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③放射化分析(PGA&NAA).doc

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Academic year: 2022

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中性子関連技術解説書 中性子利用技術名 ;即発ガンマ線分析(PGA)および中性子放射化分析(NAA) 解説書作成者 ;技術士 氏名 岸 敦夫

- 1 -

1.はじめに

中性子は産業用として、①波の性質を利用して、物質の結晶構造やひずみを調べたり、

物体を透過する際の吸収・散乱の差で得た透過像により内部の構造を観る、②照射した 際に放出されるガンマ(γ)線を測定し、どのような元素がどのくらい含まれるかを調べ る、③照射によって核変換を引き起こし、新しい材料を造る(均質性の高い半導体材料 など)、等に利用できます。

ここでは、②の核反応を利用した元素分析法について解説します。

2.概要

ウランの核分裂等によって発生した中性子 を分析したい試料に照射すると、放射線の一 種で、波長の短い電磁波であるガンマ線

(即発ガンマ線、壊変ガンマ線)を放出します。

この電磁波を計測しデータ解析することによっ て、どのような元素がどのくらい含まれている かを調べることができます。

これは、元素が中性子を吸収すると元素ごと に異なる特有の放射線を出す性質を利用したも のです。

質量分析法などのように試料を破壊(微粉化 して化学処理するなど)することなく、試料を そのまま測定できます。また、蛍光X 線分析法 などのように表面だけではなく内部まで多くの 元素を精度よくしかも同時に分析することがで きます。

微量成分(元素により ppb~%のオーダー)の 分析法として優れています。

ただし、元素によって感度が大きく違うので、目

的によって各種分析手法と組み合わせることも有効です。

3.中性子利用の元素分析の原理 中性子を利用した元素分析は、即発ガンマ線

を利用する即発ガンマ線分析(PGA)と壊変ガ ンマ線を利用する中性子放射化分析(NAA)

の二つに大別できます。

(注)PGA:Prompt Gamma-ray Analysis NAA:Neutron Activation Analysis

図 1. 各種分析法との比較 (定量できる下限値)

誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)

破壊分析非破壊分 表面

誘導結合プラズマ発光分光

(ICP-AES) ポーラログラフィ

加速器質量分析法 蛍光X線分析法

pg

吸光光度 原子吸光

g mg µg ng

放射化分析(NAA)

即発ガンマ線分析

PGA

非破壊分 全体

放射光利用蛍光X線分析法 荷電粒子誘起X線分析(PIXE)

表面

蛍光X線分析法

即発γ線分析

即発γ線

10-14sec

複合核

中性子

標的核

放射化分析

放射性 核種

壊変γ線

α線,β線

生成核

PGA: Prompt Gamma-ray Analysis図 2. 中性子による核反応

(2)

- 2 -

3.1 即発ガンマ線分析(PGA)

原子炉から導出した中性子を試料に照射すると、原子核はこれを捕獲、励起され、複 合核を形成します。この複合核は、10-14秒以内に電磁波である即発ガンマ線と呼ばれ る放射線を放出し安定核種になります。

この放射線は元素ごとに異なる特有の性質を持っているので、これを Ge 半導体検出 器で測定しスペクトル分析を行うことによって、そのエネルギーの値から元素を特定し、

強度の値から定量化することができます。

元素毎の感度の目安を図 3 に示します。

図 3. 即発ガンマ線分析法における元素毎の分析感度の目安

また、次項 NAA において中性子捕獲反応による生成核種が、①放射性でない、②半 減期が短すぎる、③放出する放射線のエネルギーが低い、等の理由により分析が困難な 元素(水素(H)、ホウ素(B)、窒素(N)、ケイ素(Si)、硫黄(S)など)も分析でき ます。

3.2 中性子放射化分析(NAA)

原子炉内で試料に中性子を照射して測定対象の元素を放射性核種に転換させると、壊 変ガンマ線を放出します。この照射した試料を Ge 検出器にかけこの放射線を測定し解 析することによって PAG 同様、元素の定性、定量分析ができます。

この方法では、Cr、Mn、Co、Cu などの金属は感度が高く、Eu、Dy、Lu などの希土 類元素や In、Ir、Au などの貴金属元素には特に感度が良いのが特徴です。

