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(1)

水環境浄化のための水中プラズマの応用

佐藤正之

群馬大学工学部生物化学工学科

〒376-8515 桐生市天神町1-5-1 [email protected]

はじめに

ラジカルを生成する方法は電子線、光照射、プラズマなど 様々な方法が知られている。水中の反応を考えた場合、電子 線は水中への浸透深さが短いために、広範囲な反応が期待で きないこと、光照射はそのエネルギー制御が容易なために選 択的な反応が期待できるが、実用化に際してのエネルギーコ ストが問題となる。

有機液体、特に絶縁油中での放電は、トランス油等高電圧 機器の絶縁特性を調べるのに重要ということもあって、多く の研究がなされている。しかしながら、水の中での放電現象 に関する研究は、歴史的にはそれほど古くない。超高出力レ ーザの駆動用に水コンデンサの研究が行われ、水の中での高 電圧現象が徐々に明らかになってきたが、プラズマ生成現象 並びにその応用に関して報告されるようになったのは最近の ことである。

水の中での高電圧パルス放電に関しては、1987 年に

Clementsら1)がその目視観察結果と発光スペクトル、並びに

酸素ガス注入によるオゾン生成に関して初めて報告した。そ の後Grymonpreら2)、Joshiら3)、Sharmaら4, 5)、Satoら6)

Sunら7 - 10)、Sugiartoら11)、Sunka他の研究者12 - 16)が引き続き

水中パルス放電並びに有機物質分解の研究を行っており、水 環境汚染が大きな問題となるに伴いますます研究の幅が広が っている。

米国では、産業廃棄物等を長期間にわたって無造作に埋め 立ててきた結果、付近の地下水に深刻な汚染が生じているこ とが報告されている。地下水の汚染のみならず、工場排水等 も含め、微量の環境汚染物質を分解除去したいという要求が 高まっている。気相中の窒素化合物や硫黄化合物に対する除 去技術は高いレベルにまで進んでいるが、今後は水の処理が 大きな問題となる。

水の処理技術で代表的な方法は微生物処理であり、日本国 内では広く普及している。ところが、微生物が食べてくれな いような、難分解性有機物質の処理に関しては、焼却や活性 炭への吸着などの方法の他には難しいのが現状である。ここ では、水中パルス放電の基本的性状について解説するととも

に、その有機物分解等、環境修復への応用について述べる。

1. 水中パルス放電研究の進展

水の中でプラズマを生じさせるためには、絶縁破壊を起こ させるために電界を集中させる必要がある。そのためには、

一般的に針対平板電極形状が用いられる。その針の先端に電 界が集中し、水の絶縁破壊が生ずる。針の先端に強い電界を 作用させるためには、針先端部分を残して絶縁することが最 も重要である。パルス電源として図 1のようなコンデンサの 充放電を利用する方法が広く用いられている。高電圧トラン スで昇圧された交流電圧は整流され、コンデンサに充電され る。その電荷は、スパークギャップを通して一瞬の間に放電 されることによって、立ち上がりの速さが数十ナノ秒程度の パルス電圧を得る。

Clementsら1)は、水中の針対平板電極に極短高電圧パルス

を印加したときに生ずる、「放電前駆現象」の基本的性状につ いて初めて明らかにした。図 2の写真に示すように、先端を 除いて電気的に絶縁された針電極に正のパルス電圧を印加す ると、マゼンタ色のストリーマがアース電極に向かって伸び、

ところどころに微小な気泡が生ずる17)。負パルスを印加した 場合には、小さな白色の放電スポットが針先端に生ずるが、

ストリーマ状に長くのびることはない。

図 3に示すように、ストリーマの平均長さは負パルスより 正パルスの方が長く、電圧の増加に伴って比例的に長くなり、

図1 コンデンサ充放電式パルス電源

(2)

最終的にアース電極に到達すると(この場合は針先端とアー ス電極間の距離は30 mm)スパーク放電に移行する。ストリー マ長さは水の導電率によっても変化し、図 4に示すように、

およそ 10μS/cmあたりがピークとなる。導電率の変化によ

り空間電荷生成が異なることと、電極間のインピーダンスの 変化によりパルスの半値幅が異なってくることが原因である。

針電極に注射針を用い、放電雰囲気中に酸素ガスを注入す るとオゾンが生成することから、盛んな放電化学反応が生じ ていることを示唆した。

2. ラジカル発光分析

マルチチャンネル分光分析装置を用いて、Satoら18)は一発 のパルスから生じるストリーマ放電の分光分析を行い、OH ラジカルとHラジカルの強い発光を確認するとともに、安定 成分として過酸化水素が生成することを示した。さらに、そ れら活性種の微生物殺菌への影響について報告した。

