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黒島における観光の現状

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1.はじめに

沖縄県は50以上の離島を持つ島嶼県で、島はそれぞれ特有の歴史や文化を持ち、行く先々で 違う印象を受ける。プロジェクト研究「先島諸島における観光と環境に関する総合調査研究」

の調査で初めて八重山圏域へ訪れ、予備調査等により 人口よりも牛の飼養頭数の多い島 黒 島の入域観光客数の増加に注目し、アンケート調査を行った。

本報告は、沖縄国際大学総合研究機構沖縄経済環境研究所プロジェクト研究の一環として調 査した黒島の観光に関するアンケートをまとめたものである。

2.調査の背景

1)沖縄県における観光の現状

「沖縄県観光振興基本計画」[1]は①多様なニーズに対応した国際的水準のリゾート開発、

②経済の自立化に向けた戦略的産業としてのリゾート産業の育成、③自然環境・地域社会と調 和した秩序あるリゾート開発を意義として、第3次計画の最終年度となる平成23年度には目標 入域観光客数を650万人と設定している。また、「ビジットおきなわ計画」[2][3]は仲井眞 県政のもと平成19年度から始まった単年度ごとの具体的な誘客行動計画であるが、平成23年 3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による災害の影響を懸念し、平成23年度の目標入 域観光客数を600万人に下方修正している。しかしながら、沖縄県は「ビジットおきなわ計画」

策定時の「10年後の1,000万人」の入域観光客数を目標に、世界金融危機以前の平成20年まで は順調に入域観光客数及び観光収入の増加がみられた。

図表1は沖縄県の観光収入、入域観光客数及び観光客一人当たりの県内消費額を示したもの である。世界金融危機による世界同時不況の影響からか平成21年には8年ぶりに前年比を10 ポイントも下回る大幅な下落となったものの、「沖縄県観光振興基本計画」が策定された平成 13年から20年までは入域観光客数、観光収入ともに毎年順調に増加しているように見える。

しかし観光客一人当たりの県内消費額(折れ線グラフ)を見てみると平成13年に急激に下降し、

平成14年からは下がったままほぼ横ばい状態となる。その後、入域観光客数及び観光収入も低 下した平成21年には一人当たりの県内消費額が昭和52年以来初めて7万円を下回ってしまう 結果となった。震災の影響を考えると平成23年度も同様な水準ではないかと考える。

Vol.2 March 2012, pp. 17−30

黒島における観光の現状

−アンケート調査報告−

喜舎場 梢

(2)

また、沖縄県観光企画課では観光統計実態調査をもとに、観光客による経済効果がどのくら いあるのか『沖縄県における観光消費の経済波及効果』[4]で公表している。その中で 光客の滞在日数が1日延びた場合 のシミュレーションをして波及効果を算出おり、平成21年 度を基準にした場合、観光消費額で1千億円余、経済波及効果で2億円余、雇用効果は約2 万6千人の増加が見込めるとしている。

しかしながら、図表2の平均滞在日数から判るように、ここ10数年は3.7日前後を推移し、

ほとんど変化が見られない。また、平均滞在日数は変化が無いが、観光客一人当たりの県内消 費額は減少している。観光収入だけで考えると、一人当たりの県内消費額が下がっても総収入 は上がっているのだから喜ばしいことのように思えるが、環境の側面から見てみるとどうなる 図表 1)沖縄県の観光収入・入域観光客数・観光客一人当たりの県内消費額(暦年)

(資料出所)沖縄県(2011)『観光要覧』より作成

(資料出所)沖縄県(2006・2011)『観光要覧』より作成 図表 2)平均滞在日数

(3)

だろうか。人が増えると比例して増加するモノとして ごみまたは廃棄物 というような環境 負荷の要因が考えられる。また、自然環境に対しても踏み入れる人の数に比例して環境負荷は 増加する場合がある。沖縄観光と言えば真っ先に思いつくのは青い海・青い空だろう。豊かな 自然が大きな魅力である。入域観光客数が増え、環境負荷が増えると、環境保全への対策費用 を増やさないといけない。しかし、一人当たりの県内消費額が減ったことにより、環境保全の ための費用が減ってしまっては豊かな環境が損なわれることになるのではないか。豊かな環境 の保全と観光振興の両立が我が沖縄県の永遠のテーマであると考える。

