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文書提出義務に関する判例について(三)

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文書提出義務に関する判例について(三)

その他のタイトル Die Rechtsprechung zur Vorlegungspflicht der Urkunde im Zivilprozes (3)

著者 上野 泰男

雑誌名 關西大學法學論集

巻 48

号 1

ページ 71‑121

発行年 1998‑04‑25

URL http://hdl.handle.net/10112/00024508

(2)

4 1

文書提出義務に関する判例について曰

目 次

一はじめに

1

本資料の対象

2

文書提出義務に関する規定の変遷

3

平成民事訴訟法︵平成八年法律第一

0

4 本資料の目的

二文書提出義務に関する判例の紹介とコメント

︹1︺ !

1 8

1 9

︺ !

4 0

4 1

︺ !

6 1

名古屋高︵金沢支︶決昭五四・ニ・一五判夕三八四号︱二七頁

︹ 資 料 ︺

下民集三二巻九i

文書提出命令関係裁判例集一七四頁

文書提出義務に関する判例について

︵ 三 ︶

(3)

新法のもとでは︑本件診療録は︑四号文書として文書提出義務を認めるぺきである︒なお︑本件に関する判例タイムズのコ

メント︵判タ一二八四号︱二七頁︶は︑原告患者の診療録が被告製薬会社にとって利益文書にあたるとした判例として︑本稿 の利益文書にあたらないとした︒

第四八巻第一号

申立却下

本件は︑いわゆる金沢スモン訴訟の控訴審において︑被告であるY︵田辺製薬︶が患者である原告

x

らの診療録につき︑民

訴三︱二条︵新ニニ0条︶三号前段の文書に該当するとして︑訴外の医師や医療機関を相手方に︑文書提出命令の申立てをし

民訴一=︱二条三号前段のいわゆる利益文書とは︑﹁後日挙証者の法的地位を証明する目的で作成された文書または挙証者の 権利義務を発生させる目的で作成された文書をいう﹂としたうえで︑診療録につき︑﹁医師が診療録を作成する本来の目的は︑

診療の都度︑患者の症状︑治療行為の内容等を記録し︑以後の診療︑治療において思考活動の補助としてこれを用い︑もって 診療の適正を期することにあると考えられ︑医師法二四条︑同法施行規則二三条が︑医師に対し診療を行った際に一定の事項 を記載した診療録を作成することを義務づけているのも︑その主眼とするところは︑診療録が診療の適正化に資するものであ ることからこれの作成を義務づけることにあり︑副次的に︑患者自身の社会的権利義務に関係する事実の確認および患者と医 師ないし医療機関との間に後日生ずぺき法的紛争の処理のための適正な証拠資料を保存することを目的としているものと解さ

れる﹂とする︒したがって︑患者にとっては利益文書であることを認めるようであるが︑診療録がその記載事項の性質上︑

﹁本来の目的とは別に︑患者︑医師等診療行為の当事者以外の者に係る法的紛争においても︑その者の法的地位の証明に役立 つ場合のあることは否定できず︑本件もその一事例であるが︑それは結果として生じる現象というべきであり︑そのことの故

に診療録がその者の法的地位を証明する目的で作成されたものとみるのは相当ではない﹂として︑製薬会社であるY 関法

(4)

4 2

文書提出義務に関する判例について曰 一部を提出していると主張した︒ 本件の本案請求の内容は不明である︒本案において︑X

Yの塔頭寺院︒本案被告のようである︶は︑Y

国寺︒本案原告のようである︶がその所有する文化財を乱売し︑しかも︑その売得金の使途が不明であることを糾弾したX

を ︑

使用貸借の解除に名を借りてYが追い出しを画策しているのが本案訴訟の実態であると主張し︑Yによる文化財の乱売︑売得

金の使途不明の事実を証明するため︑民訴三︱二条︵新ニニ0条︶に基づき︑昭和四三年度から四六年度までの︑Yの特別会

計に関する日計表︵金銭出納簿︶︑収入帳及び支出帳の提出を求めた︒原審はXの申立てを却下した︒X即時抗告︒抗告理由

の要旨は︑抗告審決定理由によれば︑次のようである︒Xは︑まず︑本件文書は民訴三︱︱一条一号の引用文書に該当すると主

張する︒その根拠としてX

は ︑

Xが主張したYの不正事実のうち︑昭和四0

Yの財務部長や財務主事が共謀して︑代

表役員に無断でその印章を冒用し︑重要文化財である﹁引法大師行状絵詞﹂全ーニ巻を売却し︑しかもその売得金の使途は不

明であるとの点につき︑Yは︑右売却については各役員が賛成し︑その売得金の使途も明白で決算書類にも記載されている旨

主張し︑その証拠として︑甲二0号証として︑特別会計簿と題するYの昭和三八年ないし四0年度の特別会計に関する元帳の

Xは︑寺院の構成員は僧侶だけではなく信徒を含み︑寺院総代会や信徒総代会などの利害関係人も関係書類の閲覧請求 事実 2 4

2

5

2 9 ︺︵大阪高決昭五三・六・ニ

0)

があり︑否定例

︺︵大阪高決昭五三・五・一七︶があると紹介する︒本件は否定例にあたる︒2 8

大阪高決昭五四・三・一五判夕三八七号七三頁

下民集三二巻九!︱二号一三八七頁

文書提出命令関係裁判例集八三頁

(5)

