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中学生の学級生活満足度と部活動意欲との関連 河村明和

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【実践レポート】

中学生の学級生活満足度と部活動意欲との関連

河村明和

*

本研究では学級生活満足度と学校生活意欲と部活動意欲との関連を検討した。A中学校の中学生201名(1年生:

男子25名,女子37名,2年生:男子26名,女子32名,3年生:男子42名,女子39名)を対象とした。結果,

学校生活意欲尺度(河村,1999b)のすべての下位尺度と部活動意欲には正の相関があり,学級との関係におい ては,中程度の正の相関が見られた。また,学級生活満足度尺度(河村,1999b)の下位尺度である,承認感と 部活動意欲は中程度の正の相関,被侵害・不適応感は,弱い負の相関を示した。さらに,学級生活満足度による 生徒の様相を示した学級生活満足度4群との関連においては,学級生活満足群が非承認群および学級生活不満足 群より有意に部活動意欲が高い結果となった。よって,学級生活満足度と部活動意欲との関連が明らかになった。

中学校生活において学級での適応が,部活動での適応にも関連することを想定しながら,学級経営および生徒の 適応支援を行う必要性が示された。

キーワード:中学生,学級生活満足度,部活動意欲,学校生活意欲

【問題と目的】

多様な文化が混在する現代社会では,学校教育にお いて,基礎的な学力の定着とともに,生きる力の育成 が求められている(文部科学省,2008;文部科学省,

2017;文部省,1998)。学習指導要領(文部科学省,

2017)では,生きる力について「(1)基礎的・基本的 な知識及び技能を確実に習得させ,これらを活用して 課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力 等をはぐくむとともに,主体的に学習に取り組む態度 を養い,個性を生かし多様な人々との協働を促す教育 の充実に努めること。(2)道徳教育や体験活動,多様 な表現や鑑賞の活動等を通して,豊かな心や創造性の 涵養を目指した教育の充実に努めること。(3)学校に おける体育・健康に関する指導を,生徒の発達の段階 を考慮して,学校の教育活動全体を通じて適切に行う ことにより,健康で安全な生活と豊かなスポーツライ フの実現を目指した教育の充実に努めること。」と示 されている。つまり,「生きる力」の育成は,学校教

育活動のすべてにおいて行われ,資質能力の育成を実 現するものであると考えられる。

さらに,学習指導要領(文部科学省,2017)の中で は,「教育課程外の学校教育活動と教育課程の関連が 図られるように留意するものとする。特に,生徒の自 主的,自発的な参加により行われる部活動については,

スポーツや文化,科学等に親しませ,学習意欲の向上 や責任感,連帯感の涵養等,学校教育が目指す資質・

能力の育成に資するものであり,学校教育の一環とし て,教育課程との関連が図られるよう留意すること。」

とされている。つまり,部活動と学校教育との関連を 図ること,また部活動での取り組みを通じても,資質・

能力の育成を図ることが求められている。

部活動と学校教育との関連については,生徒の部活 動参加意欲と学校生活意欲との関連が示されている。

岡田(2009)は部活動の参加への積極性から学校生活 における意欲を検討しており,学級に対する意識と部 活動への積極性との間に関連があることを指摘してい る。また,角谷(2005)は部活動での積極性が高いと,

その時期の学校生活への満足度が高いことを報告して おり,部活動で積極的に活動できることにより,その

*  早稲田大学大学院

(2)

後の学校生活満足度がより大きく伸びる可能性も示唆 している。したがって,学級生活満足度および学校生 活意欲と部活動意欲には関連があることが考えられる。

しかし,これらの変数を同時に検討している研究は未 だない。

これまで検討されてきた研究を概観すると,学級生 活満足度と学校生活意欲については,小学校(河村・

田上,1997)では下位尺度として,a友人との関係,

b学習意欲,c学級との関係の3因子が関連すること,

中学校(河村,1999a)および高等学校(藤原・河村,

2014)ではa~cに加え,d教師との関係およびe進 路意識が関連すること,大学(武蔵・河村,2016)で は,a~eに加え,f学校の支援体制も関連している ことが示されている。よって,どの学校種別において も,学級生活満足度と学校生活意欲との関連が報告さ れている。しかし,先に示したように学校生活で部活 動の取り組みが考えられる中学校,高等学校,大学に おいて,学校生活意欲の一つとして捉えられる部活動 意欲については,これまで検討がなされてこなかった。

