放射線材料工学特論資料
放射線
分子:物質を構成している粒を物質の(化学的)性質を残す最小限の単位[例:水分子H2O]
原子:分子をさらに分離した粒の最小単位[H2O⇒水素原子2個と酸素原子1個]
結晶:原子あるいは分子が規則的に配列したり、結合することで物質となる。物質の種類により配
列(結晶構造)が異なる((例) Fe:体心立方格子、Au:面心立方格子、ダイアモンド:最密六方格子 な ど)
・原子は中心に原子核[陽子(正電荷)と中性子(電荷なし)]があり、その回りに電子が決まった軌道を 回っている。陽子と中性子の質量はほぼ同じで1.6x10-27kg、電子は9.1x10-31kgである。
・(陽子数+中性子数)⇒質量数(原子が持つ電子と陽子の数は同じ)
・陽子の数⇒原子番号(原子の種類[元素]が決まる)
・ 原子番号が同じで陽子と中性子の数が異なるものを同位元素(同位体)という
・同位元素のうち原子構成が不安定で安定な構成になろうとするものを放射性 同位元素といい、安定な構成になることを崩壊(壊変)という⇒この崩壊に伴って 余分なエネルギーが電磁波(γ線)として放出される
電磁波:真空中において電場、磁場中でも光速で伝わる波[可視光,電波,X 線な どは波長が異なるだけで全て電磁波]
【電磁波の放出⇒電子は原子核に近い軌道から順序(パウリの排他律)よく占有されているが(基 底状態)、外からエネルギーを与える(例えば電子や X 線を物質に照射する)と軌道電子が弾き出 されて別の軌道に移り軌道がとびとびになる場合がある(励起状態)。この状態にある原子は軌道間 と同等のエネルギー(電磁波)を放出して再び基底状態に戻る。この電磁波を特性X線という。また 同じように電子を物質に照射した際、軌道電子は弾き出さずに入射した電子が原子核とのクーロン 力で進行方向が曲がってしまう。このときにX線が放出され、これを制動X線という。】
・放射性同位元素の壊変によって放出される放射線・・・α、β、γ線の3種類がある α線:ヘリウム原子核と同じ構成(中性子+陽子)。透過力が非常に小さい
β線:電子あるいは陽電子(質量のある荷電粒子である). 透過力がα線に比べて大きい
γ線:波長の短い電磁波.電荷、質量を持たない.透過力が非常に大きい(α、β崩壊の際放出され る場合が多い)
放射性崩壊(radioactive decay)
α崩壊[α線を放出して原子番号が2、質量数が4減少する]
例:226Ra→222Rn 発生メカニズムは量子力学としてはトンネル効果*1として説明される。
β崩壊[β+崩壊(陽電子を放出して原子番号が1減少する:陽子→中性子+陽電子) 例:22Na → 22Ne + e+
β-崩壊(電子を放出して原子番号が1増える:中性子→陽子+電子) 例:14C → 14N + e-
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軌道電子捕獲[核内の陽子が軌道電子を捕獲して中性子に変換する]
例:59Ni + e- → 59Co + n
γ崩壊:励起状態の原子核の持つ余剰なエネルギーを電磁波として放出することで原子核のエネ ルギー状態を安定化させる変化で、陽子や中性子数は変化しない。
18/04/08 20:27
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図 各種放射線と物質との相互作用
半減期
放射性元素の崩壊する割合は物質固有で、半
分の数の原子が崩壊するまでの時間をいう N= N0exp(-lt)
ただしλを崩壊定数、初めの原子の数をN0、 時間t秒後の原子の数をNとする。このとき に、崩壊した原子は別の元素になる。
原子核はいずれ放射性崩壊をして他の元素 に変化していくが、その崩壊は一定時間の間 に一定の確率で起こる。右図は崩壊定数の異 なる崩壊による原子数の変化を複数プロッ トしたものである。はじめの原子数が N 個
であるとき、その半分 N/2 個が放射性崩壊するまでの時間 T をその放射性同位体の半減期
(half-life) と呼ぶ。崩壊定数の逆数が半減期に対応する。
N= N0 (1/2)t/T
上式で、Nは半減期Tの核種における時間t秒後の未壊変原子数を示す。放射性同位体ごとに定ま る確率(崩壊定数λ)のみによって左右される。人工的に原子核の崩壊を起こすには加速器などを
時間 放
射 線 の 強 さ