権を有するから︑Yの塔頭寺院であるXYの会計書類の閲覧請求権を有することは多言を要しないとして︑本件各文書は民

さらに︑民訴三ご一条三号前段の利益文書とは︑挙証者の利益を意図して作成されたものばかりでなく︑間接的に挙証者の

利益となる文書をも含むと解するぺきであると主張し︑Yによる文化財の乱売︑売得金の使途不明の事実を証明するのに役立

つ本件各文書が利益文書にあたることは明らかであると主張した︒

抗告棄却

民訴=二ニ条一号の引用文書とは︑﹁当該訴訟において証拠として提出すべきものとして引用した文書のみならず︑自己の

主張を明白ならしめるとともに︑その裏付けとなるべきものとして引用した文書も含まれると解するのを相当とする﹂とし︑

X主張の不正事実をYが否認していることは記録上明らかであるけれども︑﹁そのような不正事実の存在しないこ

とを立証するために本件文書を証拠として提出する予定であることや︑右事実の存在しないことは本件文書によっても明らか

にされ得ることを相手方において陳述し︑もしくは︑準備書面に記載して提出したことがないことも一件記録に徴して明ら

か﹂であるから︑引用文書にあたらないとした︒なお︑Yが甲二0号証として︑本件文書の一部を提出している点については︑

x

主張の文化財不正売却問題は本訴反訴請求を判断するについてなんら重要性のない事実であるから︑﹁右甲第二0号証の提

出は︑いわば念のためになされたものにすぎないとみるよりほかなく︑このような書証が提出されていることからただちに︑

他の不正売却問題についてもこれと同趣旨の本件文書を証拠として提出することや︑そのような不正のないことを裏付ける資

料として他にも本件文書のごとき証拠が存在することを示唆し︑黙示的にこれを引用したものと解することもできないから︑

いずれにせよ本件文書が民訴法三︱二条一号の文書にあたるものと認めることはできない﹂とした︒

次に︑本件文書が権利文書にあたるとのXの主張については︑﹁XYに対し︑本件文書の引渡又は閲覧を請求する私法上

の請求権を有するものと認めるべき法律上の根拠はなんら存在しない⁝⁝XYの塔頭寺院であるからといって︑当然にY 訴三︱二条二号の権利文書にあたると主張した︒ 関法

(6)

4 3

文書提出義務に関する判例について曰 所持する本件文書の閲覧請求権を有するものとすべき法的根拠はどこにもない﹂とし︑最後に︑利益文書にあたるとのX

張につき︑利益文書とは﹁挙証者の法的地位や権利もしくは権限を直接証明し︑又はそれを基礎づけるために作成された文書

を指すものであって︑単に挙証者において訴訟の争点に関連するとしてその証拠調を希望し︑それが自己に有利な結果をもた

らすものと予想している文書であるというだけでは︑挙証者の利益のために作成された文書といえないことは多言を要しな

小林秀之﹁文書提出命令をめぐる最近の判例の動向﹂判評二六五号︵判時九八九号︶

る判示部分は︑利益文書を﹁実体的利益を有する文書に限定し﹂︑﹁単に訴訟上の争点に関連する証拠であって自己に有利な結

果をもたらすであろうという訴訟上の利益を有する文書﹂を利益文書にあたらないとしたものであると評する︒判夕三八七号

七三頁の本件に関するコメントも︑本件文書が利益文書にあたらないとしたのは﹁当然であろう﹂とする︒

本決定の引用文書に関する判示には問題があるように思われる︒YX主張の不正売却の事実が存在しないことを立証する

ために︑甲第二0号証として本件文書の一部を提出した以上

(X

は﹁本件文書の一部を改ざんしたうえこれを提出している﹂

と主張する︶︑引用文書といわざるを得ないであろう︒本決定がいう︑X主張事実は本件本案請求とは関係がないとの部分は

証拠採否の問題であり︑引用文書にあたるが︑本案請求とは関連性がなく︑証拠調ぺの必要もないという形で処理するぺきで

あったと思われる︒

東京高決昭五四・三・一九判時九二七号一九四頁

下民集一二二巻九ーーニ号一四︱二頁

0頁は︑本決定の利益文書に関す

(7)