4.技術解説

中性子源としては、原子炉のほかに加速器や252Cf のような放射性同位元素が使われ ますが、235U の核分裂からの高中性子束をもつ原子炉が最も強い照射が得られる の で、放射化分析に対してもっとも高い感度を与えることができます。

中性子放射化分析は、(1)放射化、(2)放射線測定、(3)定性・定量計算の手順で行います。

4.1 放射化

試料に中性子を照射すると、中性子捕獲反応によって試料中に放射性核種が生成しま

高感度 (<0.01 mg) 良感度 (0.01-1 mg) 中感度 (1-100 mg)

Pa U

低感度又は測定不 可(>100 mg)

Fr Ra Ac

Al Si

He B C N O F Ne Ar Cl S P

Tm Yb Po At Sb Te I

Se Br

Lu Tb Dy Ho Er

Th

Rn Ce Pr Nd PmSm Eu Gd

Hg Tl Pb Bi Os Ir Pt Au

Hf Ta W Re

Ag Cd In Sn

Kr Zr Nb Mo Tc Ru Rh Pb

Zn Ga

Ma Fe Co Ni Cu Ge As Ti V Cr

Sc Y La H

Li Na

K Ca Be Mg Rb Cs

Sr Ba

Xe

(3)

- 3 -

す。ある同位体Xの原子核に粒子aが衝突して、放射性核種Yができ、粒子bが放出さ れる核反応を X(a,b)Y という反応式で表します。入射粒子 a には、中性子、荷電粒子 または光子があります。核種Yの生成量(放射能)は、試料中に存在する同位体Xの量に 比例し、同位体存在比が一定であれば、生成放射能を測定するとその元素が定量化でき ます。

試料を照射しながら放出粒子bを測定する方法において、bがガンマ線の場合がPGA です。この PGA の中性子束(一定時間単位に一定空間を通過する中性子の数の尺度。

よく使われる尺度は、中性子・cm-2・sec-1)はおおよそ108中性子・cm-2・sec-1で、NAAで は1012~1014中性子・cm-2・sec-1です。

また、NAA で利用する壊変ガンマ線のエネルギーはせいぜい 4MeV 以下であるのに 比べ、PGAの即発ガンマ線は最大 11MeV におよぶ高エネルギーであるという点に特 徴があります。

4.2 放射線測定

一般に、生成放射能の測定にはGe半導体検出器とBGO検出器を組み合わせた検出部、

電源、増幅器、同時係数回路、AD コンバータ、波高分析器等の測定回路部、およびパ ーソナルコンピュータとその周辺機器等から構成します。放出ガンマ線のエネルギーは 個々の核種に特徴的なものであり、Ge検出器では様々なガンマ線を同時に判別できます。

核種の放射能はガンマ線の全エネルギーピーク面積から求めることができ、すべて同じ 条件で、同一の時刻での計量率に補正します。

4.3 定性・定量計算

目的の元素を定量するには、元素の分かった標準資料を同様に放射化し、生成放射能 の強度比を測定することによって定量化ができます。実際には放射能を求めず、試料と 標準試料を同一条件で測定し、それぞれのガンマ線のピーク面積比から定量することが できます。

最近では放射化分析支援システムとして整備されている K0法を用いるので、分析元 素毎の比較標準試料を必要とせずに、多元素同時分析を簡便かつより正確に行うことが できます。

5.産業応用の事例

5.1 即発ガンマ線分析(PGA)の応用例

即発ガンマ線分析法は蛍光X 線分析(XRF)に類似しているが、透過力の大きい中性子 を照射し、高エネルギーの即発γ線を分析に利用するため、試料のマトリックス効果等 の影響が少なく、また誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)等の機器分析法に比較 すると非破壊分析が可能であり、化学処理時の汚染等の心配もなく、正確な定量分析が 可能となります。

ホウ素(B)は最も高感度な元素でその検出限界は ppb レベルと低く、原子炉材料、

岩石、隕石、植物、石炭、石炭灰、海洋堆積物、アルミニウム酸化皮膜、高純度ケイ素

(4)

- 4 -

(Si)、各種環境試料など、多くの分析例があります。

材料中の不純物元素として重要な微量水素の分析にも有効で、ジェットエンジン材料 のチタン、フラーレンあるいは石英単結晶の水素定量等が行われています。そのほか高 純度物質中の不純物解析として活用されています。

