(教科書の記述の確認)
第6版 歯科放射線学
第1章 放射線と歯科医療 1. はじめに
2. 放射線医学の歴史と新たな展開 1) X線の発見とX線管
2) 放射能の発見 3) 放射線診療の展開
3. 歯科におけるX線の利用と診療・教育ガイドライン 1) 歯科X線撮影法の発展
2) わが国における歯科放射線の歴史 3) 歯科X線の診療ガイドラインの設定 4) 歯科放射線学の教育ガイドライン
歯科放射線学とは?
• 歯科における放射線学を究める教育、
研究、診療を行う分野
放射線学とは?
• 放射線等を用いた診断と治療を行う医療 分野
歯科放射線科の案内:診断部門
• 各診療科からの依頼を受け、顎顔面領域 の疾患の診断、治療方針決定、治療後の 経過観察のための画像検査・診断を行っ ています。
• CT(医科用CT・歯科用コーンビームCT)、
MRI、超音波診断、単純エックス線写真等 の診断を行っています。
• 特に、口腔内超音波診断で口腔癌深達度 評価を行っています。
歯科放射線科の案内:治療部門
(口腔管理外来)
• 放射線治療や化学療法を受けられる患者 さんの口腔管理を行っています。
• 各診療科のがん治療医、看護師、薬剤師 と連携しつつ、歯や口腔と関連する副作用 対策を行うとともに、化学療法や放射線治 療中だけでなく、治療後の生活の質の維持 のための歯科口腔管理を行っています。
歯科放射線専門医
厚生労働省が広告可能とした歯科専門医
1.口腔外科専門医
2.
歯周病専門医
3.歯科麻酔専門医
4.小児歯科専門医
5.歯科放射線専門医
① 高度な画像技術を用いて口腔・顎顔面部疾患の画像診断を提供する 専門家であること
② 一般歯科医師の紹介・希望に応える画像診断の専門家であること
③ 地域の歯科医師や医療行政組織に対して、放射線診療に関するさま ざまな事項について適切な助言のできる専門家であること
歯科放射線学卒前教育のガイドライン
NPO法人日本歯科放射線学会教育委員会• 歯科放射線学教育の指針(2016 年度改訂最終案)
http://www.dent.niigata-u.ac.jp/radiology/workshopln/guideline2016_170221.pdf
一般目標: 歯科医療において、放射線を有効かつ安全に利用し、適切な画像検査と診断を行うた めに必要な知識、技能および態度を修得する。
(1)放射線とその防護
歯科医療において、放射線を有効に利用し、リスクを低減するために、放射線の性質と人体に対す る影響を理解し防護の方法を修得する。
(2)歯・口腔顎顔面領域の画像検査
歯・口腔顎顔面領域の画像検査を適切に行うために、基本的な知識、技能および態度を修得する。
(3)歯・口腔顎顔面領域の画像診断
適切な歯科医療を行うために、歯・口腔顎顔面領域の画像診断能力を修得する。
(4)口腔顎顔面領域悪性腫瘍の放射線治療
口腔顎顔面領域悪性腫瘍の放射線治療および治療患者の口腔管理の重要性を認識するために、
放射線治療の基礎と実際を理解する。
エックス線診断
•
目的: 人体内部を非破壊的に捉える
←治療上必要な情報収集
•
意義: 病巣の探索・病態の確認・
治療経過の判定・予後の観察
•
概念: 三次元の物体を二次元平面に投 影した「影絵」
•
実態: 歯や骨などの硬組織の形態的・
質的変化
エックス線像の基礎的事項
エックス線撮影系:エックス線源・被写体・記録系 画像形成に関与する因子:
物理学的因子・幾何学的因子・写真化学的因子
エックス線源 被写体
物理学的因子・幾何学的因子
写真化学的因子
記録系
エックス線像の形成過程
物理的過程: エックス線の発生
エックス線と物質の相互作用 エックス線コントラスト 幾何学的過程:焦点・被写体・フィルムの
幾何学的位置関係による像の 成立
化学的過程: 写真コントラスト
エックス線像成立の幾何学的条件
• 像の拡大
• 像のボケ(半影)
• 像の歪み
• 接線効果
像の拡大
拡大率