本件は、判例〔 32 〕(横浜地(横須賀支)決昭五一―

-·10•

三 0) の抗告事件である。原決定に対し、

Y

は、原審で文書提

出命令が発された本件各文書のうち①の文書

(Y

が訴外株式会社A研究所に依頼して作成させた﹁昭和四六年度平作川河道

計画調査報告書︵資料編を含む︶﹂をさす︶について︵原決定では法律関係文書に該当するとされた︶︑自己使用のための内部

文書であるとして即時抗告を申し立てた︒

弁論主義のもとでは︑︹当事者が所持する︺﹁証拠を提出するか否かは原則として当事者の自由であり︑当事者は︑いわば証

拠につき処分の自由を有する﹂が︑民訴三︱二条︵新ニニ0条︶が文書の所持者に対し︑同条一号ないし三号の文書につき提

出義務を課したのは﹁前記証拠についての処分の自由という原則に対する例外を定めたもの﹂であり︑しかも︑この例外を右

各号の文書に限定した趣旨は︑﹁一面において︑証拠の偏在という状況の下で極力証拠面での当事者対等を図り︑併せて︑お

よそ争点の解明に役立つ証拠資料は︑出来るだけ法廷に提出させ︑もって訴訟上の真実発見の理想を実現しようとする反面︑

当該文書の所持者に不必要な不利益を及ぼすことを避けようとするにある﹂とし︑そこから︑民訴三︱︱一条三号後段の法律関

係文書の意義についても︑﹁右の法意に即して︑実質的に検討することが必要であり︑証拠面での当事者対等及び訴訟上の真

実発見の観点からして︑右文書は︑単に挙証者と文書所持者間に成立した法律関係それ自体を記載した文書にとどまらず︑な

おそのほかに︑これに準ずる文書で重要なものを包含すると考えられる反面︑所持者の処分の自由の観点からして︑所持者が

もっぱら自己使用のために作成した内部文書のごときは︑右文書に該当しない﹂とした︒

そして︑本件②の文書は︑本件③の文書である﹁河道計画案﹂︵この文書については︑原決定後Yが乙第一三号証として提 事実

第四八巻第一号

取消・申立却下 文書提出命令関係裁判例集三五六頁 訟務月報二五巻八号二0

(8)

文書提出義務に関する判例について曰 かったのではなかろうか︒

出した︶の作成の前段階として︑﹁Yが訴外Aに委託して調査︑作成させた事務処理上の資料であって︑法令上作成が義務づ

けられたものでないこと︑及び本件報告書の記載には一私人に過ぎない訴外会社の主観的意見が多数含まれているので︑前記

のごとく他の資料とも併せて︑改めて総合検討の対象とされたことが認められ﹂るので︵なお︑Y

各種資料を基にして︑﹁総合的に本件報告書の内容や数値が適切妥当なものであるかどうかを検討し︑取捨選択して具体的な

調整をした上︑本件③の文書を作成した︶︑﹁本件報告書はYがもっぱら自己使用のために訴外A会社に作成させた内部的文

書であるというべきで︑文書所持者たるYが行政庁であることをしんしゃくしても︑なお︑本件報告書は︑民訴三︱二条︱︱︱

号後段所定の法律関係文書にはあたらない︑とするのが相当である﹂とした︒

小林秀之﹁文書提出命令をめぐる最近の判例の動向﹂判評二六六号︵判時九九二号︶

めの内部的文書の法理に拠った典型的な一例であり︑自己使用のための内部的文書の法理を弁論主義に遡って基礎づけている

が︑文書提出義務が弁論主義の理念と密接に関連しているのは事実であるとしても︑﹁証拠についての弁論主義︵証拠につい

ての当事者の処分の自由︶は︑いずれの当事者もその証拠を法廷に顕出することを望まない場合にのみ意味を持ち︑どちらか

の当事者がその証拠を提出したいと望む場合には証拠についての弁論主義は働かない︒当事者は︑相手方や第三者を自由に尋

問でき︑いかなる物も検証できるのである︒更に証拠共通の原則の存在を考えれば︑一方当事者が提出を望む文書の証拠調べ

をできない理由を︑弁論主義に求めるのは無理なのは明白であろう﹂とする︒

住吉博﹁本件判例評釈﹂判評ニ︱八号︵判時八四一号︶

Yによる本件報告書の内容や数値の検討︑取捨選択の適否がまさに争点になっているのであるから︑生の文書

である本件報告書は事案解明のため必要だったのであり︑③の文書の提出を通じて︑①の文書が引用されていると考えてもよ

一 五

0頁は︑本件決定を自己使用のた

(9)

4 4

0日︑北海道千歳空港付近に︑航空自衛隊所属のF本件は︑昭和三八年四月一

10

Jジェット戦闘機が墜落した事故の遺

x

Y︵国︶を被告として提起した損害賠償請求訴訟の控訴審において︑Xらが︑本件事故につき︑航空自衛隊航空事

故調査委員会が作成した航空事故調査報告書の提出を︑民訴三︱二条︵新ニニ0条︶三号に基づいて求めた事件である︒

下民集一二二巻九ー︱二号一四︱二頁

﹁本件文書は︑民事訴訟法三︱二条三号にいう挙証者の利益のために作成され︑かつ︑挙証者と文書の所持者との間の法律関

係につき作成されたものに該当し︑右控訴事件の訴訟に必要な証拠方法となるものと判断できる︒﹂

本件決定理由が︑航空事故調査報告書が民訴三︱二条三号の文書にあたることにつき︑ほとんど理由らしい理由を示してい

ないことにつき︑判夕三九二号八四頁の本件コメントや︑小林秀之﹁文書提出命令をめぐる最近の判例の動向﹂判評二六五号

とである︵高裁段階ではほぼ確定されている︶ことによるものであろうとする︒これまでの肯定判例としては︑︹

1 6

決昭五

0•

八・七)、〔 37 〕(東京高決昭五三・一―・ニ―)がある。なお、〔 33 〕(東京地判昭五三•四・ニ八)は否定したが、

この決定は︹

3 7 ︺︵東京高決昭五三・一︱・ニ︱)によって取り消された︒

小林前掲は︑﹁専門家による航空事故調査委員会によって調査がされた後直ちに墜落現場等は復元されてしまうために︑遺 事実

東京高決昭五四•四・五判夕三九二号八四頁

関法

決定主文﹁被控訴人は︑別紙目録記載の文書を前記控訴事件の次回口頭弁論期日までに当裁判所に提出せよ︒﹂

0頁は︑このような場合︑航空事故調査報告書につき文書提出命令が認められるのは︑判例上当然のこ 申立認容 文書提出命令関係裁判例集一四六頁 七八︵七八︶

(10)

