図書館長(総合文化学部教授) 兼本 敏 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 図書館と歴史的文書
法学部准教授 吉次 公介 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 地域に根ざした図書館
産業情報学部教授 又吉 光邦 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 なぜ図書館司書になりたいのですか?
総合文化学部准教授(図書館司書資格課程担当) 山口 真也 ・・・・・・・ 5 図書館を利用して
法学部法律学科 4年次 梅田 裕紀子 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 図書館で充実した大学生活
総合文化学部日本文化学科 砂川 杏沙美(平成23年3月卒業) ・・・・・・・ 6 私と図書館
法学研究科 法律学専攻 2年次 伊良皆 とも子 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 私が望む、図書館のありかた
地域産業研究科 地域産業専攻 2年次 阿嘉 宗紀 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 私にとっての図書
地域文化研究科 南島文化専攻 2年次 福原 りお ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 図書紹介 「やばい経済学」
産業情報学部教授 宮森正樹 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 学科長が新入生に薦める5冊の本 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 平成22年度書評・映画評賞表彰式 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 平成22年度書評・映画評賞受賞作品
「被害者たちが出会う時 〜 The Jewbird に見る差別の構造〜」
総合文化学部 英米言語文化学科 4年次 田中 えみ子 ・・・・・・・・・・ 13
「死/性との戯れ:『ミツバチのささやき』についてのノート」
地域文化研究科 英米言語文化専攻 藤城孝輔
(平成22年9月修了) ・・・・・・・ 15 図書館利用オリエンテーション ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 2年次図書館ガイダンス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 ステップアップガイダンス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 中・高校生によるインターンシップ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 AED(自動対外式除細動器)の設置 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 BGM始めました♪ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 米軍ヘリ墜落事件関連資料の寄贈 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 初のフェア開催 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
「宜野湾・沖縄国際大学 米軍ヘリコプター墜落事件とは
〜8月13日に考える〜」開催 ・・・・・・・・・・ 19 ふたつの新しい試み 整理業務担当 兼村 ゆり香 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 図書館上映会☆開催中 運用業務担当 名幸 沙織 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 平成21年度図書館統計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 平成21年度図書館利用状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 平成22年度図書館員の研修・出張 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 平成22年度図書館活動 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27 平成22年度図書委員会の動向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 選書委員会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 人の動き(職員人事異動) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 編集後記 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30
回顧とするには大げさ過ぎるが、図書館長に就 任して1年が過ぎた。この1年間は正に「光陰矢 の如し」である。時の流れは一定のはずであるが、
その流れに立つ人間にとって急流であったり緩流 に感じたりする。就任の挨拶として学生時代の図 書館に対する思い出に「館内は時の流れが変わり、
自分だけの場所」という意味合いのことを書いた。
学生の私にとって図書館内での時の流れは緩流で あったはずが館長としては違った。この1年は急 流だったと感じる。
科学技術は日進月歩と形容されるが、その恩恵 を受ける日常生活はあらゆる分野でデジタル化、
IC化、IT化が進み、便利になるはずが、先ず 新たな電子機器の操作、利便性を理解する為にマ ニュアルを熟読したり、操作に慣れる時間を必要 とする不便さを強いられている。私の身の回りで 言えば、国外では既に当然となっているスマート フォーンの普及、走行速度と車間距離を自動的に 制御する自動車、新たな電子メディアとしてのデ ジタル書籍の閲読機器、列挙するには余りにも多 種多様である。目まぐるしい変化に思わず研究室 に籠るか、図書館に飛び込み書架の間に潜り込み 学生時代に見慣れた本を見つけホッとする日もあ る。しかし、私と同様に図書館もこの潮流に飲み 込まれ翻弄されないようにしっかりとした対応が 求められているのも確かである。