M=(a+b)/a=c/aa: 焦点・被写体間距離(FOD) b: 被写体・フィルム間距離(OFD) c: 焦点・フィルム間距離(FFD)
拡大率を小さくするには:aを大きくbを小さく
a b
c
焦点F
被写体O
フィルムF
半影の大きさ
H=d×b/a半影を小さくするには:aを大きくbを小さく、
dを小さく
a b
d
像のボケ(半影)
像の歪み
像の歪みを小さくするには:
物体とフィルムを平行にし、
エックス線をこれに垂直に投影する
接線効果
入 射 エ ッ ク ス 線
厚みが均等な 円筒状の被写体
入射するエックス線に対して接線状に存在するものが よりはっきり写し出される現象
歯槽硬線や歯根膜腔が 典型的 フィルム
エックス線透過像・不透過像
エックス線透過像: エックス線写真上でより黒く見える像
①空気・水・脂肪・軟組織[陰性造影剤(ガス)]
②硬組織中の欠損・脱灰・空洞(例:歯髄腔)
③正常像と比較して黒く見えるもの(例:嚢胞・骨折)
エックス線不透過像:エックス線写真上でより白く見える像
①硬組織(骨・歯)・金属補綴物・根充剤[陽性造影剤]
②軟組織や海綿骨中の石灰化(例:唾石・硬化性骨炎)
③正常像と比較して白く見えるもの(例:上顎洞内の液体)
エックス線コントラスト
コントラスト:対比度,対照度
A B
I0
IA IB
隣接した箇所を透過してきたエックス線の強度比を 常用対数で表したもの
物質A・Bによるエックス線 コントラストは、
|
log10 IA/ IB|
で表わされる。
I0:入射エックス線量
IA,IB:A,Bそれぞれを透過した 後の透過エックス線量
写真コントラスト
エックス線写真上で隣接した箇所における 写真濃度の差をいう
写真コントラストは、
|
DA-
DB|
で表わされる。
[フィルム特性
+エックス線コントラスト]
写真コントラストに関係する因子:
フィルム・増感紙・現像液・現像温 度・現像時間など
濃度 フィルム
DA DB
A B
I0
IA IB
エックス線コントラストと 写真コントラストの関係
log10 IA
log10 IB
濃度 DA
DB θ
照射線量
エックス線 コントラスト 写真
コントラスト γ = tanθ
DA
-
DB =γ(
log10 IA- log10 IB)
=γlog10 IA/ IB
写真コントラスト=γ×エックス線コントラスト
(ただし直線部のみ)
エックス線写真の読影
適切な撮影と現像処理の確認
↓ 存在診断
↓ 質的診断
存在診断
•
異常所見の部位
•
大きさ
•
形
•
エックス線透過性
↓
•
異常所見の分析 嚢胞か腫瘍か
腫瘍とすれば良性か悪性か 炎症性病変か否か
またはその他の病変か、大まかな鑑別
•
鑑別の必要な疾患が同時に疑われれば、
背反する所見により除外する努力
質的診断
• 病変の境界; 明瞭か不明瞭か(辺縁硬化像の有無)
• 病変の辺縁; 整か不整か(円滑か不規則か)
• 病変の内部構造;均一か不均一か
隔壁の有無(単胞性か多胞性か)
石灰化や骨化の有無など
• 病変と周囲組織との関係;
歯との関係(歯根膜腔との連続性など)
• 病変の周囲組織の状態;
歯根の吸収・離開の有無 下顎管や上顎洞壁の状態 周辺骨の硬化像の有無
骨皮質の状態(菲薄化・膨隆・断裂)
骨膜反応の有無,軟組織陰影の有無など
• 病変が単発性か多発性か
• その他の情報(好発部位・年齢・性別・臨床所見など)
境界明瞭・辺縁整 境界明瞭・辺縁不整
境界不明瞭・辺縁整 境界不明瞭・辺縁不整
境界と辺縁
境界明瞭・辺縁整 境界明瞭・辺縁不整
境界不明瞭・辺縁整 境界不明瞭・辺縁不整
病変のエックス線透過性
•
エックス線透過性
–
歯や骨のミネラル分が脱出しエックス 線透過性が高まり、フィルム上で黒っ ぽく見える
•
エックス線不透過性
–
歯髄腔や骨の石灰化が高まりエックス
線が不透過となり、フィルム上で白っ
ぽく見える
病変の内部構造や皮質骨の様相に関する 表現・用語(1)
•
境界・辺縁
–
明瞭な
(well-defined), 不明瞭な(ill-defined) , 硬化性辺縁