2)八重山圏域の入域観光客数

石垣市・竹富町及び与那国町は八重山圏域において観光リゾート産業を重要なリーディング 産業として位置づけ、観光の動態および八重山圏域に及ぼす経済効果について調査[5]を行 うなど、力を入れている。平成11年からの統計資料をもとに八重山地域の観光について見てみ る。

図表3は沖縄県および竹富町の入域観光客数の推移についてグラフ化したものである。平成 11年を基準とし、各年とも平成11年の入域観光客数で除した。

沖縄県のなだらかな曲線に比べ、竹富町の入域観光客数は飛躍的に伸びているのが一目瞭然 である。平成20年にはどちらも最大値となるが、沖縄県で1.3倍に対して竹富町では2倍にな っている。

次に竹富町を島別に見てみる。図表3と同様に基準年の入域観光客数で除したものをグラフ 化しているが、加屋真島では平成11年まで未調査のため、図表4では平成12年を基準値とし た。また、このグラフには参考値として沖縄県も記載している。

図表 3)沖縄県および竹富町入域観光客推移の比較(暦年)

(資料出所)沖縄県(2011)『観光要覧』、竹富町HP統計情報より作成

(4)

(1)のグラフを見てみると、鳩間島が圧倒的に突出している。最高値の平成20年では18倍強 の増加がみられる。これは平成17年に鳩間島を舞台に描かれたドラマの影響から観光客が増え、

船便の充実やインフラ、観光プランの整備により更なる集客へと繋がった結果と考えられる。

ここで注目するのは(2)のグラフである。これは、(1)のグラフの底辺部分で、数値に して4.0までの範囲を拡大表示したものである。沖縄県の少し上で同じような線形を描いている のが竹富である。その他の島もほとんどは最高値でも2倍に満たないが、小浜と黒島は最高値 で平成12年の3倍を超える入域観光客数の増加が確認できる。小浜については、平成13年か らシリーズ化されたテレビドラマの影響を受けて増加したのではないかと考えられる。

黒島について考えてみると、平成21年から放送されたNHKの連続テレビドラマに一度取り 上げられた事がある、その時期には世界同時不況の影響の為か入域観光客数も減少している時 期となる。平成21年以前に、鳩間や小浜のように入域観光客数に影響する様なメディアでの年 間を通しての特異な宣伝効果があったとは考えられず、調査対象とする事とした。

図表 4)竹富町島別入域観光客数推移の比較

(資料出所)沖縄県(2011)『観光要覧』、竹富町HP統計情報より作成

(5)

3.黒島の概要

沖縄県八重山郡竹富町に属する黒島は、周囲12.6

d

、面積10.02

h

[6]で、標高は最高で も15

c

[7]の隆起珊瑚礁による平坦で小さな島である。人口は平成22年12月で215人。昭 和50年代後半から大きな変化はない。それに比べ肉用牛の飼養頭数は3,093頭おり、「牛の島」

として有名である。また、牧場面積は約7.8

h

もあり、集落を除くほとんどの土地が牧場とな っている。

図表5は黒島における産業別純生産額と就業者数の割合を示したグラフである。平成17年の 国勢調査をベースとしたため、純生産額も平成17年度の実数から算出した。純生産額を見てみ ると第1次産業は17.4%、第2次産業は12.3%、第3次産業は70.3%となり、第3次産業が占 める割合が圧倒的に多くなる。次に就業者数を見てみると第3次産業は57.3%、第2次産業は 2.7%と割合が少なくなり、第1次産業は40.0%と割合が多くなる。大分類で就業者数を見て みると、農業が一番多く43人おり、全体の39.1%を占める。続いて飲食店・宿泊業が25人で 22.7%となる。黒島の産業を見る限り、第3次産業に比べ第1次産業の生産力の低さがわかる グラフとなった。今後、黒島の経済を支える産業としては第3次産業がカギとなると考えられ る。

