大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法 : 英 国における開示規制の構造を素材として
著者 松井 和也
雑誌名 同志社法學
巻 62
号 4
ページ 1217‑1283
発行年 2010‑11‑30
権利 同志社法學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000012532
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法二八九同志社法学 六二巻四号
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法 ―英国における開示規制の構造を素材として―
松 井 和 也
(一二一七)
目 次 第一章 大量保有報告制度の会社法的側面
1実質的大株主の持株報告義務
2報告義務の形成
3化確明の在所の権配社支会
―
義意の務義告報―
4報告制度の展開 第二章 大量保有報告制度の市場法的側面
1会社法上の報告制度の廃止
2制告報の上法市場スビーサ融金度
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法二九〇同志社法学 六二巻四号
(一二一八)
⑴ 市場法上の制度の形成
⑵ 較比のと度制の上法社
―
会徴特の度制の上法場市―
3報告制度の機能 第三章 報告義務の実効性確保方法
1避回の務義告報
―
点題問るわ関に性効実の度制告報―
2問題への対処
⑴ 基準値の引き下げ
⑵ 株式保有の定義の拡大 ⑶ 会社の実質株主調査権の創設
3会社の実質株主調査権の検討
⑴ 調査権の意義
⑵ 調査の方法 ⑶ 株式保有の定義
⑷ 調査に応じない者に対する制裁 ① 定款に基づく制裁 ② 会社法上の制裁
⑸ 裁判例の分析 結 語
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法二九一同志社法学 六二巻四号
(一二一九)
はじめに
特定の者が株式を大量取得した場合、これによって会社の経営や株価に影響が及びがちであるので (
よ開有者に対して、そのことを示的するように義務づけ、これに保質告度上の大量保有報実制は、上場株式の五%超の 商金融、品取引法 1)
って市場の透明性を高め、投資者保護を図っている (
。 2)
ただし、株式大量取得者が適正な開示をするとは限らない。金商法上、本制度の違反者は、刑事罰・課徴金の対象に なる。発行会社は、本制度の違反があった場合、どうすればよいのか。近時、発行会社が、本制度に違反して取得した株式に係る議決権の行使を差し止めることができるのか問われている (
行ははいるあ上法事刑、てし対に主株国外に特。 3)
政法上の制裁の執行は困難であることから、このような民事的制裁の利用可能性が議論されている (
。 4)
しかし、この方法は次のような問題点を含んでいる。まず、①現行法上、大量保有報告制度違反があったとしても、 裁判所はそれだけで議決権行使の差止めを認めるとは限らない (
て合資投は度制本、場保るすとうよげな者護に法し有を義意な的社目会、の別はと的つ裁制制本度の違反を会社法上の す処対に。題問のこ②立る。法が必要であるすなわち、 5)
いるのかを検討することが必要である。もっとも、③報告書を提出する義務を怠っている者に対して、会社がそのことを把握して、制裁を課すことは困難である (
。 6)
そこで本稿では、英国の開示規制 (
。法実効性確保方に度ついて検討するの制を制素材として、本度本の目的、および 7)
英国の開示規制を検討の対象にする理由は、会社法が実質的大株主に対して持株報告義務を課していたからである。
本稿では、なぜ報告義務が会社法上の義務だと捉えられてきたのか考察する。また会社法は、会社の実質株主調査権を創設し、これによって実質的大株主の報告義務の実効性確保を図っている。現在、報告義務は会社法上の義務ではなく
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法二九二同志社法学 六二巻四号
(一二二〇)
なったが、会社法は会社の実質株主調査権を存続させている。会社は、調査に応じない者に対して、会社法上の制裁を
与えるよう裁判所に請求することができる。本稿ではこれに関する事例を紹介し、会社の調査権の意義について考察する。
第一章 大量保有報告制度の会社法的側面
1
実質的大株主の持株報告義務 英国会社法は、実質的大株主に対して持株報告義務を課していた。すなわち一九八五年会社法(C om pa nie s A ct 19 85 , c . 6
)は、公開会社 (の議決権付株式 8)(
を三%以上保有 9)(
義日るす告報へ社会行発に内以二をとこのそ、てし対に者るす 10)
務を課していた (
けよたいてっなにとこいば一れすを告報に合場るす(九保)。受を告報が社会場上条八二○二・条九九一・条有を式株 しトスラト・トッニユたはま者用運産資、しだもく。用の上以%〇一、は者運はのムーキス資投団集た 11)
た場合は、そのことを証券取引所に通知して、証券取引所がその情報を開示することになっていた (
。 12)
2
法社会年七六九(一成形の務義告報)⑴ コーエン委員会報告書(一九四五)
実質的大株主に対して持株報告義務を課すことにしたのは、一九六七年会社法(
C om pa nie s A ct 19 67 , c . 81
)である。一九六七年の会社法改正は、ジェンキンズ委員会報告書(一九六二 (報。ズンキンェジ、しだたるいてし映反を告勧の) 13)
告書よりも前に、コーエン委員会報告書(一九四五 (
ee in m no
し有式保のる問題点を指摘株義よに名)(ーニミノ、は) 14)大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法二九三同志社法学 六二巻四号 ていた。
コーエン委員会は次のようにいう。一八六二年以来実施されてきた、株主名簿を備置き、閲覧に供するよう会社に義 務づける規定の目的は、株主には事業を共にする者は誰かを知らせ、公衆(投資者・債権者)には誰がその事業を支配しているのかを知らせることにある (
。 15)
