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父親育児支援活動が創り出す社会デザイン Social Design through Fathers’ Childcare Support Activities

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Academic year: 2021

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【査読論文】

父親育児支援活動が創り出す社会デザイン

Social Design through Fathers’ Childcare Support Activities

東 浩司

AZUMA Koji

[要旨]

本稿の狙いは、国内最大の父親支援団体であるNPO法人ファザーリング・

ジャパンの活動事例を通して、父親育児支援活動がもたらす社会デザインの ありようについて論述することにある。

まず先行研究として父親の育児に関する社会認識の変化について整理した。

かつて日本社会が近代化するなかで父親の育児は不可視化されたが、母親の 育児不安研究が契機の一つとなって父親研究が進み、育児雑誌等で父親が主 体化して扱われるようになったことでファザーリング・ジャパンの活動が受 け入れられる土壌ができた。

次にファザーリング・ジャパンの実証研究としてファザーリング・ジャパ ンの成果事例を述べ、理事や会員を対象に行ったインタビュー調査の結果を 紹介した。インタビューでは会員の入会動機と父親ネットワーキングに対す る価値やメリットを尋ねた結果、入会動議は子育て・仕事・活動の三つの軸 があり、複合するパターンもみられた。父親ネットワーキングに対してはサー ドプレイスとしての価値を感じていることが分かった。

最後に、当団体の掲げるテーゼ「父親が変われば、家庭が変わる、地域が 変わる、企業が変わる、社会が変わる」を検証した。結果、父親の行動に顕 著な変化が見られず、初期条件が満たされていないために家庭・地域・企業・

社会への影響を測れない結論となった。代表理事の安藤は「男性の家事育児 参画はボウリングの1番ピン」と表現するが、今後は男性の育休義務化の動 きによって1番ピンが倒れることが期待される。

キーワード:父親育児支援、子育てネットワーク、ソーシャル・イノベーション

はじめに

世界経済フォーラムが発表した2019年のジェンダー・ギャップ指数で日本は153

立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科博士課程前期課程修了生

(2)

121位と低い順位であった。「男は仕事、女は家庭」といった性別役割分業意識が今 なお残る日本社会で、父親の育児を支援することによって社会変革を目指すNPO団体 がある。NPO法人ファザーリング・ジャパンは「Fathering=父親であることを楽し む」という考え方や生き方を広めることを通して、父親の育児を普及させる活動を行 なっている。ファザーリング・ジャパンの公式サイトでは次のように団体の説明がな されている。

 Fathering Japanは、父親支援事業による「Fathering」の理解・浸透こそが、「よ い父親」ではなく「笑っている父親」を増やし、ひいてはそれが働き方の見直し、

企業の意識改革、社会不安の解消、次世代の育成に繋がり、10年後・20年後の日本 社会に大きな変革をもたらすということを信じ、これを目的(ミッション)として さまざまな事業を展開していく、ソーシャル・ビジネス・プロジェクトです。

ファザーリング・ジャパンは2006年に安藤哲也が設立した。元々は絵本好きな父親 たちが行うサークル活動だったのが、父親のあり方に対する危機感から社会的課題の 解決に取り組むNPOとなり、国内最大規模の父親支援団体へと発展した。

ところで筆者は当団体の理事を務め、中核メンバーの一人となって活動の一端を担っ ている。そして父親育児支援活動に10年ほど取り組むなかで、このテーマがもつ多様 性や可能性を感じる場面が多々あった。具体的には、父親の育児が普及することで少子 化、女性活躍、働き方改革などの様々な社会的課題の解決に影響を及ぼすと実感して いる。但し、これらの手応えは個人の感覚論に過ぎず、論証されているわけではない。

