死因究明の意義は医学の発展・公衆衛生の向上、犯罪死の見逃し防止、遺族の真実の希求に答える、
など様々である。しかし子どもの場合のその意義は、第一義的には予防可能死(preventable death:
PD)を減らすことにある。死ぬ蓋然性がない子どもを死なせないことは社会の責任であり、予防の観 点で今後なしうることを議論することは、その死を無駄にしないという社会の覚悟の表れでもあり、
子どもを失った遺族に対して行う最大のグリーフケアの1つでもある。しかし残念ながら本邦の現状 は、その死から学びを得るどころか「ネグレクト」しているという感覚を抱かざるを得ない。死亡事例 検証の現状の問題点を語る以前に、有効な検証を行うというボトムラインにも達していないのである。
パイロット研究として収集した群馬・東京・京都・北九州の2011年の小児死亡事例の死亡診断書の 詳細検討では、22%の事例で記載に何らかの不備があり、27%の事例で死因が不正確であった。両者 合わせて実に半数に該当するのである。この研究ではPDは全小児死亡の実に27.4%にのぼり、うち 63.2%は有効な予防施策ありと判断された。詳細に検証を行い、それを具体的に社会に施策還元する 仕組みを持つことで、少なくない子どもの死亡が具体的に予防しうることが示されたといえる。
PDの最たるものは虐待死である。虐待死に関する医療機関への全国調査では、死亡事例の3.8%が虐 待の可能性が強く危惧されていたが、うち死亡事例検証をしたとの回答事例は11.3%、起訴されたと の回答事例は16%にとどまっていた。
上記の研究結果は、諸外国の過去の同種研究とほぼ同様の結果であった。諸外国ではこれらの研究結 果を受け、5年以内にはチャイルド・デス・レビュー(CDR)の法整備を進めた。本邦ではどのぐらい の時間で実現に至ることが出来るであろうか?
子どもの死にかかわるステークホルダーはきわめて多く、縦割りシステムが、行政のみならず医療機 関においても深く浸透しているわが国で、CDRを実施することが困難な理由は、いくつでも挙げる ことができてしまう。小児の保健・医療に携わる我々は、自身では決して声を上げることのできない 子どもの「権利擁護者」であるとの自負を抱いている。死亡という現象を運命としてあきらめるのか、
最後に行う権利擁護活動として充実した検証体制をもって追及していくのか、今こそが我々が具体的 なアクションを起こすべき時期と考えたい。
シンポジウム
4 座長:奥山眞紀子 国立研究開発法人国立成育医療研究センター小林 正夫 広島大学大学院 医歯薬保健学研究院小児科学
子どもの死亡事例検証の現状の問題点
溝口 史剛
群馬県前橋赤十字病院 小児科
SY4-1
92 The 64th Annual Meeting of the Japanese Society of Child Health
シンポジウム
Presented by Medical*Online