私個人この1年で学習したのは、利用者側から 見た図書館と提供者側から見た違いである。1年 前までは利用者側の経験のみで図書館を見てきた。
利用者としての図書館は大きな勉強部屋であった。
そこには専攻に必要な書籍や資料があり、娯楽や 趣味としての資料や日々の暮らしに直結した情報 を提供する新聞や週刊誌類もあった。寮生活で個 室を持たない私にとっては、自分自身の時間を満
喫できる場所であり、ノックの音に邪魔されずに レポートに集中できる場所でもあった。学生から 大学教員になっても、図書館は静寂さに包まれた 情報供給の大きな建物として存在し、学生時代と 大きな違いはなかった。利用者としては検索の効 率性と利便性への要求のみが膨らんでいた。しか し、この一年でイメージが大きく変わった。図書 館は、静寂な環境の提供、十分な情報・資料を提 供する為に日々、刻々と返却書籍の整理、配架、
予約本の確認、他館への依頼、書籍の修復、複写 等々に追われている。静寂で時間の流れのゆった りとした空間とは懸け離れている毎日である。こ れらの業務がルーティン化し遂行されていく中で、
図書館のあり方を検証し然るべき方向に変化する 準備が必要になっている。
静寂な空間と形容される図書館にも幾人かの学 生が資料を傍らに討論する空間の存在が当然と なっている。個人学習室以外にグループ学習室の 設置、AV機器を必要とする資料媒体の出現によ りVHS、DVD、PC等の機器利用スペースの 確保・・・、設備面での変化は顕著である。書籍 の利用状況も館内利用より貸出が主となってきた。
書籍は本来館内利用が原則であるが、図書館の保 管する書籍は保管用、貸出用とされている。昨今 は貸出希望が多くなり予約が増えている。また、
本と言えば文字の羅列を思い浮かべるがイラスト を多く含む漫画本に似た書籍も確実に増えている。
書籍の形態もファッション同様にサイクルがある としたら江戸時代の漫画本の再興かとも思える。
長編である『三国演義』を描いた一連の漫画本 やその一部を映像化した『レッドクリフ』など大 学図書館に必要な書籍の選定を複雑にしているの が電子書籍の出現である。電子書籍は図書館が確 実に対応しないといけない媒体に違いない。多く
回顧一年・雑感
図書館長
兼 本 敏
(総合文化学部教授)
【図書館専任職員】
2 0 1 1年4月1日付 配置換
前 職 名 現 職 名
氏 名
教務部教学課 課 長 図書課 課 長
垣 花 聡
入試センター 課 長 図書課 課長補佐
山 城 篤 雄
総務部総務課 課長補佐 図書課 課長補佐
金 城 多恵子
総務部総務課 課長補佐 図書課 課長補佐
高 石 由美子
セ ン タ ー 統 括 事 務 部 長 図書課 副 参 事
門 口 政 秀
図書課 課 長 学生部キャリア支援課課長
徳 原 峰 一
図書課 係 長 学 生 部 学 生 課 課 長 補 佐
玉代勢 尚 茂
図書課 主 任 総務部総務課 主 任
岩 橋 梢
図書課 主 任 総務部総務課 主 任
山 城 圭
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やスペースの問題がある。電子書籍は読者側の利 便性だけでなく図書館側のこの問題の解決へも寄 与するはずである。しかし、所有権や著作権など の法的対応が明確にならない限り時代の潮流に乗 り遅れることは必至だろう。図書館が時代の最先 端を追随することは大切な姿勢ではあるが、同時 に図書館が持つ博物館的機能も忘れてはいけない。
この博物館的機能が図書館の個性と価値を決定す ると私は考えている。
前館長も指摘しているが、沖縄国際大学図書館 が保持していると期待される書籍・資料に、戦後 27年もの間特殊状況下にあった沖縄に関するもの が挙げられる。これらの資料には既に研究され発 刊されたものは当然であり、当時の沖縄に関する 書籍・資料をすべて網羅していなければならない。
何が研究対象になるかを判断するのは不可能であ る。不可能ではあるから可能な限り分野の多岐に 跨り、多量な収集を積極的に実行する必要がある。
講演者の調査技量の高さには感銘を受けた。同時 に使用された資料が本大学図書館にすべて揃って いるか不安になった。採用された資料には広告チ ラシ類や看板まで参考資料となっていた。沖縄本 島だけでなく点在する島々、各地域の自治体や団 体が発行するあらゆる資料の収集が必要であると 痛感した。これらの資料の充実が沖縄国際大学図 書館の個性になると信じている。個性的な図書館 を目指していくには選書に関して受け身的ではな く海外を含む書店、特に古書店舗に積極的に出て 行く必要がある。
昨今、新しいものが話題になり注目され、古い ものが容易に破棄される傾向にある。台風や強烈 な日差し、湿度の高さなど保存にはマイナスな自 然条件、長寿神話の崩壊、地域語(方言)消滅の 危機・・・、即急に収集整備しなければ手遅れに なると危惧する。
石碑の現状(台湾)碑文は不明瞭で判読困難
図書館の第一の役割は、その名の通り、大量の
「図書」を収集、整理し、利用者の閲覧に供するこ とである。だが、図書館には、この他にも様々な 役割がある。その一つが、歴史的文書の収集・保 存・公開である。
私の専門は戦後日本外交史である。研究を遂行 するにあたっては、過去に作成されたアメリカ政 府の外交文書、日本政府の外交文書を中心として、
様々な歴史的文書を収集する。これまで、東京の 外務省外交史料館、国会議事堂に隣接する国立国 会図書館、ワシントンDC郊外にあるアメリカ国 立公文書館、ワシントンDCのアメリカ議会図書 館、ボストンのジョン・F・ケネディ大統領図書 館・博物館(John F. Kennedy Presidential Library and Museum。以下、ケネディ・ライブラリーと記す)、 ハワイ大学ハミルトン図書館をはじめとして、多 くの図書館・公文書館で資料調査を実施してきた。
ここでは、国立国会図書館とケネディ・ライブラ リーについて紹介したい。
永田町の国立国会図書館は、国内で刊行される 図書、雑誌、新聞を網羅的に収集している国内最 大の図書館である。だが、国会図書館に所蔵され ているのは、図書、雑誌、新聞だけではない。憲 政資料室には、日本の政治家、外交官、軍人など の日記、書簡やその他の諸資料が数多く保管され ており、一般に公開されているのである。代表的 な例としては、伊藤博文、岩倉具視、榎本武揚、