したがって,本研究では,学級生活満足度と部活動意 欲,および学校生活意欲と部活動意欲との関連を検討 することを目的とした。

【方 法】

調査時期:201X年11月中旬から12月にかけて質問 紙による調査を実施した。調査時期に関しては,直前 に学校行事などがなく,生徒の平素の状態を測定する のに適していると考え実施した。

調査対象:A県B市の中学校1校の生徒205名(男 子96名,女子109名)を調査の対象とし,すべての 項目に対し欠損値がない有効回答者201名(1年生:

男子25名,女子37名,2年生:男子26名,女子32名,

3年生:男子42名,女子39名,有効回答率98.0%)

を分析の対象とした。

測定用具:本研究において,中学生を対象として3つ の尺度を使用した。

1つ目は,生徒の学級や学校場面における満足感や 意欲の測定を目的とし,標準化された尺度である学級

集団アセスメント尺度Q-U(河村,1999b)から,学 級生活満足度尺度を使用した。この尺度は児童生徒が 学校生活において満足感や充実感を感じているか,自 分の存在や行動をクラスメートや教員から承認されて いるか否かに関連している「承認感」と,不適応感や いじめ・冷やかしの被害の有無に関連している「被侵 害・不適応感」の2つの下位尺度から構成されている。

中学生用は5件法(「1;全くあてはまらない」から「5; とてもあてはまる」)であり,それぞれ単純加算によ り得点を算出するものである。なお,各下位尺度の全 国平均値を基準に満足度4群に分類して,生徒の学校 適応状態を理解することが可能な尺度である。満足度 4群の特徴については,次の通りである。“ 学級生活 満足群 ” は,承認感は高く被侵害・不適応感が低いこ とから,不適応感やトラブルが少なく,学校・学級生 活に対して満足感や充実感が高いため,学校生活に適 応している状態であると判断される群である。“ 非承 認群 ” は,承認感,被侵害・不適応感がともに低いこ とから,不適応感があり,からかいや無視などの被害 を受けている可能性は低いが,学校・学級内で認めら れることも少ない群である。“ 侵害行為認知群 ” は,

承認感,被侵害・不適応感がともに高いことから,学 校生活での活動において,他者とトラブルを起こして いる可能性が高い群である。“ 学級生活不満足群 ” は,

承認感は低く,被侵害・不適応感が高いことから,か らかいやいじめ被害などを受けている可能性が高く,

なおかつ,学校・学級生活において充実感を感じられ る機会も少ないため,学校不適応になっている可能性 が高い群である。

2つ目は,1つ目と同様に学級集団アセスメント尺

度Q-U(河村,1999b)から,学校生活意欲尺度を使

用した。この尺度は児童生徒の学校生活意欲を測定す るものであり,児童生徒が学校生活の代表的な領域か ら構成されており,各領域に対する意欲や充実感を測 定する尺度である。測定する領域として,中学生用は,

友人との関係,学習意欲,教師との関係,学級との関 係,進路意識の5つの下位尺度から構成されており,

学校生活に対する意欲を測定することが可能である。

それぞれの下位尺度は,5件法(「1;全くあてはまら

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ない」から「5;とてもあてはまる」)であり,それぞ れ単純加算により得点を算出するものである。

3つ目として部活動意欲尺度を使用した。これは,

河村(2002)が作成した尺度であり,部活動の意欲を 測るもので,一因子で構成されており,4項目で測定 される。項目における評定は5件法(「1;全くあては まらない」から「5;とてもあてはまる」)であり,そ れぞれ単純加算により得点を算出するものである。