観光に関して見てみると、島の周囲は国内最大規模の珊瑚礁 石西礁湖 に囲まれ、スノー ケリングのポイントとなっている。観光施設は島の自然や歴史・文化についての展示と解説を 受けられる 黒島ビジターセンター がある。また、海洋生物の研究施設でNPO法人日本ウ ミガメ協議会付属の 黒島研究所 では、黒島や近海に生息する動植物の標本などの展示や研 究員が島内を丸ごと解説してくれる「黒島巡検」の開催など、観光客にも人気のスポットであ る。日本の道100選に選ばれている 東筋集落道 や平成17年に登録有形文化財となった 伊 古桟橋 など名所・旧跡なども点在する。高低差もほとんどなく観光スポットだけならレンタ サイクルを利用し、1日で廻ることも可能である。

図表 5)産業別純生産額および就業者数の割合

(資料出所)総務省統計局(2005)『平成17年国勢調査』(小地域統計データ)、沖縄県企画部統計課(2011)「沖縄 県市町村民所得」より作成

(6)

島の行事は島出身者がその手伝いに里帰りしたり、島特有の行事を見学する観光客が訪れた り、島外より人が訪れる機会となる。平成23年に19回目を数えた牛祭りは3,000人[8]の来 場客を動員する黒島の大きな行事となっている。

月別の入域観光客数を表したのが図表6と図表7である。図表6は 黒島 、 黒島を除く竹 富町 および 沖縄県 の平成11年から22年までの月別入域観光客数の割合13を表したもので ある。沖縄県でみると3月と8月を中心に観光客数が増える。黒島は8月が一番多く夏場がピ ークとなる。しかし、黒島を除く竹富町では3月が一番多く夏場は少なくなる。図表7は同じ 期間内を3年で区切り14、1年あたりの入域観光客数を月別に表したものである。第1・2期 ではほとんど線形が変わらなく、第3期は第1・2期と同じ様な線形で上方にずれている。第 4期においては線形の変化が見られ、2・3月の春先から夏場にかけて観光客数多くなってい る。

その他にも 伝統芸能 は黒島を表すに欠かせない。竹富町指定無形文化財[9]には黒島 口節をはじめ19演目の民謡や舞踊が登録されており、地域別にみると最多登録数となる。

また、黒島は「ハートアイランド」という愛称もあり、ハートの形の島で挙げる、島人手作 りのウエディングがちょっとした話題にもなっている。

4.黒島観光に関するアンケート調査

アンケート15は平成23年2月26日から3月4日の1週間島内を巡りながら出会った、島民及 び観光客等へ無差別に依頼して回答してもらった。第19回の牛まつりは2月27日であった。先 述したように黒島の観光シーズンは夏場である。しかし、平成23年牛まつりの来場者数3000 人[8]のところ、竹富町の同月の入域観光客数は3,139人[10]となっている。このように 2月27日の牛まつりをの日を挟むことによって、観光客が来島するピーク時と冬場の観光客が 少ない時期の意見が、短い期間で得られる機会であることから調査の日程を設定した。本章で は、アンケート集計から見える属性別の傾向について報告する。

図表 6)月別入域観光客数の変化(割合)

(資料出所)沖縄県HP文化観光スポーツ部観光 政策課統計情報10、竹富町HP統計情報11より作成

図表 7)黒島月別入域観光客数の変化(人数)

(資料出所)竹富町HP統計情報12より

(7)

回答者数212人の内、有効回答者数16 197人となった。有効回答者の属性か ら回答者数を見てみると、男性100人、

女性97人。また観光客は100人、黒島 在住者70人、その他27人となった。そ の他は業務・出張・調査など、仕事で の来島者がほとんどを占める。

回答者の年齢別の割合を見てみると 図表8のようになる。今回は観光がテ ーマであったため、自らの意思で行動で きる10代以上にアンケートを依頼した。

観光客は20代・30代が多く、約60%を占める。平成17年度の国勢調査から黒島の年齢別人口 の割合を見てみると、10代未満が9%、10代7%、20・30・40・50代はそれぞれ13%、60 代が9%で70代以上が23%となる。しかし今回の調査では、黒島在住の10代からアンケート の回答が得られなかった。その他の年代はそれほど偏ることもなく、各年齢層の方から回答を 得られたので黒島在住者の全体的な意見が反映出来ていると思うが、これから島を担う若者の 意見の反映が若干弱い点は否めない。