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用いなくてはならない。人工的に原子核の崩壊を起こして、半減期よりも早く放射性核子を減らす 手法としては核変換技術と呼ばれる技術が研究されている。
[ex. 半減期の計算例] ラジウムの半減期は 1600 年である。2g のラジウムが 800 年後には何 g にな っているか計算せよ。
崩壊図(原子核壊変図)
原子核が崩壊する際の崩壊モードや崩壊エネルギ ーを図で示したもの。崩壊種によって描き方が異 なる。核種(核記号とその左上に質量数、左下に 陽子数)が書かれ、そのすぐ上に寿命が、更にす ぐ下に崩壊モードが書かれ、垂直な矢印は放出す るガンマ線、斜めの矢印はβ線を示す。矢印には 崩壊後に遷移される励起状態とその遷移確率が明 記される。その各励起状態を表す横線の左端に はスピンパリティ*2、右端には状態エネルギー がMeVの単位で書かれる。縦に長い矢印は各励起 状態からガンマ崩壊を起こして基底状態(一番下)
にいくまでの経路である。それぞれには遷移確率 とその時に放出するガンマ線のエネルギーが書か れる。直交座標系で縦軸の長さが各状態のエネル ギー差の大きさを示す。このため壊変図式におい てエネルギーは必ず保存しており、矢印は必ず上 から下へと向かう。また横軸の向きは陽子数の変 化に対応しているため核種の崩壊によって矢印の 向きは異なり、ベータマイナス崩壊は右向き、ア ルファ崩壊は左向きに表わされる。
放射線の単位
放射線は光と同じく、放射線の発生源の強さや観測場での明るさ(強さ)などの単位があり、状況 によって使い分けます。
放射能:ベクレル(Bq)
1Bqは1秒間に1個の放射性壊変をする放射性物質の量を表します。
なお、ベクレル(Bq)が単独で使われることは少なく、単位体積当たり又は単位重量当たりの放射能 の強さを表す Bq/リットル、Bq/kg などがよく使われます。以前はキュリー(Ci)という単位が使 用されていました。
β−崩壊の一例である207Tlの崩壊図
α崩壊の一例である210Poの崩壊図
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吸収線量:グレイ(Gy)
物質がどれだけ放射線のエネルギーを吸収したかを表す量です。1Gyは物質1kg 当り、1ジュー ルのエネルギー吸収を与える量です。単位としてはグレイ単独よりその100万分の1を意味するマ イクログレイ(μGy)、10億分の1を意味するナノグレイ(nGy)が通常よく使われます。
線量当量:シーベルト(Sv)
放射線の生物学的効果を共通の尺度で表す量。同じ吸収線量でも放射線の種類により生物体への影 響が異なるために,放射線ごとに定められた線質係数を吸収線量などに乗じて表す。放射線防護の 分野で用いられる。 SI 単位はシーベルト(記号 Sv)。旧単位はレム(記号 rem)。
線量=吸収線量×放射線荷重計数×(組織荷重計数)
放射線が生物に及ぼす効果は、放射線の種類やエネルギーによって異なります。単位としては、シ ーベルト単独よりその1,000分の1を意味するミリシーベルト(mSv)、100万分の1を意味するマイ クロシーベルト(μSv)が通常よく使われます。
*1アルファ線のトンネル効果
1928年にガモフが、元素のα崩壊がトンネル効果によってうまく説明できることを見出し、量子論 の正当性について示す事に成功した。原子核の中のα粒子は図1のようなポテンシャルの中に閉じ 込められていると考えられます。|x|< a の領域は原子核の内部でα粒子が強い引力で閉じ込められ ている領域です。|x| > aの部分はα粒子の荷電+2eと残りの原子核の荷電+(Z -2)eとの間のクーロン 斥力ポテンシャルのみが関与する領域です。α粒子がE 1 ( < 0 )の状態にある場合は、ポテンシャ ル外に出ることはできないのでα崩壊は起きませんが、E 2,E 3 ( > 0 )の場合はα粒子がポテンシ ャル障壁を透過して原子から放出されα崩壊が起きます。この確率を量子論の透過率で計算すると、
実際の崩壊定数と一致します。
* 2スピンパリティ
電子は量子化された角運動量を有しており、電子の自由度1/2というスピンの倍数をもつ。これが 2つの電子の作用では偶奇性という交換性の違いとなって現れる→パウリの排他律。
図2 α 崩壊の半減期 黒丸は実測 値。実線は(1)式による計算値
図1 原子に束縛されているα粒子 に働く力のポテンシャル