図 5に放電による発光のスペクトル分析装置を示す。反応

槽は50×50×100 mmのアクリル製で、外径が0.2 mmの白金

製針電極と平板アース電極とが 50 mmの間隔で対向してい る。針電極はシリコーン樹脂で電気的に絶縁されており、針 先端は絶縁体から0.5 mm突き出ている。ストリーマ放電か らの発光は、石英ガラスファイバーを通り、マルチチャンネ ル分光分析器(Unisoku USP-500MA)に導かれる。一発だけの パルス電圧によって放電を起こさせ、それをトリガーとして、

波長200 nm~750 nmの間で測定した。ガスを流すときには、

針電極として外径0.75 mmのステンレス製注射針を用いた。

図 6に、蒸留水の導電率を0.1 mS/cmに調整した場合のパ ルスストリーマコロナ放電の発光分光分析結果を示す。蒸留 水中では白い放電スポットから発する幅の広い発光が見られ るが、導電率を調整すると図のように強いラジカル発光が見 られる。図中309 nmがOHの発光であり、可視光中でのピー クはBalmer系列のHα(656.3)、Hβ(486.1)、Hγ(434.0 nm)

である。また、ここでは示していないが赤外領域にも酸素原 子の発光(777.1、844.6 nm)が見られた7)。図からわかるよ うにストリーマ放電チャンネルから多量のラジカルが生成し ているが、これらはパルスの電気的パラメータや液体の性質、

ガス注入の有無によって異なる。

蒸留水中で+19 kV のパルスを印加し長寿命活性種である 過酸化水素の生成量を求めたのが図 7である。過酸化水素と 選択的に反応するカタラーゼを加えると濃度がゼロになるこ とから、ここで測定された活性種はすべてが過酸化水素であ ることがわかる。過酸化水素はOHラジカルの再結合反応に よって生成されるものと考えられるが、図から処理時間(パル

スエネルギーの印加量)に比例して生成量が増えていること からも裏付けられる。水の導電率の変化によっても過酸化水 素の生成量が変化する。発光分光分析から、OH ラジカルの 発光強度は10-5から10-6 S/cm付近で最も大きいが、過酸化水 素の生成量も同様な傾向を示した。OH ラジカルのスカベン ジャーとして知られているいくつかのアルコールを添加する と過酸化水素の生成量が減少し、スカベンジャーの添加量と

図2 針電極より生ずる水中パルス放電

ストリーマ17)

図3 針対平板電極における正負パルス電圧 によるストリーマ長さの違い1)

図 4 印加パルス電圧を一定とした時の

水の導電率変化によるストリーマ長さの 違い1)

(3)

その反応速度定数との積(スカベンジングパワーと呼ぶこと とする)が大きいほど生成量が減少した。

3. 有機物質の分解

Lockeら2 - 4)は、プラズマ中で生成される高い化学的活性

を持つラジカルを利用して、水中の微量なフェノールを分解 する試みを行っている。針対平板電極形状を用いたストリー マ放電による反応を行っており、カーボン粒子を懸濁させる

ことにより導電率の高い水においてもストリーマが伸びるこ と、鉄イオンによるFenton反応を利用してOHラジカルの生 成量を増すとフェノールの減少がはやまることなどを報告し ている。

Sun らの有機物分解実験システムでは針対平板型電極系を 用いており、試料液体はマイクロチューブポンプで循環(20

~200 mL/min)している。有機物質はガスクロマトグラフィー および高速液体クロマトグラフィーで分析した。図 8に、フ ェノールとその中間生成物の濃度変化を滞留時間に対して示 す 9)。図はガスの注入がない場合であるが、フェノールはパ ルス処理によって着実に減少し、滞留時間がおよそ12分でな くなることがわかる。中間生成物である hydroquinone や

pyrocatechol、benzoquinoneは時間とともに濃度が増加し、あ

るところでピークとなり、最終的に消滅する。一方、未特定 の中間物質は(ここではx1として表している)、滞留時間が11 分のときに最大濃度となり、約20~22分で消滅する。注射針 電極より酸素ガスをバブリングした場合、フェノールと中間 生成物ははやく消滅するが、新たに未知の中間生成物が現れ る。しかしそれらも時間の経過とともに消滅する。最終的に TOCの8割以上が除去されており、それらは二酸化炭素と水 になっているものと考えられる。

