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2018年度 国際文化情報学会 各部門最優秀賞・奨励 賞

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Academic year: 2021

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2018年度 国際文化情報学会 各部門最優秀賞・奨励

著者 法政大学 国際文化学部

出版者 法政大学国際文化学部

雑誌名 異文化. 論文編

巻 20

ページ 1‑110

発行年 2019‑04‑01

URL http://hdl.handle.net/10114/00021672

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ポスター部門

変化するまなざし

― SNS による観光行動とその弊害 ―

曽ゼミ

井 野 湧 己   尾 形 ゆ り   野 口 爽   目 黒 舞   佐 久 間 拓 海 衛 嘉   佐 藤 優 花   齋 藤 真 百 花   常 木 恒 太   林 和 花 奈 鹿 島 美 優   金 秋 奈   阿 部 瑛 理 紗   増 田 小 雪   佐 方 美 南

高 橋 桜 子   方 静 葉   吉 本 百 花

奨励賞

1.はじめに

2018 年 8 月金沢でのゼミ合宿では、ゼミ生は観光中のどのシーンにおいても、カメラと SNS を稼働させていた。観光地でのこのような光景はいつから見られるようになったのか、

素朴な疑問を持った。そのことがきっかけとなり本研究をはじめるに至った。

本研究の目的は、メディアと観光の関係を考察し、特に新しいメディアである SNS が観光 に与える影響を、その弊害も含めて明らかにすることである。スマートフォンや SNS の普及 によって、メディアが観光に与える影響、特にこれまであまり見られなかった弊害が生じて いるのではないかという問いであり、イギリスの社会学者・ジョン・アーリが唱える「観光 のまなざし」がどのように変化しているのかを問うものである。

2.メディアと観光の関係 2.1.メディアと観光の関係

私たちが旅行や遊びに出かけるきっかけはメディアの情報であることが多い。また、 観光 社会学者の高山啓子が「観光をするという行為は、メディアを介した商品の消費である」(高 山 2005)というように、観光はメディアの介在によって成り立っている。観光とは、いわ ば「場所、イメージの消費行動」(遠藤・寺岡・堀野 2014:4-18)であるが、観光する際の「場 所のイメージ」はメディアによって作られたものである。メディアは、ある場所を何らかの 形で脚色することで、場所に対するイメージを構築するのである(遠藤・寺岡・堀野 2014:

4-18)。そして、観光する際にはメディアを通して構築された「場所のイメージ」と「実際 の場所」を照らし合わせることで確認しているのだ。つまり、観光はメディアによる場所の イメージ構築に支えられているのだ。

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(ポスター 1-1)

2.2.日本における時代ごとのメディア分類と比較

ところで、観光に関わるメディアの変遷は「江戸時代中期以降」、「明治・大正・昭和期」、「現代」

という大きく三つの時代に分けることができる。江戸時代中期以降、お伊勢参りなど庶民の旅が 流行るに伴い、名所図会が生まれた。例えば、江戸時代後期にできた『都名所図会』は京都およ びその周辺の案内を目的として、名所旧蹟、風俗、名産などの内容が盛り込まれている。次いで、

明治 20 年ごろには絵葉書が、大正時代にはトーキー映画が上映され、昭和 28 年にはテレビ放送 が始まった。そして、現在においては「個人による情報の送受信」、「情報の送受信の容易性、即 時性と拡散性」「相互コミュニケーション」を特徴とした SNS が普及している。このような特徴を 持つ SNS の登場によって、見るべき場所が多様化しており、これを高山は「マスツーリズムから 多様な細分化された目的に対応できる観光」へと変化したとしている(高山 2005:79-90)。

ここで、現在一般的に使われている観光に関するメディアの特徴を比較する。まず、ガイド ブック、映画・テレビは受信するのみで、発信することはできない一方的なメディアである。そ れと比較すると、口コミサイトと SNS はどちらも受信者にも発信者にもなり得る相互的なコミュ ニケーションができるメディアであることが分かる。さらに、SNS は受信者が受信した情報を「い いね」や「リツイート」することで、簡単に拡散することができる。また、ガイドブックと口コ ミサイトが取り扱う情報の範囲は限定的である一方で、テレビと SNS が取り扱う情報の範囲は 多岐にわたる。情報の即時性の観点では「ライブ配信」、「~なう」が流行ったほど即時性に優