しかし現在、株式の保有者はノミニー名義になっていることが多い (
正、当的つか益で行われており禁目止するべきではないと考えるな ( こ有委員会としては、の。慣行は多くの場合、当 16)
。 17)
そうだとすれば、株式の実質的保有者の名称を開示するべきかが問題となる。開示が必要になる理由は、外国人が誰にも気づかれることなく主要な英国企業の支配権を取得するおそれがあるからである。⋮⋮また、会社の業務について 他の株主と協議したい株主にとって、株式の実質的保有者を明らかにすることは有益である (
。 18)
われわれは、原則として、株主および公衆は誰が会社の支配権を有しているのか知る資格があると考える。また、株 式の実質的保有者の名称を開示することが公益上望ましいと評価でき、その事務を効率的かつ簡便に実施できるのであれば、そのことはノミニー・システムの目的を損なうことにはならない (
、と。 19)
そしてコーエン委員会は、一%以上の株式の直接または間接的保有者は、一〇日以内にそのことを会社に報告すべき ことを勧告した (
章た三第(たっかならいはに法立、しかし。 20)
2
⑶参照)。⑵ ジェンキンズ委員会報告書(一九六二)
その後、商務省(
B oa rd o f T ra de
)は、一九五九年一二月に、ジェンキンズ卿を委員長とする会社法委員会を発足さ せた。その目的は、公開買付(ta ke -o ve r b id s
)の実務を含む今日の状況に鑑みて、一九四八年会社法(C om pa nie s A ct
(一二二一)
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法二九四同志社法学 六二巻四号
19 48 , 11 & 12 G eo . 6 , c . 38
)、および一九五八年詐欺防止法(P re ve nt io n of F ra ud
(In ve st m en t
)A ct 19 58 , 6 & 7 E liz . 2 , c. 45
)の機能を検討し、改正すべき点を報告させることにあった。ジェンキンズ報告書(一九六二)を受けて、一九六三年には、シティ作業部会が一九五九年に作成したシティ・ノー ト(﹁イギリス企業の合併に関する覚書﹂(
N ot es o n A m alg am at io ns o f B rit ish B us in es se s
))が修正された(﹁会社の合併に関する修正覚書﹂(R ev ise d N ot es o n C om pa ny A m alg am at io ns a nd M er ge rs
))。そして一九六八年には、シティ・コード(﹁テイクオーバーおよび合併に関するシティ・コード﹂(
T he C ity C od e on T ak e- ov er s an d M er ge rs
))が公表されるに至った (。 21)
ジェンキンズ報告書(一九六二 (
報務行会社へのし告義をて課すよう勧告した発 (
ne r ne ow l ia fic be
議)は、一〇%以上の上場株式(決(権付)の実対に)質的保有者 22)。 23)
ジェンキンズ委員会は、その理由について次のようにいう。ノミニー名義での株式保有の仕組みは、シティの日常業務を容易にしている。当委員会は、これには管理上の利点があることを強調する証言を得た。他方で、多くの者は、実
質的株式大量保有者の開示が実行可能であれば、そのことがノミニー・システムの通常の機能を損なわない限り、法は開示を要求するべきであると証言した。すなわち、取締役、他の株主、および会社の従業員
―
これらの者は株式の大量取得によって重大な影響を受け得る
―
は、株式の大量取得者は誰なのかを確かめることができるようにするべきであるという。このことは、何者かが会社の支配権を得る目的で株式取得を進めていると推測される場合、特に重要である。そのような目的で株式の大量取得がなされたのではない場合でも、誰が特別決議に対する拒否権をもつのかは、他の者の関心事となり得る。したがって、何らかの措置を講じるべきであり、それは可能である (
、と。 24)
またジェンキンズ委員会は、制度の実効性について次のようにいう。(SEC委員の)コーエン氏は、大量保有報告
(一二二二)
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法二九五同志社法学 六二巻四号 を怠ったのが誰なのかは、いずれ明らかになると証言した。この証言は参考になる。会社の支配権を取得しようと匿名で株式を買い進めたとしても、自身が株式を保有していることを支配権取得後も隠し続けるのは困難であろう。違反に 対する制裁が十分なものであれば、このことは報告義務の懈怠を抑止するだろう (
、と。 25)
⑶ 一九六七年会社法
その後制定された一九六七年会社法は、上場会社の議決権付株式を実質的に一〇%以上保有する者に対して、その事実を一四日以内に発行会社に報告することを義務づけた(同法第三三条・二八条参照)。
この報告を受けた会社は、三日以内に、報告してきた者の名称とその日付を記載した名簿を作成し、閲覧に供するこ
とになっていた(同法第三四条[一九八五年会社法では第二一一条])。
3
化確明の在所の権配社支会―
義意の務義告報―
このように、一九六七年会社法第三三条は、実質的大株主に対して発行会社への報告を義務づけた。 株主名簿は会社が誰を株主として扱えばよいのかを示す証拠になるが、株主名簿上株式保有者として登録されている 者が、実質的株主であるとは限らない (
は有者託受、にめたの者かあった。これ保、株式がでるののあでらかたっだ常通がるノれさ有保で義名ーニミ真 ( 会年は前以法社会七な六九一、りま、社。かは度制るすにら支明を在所の権配つ 26)
る 27)(
。 28)
そこで、実質株主の名称を開示するべきかどうかが問題になった。コーエン委員会は、﹁株主および公衆は誰が会社の支配権を有しているのか知る資格がある﹂という見解を示した。
また、ブロック株式を特定の者が保有しているのに、(複数の)ノミニー名義にしておけば、この事実を隠すことが
(一二二三)
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法二九六同志社法学 六二巻四号