大久保利通、勝海舟、山県有朋ら近代日本の創成 を担った指導者たち、高橋是清、斎藤実、鈴木貫 太郎、浜口雄幸、平沼騏一郎、野村吉三郎ら二〇 世紀前半の政治家・軍人たち、芦田均、吉田茂、
石橋湛山、岸信介ら戦後の政治家などが挙げられ る。
憲政資料室には、もう一つ、重要なコレクショ ンがある。それは、日米関係にかかわるアメリカ 政府の外交文書である。憲政資料室では、日本占 領 に 関 す る 膨 大 なGHQ/SCAP文 書 が マ イ ク ロ フィッシュで閲覧することができる。また、アメ リカ国務省、国家安全保障会議、統合参謀本部の
対日政策文書、ハリー・S・トルーマン大統領図 書館所蔵史料、ドワイト・D・アイゼンハワー大 統領図書館所蔵史料の一部も、マイクロフィルム あるいはマイクロフィッシュで閲覧可能である。
わざわざアメリカに行かずとも、日本国内でかな りのアメリカ政府公文書を見ることができる。
アメリカでも、膨大な歴史的文書が数々の図書 館で保存・公開されている。ケネディ・ライブラ リーもその一つである。アメリカでは、大統領が 退任してしばらく経つと、その大統領を記念する 図書館が、出身地に建設される。そして、ホワイ ト・ハウスで作成された幾多の文書が保管・公開 されるのである。ケネディ・ライブラリーは、ケ ネ デ ィ 政 権 に か か わ っ た 多 く の 人 物 に イ ン タ ビューを行い、その記録も保存・公開している。
なお、ケネディ・ライブラリーには、博物館も併 設されており、ケネディ大統領の遺品などが展示 さている。
実は、本学図書館も、歴史的文書を収めたマイ クロフィルムやマイクロフィッシュ、あるいは歴 史的文書を忠実に復刻した図書を収集している。
本学図書館でも、現物ではないが、それに近い形 で歴史的文書に触れることができるのである。
図書館と歴史的文書
法学部准教授
吉 次 公 介
図書館で文献を調べることは、IT系の学問領域 だとかなり少ない。これは、ネット上にIT系の膨 大な知的資産があるからに外ならない。検索エン ジンと呼ばれるGoogleやYahooのテキストボック スにキーワードを設定して検索ボタンを押せば、
世界中から瞬く間に、少し長くても数秒で必要な 情報のほとんどが、索引状態で目の前の画面に検 索結果として表示される。英語、韓国語、中国語、
などなど。。。いろんな言語で書かれた情報が表示 される。しかも、それらの検索が、部屋やノート PCを外に持ち出して、ファーストフード店でも できる。図書館がネットの中にあると言うだけで なく、図書館で図書を探すような「足」と「目」
と「手」と「時間」を使うような物理的労力を求 めず、自分の生活時間の中で調べ物が出来る。そ れらは写真や動画、そして音声を含み、本で書か れているよりもわかりやすい。百科事典などは、
2011年に10周年を迎えるWiki-Pediaに勝るものは、
書籍の形で与えることは不可能であろう。
自分が沖縄で大学生をしていた20年前、外界の 情報のほとんどは紙媒体で、最新のものだと専門 の雑誌などで得ていた。大学生なので、お金もな く図書館で情報を仕入れるのが一番であった。そ の意味で、沖縄の地において大学の図書館は、ま さに外界を知る「知の集積場」であったと個人的 には考えている。さて、20年を経た今の世の中は、
なんと便利になったことか。どれだけ個人的な資 産(時間やお金)を費やさずに済むようになった ことか。インターネットの人類「知」への恩恵は 計り知れない。
では、図書館の存在意義は・・・・と疑問が出 てくる。電子ブックと称する電子書籍も、2009年 頃あたりから爆発的に市場規模が拡大してきた。
いよいよ、図書館の存在意義を考えなければなら
ないときになってきたと思う。
私的な図書館の存在意義は、「地域の情報を集 積した図書館」にあると思っている。ネット社会 の急速な拡大と共にグローバル化が進み、かつ
「方言札」によって言語文化をほぼ破壊されつつあ る沖縄にとって、沖縄に住んでいた人々の残した 証しや、住んでいる人々の発する数多の情報を沖 縄国際大学の図書館に集積していくこと、古今を 問わず一つの地域としての沖縄の情報を集積する ことは、そこに住む人々の「生活」を記録するこ とになる。それはどんなにグロオーバル化した社 会でも識別可能な「地域文化」、あるいは「地域文 化の変遷」の記録となる。2011年の現在でさえ、
100年後の2111年からみれば、「古(いにしえ)の 沖縄」である。その2011年当時の記録は、100年後 の社会の人々が見た場合、祖父母の時代の沖縄で ある。祖父母との語らいを補う100年の時空を繋 げてくれる場となれるのが図書館なのである。
沖縄国際大学付属図書館は、県内の大学の中で おそらく2番目に大きな沖縄関係の書籍を有して いる。同大学の発した沖縄関係の研究論文も多数 ある。沖縄国際大学の図書館は、沖縄に根ざした 存在意義をすでに有していると言えよう。今後ま すます電子化とグローバル化が避けられない未来 において、地域情報を集積した沖縄国際大学の図 書館の役割は大きいと思う。
「地域に根ざした図書館」
産業情報学部教授
又 吉 光 邦
なぜ図書館司書になりたいのですか?
公共図書館や学校図書館、大学図書館で働く専 門的職業を「司書」と呼んでいます。
私が1年生向けの図書館学の授業を担当してい た頃、1回目の授業の時に必ず「皆さんはなぜ司 書になりたいのですか?」という意地悪な質問を するようにしていました。司書を目指す学生に志 望理由を聞くのは当たり前のことで、特に意地悪 なことではありません。ただし、学生が語る理由 は「本が好きだから」というものが多く、他に
「図書館が好きだから」、学校図書館の司書になり たい学生の中には「子どもが好きだから」という 志望理由を語る人もいます。もちろん「読書好き」
「図書館好き」であることは大切なことですが、
「それだけでいいの?」と思う私は、「本が好きな ら本を読めばいいよね?」「図書館が好きなら、毎 週、図書館に行けばいいよね?」「子どもが好きな ら幼稚園の先生ではダメなの?」といった言葉を 返します。何を言いたいのかというと、例えば、
医学部や看護学部の学生に志望理由を聞いた場合 に、まさか「病院が好き」とか「患者が好き」と いった回答は出てこないと思うのです。なのに、