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れている。また、ガイドブック、映画・テレビには発信者や作品自体を評価する機能がないが、

口コミサイト、SNS には投稿者や投稿自体を評価する機能がある。これらの特徴を背景に、SNS は観光のメディアとしても台頭してきており、観光におけるイメージ消費が加速している。

(ポスター 1-2)

(ポスター 1-3)

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3.SNS を用いたイメージ消費

ここでは、SNS によって観光のイメージ消費行動がどのように変化したのかについて、写 真・動画共有アプリ Instagram に焦点を当てて明らかにする。社会学者のジョン・アーリは、

観光は「前に見たイメージの確認行動である」(アーリ、ラースン 2014)というように、従 来型の観光行動は、ガイドブックなどを通して得たイメージを現地に行って雰囲気を感じる 事で消費しており、撮影行為は思い出として残すためのものだった。しかし、現在では「SNS 上で公開された画像と同じような写真を撮影し、公開するために観光客がその場所を訪れる という観光現象」(鈴木 2018)が起きていると社会学者の鈴木は述べている。撮影行為は必 然的に他人の目を意識した「インスタ映え」を目的にしたものになっているのだ。このように、

従来の観光の目的は、その場所にいって非日常を体験すること、メディアを通して得たイメー ジを確認することだったが、現在では SNS の台頭によって、投稿することを意識した撮影行 為が新たな観光の目的となったといえる。

(ポスター 2-1)

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(ポスター 2-2)

4.インスタグラムによる自撮りの落とし穴

SNS がもたらしているのは、観光のイメージ消費行動だけではない。ここからは、観光地 での撮影行為と SNS がもたらしている弊害について述べる。SNS とスマートフォンの普及、

スマートフォンカメラの性能向上によって、人々は自撮り行為を行うことが多くなった。し かし、この自撮りには様々な弊害が伴っている。実際に CNN の報道によると、6 年間で 259 人が自撮り行為が原因で亡くなっている(CNN 2018)。さらに、自撮りが原因での死亡事故 の例を二つ挙げる。一つは、アメリカのヨセミテ国立公園の崖の淵ギリギリで撮影をしてい た夫婦が滑落した事故である(AFPBB News 2018)。この事故をマズローの 5 段階欲求から みると、写真をインスタグラムに上げることで「いいね」を貰い「承認欲求」を満たしたい という思いが「安全欲求」を上回ってしまう事が原因だと考えた。

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(ポスター 3-1)

二つ目は、山口県の角島大橋での行き過ぎた撮影行為についてである(山口新聞 2017)。

道路上での撮影を禁止しているにも関わらず、このような写真をインスタグラムにアップす る人が後を絶たない。この事故は、危険な自撮りが拡散される事で「みんなやってるから」

という集団心理が危機意識の低下を招いていると考えられる。このように、観光地での撮影 行為による弊害が、死亡事故、行き過ぎた撮影行為という形であらわれてきている。

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(ポスター 3-2)

5.さらけ出すプライバシー

さらなる弊害として、自らの投稿によって個人情報が流出することで、事件に発展するこ とが挙げられる。イギリスで行われたアンケート調査の結果では、元空き巣犯の約 8 割が空 き巣に入る家を決める際に SNS を参考にしているという(Honeywell 2011)。このような状 況の背景には SNS の三つの要素が存在すると考える。一つ目は容易性である。複数の SNS を 駆使することで、個人単位での情報の受信発信が簡単になっている。二つ目は拡散性である。

発信者が意図せず情報が拡散され、コントロールが難しくなっている。三つ目は即時性です。

他のメディアと異なり、SNS はリアルタイムでの情報の受信・発信が可能になっています。

こうした SNS の三つの特徴がプライバシーをさらけ出している。

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(ポスター 4-1)

