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第62回日本小児保健協会学術集会 シンポジウム3
乳幼児健診 現在・過去・未来
多職種との連携・協働により口腔に関わりを持とう
〜歯科衛生士の立場より〜
白 田 千代子(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔疾患予防学分野)
1.母子保健における口腔についての対策
わが国の母子保健対策の歩みは,1937年の保健所法・
母子保健法に始まる。この当時は,歯や口のことなど は,さほど重要視されていなかった。1961年の保健施 策,新生児訪問指導,3歳児健康診査が施行され,高 度成長期の社会変化や環境変化に伴い,小児う蝕の急 増により,乳幼児からのう蝕予防を目指し,1977年1 歳6月児健康診査施行とともに,徐々にう蝕罹患率は,
減少させる成果を示すことができているが,先進国の 中では,今なお,う蝕罹患率は一番高率である。1994 年地域保健法の公布とともに,エンゼルプラン策定,
2000年には「健やか親子21」が策定され,乳幼児健診 における育児支援事業,食育等推進事業,少子化社会 対策基本法成立,2010年子ども・子育てビジョン策定
など社会状況に対応し,母子保健施策の変化がみられ る。口腔については,1970年代の小児のう蝕罹患率が 高率の時代から,現在は,その児を取り巻く環境や生 活を把握することにより,保健衛生の分野では,多職 種による児への「歯・口腔の取り組み」を展開してい
る1)。
ll.現在までの口腔保健の取り組み
う蝕の多発時代は,歯科関係者は歯科関係者のみの 対応でしか考えられず,目の前のう蝕の洪水に対処す ることに夢中で,原因の原因を抑えることができない 状況であった2)。しかし,原因を抑えてう蝕発生の低 年齢化対策をするため,1歳6月児健診実施をきっか けに,歯の萌出前からの口腔疾患予防対策を目標とし
た,母親(両親)学級や乳幼児健診時からの健康を意 識した生活習慣の支援を実施してきている(図1,2)。
生活習慣病対策を施策に取り込むと,生活を意識した 対策を障害児の口腔保健や口腔の機能についての対
両親学級
内容は,体験学習
事務職・保健師・管理栄養士 歯科衛生士・地域住民(学級 体験者)・助産師・臨床心理 士・保育士・地域ボランティア
(医師・歯科医師)
妊婦・母親体験
図1
遡魎巡≡壁壁…堕二麺!三?□鱒 魎ρ塑じ。]
◇乳歯列は、一般的に2歳6ヶ月頃に完成
◇ロ帥捨鯵の直昼・但書紐箇によu ■列やその後の永久歯の咬合状薗にも影■を及ぼす。
難藁
4か月頃
歯胚形成 胎生7〜}0週,
]石灰化形成
胎生4〜6か月 工歯冠形戒
1L〜11か月 歯埴1、ふ、〔糞㌔る
鰯
團幽1 8か月頃
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獺國12か月頃 18か月頃
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麟 36か月頃
A乳中切歯・
B撃し側切歯 c 乳犬歯 ぴぷ一x口歯
壬・第二乳段歯
・根吸収開始
、4〜8年ノ 1
脱落6〜12年・
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1 萌出 歯根発成
A 上顎ゆか月下顎Bか月 1ト・年 B 上顎11か月下顎}2か月 1㌧年〜2年 ciヒ顎励・月下顎21か月 31、年 Dば顎14か月下顎励・月 }21・年 i
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下顎27か月 i・年 .
口腔内を観察する目を育てる
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(変化を読める異常を発見できる)
図2 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
Tel:03−3813−4646 Fax:03−5803−0239
〒113−0034東京都文京区湯島1−5−45
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3歳児」2歳児の一人平均む噛数の年次推移一|
◇3歳児の一人平均むし歯数は、290本(H|)−O 74本IH231へと大きく滅少.
◇12歳児の一人平均むし歯数は、430本:[H1)一・t20本tH231へと大きく滅少.
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急激にう蝕、滅少!