4 5

文書提出義務に関する判例について曰

x

︵全国税関労働組合大阪支部︶及び

x

(X

の組合員七0

Xらは︑その勤務年数・採用資格・在級年数・勤務

Xらの同期採用者と何ら劣るところがないにもかかわらず︑訴外A

Xの弱体化を意図

しその組織破壊攻撃の重要な手段として︑X

Xの非組合員らとの間に︑昇任︑昇格︑特別昇給において差別的取扱をし

たことにより生じたものであると主張して︑Y︵国︶に対し︑国家賠償法一条による損害賠償請求訴訟を提起し︑Xらと同

期採用者との間の昇任︑昇格︑特別昇給における格差の存在の有無及び程度を立証するため︑Xら及び別紙記載の同期採用

文書提出命令関係裁判例集三六0 族側が証拠を十分に確保することは不可能であり﹂︑このような航空事故調査報告書の性質︵この点については︑︹

3 3 ︺ ︹

3 7 ︺ 参

照のこと︶からすれば︑﹁﹃航空事故調査報告書﹄に対して文書提出命令を認めないとフェアでないという特殊性が存する﹂と

航空事故調査報告書が利益文書にあたるとするものに︑兼子一

11

松浦馨ほか・条解民事訴訟法一0

本決定を支持する︒また︑同書一〇六一頁は︑航空事故調査報告書は内部的文書ではないとする︒同旨の判例に︑︹

6 5

高決昭五七・三・一九)や〔 76

〕(東京高決昭五八•六・ニ五)がある。

大阪地決昭五四•五・一八判時九四五号九一頁

0

下民集三二巻九ー︱二号一四一三頁

労働判例三二二号五三頁 訟務月報二五巻一0号二五五六頁

(11)

x

らは︑① する事項などが記載されるものである︒

第四八巻第一号

者の人事記録の提出を︑民訴三︱二条︵新ニニ0条︶三号により求めた︒なお︑人事記録は︑統一性ある信頼性のある人事に

関する記録を作成・保管することによって︑人事行政の科学的な運営ひいては公務員の利益保護に資することを目的として︑

国家公務員法一九条に基づいて作成され︑その様式・作成方法・記載事項及び保管等については︑人事記録の記載事項等に関

する政令︑及び︑人事記録の記載事項等に関する総理府令によって規定され︑各職員ごとに︑氏名及び生年月日︑学歴に関す

る事項︑試験及び資格に関する事項︑勤務の記録に関する事項︑本籍・性別・研修・職務に関して受けた表彰・公務災害に関

民訴三︱二条三号前段の利益文書とは︑﹁挙証者の権利権限を直接に証明し︑又は基礎づける目的で作成され

た文書のみならず︑重要な争点の解明に役立ち︑間接的に挙証者の権利権限の証明に効果のある文書をいうものと解すべきで

ある﹂とし︑本件文書はこのような利益文書に該当することは明らかであるとし︵これに対し︑Yは利益文書とは︑﹁挙証者

の地位︑権利等を証明し︑又は基礎づけるために作成されたものを指す﹂と主張する︶︑

の個別的︑具体的な権利ないし法律上の利益が直接明らかになるような文書に限らず︑所持者が単独で直接又は間接に関与し 民訴三︱二条三号後段の法律関係文書とは︑﹁挙証者と所持者の直接又は間接の関与のもとに作成され︑かつ右両者間

て作成したものでも差し支えなく︑又挙証者と文書の所持者との間の法律関係それ自体を記載した文書だけでなく︑その法律

関係に関連のある事項を記載した文書やその法律関係の形成過程において作成された文書をも含むと解すべき﹂であるとし︑

本件人事記録がこれに該当することも明らかであると主張した︵これに対し︑Yは︑文書提出命令の制度は︑それによって対

立する当事者又は第三者が所持する文書を利用させようとする制度である点で︑例外的制度であるから︑利益文書とは︑﹁当

該文書が右両者︹提出命令を申立てた者と所持者︺の直接又は間接の関与のもとに作成され︑かつ右両者間の個別的︑具体的

な権利ないし法律上の利益が直接明らかになるような文書﹂であり︑しかも︑文書の作成者が事務処理上の必要から作成する

内部文書については︑右提出の対象﹂にならないと主張した︶︒ 関法八〇︵八〇

(12)