1)観光客の特性

観光客の帰属を見てみると、黒島以外の竹富町から来島した人が8%、石垣市から51%、石 垣市・竹富町以外の沖縄県から2%、沖縄県外から39%となっている。次に、黒島へ訪れる観 光客について年代別に特性を見てみる。全体でみるとグループ構成では 友人・知人と が一 番多く40%を占め、続いて 同伴者無し が24%、 ご家族・ご親戚と は19%となる。しか し、30から40代だけは 同伴者無し が38%と圧倒的に多くなっている。

次に訪問目的を全体で見てみると イベント・祭りへの参加 が一番多く44%となる。次に 多いのが のんびり休養 で25%となる。牛まつり当日の回答者が41%を占めており、夏場 の調査では全く違う割合になることが考えられるため、冬場の参考値と考えていただきたい。

訪問回数は はじめて が54%と半数以上を占めるが、60代までは年代を増すごとに2回 目、3回目とリピーターの数が増えている事がわかる。50から60代では はじめて よりリ ピーターの割合が多く、約70%の人が2回以上訪れている結果となった。

図表12の認識媒体とは、黒島を知ったきっかけを聞いたものである。若い世代ほど 友人・

知人からの情報 と口コミでの影響が大きい。 その他 では牛まつりをきっかけとした人や 黒島出身者と答えた人が多かった。

図表 8)回答者年齢別割合

(資料出所)調査票より作成

10代  20代  30代  40代  50代  60代  70代以上 

(8)

図表 13)一人当たり黒島以外の訪問地域数

図表 14)項目別一人当たりの支出額

(資料出所)調査票より作成 図表 9)グループ構成 図表 10)訪問目的

図表 11)訪問回数 図表 12)認識媒体

70代以上

50-60代

30-40代

10-20代

70代以上

50-60代

30-40代

10-20代 70代以上

50-60代

30-40代

10-20代 70代以上

50-60代

30-40代

10-20代

0% 20% 40% 60% 80% 100%

0% 20% 40% 60% 80% 100% 0% 20% 40% 60% 80% 100%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

(9)

今回の旅行で観光した他の地域について聞いてみると、黒島以外も訪問している人の割合が 54%となった。また一人当たりで見てみると図表13の通りとなり、黒島以外も観光した人は その他2.8カ所の地域を巡っている結果となった。

旅行日程では、日帰りが46%を占めた。宿泊をしている観光客だけで見てみると、一人当た り総泊数7.6日の内、黒島は0.9泊と一日に満たなかった。黒島で宿泊をした人だけを見てみる と、一人当たり総泊数6.0泊の内、黒島では1.9泊となった。

費用については、今回の旅行での一人当たりの総支出額が64,941円のところ、黒島内での支 出総額は4,073円と全体の支出の6%となった。図表14は項目別の支出額と 今回の旅行 に 占める 黒島島内 での支出額の割合を示した表である。割合が高いのは宿泊費だが、それで も全体の支出額の13%にしかならない。黒島島内での支出が少ないのは明らかである。

観光客の特性についてはもっと詳しい分析が必要であり、今回は参考値として掲載した。

2)観光資源の評価

図表15は「黒島の観光資源で何を評価しますか」との問いに、最も評価するものと次に評価 するもの二つを選択してもらった。最も評価するものを2ポイントとし、次に評価するものを 1ポイントとして合計スコアを算出し、総ポイントに占める割合を示した。ここからは、属性 と男女別の傾向について見てみる。

黒島在住者では 温暖な気候 を評価する人がおらず、0ポイントであった。男性に比べ女 性では 自然環境 の割合が少なく、 ゆっくりとした時間 の割合が多くなっている。また、

その他の意見では黒島研究所を上げる声が半数を占めた。全体でみると、同じような割合の 自然環境 、 ゆっくりとした時間 、 地場産業(牛)、 伝統文化 の4項目で87%を占めた。

図表 15)属性・男女別観光資源の評価

(資料出所)調査票より作成

(10)

観光客では、男性は 自然環境 ゆっくりとした時間 がほぼ同スコアになっており、

その2項目で60%を超える。女性は自然環境が圧倒的に多く、次いで 地場産業(牛) と ゆっくりとした時間 が同程度の割合となり、3項目で84%を占めた。その他では牛まつり と特記する人が多かった。今回の調査において観光客は 地場産業(牛) を評価する割合が 高くなっている事が考えられる。

