令和元年度
地方公営企業実務講習会
~決算~
令和元年10月8日
埼玉県企画財政部市町村課
公営企業担当
目次
1.総則
1-1.公営企業会計の特徴 p.2
1-2.決算の調製者 p.5
1-3.決算書類の種類 p.6
2.決算書類
2-1.決算報告書 p.7
2-2.貸借対照表 p.11
2-3.損益計算書 p.13
2-4.剰余金計算書 p.15
2-5.剰余金処分計算書 p.16
3.決算附属書類
3-1.事業報告書 p.17
3-2.キャッシュ・フロー計算書 p.18
3-3.各明細書 p.20
3-4.決算書類と附属書類の関係 p.21
4-1.試算表の作成 p.22
4-2.決算整理 p.23
4-3.資産に関する決算整理 p.24 4-4.損益に関する決算整理 p.25
4-5.精算表の作成 p.28
4.決算の手続き
1-1. 公営企業会計の特徴
(1)現金主義と発生主義
支払済金額 40万円
収入済金額
60万円 支払済金額
40万円
収入済金額 60万円 未収金 20万円 未払金
60万円
黒字 20万円
赤字 20万円
現金主義(官公庁会計) 発生主義(公営企業会計)
1-1. 公営企業会計の特徴
(2)費用収益対応の原則(費用配分の原則)
当年度 第1年度 第2年度 第3年度 第4年度 第5年度
(翌年度)
(耐用年数に割り当てる)
固定資産
(繰延)
↓ 減価償却
当年度 翌年度
前払費用
(繰延)
当年度 翌年度
未払費用
(見越計上)
(3)2本立ての決算
公営企業は、予算制度を採用しているために必要となる決算報告書の ほか、「企業」として、営業成績や財務状態を示すために必要な財務諸表 の作成が必要
1-1. 公営企業会計の特徴
1-2. 決算の調製者
公営企業会計の決算の調製者 → 管理者(法第30条第1項)
ただし、
管理者を置かない企業(法第7条ただし書)
財務規定等が適用される企業(法第2条第2項、第3項)
長(法第8条第2項、法第34条の2)
① 管理者が決算を調製し、 5月31日までに長に提出(法第30条第1項)
② 長は、監査委員の審査に付す(法第30条第2項)
③ 長は、審査結果と併せて7月1日以降最初の定例議会へ提出(法第30条第4項)
監査委員 長
議 会
住 民 管理者
付審査 意見 付認定 認定・不認定 決算日 3/31
決算書類 を提出(5/31まで)
7/1以降最初の議会 要領の公表
※法・・・地方公営企業法
1-3. 決算書類の種類
決算書類(法第30条第7項)
○決算報告書(則別表第9号様式)
○財務諸表 ・損益計算書(則別表第10号様式)
・剰余金計算書又は欠損金計算書(則別表第11号様式)
・剰余金処分計算書又は欠損金処分計算書(則別表第12号様式)
・貸借対照表(則別表第13号様式)
決算附属書類(法第30条第1項)
○証書類
○事業報告書(則別表第14号様式)
○その他書類(令第23条) ・キャッシュ・フロー計算書(則別表第15号様式)
・収益費用明細書(則別表第16号様式)
・固定資産明細書(則別表第17号様式)
・企業債明細書(則別表第18号様式)
※則別表・・・地方公営企業法施行規則別表 令 ・・・地方公営企業法施行令
2-1. 決算報告書
(1)決算報告書とは
予算に対する実績を示すため、「当該予算の区分に従って作成した」
報告書≒ 官公庁会計の決算
(2)決算報告書の形
収益的収支(3条収支)と資本的収支(4条収支)に関する予算と決その実 績である決算との対照表
・3条収支…料金収入、維持管理費用などの収益に関する収支
・4条収支…建設改良費などの資産形成費や企業債などの収支
※予算様式の中の3条、4条にそれぞれ記述されることから、こう呼ばれる
2-1. 決算報告書
(3)弾力条項(法第24条第3項)
業務量の増加に因り地方公営企業の業務のため直接必要な経費に不足 が生じたときは、管理者は、当該業務の増加に因り増加する収益に相当す る金額を当該企業の業務のため直接必要な経費に使用することができる。
○「地方公営企業法第24条第3項の規定による支出額」
収益的支出のうち、弾力条項を発動した場合の支出額を記載
○「地方公営企業法第24条第3項の規定による支出額に係る財源充当額」
弾力条項を発動した場合の増加収入額のうち、条項発動による支出額 と同額を記入
