天然水中の有機物に関する研究II : 霞ヶ浦におけ
るニコチン酸, パントテン酸, ビオチン, 葉酸及び
ビタミンB_12含有量の季節的変化
著者
柏田 研一, 金澤 昭夫, 橘園 重夫
雑誌名
鹿児島大学水産学部紀要=Memoirs of Faculty of
Fisheries Kagoshima University
巻
12
号
2
ページ
153-157
別言語のタイトル
Studies on Organic Compounds in Natural Water
II : On the Seasonal Variations in the Content
of Nicotinic Acid, Pantothenic Acid, Biotin,
Folic Acid and Vitamin B_12 in the Water of
the Lake Kasumigaura
天 然 水 中 の 有 機 物 に 関 す る 研 究 一 Ⅱ
霞 ケ 浦 に お け る ニ コ チ ン 酸 , パ ン ト テ ン 酸 , ビ
オチン,葉酸及びビタミンB12含雲量の季節的変化 柏 田 研 一 。 金 沢 昭 : 夫 ・ 橘 園 重 夫StudiesonOrganicCompoundsinNaturalWater-Ⅱ
OntheSeasonalVariationsintheContentofNicotinicAcid・ PantothenicAcid,Biotin,FolicAcidandVitaminB,2 intheWateroftheLakeKasumigaura Ken-ichiKAsHIwADA,AkioKANAzAwA andShigeoTAcHIBANAzoNo Abstract Thepresentpaperreportsacont1nuationofourstudyl)whichdealswithorgamccom-poundsinnaturalwater・Inthisstudywedetermmedfivevitaminsinthewaterofthe LakeKasumigaura,duringtheyearl962−63、Allofthevitaminsweredetermindbymi-crobioassaymethodusinglacticacidbacteriaasthetestorganism・Theresultswereshown inTablelandFig.1. 1.Thenicotinicacidwascontainedinthelakewater3withahighsummerlevel(about 3γ〃)andlowwinterlevel(about0.3γ/Z).(Fig.1−a) 2.Similarseasonalchangesofpantothenicacidandbiotincontentwere、foundwitha highsummerlevelandlowwlnterlevel.(Fig.1−bandc) 3.ThefolicacidcontentlncreasedrapidlyfromJulytoSeptemberandreacheda max1muminOctober,andthendecreasedrapidly.(Fig.1−.) 4.ThecontentofvitaminB12rangedfrom5to28mγ/j・Therewasnoevidenceofa specialseasonalchangeofvitaminB12coI1tent.(Fig.1−e) 153 本研究の第1Wji1)として,さきに鹿リ,L島市内の河川および池H1湖における葉酸含量を調査 した結果を報告したが,第1報で述べたと同じ主旨のドに膜ケ浦の水についてB群に属する 5種のビタミン,ニコチン酸,パントテン酸,ビオチン,柴酸,ビタミンB12を定量した. なお前にも述べたように,天然水111のビタミンに関する研究は極めて少なく,上記5種のビ タミン中,B12以外のものではHuTomNsoN蝶2)がLinsleyPondの表面水中の溶存ニコチン酸量として0.15-0.89γ/Z,ビオチン通として0.3-4.0mγ/j,又湖水中のチアミン量0.03
-1.20γ/Z3)を柵告しているのが兄られる.B12は1960年10月の煙ケ浦の水についての測定結果をさきに報告4)したが,その季節的変化
および他のビタミン狐との関係を知るために再度測定に加えた. この研究に川いた試水の採取を煩わした茨城県霞ケ浦北浦水産事務所の欠1-1正直氏.B12 の 定 量 で 協 ノ j さ れ た 本 学 部 水 産 化 学 研 究 雫 の 宮 園 育 了 嬢 に 感 謝 の 意 を 表 す る .8.3 13.8 28.0 19.3 5.1 11.5 154 0.26 0.19 0.24 0.22 0.13 試 料 と 測 定 方 法 1 . 試 水 上記のように試水の採取は鰹ケ浦北浦水産事務所矢1-1正直氏に依頼し,111所で行なわれた
定期観測の際,稲敷郡美浦村木原沖の観測点(南北両岸からほぼ等距離水深45−4.8m)で,
表層および2−2.5mの2層から採水,直ちにトルオールを添加後,暗箱に入れ本学部実験
室に送付されたものである.実験室ではこの試水を東洋i戸紙No.5Cで炉過した後,測定
に用いた.なお採水の現地で水温とPH(比色法)を測定した. 2 . ビ タ ミ ン 類 の 定 量上記5種のビタミンはすべて乳酸菌を用いるバイオアッセイ法によって測定した.使用菌
株はニコチン酸,パントテン唯,ビオチンの三種にはZ,.α7.α6伽OszjS17-5》葉酸にはSZC.
