Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism
ETC2.0プローブデータ等を活用した OD表構築に向けた検討
令和2年10月14日
国土交通省 道路局 企画課 道路経済調査室
資料5
次期OD調査の方針(第3回検討会にて決定)
○次期 OD 調査では、 ETC2.0 データを活用した OD 表作成手法の 確立に焦点をあてることとし、サンプル数は H27 調査と同規模 で設計することを基本とする。
○次期 OD 調査を契機に、 ETC2.0 から OD データを作成する技術 開発や必要なシステム改修を実施し、 OD データの常時観測化 を目指す
○なお、引き続き、次期 OD 調査実施までの期間で、 ETC2.0 データを活用した OD 表の補正・細分化手法を検討し、その範 囲内でサンプル数の縮減を検討する。
第
3
回検討会 はじめに乖離要因 仮説 検証結果
普及台数の 偏り
ETC2.0
データは、地域の 普及台数の違いで、デー タの取られ方に地域的な 偏りがあるETC2.0
データは、H27OD
調査と比較して、取得が極 めて少ないブロックも存在する。(北海道、南九州、沖縄 等)⇒地域別発生量を精度高く捉えるための方法、それを前 提とした分布補正手法の検討が必要
デ ー タ取 得 の 仕 組 みに 起 因 する偏り
(路側機を通過 す る こ と が 条 件)
ETC2.0
データは、路側機 から離れた地域のトリッ プや、路側機を通過しな いトリップを捕捉しづら い(地域内トリップ等)ETC2.0
データは、地域内々トリップの構成比がやや 低い。その傾向は最寄り路側機までの距離が遠くな るほど顕著となる。⇒内々・内外比を精度高く捉えるための方法、それを前 提とした分布補正手法の検討が必要
利用特性の 偏り
ETC2.0
装着車は高速道路 を利用しやすく、長距離 移動が多いETC2.0
データは、距離帯分布がわずかに異なってお り、また、車種ごとにもやや異なる傾向がある。⇒高速利用有無を分けて利用特性の分析を行うことや、
距離帯分布の補正手法の検討が必要
その他
ETC2.0
データは、目的ト リップを把握できないた め、トリップ判別方法の 条件によって、値が変動 するトリップ判別は、設定する時間閾値の違いに応じて データ特性がわずかに変化してしまう
⇒トリップ長分布等が、目的トリップの傾向に一定程度 整合するようなトリップ判別方法の検討が必要
はじめに
ETC2.0データの検証結果と対応方針
▼ETC2.0データの検証結果(第3回検討会)
OD
補正手法 の検討トリップ判定 手法の検討 第
3
回検討会2
ETC2.0等を用いたODデータ作成に向けて
はじめに
調査取組
ETC2.0等から目的トリップに近いODデータを生成
⇒トリップ判定手法の改良(ルールベース・機械学習等)
全国規模の統計調査の サンプル数を縮減
⇒OD表を統計値等と 整合させる補正手法の開発
エリア規模のOD分析を 使いやすい形で提供
⇒常時観測OD作成方法の マニュアル化(OD逆推定等)
きれいなODデータが取れるよう になった前提で技術開発
ETC2.0等を用いたODデータ作成の 技術的手法開発
次回調査 次々回
調査
次回OD調査データを
用いた分析 適用判断
*想定スケジュール
⇒本資料の対象
※精度向上に向けた分析も含む
OD表作成に向けた手法開発の検討内容
はじめに
4
2.全国規模の統計調査のサンプル数を縮減
【目的】統計調査(
OD
調査)のサンプル数の縮減を目指す【手法】統計調査から得られた指標を制約条件に
ETC2.0
のOD
を補正する手法を検討①:地域間トリップ数を制約とした
OD
補正拡張した平均成長率法による
ETC2.0
データのOD
表補正を検討1.ETC2.0等から目的トリップに近いODデータを生成
【目的】
ETC2.0
等から目的トリップに近いOD
データの生成を目指す【手法】
AI
(ルールベース、機械学習)によるトリップを判定する手法を検討①:ルールベースによる判定ルールの改善
時間閾値・距離閾値だけでなく、滞在施設の特性なども踏まえたトリップ判定ルールの 改善を検討
②:機械学習による判定ルールの改善
長い滞在と短い滞在をラベリングしてトリップの切れ目を適切に判定するなど、トリッ プ判定手法の高度化を検討
1 ETC2.0等から目的トリップに近いODデータを生成
①:ルールベースによる判定ルールの改善
6
○統合サーバ改修後(トリップ分割ルールの変更や運行
ID
重複の是正)の2019
年10
月デー タを用いて、ETC2.0
データのトリップ情報を確認。・極端にトリップ数が多い車両のデータが存在しており、トリップ判定に課題
・高速道路本線上など、真の起終点とは明らかに異なるデータが含まれている
・旅行速度の極めて高いサンプルが含まれており、重複通信・システム上のエラー等が疑われる
データ:ETC2.0データ(様式1-2) ※2019年10月1日 6
▼ETC2.0データの起終点位置
(静岡市周辺の例)
▼位置データの時間と距離の差
1-① ルールベースによる判定ルールの改善
ETC2.0データのトリップデータ(統合サーバ改修後)
背景
ルールベースによる判定ルールの検討
○時間閾値を
15
分と60
分とした場合のトリップ統合を試行○閾値
15
分が日平均トリップ数でみるとOD
調査と近い結果となったが、トリップ数分布は、OD