司書になりたいという多くの学生は「本が好きだ から」と答えてしまいます。専門的職業を目指す 割には、その回答は幼く、自己本位なものに感じ てしまいます。つまり、司書志望の学生にとって は、司書になること自体がゴールで、なった後に 何をしたいのか、ということがまったく考えられ ていないという問題があるように思います。
「司書になりたい」という学生には、やはり「司 書としてこんなことをやってみたい」ということ を説明できるようになってほしいと思います。こ の文章を読んでいる人は新入生が多いと思います が、中には司書になりたいと思って入学してきた 人もいるかもしれません。そうした人は、司書資 格課程の授業の中で、まず図書館の機能・役割を しっかり学んで下さい。そして、司書として働く 自分をイメージして、図書館の機能、理念に共感 するかどうかを考えてほしいと思います。
まだ少しスペースがありますので、図書館の機
能や司書の役割について考えることができる作品 を2つ紹介したいと思います。
1冊目は『父と暮せば』(井 上ひさし,新潮社, 2001)で す。父 親 や 友 人 た ち を「原 爆」で失った主人公の美津江 は、一人だけ生き残ったこと の負い目から、恋のときめき からも身を引こうとしてい ま す。そ ん な 美 津 江 を 思 い やる父親の竹造は幽霊とし て現れ、「恋の応援団長」を買って出ます。美津江 の仕事は図書館職員で、思いを寄せる相手は原爆 資料を集めている男性です。平和の大切さ、魂の 再生をメインテーマとした作品ですが、図書館の 役割や理念をさらりと描いている良作です。この 本は本学図書館に所蔵されていますし、映画版の DVDもありますのでぜひ手にとってみて下さい。
もう1つはマンガ
「陽だまりここよ」
(館林耕介,『ビッグ コ ミ ッ ク 別 冊』
2005.4.13)です。
この作品には、読書 の世界で起こるよう なことは現実には起 こらないと考えてい る女性図書館員が登 場します。仕事は真
面目にこなしますが、自ら何かをするという積極 性がないため、周囲の同僚をイライラさせていま す。あ る 日、主 人 公 が 勤 務 す る 公 共 図 書 館 に
「ホームレス」が数人やってきます。彼らとの交流 を通じて、主人公は図書館とは何かということを 真剣に考えるようになっていきます。この作品は 単行本にはなっていないので、なかなか手に入り ません。興味がある人は私の研究室に来てみてく ださい。
総合文化学部准教授
山 口 真 也
(図書館司書資格課程担当)
図書館には学生にとって、よりよい学習環境を整えてくれている施設のひとつです。レポート作成やグ ループ学習など、館内で一通りできてしまうところなど、とても重宝しています。私は本好きなので、ト イレから帰る途中にあちこちと寄り道をして、何冊も本を抱えて帰ってきてしまうので、なかなか学習の 場として利用していないのかもしれませんが、静かに勉強に励む学生たちの作る良い雰囲気が漂う場だと 思います。
私の図書館の一押し設備は、充実している検索機能です。図書館の蔵書検索だけでなく、一階のカウン ター向かいのPCでは新聞や論文の検索ができます。レポートや課
題で、どうしても過去の新聞が必要になったり、講義の踏み込んだ 内容が知りたかったりする場合、学内で調べる手段があるので、時 間があるときにすぐできて便利です。また、検索の仕方が分からな 意場合や借りる本を絞りきれない場合は、カウンターの図書館員が とても丁寧に教えてくれます。困ったときは図書館を訪れてみては いかかでしょうか。
「図書館を利用して」
法学部法律学科4年次
梅 田 裕紀子
沖縄国際大学の図書館は、学生を始めとする利用者にとってありがたい設備が充実していると思います。
図書館といえば、日々の課題や研究において必要な文献を検索し収集する場所でありますが、沖縄国際大 学の図書館はそれだけではありません。例えば、講義の合間のちょっとした空き時間に、雑誌や新聞など を読んだり、CDやDVD、ビデオを借りて鑑賞することのできるスペースがあったり、グループ学習の際に 使用できるグループ学習室、また、卒業研究に集中にて取り組みたい時に使用できる研究個室、課題の合 間に一息できる場所である休憩室など、学習・研究環境が整っており、さらに空き時間においても利用で きる環境を作っている事で、利用者の知識欲や時間の有効活用をサポートしているといえます。図書館を よく利用している方もそうでない方も、この機会にぜひ沖縄国際大学の図書館へ足を運んでみてはいかが でしょうか?
「図書館で充実した大学生活」
総合文化学部 日本文化学科
砂 川 杏沙美
(平成23年3月卒業)
私は、沖縄国際大学の図書館を七年程前から利 用しており、ここを初めて訪れた時の感動を、今 でも思い出すことが出来る。
受付カウンターで手続を済ませた後、その地下 二階から三階までの豪快な吹き抜けの空間に圧倒 され、しばらく見とれていた。さらに、二階、三 階への階段を上りながら全体を見渡すと、各階の フロアーには、それぞれ、その配置に特色を持た せた学習机が設置されている。それは、建物の中 央、窓際、目立つ場所、目立たない場所、一人用、
二人用、対面式ですりガラスを仕切りにしたタイ プ、グループ用の大きなテーブル等、それこそ、
各自の好みに合った学習机で、その時々の気分に 合った環境で勉強が出来るのである。 しかも、
AVコーナー、パソコンコーナー等、友人同士で イヤホンを使って、DVDでの映画鑑賞も出来る ようになっているのである。
これら、至れり尽くせりの環境には、沖縄国際 大学の誇りを見せつけられるようで、この大学の 学生の皆さんは、すごく恵まれていると思ったも のである。作家の渡辺昇一氏が若かりし頃、夜警 の宿直者として、図書館で寝泊まりしながら本を 読み漁った経験があるというエピソードを思い出 しながら、きっとこの図書館でなら、そのような 生活も楽しいだろうと思ったものである。
また、この図書館には、本学の学生に限って利 用できる、特別なコーナーがある。それは、グ ループ学習の為に外に話し声が漏れないように、
ガラス張りで部屋を仕切られた勉強部屋、窓際を 利用して、個室のように囲いを設けた部屋等であ る。私が、一般人として図書館を利用していた頃 は、その個室のような空間で勉強をしている大学 生に羨望の眼差しを向けていた。
ところで私は、ひょんなことから大学院で学ぶ
機会を得ることになった。そこで改めて、この図 書館のすごさを目の当たりにすることになる。そ れは、あの憧れの個室のような空間を更に越え、
院生及び教員等専用でパソコン付きの研究個室が 二十一室も設置されていること、又、一般人とし て利用していた頃には、足を踏み入れることもな かった地下一、二階にも、膨大な文献等が並べら れていることである。
