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第一部   研究論文・実践報告

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第一部   研究論文・実践報告

よりよい 大 学 英 語 教 育カリキュラム よりよい 大 学 英 語 教 育カリキュラム を作成するための質問紙を利用した を作成するための質問紙を利用した ニーズ・アナリシス調査

ニーズ・アナリシス調査

同志社大学言語文化教育研究センター嘱託講師

森 永 弘 司

要 約

大学の英語教育カリキュラムを策定する際には、大学と企業が学生に期待する英語 力が重視され、学生が身に付けたいと望んでいる英語力に対して配慮されることが少 ない。しかしながら学生の英語に対するニーズに関しての配慮が足りないと、学生の モチベーションを高めることはできないであろう。本稿は、よりよい英語カリキュラ ムを策定する際の一助となるよう、本学の学生を対象に行った調査結果を報告したも のである。

1.はじめに

大学の英語カリキュラムを策定する際には、大学が学生に身に付けて欲しいと考え る英語力、企業が学生に身に付けて欲しいと期待する英語力、学生が身に付けたいと 願う英語力の3つの要件を勘案する必要があるといわれている。ところが現在の大学 のカリキュラムは、大学や企業が望む英語力を中心に作成され、学ぶ側の学生のニー ズを十分汲み取っていないケースが多く見られるようになった。三浦(2009)は日本 のようなTEFL(外国語としての英語教育)の環境下では、生きた英語に自然に触れ る機会が乏しく、日常の生活で英語を学ぶ必要性が高いとはいえないので、英語学習 に対する内発的動機付けをおこなう必要があり、そのためには「学習者にとって人間 的に意味のある、成長欲求に応える英語教育」の実施が必要であると述べている。

また彼は内発的動機付けがあれば「学習者はたとえ自分が将来英語と関係のない人生 をおくると想定していても、自分の人生にとって学ぶ意味があると実感すれば、授業 に積極的に参加するようになり…英語力を向上していける」と語っている。そして 内発的動機付けを学習者に持たせるためには、学習者と保護者が英語教育に何を求め ているかに関してニーズ・アナリシスをおこなうことが必要であると述べている。

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彼は国レベル、教育委員会レベル、学校レベルでニーズ・アナリシスを実施し、その 結果を公表し、調査結果をふまえた上で、ニーズに合わせた英語教育カリキュラムを 作成することを提言している。筆者も学習に対する動機付けが語学学習において極め て大きな役割を果していると考えているので、大学卒業後もautonomous  learnerとし て学習を継続していくための内発的動機付けの重要性を主張する三浦の見解は正鵠 を得たものであると考える。  今回の実践研究では、内発的動機付けを高めるための より良い英語カリキュラム・デザイン開発のための一助として、Jack  C.  Richards著 Curriculum  Development  in  Language  Teachingに収録されている“Needs  analysis  questionnaire for non-English-background students”を使用しておこなった学生のニー ズ分析のアンケート結果を報告し、その結果に基づいてカリキュラム改善のための私 案を述べてみたい。

2.ニーズ・アナリシスのアンケート調査の参加者

参加者は論者が2007年に担当した本学の文系学部(法学、経済、商学、神学、文学、

文化情報学、社会学の各学部)の1、2回生、総計235名である。基本的に英語学力 別のクラス編成は実施しておらず、上位、中位、下位レベルの学生が混在している。

論者の実施したSchmittのVocabulary Levels Testの平均は、法学部1回生クラス4,968 語、経済学部1回生クラス5,001語、その他の学部の2回生クラス3,919語であった。語 彙力は読解力とかなり強い相関性があるので、読解力のレベルは法学部と経済学部は 全体的に見て上位レベル、その他の学部のクラスは中位の上のレベルと考えられる。

ちなみに岡本(2005)は、入試で難度の高い英文和訳を出題することで有名な京都大 学の1,2回生283名を対象に、Vocabulary  Levels  Testを用いた受容語彙数の調査を おこなった際の平均語彙数が5,895語であったと報告している。  カリキュラムは全般 的にリーディングが重視されているが、2回生ではリーディング、リスニング、スピー キング、ライティング等の科目から、自分の興味・関心に応じて選択できる科目も設 置されている。テキストは担当者が自由に選べるようになっている。