調査にない1
トリップが小型車で2
割弱、大型車で1
割弱出現⇒目的地の施設により滞在時間が異なることが要因か?(買物、通院、
SA/PA
など)H27OD調査 ETC2.0
(オリジナル)
ETC2.0
(時間閾値15分)
ETC2.0
(時間閾値60分)
小型車 3.14 5.98 2.96 2.20
大型車 4.31 19.62 5.01 2.56
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
H27OD調査
ETC2.0(オリジナル)
ETC2.0(時間閾値15分)
ETC2.0(時間閾値60分)
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
H27OD調査
ETC2.0(オリジナル)
ETC2.0(時間閾値15分)
ETC2.0(時間閾値60分)
▼日平均トリップ数の比較
▼トリップ数分布(小型車) ▼トリップ数分布(大型車)
1-① ルールベースによる判定ルールの改善 手法の検討
※オリジナル:以下いずれかの場合、OD分割
①走行履歴2点間距離500m以上
②走行履歴2点間時刻差10分以上
③最終測位を受信後24時間経過
【手法の検討】
○ルールベースによるトリップ判定ルールの改善を目指し、時間閾値を
15
分、60
分とした場 合のトリップ結合を試行○
15
分を時間閾値とした場合、日平均トリップ数はOD
調査と近い結果に○ただし、トリップ数分布では、
OD
調査にない1
トリップ/
日が一定数出現⇒目的地の施設により滞在時間が異なることが要因か?
8
手法の検討結果/今後の検討方針
まとめ
1-① ルールベースによる判定ルールの改善
【今後の検討方針】
○目的地の施設ごとに時間閾値を設定することを検討(買物、通院、
SA/PA
など)→
既存統計調査(OD
調査、PT
調査等)の施設別平均立ち寄り時間の活用を想定○この他、ある程度データをクリーニングした上で時間閾値による判定を行うことを検討
・平均トリップ長から大きく逸脱しているものを異常値として除外
(数
m
のような短距離トリップ 等)・起終点位置になりえない場所が起終点になっている場合は前後のトリップを結合
(高速道路上 等)
307 313 352 418
540 519
424 452 458 470
514
253
554 548 568
483
152 137 132 135
95 103 141
59 73
375
140 217
140 60
108 35 0
100 200 300 400 500 600 700 800
滞在時間(分)
通勤通学 通勤通学以外
H27OD調査 施設別滞在時間
参考
1-① ルールベースによる判定ルールの改善
▼H27OD調査 施設別滞在時間(目的別)
502 442
511
556 546
426 431 459
576 593 640
547 593
535 611
508
154 99
48
113 85 98 80
48 65
316
142 178 137
33 87
39 0
100 200 300 400 500 600 700 800
滞在時間(分)
通勤通学 通勤通学以外
平日休日
通勤・通学 通勤・通学以外
通勤・通学 通勤・通学以外
10
1 ETC2.0等から目的トリップに近いODデータを生成
②:機械学習による判定ルールの改善
教師なし機械学習を用いたAI解析の検討
○様々な分野で近年活用が進む
AI
解析技術を活用したトリップ判定ルールの改善を検討。○一例として、機械学習によるトリップ判定ルールの改善を目指し、教師なし学習の適用可 能性を検討。
⇒系列モデリングによるクラスタリングでは、移動と滞在の判定に課題が残る。
データ:ETC2.0データ(様式1-2) ※2019年8月13日 ※1次メッシュ(5437)。
▼教師なし学習(系列ラベリング)の試行結果
拡大
滞 在
遅い 移動
速い 移動
1-② 機械学習による判定ルールの改善 手法の検討
12
1-② 機械学習による判定ルールの改善
手法の検討結果/今後の検討方針
まとめ
【手法の検討】
○機械学習によるトリップ判定ルールの改善を目指し、教師なし学習の適用可能性を検討
○一例として、系列モデリングによるクラスタリングを実施したが、移動・滞在に課題が残る。
【今後の検討方針】
○ある程度の事前処理を行った上で、機械学習によるトリップ判定を行うことを検討
2 全国規模の統計調査サンプル数の縮減
①地域間トリップ数を制約としたOD補正
OD補正の方法
○将来
OD
量の推計手法の1
つに、現在のOD
パターンを活用する「現在パターン法」があり、計算手法として、「平均成長率法」と「フレーター法」がある
a b c 計
a b c 計
a b c 計
a b c 計
現況将来
▼平均成長率法
T = 1
2 +
▼フレーター法
T = 1
2 ∑ + ∑
14
: G /
: /
:ゾーンbの発生量の成長率
:ゾーンbの集中量の成長率
ゾーンbの 将来OD
2-① 地域間トリップ数を制約としたOD補正 手法の検討
OD補正方法の改良
○現在パターン法の現況
OD
表をETC2.0
データ、将来OD
表を道路交通センサスデータとし て、ETC2.0
データから得られたOD
表を補正する方法を検討○この際、市町村内々の短距離など
ETC2.0