文書提出義務に関する判例について曰

申立却下

^ 

Yは ︑

Xらの同期採用者らのプライバシー保護の必要も主張している︵そのため︑Yは︑この点に関するX

Xらの文書提出命令の申立てのうち︑Xら自身の昇任︑昇格︑特別昇給については︑当事者間に争いが

存在しないから︑文書提出の必要性がないとして申立てを却下した︒

x

mの主張︵利益文書該当性︶については︑利益文書とは︑遺言書や契約書のように︑﹁挙証者の法的地位や権限を直

接証明し︑又はこれを基礎づける目的で作成された文書をいい︑その文書が挙証者のみの利益のために作成されたか︑挙証者

と所持者など他の者との共同の利益のために作成されたかは問わないものと解するのが相当である﹂としたが︑本件人事記録

X

yに対する法的地位又は権限を直接証明し︑これを基礎づける目的で作成されたものでないことは明らかである﹂

x

らの主張②︵法律関係文書該当性︶については︑民訴法が法律関係文書につき文書提出義務を認めた趣旨は︑﹁実体的真

実発見の要請から挙証者が立証に必要な文書を所持しない場合にその立証上の不利を補うものとして規定されたものというべ

きである反面︑訴訟資料の蒐集は当事者の権能かつ責任であるとする弁論主義の原則からすると︑挙証者は所持者に対し自己

の立証に必要なすべての文書の提出を求めうるとすることは相当でないとの観点から︑挙証者が当該文書に対して一定の関係

⁝⁝を有するときに限って立証のために使用することを認めたものと解するのが相当である﹂としたうえで︑民訴三︱二条三

号後段における﹁法律関係﹂とは︑﹁当該文書が挙証者と所持者の双方が共同で作成したか︑その一方が他方に対する関係で

作成したかなど作成方法は問わないが︑挙証者と文書の所持者との間の法律関係それ自体を記載した文書及びその法律関係の

構成要件事実の全部又は一部が記載された文書であることを要﹂するとし︑また︑当事者間の法律関係﹁二付作成﹂されたと

は︑﹁右文書が右法律関係自体の発生︑変更︑消滅を直接証明し︑或いは右法律関係を前提としてその発生︑変更︑消滅︵構

(13)

の損害賠償義務の存否といった訴訟法的な﹃法律関係﹄まで含ましめると歯止めがなくなり︑ほとんどすべての当該訴訟に関

連した文書が﹃法律関係文書﹄に含まれてしまうことを防ごうとしたのであろう﹂とする︒判時九四五号九一頁の本件コメン

不当な差別人事をしないことはまさに﹁人事行政の科学的な運営ひいては公務員の利益保護﹂にあたる︒そうすると︑本件

人事記録は︑このような不当な人事を防止するという目的で作成されていることになり︑本決定理由によっても︑法律関係文

書に該当するというぺきである︒本件抗告審決定︵︹

︺︶は︑挙証者と所持者との間の契約関係に限られるとして︑法律関係5 0

文書の範囲を狭めているのはそのためであると考えることもできよう︒ トも判旨は正当であるとする︒ る最近の判例の動向﹂判評二六六号︵判時九九二号︶一五四頁は︑判例︹

2 7 ︺ ︹

3 2 ︺を意識して︑法律関係文書に﹁当事者間

第四八巻第一号

成要件の全部又は一部︶を明らかにする目的のもとに作成された文書を指す﹂といわなければならず︑したがって︑﹁右のよ

うな目的・前提を有することなく作成された文書でその記載事項が偶々右のような法律関係を明らかにするものである文書及

び所持者又は作成者が自己使用のために内部的に作成した文書﹂は法律関係文書に該当しないとし︑本件人事記録は︑﹁原告

と被告との間の法律関係それ自体を記載した文書とはいえない﹂が︑その記録から﹁原告らの主張する賃金差別の事実︵ただ

し︑その一面ではあるが︶を明らかにしうるということができるから︑結局︑右人事記録は︑原告と被告との間の不法行為

︵損害賠償︶法律関係の構成要件の一部を記載したものといえなくはない﹂ものの︑このような﹁法律関係の存在を前提とし

てその事実を明らかにするために作成したものでないことは明らかである﹂から︑法律関係文書に該当するとはいえないとし

11

松浦馨ほか・条解民事訴訟法一0五七頁︹松浦︺は︑本決定は疑問であるとする︒小林秀之﹁文書提出命令をめぐ

こ ︒

関法

ノ \

(14)

文書提出義務に関する判例について曰

申立却下 省との間の交渉の経過及び了解事項の記載があると主張した︒

4 6

下民集三二巻九i︱二号一四二八頁

事実関係は必ずしも明白ではないが︑Xは︑非公開会社の株式の上場の促進をはかるため︑株式の新規上場の日におけるニ

五パーセント未満の値付玉としての会社経営者株主による株式の譲渡は非課税である︵このような趣旨の大蔵省と証券業界の

代表者らとの間の了解事項がある︶と主張して︑所得税更正処分等の取消しを求める訴訟を︑Y︵藤沢税務署長︶及びY

︵国税不服審判署長︶を相手に提起し︑右主張を立証するため︑訴外A︵社団法人日本証券業協会︶が所持する昭和四五年一

0月から昭和四六年三月末までの﹁協会取引所合同政策委員会懇談会議事録﹂の提出を︑民訴法三ニ一条︵新ニニ0条︶三号

により求める申立てをし︑その主旨として︑この議事録には︑前記Xの主張を立証することになる証券業界の代表者らと大蔵

これに対し︑訴外Aは︑協会取引所合同政策委員会懇談会は︑所得税法施行令二八条の改正に関し︑証券業界として大蔵省

当局とどのような折衝を行うべきかについて業界側の腹案を検討するために開催されたもので︑同懇談会は正式の機関ではな

く︑したがって︑右議事録は業界内部の秘密に属し︑外部に公表すぺき性質のものではないと主張している︒

Aが専ら自己使用の目的で内部的に作成したものと認められ︑挙証者たるXの法的地位を証明し︑これを基礎

づける目的で作成されたもの︑あるいはA協会とXとの間の法律関係について記載されたものとは到底認められない﹂として︑

本件議事録が民訴三︱二条三号の文書に該当しないとし︑また︑﹁X主張の株式の譲渡が非課税とされるかどうかは︑所得税

文書提出命令関係裁判例集一七六頁 訟務月報二五巻一0号二六七二頁

東京高決昭五四•五·二八判時九三六号六七頁

(15)