調査手続き:各中学校長,学級担任に承諾を得た上で,

学級ごとに質問紙による調査を実施した。調査を実施 するにあたり,担任教員には同封されている実施の手 順,注意事項のプリントに沿ってアンケートを実施す ることを依頼した。また,この調査は学校の成績に関 係がないこと,回答は強制ではなく回答しなくても不 利益を被らないこと,回答は担任教師を含め教職員に 見られることなく,データ処理されること,個人のプ ライバシーは守られることをフェイスシートに明記し,

調査参加者にも伝えるよう依頼した。そして,アンケ ートを回収する際は,回収用の封筒に生徒が回答した アンケートを入れ,その場で密封し,生徒に余計な不 安を与えることがないように配慮した。なお,本調査 にあたっては,調査校を管轄する教育委員会と早稲田 大学との間で協定を締結し,調査研究の内容について は,早稲田大学の倫理委員会の審査を受け,承認を得 た。以上の手続きを行った上で,学年,組,性別,出

席番号の記入を求め,これらの情報を基にデータの照 合を行い,統計処理を行った。

【結 果】

1.学級生活満足度および学校生活意欲と部活動意欲 との関連

学級生活満足度尺度(河村,1999b)の下位尺度で ある,承認感と被侵害・不適応感,学校生活意欲尺度

(河村,1999b)の下位尺度と部活動意欲尺度によって 測定した部活動意欲について相関分析を行った(Table 1)。結果,承認感と部活動意欲では,中程度の正の相 関が見られ,被侵害・不適応感では,弱い負の相関が 見られた。また学校生活意欲尺度(河村,1999b)の 下位尺度では,学級との関係と部活動意欲に中程度の 正の相関が見られ,友人との関係,学習意欲,教師と の関係,進路意識では弱い正の相関が見られた。よっ て,学級生活満足度および学校生活意欲と部活動意欲 には関連が見られることが明らかになった。

2.学級生活満足度 4 群による部活動意欲得点の比較 学級生活満足度尺度(河村,1999b)より,算出さ れた承認感の得点,被侵害・学校生活不適応感の得点 より,学校生活満足群,非承認群,侵害行為認知群,

不満足群の学級生活満足度4群を作り独立変数とした。

Table 1 学級満足度・学校生活意欲と部活動意欲との相関分析結果 平均値 標準偏差 部活動意欲

承認感 38.42 6.85 .47**

被侵害・不適応感 14.82 5.82 -.38**

友人との関係 18.29 2.03 .34**

学習意欲 15.44 2.82 .27**

教師との関係 14.65 3.50 .25**

学級との関係 16.87 2.93 .43**

進路意識 15.14 3.65 .30**

部活動意欲 17.63 2.64

**p<.01

(4)

そして,部活動意欲得点を従属変数として,一要因分 散分析および,Tukey法による多重比較を行った(Table

2)。結果,学級生活満足度4群と部活動意欲において

有意な差が見られた。学校生活満足群は非承認群,学 校生活不満足群と比べ,部活動意欲の得点が有意に高 かった(部活動意欲F(3,197)=14.01, p<.001)。

よって,学級生活満足度の様相により,部活動意欲に は差異が見られることが明らかになった。

【考 察】

本研究の結果の1より,学級生活満足度および学校 生活意欲と部活動意欲との関連が見られることが明ら かになった。特に,学級生活満足度尺度(河村,

1999b)の下位尺度である承認感と学校生活意欲尺度 の下位尺度である学級との関係において,部活動意欲 との関連が強かった。

承認感の項目には,「学校内に自分の本音や悩みを 話せる友人がいる」など,友人との関係性を聞くもの がある。狩野・田崎(1990)は「子供たち同士の人間 関係の良否はスクール・モラールに直ちにつながるも のである」と指摘しているが,本研究もこれを支持す る結果となったと考えられる。また,学級との関係に ついて狩野・田崎(1990)が「生徒にとっての学校生 活の中で比重が大きい活動ほど,学校適応や諸活動に 対する意欲と関連している」と指摘するように,学級 での活動は中学生の学校生活において比重の大きい活 動であるため,他の学校生活意欲より,相関が強かっ たことが考えられる。