そこで本稿はファザーリング・ジャパンの活動を社会デザインの観点から考察し、

父親支援活動がもたらす社会変革の可能性について考察したい。社会デザインについ て、中村は次のように述べている。

 異なる価値観を持つ人々が共生していくための知恵や仕掛けとしての社会と、そ こでの人々の参加・参画の仕方を、これまでの常識にとらわれず、根底的という意 味でラディカルに革新(イノベーション)していくことが、あらためて求められて いる。そうした思考と実践のありようを、筆者は「社会デザイン」と呼んできた。

(中村ほか 2020:9)

ファザーリング・ジャパンの活動は、母親が子育てをすべきとする旧来の価値観に 対して父親育児支援という新たな仕掛けを行うことで社会変革を図ろうとする実践で あり、社会デザインと呼べるものと考える。

1.「父親の育児」に対する社会認識の変化

ファザーリング・ジャパンの活動が社会に受け容れられた要因として、それ以前に 父親の育児に対する社会認識が変化していたことが大きい。

父親の育児に関する先行研究によれば、江戸時代は「父親が子どもを育てた」とす

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る指摘もあるが、明治期に家父長制が制度化され、戦後から高度経済成長期にかけて 父親の稼得役割と母親の世話役割という夫婦役割分化をベースとした近代家族が成立 するなかで、父親の育児は不可視化された。柏木によれば「 子どもの発達に影響する のは母親で、父親はそれほど重要ではない といった仮定に基づき、子育ての場面に おいて父親の存在を無視してきた」(柏木編 1993:5)という。小崎は「日本に 父親’

はいなかった」(小崎ほか 2018:ⅳ)と暗喩的な表現で述べている。

1950年代から70代にかけて核家族が急速に増え、専業主婦の増加と父親の家庭不 在が常態化するなかで「子どもが幼いうちの育児は母親がすべき」とする三歳児神話 の育児観が広がった。孤独な子育てを強いられた母親たちのなかには育児ノイローゼ に陥る者が現れ、母子心中などの痛ましい事件が起きて社会問題となった。

そうしたなかで牧野は母親の育児不安研究に取り組み、「母親の社会的ネットワーク の狭さ」と「父親の育児不参加」の二つが育児不安の要因であるとした。「夫は育児に 責任をもっていないと感じているような妻の場合、情緒的に不安定で、孤独感や圧迫 感をもちながら育児をすることになりやすい」(牧野 1982:55)ことを明らかにし、父 親は母親を支える育児ネットワークの一員として期待されるようになった。

母親の育児不安研究が一つのきっかけとなり、発達心理学や家族社会学などの領域 で父親研究が本格的に始まった。1990年代は「父親再発見の時代」と呼ぶ識者もいる

(宮坂 2008:29)。2000年代になると父親を読者層と想定する育児雑誌の創刊が相次 (1)、これまで母親のサポート役とみなされていた父親がメディアで「ひとつの主体 として焦点化され、語られるべき存在」(天童 2016:80)となった。

2010年に「イクメン」がユーキャン新語・流行語大賞トップテンに選ばれ、父親が 育児することを歓迎するムードが生まるとファザーリング・ジャパンの活動は勢いを 増した。イクメンは「子育てを楽しみ、自分自身も成長する男性」を表し、街なかで ベビーカーを押す父親の姿を普通に見かけるようになったが、母親を「イクママ」と 呼ばないのと対照に流行から10年を経ても「イクメン」と言われ続けるのは、育児す る父親が今なお珍しい存在とみなされている証左でもある。

2.ファザーリング・ジャパンの実証研究

(1)ファザーリング・ジャパンの成果事例

ファザーリング・ジャパンは年間300回以上の講演イベントを実施し、父親の育児 に関わる様々なプロジェクトを展開している。ここでは成果事例をいくつか紹介する。

ファザーリング・ジャパンが全国的に有名になった契機は2008年に開催した「子育 てパパ力検定」で、7箇所で約千人の受検者を集めて多くのメディアで取り上げられた。

2009年には筆者がリーダーとなって父親が子育てを学ぶことを目的にした「ファ ザーリング・スクール」(2)を開講した。全8回の連続講座で、平日夜の仕事帰りに育 児を学ぶ父親たちの姿に取材が殺到した。2010年には首都圏の7市区と協働してパパ スクールを開催し、全国各地の自治体が父親向け子育て講座を実施する流れを作った。