仕事で来島した人を主とするその他では、圧倒的に 自然環境 を評価する割合が多くなっ た。次いで 伝統文化 、 島民 が多くなっている。その他の人々は昔ながらの黒島特有のも のを評価している事がわかる。

観光客では 温暖な気候 に対する評価は少なく、その他の人々でも評価する人はいない。

回答者の年齢別の割合からみても20・30代が多く、年代を増すごとにその割合は少なくなっ ている。 温暖な気候 を求めて冬場に沖縄を訪れる年齢層の観光客が、黒島に来島する機会 が現在は少ないのではないかと推測される。しかし、竹富町の入域観光客数が冬場に多い事を 考えると、その客を取り込むような 温暖な気候 を活かした観光産業の可能性はあるだろう。

3)観光産業に関連した整備の必要性

図表16は黒島の観光産業に関連して整備が必要だと思うもの全てを回答してもらい、その割 合を示したものである。

黒島在住者では お土産 が全体で24%と若干多くなっている。次いで 環境保全のルール 、 観光施設・観光プランの整備 、 島内交通 、 情報発信のツール が10%を超えている。男 女別でみた場合、 環境保全のルール に対する票が女性で多くなっている。観光資源の評価で は 自然環境 の評価が少ない事から、環境破壊または汚染されていると女性目線で感じる場 所があるのかもしれない。この点については調査不足である。 これ以上必要ない は全体で7%、

宿泊施設 も3%と少なくなっている。その他は「道の整備」や「ゴミ」に関するものが多 く、観光産業に関連しつつも生活に密接した項目が挙がった。また、「仲本海岸の安全対策」に ついての票もあった。仲本海岸では平成16年から22年で11件の海浜事故が発生し、うち5人 が死亡[11]しており、平成23年3月3日には黒島公民館と黒島観光組合で竹富町長へ監視員 の配置など仲本海岸の安全対策について要請[12]している。

観光客では これ以上必要ない が多く、 観光施設・観光プランの整備 島内交通 が次 ぐ。 宿泊施設 以外は10%を超える結果となった。整備されていない不便さを魅力に感じる 人がいる半面、整備された便利さを観光に求める人も来島しているのがわかる。牛まつりの影 響でレンタサイクルが全て貸出中で困ったとの声を聞いたり、その他では「トイレ」の整備を 望む声が多かったり、一度に大勢の観光客が来島している為に、不便さがより強調されてしま った結果でもあろう。観光客で以外に少なかったのが お土産 である。牛まつりではアーサ や牛肉などの食品から青年会製作のTシャツなど、普段よりはお土産が豊富である事も影響す るとは思うが、最初から求めていない結果である可能性もある。

(11)

その他の人々では 島内交通 の整備が多くなる。公共交通がある訳でもなく、レンタカー 事業所は1つあるが、車両は3台しか保有していない[13]。やはり、基本的には自転車での 移動となるのか、仕事での来島だと不便だと感じるのだろう。次に多いのが 環境保全のルー ル となる。黒島在住者同様に特に女性で多い票数を獲得している。女性の方が環境に対する 意識が高いのだろうか。

5.最後に

黒島は日本復帰後に海底送水が実現したのをきっかけに畜産業が盛んになったと聞く。育て られている牛は各地のブランド牛などになる子牛がほとんどである。ある程度大きくなるとセ リに出され、肥育農家へ販売される。以前、和牛が高騰し黒島でもUターンやIターンで畜産 農家が増えたと聞いた事があった。調査をする前まで、私のイメージでは子牛の値段で一喜一 憂する島が黒島であった。調べてみると意外に第3次産業の従事者が増えている。平成11年に 当時の黒島公民館長は「将来は観光牧場もやりたい。」と話しており[14]、竹富町の観光計画 の経緯を見ても、平成5年には 牛にまつわる味処の創設 、平成13年には 牛の博物館の整 が挙がっている。しかし、平成19年から5カ年計画の「竹富町観光振興基本計画」[15]

でも未着手事業として 「(仮称)モーモーレストラン」事業や体験プログラム開発事業(畜産 業体験等) が列挙してある。

地場産業の畜産業と観光産業を充実したものにしていくのが、黒島にとって20年来の課題と なっている。しかし、今回のアンケートからも見てとれるように、黒島島内での消費はとても 図表 16)属性・男女別観光関連の整備要望