3.ニーズ・アナリシス調査紙のアンケート項目内容

質問紙には英語4技能に関する質問が5項目、リーディングに関する質問が3項目、

ライティングに関する質問と授業改善に関する質問が各々2項目、スピーキング、リ

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スニング、教室外での英語講座の受講に関する質問が各々1項目もあり、包括的なも

のと言える。原文のままでは学生に理解しにくいものもあるので、筆者が和訳した質 問紙を使用した。筆者の判断により省略した質問項目もある。以下に、質問紙を掲載 する。

A.1.現在履修している英語のクラスで、次の4技能の使用頻度について当ては まるもの(1.非常によく使う 2.よく使う 3.時々使う 4.滅多に使わな い 5.全く使わない)にマルをしてください。

a.リーディング b.ライティング c.スピーキング d.リスニング

A.2.現在履修している英語のクラスで、次の4技能に関して使用に苦労する頻度 について、当てはまるもの(1.非常に苦労する 2.しばしば苦労する 3.時々 苦労する 4.滅多に苦労しない 5.全く苦労しない)にマルをしてください。

a.リーディング b.ライティング c.スピーキング d.リスニング

B.1.現在履修している英語のクラスで、良い成績を取るための英語能力の重要性 の度合について当てはまるもの(1.非常に高い 2.高い 3.どちらともいえな い 4.やや低い 5.低い)にマルをしてください。

a.聴解力 b.会話力 c.ライティング力 d.読解力

B.2.大学卒業後、自分が将来就きたいと思う仕事で成功するための英語能力の重 要度に関して当てはまるもの(1.非常に高い 2.高い 3.どちらともいえない  4.やや低い 5.低い)にマルをしてください。

a.聴解力 b.会話力 c.ライティング力 d.読解力

C.スピーキングに関して、次の事柄がどれ位の頻度で起こるか当てはまるもの(1.

いつも 2.しばしば 3.時々 4.滅多にない 5.全くない 6.該当しない)

にマルをしてください。

a.口頭で英語で発表する時苦労する b.自分が言いたい事を速く言おうとする時 苦労する c.英語で話そうとする時間違えてはいけないと思い苦労する d.英語 でどういえばいいのか分からないので苦労する e.英語の正しい発音で苦労する  f.英語のディスカッションに加わるのに苦労する

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D.リスニングに関して、次の事柄がどれ位の頻度で起こるか当てはまるもの(1.

いつも 2.しばしば 3.時々 4.滅多にない 5.全くない 6.該当しない)

にマルをしてください。

a.英語でおこなわれる講義を理解するのに苦労する b.英語でおこなわれる講義 のノートを取るのに苦労する c.授業で使用しているテキストの分かりにくい箇所 を英語で質問するのに苦労する d.英語で長々と説明されると理解するのに苦労す る e.口頭での英語の指示を理解するのに苦労する f.コロキアルな口語表現を 理解するのに苦労する g.何が話されているのか、話の主題を理解するのに苦労す る

E.ライティングの課題を出された時に、次の技能がどれ位重要だと思いますか。又 この技能の使用に関してどれ位の頻度で難しさを感じますか。当てはまるもの(重要 度:1.とても高い 2.高い 3.そんなに高くない 4.分からない)、(頻度:1.