※弾力条項の発動による収支は、資本的収支においては考えられないため、資本的 収支の様式には項目が設けられていない
2-1. 決算報告書
(4)繰越予算に対する決算
前年度からの繰越額及び翌年度への繰越額について記載
【種類】 ① 建設改良費の繰越(法第26条第1項)
② 事故繰越(法第26条第2項)
③ 継続費に係る逓次繰越(地自法212条、令第18条の2第1項)
(5)繰越における報告書作成時の注意
「地方公営企業法第26条の規定による繰越額に係る財源充当額」
→当該年度中に収入されるもののみを計上 留保財源は計上しない (例)
建設改良費の繰越額 200万円
(財源)
補助金 50万円 ←計上する 繰越留保資金 150万円 ←計上しない
(6)財源補てん説明
資本的収入額が資本的支出額に不足する額の補てんの説明
※翌年度に繰り越される支出額の財源として使用される金額を控除して 記載する。
≪記載方法≫
「資本的収入額(翌年度へ繰り越しされる支出の財源に充当する額
○○円を除く。)が資本的支出額に不足する額○○円は、…」
※一時借入金は補てん財源とはならない。決算においてやむを得ず一時 借入金を持って措置した場合はその旨注記する。
2-1. 決算報告書
会計の原則
2-2.貸借対照表
① 真実性の原則(令第9条第1項)
② 正規の簿記の原則(令第9条第2項)
③ 資本取引と損益取引との区分の原則(令第9条第3項)
④ 明瞭性の原則(令第9条第4項)
⑤ 継続性の原則(令第9条第5項)
⑥ 保守主義の原則(令第9条第6項)
損益計算書の原則
① 収益費用対応の原則
② 発生主義の原則
③ 実現主義の原則
④ 総額主義の原則 貸借対照表の原則
① 完全性の原則
② 総額主義の原則
③ 明瞭性の原則
④ 継続性の原則
(1)貸借対照表とは
一定の時点(通常は決算日)における企業の財産の状況を表したもので、
決算時に作成が義務付けられている
(法第30条第7項)
記載項目
企業が持っている資産(現金、建物、備品など)
企業が抱えている負債(借入金など)
企業が抱えている資本(資本金など)
企業の総資本がどのように調達されたか、
投入された資本がどのように運用されているかを示す
2-2.貸借対照表
負債
資本
資産
(1)損益計算書とは
一営業期間における企業の経営成績を明らかにするための報告書で、
決算時に作成が義務付けられている(法第30条第7項)
期間中に得た全ての収益と、支出したすべての費用を記載
→最終的に発生した利益(損失)が明らかになる 利益(損失)が生み出された経緯を把握できる
過去の経営を分析し、将来の方針を立てるのに役立つ
2-3. 損益計算書
2-3. 損益計算書
(2)損益計算書のしくみ
損益計算書は、以下の区分を設けて作成
※それぞれ値がマイナスの場合は「損失」となる
r
(1)剰余金計算書とは
剰余金(利益剰余金及び資本剰余金)又は欠損金が年度中どのように 増減変動を示す報告書
【H29剰余金計算書】
H28決算時 H28処分時 H28処分後 H29決算時 H29処分対象
2-4.剰余金計算書
ik
(1)剰余金処分計算書とは
未処分利益剰余金の処分についての計算書
(2)未処分利益剰余金の処分時期
未処分利益剰余金の処分は、通常決算確定後におこなうが、
剰余金の処分について条例を定めている場合には決算年度の 翌期首から積立等、処分が可能。
2-5.剰余金処分計算書
管理者は、決算を調製するとともに、これに合わせて当該年度の事業報告 書を作成して事業年度終了後2か月以内に地方公共団体の長に提出しな ければならない(法第30条第1項)。
○当該年度の事業の経営実績の概要についての公式記録として、当該年 度の収支、損益等財務に関する実績表である決算とともに当該事業年度 の事業経営の総しめくくりとして重要な意味を持つ。
3-1.事業報告書
(1)キャッシュ・フロー計算書とは
一会計期間の企業の活動をキャッシュの動きで表したもの。
○期首の貸借対照表と期末の貸借対照表のキャッシュの増減を示す
○損益計算書で計算された利益がどの程度キャッシュとなったかを示す
3-2.キャッシュ・フロー計算書
3-2.キャッシュ・フロー計算書
(2)3つの活動区分
・業務活動によるキャッシュ・フロー
通常の業務活動の実施による資金の増減
・投資活動によるキャッシュ・フロー
固定資産や投資資産の取得及び売却による資金の増減