現在私は、大学院法学研究科の院生だが、一年 後には、教員の指導の下で独自に研究をした論文 を完成させなければならない。その為には、私自 身の研究に必要な文献、参考とすべき研究紀要、
関連する辞書、雑誌等、様々な資料について、こ の一年間で触れなければならない。
そして、この図書館には、その論文を完成させ る為の環境が整っている。それは、仮にこの図書 館には研究に必要な資料が所蔵されていない場合 でも、Web経由で図書館相互利用サービスを使っ て、他機関からの文献複写や借用の申込みが出来 るということからも言える。
実は、この図書館の存在は、資格取得を目的と して勉強をしていた頃、勉強仲間の友人に教えて もらったのである。社会人である私は、大学の図 書館が一般に開放されていることを知らなかった ので、その友人には感謝の気持ちでいっぱいであ る。その感謝の気持ちから、事あるごとにその素 晴らしさを知人等に紹介してきたが、恐らく今後 も、その姿勢を変えることはない。もちろん私自 身、無事大学院を卒業したとしても、この図書館 を訪れ、その時の気分に合った書籍と学習机を選 び、この環境を満喫しながら時間を過ごすのだろ う。
私と図書館
法学研究科法律学専攻2年次
伊良皆 とも子
アイドルグループのAKB48で、常にトップクラ スの人気である前田敦子。その彼女の主演での映 画化が決まった、「もし高校野球の女子マネー ジャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだ ら」。2011年6月劇場公開予定であり、昨年は書 籍で、今年は映画で話題をさらうだろう。その
『マネジメント』を書いた経営学の祖、ピーター・
F・ドラッカーは、「伝達とは伝えることだけでな く、達することが重要である」と述べている。彼 のこの言葉は企業経営面の視点からの考えである が、私はその言葉こそ図書館のあり方の本質であ ると考える。残念ながら図書館をあまり利用しな い学生は多い。実際私も、決して常連の利用者で はなく週に一度か二度、本を借りに30分ほど訪れ る程度である。多くの学生は自分と同じ程度しか 図書館を利用していないかもしれない。しかし人 はどう変化するかわからない。人は何かに関心を 示すと、とことんそれにのめり込むものである。
図書館をあまり利用していない人でも、本から知 識を学びたいと感じたとき、水を得た魚のように とことんのめりこんでいくものである。とくにい ろんなことを吸収しやすい若者は、その傾向が強 いのではないだろうか。先述したように、私を含 め多くの学生は図書館をあまり利用しない。しか しそれは「図書館から学ぶことはない」という認 識からでは決してない。誰しもいつかは訪れたい と思っている。人にはそれぞれのタイミングがあ るのである。そのため私は、図書館は人それぞれ のタイミングに合致するよう常にあり続け、必要 だと感じたときすぐに利用できることが重要だと 感じる。
さて図書館内のコンテンツはというと、デジタ ル化による構造変化も次第に起こり始めるのでは ないだろうか。近年の一般市場での電子書籍の普
及を目指す取り組みが進んでいることからも、十 分検討する余地は存在すると考える。そして私は 紙と電子書籍の両立を望む。知識の保管・整理場 所としての図書館であるならば、当然電子書籍の 貯蔵にも取り組む方向に進まなければならないだ ろう。今はまだ本図書館の貯蔵スペースは空いて いるがようだが、本大学は年間約二万冊のペース で増貯しているため、紙媒体だけではスペースの 限界に達するのも時間の問題である。その問題を 解決するためにも、圧倒的に貯蔵スペースを少な く抑えられる電子書籍は必要になってくる。また 機能面でも電子書籍の場合、文字の大きさを調節 できるため、紙媒体で起こる文字が小さくて読み づらいなどの問題は軽減できる。一方紙媒体はと いうと、これもまた独自の良さが存在する。それ は時間を経ることができることである。紙は汚れ たり破れたりしてしまう。しかしそれによる経年 を楽しめ、年期がある本ほど丁寧に扱い印象に残 る。それは時間が生んだ財産ともいえよう。また 同じ情報形式である電子メールが広がったにも関 わらず、ファックスがなくなっていないことから も、人は感触を欲しがる生き物といえる。以上か ら私は、ハイテクがもたらす効率・利便と、時間 が生み出す時間財産の両方が利用できる、チャン プルーな図書館であり続けて欲しいと感じる。
私が望む、図書館のありかた
地域産業研究科地域産業専攻2年次
阿 嘉 宗 紀
私は学部生時代から5年間、レポートや卒業論 文を書くための資料収集、テスト勉強、暇つぶし など様々な理由で沖縄国際大学の図書館を利用し てきました。吹き抜けと静かな空間、きちんと並 んだ本。図書館はとても居心地がよく、課題や勉 強に集中して取り組める場所です。図書館の空気 が好きな私は、暇があるとその空気を吸いに図書 館へ顔を出していました。
図書館での思い出は色々ありますが、最初に図 書館を有効に活用したのは、「暇つぶし」です。大 学の講義は高校までの授業と違って講義と講義の 間が空くので、初めのうちは友人と一緒に昔の沖 縄の写真を収めた本や地図など、図書館でしか見 ることが出来ない資料を眺めていました。特に20 年程前の沖縄本島の空撮写真や、私の地元である コザの昔の姿を写した写真集などは、講義と講義 の合間の時間を埋めるよい暇つぶしとなっていま した。今思うと、とても有意義な暇つぶしだった と思います。しかし、利用し始めて1年もたつと 図書館に慣れてきたので、本だけでなくAV・PC コーナーでビデオやDVDを見て暇をつぶすよう に な り ま し た。AV・PCコ ー ナ ー で は、1 人 で DVD等を視聴するだけではなく、3人でも視聴す ることが出来るスペースがあるので、1人でもグ ループでもそこで暇をつぶすことができました。
DVD等はドキュメンタリーからアニメまで幅広 いジャンルが揃っており、その内容も充実してい ます。講義と講義の間が長く空いた時には、よく 友人たちと歴史関係のビデオやアニメ・映画等視 聴しました。これらの映像資料は学習に役立つも のも多く、単なる暇つぶしではなく学習の手段と しても活用できるので、是非試して欲しいもので す。
さて、初めのころは暇つぶしとして活用してき
