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【 緒 言 】

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Academic year: 2021

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授 与 し た 学 位 専攻分野の名称 学 位 授 与 番 号 学位授与の日付 学位授与の要件

学位論文の題目

論 文 審 査 委 員

吉田 沙織

博甲第6148号 令和2年3月25日

医歯薬学総合研究科病態制御科学専攻

(学位規則第4条第1項該当)

Tumor Angiogenic Inhibition Triggered Necrosis (TAITN) in Oral Cancer (口腔癌における腫瘍血管の抑制が誘発する腫瘍壊死について)

佐々木 教授 松村 達志 准教授 河津 俊幸 准教授

学位論文内容の要旨

【 緒 言 】

CXCモ チ ー フ ケ モ カ イ ン 受 容 体 で あ るCXCR4は リ ン パ 球 や 単 球 、形 質 細 胞 な ど の 造 血 細 胞 に 発 現 し 、増 殖 や 浸 潤 、接 着 に 関 与 す る ケ モ カ イ ン 受 容 体 で あ る 。CXCモ チ ー フ ケ モ カ イ ン リ ガ ン ド12(CXCL12)と し て も 知 ら れ る 間 質 細 胞 由 来 因 子 のSDF-1 と 結 合 し 、造 血 幹 細 胞 を 骨 髄 内 に 留 め る 役 割 を 果 た す 。造 血 細 胞 の 他 に 血 管 内 皮 細 胞 や 腸 上 皮 、肺 胞 上 皮 な ど の 非 血 液 系 細 胞 に もCXCR4が 発 現 し て お り 、胎 児 期 に は 消 化 器 の 栄 養 血 管 の 形 成 に 関 わ る 。ま た 脳 腫 瘍 、肝 臓 癌 、 乳 癌 、食 道 癌 の 一 部 はC XCR4陽 性 で あ り 、口 腔 扁 平 上 皮 癌 (OSCC)も 約60%の 症 例 がCXCR4陽 性 を 示 す 。CXCR 4陽 性 の 症 例 は リ ン パ 節 転 移 や 遠 隔 転 移 が 生 じ や す く 予 後 不 良 で あ る と 報 告 さ れ て い る 。過 去 の 報 告 で は 、ヒ ト 扁 平 上 皮 癌 細 胞 株 を 移 植 し た マ ウ ス に お い てCXCR4 阻 害 剤 を 投 与 す る と 癌 の 体 積 が 減 少 す る が 、ヒ ト 扁 平 上 皮 癌 細 胞 株 をCXCR4抑 制 下 で 培 養 し て も 癌 細 胞 の 増 殖 や 生 存 に は 影 響 が な い と さ れ て い る 。そ こ でCXCR4抑 制 剤 がOSCCの 治 療 に 有 効 で あ る か を 明 ら か に す る た め に 、①OSCCに お け るCXCR4の 分 布 ②OSCC細 胞 を 移 植 し た マ ウ ス に 対 す るCXCR4阻 害 剤 の 影 響 に つ い て 検 討 し た 。

【 材 料 と 方 法 】

①OSCC手 術 検 体 に お け るCXCR4の 分 布 の 検 討

岡 山 大 学 病 院 の 舌 扁 平 上 皮 癌 手 術 検 体10症 例 を ラ ン ダ ム に 抽 出 し た 。CXCR4の 免 疫 組 織 化 学 染 色 を 行 い 、 腫 瘍 部 と 非 腫 瘍 部 でCXCR4の 発 現 を 比 較 し た 。

②OSCC細 胞 を 移 植 し た マ ウ ス に 対 す るCXCR4阻 害 剤 の 影 響

ヒト扁平上皮癌細胞株HSC2をヌードマウス (n=5)の背部皮下に移植し、1週間の腫瘍生着期 間を設けた後、CXCR4阻害剤であるAMD3100を50μg/day腹腔内に連日投与した (以下CXCR4阻 害群とする)。対照群には生理食塩水を投与した。薬剤投与を開始して22日目に腫瘍組織を摘出 して組織標本を作製し、組織学的および免疫組織化学的 (CXCR4、CD34、HIF-1α)検討を行った。

必要に応じて画像解析ソフトのImageJを用いて両群の所見を比較した。

【結果】

①腫瘍細胞と非腫瘍部の口腔粘膜上皮細胞では、CXCR4の発現に差を認めなかった。腫瘍間質

(2)

の血管は一部CXCR4陽性であったが、非腫瘍部の血管はCXCR4 陰性であった。血管内皮細胞 マーカーとしてCD34 を使用し、CXCR4 とCD34 の蛍光免疫二重染色を行ったところ、腫瘍間 質の血管内皮細胞の一部がCXCR4陽性であり、非腫瘍部の血管はCXCR4陰性であった。

