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64 研究年報 第1

「韓 国開化 期 にお けるキ リス ト教 出版 の展 開」

91303

李雲山

韓国は高麗時代に始まる古 い出版の歴史を誇 っている。とくに金属活字の開発におい ては世界で最 も先行 したことが認め られている。李朝時代には、日本 は李朝政府に朝鮮 大蔵経の給付を しば しば依頼強要 し、豊臣秀吉の朝鮮侵略に際 しては、朝鮮金属活字や、

多 くの版本を略奪す るとともに、印刷技術者を連行 し、日本国内に活字印刷技術の移植 をはかったことが知 られている

このように韓国における印刷 ・出版の歴史は古 いが、そうした伝統のある出版活動が 韓国の開国期 にどのような状況にあり、またそれが日本帝国主義の日韓併合によってど のような影響を受 けたかについてはこれまでほとんど研究がなされていない。本論文 は そ うした韓国開化期における出版開発の事情に光を当てるため、その当時出版開発に極 めて大 きな影響を及ぼ したキ リス ト教宣教師の出版活動を取 り上げその史実を明 らかに す ると共 に、その果た した歴史的役割について評価を下す ことを目的としている

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修士論文要 旨 65

第1章では開国 (1876年)前後の韓国における政治状況 と全般的出版事情を観察 して いる。とくに開国直後の韓国では政府 と民間の双方に出版開発への活動な動 きが見 られ たこと、および、キ リス ト教 (本論文ではプロテスタントを意味 している)と並行 して 宣教活動を行 っていたカ トリックおよび聖公会の動 きについて注意が払われている

第2章では宣教師入国以前に満州 ・日本等で行われた宣教のための準備活動 にふれて いる。とくにその中心であった聖書翻訳出版活動をめ ぐる訪 日使節李授延や韓国留学生 たちの関わ りに注 目 している

第3章 は韓国に入国 したアメ リカの宣教師たちの1880年代ない し90年代韓国における 宣教活動を、聖書およびその他伝道文書の翻訳印刷、出版を中心に観察 している。各教 派の協力 と競争の下に展開 したそうした "出版"活動の中心 となったのは三つの出版機 関、朝鮮聖教書会、三文出版所、メソジス ト教書会であった。

第4章では1890年代以降、次々に定着 したキ リス ト教出版について考察 している。そ うした大衆向け出版の中心になったものの一例 は賛美歌集と種々のキ リス ト教新聞であっ た。

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章 はキ リス ト教出版が韓国出版に与えた影響 について考察 している。キ リス ト教 出版の中心人物 として精力的に活動 した宣教師アンダウー ドらの開発 した文書普及方法 のうち主要なものは勧書人 (巡回書籍販売業者)と書庫 (書店)である。キ リス ト教文 書の販売を目的 としてこれ らの手段 はやがて一般書籍の販売にその対象が拡大 され、そ れによって韓国出版販売の発展的段階への萌芽 となる様相を示 しつつあ った しか し、

そうした萌芽 は残念 なが ら1910年を劃期 とす る。日帝時代への突入によって、あえな く 成長の芽を摘まれて しまったのである。依頼本論文における観察を通 じて、注 目すべ き 点 は以下の

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つである。

(1)第‑ はキ リス ト教を含む西洋文明に対する韓国側の関心の高 さである

本論文の研究対象である1884年か ら1910年以前の段階ですでにキ リス ト教宣教の準備 は 満州、日本、アメ リカで着実 に進め られていた。そうした準備段階での接触を通 じて宣 教師たちは韓国人の真筆な姿勢 に感銘を受 け、宣教の成功‑の確信を深めたのであった。

1880年代の末か ら宣教師たちが続々と韓国に入国 し、積極的に宣教をす るようになった 時、韓国人の示 したそうしたキ リス ト教への情熱の結果、活発な翻訳 ・出版活動が生み 出されることになったのである

(2)第二 は聖書の翻訳 ・出版を中心 としたキ リス ト教出版活動が韓国 の近代化 に果 た した意味の大 きさである。宣教師と韓国人 ク リスチ ャンの協力によって勧め られ他聖書 翻訳 ・出版の仕事 は、単にキ リス ト教宣教活動 に止まるものではな く、近代韓国語の発 展に影響を与えるなど、開化全般に大 きな関連をもっていた し、より直接的には韓国に おける近代出版の発展に糸口を与えるものであった。

(3)第三 はキ リス ト教宣教師に対す る韓国政府のアンビバ レンツな立場である

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66 研究年報 第1

1898年キ リス ト教が解禁 されるまで、宣教師たちはオープ ンな宣教活動 はできず、表向 きは医療 ・教育活動を中心 とし、また翻訳出版の準備を進めていた。解禁後 も政府がキ リス ト教会に期待 したのは宣教 よりもやはり医療、教育、出版などの近代化の推進 に役 立っ種類の活動であった。だか らこの時期のキ リス ト教 出版 の発展 は 「福音 と文化」

「宣教 と開化」 という対立する立場 と目標の釣 り合いの上で初めて可能であ ったのであ る

(4)第四は韓国における出版販売 システムの定立においてキ リス ト教 出版 の果 た した 先駆適役割 りである。古い出版の歴史を持ちなが ら王室による管刻を中心 としたため民 間出版社の発展がお くれ、全国的な販売機公が成立 していなかったいなかった19世紀後 半の韓国にキ リス ト教出版が開発 した流通手段 は、以後韓国の近代的出版機構の流通部 門に転化 しうる、先駆的存在であった。そうした原始的出版流通 システムが日帝進出に よりどのように して発展の芽をつみとられるに至 ったかは、さらに追及 されるべき課題 である

参照

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