た図書館ですが、レポートや課題がより専門的に なってくると、資料を収集するために図書館を訪 れるようになりました。まだ専門的な知識がない 頃は、図書館にある沢山の蔵書の中から自分自身 の目的に沿う内容の資料を探すこともさえも困難 です。そんな時に役に立ったのが沖縄国際大学図 書館の「蔵書検索 OPAC」です。著者や書名か らだけでなく「キーワード」や「連想」検索といっ た検索方法が選べるので、調べたい内容さえわ かっていれば簡単に目的の本を絞ることができま す。特に連想検索はキーワードではなく文章でも 検索ができ、さらに学科ごとに検索が分けられて いるため、高い確率で目的の本を探すことができ ます。探したい本が決まっている場合は「簡易検 索」や「詳細検索」を利用して配架場所を検索す ることができます。
こうした検索システムを利用してレポートや課 題に必要な資料や参考文献を収集していました。
卒業論文の場合も同様に、初めは検索システムを 利用しながら文献を集めるというスタイルで収集 していきました。
以上は学部生時代の図書館の利用でしたが、大 学院生となった今でも修士論文の資料収集や執筆 の場として図書館を利用しています。特に沖縄国 際大学の図書館には、私が専門とする考古学の論 集や雑誌などが他の県内の大学と比べても多く収 集されているので、この分野に関わっている限り この図書館を利用し続けるのではないかと感じて います。新入生のみなさんも是非、資料収集、テ スト勉強、暇つぶしなど等、自分の目的にあった 図書館ライフをお過ごし下さい。きっと大学生活 の中でも有意義に過ごしたと感じる時間になると 思います。
私にとっての図書
地域文化研究科南島文化専攻2年次
福 原 り お
大相撲の八百長が問題となり、新聞やテレビを 賑わしています。昔からそのようなことがあるの ではないかと言われ続けていましたが、ついに携 帯電話のメールという確固たる証拠が出てきまし た。実は、このすもうの八百長の話は米国の経済 学者が2000年に統計を使い、指摘していたことで もあるのです。
結論を言うと、7勝7敗の勝ち越しぎりぎりに いる力士は、千秋楽の取り組みで勝率が80%とい う高率となるそうです。大相撲は一場所で15回の 取り組みがありますが、8勝以上をすると番付け が上がります。だから、7勝7敗というのはお相 撲さんにとって人生がかかった取り組みになるの です。
そこで、著者は、7勝7敗の力士と8勝6敗の 力士が千秋楽で対戦した時の取組結果を集めまし た。そしてそれらの対戦結果を調べたところ、初 日から十四日目での勝敗はほぼ50%の互角であっ たそうです。しかし、千秋楽の取り組みになると 7勝7敗の力士の勝率が格段に高くなっているの です。
このようにこの「ヤバい経済学」は、いろいろ な興味深い話を経済学や統計の観点から解説して くれています。それが経済学なのかという疑問も あります。確かに著者の研究テーマは経済学の本 流からは随分離れています。使っている手法は、
ものの裏に存在する「価格」、色々な立場の人々の
「インセンティブ(ごほうび)」、そして統計的手法 を用いて相関関係と因果関係を明らかにして事実 に切り込んでいく「データ分析」なのです。
「ヤクの売人はどうしてママと住んでいるの?」
という章では、インド生まれの社会学博士課程の シカゴ大学の学生が6年間、ギャング達と共に行 動して、ギャング組織の内部構造を調査した話で す。私としては、本学でビジネスを教えているこ
ともあり、この部分に大変興味がわきました。こ のギャングのボスというのは大学でビジネスを専 攻して、事務用品販売会社のマーケティング部門 に勤めていたそうでうす。しかし、その職場にな じまずに仕事を辞めましたが、経営戦略の大切さ はよく分かっており、ギャングのボスとなっても 部下にしっかりと帳簿を付けさせていたそうです。
そして、調査をした大学院生はたまたまその帳簿 を入手できることとなり、その詳細な分析も行っ ています。このギャング団には組織図などもあり、
それはマクドナルドなどの大企業と全く変わらな いということです。そして、上記の質問の結論は、
組織上層部だけが良い収入を得て、下部は実家に 居候していないと生活できないくらいの安月給だ ということでありました。
また、アメリカで犯罪発生率が90年代に急激に 下がりました。これは一般的に警察官の増員や治 安政策のおかげだと言われていますが、著者は、
そうでなくて70年代以降に米国で女性の中絶が合 法化されたからだと主張しています。中絶が完全 に合法化され、将来の犯罪者予備軍となる不幸な 生立ちを持った子供達が生まれなかったからだと 言うのです。つまり1990年代初めには、ちょうど 10代後半から20歳になる犯罪予備軍の数が大幅に
減ったと言うのです。
このように経済学的視点から統計分析をして、
ヤバい結論を導き出しているのです。どの論点の 背景にも偏見や差別、貧富の差、人間の欲望の渦 巻きなど社会学的要素があり、興味本位の三面記 事的なものと異なり著者の冷静で理路整然とした 因果関係の分析がされているところが興味深く思 われます。
学生諸君もひと味違う「経済学」を味わってみ てください。
図書紹介「ヤバい経済学」
スティーブン・D・レヴィット、スティーブン・J・ダブナー
東洋経済新報社、2007年 産業情報学部教授
宮 森 正 樹
平成2 2年度 書評・映画評賞
最優秀賞1編、優秀賞1編、佳作10編に決定
発 行 所 著 者 名
書 名
岩 波 書 店 中山 茂
大学生になるきみへ―知的空 間入門(岩波ジュニア新書)
①
岩 波 書 店 大村 敦志
父と娘の法入門
(岩波ジュニア新書)
②
幻 冬 舎 新 書 荘司 雅彦
13歳からの法学部入門
③
大 和 書 房
アービンジャーイン スティチュート・他
自分の小さな「箱」から脱 出する方法
④
ディスカヴァー・
トゥエンティワン 飯間 浩明
非論理的な人のための論 理的な文章の書き方入門
⑤
発 行 所 著 者 名
書 名
八 月 書 館 瀧井 宏臣
風人たちの夏 ある国際 協力の記録
①
講 談 社
(現代新書)
高橋昌一郎 理性の限界 不可能性・
不確定性・不完全性
②
集 英 社
(集英社新書)
水野和夫・
萱野稔人 超マクロ展望 世界経済
③の真実
筑 摩 書 房
(ちくま新書)
広井 良典 コミュニティを問いなおす つ
ながり・都市・日本社会の未来
④
太 田 出 版 石川 真生
沖縄ソウル
⑤
発 行 所 著 者 名
書 名
中 央 公 論 新 社 小野 善康
不況のメカニズム
①
中 公 文 庫 中島 敦
南洋通信
②
草 思 社 ジャレド
ダイアモンド 銃・病原菌・鉄
③