頻繁に 2.時々 3.全くない 4.分からない)にマルをしてください。

a.正しく句読点を打つこと b.スペルを正しく書くこと c.正しい文構造で書 くこと d.適切な単語を使用すること e.パラグラフの構成 f.自分の考えを 適切に表現すること g.自分の考えを展開すること h.自分の言いたいことを明 確に表現すること i.提出期限までにライティングの課題を提出すること j.全 般的なライティングの力

F.1.リーディングの授業で読みたいと思う題材の種類と、今までこうした題材を 読んだ時に難しさを感じる頻度に関して当てはまるもの(1.読みたい 2.読みた くない)、(頻度:1.しばしば 2.時々 3.全くない)にマルをしてください。

a.雑誌の記事 b.新聞記事 c.小説 d.専門の論文 e.本の抜粋 f.実 験の説明記事 g.コンピューターを使って読む記事(CALLでのリーディング等)

F.2.リーディングの時に、あなたが経験する次の事柄の頻度に関して当てはまる もの(1.いつも 2.頻繁に 3.時々 4.まれに 5.全くない)にマルをし てください。

a.テキストの主題を理解する b.素早く読んで文章の大意を理解する c.ゆっ くり読んで文章の細部を理解する d.素早く読んで特定の情報のある箇所を捜すこ とができる e.未知の語を文脈から推測できる f.テキストの構成を理解でき

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る g.テキストで使われている専門用語を理解できる h.速く読むことができ

る i.批判的に読むことができる j.著者の立場や意図を理解できる

G.あなたが自分の英語能力を向上させたいと思った時、次の事柄の重要度に関して 当てはまるもの(1.非常に高い 2.高い 3.どちらともいえない 4.やや低 い 5.低い)にマルを付けてください。

a.英語の発音、イントネーション、ストレスを聞き分ける力 b.英語でおこなわ れる授業でノートを取る力 c.全般的なリスニング力 d.スピーチやプレゼンテー ションをおこなう力 e.英語でのディスカッションに参加できる力 f.友人との 共同のプロジェクトを英語でおこなうことのできる力 g.教員と教室の内外で英語 でうまくコミュニケーションをとる力 h.英語でエッセィを書く力 i.英語で実 験報告書を書く力 j.英語でフィクションが書ける力 k.語彙力の増強 l.速 読の力

H.エクステンションのような授業外の講座で英語の勉強をした経験があります か。はいと答えた人は、その講座名とその講座が自分の英語力を伸ばす上でどれ位役 にたったかに関して当てはまるもの(1.とても役にたった 2.少しは役にたっ た 3.どちらともいえない 4.少しは役にたった 5.全く役にたたなかった)

にマルをしてください。

I.英語の授業改善のためにおこなった方がいいと思われるものにマルをしてくださ い。

(1)授業でもっとパワーポイントを使用したほうがいい

(2)教材をやさしくする

(3)グループワークやペアワークを減らす

(4)テキスト以外の資料の配布を増やす

(5)テストやクイズでもっとマルチプル・チョイス(多肢選択問題)の問題を増やす

(6)読解の教材に関してはサマリーを配布して欲しい

(7)リーディングの分量を減らして欲しい

(8)担当教員に個人的に教えてもらう時間を設けて欲しい

J.上記の8項目以外に授業改善に役立つことがあれば自由に書いて下さい。

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4.アンケート調査の結果

アンケート全体の結果について述べる。A.1の現在履修しているクラスでの4技 能の使用頻度に関しては圧倒的にリーディングが高く、スピーキングとライティング  は非常に低い。A.2の現在履修しているクラスで使用に苦労する頻度が最も高いの はリスニングであるが、他の3技能とそれほど大きな差はない。

B.1の現在履修しているクラスで良い成績を取るための重要度は読解力が圧倒的 に高く、会話力が極めて低い。B.2の将来自分が就きたいと思う仕事で成功するた めの4技能の重要度に関しては聴解力と会話力が高く、ライティングの力が低い。

Cのスピーキングに関して苦労する頻度が最も高いのは「英語でどういえばいいの か分からない」で、次いで「英語のディスカッションに加わる」で、最も低いのが「英 語で話そうとする時間違えてはいけないと思う」で、次いで低いのが「口頭で英語で 発表する時」であった。

Dのリスニングに関して苦労する頻度が最も高いのは「英語で長々と説明されるこ とを理解する」で、最も低いのは「英語でおこなわれる講義のノートを取る」で、次 いで低いのが「授業で使用しているテキストの分かりにくい箇所を英語で質問する」