(資料出所)調査票より作成

(12)

少ない。

また、黒島に訪れる観光客の特徴は比較的行動力のある20〜40代でひとりでの旅行者が結 構な割合を占める事がわかった。訪問目的は イベント・祭りへの参加 が今回は多かったが、

本質は次点の のんびり休養 にある様に思う。今回の調査期間中もこの不況にあおられて出 来た仕事の合間の息抜きに訪れた30〜40代男性一人旅の二人と出会った。しかし、夏場の観 光客はおそらく海水浴やスノーケリングが目的になるのではないかと思う。前章の観光産業に 関連した整備の必要性では、黒島在住者の意見が分かれている。これは観光産業の振興につい てソフト面でもハード面でもまんべんなく行って欲しいという島民の意見であるように見受け られる。宿泊施設は近年増えているという話を調査の過程で伺ったので、その点だけはもう十 分にあるとの認識があるのであろう。観光客は このままの黒島であって欲しい と わかり やすく便利な観光ができるように整備して欲しい と言う様な二つの考えが存在することがわ かる。

産業振興について考えながらも、あまり大きな変化がなかったのが黒島の魅力でもある印象 を受けた。牛まつりは、畜産業および観光産業を盛り上げる一番の振興事業となったが、牛ま つりに続く産業振興がまだ見えない状況である。黒島においては夏場と冬場で全く違う観光客 層が考えられるため、振興策も多岐に渡り考えられる。現在の観光客層をターゲットにするの か、新たな層を獲得するように振興策を考えるのかでも違う。いずれにしても単純に、島内で の消費ができる地産地消型の振興でなければ意味が無い。しかしながら、観光客が黒島に求め るものと黒島島民が求める振興については若干のずれがある様に思う。集客の観点からは「黒 島の魅力」について、生活の観点からは「黒島島民の幸せ」について、両者の意見を集約し振 興事業を展開したなら持続可能な発展ができるのではないかと思う。

牛まつりに続く振興事業としては、「竹富町観光振興基本計画」で挙がった未着手事業の3 つが最善だと考える。第1に「モーモーレストラン」事業については、まず肥育農家の育成、次 に屠殺場とレストランの整備と進め、その過程で黒島牛ブランドを確立していく。黒島産の牛 の「九州産肉牛枝肉共進会」金賞受賞[16]であったり、一流ブランドの「神戸牛」や「石垣 牛」の肥育農家への仔牛販売[17]であったり、これまでの実績を情報発信することで「黒島牛」

のブランド化はし易いと考える。また、黒島島内だけの販売など、希少価値を付けることでレ ストラン事業は成立すると考える。第2に畜産業体験プログラム事業について、実際にどの様 な作業がその日限りの人材で出来るのかは知り得ないが、グリーンツーリズムのような形で時 期じきに合わせた作業を体験事業とする事も出来ると考える。また、先述したように平成11年 には公民館長が「観光牧場もやりたい。」との発言があったり、黒島の畜産農家は若い世代も多 く情熱にあふれ、チャレンジ精神も旺盛であったり、他者を受け入れる許容力も持ち合わせて いる。農家が考える体験プログラムであれば、黒島オリジナルの継続できる体験事業が確立出 来るのではないだろうか。第3に地域振興NPOの設立については、竹富島が良い例ではない かと思う。竹富港のてーどぅんかりゆし館には待合室があり、総合案内所ではNPOたぃどぅ

(13)

んがお土産の販売や観光案内をしている。黒島の場合は、ただ観光客が利用するだけの施設で はなく、島民も利用できるような施設にできたら良いと思う。例えば、退役している老人が集 まるような施設があって、観光客が島民とコミュニケーションをとって黒島の案内を受ける事 ができるなど面白いかもしれない。どれも思料の範疇を超えないが、可能性の多い島であるこ とは確かである。

謝辞

現地調査にあたっては、黒島公民館長の島仲秀憲氏、黒島研究所の若月元樹氏、亀田和成氏、

民宿・パーラーあ〜ちゃんの平良正仁氏、黒島小中学校教頭であった浦崎喬氏、黒島観光組合 の又吉敬氏および黒島の多くの皆さんに多大なご協力を賜りました。色々な行事に参加させて いただき、仕事の合間にもアンケートの回答を快く引き受けていただきました。また、予備調 査では黒島出身の東條正躬氏に黒島を案内していただきました。ここに、厚く御礼申し上げま す。