4 7

第四八巻第一号

法施行令第二六条第三項第一号に掲げる株式の譲渡に該当するかどうかの法令解釈にかかわる問題であるから︑仮にX主張の

ような了解事項があったとしても︑右法律解釈になんら消長を及ぼすものではないと考えられる﹂とし︑﹁文書提出の必要性

小林秀之﹁文書提出命令をめぐる最近の判例の動向﹂判評二六六号︵判時九九二号︶

使用のための内部的文書であることを理由に︑提出命令の申立を排斥した例であるとする︒しかし︑その本来の理由は︑要旨

後段の文書提出の必要性に乏しいとするところにあったとみるべきであろう︒

判夕三八八号一四0

下民集三二巻九ー︱二号一四三四頁

労旬九一九号四八頁

文書提出命令関係裁判例集二七九頁

本件は︑いわゆるダイハツ棚池差別事件に関し︑証拠保全により賃金台帳の提出が求められた事件である︒

X

は ︑

Y︵ダイハッ工業株式会社︶の不当な差別により︑Xと年令・勤続年数がほぼ同一である訴外Aら約六0

昇格・賃金面等で差別的取扱いがされているとして︑現に支給されている給与額と本来正当に昇格昇給していたとしたら得て

いるであろう賃金との差額分の支払︑または︑これと同額の損害賠償請求訴訟を準備中であるとして︑右賃金格差の存在及び 事実 も乏しい﹂とした︒ 関法

0二七号六頁

大阪地決昭五四•五・三一判時九四六号九二頁

一五三頁は︑本件は︑本件文書が自己

(16)

文書提出義務に関する判例についてロ

争を予防するとともに行政上の監督に資するためにも作成されるものである﹂とする︒

程度を立証するため︑証拠保全の申立てのなかで︑X

Aらの賃金台帳の提出を︑民訴三︱二条︵新ニニ0条︶三号後段の

10

九条の規定に基づき︑各労働者について︑労働日数︑労働時間数︑基

本給︑手当など賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額を記載するもので︑本来︑使用者が労働の実績と支払賃金との関係を 明確に記録し︑その額を把握するための資料として作成されるものであるが︑他面︑法が使用者にその保存を義務づけ︑その 違反に対しては罰金が課せられるとしていることからすると︑賃金台帳は︑労働者の権利関係に関する証拠を保全し︑労使紛 また︑民訴三︱二条三号後段の法律関係文書につき︑右規定は︑﹁証拠の偏在という状況のもとで訴訟当事者間の実質的平 等︑公平を回復することにより訴訟における真実の発見に資するとともに︑他面︑所持者に対し提出義務を課するが故にその 利益を害することに鑑み︑その提出すべき文書の範囲を画したものと解される﹂とし︑このことからすれば︑法律関係文書と は︑﹁第一に︑契約書などのように挙証者と所持者との間の法律関係それ自体を記載した文書だけでなく︑第二に︑当該文書 が︑挙証者と所持者との間の法律関係それ自体︑もしくはその法律関係を裏付ける事項を明らかにすることを予定して作成さ れたものであることを要し︑専ら所持者又は作成者の内部的な自己使用の目的で作成されたにすぎないものはこれに該らない こと︑第三に︑当該文書には挙証者と所持者の双方にとって共通に関連する事項が記載されていなければならないが︑所持者

が単独で作成し又は挙証者と共同で作成したかを問わないものというべきである﹂とした︒

そして︑賃金台帳には︑X主張の債務不履行又は不法行為法律関係それ自体に関するものではないが︑﹁X主張の賃金の格

差の存在及びその程度は︑Xに関する賃金台帳とXと年令︑勤続年数のほぼ同一であるAらに関する賃金台帳とを比較対照す

ることにより明らかになりうることからすると︑本件賃金台帳には︑右の法律関係の構成要件事実の一部が記載されているも

賃金台帳は︑﹁使用者が︑労働基準法一〇八条︑ 申立認容 規定により求める申立てをした︒

(17)

本決定のコメントである判時九四六号九三頁は︑Aらの賃金台帳はそれ自体でXYとの法律関係に関する事項を記載した

Xの賃金台帳と比較対照することによってはじめて意味を持つものと解されるから︑﹁民訴三︱二条三号後

段の文書に該当するかという点で論議が予想される﹂とし︑さらに︑﹁仮に該当するとしても個人のプライヴァシーの保護と

いう点でも異論が予想される﹂と︑決定に批判的である︒

本事件については︑小室直人・労旬九七九号四九頁の鑑定意見がある︒そこでは︑まず︑民訴三︱二条の沿革の研究がされ

ている︒それによれば︑旧民訴三三七条・三三六条一号はドイツ民訴︵現行︶四二二条︑四二三条︑四二九条を直訳的に継受

したものであり︑現行三︱二条はドイツの解釈論やその後の

BGB

八 一

0条の規定︵﹁他人の占有に在る証書の閲覧につき法

律上の利益を有する者は︑証書が自己の利益に於いて作成せられ又は証書中に自己と他人との間に存する法律関係が記載せら

れ又は証書が自己と他人との間のもしくはその一方と共同の媒介人との間になされた法律取引の商議を包含するときは︑占有

本決定は、〔51〕(大阪高決昭五四・九•五)で取り消された。

本件証拠調期日を00日午後二時と指定する

2提出命令Yは右の者らに関する部分を本件証拠調期日において提出せよ

1

Y作成保管にかかる本件賃金台帳のうち︑X

Aらに関する部分

Y本店において︑左の証拠調をする︒

関法

第四八巻第一号

のということができ﹂︑また︑賃金台帳が﹁労使紛争の予防解決のためにも作成されるものであることからすると︑本件のよ

うな差別がなされているか否かを明らかにすることをも予定して作成されるものといえるから︑Yが単独で作成するものとは

いえ︑本件賃金台帳はXyとの間の法律関係に付き作成された文書ということができる﹂とした︒

(18)