同じく2009年に父子家庭を経済的に支援する「フレンチトースト基金」を立ち上げ た。この後に父子家庭の父親たちが国会にロビイング活動を行い、父子家庭を児童手

(4)

当の支給対象に含める児童扶養手当法の改正に漕ぎつけた。父子家庭支援はファザー リング・ジャパンがお楽しみイベント系グループから政策提言をも行う団体となる転 機となった。

男性の育休取得促進を狙いとする「さんきゅーパパプロジェクト」は育休取得の男 性に経済支援を行う基金を立ち上げ、育休取得者向けeラーニングを提供した。その 後も関係省庁と連携しながら活動を展開し、内閣府が「さんきゅうパパプロジェクト」

を立ち上げるなど国の政策に影響を与える活動となっている。

イクボスプロジェクトは経営管理職層の意識変革を狙った事業である。父親が育児 したいと願っても、長時間労働の職場では子どもが起きている時間帯に帰宅できない ため育児することが叶わない。父親の育児を実現するには長時間労働を前提にした働 き方を変える必要があると認識し、2014年大企業のトップに呼びかけ「イクボス企業 同盟」を結成した(3)。自治体にも呼びかけ、250を超える都道府県・市町村の首長が

「イクボス宣言」を行なっている。

地方における父親育児の普及も熱心で、北海道から沖縄まで7つの支部と4つの関 連団体(4)を設立し、各地でパパサークル立ち上げに関わっている。さらにファザーリ ング全国フォーラムを2012年より年一回、開催地の自治体と企業を巻き込んで実施し ている(5)

こうした活動の広がりと社会に影響力を発揮した功績が認められ、201811月「子 供と家族・若者応援部門表彰子育て・家庭支援部門」で内閣総理大臣表彰が授与され た。受賞にあたって選考委員が次のコメントしている。

 父親支援の先駆的活動です。社会への改革や意識啓発(企業や自治体をも巻き込 んだイクボス)活動等も意欲的です。父親支援活動を全国普及させ育児・家事は母 親の役割という概念を払拭し、ともに育てるという夫婦のカタチや育児を楽しむと いう新しいパパのカタチを広め、全国にパパサークルの活動が広がりました。FJ 多様なメンバーで構成されまた幅広い活動は今後も期待できます。(内閣府2018)

(2)インタビュー調査

ファザーリング・ジャパンの理事および会員の34名を対象に、20192月から7 月にかけてインタビュー調査を行った。本稿では会員の入会動機と、ファザーリング・

ジャパンのネットワークに感じている価値やメリットを尋ねた結果を紹介する。

①入会動機

ファザーリング・ジャパンへの入会動機をカテゴリー化した結果、子育て(自分の 子育てに役立ちそう、パパ友がほしい)、仕事(仕事に活かしたい、働き方を見直した い)、活動(一緒に活動したい、NPOに関心があった)の三つの軸があり、これらを 包含する形で「楽しそう」という好奇心の動機があった。動機が複合したパターンも あり、次のように語った者がいた。

(5)

 本業をやりながらNPOの本を読んだり、資格をとってみたり、子どもが生まれた のが掛け算になった。たまたま日経新聞で安藤さんの記事を読んで、あ、NPOだ。

父親だ。面白そうだ。という三点セットで、ファザーリング・ジャパンのホームペー ジをみて会員に。(インタビューより)

石井は、ファザーリング・ジャパンが若い世代の父親たちの支持を得ている理由と して「父親であることを楽しむ」というメッセージでライフスタイルとして唱える姿 勢と、ビジネス的な構造を持っていることの二つをあげた(石井2013:9699)。今回の インタビューの入会動機でも、石井が指摘した「父親というライフスタイルを楽しむ 姿勢への共感」と「ビジネスにつなげる」の要素は含まれていた。

