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その坂はとても急で、⻑くて、登っている時間を随分と⻑く感じた

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Academic year: 2021

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[巻頭言]

「坂道と別刷り」

東北文化学園大学 医療福祉学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻 小林 武

小学校の帰路に坂があった。その坂はとても急で、⻑くて、登っている時間を随分と⻑く感じた。「これを 上れば家はもうすぐ」そう思いながら、小さい体に大きなランドセルを背負って毎日坂を登った。冬にはそれ こそ風雪に耐えながら真っ白な視界の中をただただ無心に一歩一歩足を運んだ。春には漂う草花の香りを感じ ながら、夏はアブラゼミの声を聴きながら、秋には⾚⻩の枯れ葉を踏みしめて・・・。あれから約50年が経 った。坂の周りの景色は随分と変わった。途中にあった大きな栗の木や坂の上の雑貨屋ももうない。景色だけ ではない。坂の下から見上げても、記憶にあるような⻑さや傾斜ではなくなっていた。登ってみても、特に苦 もなく登り切れた。地形が変わったわけではないのに。

さて、リハビリテーション学科紀要「リハビリテーション科学」第 16 巻が発刊された。令和になって初め ての発刊である。寄稿された先生、査読者、編集等にご尽力いただいた先生に深く感謝申し上げる。

紀要は大学・研究所などの学術的定期刊⾏物であり、一般に若⼿研究者の研究発表の場として登⻯門的な意 味を持って利用されることが多い。学術論文の構成はおおよそ定式化されているとはいっても、最初はどのよ うに書き進めたらよいのかなかなか定まらない。科学論文作成の⼿引本を⼿にしたり、先輩や同僚のアドバイ スを受けたりしても、主張したいことがそのとおりに表現できないジレンマはなかなか解消しない。厳しい査 読コメントに胃が縮む思いをすることもある。そんな産みの苦しみを経て、論文が公表されたときには安堵感 に包まれることになる。何回か繰り返すうちに、論文作成ツールの活用法や執筆の段取り、主題や論点の整理 の仕方、発想転換方法等、自分なりの論文作成スキルが身についてくる。

本学科の紀要には、院生、卒業生、共同研究者も投稿できる。学科教員以外ではこれまで 2 編が掲載される に留まっている。院生あるいはまた臨床で働く卒業生などが、論理的思考を育むとともに業績を積み重ねる場 として紀要を活用してもらえるとよいと思う。特に最初の頃は、あまり間隔を空けずコンスタントに投稿して いただけるとよい。読み⼿側も、内容だけではなく、研究者の論文作成スキルが向上していることを感じるこ とができる。また、査読というと批判的吟味が大きなウエイトを占めがちだが、査読担当者にはより支援的・

教育的な提案・指導を是非お願いしたい。リハビリテーション学科紀要「リハビリテーション科学」には、投 稿者と査読者、編集委員会が一緒になって、科学的思考が備わった感性豊かで創造的なリハビリテーション専 門職を育む⺟体となっていただきたい。そして、論文を書いてみたい、投稿してみたいと考えている卒業生に は、⺟校の紀要であるこの「リハビリテーション科学」への投稿を特にお勧めしたい。

年末に、古い資料ファイルや自分の論文別刷りを入れている書棚 1 架を整理した。昔の別刷りを見返してい ると、難渋した考察の文章や時間をかけて作成した図表などあちこち目に留まり、その度に当時の苦悶した状 況が鮮やかに思い出された。今の自分と環境ならもっと上⼿くできたのに、と思うと同時に、今よりも集中し て必死に取り組んでいた状況が頭の中に蘇った。昨夏に小学校の通学路にあった坂の下から上を見上げ、登っ たときと同じ気持ちになった。ノスタルジックな感覚とともに、図らずも、精神運動領域と認知領域の 2 つの

⾯から⼈間としての成⻑を感じた令和元年であった。

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白澤信行・小林裕人 リハビリテーション科学

東北文化学園大学 リハビリテーション学科 紀要 第16巻 第₁号 2020年₃月

参照

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