できる。ノミニー名義による株式保有の慣行は、密かに大量の株式を取得することを可能にしていた。さらに、その者
が特別決議 (
。はても、このこと明とらかにならないしるとあ立を妨げるこののできる地位に成 29)
ジェンキンズ委員会は、﹁何者かが会社の支配権を得る目的で株式取得を進めていると推測される場合、(株式の大量
取得によって重大な影響を受け得る)取締役・株主・会社の従業員は、株式の大量取得者は誰なのかを確かめることができるようにするべきである﹂、﹁そのような目的で株式の大量取得がなされたのではない場合でも、誰が特別決議に対
する拒否権をもつのかは、他の者の関心事となり得る﹂という見解を紹介したうえで、実質的大株主に対して持株報告義務を課すよう勧告した。
この勧告を受けて、前述した一九六七年会社法第三三条が制定された。会社法の背後にある考え方は、次のようにまとめることができる。すなわち、会社に影響を及ぼし得る、あるいは支配し得る者が誰なのかが不確かなことで、株主、 債権者、さらには会社の業務が害されないように、会社、株主、および公衆は、議決権付株式の大量取得についてすみやかに知らされるべきである (
をて・公衆)に対し、株会社支配権の所在主・は社。会社法の目的、、これらの者(会と 30)
開示することにあった。
4
報告制度の展開 その後、一九七六年改正、さらに一九八九年改正を経て、報告義務が発生する基準値は三%に引き下げられ (、また報 31)
告期間は二日以内になった。
なお、会社法上の規制ではないものの、少数株主保護の観点から、以下の場合は報告期間が短縮されていた (
。すなわ 32)
ち、一九八○年一二月一一日より施行の﹁株式の大量取得に関する規則﹂(
th e R ule s G ov er nin g Su bs ta nt ia l
(一二二四)
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法二九七同志社法学 六二巻四号
A cq uis iti on s of S ha re s
[SA R s
])の規則 (三 33)(
合さ者のそ)、合場たせ加、増を合割有保が者は当保で割有保の身自、にま該午正の日翌の得取有の決議の上以%五権 決の五一、果結株得取式以、ばれ%権上場一はたま(合るのす有保をに議よ 34)
を会社および証券取引所に報告すべきことになっていた。ただしSARsは、二○○六年五月二○日付で廃止された (
。 35)
次に株式保有の定義は、一九八一年改正を経て、複雑になっていた(第三章
2
開も式株の社会公⑵、たま)。照参報告義務の対象になっていた。
他方で、英国では、一九九八年以降、通商産業省(
D ep ar tm en t of T ra de a nd I nd us tr y
)主導で、会社法の抜本的改 正のための作業が進んでいた (は概告報、す直見を念有務保式株
―
項事たし案義のにのに社会、る限に式株社対会場上はのるなと象提年五九九一が 統諮のプールグ括は討検問社会、いさの法、文すITDにめたるに書度制告報な素簡。そ 36)株式に付された議決権の総数を公表することを求める
―
を引用し、今般の改正にあたってはこのような提案を反映させるべきである (との見解を示した。 37)
第二章 大量保有報告制度の市場法的側面
1
会社法上の報告制度の廃止 会社法上の報告制度は二○○七年一月二○日付で廃止され、そのかわりに、二○○○年金融サービス市場法(F in an cia l Se rv ic es a nd M ar ke t A ct 20 00
[F SM A
], c . 8
)に基づく報告制度が、同日より実施されている。(一二二五)
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法二九八同志社法学 六二巻四号
2
制告報の上法市場スビーサ融金度⑴ 市場法上の制度の形成
会社法上の制度から、金融サービス市場法上の制度になったのは、外的要因による。 すなわち欧州では、金融サービス・アクション・プラン(F in an cia l Se rv ic es A ct io n P la n
)に基づき、金融サービスにおける単一市場(sin gle m ar ke t
)の確立を目指して、取り組みが進んでいた。二○○四年に、FSAPの重要な一部 である透明性指令 (が公表された。 38)
透明性指令は、域内の規制市場において株式の取引が認められている発行者に対しては定期的な財務報告を、その大
株主に対しては発行者への株式大量保有報告を義務づけている。発行者に関する継続的な情報開示によって、投資者は
十分な情報に基づいて投資判断を下すことができる。そのため大株主は、株式の大量取得に伴う報告義務が課される。発行者がこの情報を公表することで、投資者は、株式大量保有者(株式に付された議決権の行使を支配している者)は
誰なのかを知ることが可能となる。以上のような法的枠組みを各国が採用すれば、域内資本市場の透明性が向上する。
透明性指令の実施にあたって、英国では、一元的な監督を可能にするため (
rit A Se rv ic es ut ho y
度有)が大報告制に保限たれらめ認を権関成作の則規るす量 (cia an in F l
ー金Iではなくビ融サDス機構(T 39)(FSMA第八九A条)。 40)
⑵ 市場法上の制度の特徴 ― 会社法上の制度との比較 ―
市場法上の報告制度は、投資者への情報開示が目的である。しかし、議決権付株式を大量に取得した者がそのことを
発行者に報告し、発行者によってこの情報が公表されるという点(①)では、市場法上の制度は会社法上の制度(第一章
1
参照)と同様である。(一二二六)
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法二九九同志社法学 六二巻四号 制度の細目は、FSAが制定した﹁開示および透明性規則(
D isc lo su re a nd T ra ns pa re nc y R ule s
[D T R
])の第五章が規定している。報告義務の対象は、市場での取引が認められている議決権付株式である(
D T R 5 . 1 . 1
(3
