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鋳造品の塗装不良事例

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Academic year: 2021

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キーワード:鋳鉄、塗装、発泡、ブリスタ

はじめに

  塗装は防錆・防食あるいは装飾などを目的 として行われます。鋳造品にも同様の目的で 塗装が行われますが、鋳造品の場合では塗膜 に発泡やブリスタ(ふくれ)などの不良を生 じやすいことが一般に知られています。このよ うな塗装不良は鋼板では認められないため、塗 装不良の原因は鋳物に存在する「巣」や「ピ ンホール」などの鋳造欠陥、あるいは鋳造時 に含有される「ガス成分」に関連すると言わ れています。しかし、実際にはこれらと異な る要因によって鋳物に塗装不良が生じる例も 報告されています1。今回、鋳鉄鋳物に塗装を 施したときに生じた塗膜不良部の観察を行い、

鋳造組織と塗装不良の関連について調査した 事例を紹介します。

塗膜不良部の断面観察

  塗膜の発泡やブリスタは塗膜が硬化する直 前まで塗膜内のガスが系外に放出されずに気 泡として取り込まれることによって生じます。

このガスは塗料そのものから発生する場合も 考えられますが、ここでは素地である鋳鉄か ら放出されるガスが主な原因であると考えら れる事例について述べます。

図 1 は球状黒鉛鋳鉄の鋳放し面に塗装した ときに生じた塗膜発泡部の断面を観察したも

のです。この事例では、正常に塗装されてい る部位の鋳鉄素地が平滑であったのに対し、

塗膜不良部直下の素地には大きな「へこみ」

が認められました。塗膜不良部周辺に従来か ら塗装不良の原因とされている巣などの鋳造 欠陥は観察されず、この事例の場合は鋳造欠 陥が塗膜不良と関連していないことが分かり ます。 

図 2 は球状黒鉛鋳鉄の加工面に塗装したと きに発生したブリスタ不良の断面です。この 事例でも塗膜不良部周辺に鋳造欠陥は認めら れず、発泡部には「粗大な球状黒鉛」(図中 a)と切り欠き状の「へこみ」(図中b)が観察 されます。また、加工面は基地組織および黒 鉛がともに加工によって塑性変形を受け、流 れを生じていることが観察されます(図中 c)。

図1  塗膜発泡部の断面

図2  球状黒鉛鋳鉄の加工面に発生したブリスタ不良部の断面

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鋳造品の塗装不良事例

(2)

図3は片状黒鉛鋳鉄の加工面に発生した塗 膜不良の事例です。この事例の場合でも図1、

2 と同様に「へこみ」のある部位で塗膜の発 泡が観察されました。また、塗膜不良部直下 には初晶黒鉛と思われる「粗大黒鉛」が存在 する頻度が高く、これらの粗大黒鉛の中には

「欠け」や「脱落」が認められるケースもあ りました。

一方で正常部では「へこみ」などは観察さ れず、平滑な面上に塗膜が施されていました。

塗膜不良の要因

3 つの塗膜不良部の事例ではいずれも塗膜 と鋳鉄界面部に「へこみ」が観察され、塗膜 不良はこの「へこみ」を起点にして発生して いると考えられます。

図2や図3で塗膜不良の起点となる「へこ み」を生成した要因には、その形状や発生箇 所から推察して切削加工が考えられます。

一般に鋳鉄の切削加工面には「くぼみ」や

「むしれ」が観察されます 2。図4に球状黒 鉛鋳鉄を旋盤加工したときの表面形態の一例 を示します。鋳鉄加工面には図に示すように

多くの「むしれ」が認められます。したがっ て、塗膜発泡部で観察された「へこみ」は切 削加工による「むしれ」に対応していると考 えられます。また、図4では加工面に露出し ている黒鉛の「変形」や「脱落」も観察され ます。このことは、図2の塗膜不良部の断面 観察結果と一致しています。

加工面に露出している黒鉛に加工油や水分 などが染み込むと、黒鉛には吸湿性があるた めに除去し難くなります。加工によって「脱 落」や「へこみ」が生じている場合ではこれ らの除去はさらに困難になると思われます。

つまり、塗膜不良の原因として黒鉛自体の吸 湿性も関連していると考えられ、塗膜不良部 直下に粗大黒鉛がよく観察されることはその ことを示唆しています。

まとめ

塗膜不良ではガス発生サイトがどのような ものであるかを調査する必要があります。本 事例では素地である鋳鉄の金属組織と塗膜不 良の関連を紹介しました。鋳鉄は化学組成や 肉厚などによって組織が大きく変化するため、

不良の発生位置や頻度、塗膜不良が生じるま での履歴などを把握しておくことが極めて重 要になります。これらの情報と本事例のよう な調査を組み合わせることによって、適切な 不良対策を立てることが可能になります。

参考文献

1)山本善章ほか:鋳造工学73(2001)123 2)上原邦雄:鋳造工学70(1998)425 図3  片状黒鉛鋳鉄上の塗膜断面(左:塗膜不良部、右:塗膜正常部)

図4  加工による表面形態

  作成者    機械金属部 金属材料系  武村  守  Phone:0725-51-2571    作成日    平成16年11月26日

図 3 は片状黒鉛鋳鉄の加工面に発生した塗 膜不良の事例です。この事例の場合でも図 1、 2 と同様に「へこみ」のある部位で塗膜の発 泡が観察されました。また、塗膜不良部直下 には初晶黒鉛と思われる「粗大黒鉛」が存在 する頻度が高く、これらの粗大黒鉛の中には 「欠け」や「脱落」が認められるケースもあ りました。  一方で正常部では「へこみ」などは観察さ れず、平滑な面上に塗膜が施されていました。 塗膜不良の要因  3 つの塗膜不良部の事例ではいずれも塗膜 と鋳鉄界面部に「へこみ」が観察され、塗膜 不良はこの

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