./(1aecα"sRを,叉B12にはLLejcノbman乃虎を用い,37.C72時間培謹による/k酸量を0.1N
NaOHで滴定することによって測定した.なおB12は試水そのままを用いて定量できたが,その他のビタミン類は微並のため試水そ
のままでは定量困難で,ある程度の濃縮を必要とするが,予備実験の結果に雑き,ニコチン雌 とビオチンは発容に,又パントテン酸と葉酸は兇0容に濃縮して用いた.濃縮は褐色クライ ゼンフラスコを用い,約40°Cで減圧下に行なった.バイオアッセイの操作は常法に従った. 観測,測定の結果はTablelに表示したが,各ビタミンは変動の状態と相瓦の比較を容易 Table1.Seasonalvariationsofnicotinicacidpantothenicacid,biotin,fblicacidandvitamin B,2inthewatcroftheLakeKasumigauraduringtheperiodApril,1962,toJanuary,1963.73404960373555
。●●由■の■e■●●●勺■
23121001110000
May、18 Apr、13 Dec、17 Nov,15 16.9 5.5 7.8 5.5 6.5 9.55490681112110000
●●●④旬■■■
00000000
Water temp・ (。C) B12 (mγ/j) E A . (mγ/j) Pa.A・ (γ/j) Biotin (mγ//) Ni.A、 (γ/j) Depth (、) Dateof sampling pH June、l5 Julyll Aug・l5 Sept、21 ○ct、150060545454
0.16 0.1802050000000300●①巳。即■●■●●●●□■
02020202020202
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06123000010881
1351
7026044407777066891814666881
11221
Jan,18 鹿児島大学水産学部紀要第12巻第2号(1963) 17.0 16.5 19.1 19.0 14.537602
●。●旬●
12121
0.19 0.1201617
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腔腔肥田虹・一理皿羽鯛”恥旧廻腔腔7733
3318756960790093243
己 155 水 温 の 最 高 は 8 月 , 最 低 は 1 月 , 表 層 と 2 − 2 , 5 m の 下 層 と で は そ の 差 は 僅 少 で , い つ の 季節においても1°C以下にすぎず,かつ表層と下屑とで何れが高いかは一定していない. pHは秋から冬にかけては測定を欠くが,3月から9月に至る期間は常にアルカリ性でそ の最高は7月に現われて8.6−8.8を示し,前記,水温の最高8月と1カ月のずれがある.
ニコチン酸含量は0.3-3.3γ/Zの範囲にあって最高は最低の10倍以上に当り,前者は7
月に,後者は12月に見られる.季節的変化としては,11月がその前後より多少多いことを除 け ば 一 般 的 傾 向 と し て は 夏 期 に 多 く , 深 度 と の 関 係 で は 9 月 を 除 け ば 表 層 よ り も 下 隅 の 方 に やや多い傾向がある. パントテン酸は前者よりも少なく,含有堂の範囲は0.01-0.26γ/Zで,最高般低の開き は二十数倍に達している.12月,1月の冬期に少ないことはニコチン酸と同様であるが,最 高値を示す時期は表層と下膳とで異なり,表隅水ではニコチン酸とll1様7月とその前後の夏 期に多いが,下伸'i水ではその時期が1−2カ月遅れている.ニコチン酸の場合に見られた11 ならしめるためにFig.1に図示した. 結 果 と 考 察 1 0.4lb、Pont。↑henicqcid 0.Nicofinicqcld 432
00
、︵︶三○口○一星四二一.一二on32
告︶豆go−E−ち。毒 八 Fig.1.Seasonalvariationsinthevitamincontentofthesurfacelayer(0m) andthebottomlayer(2-2.5m)intheLakeKasumlgauradurmgthepe‐ riodApril,1962,toJanuary,1963.22
︵|、︵E︶“一画ご↑Eローーン =っ々 ” 勺 α彦 ‘ & O、’ MqyJuIySept.Nov,Jqn MqyJulySep1.Nov.Jqn0032
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−、宮︶で一・ロ。一一。﹂ :、皿 a 10 ﹃負 dl dl 50 ﹃豆 一 一 ' 』 ・ 一 一 一 一 MqyJuIysept.Nov‘ 0 −− 50 一一 JoI1 一一一 M q y J U l y 8 e P t . N m A J o n . M q y J U l y S e P t]56 鹿児島大学水産学部紀要第12巻第2号(1963) 月 に お け る 多 少 の 増 加 は , こ の 場 合 は 表 層 水 に の み 見 ら れ る . 季 節 的 変 化 は 表 層 と 下 層 と で やや異なっているが,表層水ではニコチン酸の場合によく似ている.