))。株式保有の定義は、会社法上の報告制度における株式保有概念と異なっている。市場法上の制度では、透明性指令を踏襲し、議決権付株式の直接保有者および間接的保有者が報告義務を負う(②)。このほか、会社法上の制度との違いは、報告は書式にしたがって行わなければならない点(③)、発行者は議決権総数を公表しなければならない点(④)である。
以下では、これらの点を中心に、市場法上の報告制度がどのような制度なのか紹介する。英国企業の議決権付株式が規制市場 (
L ha E k oc St n do on ng e plc L SE xc ke ar re gu la te d m t
ッ・ン[ケー])のメマイトド(所引取券証ン(ンロるあで) 41)で取引されている場合、同制度は次のとおりである。
① 基準値・報告期間 株式保有者は、株式(または金融商品 (
と一合が三%から〇権〇%まで一%ご割決の)るす有保、果結議分処・得取の 42)
の基準値に到達、超過、または下回る場合、自身の保有している議決権割合を発行者に報告しなければならない(
D T R
5 . 1 . 2
)。ただし、たとえば書面または電子的方法による指図のみに基づいて議決権が行使される場合、カストディアン(また はノミニー)がその資格において保有している株式については報告義務の対象から除外される(
D T R 5 . 1 . 3
(2
))。 また、株式保有者が資産運用者またはユニット・トラストもしくは集団投資スキームの運用者等の場合 (は、議決権を 43)
五%以上保有するときに報告義務が発生する。その後は、議決権保有割合が一〇%未満なのであれば報告しなくてもよ
(一二二七)
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法三〇〇同志社法学 六二巻四号
い(
D T R 5 . 1 . 5
(1
)参照 ()。 44)
発行者への報告は可能な限り早く、遅くとも二取引日以内にしなければならない(
D T R 5 . 8 . 3
)。発行者は、報告を受けた後可能な限り早く、遅くとも次の取引日が終了するまでに、当該報告に関する情報を公表しなければならない(D T R 5 . 8 . 12
(1
))。発行者は、情報の公表に関して、規制情報サービスに委任しなければならない(D T R 6 . 3 . 3
(2
))。株式等の大量保有に関する情報は、LSEのサイト (。スるれさ示開てしとーュニ・トッケーマで 45)
② 株式保有概念
―
間接的保有者―
株式保有者には、議決権付株式を直接保有している者だけでなく、間接的に保有している者も含まれる。以下に示すように、議決権を取得・処分、あるいは行使する権限を有しているのであれば、その者(自然人または法人)は間接的 保有者になる(
D T R 5 . 2 . 1
)。⒜ その者[間接的保有者]との間で、(第三者の有する)議決権を協調して行使することによって、発行者の経営に対し長期的な共通の方針をとるよう義務づける旨の合意をした場合。⒝ その者との間で、(第三者の有する)議決権の一時的な移転を合意した場合。
⒞ その者が議決権の行使を支配し、このことが明らかにされている場合、その者に株式を担保として供するとき。⒟ その者が生涯権を有する株式に議決権が付されている場合。
⒠ その者に支配されている事業体によって、議決権が保有されている、あるいは議決権が⒜から⒟の範囲で(⒡および⒣の場合は運用事業体により)行使され得る場合。(したがって、通常は、親事業体と被支配事業体の保有分 は合算することが必要になる (
D T R 5 . 2 . 2 G 1
(())。) 46)(一二二八)
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法三〇一同志社法学 六二巻四号 ⒡ 株主から明確な指図がない場合に、その者が預託された株式に付された議決権を自己の裁量で行使できるとき。⒢ その者のために、第三者の名義で議決権が保有されている場合。(ただし、集団投資スキームまたは他の投資事 業体の投資単位の保有者は、議決権を行使する(または議決権の行使を支配する)いかなる資格も有していないのであれば、議決権の保有者にはならない(
D T R 5 . 2 . 2 G
(3
))。)⒣ 株主から明確な指図がない場合に、その者が自己の裁量で議決権を行使できるとき。(これには、たとえば、カストディアンまたはノミニーに対して直接または間接的に指図をすることによって、株式に付された議決権の行使 を支配している投資運用者が該当する(
D T R 5 . 2 . 2 G
(4
))。)③ 報告の様式 株式大量保有の報告は、書式(フォーム)TR―
. 8 D T R 5 . 10 1
な)。報告書の(いら記なにしたがって行わなければ 47)( 載内容は次のとおりである (。株称名の者行発の式れたさ付が権決議ⅰ 。 48)
ⅱ 報告義務が生じた原因(議決権の取得または処分、議決権付株式を取得する権利を有する金融商品の取得または 処分、適格金融商品と同様の経済的効果を有する金融商品の取得または処分など)。ⅲ 報告義務に服する者のフルネーム (
。 49)
ⅳ (
ⅲで記載されている者と異なる場合)株式保有者のフルネーム。(これには、前述の
D T R 5 . 2
で言及した者[間接的保有者]のカウンター・パーティーが該当する。)ⅴ 基準値に到達、超過、または下回った日付。
(一二二九)
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法三〇二同志社法学 六二巻四号
ⅵ 発行者が報告を受けた日付。
ⅶ 到達または超過した値(基準値を下回った場合は、
be lo w 3 %
と記載する)。ⅷ 詳細事項。A.株式に付された議決権数(取引前の議決権数、取引後の議決権数(直接・間接を区別する)、および取引後の議決権割合(直接・間接を区別する)。
B.適格金融商品の保有状況(取引後の状況。金融商品の種類、権利の行使期間、権利を行使した場合に取得できる議決権数および議決権割合)。
C.適格金融商品と同様の経済的効果を有する金融商品の保有状況(取引後の状況。金融商品の種類、関連する議決権数および議決権割合)。
