早稲田大学における大学入学前導入教育 ( 数学1・2 ) について
星 健太郎*1・瀧澤 武信*2・楠元 範明*3 Email: [email protected]
*1: 早稲田大学メディアネットワークセンター
*2: 早稲田大学 政治経済学術院
*3: 早稲田大学教育・総合科学学術院
◎Key Words Web Based Training,入学前教育,数学学習教材
1. はじめに
近年では,各高校のカリキュラムの多様化や易化に 伴い,基礎的な数学の学力を習得しないまま大学へ入 学する学生も多く見受けられる.しかし大学入学後,
基礎数学を前提とした様々な講義に直面し,遅れを取 る不安を感じることで大学生活に影を落とす学生が少 なくない.数学的要素の習得は理工系の学部だけに限 らず,文系の学部においても必要不可欠である.早稲 田大学(以降本学と記す)では学生が入学する前に基 礎的な素養を身につける場として WBT(Web Based Training),LMS(Learning Management System)を利用し た学習教材をオンライン上で提供している.2002年度 から取り組みが始まり,今年で8 年目を迎える.現在 提供している教科は数学Ⅰ・Ⅱ以外にも統計(標本・
集団の代表値),情報(Cisco Networking Academyの「IT Essentials」に準拠した基礎知識),英語(TOEIC スコア 500 以下,英検2 級以下レベル対象)の3科目がある.
本発表では,本学におけるWBTによる数学教育に対 する取り組みを紹介し,過去5年間の統計情報を検討・
評価し受講状況や効果,問題点を報告する.WBTの運 営,導入例として一つの目安となることを目標とする.
2. WBT による数学教材について
本学が提供する入学前導入教育の一科目である「数 学Ⅰ・Ⅱ」は,2009年度までは共同研究先の企業が提 供するWBTシステムに搭載し提供を行ってきた.2010 年度からはバックボーンネットワークやシステム,技 術の向上により本学の独自LMSシステムCourseN@vi にて提供を行っている.その主な構成は,各単元毎に 講義と演習問題の2 つの部分に分けられる.講義部分 では教科書的な説明と例題を動的なコンテンツを用い て行っている.Webの特性を活かした動的コンテンツ は特に数学を疎遠と感じてきた学生に「わかりやすい,
楽しく吸収できる」と評価を受けている.演習部分で は講義内の例題と同程度の問題を用意しており,各単 元の理解度を確認しながら学習できるようになってい る.演習問題は解答した後自動的に採点され,学生は 間違った点や演習問題の解説を見ることが出来る.な お,疑問や問題が発生した際には電子メールにて問い 合わせ対応を行っている.
本学が提供したコンテンツのカリキュラムは(表1) の通りである.各項目は旧課程の区分を基に作られて
おり,それらはさらに5から10程度に細分される.数 学Ⅰのコンテンツは,学校法人関西学院丹羽時彦教諭 作成の「放課後の数学」を基に,本学が編集と改編を 行い,数学Ⅱのコンテンツは,早稲田大学高等学院の 教員が作成している.
3. 2010 年度入学生の受講状況
3.1 対象学生・期間・環境について受講対象学生は,(附属・系属6校+一般の)推薦入 学者,AO入学者など「以外者入試」による入学者で各 学部の希望者となり,政治経済学部の一部では数学Ⅰ,
商学部では数学Ⅰ・Ⅱの受講を義務付けらている.入 学者一万人に対し700 人程度が該当する.なお理系で ある基幹・先進・創造理工学部の3 学部の入学生に対 しては高校数学の素養は十分あるものとし実施してい ない.当コンテンツは2006 年度より有料化され1500 円の受講料を必要としている.
受講可能期間は入学の2カ月前である2010年2月12 日から3月12日として行った.この期間中,学生から のシステム・内容についての質問を電子メールで受け 付けた.講義コンテンツそのものは3月31日まで閲覧 可能とした.同コンテンツは在校生に対しても用意さ れており,こちらは年間を通して利用可能である.
推奨環境は Windows2000~7,MacintoshOS9~OSX v10.5迄とし,ブラウザはMicrosoft Internet Explorer 6.0 sp2,Fire Fox 2 以降とした.
3.2 受講状況と修了状況
付属・系列校,一般・指定校別受講状況を数学Ⅰ・
Ⅱそれぞれ(表2)(表4),推移を(図1-2)で示す.