水中のトリクロロエチレン濃度の変化を図 9 に示す(回分 式、初期濃度100 ppm)6)。トリクロロエチレンは揮発性が高 いため常温で揮発する。図中の下の曲線はパルス処埋を行わ ない時の経時変化であり、処理時間が45分で約15%減少し ている。パルス処埋を行うと、処理時間の増加とともに除去 率が増加し、20 分で 80%の除去率に達する。しかしながら 60 分のパルス処埋においても除去率は 90%にとどまってい る。テトラクロロエチレンは基本的にトリクロロエチレンの 場合と同様である。常温で揮発しやすいので、電圧を印加し ない場合でも濃度が徐々に減少する。パルス電圧を印加する

と、30分で83%の除去率に達する。そのあと、処理時間の増

図5 発光分光分析のための装置図概略18)

図 7 蒸留水中のパルス放電の印加エネルギーと過

酸化水素生成量18)

図6 導電率を0.1 mS/cmに調整した水の中での放電

スペクトル18)

図8 水中フェノールのストリーマ放電による分解9)

(4)

加とともに除去率はゆっくり増加する。

4. 気体のバブリングによる分解効率の向上

針電極先端からの水中プラズマ生成のメカニズムとして、

電極金属表面に生じる微細な気泡がその後のストリーマ放電 への引き金になっているものと考えられる。したがって、針 電極を中空ノズルに換えて気体を導入し、高電圧パルスを印 加することによって、より低い電圧で放電が開始するものと 考えられる。さらに、導入された気体中の放電によって、例 えば酸素ガス中では含酸素ラジカルが多量に生成することも 予想される。

水中のパルス放電によって多くの活性種(・OH, ・O, H2O2, O3等)が生成し、印加ピーク電圧の増加とともにラジカル発 生量は増加することがわかっている。Sun らはラジカルの発 光強度に与えるバブリングガスの影響を調べるために、酸素 とアルゴンガスを、注射針電極を通して注入した 7)。酸素ガ スをバブリングしたときのラジカル発光強度は、酸素ガスの 吹き込み量を増加するとともに大きくなる。初期におけるO とOHラジカルの増加速度ははやく、約50 mL/minの酸素ガ ス吹き込みで飽和した。Hラジカルは、最初に少し増加し、

その後はほとんど増加しないことがわかった。

反応器に酸素ガスをバブリングすると、OとOHラジカル が、バブリングしないときに比べて数倍、あるいは数十倍に 増加する。このときの印加ピーク電圧の影響を図 10、11に示 す。バブリングしないときに(図10)発光強度が一番強いのは Hラジカルで、次はOHラジカルであり、ピーク電圧の増加 とともに、全ラジカル発光強度が増加している。一方、バブ リングした場合(図11)でも、ピーク電圧の増加とともにすべ てのラジカルが増加しているが、それぞれのラジカルの増加 割合が異なっており、OとOHラジカルの増加が著しい。

5. 放電形態の脱色反応への影響

水中のストリーマ放電による有機物質分解のエネルギー 効率はさほど高くないのが現状である。この分解効率向上の ために、いくつかの試みがなされている。針対平板電極間距 離を変えると放電形態が変化する。Antoら19)は、電極間距離 を変えることによって、3 種類の放電形態に変化することを 報告している。電極間距離が長いときのストリーマ放電から、

少し近づけたときのストリーマ・スパーク混合放電、さらに 近づけるとスパーク放電へ移行する。ストリーマ放電は広い 範囲に放電チャンネルが広がるが、紫外線の発生量は少なく、

スパーク放電は強力な紫外線と衝撃波を伴うが、プラズマ領 域は狭い。一方、ストリーマ・スパーク混合放電は、ストリ

ーマ放電路が十分伸びたあとにスパーク状に放電するモード であって、両者の特徴を併せ持つものと考えられる。

図 12に、有機染料であるローダミンBの脱色反応を、入 力パルスエネルギーに対して示す。これより、ストリーマ・

スパーク混合放電形態は、ストリーマ放電に較べて脱色に対 して非常に効果的なことがわかる。スパーク放電の場合はさ ほど良好ではないが、過酸化水素を添加すると大きな変化が 見られ、添加しないときには80%脱色するのに360 J/mLの 電気エネルギーが必要だったのに対し、過酸化水素添加によ

図9 トリクロロエチレンの分解6)

図10 バブリングしないときの印加ピーク電圧に対す

るラジカル発光強度の変化28)

図11 酸素ガスをバブリングしたときの印加ピーク電 圧に対するラジカル発光強度の変化28)

(5)