環境標準物質の分析例として、玄米、ムラサキガイ、河川堆積物、池堆積物、海洋堆 積物、自動車排出粒子等の標準物質中のカドミウム(Cd)定量、頭髪標準物質の Hg 定 量などがあります。実際の応用例としては、多摩川河口底質試料の分析、Cd で汚染さ れた土壌とそこに生息するマイマイ貝殻の分析、等々があります。

また、非破壊分析性により、試料が貴重、あるいは化学的に安定なため分解が困難な 考古学試料、隕石、岩石等の分析にも適しています。その例として、考古遺物の制作年 代や物の流通経路・産地等の推定を行うために、土器、陶磁器、勾玉、青銅器、農産物、

石材等の分析が行われています。

そのほか、希土類元素間で分析感度が約 4 桁以上も異なることから、低感度の希土類 元素中の高感度希土類元素の定量にも利用されています。

さらに、PGAは NAA に比べて中性子照射量が少ないことから、PGAで分析した試 料を他の方法でも分析することができます。

5.2 中性子放射化分析(NAA)の応用例

NAA はきわめて感度が高く、非破壊分析法で多元素を同時に定量できるので、主な 応用例として、考古学、環境関連科学、地質学・地球科学、医学・生物学、工業製品等、

広い分野で微量分析法として使用されています。

壊変ガンマ線を利用するので、定量できる元素としては、放射性核種のエネルギーが

~2MeV で放出率が高く、他の放射線各種と重ならないピークがあり、半減期が短すぎ ないことなどが求められます。応用例を表1に示します。

表1.放射化分析の応用例

利用分野 分 析 対 象

1.考古学 骨、セラミックス、陶器、ガラス、宝石、貨幣、金属彫刻、絵画、

素材・原料、粘土、土壌 2.環境科学と

生物学

動物、小鳥、昆虫、魚、大気、塵埃、エアロゾル、食料、作物、

地下水、雨、メラニン(黒色素)、植物・木、海藻、藻類、タバコ 3.犯罪科学

(法医学)

ピストル(銃)確認、銃弾

4.地質(学)・地球 科学

化石燃料、石炭、石炭製品、石油、隕石、鉱物、大洋塊、岩石、

堆積物、土壌、漂粘(礫)土

5.工業製品 電子材料、肥料、核分裂性物質検出、高純度物質、都市廃棄物、

医薬生成物 6.医学・人体組

織、歯科試料

血液、骨、脳、結腸、歯充填材、胎児、髪、肝臓、肺、無機成分、

筋肉、爪、尿結石、尿

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- 5 -

6.今後開発が必要な周辺機器・技術

・照射部に試料を自動設置する機器(PGA)

・微小中性子ビームを使用した局所分析および分布分析技術 ・複数台の Ge 検出器を使用する多重ガンマ線分析法の実用化 ・分析法としての標準化

7.まとめ

中性子を利用した微量元素分析は、様々な組成の試料の分析に適用でき、化学処 理に伴う汚染等の心配もなく、非破壊で多元素を同時に短時間で正確に分析できる特 徴があります。原子炉のあるところで専門家が行う特殊な分析技術として見られてい ますが、これらの特徴を生かした活用により、産業界における技術・商品の高度化に 貢献することができます。

8.参考文献

1) 平成19年度「放射線利用技術・原子力基盤技術に関する技術指導及び情報提供」

事業 成果報告書(文部科学省委託事業) 平成 20 年 3 月 (財)放射線利用振 興協会

2) RADAホームページ:放射線利用データベース;放射化分析

3) 中性子産業応用事例集2006 平成18年1月 茨城県発行

図 1. 各種分析法との比較      (定量できる下限値)  誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)破壊分析非破壊分析表面誘導結合プラズマ発光分光(ICP-AES)ポーラログラフィ加速器質量分析法蛍光X線分析法 pg吸光光度原子吸光gmgµgng放射化分析(NAA)即発ガンマ線分析(PGA)非破壊分析全体放射光利用蛍光X線分析法荷電粒子誘起X線分析(PIXE)表面蛍光X線分析法 即発 γ 線分析 即発γ線 10 -14 sec 複合核 中性子 標的核 放射化分析放射性核種壊変γ線 α線,β線 生成核

参照

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