②ファザーリング・ジャパンのネットワークに感じる価値やメリット

ファザーリング・ジャパンのネットワークに感じる価値やメリットについて語られ た要素をカテゴリー化し、「サードプレイス」「仲間・同志」「ロールモデル」「仕事」「子 育て」「その他」に分類した(表 1)。

とりわけ強調されたのはサードプレイスとしての価値である。理事および会員は、

ファザーリング・ジャパンが主催するイベントや懇親会での相互交流、メーリングリ ストやSNSを利用したやりとりのなかで、家庭(ファーストプレイス)や職場(セカ ンドプレイス)とは違うサードプレイス的な居心地のよさを父親ネットワーキングに 感じていた。

オルデンバーグはサードプレイスの価値を「人を平等にする」とし、地位や属性な どに囚われず対等な立場で交流できることで「人々は最高に民主的な経験ができ、よ り豊かになれる」(オルデンバーグ 2013:71)と述べた。インタビューではファザーリ ング・ジャパンの交流において、まさにそうした平等意識について述べた者がいた。

 ただ子どもがいて父親だっていうだけでつながれて。そこに一般的にある上下関 係があんまり入り込まないじゃないですか。初めて会ってもFJに入っているという 時点である程度の共通認識ができている前提の話しができる。そういう仲間がいる

表 1 ファザーリング・ジャパンネットワークの価値やメリット

【サードプレイス】普段会えない人と交流、視野が広がる、仕事以外の楽しみ

【仲間・同志】社会を変える仲間、同じ価値観をもつ同志がいる

【ロールモデル】先輩の父親から刺激を受ける、見本となる父親がいる

【仕事】仕事の幅が広がる、仕事がデキる人からアドバイスがもらえる

【子育て】育児している自分が肯定される、子育ての相談ができる

【その他】ステイタス、ブランド、所属する安心感、生き方の選択肢が増えた 筆者作成

(6)

こと自体がものすごく心強いし、楽しいし、うれしい感じはします。(インタビュー より)

3.社会デザインとしての父親育児支援活動

(1)父親支援を起点としたソーシャル・イノベーション

ファザーリング・ジャパンは「父親が変われば、家庭が変わる、地域が変わる、企 業が変わる、社会が変わる」をテーゼに掲げている。父親支援を起点に様々な社会的 課題を解決する展開方法について、安藤は「男性の家事育児参画はボウリングの1 ピン」と表現している。ボウリングは先頭のピンを倒すことで二列目のピンが倒れる。

そうして三列目、四列目と雪崩を打つようにして全てのピンが倒れるとストライクに なる。

安藤流にいえば先頭の1番ピンは「男性の家事育児参画」であり、笑っている父親 を増やすことで二列目の「DV・児童虐待」と「若年&熟年離婚」を防止する。三列目 には「介護離職」「働き方改革」「女性活躍推進」に対する効果があり、四列目の「人口 減少」「少子化対策」「地域社会活性化」「男女共同参画」へ影響を与えていく(図 1)。

この主張は安藤の直観に依るところが大きく、科学的根拠に基づく内容ではないが、

安藤の講演では聴衆の共感をとくに得ている話材である。こうしたロジックやイメー ジで男性の育児がもたらすメリットを訴求することで理解が進む効果がみられる。

父親支援によって社会変革をもたらす様は、まさにソーシャル・イノベーションと いえる。ソーシャル・イノベーションの概念は多義を含んでおり、様々な評者がソー シャル・イノベーションの定義をしている。以下「ソーシャル・イノベーション」と 冠した著書で示された定義を表 2にまとめた。

図 1 男性の育児家事参画はボウリングの 1 番ピン

安藤の講演資料より筆者作成

(7)

それぞれの観点がありつつ、ソーシャル・イノベーションの必須要件は「社会的な 課題に対してビジネス含め新たな手法で解決を図ること」および「その事業によって 新しい社会的価値や仕組みを創出すること」の二つであるといえる。そして、ファザー リング・ジャパンは「育児に関わる課題の解決をソーシャルビジネスで行なうこと」

と「男性のライフスタイルに変革をもたらすことで社会に新たな価値を生み出すこと」

を狙っており、ソーシャル・イノベーションの要件を満たすといえるであろう。

(2)父親は変わったのか?