このプライバシーが流出することによる弊害を防ぐために、次の五つの対策が有効だと考 える。第一に、近所の風景を写した写真など「特定材料の回避」。第二に、投稿者自身が限れ らたアカウントに投稿した写真・動画の閲覧権限を付与する「公開範囲の限定」。第三に「時 間差投稿」。また、第四に「位置情報のオフ」をすることで投稿された写真・動画をもとに、

投稿者が現在どこにいるかという情報が流出するのを防ぐ。第五に「旅行中であることを悟 られる投稿をしない」である。これら五つがプライバシーが流出することによる弊害を未然 に防ぐために有効だと考える。

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(ポスター 4-2)

6.結論

我々は、これらの研究を「変化するまなざし」というテーマで行ってきた。スマートフォ ンと SNS が普及したことで、私たちの観光のなまなざしには二つの変化がみられるようになっ た。一つ目の変化は、観光地がこれまで以上に(スマホの)カメラを向ける場所へと変化し たことだ。二つ目は、ある個人が SNS 上に観光地の映像を投稿すると、その投稿を見た人は、

ただ受信するだけでなく、その地を訪れ、自分も投稿するというように、観光のまなざしの 発信と受信がループ状に繰り返されるという変化だ。そこには、個人で情報を即時に送受信 したいという現代人の欲求を垣間見ることができるのだ。

【 参 考 文 献 】( 五 十 音 順 )

A.H. マズロー『人間性の心理学―モチベーションとパーソナリティ―』産能大出版部、1987 年 遠藤英樹、寺岡伸悟、堀野正人編著『観光メディア論』ナカニシヤ出版、2014 年

ジョン・アーリ、ヨーナス・ラースン『観光のまなざし』法政大学出版局、2014 年 鈴木謙介「ソーシャルメディアとオーセンティシティの構築−インスタ映えの観光社会学 的考察」『観光学術学会第 7 回大会発表要旨集』観光学術学会事務局、p.8-9、2018 年

田尾彩美、小舘亮之「ソーシャルメディアが観光に与える影響 : Instagram への投稿事例分析を中心と

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して 」『電子情報通信学会技術研究報告』電子情報通信学会、116(488)p.117-122、2017 年

高山啓子「社会現象としての観光−メディアによる観光イメージの構成−」『川村学園女子大学緋究紀要』

川村学園女子大学、 第 16 巻 第 2 号 p.79-90、2005 年

【 参 考 サ イ ト 】( 五 十 音 順 )

ALSOK「ゴールデンウィークの空き巣対策」(最終閲覧日:2018 年 11 月 22 日)https://www.alsok.

co.jp/security_info/newsletter/201704.html

AFPBB News「旅行好きインド人カップル、米国立公園で死亡 自撮りしようとして転落か」2018 年(最 終閲覧:2018 年 11 月 22 日)http://www.afpbb.com/articles/-/3195349

CNN「自撮り写真撮影の死者、世界で 259 人、2011 年以来の統計」(最終閲覧日:2018 年 11 月 19 日)

https://www.cnn.co.jp/world/35126543.html

総務省インターネットトラブル事例集(平成 29 年度版)(最終閲覧日:2018 年 11 月 22 日)http://

www.soumu.go.jp/main_content/000506392.pdf

電通報「SNS 映え」の分析から見えてくる若者の情報行動「シュミラークルモデル」(最終閲覧日:

2018 年 11 月 22 日)https://dentsu-ho.com/articles/3747

日テレ NEWS「SNS 空き巣 帰省や旅行中は特に注意!」(最終閲覧日:2018 年 11 月 22 日)http://

www.news24.jp/articles/2018/08/13/07401300.html

Honeywell「Whats your status?」(最終閲覧日:2018 年 11 月 22 日)https://www.friedland.co.uk/en- GB/News/Pages/Whats-your-status.aspx

ViRATES「“ インスタ映え ” を狙いすぎ!あまりにも大迷惑な集合写真に非難殺到」(最終閲覧日 2018 年 11 月 19 日)https://virates.com/society/02357046/comment-page

山口新聞「角島大橋 “ インスタ映え ” 狙い違法行為相次ぐ県警など注意喚起」(最終閲覧日:2018 年 11 月 23 日)https://www.minato-yamaguchi.co.jp/yama/news/digest/2017/1125/5p.html

参照

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