であった。

Eのライティングの課題が出された時の重要度に関しては、「提出期限までにライ ティングの課題を提出すること」、「自分の考えを適切に表現すること」、「自分の言い たいことを明確に表現すること」が高く、「正しく句読点を打つこと」はかなり低い。

また難しさを感じる頻度に関しては、「自分の言いたいことを明確に表現すること」、 

「正しい文構造で書くこと」、「全般的なライティングの力」が高く、「正しく句読点を 打つこと」はかなり低い。

F.1のリーディングの授業で読みたい題材で最も人気が高かったのは「雑誌の記 事」で、次が「小説」、最も不人気であったのが「実験の説明記事」、次が「専門の論文」

であった。読んでいて難しさを感じる頻度が最も高いのは「専門の論文で」、最も低 いのは「雑誌の記事」であった。F.2のリーディングの際に最も経験する頻度が高 いのは「素早く読んで、文章の大意を理解する」であり、次が「テキストの主題を理 解する」で、最も低いのは「テキストの構成を理解できる」であった。

Gの英語力を向上させたいと思った時、重要度が高いのは、「語彙力の増強」、「スピー チやプレゼンテーションをおこなう力」、「全般的なリスニング力」で、低いのは「英 語でおこなわれる授業でノートを取る力」、「英語でエッセーを書く力」、「英語で実験

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第一部   研究論文・実践報告

報告を書く力」であった。

Hの授業外での英語講座の受講歴に関しては、2名の学生がベルリッツのTOEIC講 座の受講経験があり、講座の有用度に関しては、1人は「少しは役にたった」と答え、

もう1人は「余り役にたたなかった」と答えている。

Iの授業改善のための有用性が最も高いのは「教材をやさしくする」、次に高いの が「読解の教材に関しては、サマリーを配布して欲しい」で、最も低いのは「授業でもっ とパワーポイントを使用したほうがいい」であった。

Jの授業改善のための自由記述には、「ライティングを増やして欲しい」、「スピー キングを増やして欲しい」という要望が、それぞれ1名あった。

5. アンケート結果にもとづくカリキュラム改善のための私案

アンケートの結果にもとづき、筆者が考えるカリキュラム改善案を以下に述べさせ ていただく。

(1)1回生でのリスニング授業の必修化とスピーキング活動を取り入れた授業の増加

現在履修しているクラスでは、リーディングの使用頻度が圧倒的に高く、リスニン グの活用度はリーディングに比較するとかなり低い。またライティングやスピーキン グのようなプロダクティブな英語技能の使用頻度は極めて低い。この原因は、本学の 英語のカリキュラムがリーディングを重視している点にあると思われる。従って、授 業で良い成績を収める上での重要度でもリーディングの比重が非常に大きい。しかし ながら将来学生が就きたいと思う仕事での重要度では、リスニングやスピーキングの ような口頭でのコミュニケーション・スキルが高い。2年次のイングリッシュ・ワー クショップでリスニングやスピーキングの授業を選択することができるが、学生の将 来のニーズを考慮すれば、1年次でリスニングの授業を必修化し、スピーキング活動 を取り入れた授業を増やすことが望まれる。この点に関しては、2010年度から1回生 でリスニングの授業が必修化されたので、望ましい方向に進んでいると考えられる。

(2)授業にプレゼンテーションを多く取り入れる

スピ−キングで最も苦労する頻度が高いのは、自分の言いたいことを表現する力で、

従って英語でのディスカッション、スピーチやプレゼンテーションで苦労する頻度も 高い。また流暢に話すことに苦労する頻度も高い。自分の言いたいことを表現する力 同様、スピーチやプレゼンテーションの内容に関しては、基本的にライティングの力 と密接な関係があり、定型的な会話表現を覚えるだけでは対処できず、きちんとした

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英文が書ける力を身につけさせるよう指導する必要がある。筆者の経験では、かなり の会話力がないとディスカッションが活発化せず、少数の学生しか発言しないケース が多いので、授業中にプレゼンテーションをおこなう機会を増やし、そこから英語で のディスカッションに繋げていくのが効果的である。