○合計議決権数・議決権割合(A+B+C)。ⅸ 実際に議決権(または適格金融商品)を保有している被支配事業体の名称、それぞれの事業体が保有している議
決権数および保有割合。
④ 発行者による議決権総数の公表 発行者は、発行している株式ごとの議決権総数、および発行者が保有している株式に付された議決権総数に増加また は減少が生じた月の末日における当該総数を公表しなければならない(
D T R 5 . 6 . 1
)。株式保有者は、発行者が明らかにした議決権総数に基づいて自身の議決権保有割合を算定し、報告する必要があるの
かを判断することになる。
(一二三〇)
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法三〇三同志社法学 六二巻四号 たとえば、一○万五千の普通株式を発行しているA社が自社の株式を六千取得した場合 (
九保ず、以後、株式保有者が議決権有な割合を計算する際の分母は九万らば六い式をれ保有して千るとを開示しなけこ 末社は月の己日に、自株、A 50)
千になる (
。 51)
3
報告制度の機能 公開買付が行われる場合、株主は持株を高値で売却する機会が得られる (で開す、際う行を付買公は者付買、で方他。 52)
に相当量の株式を取得している場合がある。買付者は事前に時価で株式を取得しておけば、公開買付に成功しやすくなるかもしれな (
い 53)(
のらを提出しなければなな告い。大量保有報告書書報に有だし、株式を大量取。得した場合、大量保た 54)
開示によって株価が上昇する、という米国での調査結果がある。米国では、株式を実質的に五%超取得した者は取得後一〇日以内に、大量保有報告書(
Sc he du le 13 D
)を提出しなければならない(一九三四年証券取引所法第一三条⒟項⑴号 (
、規則一三d―一⒜ 55)(
⒠ま保上以%〇二はた(しるあが的目配支、有て自る一―d三一則規(いいてし示をとこ)る体と の制、きで用利を度示こ開な易簡が者のくこ結)。書るいてし出提を告果報るよにD三一、多 56)
⑴
・一三d―一⒠ 57()⑵
58()参照)。
二○○一年から二○○六年までの間、アクティブなヘッジ・ファンドが対象会社の株式を買い持ちした場合、
Sc he du le 13 D
の開示日の前後で株価は次のように変動していた (、ーてし較比と体全場市はンタリ過超の価、株ちわなす。 59)
一三Dが開示される一〇日前はほぼ〇%であったが、開示一日前は三・二%であった。超過リターンの数値は、開示日からその翌日にかけて、さらに二・〇ポイント上昇した。その後も、超過リターンの数値は上昇し、開示二〇日後には
七・二%になった (
。 60)
(一二三一)
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法三〇四同志社法学 六二巻四号
なぜ株価はこのように推移したのか。一三Dの開示によって、株式を大量に保有しているのは誰なのかが明らかにな
る。これによって、会社が買収の候補になり得る可能性を考慮に入れて、株主は株式を保有し続けるのかどうか、投資者は新たに株式を買い持ちするのかどうか、といった投資判断を下すことが可能となったからであろう。
第三章 報告義務の実効性確保方法
1
避回の務義告報―
点題問るわ関に性効実の度制告報―
会社法上の報告制度は、一九六七年から、二○○七年一月二○日に金融サービス市場法上の報告制度が施行となるまで実施されていた。その間、報告制度の実効性に関わる以下のような問題に対して、会社法は措置を講じていた。
すなわち第一に、一九六七年会社法第三三条(第一章
保ての%〇一、きおし準得取でま%九・基値を報式株に内間期告のを日四一、後たえ超九式よ株の社会象対に前のそ、
2
参照)のもとで的は、最終⑶に買収者は公買付を行うにせ開有割合をさらに高めることが可能だった。
第二に、ウェアハウジング(
w ar eh ou sin g
)―
累積的株式取得―
によって報告義務が回避されるおそれがあった (。 61)
すなわち、グループで協調行動、つまりグループのそれぞれが一〇%を下回る割合で会社の株式を取得することによって、このうちの誰かに当該会社の支配的な地位をひそかに取得させることが可能だった (
。 62)
一九八○年に、次の事件が起こった。複数のノミニー名義で秘密裏にゴールド・フィールズ社の株式を一三%保有していたデビアス社は、ブローカーをとおして、市場で一八%のプレミアムを付した価格で株式を買い付けることによっ て、さらに一二%の株式(合計で二五%)を取得した (
義式名、がたいてし有保に量大を株は社スアビデ、にうよのこ。 63)
(一二三二)
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法三〇五同志社法学 六二巻四号 を分散させ、発行会社に対する報告をしていなかった。そして、市場でプレミアムを付した価格で株式を買い付けることによって、取引開始からわずかの間に大量の株式を追加取得することに成功した(こうした手法は、暁の急襲(
da w n ra id s
)と呼ばれる)。
2
問題への対処⑴ 基準値の引き下げ
報告制度には、前述した二つの問題点あった。これに関して保守党政府白書(一九七三 (はうある。これは、支配株主になろときする場合を別にすれば、投資者でべす準た。るわち、基な値五%に引き下げを う、次のよ示な見解をし)は 64)
通常、一〇%もの株式を取得することはなく、五%でも大量に保有しているといえるからである。また、報告期間も、実際の運用と両立する限りの最低水準に短縮しなければならない (
、と。 65)
その後、労働党政権下で制定された一九七六年会社法(
C om pa nie s A ct 19 76 , c. 69
)は、基準値を五%に引き下げるとともに、報告期間を五日以内にした ((同法第二六条)。 66)
⑵ 株式保有の定義の拡大
次に、一九八一年会社法(C om pa nie s A ct 19 81 , c. 62
)は、前述したウェアハウジングに対処するために、株式保有 の定義規定を整備した (、るてっよにとこす報得取を式株で合回告るをるいてし止防と義こるす避回を務割 ( 値下を準と支よし得獲を権配社基会、てっよにれうい。ーがれぞれそのプルうグ、で下の意合こ 67)
プよールグ、ばれに条七六第法同。 68)