・財務活動によるキャッシュ・フロー 資金調達による資金の増減
(3)キャッシュ・フローの表示方法
・直接法
主要な取引ごとにキャッシュ・フローを総額表示
・間接法
損益計算書の当年度純損益に、非資金損益項目などの加減算 をして表示
(1)収益費用明細書
・損益計算書の内訳説明
・収益・費用を「節」まで分類して表示する
(2)固定資産明細書
・貸借対照表の固定資産の内訳説明
・資産の種類ごとに年度中の固定資産の増減を表示
(3)企業債明細書
・貸借対照表の企業債の内訳説明
・借入した企業債の種類毎に借入条件等の詳細を表示する
3-3.各明細書
3-4.決算書類と附属書類の関係 え
貸借対照表 損益計算書
資産の部 負債の部
固定資産 固定負債
流動負債
流動資産 繰延収益
現金預金 資本の部 資本金 資本剰余金
繰延資産 利益剰余金
当年度未処分利益剰余金 剰余金処分計算書 剰余金合計
業務活動によるCF
投資活動によるCF 財務活動によるCF
凡例
業務活動によるCF 決算書類
投資活動によるCF
決算附属書類 財務活動によるCF
資金期末残高 キャッシュ・フロー計算書
(間接法)
資金期末残高 当年度純利益
直接法 キャッシュ・フロー計算書
収益費用明細書 固定資産明細書
剰余金計算書 企業債明細書
営業収益 営業費用 営業外収益 営業外費用
当年度純利益 当年度未処分利益剰余金
残高試算表の作成
年度中の取引の仕訳が総勘定元帳へ正しく転記されているか検証するため 試算表を作成 ※総勘定元帳・・・すべての取引を勘定科目ごとに記録するための帳簿
①総勘定元帳の勘定ごとに貸借それぞれの合計を算出
②貸借の差額(残高)を算出
③算出した残高を試算表のそれぞれの勘定口座に記入
④借方金額の合計と貸方金額の合計を算出し、双方の 金額が一致することを確認
4-1.試算表の作成
借方 貸方
8,000 1,000 7,000 6,000 15,000 9,000 2,000 3,000 残高 13,000 現金勘定
合計残高試算表
残高 合計 合計 残高
13,000 32,000 現金 19,000
2,000 4,000 未収金 2,000
6,000 一時借入金 7,000 1,000
3,000 未払金 5,000 2,000
資本金 8,000 8,000 給水収益 19,000 19,000 5,000 5,000 修繕費
9,000 9,000 給料 1,000 1,000 支払利息
30,000 60,000 合計 60,000 30,000
借方 貸方
勘定科目
年度中における総勘定元帳の記入は、日々の取引に基づいて行われるた め、日常の取引として現れない財産の増減や損益の発生は記入されない。
(例)
・たな卸資産減耗費の計上 ・固定資産の減価償却
・前払費用の繰延 ・前受収益の繰越
・引当金の計上 等
⇒これらを正しく決算に反映させる処理を決算整理という
4-2.決算整理
(1)固定資産の減価償却
土地以外の固定資産(建物、機械設備、備品等)は、使用又は時間の経過 によってその経済価値が減耗していくため、決算時に減価償却費を費用に計 上して整理する
【間接法】で処理
固定資産の帳簿価格から減価償却費の額を直接控除せず、
減価償却累計額として記述 ※無形固定資産は直接法で帳簿価額から直接減額
【事例】
機械設備の減価償却費100,000円を計上した。
4-3.資産に関する決算整理 2
借方 金額 貸方 金額
決算時 減価償却費 100,000 減価償却累計額 100,000
(1)前払費用の計上
当年度中に既に支払いがなされた費用のうち、決算時において翌年度以降 の費用となるべきものが含まれている場合は、前払費用として翌年度へ繰り延 べる。
【事例】10月1日に保険料12カ月分(60,000円)を支払った。
4-5.損益に関する決算整理
借方 金額 貸方 金額
支払い時 保険料 60,000 現金 60,000
決算時 前払費用 30,000 保険料 30,000
翌年度 保険料 30,000 前払費用 30,000
(2)前受収益の計上
当年度において既に現金を受け取った収益のうち、翌年度以降の収益が含 まれている場合には決算時にその前受けの部分を前受収益として整理して翌 年度に繰延べる。