ファザーリング・ジャパンが行った父親育児支援活動は、果たしてソーシャル・イ ノベーションを実現できたのであろうか。テーゼに掲げるように、父親が変わること で家庭・地域・企業・社会を変えることができたのかを検証した。

結論としては、父親の意識は変わったかもしれないが行動面での変化が顕著に見ら れず「父親が変われば」の初期条件をクリアできていないために、続く家庭・地域・

企業・社会への影響を測ることができなかった。

父親の意識について、ベネッセ教育総合研究所「乳幼児の父親についての調査」が 経年比較をしている。6歳以下の子どもがいる父親に「家事や育児に今以上に関わり たいか」という質問で家事育児への意欲を尋ねている。「今以上に関わりたい」の回答 200547.9%から201458.9%となり、9年間で父親の家事育児意欲は11ポイン ト上昇し、父親の意欲が高まっていることが分かる。

一方、総務省の社会生活基本調査によれば、6歳未満の子どもがいる男性の育児行 動者率(一日のうち15分以上育児に時間を使った者の割合)は約3割で、約7割の男 性は育児を全く行っていない。共働き世帯の夫で比較すると201132.8%、2016 31.0%となり、行動面での変化が見られない。

今後1番ピンが倒れる見通しとして、男性育休取得義務化があげられる。2020年度 から国家公務員の男性職員は育休1ヶ月以上が必須となり、男性の産休制度新設や男 性育休義務化を法制化する動きがある。

さらに、新型コロナウィルス感染防止に伴う外出自粛で男性の在宅時間が増えたこ 表 2 ソーシャル・イノベーションの定義

社会のさまざまな問題や課題に対して、より善い社会の実現を目指し、人々が知識や知恵を出 し合い、新たな方法で社会の仕組みを刷新していくこと(野中ほか 2014:8)

社会的課題に取り組むビジネスを通して、新しい社会的価値を創出し、経済的・社会的成果を もたらす革新(谷本 2013:8)

ソーシャル・イノベーションとは、社会において発生する諸問題を見出し、自らの関心と思い にもとづいた解決策として独創的な事業手法を開発し、その具体的転換を通じて人と社会との 関係へ働きかけ、新しい社会的価値を創造していくこと(西村 2014:8)

ソーシャル・イノベーションとは、社会的価値の創造であり、新しい未来をつくることである。

そのために、新たなしくみ、文化を普及させ、社会の認識を作り変えていく。ソーシャル・イ ノベーションが起こる過程には、想像力、提案力、影響力をもって社会事業を行う企業、行政、

NPO/NGOなど多様な個人と組織がある(服部ほか 2010:25)

筆者作成

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とによって夫の家庭役割が増えた効果もみられる(6)。日本の父親の育児参加を少なく している主犯は労働時間の長さであると松田は述べた(松田 2013:104)が、在宅勤 務が広まることで男性の家事育児参画が進むことが期待できる。

ファザーリング・ジャパンは活動の最終ゴールを「自らの解散」におく。安藤に行っ たインタビュー(7)では「父親の育児が当たり前となりファザーリング・ジャパンが 不要になる社会を目指す」と表明があり、解散のメルクマールは男性育休30%と言及 した。その後、20205月の少子化対策大綱において政府は男性育休取得率の目標を

「2025年までに30%」と再設定した。

[付記]

本稿は筆者が立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科比較組織ネットワーク学専 攻博士課程前期課程2019年度修士論文「父親育児支援活動が創り出す社会デザイン─