りおよそ70~80 J/mLで同様な脱色がなされる。

これは、放電領域で発生する強度な紫外線によ って過酸化水素が分解され、反応性の極めて高 いOHラジカルが多量に生成するためと考えら れる。これは、他の有機化合物、例えばフェノ ールの分解についても同様な傾向を示す。

6. エネルギー効率向上の試み

針対平板電極を用いた水中プラズマ生成方法 においては、針先端からの気体注入によって放 電開始電圧が低下し、気体からの活性種生成効 果も伴って、有機物質分解のためのエネルギー 効率の向上が見られた。その他にも、いくつか の試みが報告されている。

Satoら20)は、絶縁板で水と気体を仕切り、ピ

ンホールからバブリングしながら、気泡にプラズマを同伴さ せることによって水中での放電を容易にした。すなわち、気 中の放電がそのまま水中の気泡中放電につながることになる。

ピンホールの代わりに多孔質セラミックスを用いることで処 理量の増加が可能となる。酸素ガスのバブリングが最も効果 的であり、ガスの流量が多いほど水中の有機物質分解の速度 が促進される。

Satoら21 - 23)は、水中の平行平板電極間にピンホールを開け

た絶縁板を挿入し、電極間にパルス電圧を印加すると、ピン ホールに電界が集中するために生じた絶縁破壊によって、プ ラズマが発生することを見出した。ストリーマの長さは負電 極側の方が長いこと、放電の衝撃によって破壊されないよう に絶縁板の機械的強度が要求されること、孔を流れる流速が 速くなると放電が止まること、などの現象を明らかにしてい る。染料の分解実験を行った結果、針対平板の場合と同様な エネルギー効率で脱色できることを報告している。

Sunkaら14)は、針金状金属電極あるいは平板電極表面に多

孔質セラミックコーティングを施した電極を作成した。それ らの小さな穴に電界が集中するため、水中で金属電極表面を 均一に覆うプラズマの生成が可能となった。

Lockeらの研究グループ24)は、水中と気中に電極を配置し、

印加したパルス電圧によって水中ではストリーマ放電を、気 中ではコロナ放電を同時に起こすことによって有機物質の分 解を試み、分解のためのエネルギー効率の向上が見られたと 報告している。

Brisset 25)、Hoebenら26)、その他の研究者によって、気中放 電によって水の処理を行う試みが行われている。有機物質を 含む水の表面上でコロナ放電を起こし、その放電によって生 じた活性種を気液界面を通して水中に吸収させ、水の処理を

行おうとするものである。気中放電のため放電電流が非常に 小さく、処理時間はかかるがエネルギー効率は高い。気中放 電をさらに強力なストリーマ放電にして、Satoら27, 29-30)は水 の処理を試みている。水表面上の針電極にパルス電圧を印加 し、生ずるストリーマ放電から生成する活性種を利用してい る。ストリーマが水表面に沿って全面に展開する条件で水処 理を行い、アルゴンガスを導入すると放電が強まるために、

高エネルギー電子衝突による水の分解効果が強まること、酸 素ガスの導入は活性種の生成に役立つこと等を報告している。

7. 余剰汚泥削減化プロセスへの応用

近年、余剰汚泥処理問題の解決策として、排水処理の段階 で発生汚泥量を減量する方法が注目されている 31)。これは、

返送汚泥の一部を改質槽へ送り、オゾンなどで処理した後に 生物処理槽へ返送するプロセスである(図 13)。返送汚泥の 一部は改質槽において易分解化されているため、生物処理槽 に返送された後に槽内の微生物によって分解される。その結 果、排水処理プロセス全体としての余剰汚泥の発生が抑えら れる。この活性汚泥の処理には現在オゾンや超音波等を用い [ーーーー]

入力 入力入力

入力エネルギーエネルギーエネルギーエネルギー[J/mL]

スパーク・ストリーマ混合放電

スパーク放電

ストリーマ放電

図 12 3 種類の放電モードによるローダミン B の脱色と過酸化水素添 加の効果(ローダミン B 濃度:0.01 g/L、過酸化水素濃度:8.8×10-3 mol/L) 19)

生物処理槽 生物処理槽 生物処理槽 生物処理槽

(微生物+O2

沈殿槽 沈殿槽 沈殿槽 沈殿槽 流入水流入水

流入水流入水

(有機物、H2O

処理水 処理水 処理水 処理水

H2O

余剰汚泥引 余剰汚泥引余剰汚泥引 余剰汚泥引きき抜抜き

(従来法)

沈殿汚泥沈殿汚泥 沈殿汚泥沈殿汚泥((((微生物微生物微生物)微生物))