の各当事者は、グループ全体で保有する株式を保有していることになる(第三章
3
⑶参照)。(一二三三)
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法三〇六同志社法学 六二巻四号
⑶ 会社の実質株主調査権の創設
会社法は、実質的大株主に対する持株報告義務を課していた。そして、一九七六年会社法は、報告制度の実効性を向上させるために、会社の実質株主調査権を規定した(同法第二六条)。会社による実質株主の把握については、コーエン委員会報告書(一九四五)も勧告していた。すなわち、株式譲渡にあたって、譲受人は自身が株式の実質的保有者なのかノミニーとしての保有者なのかの宣誓を必要とし、会社は株主総 会の招集通知を発送するさい、株式保有者として登録されており前述の宣誓をしなかった者に対して、実質的保有者なのかノミニーとしての保有者なのかを記載して返送するよう要求することができる (
勧はなうよのこ、府政しかし。と、 69)
告事項について、簡素で、かつ容易に回避できないような規定を設けることは不可能だと判断した (
。はたっかならたい に法立、めたのそ。 70)
会社の実質株主調査権を創設した一九七六年改正には、前出の保守党政府白書(一九七三)の提案が反映されている。すなわち同白書は、公開買付の対象になるかもしれないことや、前述したウェアハウジングが進展しているかもしれな
いことをおそれる会社は、真の株式保有者は誰なのか知ることのできる権利を保有するべきである、という見解を示した。そして株式の実質的保有者は誰なのか、形式的保有者に対して回答を要求できる、という権利をすべての会社に付
与するように提案した (
。 71)
その後、会社の実質株主調査権の実効性を向上させる法改正があった。すなわち、コーエン委員会の勧告を反映して 一九四八年会社法は、所管大臣による調査権限、および調査に付随して株式に制限を課す権限を認めていたが (
章一三第(件事の年○八九、はで正改年一 八九一、 72)
1
じ定規を置措裁制るす対に者いな応参、照)を受けて会に社による調査した(同法第七七条⑴項)。
(一二三四)
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法三〇七同志社法学 六二巻四号
3
会社の実質株主調査権の検討⑴ 調査権の意義
前述のように、会社法は、実質的大株主に対して発行会社への持株報告義務を課していた。現在、報告義務は会社法 上の義務ではない。しかし、二○○六年会社法は、会社の実質株主調査権を存続させている (のの権付株式た真保議有者は誰なのか決、るをあにとこるえ与限て権のめ社に対し知 ( 会開公、は的目の法社会。 73)
る 74)(
。会社はこの権限を行使して、 75)
誰が・どれだけ、株式を保有しているのか把握するために調査をすることができる (
。 76)
⑵ 調査の方法
前述のように、会社法上、公開会社 (は、議決権付株式 77)(
はす法方のそ。るきでがとこる査調をかのな誰は者有保の真の 78)
次のとおりである。
すなわち、公開会社は、⒜株式を保有している者、または⒝通知を発した日から遡って三年間のいずれかの時点で株 式を保有していた者に対して﹁通知(
no tic e
)﹂を発することができる(二○○六年会社法(C om pa nie s A ct 20 06 , c. 46
)第七九三条⑴項)。会社は通知の受領者に対して、株式を保有しているのかどうかの確認を求めるとともに、その者が現在株式を保有している、または過去三年間において株式を保有していたのであれば、株式保有に関するさらなる情報を提供するよう求
めることができる(七九三条⑵項)。
要するに会社は、⒜通知の受領者が現在株式を保有している場合は、当該株式を保有している者は他にいるのかどう
か(それは誰なのか)、⒝通知の受領者が過去に株式を保有していた場合は、当該株式を保有している者は他にいたの
(一二三五)
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法三〇八同志社法学 六二巻四号
かどうか(それは誰なのか)、さらに、その者が株式を処分した直後に、株式を取得した者は誰なのか、情報の提供を
求めることができる。また会社は、通知の受領者に対して、八二四条にいう合意(第三章
―とったか否か)、回答を求めるこがでできる(以上につき七九三条⑶あ者そ意する事の他の合のに当事者か否か(当関
3
使行利権はたま)、照参⑶⑹項参照)。
これらの事項について、通知の受領者は、通知で指定された合理的期間内に情報を提供しなければならない (
(七九三 79)
条⑺項)。
このように会社は、株式保有者に対して通知を発して、株式の実質保有に関する情報を提供するように求めることが できる。そのさい、会社はどのような内容の通知を発するのかが重要である。(二〇〇〇年三月に)DTIが作成した通知のモデル(
M od el 21 2 N ot ic e
)は、次のとおりである (。 80)
われわれは、一九八五年会社法第二一二条[二○○六年会社法第七九三条]に基づき、あなたが保有している株式に ついて、情報を○日以内にわれわれに提供するよう要求する。ⅰ この通知への回答時点で、あなたが保有している株式の数(現在の保有)、およびこの通知から遡って[三年以
内の期間]においてあなたが保有していた株式の数(過去の保有)。ⅱ 当該株式保有の性質。
ⅲ あなたが株式を取得した日。ⅳ あなたが過去に株式を保有していた場合は、当該株式を処分した日。および知っている範囲で、あなたが株式を
処分した直後に株式を取得した者の名称。
(一二三六)
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法三〇九同志社法学 六二巻四号 ⅴ あなたが現在株式を保有している場合は、知っている範囲で、株式を保有しているそれぞれの者の名称・住所(投資運用者を含む)、保有の性質、および保有数。
ⅵ あなたが保有している(保有していた)株式について、議決権・その他の権利行使に関する合意または協定の当事者の名称・住所、当該合意または協定の詳細。
⑶ 株式保有の定義