(sclerotic margin) ,鉛筆で描いた下絵状
(preliminary pencil-sketch appearance)•
多胞性不透過像
–
蜂巣[窩]状
(honeycomb) ,石けんの泡状
(soap- bubble) , テニスラケット[のガット]状(tennis racket) ,帆立貝の殻状
(scalloped margin)•
骨構造
–
骨融解性
(osteolytic) , 骨吸収性(absorptive), 骨硬化性
(osteosclerotic),骨の菲薄化
(bone rarefaction),膨隆性
(expansive), 破壊性(destructive)病変の内部構造や皮質骨の様相に関する 表現・用語(2)
•
骨吸収像
–
虫食い状
(moth-eaten pattern),打ち抜き像
(punched-out), 皿状骨吸収(saucer shaped resorption), 地図状(geographic), 浸潤像 (permeated)•
不透過像
–
すりガラス状
(ground glass appearance), 綿花状 (cotton-wool appearance),斑紋状
(mottled pattern)•
骨膜反応(periosteal reaction)
–
タマネギの皮状
(onion peel appearance), 陽[旭]光状
(sun-ray appearance),コドマン三角
(Codman triangle)症例:13歳・女子 主訴:下顎の無痛性腫脹
所見のとり方
1.病変の部位と大きさ・形態 2.透過性
3.境界 4.辺縁 5.内部構造
6.周囲組織との関係 7.周囲組織の状態 8.単発性か多発性か
単胞性か多胞性か
透過性病変か不透過性病変か 明瞭か不明瞭か
整か不整か
骨皮質の状態 歯との関係
部位と大きさは?
下顎右側第2大臼歯部を中心 とし、近遠心的には第1大臼 歯部から臼後部に及ぶ 上下的には歯槽頂から下顎下 縁近くまで及ぶが、下縁の皮 質骨には及んでいない
形態は?
透過性は?
単胞性の透過性病変 内部に隔壁や石灰化物は 認められない
※形態について
単胞性←・・→多胞性 発育中心が一点←・・→発育中心が複数
(嚢胞) (腫瘍)
境界は?
辺縁は?
境界は明瞭=白線
(骨硬化縁)を有する 辺縁は整
※境界について
明瞭←・・・→不明瞭 良性病変←・・・→悪性病変
(嚢胞・良性腫瘍)(悪性腫瘍・炎症)
<白線を有する=病変の成長が緩慢>
※辺縁について
整←・・・→不整 嚢胞←・・・→腫瘍
<マクロ的な単胞性・多胞性と共通>
皮質骨の状態は?
頬側皮質骨が圧排され菲 薄化し、軽度外側に膨隆 しているが、断裂・破壊 は認められない
※皮質骨の状態について
菲薄化・膨隆←・・・→断裂・破壊 良性病変←・・・→悪性病変
(嚢胞・良性腫瘍)(悪性腫瘍・炎症)
頬側または
舌側のみの膨隆←・・・→頬舌膨隆 嚢胞 ←・・・→ 腫瘍
歯との関係は?
下顎右側第2大臼歯歯冠は病変に 含まれている
病変の辺縁は歯頸部よりもわずかに 根尖寄りに位置している
下顎右側第3大臼歯は歯根未完成で、
歯冠は病変に含まれてはいない 下顎右側第1大臼歯は遠心根と病変 との境界の歯槽硬線が消失しており、
根尖部に歯根吸収を認める
歯根吸収の程度 軽度←・・・→高度 嚢胞←・・・→良性腫瘍
(悪性腫瘍ではむしろ少ない)
鑑別診断
・境界明瞭で辺縁整の単胞性の透過性病変
・皮質骨の膨隆・菲薄化はあるが断裂はない
→良性所見
嚢胞あるいは嚢胞類似の良性腫瘍
・歯冠を含むが辺縁は歯頸部よりも下方に位置
・隣接歯の根尖に歯根吸収を認める
→含歯性嚢胞あるいは良性腫瘍(エナ メル上皮腫など)が想定されるが、
後者の可能性の方がより高い 鑑別診断:
1.良性腫瘍(年齢・部位及び頻度的にエナメル上皮腫)
2.含歯性嚢胞
MRI診断:良性腫瘍(エナメル上皮腫)
病理組織診断:
エナメル上皮腫
造影される腫瘍塊