ここでは一度でもログインした記録があれば受講者と みなしている.学部別の受講修了率を(表3)(表5)
で示す.ここでは一度でも演習問題を受講したことが あれば成績を問わず修了したものとみなしている.
表1 数学Ⅰ・Ⅱのカリキュラム
数学Ⅰ 数学Ⅱ
§1. 2次関数 §1. 図形と方程式
§
2.
三角比 §2.
三角関数§
3.
個数の処理(順列・組合せ)
§
3.
指数関数・対数関 数§
4.
確率 §4.
微分・積分2010 PC Conference August 7-9,2010 at Tohoku University
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図1 数学Ⅰ受講状の推移
4. 2010 年度受講者の傾向と 5 年間の推移
4.1 受講状況について受講者について,数学Ⅰ・数学Ⅱともに毎年着実に 増加している(224→320→667→682→690)ことが確 認できる[1][2][3][4].受講率に関しては,数学Ⅰ:90%
付近まで上昇し,附属・系属校ではほぼ100%.数学Ⅱ:
受講率が2010年度は2009年度に比べ低くなっている
(14%→33%→48%→94%→70.9%)ことに注意したい.
4.2 学習修了状況について
全課程修了率について,数学Ⅰ:必修ではない学部 生の全課程修了率は殆どが50%以下であること,また,
付属・系列校別の全課程修了率は非常に高い値(6校集 計:90%弱)が確認できる.数学Ⅱ:付属・系列校別 の全課程修了率は非常に高い値(6校集計:85%弱)を 取る等,受講修了率は着実に良くなっていることが挙 げられる.
また,メールの問い合わせについては,昨年度まで はシステムに関する質問が主であったものが数学に関 する質問も多く寄せられたのが印象深い.
図2 数学Ⅱ受講状の推移
5. まとめ
受講生のオンデマンドスタイルやIT環境への順応化,
附属・系属校の受講義務化などを受け,この1年間で 早稲田大学の数学 WBT教育はよりその効果を発展さ せることが出来たと考えられる.一方数学Ⅱ科目の受 講率の激減したことから受講率の向上対策などを今後 の課題として挙げたい.WBTの導入・経営する方の目 安となれば幸いである.
参考文献
(1) 星健太郎,瀧澤 武信,楠元 範明:“早稲田大学におけ る大学入学前導入教育(教科数学)について”,平成21 年情報教育研究集会論文集,2009.
(2) 渡橋 憲司,小林 直人,瀧澤 武信:“早稲田大学での入 学者向け導入教育(数学Ⅰ・Ⅱ)について”,平成20年 情報教育研究集会論文集,2008.
(3) 小林直人,古川勉,瀧澤 武信:“WBTによる導入教育 について”, 2007PCカンファレンス論文集,CIEC,2007. (4) 古川 勉,瀧澤 武信,:“WBT による数学導入教育”,
2006PCカンファレンス論文集,CIEC,2006.
表2 数学Ⅰ受講状況
2010
年度 受講希望者 受講者 受講率 付属・系列校208 205 98.6%
一般・指定校
482 438 90.9%
総計
690 643 93.2%
表3 数学Ⅰ学部別受講修了率
学部 受講者 全課程修了者 修了率 政治経済 116 79 68.1%
法 6 2 33.3%
文学 15 6 40.0%
文化構想 29 11 37.9%
教育 5 2 40.0%
商 353 330 93.5%
社会科学 22 14 63.6%
人間科学 34 15 44.1%
人間科学(通信) 43 11 25.6%
スポーツ科学 8 1 12.5%
国際教養 12 2 16.7%
総計 643 473 73.6%
付属6校集計 205 184 89.8%
表4 数学Ⅱ受講状況
2010
年度 受講希望者 受講者 受講率 付属・系列校208 175 84.1%
一般・指定校
482 314 65.1%
総計
690 489 70.9%
表5 数学Ⅱ学部別受講修了率
学部 受講者 全課程修了者 修了率 政治経済 66 26 39.4%
法 2 0 0%
文学 8 3 37.5%
文化構想 16 9 56.3%
教育 2 1 50.0%
商 340 308 90.6%
社会科学 17 12 70.6%
人間科学 16 8 50.0%
人間科学(通信) 16 6 37.5%
スポーツ科学 4 0 0%
国際教養 3 0 0%
総計 489 373 76.3%
付属6校集計 175 147 84.0%
2010 PC Conference August 7-9,2010 at Tohoku University
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