【事例】土地を5年間賃貸することとなり、毎年9月30日に10月1日以降1年分 の賃貸料(120,000円)を受け取ることとした。
4-5.損益に関する決算整理
借方 金額 貸方 金額
9月30日 現金 120,000 賃借料収入 120,000
決算時 賃借料収入 60,000 前受収益 60,000
翌年度 前受収益 60,000 賃借料収入 60,000
4-5.損益に関する決算整理
(1)前受金と前受収益
・前受金・・・将来役務の提供等を一定の給付を行うことを約束して、その履行前に 相手方から受け取った対価。
・前受収益・・・一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、未だ提供して いない役務に対し支払いを受けた対価。
(2)未払金と未払費用
・未払金・・・特定の契約により債務が発生しているにもかかわらず未だその支払いが 終わらないもの。
・未払費用・・・一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、すでに提供 された役務に対して未だその対価の支払いが終わらないもの。
(3)引当金と積立金
引当金は将来の支出の原因となる事実が引き当てた事業年度にすでに発生している ことを踏まえ費用として計上されるのに対し、積立金は将来予定している支出の原因と
精算表とは、残高試算表に決算整理を加え、 損益計算書と貸借対照表を 作成するまでの過程を一つの表にしたもの。
精算表の作成手順
①残高試算表からすべての勘定を精算表の残高試算表欄に記入。
②決算整理を行った場合は、修正記入欄に記入。
③残高試算表欄の各勘定の金額のうち費用と収益に属するのを損益計算書欄に、
資産、負債及び資本に属するものを貸借対照表欄へ移す(修正記入欄に記入が ある場合は加減する)。
④損益計算書欄の貸借差額を、純利益又は純損失として金額の少ない側に記入。
⑤貸借対照表欄でも貸借差額を、純利益又は純損失として金額の少ない側に記入。
4-6.精算表の作成
4-6.精算表の作成
借方 貸方 借方 貸方 借方 貸方 借方 貸方
円 円 円 円 円 円 円 円
固 定 資 産 356,214,047 7,483,800 0 8,146,800 356,149,047 1,565,600 有 形 固 定 資 産 355,559,047 7,483,800 0 8,081,800 355,559,047 15,565,600
建 物 12,559,256 125,592,560
建物減価償却累計額 386,700 984,700 1,371,400
・・・
流 動 資 産 20,308,924 0 70,000 2,663,831 17,705,093 0
現 金 預 金 6,713,194 6,713,194
・・・
固 定 負 債 0 136,690,040 0 329,000 0 137,019,040
企 業 債 135,807,640 0 135,807,640
・・・
流 動 負 債 0 9,548,130 3,111,196 486,300 0 6,923,234
未 払 金 3,180,194 15,600 466,300 0 3,490,494
・・・
資 本 金 0 176,543,549 0 0 0 176,543,549
資 本 金 176,543,549 0 176,543,549
・・・
営 業 収 益 0 61,341,600 0 0 0 61,341,600
給 水 収 益 57,624,600 0 57,624,600
・・・
営 業 外 収 益 0 355,140 12,000 709,024 0 1,052,164
受 取 利 息 118,140 95,000 0 213,140
・・・
営 業 費 用 42,151,341 0 8,502,759 25,000 50,629,100 0
配 水 及 び 給 水 費 11,677,400 100,000 11,777,400 0
・・・
営 業 外 費 用 7,799,700 0 0 0 7,799,700 0
支 払 利 息 7,708,200 7,708,200 0
・・・
当 期 純 利 益 3,984,964 0 0 3,984,964
修正説明
勘定科目 残高試算表 修正記入 損益計算書 貸借対照表
精算表
(令和N年度3月31日)