは なく他者との関係性のなかにあってそれが社会を創 り,その社会が我々の心へ影響を及ぼしているはずで ある.

リハビリテーション心理学専攻は,こうした多様で 複眼的であるべき心の支援をつねに模索する第一人者 を育ててゆきたい.

リハビリテーション心理学専攻の特色と展望

この専攻では医療人としての心の支援を重視する立 場から,医学に関する基礎教育に力を入れている.心理 学が理系であれ文系であれ,チーム医療に関わる以上,

チームの共通言語である医学的知識は必須であろう.

これを担保するために基礎医学としての「解剖学」,

「生理学」,「医学概論」をはじめとして,臨床医学と しての「内科学」,「小児科学」,「リハビリテーション 医学」などの学びがある.もちろん,これらを苦手に 感じる学生もいるだろう.けれども,これら基礎的な 知識を身につけることが可能な心理学系の大学はほと んどないはずである.絶好の機会としてぜひ挑戦して 欲しいものばかりであり,楽しみな科目ばかりのはず である.

そして,肝心の心理学については基礎から応用まで の心理学領域を網羅させている.心を考える学びを窓

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若松直樹

口としながら社会を捉え,対人支援を考え,自らを振 り返る機会としての 4 年間になるだろう.再三述べて いるように心理学という名称は,冠としての名称であ る.心理学をひとつの建物とすれば,そこには多くの 心理学の小部屋(専門性)がある.専攻教員それぞれ は自らの専門性を背景に,社会へ働きかける心理学の 実践を積み重ねている.

「リハビリテーション心理学」にはまず,心身のリ ハビリテーション(理学療法・作業療法・言語聴覚療 法など)をより促進するために心の支援をする役割が あるだろう.心身に疾病や障害を負った人々が心理・

精神面にも危機を抱えていることは想像に難くない.

そうした心理・精神面の支援を提供するリハビリテー ション・チームの一員としての役割である.そして次 に,心理学がリハビリテーションそのものとなる心理 学的技法の提供という役割があるだろう.すでに臨床 心理学などの技法によって人々のメンタル・ヘルスを 支え促進する実践が積み重ねられており,リハビリ テーション心理学専攻もその一翼を担うことになるだ ろう.

より積極的な心理学的リハビリテーションとして,

音楽や創作といった芸術の利用や,コスメティックの 活用,動物の介在などを用いる従来の心理面接とは若 干介入技法を異にするサイコセラピーの学びもリハビ リテーション心理学専攻の特徴となるであろう.

そのほか,心理学技法の産業領域での活用として,

働く人々のメンタル・ヘルスを支援する「産業カウン セラー」資格について,資格取得がしやすい仕組みを 用意している.この資格の認定団体である一般社団法 人日本産業カウンセラー協会とは学修上の連携契約を 締結し,一定の条件のもとで在学中から資格試験を受 験できる体制となっている.

なお,リハビリテーション心理学専攻を卒業するこ とは基礎的な心理学を修得したことであり,公益社団 法人日本心理学会が認定する「認定心理士」資格を取 得できる.

繰り返しになるが,心理学の学びは他者・社会への 働きかけであると同時に,自らへの働きかけの機会で もある.こうした自らの振り返りの機会としてリハビ リテーション心理学専攻を活用してもらうために,

我々は積極的なシニア社会人(概ね50歳以上)の学びを 受け入れている.社会・家庭人としての実績をまとめ るきっかけとして大学を利用していただきたい.リハ ビリテーション心理学専攻で学ぶということは,先述 の通り基礎的な医学の学びも含まれるほか体育学や外

国語などの学びも求められ,それなりのハードルとな ることも事実である.その点について,シニア学生に 対しては長期履修制度をはじめ,いくつかの科目につ いて合理的配慮制度を準備しており,学びの受け入れ には最大限の対応をしていることも強調しておきたい.

リハビリテーション心理学専攻の課題

この専攻は定員を15名とする,家族的で小さな学び 舎である.それぞれが自らの将来をイメージし,その 達成には何が必要で何をしなければならないのか,学 生と教員は家族のように語り合ってゆかなければなら ないだろう.

公認心理師制度の成立が学生・教員にとって大きな 励みとなることは間違いない.けれども15名全員がこ の道を歩むとは限らない.心理学の学びを経て,企業 ほかへ進路を決める学生もいるだろう.新潟リハビリ テーション大学自体が医療人の養成を主目的とするた め,いわゆる “ 企業就活 ” といったキャリア支援の経 験は浅い.そのため,入学当初から卒業後のイメージ を明確にし,いつもひとつ先をイメージする指導・教 育を強化しなければならないだろう.

公認心理師制度にしても,この資格の受験要件は大 学院での心理学教育を標準としている.学部を卒業す るだけではなく大学院への進学が必要であり,より高 度な指導も求められる.大学では,こうした情勢も踏 まえ,現在の新潟リハビリテーション大学大学院に心 理学に関するコースを新設する予定である(心の健康 科学コース)

専攻教員はこれらすべての準備をはじめ,学び舎の 学生一人ひとりの人生に大きく関わりながら,若者か らシニアまで多くの人々に心理学を経験してもらいた いと願っている.

学びは自らのためであるが,いつの時代,どんな場 面でも課題となる心をめぐる人間の営みは,他者との 関係から生じるテーマばかりである.「人の心の杖」

となることを通して自らのあり方を吟味してゆく人材 を求め,育ててゆくことこそがリハビリテーション心 理学専攻の使命にほかならない.

参考文献

1 )公認心理師法関連情報:厚生労働省,

    h t t p : / / w w w . m h l w . g o . j p / s t f / s e i s a k u n i t s u i t e / bunya/0000116049.html(閲覧日:2016年 7 月10日)

2 )一般社団法人日本臨床心理士会:第 7 回「臨床心理士の動

向調査」報告書,7,2016.

参照

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