≪注≫

「沖縄県における観光消費の経済波及効果」の中で観光客一人当たりの県内消費額に入域観光客数を 乗じて算出した額と定義している。

竹富町「統計情報」http://www.town.taketomi.lg.jp/town/index.php?cat_id=3(閲覧:2011.11.09)より。

前掲website竹富町「統計情報」に同じ。

平成21年12月末現在。『八重山要覧』平成22年版より。

平成20年12月末現在。『八重山要覧』平成22年版より。

総務省統計局「日本標準産業分類」http://www.stat.go.jp/index/seido/sangyo/index.htm(閲覧:2011.11.

11)より。

産業別純生産額=経済活動別市町村内純生産(平成16年度)×黒島の産業別就業者数÷竹富町の産 業別就業者数(分類不能を除く)にて算出。

総務省統計局「統計局ホームページ/調査結果の利用方法」http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/

users-g/arika.htm(閲覧:2011.11.11)より。

沖縄県企画部統計課「平成20年度 沖縄県市町村民所得」http://www.pref.okinawa.jp/toukeika/ctv/

ctv_index.html(閲覧:2011.11.11)より。

10

沖縄県文化観光スポーツ部観光政策課「沖縄県入域観光客数の推移」http://www3.pref.okinawa.jp/site/

view/contview.jsp?cateid=233&id=17154&page=1(閲覧:2011.11.09)より。

11

前掲website竹富町「統計情報」に同じ。

12

前掲website竹富町「統計情報」に同じ。

13

平成11〜22年の月別入域者数を足し、それぞれの最高人数の月で各月を除した割合。黒島・沖縄県 は8月、竹富町は3月が最大値となる。

14

第1期:平成11〜13年、第2期:平成14〜16年、第3期:平成17〜19年、第4期:平成20〜22年。

(14)

それぞれ3で除し、1年あたりの月別入域観光客数を算出した。

15

調査方法については栗山浩一・北畠能房・大島康行(2000)『世界遺産の経済学』勁草書房pp66- 70.を参考にした。調査票については竹富町(2001)『竹富町入域観光客統計調査 調査報告書』を 参考に作成した。

16

設問の3分の1以上無回答だったものを無効とした。

≪参考・引用文献及び資料≫

1.沖縄県(2002)『沖縄県観光振興基本計画』、p28.

2.沖縄県文化観光スポーツ部(2011)『ビジットおきなわ計画』沖縄県.

3.沖縄県観光商工部「平成19年度ビジットおきなわ計画の策定について」

http://www3.pref.okinawa.jp/site/view/contview.jsp?cateid=233&id=13763&page=1(閲覧:2011.11.09).

4.沖縄県観光企画課(2011)『沖縄県における観光消費の経済波及効果』、p6.

5.財団法人日本交通公社(2003)『八重山観光の動態及び波及効果等調査報告書』八重山圏域観光リゾ ート調査等連絡協議会.

6.沖縄県企画部地域・離島課「離島関係資料」

http://www3.pref.okinawa.jp/site/view/contview.jsp?cateid=39&id=14495&page=1(閲覧:2011.10.26).

7.財団法人日本離島センター(2004)『日本の島ガイドSHIMADAS』、p1283.

8.『沖縄タイムス』2011.03.01、朝刊.

9.竹富町「竹富町の文化財」

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10.竹富町「平成23年竹富町入域観光客数(月別)」

http://www.town.taketomi.lg.jp/town/index.php?content_id=37(閲覧:2011.11.18).

11.『沖縄タイムス』2011.06.01、朝刊.

12.『八重山日報』2011.03.05、日刊.

13.沖縄県八重山事務所(2011)『八重山要覧』、p39.

14.『琉球新報』1999.03.04、朝刊.

15.竹富町(2007)『竹富町観光振興基本計画』、pp11-15.

16.『沖縄タイムス』2001.03.24、朝刊.

17.いのうえちず(2008)『沖縄スタイル

magazine』Vol.24、

出版者、p180.

参照

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