②腫瘍の大きさは CXCR4 阻害群と対照群とで肉眼的に差を認めなかった。組織学的に CXCR4 阻害群と対照群のいずれでも腫瘍細胞の一部はCXCR4弱陽性、腫瘍間質の血管の一部はCXCR4 陽性を示した。CXCR4 阻害群では腫瘍内に壊死領域が増加しており、特に CXCR4 阻害群では やや大きな血管とわずかな腫瘍細胞の残存を伴う壊死像を認めた。CXCR4 阻害群は対照群よ

りもHIF-1α陽性細胞が増加していた。ImageJを用いて両群の血管の長さを計測したところ、

CXCR4阻害群における腫瘍間質の血管は対照群よりも細く短かった。

【考察】

手術検体において、OSCC の間質に CXCR4 陽性の血管が存在することが明らかとなった。ま た動物実験では CXCR4 の阻害が OSCC の腫瘍壊死を促進することが示された。以上のことか ら、CXCR4陽性血管が腫瘍の生存に関与していると考えられた。CXCR4とSDF-1の結合は細胞 の遊走や浸潤の促進など、腫瘍の進行に重要な役割を果たすだけでなく、胎児期には消化器 の栄養血管の形成にも関わることが報告されている。これらの報告から、CXCR4を阻害すると 腫瘍間質において血管形成が阻害され、腫瘍壊死が誘発される可能性が考えられた。

本研究ではCXCR4の阻害剤としてアンタゴニストであるAMD3100を用いた。AMD3100は白血 球の増加を目的として HIVの治療用に設計され、現在では主に造血幹細胞移植に使用されて いる。さらに近年では腫瘍の抗転移療法にAMD3100 が利用可能であるか、各臓器で研究が進 められている。

本研究ではAMD3100の投与による血管の抑制が腫瘍壊死を引き起こすことが明らかとなっ た。本研究によって、CXCR4の阻害はOSCC治療における有効な抗腫瘍血管形成戦略となり得る と考えられた。

(3)

論文審査結果の要旨

CXCモチーフケモカイン受容体 (CXCR4)は造血細胞に発現し、細胞の移動に関与するほか、血 管内皮細胞にも発現し、胎児期には消化器等の血管形成に関わる。また口腔扁平上皮癌 (OSCC) の一部症例はCXCR4 陽性であり、リンパ節転移や遠隔転移が生じやすい。過去の報告では、ヒ トOSCC細胞株移植マウスにCXCR4阻害剤を投与すると腫瘍の進行や転移が抑制されるものの、

培養下では腫瘍細胞自体の増殖や生存に影響はなかった。In vitroとin vivoの差異から腫瘍 間質に注目し、CXCR4阻害剤が間質の血管を抑制して腫瘍に影響を与えると仮説を立てた。OSCC 治療におけるCXCR4阻害剤の有効性を明らかにすべく、以下の検討が行われた。

①OSCCにおけるCXCR4の分布

舌扁平上皮癌手術検体におけるCXCR4の発現を免疫組織化学的に検討した。その結果、

腫瘍間質の血管は一部CXCR4陽性であるのに対し、非腫瘍部の血管はCXCR4陰性であっ た。

②OSCC細胞を移植したマウスに対するCXCR4阻害剤の影響

ヒトOSCC細胞株HSC2をヌードマウス (n=5)の背部皮下に移植し、1週間の腫瘍生着 期間を設けた後、CXCR4 阻害剤であるAMD3100を50μg/day 腹腔内に22 日間投与した

(以下CXCR4阻害群とする)。対照群には生理食塩水を投与した。腫瘍組織を摘出して組

織標本を作製し、組織学的および免疫組織化学的 (CXCR4、CD34、HIF-1α)検討を行っ た。その結果、CXCR4阻害群では腫瘍内に壊死が拡がり、特に血管と周囲のわずかな腫 瘍細胞の残存を伴う特徴的な壊死像を認めた。CXCR4 阻害群は対照群よりも HIF-1α陽 性細胞が増加していた。またCXCR4阻害群における腫瘍間質の血管は対照群よりも細く 短かった。

①②の結果から、CXCR4を阻害すると腫瘍間質において血管形成が阻害され、腫瘍が低酸素状

態となり、壊死が誘発される可能性が考えられた。OSCC治療におけるCXCR4の阻害が抗腫瘍血 管形成戦略として有効であることが示された。

CXCR4の発現を検討する際に、腫瘍細胞だけではなく間質の血管にも着目した点に本研究の新

規性がみられる。なお、本論文はすでにCellsに受理(掲載)されており、国際的にも評価されて いる。よって、審査委員会は本論文に博士(歯学)の学位論文としての価値を認める。

参照

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