改質槽 改質槽改質槽 改質槽

((

(生分解性物質生分解性物質生分解性物質生分解性物質 へのへのへの

への変換変換変換変換))) 難生分解性物質難生分解性物質難生分解性物質難生分解性物質 易生分解性物質

易生分解性物質 易生分解性物質 易生分解性物質

CO2

返送汚泥 返送汚泥返送汚泥 返送汚泥

図 13 余剰汚泥減容化プロセスの概念図

(6)

る研究がなされているが、水中パルス放電の溶菌効果、有機 物質分解効果を利用することにより、高いエネルギー効率で 処理できることが期待される。

水中プラズマによって汚泥のような溶液状の対象物を処理 する場合、対象物質に対してプラズマをいかに効率よく照射 するかが重要である。そこで、針対リング電極を用い、針先 端から生ずるプラズマが面状に広がるような放電形態を用い た。図14に示したように、針先端から生じた放電は周りを囲 んでいるリング電極に向かって放射状に伸びる。この放電路 はストリーマと呼ばれるが、ここではストリーマがリング電 極に到達する直前に電圧を下げることによってスパーク放電 を防ぎ、広域にわたってプラズマを発生させるための工夫を 行っている32)

汚泥改質効果に関しては、10,000 mg/Lに調整した下水余剰 汚泥に対して、広域ストリーマ放電処理を行い、評価項目と して汚泥固形分(SS)の減少量、一般細菌の殺菌率、および可 溶性画分のTOCの増加量を測定した。SSは12.5 J/mLのエネ ルギー投入で900 mg減少した後頭打ちとなった。また、可 溶性の TOC は投入エネルギーに比例して増加した。一方、

一般細菌の殺菌率は6.25 J/mLで85%となり、その後100 J/mL のエネルギー投入でも95%とほぼ横這いとなった。

酵母エキスとペプトンの人工下水を用いて4.5 Lの活性汚 泥処理槽を運転し、返送汚泥の一部をパルス放電処理するこ とにより汚泥削減を試みた。投入パルスエネルギーは25 J/mL で、従来の活性汚泥系からの発生汚泥量の5倍量にあたる汚 泥を処理することによって、余剰汚泥の発生が無い状態で処 理槽を運転することが可能であった。放電処理無しで汚泥を 引き抜かなかった活性汚泥系と、放電処理を行った活性汚泥 系の場合の、生物処理槽内汚泥濃度の変化を図15に示す。放 電処理では汚泥濃度が長期間にわたりほぼ一定に推移してお り、放電処理によって汚泥の増加が抑制されていることがわ かる。

8. バイオテクノロジーへの応用

水中プラズマによる化学反応の他にも、パルス電界による 水中懸濁微生物の不活性化や、微生物からの有用タンパク質 の選択的放出、酵素の活性回復等、多方面の応用が試みられ ている。微生物殺菌は、現在行われている熱殺菌と異なり、

対象物を加熱しないため、食品が本来もっている香りやビタ ミン類を損傷せずに殺菌できるという特徴を有する。また、

組換え大腸菌を使って有用なタンパク質を産生させ、それら を選択的に放出させる方法によれば、現在行われているよう な細胞すべてを破壊してから精製する方法に比べ、高い純度 で目的とする物質のみが得られる。また、水中プラズマによ って下水処理場から排出される活性汚泥の削減が可能ともさ れている。

9. おわりに

ここでは、水中プラズマの基本的性状と、その環境修復へ の応用に関する概要を述べた。今後ますます発展すると考え られる、水処理応用に対する電気的方法の詳細に関しては、

Lockeらのレビュー33)を参考にされたい。

図 14 針対リング電極間で生ずるプラズマの様子 充放電コンデンサ容量:5.3 nF、パルス電圧:70 kV

0 00 0 2000 2000 2000 2000 4000 4000 4000 4000 6000 6000 6000 6000 80008000 80008000

000

0 20202020 40404040 60606060 ((((mg/L))))

運転日数 (( day)) 放電処理無し

放電処理あり

図 15 余剰汚泥減容化プロセスの経時変化

(7)

参考文献

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17) 表紙写真参照, 応用物理, 69(3), (2000).

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30) Sato, M. Soutome, T. Mii, S. Ohshima, T. and Yamada, Y.:

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31) Yasui, H., et al.: Wat. Sci. Technol., 30, 11 (1994).

32) 三浦雅彦, 他: 第36回水環境学会年会講演集, p. 516 (2002).

33) B. R. Locke*, M. Sato, P. Sunka, M. R. Hoffmann, and J.-S.

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参照

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