NPO法人ファザーリング・ジャパンに関する実証研究」の一部を加筆・修正したもの である。

■註

(1)父親向け雑誌で『日経Kids+』『プレジデントFamiliy』が200512月、『FQ JAPAN』が 200612月に創刊された。『日経Kids+』は20102月号で休刊し、ほか二つの雑誌は 現在も発行されている。

(2)父親向け子育て講座の先行事例として、教会が行った父親教室や新座子育てネットワーク のお父さん応援プロジェクト等がある。

(3)イクボス企業同盟は202091日現在で231社が加盟している。

(4)ファザーリング・ジャパンの会員数は272名(20207月末現在)。内、男性の会員が

95%。東京に本部をおき、7つの支部(北海道、新潟、信州、千葉、東海、滋賀、沖縄)

4つの関連団体(東北、関西、中国、九州)がある。

(5)ファザーリング全国フォーラムはこれまで滋賀、鳥取、福岡、三重、富山、山形、大分、

広島、新潟、宮崎と十回実施している。202082728日の宮崎会場はオンライン配信 で行った。

(6)内閣府「新型コロナウィルス感染症による生活意識・行動の変化について調査結果」2020 621日によれば、家事育児に関する夫婦間の役割分担の変化について、「夫の役割増」

26.4%、「妻の役割増」16.7%、「変化はない」46.3%。テレワークで夫の働き方が変化した 家庭では「夫の役割増」31.%となった。

(7) 201910291415時、学士会館にて安藤にインタビューを行った。

■引用・参考文献

中村陽一・高宮知数・五十嵐太郎・槻橋修、2020、『新しい空間と社会デザインがわかる ビル ディングタイプ学入門』誠文堂新光社

柏木恵子編、1993、『父親の発達心理学 父性の現在とその周辺』川島書店

小崎恭宏・田辺昌吾・松本しのぶ、2018、『家族・働き方・社会を変える父親への子育て支援  少子化対策の切り札』ミネルヴァ書房

太田素子、1994、『江戸の親子 父親が子どもを育てた時代』吉川弘文館

牧野カツコ、1982、『乳幼児をもつ母親の生活と〈育児不安〉』家庭教育研究所紀要 17

宮坂康子「育児の歴史 父親・母親をめぐる育児戦略」、大和礼子ほか編、2008、『男の育児・

女の育児 家族社会学からのアプローチ』昭和堂

(9)

天童睦子、2016、『育児言説の社会学 家族・ジェンダー・再生産』世界思想社 石井クンツ昌子、2013、『「育メン」現象の社会学』ミネルヴァ書房

レイ・オルデンバーグ、忠平美幸訳、2013、『サードプレイスコミュニティの核となる「とび きり居心地よい場所」』みすず書房

野中郁次郎・廣瀬文乃・平田透、2014、『実践ソーシャル・イノベーション 知を勝ちに変えた コミュニティ・企業・NPO』千倉書房

谷本寛治・大室悦賀・大平修司・土井将敦・古村公久、2013、『ソーシャル・イノベーションの 創出と普及』NTT出版

西村仁志編著、2014、『ソーシャル・イノベーションが拓く世界』法律文化社

服部篤子・武藤清・渋澤健、2010、『ソーシャル・イノベーション 営利と非営利を超えて』日 本経済評論社

松田茂樹、2013、『少子化論 なぜまだ結婚、出産しやすい国にならないのか』勁草書房 内閣府、2018、『男女共同参画平成305月号』、仕事と生活の調査レポート2017

WEBSITE

NPO法人ファザーリング・ジャパン公式WEBサイト https://fathering.jp/index.html(2019817日確認)

ベネッセ教育総合研究所「第三回 乳幼児の父親についての調査」

https://berd.benesse.jp/jisedai/research/detail1.php?id=4896 (2019817日確認)

内閣府男女共同参画局「『平成28年社会生活基本調査』の結果から〜男性の育児・家事関連時 間〜」平成2910月(2019817日確認)

http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/top/hyouka/k_42/pdf/s12.pdf

参照

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