文書提出義務に関する判例について曰

者より閲覧の許可を請求することを得﹂︶を参照して︑旧民訴三三六条二号を修正したものであり︑また︑ドイツ法が証人義

務とは異なり︑文書提出義務を限定的なものとしたのは︑証人は関連のない質問又は秘匿できる事項についての質問は拒絶で

きるが︑文書は︑一体性を有し︑これを提出すれば︑このような無関連事項︑秘匿すべき事項も公開されることになるので︑

これを防止するためであったことが明らかにされる︵この点については︑竹下守夫

11

野村秀敏﹁民事訴訟における文書提出命

︱︱六頁を引用している︶︒なお︑ドイツにおいてもこのような限定主義がとられてい令﹂②判評二0六号︵判時八0

るにもかかわらず︑拡張解釈を主張するものがほとんどみられないのは︑

NP0

に真実義務の規定があり(‑三八条︶︑民事

訴訟では文書提出命令の制度の利用が少ないこと︑文書提出命令の制度を必要とする行政訴訟においては︑ドイツ行政裁判所

法九九条が︑官庁の一般的な文書の提出・報告義務を規定し︑その提出・報告を拒否できるのは連邦またはラントの福祉を害

する場合︑および︑事実上または法律上秘密にしておかなければならない場合であるとされ︑しかも︑軍事・外交秘密を除い

て拒否特権はかなり制限的に解釈され︑拒否の要件の有無については︑関係人の申立てにより︑本案裁判所がすることにして︑

行政庁の恣意的な解釈を許さないようにされている︵九九条二項︶ことによるものであるとされる︵四九!五0

頁 ︶

次いで︑三︱二条の立法経過を検討して︑ある争点につき︑当該文書が有利になることがある場合にもその文書は利益文書

にあたるとの議論がみられることから︵民事訴訟法改正調査委員会議事速記録第一︳二回

11

松本博之ほか編・日本立法資料全集

1 2

︵民事訴訟法︹大正改正編︺③三二八頁以下参照︶︑もともとかなり広範で弾力的だったと考えられるにもかかわらず︑ド

イツの通説が日本法の解釈に持ち込まれて厳格な解釈がなされていることの不当性を指摘し︑﹁挙証者の権利権限を直接に証

明し︑または基礎づける目的で作成された文書のみならず︑⁝⁝重要な争点の解明に役立ち︑間接的に挙証者の権利権限の証

明に効果のある文書も三号前段に含まれると解すぺきである﹂とする︒さらに︑日本法の文書提出義務は限定的であるが︑

﹁その範囲は︑当該文書の作成目的・動機を考慮して︑真実発見のための資料的価値と︑所持者の利益との比較衡量において

決せられるべきである﹂とする︵五一頁︶︒

(19)

第四八巻第一号

さらに︑賃金台帳につき︑それは労働基準法一0

0九条が使用者に作成・保存を義務づけているものであるが︑これ

を使用者が利用できることはもちろんであるが︑その主たる作成目的は︑﹁労働条件のうち最も重要な賃金︑労働時間につい

て︑労働基準法の基本原則1均等待遇︵三条︶︑男女同一賃金︵四条︶︑強制労働の禁止︵五条︶︑中間搾取の排除︵六条︶

ーが忠実に遵守されているか否かを︑国の監督機関が賃金台帳に基づいて︑随時容易に把握し得るよう︑監督行政の便宜を

はかり︑もって労使紛争の予防︑解決に資すること﹂にあるとする︒そして︑この意味で︑本来使用者のために作成されてい

2︺︵大阪高決昭四0・九・ニ八︶や︹10︺︵福岡高決昭四八・ニ・一︶は︑﹁労基法の精神を全く理解しないも

のであるといわざるをえない﹂と批判する︵使用者の利用目的だけであれば︑労働基準法による作成・保存の義務づけは不要

賃金台隈の提出を必要とする労使紛争は主として使用者の不当労働行為を証明する必要のある場合であるが︑﹁賃金差別の

不当労働行為意思の存否を客観的に認定するには︑賃金台帳を比較することは不可欠であり︑これは必要性の最も大きい証拠

資料といっても過言ではない︒もっとも︑賃金台帳の証拠としての必要性と︑三号文書の該当性とは理論上は別個の問題で

あって︑前者は証拠の採否の基準の問題であり︑後者は証拠適格の問題であることはいうまでもない︒しかし︑賃金台帳のよ

うに︑労働者︵挙証者︶の基本的権利保護の目的をもつのみならず︑使用者︵所持者︶にも必要とされるものにあっては︑そ

の文書該当性の有無の判断は︑証拠としての必要性の度合いによって影響されざるをえないのであって︑問題の混同と非難す

提出拒絶権については︑人事管理や企業秘密が根拠にされることがあるが︑﹁すでに賃金台帳の監督機関への提出が強制さ

れて﹂おり︑﹁それを裁判所に提出することにより被るかもしれぬ不利益は︑労基法の原則遵守のための真実追求の利益の前

には問題となる余地はない﹂とし︑Aらのプライバシーについても︑﹁多少の感情的不都合はあるかもしれないが︑真実追求

の利益に優先する個人秘密と解することはできない︒労基法遵守の利益のために受忍すべきである﹂とする︵五四頁︶︒ ることはできない﹂とする︵五ニー五三頁︶︒ 関法

ー ︑

1

J J

 

