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フローラ・モール先生とシャイ・ヘン=ガル先生の 共同講演会

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Academic year: 2021

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フローラ・モール先生とシャイ・ヘン=ガル先生の 共同講演会

著者 近喰 ふじ子, 梅原 沙衣加

雑誌名 東京家政大学附属臨床相談センター紀要

巻 13

ページ 25‑28

発行年 2013‑03

出版者 東京家政大学附属臨床相談センター

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010075/

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フローラ・モール先生とシャイ・ヘン=ガル先生の共同講演会

近喰 ふじ子

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梅原 沙衣加

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「日本パペットセラピー学会」の原 美智子理 事長から、フローラ・モール先生が東日本大震災 の子どもたちへの治療をおこなうために来られ るので、講演をしてもらうのはどうかと相談をさ れた。筆者は東京家政大学での自分の講義である

「遊戯療法・演習」の一つとしておこなうのであ ればお引き受けしましょうと伝えた。講演者であ るフローラ・モール先生からの承諾が得られ、講 演の運びとなった。講演内容はこの臨床相談セン ター研究紀要に掲載してありますので、それをお 読みいただければ幸いに存じます。なお、当日、

イスラエル大使館のミカエル書記官も同席し、受 講生全員(72 名)にヒブキ人形をプレゼントし てくれた。今年は日本とイスラエルの国交 60 周 年になるとのことで、その記念式典(バッジもい ただいた)の一部も兼ねていたようである。

さて、ここでは筆者が学部 2 年生に対しておこ なっている「遊戯療法・演習」の講義の中で講演 をしていただいた講演内容を学生がどの程度を 理解し、どのように受け止めたのかをレポート課 題とし、そのレポートからまとめた。

レポート内容に記載されている項目として、① 東日本大震災について記載されているか②イス ラエルが戦争の渦中にあることを知っているか

③アート内容は理解できたか④ヒブキプログラ ムについてどう思ったか⑤今後の自分が模索で きたか⑥学問への興味・関心が持てたか の6項 目を選んだ。ところで、ヒブキプログラムについ ては初耳であることから、ここで簡単に説明をし

1) 東京家政大学人文学部心理カウンセリング学科

ておこう。

ヒブキプログラム

この現代、イスラエルは戦争中である。多くの 子どもたちが戦争の被害に遭遇している。そこで、

「ヒブキ人形」を用いて子どもたちへの心的外傷 の治療(パペットセラピー)をおこない、その後 に絵を描かせる方法をおこなっている。

この一連の治療構造を「ヒブキプログラム」と 呼んでいる。

その内容を記載すると、 「ヒブキプログラム」

は、ヒブキプロジェクトの一つです。そもそもヒ ブキという言葉は、ヘブライ語で「抱っこ」の意 味で、ヒブキ君は悲しい顔をした犬のぬいぐるみ です。このヒブキ君は、 「私たちは弱くない。可 愛そうな犬を世話することができる強い子だ!」

という自覚を促します。支援者はお礼を言われる のではなく、「犬のお世話をしてくれてありがと う!これからもヒブキ君をよろしくね!」とお礼 を言って別れるそうです。

レポート内容に記載されていた頻度は、①25

名(34.7%)②26 名(36.1%)③72 名(100%)④33

名(45.8%)⑤16 名(22.2%)⑥19 名(26.4%)で

あった(重複はしていない) 。イスラエルの PTSD

の子どもたちにおこなった絵画療法内容につい

ては学生全員が衝撃を受けたようである。筆者も

驚きというよりも衝撃を覚えた。それは、日本で

は嫌というほど、耳がうんざりするほど言われて

いる、急性状態の時には絵画は描かせてはいけな

い!である。しかし、イスラエルでおこなわれて

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フローラ・モール先生とシャイ・ヘン・ガル先生の共同講演会

いる「ヒブキプログラム」では「積極的アートセ ラピー(筆者が捉えた状況から名付けた) 」とい う方法をおこなっていた。この事実は臨床家にお いて大きな示唆すべき出来事であると思った。そ こで、学生たちのレポートから、そのことが記載 されている部分を抜粋してみよう。

A.M. :恐ろしい体験をした子供に恐ろしい絵を描 かせ(作らせ)たりして、恐ろしいことを 何回も思い出してしまう子どもに、何か変 化が現れるまで恐ろしい絵を描かせると いうのは驚きでした。恐ろしい絵を描くこ とはそのことからずっと離れられず、苦し んでしまうと思っていたのでとても勉強 になりました。

O.K. :真っ白な紙に子どもが描きたいものを何も 制限せずに自由に描かせるものと自分自 身が恐ろしいと思うものを描かせ、その後 に、子ども自身が安心・安全だと思うほっ とするものを描かせ(作らせ)るという 2 つの治療法があることを教えていただき ました。この 2 つの治療法のうち、恐ろし いもの~安心・安全だと思うものという方 法では、もし、恐ろしいものを描いている ところで思考が停滞してしまい、次のステ ップに移れなくなってしまったら、会話や 内容に触れながら、何回も何回も描かせて、