岩 波 書 店 パードリック
北欧神話 コラム
④
新 潮 文 庫 サイモン シン
フェルマーの最終定理
⑤
発 行 所 著 者 名
書 名
講談社学術文庫
(講 談 社)
澤田 昭夫 論文のレトリック
①
現 代 新 書
(講 談 社)
松野 弘 大学生のための知的勉強
②術
現 代 新 書
(講 談 社)
大塚 英志 大 学 論 いかに 教え、
いかに学ぶか
③
小 学 館 小池龍之介
考えない練習
④
新 潮 文 庫
(新 潮 社)
水上 勉 土を喰う日々
−わが精進十二ヵ月−
⑤
発 行 所 著 者 名
書 名
岩 波 文 庫 ヒルティ
幸福論
①
中 央 公 論 新 社 大竹 文雄
競争と公平感
②
ダ イヤモンド 社 岩崎 夏海
もし高校野球の女子マネージャーが ドラッカーの『マネジメント』を読んだら
③
立 風 書 房 岡崎照男・訳
パパラギ
④
新 潮 社 レイチェル・
沈黙の春 カーソン
⑤
発 行 所 著 者 名
書 名
ナ ツ メ 社 丹慶 勝市
統計解析
①
ナ ツ メ 社 渡辺 裕
ゲーム理論
②
ち く ま 文 庫 梅田 望夫
シリコンバレー精神
③
日 経 B P 社
デビット・カークパトリック
(著)、小林弘人 解説(そ の他)、滑川海彦(翻訳)、 高橋信夫(翻訳)
フェイスブック 若き天才の野望
④
イ ン プ レ ス R & D 小池 良次
クラウド グーグルの次世代戦略 で読み解く2015年のIT産業地図
⑤
発 行 所 著 者 名
書 名
柏 書 房 浅野高史・かながわ
レファレンス探検隊 図書館のプロが教える 調べるコツ −誰
でも使えるレファレンス・サービス事例集
①
新 潮 社 井上ひさし
父と暮せば
②
講 談 社 出久根達郎
本のお口よごしですが
③
光 文 社 西林 克彦
わかったつもり 読解力が つかない本当の原因
④
筑 摩 書 房 米沢 嘉博
戦後少女マンガ史
⑤
発 行 所 著 者 名
書 名
福 音 館 文 庫 J.M.バリー
ピーターパンとウェンディ
①
岩 波 文 庫 トマス・モア
ユートピア
②
ち く ま 文 庫 チャールズ・
オデッセウスの冒険 ラム
③
岩 波 新 書 宮田 光雄
キリスト教と笑い
④
光 文 社 文 庫 岡本 太郎
今日の芸術
⑤
発 行 所 著 者 名
書 名
岩 波 文 庫 申叔舟著
田中健夫訳注 海東諸国紀
①
光 文 社 新 書 吹浦 忠正
国旗で読む世界地図
②
日本史リブレット 山川出版社 荒川 章二
軍用地と都市・民衆
③
ち く ま 文 庫 中島 隆信
お寺の経済学
④
朝 日 新 聞 社 松本 仁一
カラシニコフⅠ、Ⅱ
⑤
発 行 所 著 者 名
書 名
小 学 館 陽 信孝
八重子のハミング
①
講 談 社 佐藤 秀峰
ブラックジャックによろしく
※特に9巻〜13巻
②
誠 信 書 房 熊倉伸宏・
矢野英雄 障害ある人の語り
③
金 剛 出 版 向谷地生良
統合失調症を持つ人への
④援助論
ほ ん の 森 出 版 森 俊夫
問題行動の意味にこだわ るより解決志向で行こう
⑤
平成2 2年度 書評・映画評賞 平成2 2年度 書評・映画評賞
最優秀賞1編、優秀賞1編、佳作10編に決定 最優秀賞1編、優秀賞1編、佳作10編に決定
本学学生の読書・映画鑑賞活動の向上を図るこ とを目的として実施した「平成22年度沖縄国際大 学図書館 書評・映画評賞」には、31編の応募が あった。
12月10日(金)の第4回図書委員会において厳正 に審査した結果、最優秀賞1編、優秀賞1編、佳 作10編を決定した。この賞は、平成元年度に「論 文賞」として設けられ、平成9年度から平成17年 度までは「論文・エッセイ賞」として実施し、平 成18年度から「書評・映画評賞」として内容を新 たに募集したものである。平成22年度の受賞者は 次の通り。(年次は応募時)
表彰式は12月17日(金)図書館会議室で開催さ れ、兼本敏図書館長から受賞者に賞状と副賞が手 渡された。
最優秀賞
○総合文化学部 英米言語文化学科3年次 田 中 えみ子
「被害者たちが出会う時〜 The Jewbird に見 る差別の構造〜」
優秀賞
○大学院地域文化研究科英米言語文化専攻2年次 藤 城 孝 輔
「死/性との戯れ:『ミツバチのささやき』につ いてのノート」
佳 作
○法学部 法律学科4年次 影 嶋 智 大
「 たまねぎ と愛を考える」
○総合文化学部 日本文化学科2年次 比 嘉 吉 成
「噂のパノラマを俯瞰する少女と読者」
○総合文化学部 日本文化学科3年次 塩 浜 敦 子
「道標〜『学ぶ』ということ」
○総合文化学部 社会文化学科3年次 入池原 正 宗
「『ローズマリーの赤ちゃん』の美しさ」
○総合文化学部 人間福祉学科3年次 外 間 美 希
「東野圭吾作小説『さまよう刃』を読んでの批評」
○総合文化学部 人間福祉学科3年次 嶺 井 一 穂
「死ぬ瞬間」
○総合文化学部 人間福祉学科3年次 渡 邊 幸 子
「自分の価値を取り戻すこと、全人間的復権の リハビリテーション 〜『リハビリテーショ ンを考える』を読んで〜」
○総合文化学部 人間福祉学科4年次 新 垣 真 吾
「セックスボランティアを読んで」
○総合文化学部 人間福祉学科4年次 板 垣 美穂子
「夜と霧」
○総合文化学部 人間福祉学科4年次 宮 城 佐和子
「ほんとはこわい『やさしさ社会』〜私は『やさ しさ』を問い続ける〜」
表彰式の様子
受賞者と記念撮影
総合文化学部英米言語文化学科4年次
田 中 えみ子
被害者たちが出会う時
〜 The Jewbird に見る差別の構造〜
以前タクシーに乗った際、違和感を覚えた。そ のわけは、沖縄県内であるにもかかわらず運転手 がきれいな標準語を話していたことだった。県外 出身の私にとって、ウチナーンチュとは沖縄独特 のイントネーションで喋るものだというイメージ ができていたため、現実とのずれに戸惑ったので ある。このように訛りには、その土地らしさを前 面に押し出す力がある。Bernard Malamudが書い た The Jewbird で は、そ の「訛 り」が 重 要 な キーワードとなっている。 The Jewbird はアメリ カ に 住 む ユ ダ ヤ 系 一 家 の 物 語 で あ る。あ る 日 Cohen家にユダヤ訛りを話し、自らをユダヤ鳥と 名乗るSchwartzという鳥が迷い込んでくる。一家 の主HarryはSchwartzをいじめ抜き、最後には殺し てしまうというのがそのあらすじである。これよ り「訛り」および「におい」に着目しながら The Jewbird の世界について述べていく。