(20)

4 8

文書提出義務に関する判例について曰

② ③  小室鑑定は概ね正当であると考えるが︑Aらのプライバシーの利益の捉え方についてはやや問題があるように思われる︒

高松高決昭五四・七・ニ判時九四二号五八頁

書︑覚書︑及び確認書

i︱二号一四三七頁

行集三0巻七号︱ニニ五頁

文書提出命令関係裁判例集︱

10

訴外A市︵坂出市︶は︑港湾整備事業計画に必要な土地を確保するため計画区域の公有水面の埋め立てを企図し︑右地域に

漁業権を有する一七の漁協である

Y . ` ら

(Y ••

iy

l)

に︑漁業権消滅の補償費等合計四八億五三

0

万円の︑いわゆる漁業補償0

を支払った︒これに対し︑A市住民であるXら︵三人︶は︑正当に支払うべき漁業補償額は二六二0万円に過ぎないから︑右

金額を控除した四八億二六八0万円は違法な公金支出であるとして︑地方自治法二四二条の二第一項四号に基づき︑A市に代

Y

A

YA市収入役︶各個人︑及び︑Yら一七漁協に対して︑連帯して不法行為による損害賠償金と

して︑右四八億二六八0万円をA市に支払うことを求める訴えを提起した︒この訴訟において︑Y

A

Yらに総額

四八億五三

0

0万円のいわゆる漁業補償をしたことは認めたが︑各漁協毎への支出額やその算出根拠等についてはこれを明ら

かにする義務はないとして︑一切これを明らかにしないので︑Xらは︑訴外A市を相手方として︑①漁業補償に関する契約

Yらから提出された補償要求書︑及び︑市職員との間の損害補償金支払命令及び領収書

交渉経過書は︑民訴三︱二条︵新ニニ0条︶二号及び三号の文書に該当するとして︑その提出を求めた︒

原審︵高松地決昭五四・ニ・七判時九四二号六0頁︶は︑③の文書については︑その存在を認めることができないとして提

出命令の申立てを却下したが︑e)Xらの提出命令

(21)

A市やY

Xらは︑具体的な事実が不明確なまま本件訴訟を提起し︑その訴訟の進行中にA市に対し文書の提

出を求め︑その中から具体的事実を探り出そうとするものであって︑本件申立はいわゆる﹃見切り発車jによる濫訴を助長す

るもの﹂であること︑文書提出命令が発されると︑今後各種の公共事業計画の遂行において各漁協の協力が得られなくなるこ

と︑同種の問題をかかえる他の自治体にも多大の影響を与えるなど公益ないし秘密の保持が害され︑地方行政に混乱が生ずる

と主張していたようであるが︑この点については︑﹁対等な当事者を予定する通常の民事訴訟とは異なり︑行政訴訟において な証拠方法であることは明らかであることも指摘している︒

第四八巻第一号

の申立てを認めた︒原決定は︑﹁挙証者の利益のために作成された文書﹂とは︑﹁後日の証拠のために又は権利義務を発生させ

るためになど︑挙証者の法律上の利益を明らかにする目的で作成された文書を指し︑この場合の挙証者の法律上の利益には一

人挙証者のみの利益だけではなく︑挙証者と所持人など第三者との共同の利益が含まれて差し支えなく︑また︑挙証者の法律

上の利益を明らかにすることが︑その文書作成の直接の目的であるものに限らず︑間接的に目的とされているものをも含むと

解される﹂としたうえで︑本件①②の文書は︑本件﹁漁業補償に伴い︑補償契約の成立︑内容及び補償金の支払を明確にする

目的で作成された文書﹂で︑﹁直接的にはAYらの法律上の利益を明らかにする目的で作成された﹂ものであるが︑X

は︑地方公共団体の構成員たる住民として︑当該地方公共団体のなす公金の支出に利害関係を有し︑﹁地方公共団体の公金の

支出が違法もしくは不当な場合は︑地方自治法二四二条に基づきいわゆる住民監査請求を求めることができ︑さらに︑違法な

公金の支出については同法二四二条の二に基づきいわゆる住民訴訟を提起してその是正を求める制度的保障が与えられている

ことに鑑みると︑公金の支出についての住民の右利害関係は単に事実上のものたるに止まらず︑法律上の利害関係というにな

んらの妨げはなく︑そうすると︑地方公共団体の公金の支出を明らかにする目的で作成された文書は︑当該地方公共団体の住

民にとっても︑違法もしくは不当な公金支出を法的に是正し得る地位にあるという意味あいにおいて︑住民ら固有の法律上の

利益を明らかにする目的で作成された文書と解するのが相当である﹂とした︒これと同時に︑本件文書が極めて必要かつ重要 関法九〇

0)

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