で取得されにくいトリップの影響や通常の方法※ におけるOD量の多い内々が過大補正されてしまうことによる影響を緩和するため、新たに 距離ランク別のトリップ数を変数に追加し、拡張した平均成長率法による補正を検討(フ レーター法の拡張は技術的に困難)▼拡張した平均成長率法(イメージ)
a b c d e 計 a
b c d e 計
▼拡張した平均成長率法
= × ( + A + )
OD交通量: 3
tijk :推計OD交通量(ETC2.0のOD交通量)
Gi :発生交通量の成長率 Aj :集中交通量の成長率 Dk :距離ランク別の成長率
※成長率:センサス交通量/推計交通量(ETC2.0交通量)
→ 距離ランクを拡張 距離ランクが
「内々」「内外100km以内」「内外100km以上」の例
内々
内外~100km
内外100km~
D
手法の検討2-① 地域間トリップ数を制約としたOD補正
※フレーター法、平均成長率法
今回検討したケース
○今回の検討では、市町村内々/内外(距離
2
パターン)の計3
パターンで距離帯を設定○距離帯の設定は、市町村間距離帯別の累積トリップ数分布の変曲点 (トリップ数が少なく なる距離帯)を確認し、設定
ケース
車種
1)乗用車 2)小型貨物車 3)普通貨物車
備考フレーター
法 区分なし 区分なし 区分なし 比較用の
基準ケース
①
平均成長率法 区分なし 区分なし 区分なし 比較用の
基準ケース
②
拡張平均成長率法
市町村内々/
~150km/150km~
市町村内々/
~150km/150km~
市町村内々/
~300km/300km~
微分して10度変化点
※50km刻みで定義
▼今回の検討ケース
2-① 地域間トリップ数を制約としたOD補正 手法の検討
16
63.3% 61.3% 65.0% 64.2% 63.3%
36.1% 38.1% 34.4% 35.2% 35.9%
0.6% 0.6% 0.6% 0.6% 0.7%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
H27OD ETC2.0 フレーター 平均 拡張平均
H27OD ETC2.0
(補正前)
フレーター 法
平均 成長率法
拡張平均 成長率法 75,143,332 26,582,946 77,081,172 76,072,054 75,125,021
~50km 41,061,517 15,590,377 37,980,151 38,924,421 39,800,766 50~100km 1,742,517 951,147 2,745,882 2,798,312 2,839,375 100~300km 639,110 251,839 724,709 736,756 859,232
300km~ 87,419 5,563 15,394 15,766 24,184
118,673,895 43,381,872 118,547,308 118,547,308 118,648,578 距離ランク
市区町村内々
内々以外
合計
補正結果① 距離ランク別のトリップ数(乗用車)
2-① 地域間トリップ数を制約としたOD補正 手法の検討
制約条件の追加に より、市区町村 内々の比率が補正
トリップ
82.5%
96.3% 93.3% 93.2% 91.4%
17.5%
3.7% 6.7% 6.8% 8.6%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
H27OD ETC2.0 フレーター
法
平均 成長率法
拡張平均 成長率法 内々以外~100km 内々以外100km~
H27OD ETC2.0
(補正前)
フレーター 法
平均 成長率法
拡張平均 成長率法
~50km 573.2 199.0 569.0 582.1 597.4
50~100km 102.1 35.2 141.3 144.4 147.9
100~300km 103.1 9.0 49.4 50.4 65.9
300km~ 39.8 0.0 1.9 2.2 4.5
818.2 243.3 761.6 779.1 772.5
距離ランク 市区町村内々
内々以外
合計
計算対象外
補正結果② 走行台キロ(乗用車)
18 補正により長距 離帯の構成比が 増加したが、
オーナーと一致 するまでの補正 はできていない
※グラフは 市区町村 内々を除 いた比率
2-① 地域間トリップ数を制約としたOD補正 手法の検討
百万台 キロ
2-① 地域間トリップ数を制約としたOD補正
手法の検討結果/今後の検討方針
まとめ
【手法の検討】
○
ETC2.0
データのOD
補正手法として、平均成長率法を拡張した手法を検討○発生・集中交通量のみを制約としたフレーター法や平均成長率法と比べ、市区町村内々、
及び距離制約を設けたカテゴリのトリップ数構成比が
H27OD
調査の構成比(≒真値)の構 成比に近づいた⇒意図した制約条件に従い補正ができており、有効な手法であることを確認
○市町村内々と任意の距離帯の
3
区分による制約のみでは、走行台キロの補正は不十分【今後の検討方針】
○距離カテゴリーを細分化することで、走行台キロの補正の精度向上が可能か検証
○ただし、カテゴリーを細かくするほど、カテゴリーごとの精度を担保するため、制約条件とな るオーナーインタビュー
OD
調査のサンプル数を増やす必要がある。結果、調査コストが増 大する可能性があるため、補正したOD
表の精度と調査コストのバランスに留意しながら、距離カテゴリー区分を検討する必要がある