次に結果の2より,生徒の学級生活に対する満足度 の様相から部活動意欲には差異が見られることが明ら かになった。この結果は,学級生活満足群は学校生活

を意欲的に送っている生徒であり,侵害行為認知群は 自主的に活動を行っている生徒,非承認群は自主的に 活動しようとする意欲が乏しい生徒,学校生活不満足 群は,学校生活への適応が難しくなっている可能性の ある生徒であるという,河村(2002)の学級生活満足 度ごとの学校生活意欲における生徒の特徴にあてはま るものである。

以上のことから,学級集団での活動は生徒にとって 比重の大きい活動であり,学級の満足度は,学校生活 意欲尺度の下位尺度と同様に,部活動意欲にも関連が あることが確認された。また,学校生活意欲と部活動 意欲にも関連が見られ,特に,学級との関係における 意欲が部活動意欲と関連している可能性が示唆された。

これにより,教員は学級経営や学級活動において,生 徒の部活動意欲を含めた,学校生活意欲との関連を想 定した対応が求められる。

しかし,本研究の分析では,どのような因果や構造 によって,学級生活の満足度が部活動意欲に影響を及 ぼしているのかまでは検討することができていない。

また,本研究では,学級の満足度と部活動意欲との関 連を検討したが,学級以外の集団からの影響などは統 制できていないため,他の要因の影響を受けている可 能性も考えられる。今後は学級集団のみではなく,部 活動や生徒会活動など,生徒が学校生活で比重を大き く置いている可能性が考えられる集団についても比較,

検討する必要がある。今後の課題としたい。

【引用文献】

藤原和政・河村茂雄(2014).高校生における学校適 応とスクール・モラールとの関連 ―学校タイプ の視点から― カウンセリング研究,47(4),

Table2 学級生活満足度4群と部活動意欲における一要因分散

学級生活満足群

(n=147)

非承認群(n=28)

侵害行為認知群

(n=12)

学級生活不満足群

(n=14)

F

(3,197) 多重比較 部活動意欲 18.26

(2.00) 16.36

(3.08) 16.42

(3.03) 14.64

(4.03) 14.01 *** 学級生活満足群>非承認群,

学級生活不満足群 上段:平均値 下段:標準偏差 ***p<.001

(5)

196-203.

狩野素朗・田崎敏昭(1990).学級集団理解の社会心 理学 ナカニシヤ出版

河村茂雄(1999a).生徒の援助ニーズを把握するため の尺度の開発(2)―スクール・モラール尺度(中 学生用)の作成― カウンセリング研究,32(3),

283-291.

河村茂雄(1999b).QUESTIONNAIRE-UTILITIES(中 学校用) 図書文化社

河村茂雄(2002).Q-U実施・解釈ハンドブック中学・

高校用 図書文化社

河村茂雄・田上不二夫(1997).いじめ被害・学級不 適応児童発見尺度の作成 カウンセリング研究,

30(2),112-120.

文部科学省(2008).中学校学習指導要領

文部科学省(2017).中学校学習指導要領<http://

www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1384661.

htm>(2017年12月19日)

文部省(1998).小・中学校学習指導要領

武蔵由佳・河村茂雄(2016).大学生における学校生 活満足度と学校生活意欲との関連 教育カウンセ リング研究,7(1),35-44.

岡田有司(2009).部活動への参加が中学生の学校へ の心理社会的適応に与える影響-部活動のタイ プ・積極性に着目して-教育心理学研究,57(4),

419-431.

角谷詩織(2005).部活動への取り組みが中学生の学 校生活への満足感をどのように高めるか:学業コ ンピテンスの影響を考慮した潜在成長曲線モデル から 発達心理学研究,16(1),26-35

(2017年10月20日受稿,2018年1月26日受理)

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