ビオチンは前二者に比べて遥かに少なく,2−50mγ/Zであるが,季節的変化はかなり大
き い . 春 か ら 夏 に か け て は 表 晒 水 と 下 層 水 と で は 変 化 の 状 態 に か な り 著 し い 差 が あ っ て 一 定 した傾向は認め難いが,11月から1月に至る冬期は他の時期に比べて含量が少なく,かつ表 屑と下層との間にも大差がなくなっている.最高値は表層水では9月,下層水では8月に現 われている. 葉酸は40-244my/Zの範囲にあり,他のビタミンと異なり表層水と下層水との差が少な く,季節的変化も比較的単純である.すなわち4月から6月までは50mγ/Z内外であるが, 夏期は次第に増加し,10月最高値に達した後11月には急減する.この経過は下層水における パントテン酸含曇の季節的変化に似ている. ビタミンB12は5−28mγ/Zの含量を示し,季節による変動は下層よりも表層の水におい て著しい.最高値28mγ/Zは8月中旬の表面水に見られるが,季節的変化に一定の傾向は認 め難い. 以 上 の よ う に 今 回 測 定 し た ビ タ ミ ン の う ち 含 有 量 の 最 も 多 い も の は ニ コ チ ン 酸 で , パ ン ト テン酸,葉酸がこれに次いでいるが,季節的変化の巾の最も大きいのはパントテン酸とビオ チンで,最高は最低の二十数倍に当っているのに対し,他の3ビタミンはいずれもその変動 は数倍の範囲に止っている.この季節的変化は葉酸以外は一見したところ増減に一定の傾向 が認め難い.ビタミン相互を比較するとピオチン(下層水)とB12(表面水)とは季節的変 化にやや類似点が認められるようである.なおB12量は富栄養湖に多く,栄養型と関連のあ る こ と は さ き に 報 告 し た が , そ の 他 の ビ タ ミ ン 類 に つ い て は 測 定 例 が ほ と ん ど 見 当 ら な い の で こ の 種 の 関 連 は 不 明 で あ り , こ れ ら の ビ タ ミ ン 類 の 起 源 や 水 界 に お け る 生 産 に 関 係 が あ る か ど う か な ど は , い ず れ も 将 来 の 研 究 に 残 さ れ た 問 題 で あ る . 摘 要 天 然 水 中 の 有 機 微 量 成 分 , 特 に ビ タ ミ ン 類 に 関 す る 研 究 は 極 め て 少 な く , こ れ が 水 中 の 生 物に及ぼす影響などもほとんど不明に近いので,まずその分布を知るために霞ケ浦の表層と 2--2.5mの下層の水についてニコチン酸,パントテン酸,ピオチン,葉酸,ビタミンB12の 含有量を1962年4月から翌年1月にわたって測定したが,その結果は次の通りであった.な お測定は乳酸菌を用うるバイオアツセイ法によって行なった. 1.ニコチン酸は0.3-3.3‘y/Zで今回測定したビタミン巾最も多く,最高は7月,最低は 12月,:慨して夏期に多いが,最高最低の開きは他のビタミンに比べると少ない. 2.パントテン酸は0.01-0.267/Zで,前者に次いで多く,表層水では7月が最高であ ったが下層水では10月が最高であった.表層水における季節的変化はニコチン酸のそれと類 似している.3.ビオチンは2−50mγ/Zで変動が大きく,夏期が多く,11月から1月にかけては低い
値を示した. 4.葉酸は40-244my/Zで.前3者と異なり,7月頃から増加し始め,10月最高に達し た後急減した.柏田・金沢。橘園:天然水中の有機物に関する研究一Ⅱ 157 5.ビタミンB12は5−28mγ/jで,8月の表層水が最高含量を示したが,振れが大きく 葉 酸 の よ う な 一 定 の 傾 向 は 認 め ら れ な か っ た . 文 献 I)柏田研一・柿本大壱(1962):本誌,11(2),158-164. 2)HuTcHINsoN,G、E・andJ.K、SETLow(1946):LimnologicalstudiesinConnectIcut-VIII・ Theniacincycleinasmallinlandlake・Er0Jqgy,27,13−22. 3)HuTcmNsoN,G、E、(1943):Thiamineinlakewatersandaquatlcorganlsms.』γc九唖0c/he"Z.,2, 143, 4)柏田研一。柿本大壱(1962):日水誌,28,352-360.