(3)e-learningのプログラムの充実化

リスニングに関しては、長い説明を聞き取ることに苦労する頻度が最も高い。最近 英語の授業や専門科目を英語で講義する大学も増えてきているので、リスニング力の 強化が必要である。リスニングに関しては、教室内の指導だけでは、決して十分では なく、各々の聴解力に応じた英語を大量に聞き、徐々に難度の高い英語を聴くように することが肝要なので、e-learningプログラムの充実化や教室外でもできるだけ多く の英語を聴くようリスニングのクラスで指導することが重要である。

(4) 各学期で1回400語程度の英文を書く課題を与えること、できれば統一のライティ ング・ルーブリックの作成

ライティングの技能の重要度を問う設問に関しては、「正しく句読点を打つ」こと 以外の全ての項目に対してかなり高い重要性を認めている。また難しさを感じる頻度 に関しても、「正しく句読点を打つ」こと以外の全ての項目に関して高い。学生が最 も苦慮しているのがライティング力を身に付ける事であるが、教師にとっても最も苦 慮するのもライティングの指導である。ライティングの授業を必修化するのは困難な ので、ライティングに特化したクラス以外でも発表(産出)語彙を多く使いこなせる よう指導したり、400字程度の英文を書く課題を各学期で1回は与えることが望まし い。その際にライティングのルーブリックがあると指導しやすいし、学生にも評価 基準が分かりやすく非常に有益である。また書かせっぱなしでは効果が薄いので、き ちんとしたフィードバックが必要である。しかしながら、この作業は非常に手間と時 間がかかるので、大多数の教師はこれを避けたがる傾向があるので、そのあたりが難 しいところである。

(5)精読と精読に相応しい教材(例えば、文学作品等)の導入

リーディングの授業で読みたい教材に関しては、雑誌の記事や小説の人気度が高 かった。リーディングの際に経験する事柄としては、「素早く読んで、文章の大意を 理解する」、「テキストの主題を理解する」、「未知の語を文脈から推測できる」が上位 にランクされている。これらは速読の代表的なストラテジーであり、学生はこうした ストラテジーの活用をかなり意識して読んでいることが伺える。しかしながら速読の みの授業では、下位や中位の下のレベルの学生は、きちんと解釈できない英文に出く

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第一部   研究論文・実践報告

わすと、カンやフィーリングに頼って解釈する傾向が強くなってきている。こうした

弊害を是正するためには正確に英文を読む精読も授業に是非取り入れるべきである。

その際の教材としては、学生の人気度も高く、ゆっくりと味読することが肝要であり、

かつ行間を読み取る類推力を強化し、感性を磨く上でも効果のある文学作品が一番適 している。

(6)語彙力の強化

英語力を向上させたいと思った時の重要度に関しては、1位が「語彙力の増強」 、 2位が「スピーチやプレゼンテーションをおこなう力」、3位が、「全般的なリスニン グ力」 であった。語彙力は、英語4技能の根幹を成すものなので、単語テストを頻繁 におこなったり、受容語彙数や発表語彙数あるいは語知識の深さを測定する語彙力測 定テストを実施したりして、学生の語彙力増強に対するモチベーションを高める必要 がある。