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3歳児母子保健課・歯科像随鋒鍵へ、i2歳兜学校保健統計埴査) es科学雀 5
地域格差の拡大
図3
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器質の問題
摂食 口腔機能トレーニング利用者との情報の共有MFT 噸 11:1!Jl
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図4
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応3)や食育等推進事業の施策施行とともに,多職種と の協働により,口腔機能をも意識させた。その結果 3歳児のう蝕罹患児は激減している(図3)。う蝕が 減少すると,歯牙着色や歯列不正,食べない,飲み 込まない,食べ方・発音の異常など多職種との協働 が必要な問い合わせが目立つようになり,多職種と の協働の事業に取り組むことで,地域のニーズに答
えている(図4)2)。
皿.ロ腔内の変化を意識し始めた多職種
誕生後,ほとんどの新生児には歯は萌出していない。
多くの保健関係者は,ミルクを飲むために有効な口腔 のメカニズムがあることを理解しているため3),その 発育を3歳まで見守る。その口腔も6歳前後になると,
成人になるための準備として,徐々に永久歯に生え変 わり,全く変化の著しい器管である。新生児の時は,
ミルクを飲み込むだけの機能があればよく,数か月経 過すると,固形物を摂食できる機能がそなわる。歯が
小児保健研究
口腔を観察してみると見えるもの…
*形 う蝕・歯肉炎…
歯:大きさ・長さ・幅・色・溝・穴…
歯肉:三角形・色・出血・変化…
口蓋:形・色…
唇・舌:大きさ・厚み・色・乾燥…
*動き 咀噌不能・ 不能 発音不能・
動かない・反応が遅い…
膨らまない・左右の差・動かなし ・ 口 :閉じない・広がらない・鈍 き・ ・
健診 N→民間
図5
萌出すると,歯を使用しないような食生活をしている と,歯や歯肉に疾病を起こす。その口腔は,食物を取 り込む・話す・呼吸するなど,その働きは大変なもの である。最近,食育に熱心な,管理栄養士・保健師・
保育士が口腔の機能に関心を示し,歯科関係者と協働 で,食支援のみでなく,口腔の機能を正しく育成する ような,機能訓練や支援を行っている。口腔を食生活・
暮らしを背景に,支援していくことが,生活習慣病の 予防に大いに貢献する。管理栄養士や保育士は,口腔 の形態やその動きを観察することで,う蝕や歯肉炎の 予防は勿論口腔の機能の正しい獲得のために,発育
に適した食物の摂取が何よりも大切であることを啓発
している(図5)3・4)。
IV.多職種との連携した取り組み
母子保健での歯科専門職の関わり方は,フィンラン ドのネルボラと同様に,誕生する前から必要な限りの 期間,母子保健事業として,母子への切れ目のない,
保健分野からの支援をし続けている。口腔はその児の 生活や健康状態の良し悪しを,判断し易い器官である ので,事前に口腔についてのおおよその知識を得てい れば,口腔の異常から,体調の変化の徴候などをも把 握し,対応し易いと考える。多くの地域で,エジンバ ラ調査を実施し,育児不安から起こる問題を把握する ための目安として,成果をあげている(図6)。現在 地域保健分野で行われている健診・保健業務(口腔保 健を含めて)には,医師歯科医師,事務職保健師,
看護師,管理栄養士,地域住民(学級体験者),助産 師,臨床心理士,保育士,地域ボランティア(地域住 民からの希望者)などが関わっている。これらの多職
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健やか親子21(第二次)
母子手帳発行 出生届け提出
乳児健診
診
胡健
噛
育児相麟
3歳児健診
︷
両親学級
母親学級参加推進
母子管理カード 全戸訪問
未来者は,戸別対応9点 以上
昭和52年 心配な母子は,経過観察
口腔機能の相談
食支援:食べ方教室心王里オ目言炎 昭和33年
参加者でグループづくり グル プで しをい
エジンバラ調査g点以上
フィンラン留)ネルボラと同様
切れ目のない 母子保健提供
図6 母子保健での歯科関係者の関わり方
ぜ睡鷲警鷺蔓竃
msn者センター 地域保健 酵療法士 ネットワークづくり
図7 多職種との連携・地域資源の活用
種と協働で仕事をすることで,口腔保健の事業を理解 してもらい,地域に必要な新たな事業の構築ができた。
地域資源を活用した地域事業を生むことにより,より
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広い視野での事業を展開することができるようになっ た。この結果の一つが小児う蝕罹患児の減少を果た すことに繋がっているともいえよう5)。
V.おわりに
口腔は,直視できる器管であるため,その変化を発 見し易い。毎日の暮らしの変化がいち早く影響すると
ころでもある。生命のもとを取り入れる器管であり,
乳幼児から健康な口腔を育成し,維持し続けることは,
超少子高齢化社会には,大変必要なことである。乳幼 児の時の口腔の異変を,早期に気が付き改善していく
ことで,健康な生活を維持していけるようにするため に6),地域資源を活用し,多職種の協働が今後益々期 待されている(図7)。
文 献
1)厚生労働省.母子保健.国民衛生の動向 厚生統計編.
2013, 2014.
2)小児看護小児における口腔ケア.へるす出版,
VoL34 No.12 2011.
3)向井美恵.小児の摂食嚥下リハビリテーション.医 歯薬出版,2006.
4)舘村 卓.摂食・嚥下障害のキュアとケア.医歯薬 出版,2009.
5)日本歯科医師会.歯科保健の現状.歯科医療白書.
一般財団法人社会保険会,2013.
6)日本歯科総合研究機構.健康寿命を延ばす歯科保健 医療.医歯薬出版,2009.
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