調査制度における株式保有の定義は、会社法上の報告制度における株式保有の定義と同様である。市場法上の報告制度における株式保有の定義(第二章2
⑵②参照)とは相違している。 調査制度上、株式の保有(in te re st in s ha re s
)は、幅広く定義されている(保有の定義が幅広いのは、信託や他の法人の背後で、ある者が株式を保有している事実を巧妙に隠そうとする試みを阻止するためである (。会社は、調査権を行 81)
使して、誰が株式を保有しているのか突き止めることができる)。
株式が信託形式で保有されている場合、その受益者は株式保有者になる(八二○条⑶項)。株式保有者として登録さ
れている者ではなくとも、株主権を行使できる者(または権利行使を支配できる者)は、株式保有者になる(八二○条
⑷項⒝号)。同様に、株式取得契約を締結した者、株式引渡請求権、新株引受権を有する者も株式保有者になる(八二○条⑷項⒜号・八二○条⑹項⒜号・八二一条)。
次に、法人が株式を保有しており、かつ当該法人(または当該法人の取締役)がある者の指図にしたがって行動している場合、あるいはある者が当該法人の議決権の三分の一以上を行使し得る場合、その者は当該法人の株式保有分を保
有していることになる(八二三条⑴項)。
(一二三七)
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法三一〇同志社法学 六二巻四号
株式を共同して保有している場合は、各自が保有者となる(八二○条⑺項)。
さらに、複数の者の間で、特定の会社(標的会社)の株式をそのいずれかの者が取得する旨の条項を含んだ﹁合意﹂
が存在する場合、そのことによって各自が株式の保有者となる(八二四条⑴項)。
同条が適用されるのは、合意が次の要件を満たしている場合である。すなわち、⒜合意にしたがい取得された標的会 社株式の保有に関して、その使用 (
項条の ( まかの者に義務制たはず約を課す旨れいにの持、または処分つ、き、合意の当事者保 82)
必し会社の株式が、合意にた標がい実際に取得される的て当っまれ、かつ⒝合意の事が者のいずれかの者によ含 83)
要がある(八二四条⑵項)。
言い換えれば、複数の者が各自、標的会社の株式を市場で取得する旨を合意し、実際に株式を取得したとき、当該合 意が⒜の要件を満たしていれば、彼らは合意にしたがい株式を取得したことになる (
事他ば、合意の当者れはそれぞれ、合れさのる式株の社会的標す用有保が者事当の意 ( た。が定規の条同ん適っい、てしそ 84)
二こ八(るなにとるいてし有保を 85)
五条⑴項)。
このような合意の当事者が発行会社からの通知に回答する場合、この者はそのような合意の当事者であること、この
者が保有していることになる株式の数、および合意の当事者の名称を開示しなければならない(八二五条⑷項)。
会社は調査の結果、こうした協調行動(
ac tin g in c on ce rt
)をとっている集団の議決権数を把握することができる (。 86)
(一二三八)
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法三一一同志社法学 六二巻四号
⑷ 調査に応じない者に対する制裁
① 定款に基づく制裁 ところで、株式が上場されている場合、株式の譲渡は自由が原則であり、株式の譲渡について制限を課してはならない(上場規則(L ist in g R ule s
[L R
])2 . 24
(1
))。ただし、前述した会社法七九三条に基づく通知に応じないことを理由に課される制限は、その例外である(
L R 2 . 24
(2
))。 そのため、上場会社においても、定款に基づき、通知に応じない株主に対して以下のような制裁を課すことができる(
L R 9 . 3 . 9
)。ⅰ 〇・二五%未満の株主に対して、定款によって課し得る唯一の制裁は、総会への出席および議決権行使の禁止で ある。ⅱ 〇・二五%以上の株主に対して、定款によって課し得る制裁は、⒜総会への出席および議決権行使の禁止、⒝当該株式に関する配当の支払いをしないこと、ならびに⒞株式の譲渡の制限である(ただし、認定投資取引所もしくは海外の取引所を通じて、あるいは買付申込を受けて、真に無関係な第三者へ株式を売却する場合、当該制限は課
されない (
)。 87)
なお、通知の送達後一四日を経過するより前に、制裁の効力を生じさせてはならない。
② 会社法上の制裁 会社法は、一九八一年法以来、会社が通知を株式保有者(株式を保有していた者を含む)に対して発したものの、指 定された期間内にその者から情報が提供されない場合 (
請をに所判裁うよす下を令命す課限制てし対に式株該当は社会、 88)
(一二三九)
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法三一二同志社法学 六二巻四号
求することができると規定している(一九八一年会社法第七七条⑴項、一九八五年会社法第二一六条⑴項、二○○六年
会社法第七九四条⑴項)。
裁判所の命令によって株式に制限が課される結果、⒜当該株式の譲渡が無効となる、⒝当該株式に関しての議決権行 使ができない、⒞新株引受権に基づく新株発行がなされない、⒟清算の場合を除き会社から金銭などの支払いが受けられない (
(七九七条⑴項)。 89)
裁判所は、株式保有の情報を提供しない者が保有している株式に、前述した制限を課すことになる命令を下すのかどうかを判断する (
。 90)
以上のように、通知の受領者が会社に実質株主の情報を提供しない場合、会社の請求に基づき裁判所は、当該株式に対して制限を課し得る。株式に制限を課す命令が下されれば、株主としての権利がはく奪される結果となる。このこと によって、会社(さらに公衆)は、株式の真の保有者に関する情報を入手しやすくなる (
。 91)
さらに裁判所は、株式に制限を課す暫定的な命令を下すこともできる(七九四条⑶項)。そのような暫定的な命令を 下すかどうかの基準は、被告が通知で回答を求められた事項に関して、会社への情報提供が十分であったかどうかにつき、審理に付すべき問題が生じているか否かである (
がが利権のてしと主株ばれれさ下令命す課を限制に式株、で方他。 92)