6.まとめ

全般的に見て学生たちは、英語力を向上させる上で「語彙力の増強」を除けば、「全 般的なリスニング力」を最も重要度が高いものとしてあげているが、「スピーチやプ レゼンテーションをおこなう力」、「英語でのディスカッションに参加できる力」、「自 由に英文が書ける力」といった英語での発信力の不足を痛感している。この英語での 発信能力の養成は、どの大学でも最も苦慮している事柄であるが、今後の大学の英 語教育では英語での発信力を伸ばしていくことが最も重視されるようになるであろ う。学力別クラス編成を実施していないために様々な学力レベルの学生が混在するた めに、テキストの難しさを訴える学生が25%いるので、テキストの難度に関しても配 慮が必要である。また担当教員による個人指導を望んでいる学生が20%いるので、時 間的余裕があれば対面およびメールでの学習支援を行うことが望まれる。この2つの 問題は,  学力別クラス編成を実施すれば、解決するところが大きいので、本学でもプ レイスメント・テストによる学力別クラス編成を実施されることを提言したい。本学 では2回生時の2つの英語科目(イングリッシュ・セミナーとイングリッシュ・ワー クショップ)が選択制になっているのは評価できる。学生が自らの興味・関心で選べ るクラスを配置しておいた方が、学生の内的動機付けを高めるうえでは効果的であ る。  また教員が自由にテキストを選べることも、自分の専門を活かした授業を実施 できるという点で、教える教員側のモチベーションを高める効果があるので推奨でき

(10)

る。

7.提 言

最近はどこの大学でも、授業評価や教員評価が実施されるようになってきた。しか しながら英語のカリキュラムに関する学生の評価はほとんど実施されていないように 思う。またカリキュラムの成否をTOEICのような標準テストの実施で検証するケース も増えてきた。テストでの伸びが認められない場合、教員の力量不足に起因すること も多いが、学生のニーズを十分汲み取っていないカリキュラムに起因することもある のではないだろうか。そうした場合、今回紹介したような詳細なものでなくとも、学 生による英語のカリキュラムに対するニーズ・アナリシス調査を実施してみることも 一考に価するのではないだろうか。10

付 記

本稿は、外国語教育メディア学会2008年度関西支部秋季大会(神戸学院大学、2008 年10月)における口頭発表の原稿を修正し加筆したものである。

謝 辞

本稿の執筆にあたって、アンケート結果の入力をおこなっていただいた前田悦子先 生にお礼申し上げます。

引用文献

1.大津由紀雄編著.(2009).『危機に立つ日本の英語教育』東京:慶応義塾大学出版会、157.

2.同上、161.

3. ニーズ・アナリシスは『英語教育用語辞典』では、「学習者が将来どのような目的や状況で 外国語を使うようになるのかを予測し、それをもとにどのような言語能力を伸ばす必要 があるのか(ニーズ)を分析すること。学習者のニーズを考慮して、教材を選択・配列し、

学習者に合った教授法を選択するために行われる。」と定義されている。また同書では、

理系学部や経済、経営、商学部等の学部で主流になりつつあるESP(English  for  Specifi c 

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第一部   研究論文・実践報告

Purposes)プログラムに基づくカリキュラム作成の際には、ニーズ・アナリシスが必要

不可欠であると述べられている。さらに詳しいニーズ・アナリシスの概要に関しては、

『外国語教育学大辞典』Encyclopedic dictionary of applied linguistics: A handbook for  language teachingを参照されたい。

4. 内発的動機付け(intrinsic  motivation)は、外発的動機付け(extrinsic  motivation)とペ アで1985年にDeciとRyanによって提唱された第二言語学習の動機付け理論である。

R.  C.  Gardnerの提唱した道具的動機付け(instrumental  motivation)と統合的動機付 け(integrative  motivation)と並んで、第二言語学習の動機付け理論としてよく知られ ている言葉である。内発的動機付けを高める具体的なストラテジーに関しては、森永 弘司(2009b).「外国語学習意欲を高めるストラテジーを求めて─Dörnyeiの提唱する  Motivational  Strategiesを利用したアンケート調査にもとづく─」『立命館高等教育研 究』を参照されたい。

5. Richards,  J.  C.  (2001). Curriculum  Development  in  Language  Teaching,  Cambridge: 

Cambridge University Press, 80-88.