子どもが許容し、受け入れられるようにす ると先生はおっしゃっていました。まだ、

私の中では消化されていないのですけれ ど、こんな方法もあるのだと思い、すごい ことだと思いました。

O.N.:実際のアートの写真を見て感じたことは、

アートを描くことによって子どもたちは 確実に自分の中のトラウマから回復し、成 長しているという点でした。芸術療法は素

晴らしいものでした。

K.N.:今回の先生方のお話は興味深く、集中して 聞かせていただきました。その中でも、特 に印象的な点や重要だなと思う点がいく つかありました。一つ目はアート治療の過 程についてです。言葉にならないイメージ を絵を描くことで表現し、象徴を形造るこ とで、子どもの心的外傷は整理され、筋の 通った物語として表現されるようになっ ていくということでした。また、先生方も この過程が、特に重要だとおっしゃってい ました。二つ目はどんな心的外傷を受けた 子どもでも同じような絵を描くというこ とです。先生方のお話では絵は象徴的なも のだからということでした。私は今まで心 的外傷を負った子どもが描いた絵は見た ことがなかったのですが、今回の講義の中 で初めて見せていただきました。

T.M.:一つ目は子どもに自由に絵を描かせ、その 絵をもとにカウンセリングをおこなうと いうもので、制限も否定もしてはいけない、

自由におこなわせることが大切であると いうことでした。子どもがどんな絵を、ど んな色で、どんな大きさで描くのか、絵の 中に込められた様々な精神・心理状態およ び、子どもからのメッセージに気づくこと は簡単そうだけど、実際はすごく難しいこ とだと思いました。二つ目の敢えて恐ろし いものを描かせたり、作らせたりした後、

自分にとって安心できるものを作らせた

りする方法は、恐ろしいと感じるものを思

い出させてそれを絵に描かせたりするな

んて、トラウマを抱えている子どもにとっ

ては逆に辛いものなのではないかと思い

ました。しかし、その恐ろしいものを敢え

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て自分の中で明確にし、認識することで、

何が自分にとって恐ろしくて、何が自分に とって安心できるものなのか、はっきりと 区別することができるのではないかと思 いました。

5 名のアート内容の報告だが、学生の全員が同 様の報告をしているし、積極的アートセラピーに ついて驚き、理解を示していた。

その他、気が付いた内容について記載してみよ う。

D.N.:今、私がアルバイトをしている塾の子ども の中に絵で会話をしている女の子がいま す。その子は PTSD ではないのですが、場 面緘黙といって家ではお母さんを始めと した家族と沢山お喋りをするのですが、塾 や学校に来ると話すことが苦手になって しまう女の子なのです。その子はとても絵 を描くのが好きで、授業の間に私がノート にイラストを描くと、少しニコッとしたり してくれます。彼女自身もノートに沢山の 絵を描いてくれます。私は彼女と一回も会 話をしたことがないのですが、彼女の可愛 らしい絵が非言語コミュニケーションと して役に立っていると感じています。

S.M.:お話を聞いていて、現在も戦争で命の危険 にさらされている子どもたちが大勢いる のだと改めて気づかされました。そういっ た現状があると頭では分かっていても、ど こか遠い世界のことのような気がしてい た自分にも気が付きました。戦争だけでは ないけれど、世界中で様々な問題が起きて いるということに、もっと関心をもってい こうと思いました。

K.M. :芸術療法は痴呆やストレスに効く万能薬で もなければ絵を描けば必ずしも治るわけ

でもない。しかし、芸術療法は芸術活動を 通じて子どもたちのこころの内面を表現 することができ、今までの心的外傷を葛藤 や浄化などの開放や解消が期待できると 思われる。また、病気の程ではないが、悩 みやストレスを感じて日々耐えながら過 ごしている人も沢山いると思われる。その 為の心身の障害の予防やストレスケアに も芸術療法は有効な手段であると言える と思う。

S.N.:子どもが素直に表現していくには、大人が それを受容してあげなくてはいけないと いうことを知りました。私が子供の頃、よ く塗り絵をしていました。母は私が何色を 塗ってもそれを止めませんでしたが、例え ば、それを「顔は肌色よ」などといって止 められたら、自分の思った通りに表したく なくなります。同じように芸術療法で何か を描いたときに、それは変だと止められた ら、その子の成長を妨げてしまいます。セ ラピストや先生はどんな絵や言葉であっ ても受け入れてあげて、その子が何を言い たいのか汲み取ってあげることが大切な のだと分かりました。東日本大震災によっ てトラウマを持った子は沢山いると思い ます。その子たちが今後の日本を担ってい くのだから、健やかに成長していって欲し いと思います。

T.M.:日本は今、イスラエルのように戦争が身近

にある国ではないのですが、地震や津波な

どの自然災害によって、多くの傷ついた子

どもが生まれてしまうことがあると思い

ます。私もそのときどのような立場でかは

分かりませんが、子どもと関わりを持つと

思います。そのときに芸術療法の考え方を

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フローラ・モール先生とシャイ・ヘン・ガル先生の共同講演会

活かして子どもと関わりあっていけたら と思います。貴重な経験になりました。

C.S.:日本とイスラエルのバッジとても可愛いと 思いました。ありがとうございました。

N.N. :アートで自由に好きなように表現するとい うことは、子どもにとって大切な心の開放 の場であると思います。遊戯療法でのプレ イルームが画用紙に代わっているという ことだと思いました。

学生たちは考えていた以上に理解し、自分なり

の考え方をまとめていた。また、疑問に思ったと ころは正直に述べるなど素直さが感じられた。今 後、芸術療法や様々な心理療法を学ぶ必要があり、

さらに書物などで学ぶ機会を持ちたいと思って いることも分かった。

お二人の先生方は東京家政大学での講義終了 後、東日本の震災地に向けて出発して行った。こ のような貴重な時間を与えてくださったことに 感謝を申し上げます。

Dr.Shai Hen-Gal with HibukiPhoto by Yanai Yechiel

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