はく奪される結果となることを考慮すれば、通知に対する以前の回答が不正確であったとしても、その後に十分な情報が提供され、または以前の回答が不正確であったことについて審理で十分な説明がなされそうであり、かつ被告が審理
の間も株式を処分しないことを約束した場合には、裁判所がそのような命令を下すことは不必要である (
。 93)
裁判所が株式に制限を課した場合、会社、または株式に制限を課す命令によって権利が侵害される者は、株式に制限
(一二四〇)
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法三一三同志社法学 六二巻四号 を課すのをやめる命令を下すよう裁判所に請求することができる(八○○条⑴項⑵項)。
裁判所は、⒜株式保有に関する事実が会社に開示され、かつ、それ以前に開示をしなかったことによる不正な利益が 何人にも生じていないと認めるとき、または⒝有効約因のために株式を譲渡しようとする場合において (
を承り限にきとるす渡認 ( 譲該当が所判裁 94)
令で、そのような命きを下すことが 95)(
る 96)(
(八○○条⑶項)。 97)
なお、裁判所は、会社の請求に基づき制限に服する株式の売却を命じることもできる(八○一条)。そのさい、株式売却の収入は裁判所に支払わなければならない(八○二条⑴項)。当該株式の実質的保有者は、当該収入の全部または
一部を自身に支払うよう裁判所に請求することができる(八○二条⑵項)。
⑸ 裁判例の分析
会社は調査をとおして、最終的に株式の実質保有者を把握することができるのか、また会社に情報を提供しない者には制裁が課されるのだろうか。
以下では、調査権に関する裁判例を三つに分類し、検討を進める。
① 外国の会社や外国の銀行が情報提供を拒んだ場合、裁判所によって国内のノミニーが保有している株式に対して制限が課された事例 会社による調査は、まず株式保有者として登録されている者に対して通知を発することから始まる。しかし、通知の受領者は、守秘義務や自国の法を根拠に情報提供を拒否する可能性がある (
。 98)
これに関して、以下で紹介する三つの裁判例は、英国の発行会社からの通知に対して、国内のノミニーが株式を外国
(一二四一)
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法三一四同志社法学 六二巻四号
の会社や外国の銀行のために保有している旨を回答したが、外国の会社や外国の銀行はそれ以上の情報提供を拒んだ場
合に、裁判所は国内のノミニーが保有している株式に対して制限を課したという事例である。
ⅰ ロイド社事件 (
99)
[事実の概要]
一九八四年一一月・一二月、ロンドン証券取引所に株式を上場しているX(
F H L lo yd H old in gs
)社は、一九八一年会社法七四条に基づく﹁通知﹂をノミニー会社(計一二社)に対して発した。そのうち三社は(イギリス海峡チャンネル 諸島の)ジャージー(Je rs ey
)島[王室保護領である同地域は連合王国に属しておらず、オフショア金融センターとして有名である]の会社、残りはイギリスの会社であった。これらのノミニー会社によって約一○三万(発行済株式の四%に相当)のX社株式が保有されていた。
通知においてX社は、株式の実質的保有者が他に存在するのであれば、その者の名称、住所、および保有数を記載す
るよう要求した。イギリスの会社は通知に対して回答したが、ジャージー島の会社は回答しなかった(X社は回答するよう要求した情報は得られないだろうと判断した)。
これとは別にX社は、一九八五年二月五日、S(
Su te r
)社から約三四○万(一四%に相当)のX社株式を取得したとする報告を受けた。このことからX社は、大量の株式を取得しようとしている者がいるかもしれないと懸念した。二月二一日、そこでX社は裁判所に、ノミニー会社によって保有されている株式に対して制限を課すよう請求した。ナース裁判官は一方的命令によって、三月四日までの間、株式に対して制限を課すことを命じた。それでも、
Y G en ev a
(1N om in ee s
)社およびY B SA g ur em ux L k an bo t pm elo ev D de ra T en
供たっかなしを社提報情は)(。2Y
社はイギリスのノ1(一二四二)
大量保有報告制度の目的と実効性の確保方法三一五同志社法学 六二巻四号 ミニー会社であり、
Y
クるあで行銀のルブンセクルは社。2
Y
社および1Y
九りである。一八と三年五月一二日おの、保社による株式有次に関する事実は2Y
社は一五万株について、1株式の保有者として登録された。一九八四年一一月一三日、X社は通知を
Y
たてし対にれこ。し付送てし対に社、1Y
1社は一五万株を
Y
日八五年一月九、一次にX社は通知九。を有社のために保したていると回答し2Y
社に送付した。2Y
2社は顧客の同意なく情報提供をすればルクセンブルクの法に違反することになるとして、回答を拒んだ。
また
Y
象国の会社は、通知の対にい含まれないと主張した外な。業社は、英国において事をい営んでおらず実在して2そうであれば、
Y
でを課すことはき制ないことになる限が。る社が保有してい株所式に対して裁判2しかしナース裁判官は、次のように判示して当該株式に制限を課す終局的な命令を下した。
[裁判所の判断]
X社はイギリスの会社であり、その株式はイギリスにおける財物である。その株主である
Y
社はイギリスの会社で1ある。
Y
てあで社会の国外しと者託受、は社る1。ギあり、受託者はイリ物スに居住しているで
Y
託る社のために株式を保有してい。財しかし、信財のスリギは産イ2イギリスの会社は他者のために株式を保有している外国の会社に対して、誰のために株式を保有しているのか明らか
にするよう要求することができる。裁判所は、会社の請求に基づき、そのようにして保有されているイギリスの株式に対して制限を課すことができる。英国の法律は、国内に実在しているかどうかとは関係なく、外国人がイギリスにおい
て有する権利に対しても適用されるであろう。
このことに関して次の判決がある。すなわちジェームズ裁判官によれば、もし外国人がイギリスにおいて契約をし、 それに違反すれば、一定の手続きを経てイギリスにおける財産に対して執行がなされる (
、裁ばれよに官判ントッコたま。 100)
(一二四三)