そもそもなぜHarryはSchwartzをいじめるのだ ろうか。この疑問を解決するためにHarryの使用 する言葉に注意する必要がある。ユダヤ人である にもかかわらず、この物語でHarryがユダヤ訛り を話すことは一切ない。なぜなら彼はアメリカで 生きていく術として、ユダヤ人であることを捨て たからである。アメリカは様々な人々が暮らす国 である。そして人種や宗教などにより分けられた ピラミッド状の階級がある。それがヒエラルキー である。ユダヤ人はそのヒエラルキーの中でも下 層に位置する。つまりアメリカで生きていくには、
ユダヤ人であることが差別されたり不利な状況に なるもととなる。Harryにとって、Schwartz はそ のように捨て去りたい自分のアイデンティティを 想起させる存在なのである。ユダヤ訛りを封印し 良くないものとすることで、Harryはアメリカに 同化していくのである。
沖縄に生きることで、私にも沖縄独特のイント ネーションが移ってきた。しかし意識的にその訛 りを使うと違和感がある。ある地方独特の言葉を 使うということは、それがその人のアイデンティ ティとなる。よって一朝一夕にその言葉を自分の ものとすることは不可能であり、反対に自分の中 からその言葉を消去することもまた困難なことな のである。つまりHarry自身がいくら否定しても、
簡単にユダヤ人としてのアイデンティティを捨て ることはできないのだ。Harryの職業が冷凍食品 のセールスマンであることは、彼の心に容易には 消えぬ凍らせた思いがあることを象徴している。
それと同時に、死に直結するイメージを持つ仕事 は、彼のヒエラルキーにおける地位の低さも伝え ている。HarryがSchwartzをいじめる行為は二つ の意味を持つ。ひとつはHarryがヒエラルキーに 同化し、少しでも上の階級に這い上がろうとして いることである。そしてもうひとつは、Harryが 自分の中に眠るユダヤ人としてのアイデンティ ティを殺しているという意味である。よって物語 の最後のSchwartzの死は、Harryが持つユダヤ的ア イデンティティの死をも意味する。
HarryもSchwartzも、ユダヤ人・ユダヤ鳥として 周囲から迫害されてきた被害者同士である。しか し両者が出会うとき彼らは力を合わせるのではな く、今度は片方が加害者にもう片方がまたもや被 害者となるのだ。ここで言う加害者・被害者は、
差別者と被差別者と言い換えることができる。つ まりHarryとSchwartzの関係は、被差別者が容易に 差別する側へと転じ得ることを示唆している。
次にもう一つのキーワードである「におい」に 着目して述べていく。SchwartzはHarryの妻Edieに 向かって「皆においがする。人々は考え方や彼ら が誰であるかによってにおうのだ。」(101・拙訳)
最優秀賞
おいを感じ、特に自分とは合わないものをくさい と感じる。ここでSchwartzの言う「におい」とは アイデンティティのことではないだろうか。つま りSchwartzは、自分と考えや人種などが異なる人 に対し違和感を持ってしまうことを言いたいのだ と考えられよう。Edieはにおいが原因でSchwartz 自身がいじめられないようにと風呂に入ることを 忠告するが、Schwartzは体の衰えを理由に従わな い。それは自分のにおい、すなわちアイデンティ ティを落としたくないからではないだろうか。加 害者と被害者として対照的なHarryとSchwartzは、
アイデンティティに対する姿勢も必死に捨てよう とするか、頑なに守ろうとするかでその相違が目 立っている。
先ほど触れたHarryの妻Edieは、一見Schwartzに 優しいように見える。しかしSchwartzに命の危険 が迫っているときは何もしないことから、彼女は 加害者と被害者をただ見ている傍観者だと言うこ とができる。EdieはSchwartzをかばいたくても、
彼女自身もHarryから虐げられているために逆ら うことができないのである。しかしSchwartzの死 後それまで一切ユダヤ訛りを話さなかった彼女が、
生前Schwartzが使っていたユダヤ訛りで「反ユダ ヤ主義者」を意味する Anti-Semeets. (104)と いう言葉を使用する。このことからEdieの中でユ ダヤ的アイデンティティが少しよみがえったと期 待できる。同時に傍観するだけであった彼女が、
加害者および被害者に関心を持った表れでもある と考えられる。Harry、Schwartz、Edieの三者が表 す加害者・被害者・傍観者は、社会にある差別の 構造の縮図である。この小さな差別の形が連なり、
ある人が時には被害者に、時には加害者となって 差別は延々と続いていく。このことを考慮すると、
Schwartzを殺してしまったHarryを一方的に攻め ることはできない。なぜなら、HarryがSchwartzに したのと同様にHarry自身も他者から物理的・精神 的な暴力を受けてきたと考えられるからである。
執拗にSchwartzを虐げるのは、Harryが被害者だっ たときに抱いた恐怖から保身に走っているためだ とも言えよう。
うか。Schwartzが鳥であることで物語は寓話的に なる。しかしそのことで、かえって差別の構造の 現実性が高まる。また小さいものがいじめられる 姿は我々の心に突き刺さる。自由というイメージ を抱かせる鳥が迫害され苦しむ姿は、筆者の皮肉 とも考えられる。
冒頭に述べた運転手の話に戻るが、彼がウチ ナーンチュでありながらも標準語を話す理由は、
沖縄の歴史の中にあった。かつて沖縄では方言を やめ、標準語で話さなければならない時期があっ た。そのために標準語を使うよう厳しくしつけら れた彼は、話したくても沖縄の訛りを話せなく なってしまったという。この状況はHarryと似た ものがある。 The Jewbird は一見、ある一家の物 語という狭い世界の話だと思えるが、そのテーマ は普遍的であり大きさに関係なくどの世界にも共 通するものなのである。誰もが加害者・被害者に なり得る世界であっても、人は被害者意識が加害 者意識よりも強くなってしまいがちである。その ような傾向を見越して、筆者Bernard Malamudは
"The Jewbird" を通しHarryのようにか弱いものを 迫害する加害者になっていないかを読者に問いか けている。
【出典】
Malamud, Bernard. The Jewbird , Idiots First. 1969.
New York: Penguin Books. 94-104.