6. 岡本(2005)は、最初の測定では、5,895語あった受容語彙数が、5ヶ月後の同じ学生を対象 とした再テストでは、25%も語彙数が減少したことを報告している。

7. ルーブリック(rubric)は、達成度のレベルの目安を数段階に分けて記述することで、達 成度を判断する基準を示すチャートである。学習結果のパフォーマンスレベルの目安 を数段階に分けて記述することで、学習の達成度を判断する基準を示す教育評価法と して近年日本でも盛んに使用されるようになってきた。英語のライティングのキュー ブリックに関しては、関西JACETのライティング指導研究会が現在精力的に取り組ん でおられる。詳しくは、Nishijima,  H.,  Hayashi,  K.,  Masaki,  M.,  Kinshi,  K.,  &  Kuru,  Y. 

(2007).  Developing  a  writing  rubric  for  classroom  use  in  Japanese  higher  education. 

JACET Journal, 45, 109-115. Kuru, Y., Masaki, M., & Kinshi, K. (2009). The preliminary  examinations  of  the  rubric  of  our  own  designing.  The  Writing  Research  Group,  JACET Kansai Chapter, 8, 27-40.を参照されたい。

8. 語彙力増強の重要性に関しては、主として本学の学生の受容語彙数、発表語彙数、語知識 の深さの3つの語彙力構成要素と読解力および聴解力との間の相関性から、語彙力を伸 ばすことの重要性を論じた森永(2008d)「語彙力増強の重要性─二つの大学の語彙力測 定テストのデータに基づく─」を参照されたい。

9. 筆者は、過去3年間本学で、映画を利用して英詩の知識を深めることを狙いとする授業 を実施した。その際の授業アンケート調査で、こうした教養を身に付けることを主眼と

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する選択の授業の存在意義に関して多くの学生が好意的な見解を述べていた。この授業 に関しては以下の実践報告をおこなった。森永(2006)「教室に英詩を─映画を利用した 英詩指導の試み─」、森永(2008a)「映画を通して英詩を教える授業の試み─三年間の授 業実践を振り返って─」。

10. 大学での理系のリメディアル・レベルの学生を対象におこなったニーズ・アナリシスの 実践報告に関しては、森永弘司・佐藤香苗(2008b)「理系のリメディアル・レベルの学生に おける英語のニーズ・アナリシスの一事例研究」を、学力別クラス編成を実施し、ESPプ ログラムにもとづく英語カリキュラムを採択している他大学の理系クラスと本学の文 系クラスのニーズ・アナリシスの比較に関しては、森永弘司・佐藤香苗(2009a)「より良い 大学英語教育カリキュラムを作成するためのニーズ・アナリシス調査」を参照されたい。

参考文献

大津由紀雄編著(2009)『危機に立つ日本の英語教育』東京:慶応義塾大学出版会.

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白畑知彦、冨田祐一、村野井仁、若林茂則著(2009)『英語教育用語辞典』東京:大修館書店.

K・ジョンソン、H・ジョンソン編、岡秀夫監訳(1999)『外国語教育学大辞典』東京:大修館書 店.

田崎清忠編(1995)『現代英語教授法総覧』東京:大修館書店.

森永弘司(2006)「教室に英詩を─映画を利用した英詩指導の試み─」全国英語教育学会第33 回全国大会.

森永弘司(2008a)「映画を通して英詩を教える授業の試み─三年間の授業実践を振り返って

─」日英言語文化学会第5回年次大会. AJELC Newsletter, 25. 3-4.

森永弘司・佐藤香苗(2008b)「理系のリメディアル・レベルの学生における英語のニーズ・ア ナリシスの一事例研究」日本リメディアル教育学会第4回全国大会.

森永弘司・前田悦子(2008c)「文系学部─主として法学部、経済学部、商学部─の学生を対象 としたニーズ・アナリシスの試み」外国語教育メディア学会2008年度関西支部秋季大会.

森永弘司(2008d)「語彙力増強の重要性─二つの大学の語彙力測定テストのデータに基づ く─」『主流』70. 85-105.

森永弘司・佐藤香苗(2009a)「より良い大学英語教育カリキュラムを作成するためのニーズ・

アナリシス調査」第35回全国英語教育学会.

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第一部   研究論文・実践報告

森永弘司(2009b)「外国語学習意欲を高めるストラテジーを求めて─  Dörnyeiの提唱する 

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参照

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