博士(獣医学)佐々木隆志 学位論文題名
Studies on an immunopotentiation of peptidoglycan derived from BifidobacterzuTn therrnophiluTn
(ピフィドバクテリウムサーモフイラム由来ペプチドグリカンの免疫賦活に関する研究)
学位論文内容の要旨
ヒ ト お よ び 哺 乳 動 物 の 胎 子 期 の 免 疫 応 答 は 種 々 の 因 子 に よ っ て 抑 制 さ れ 、 さ ら に 母 体 側 で も サ プ レ ッ サ ーT細 胞 の 活 性 が 高 ま る 。 こ の よ う に 周 産 期 に は 胎 子 お よ び 母 体 双 方 が 生 理 的 に 免 疫 抑 制 状 態 と な っ て お り 、 こ れ に よ り 互 い が 異 物 と 認 識 し 免 疫 的 拒 否 に よ る 流 産 が 起 こ る の を 防 ぎ 、 在 胎 期 間を 十分 に保 とう とす る。 すな わち 、 母 子 間 に 拒 絶 反 応 が 起 こ ら な い よ う 、 む し ろ 負 の 免 疫 応 答 が 正 常 に 働 い て お り 、 生 後 も 一 定 期 間 そ の 傾 向 は 持 続 さ れ る 。
こ の よ う な 周 産 期 に お け る 負 の 免 疫 応 答 能 は 分 娩 後 あ る 時 期 に な る と 正 の そ れ に 転 換 す る が 、 こ の 転 換 因 子 と し て 、 胎 子 期 に お け る 無 菌 の 状 態 か ら 生 下 時 以 降 急 激 に 多 く の 抗 原 に 刺 激 さ れ る こ と が 考 え ら れ 、 特 に 生 後 確 立 す る 腸 内 フ ロ ー ラ が 強 く 影 響 を お よ ぼ す も の と 思 わ れ る 。 こ の こ と は 実 験 動 物 を 用 い た 試 験 に よ り 証 明 さ れ て き た 。 す な わ ち 、 各 種 の 無 菌 動 物 の 脾 臓 や 腸 間 膜 リ ン パ 節 は 正 常 な 動 物 の そ れ ら に 比 較 す る と 形 態 お よ ぴ 重 量 が 貧 弱 で り ン パ 濾 胞 の 発 達 も 悪 い が 、 こ れ に 数 種 類 の 腸 内 フ ロ ー ラ を 定 着 さ せ る と 短 期 間 に 正 常 な 大 き さ に 達 し 、 血 中 免 疫 グ ロ ブ リ ン 量 も 正 常 な 値 に な る 。
腸 内 フ ロ ー ラ 構 成 菌 の 中 に は 免 疫 応 答 能 に 強 く 働 き か け る も の が あ り 、 中 で も Lactobacillusお よ びBifidusの 菌 体 お よ ぴ 菌 体 成分 が持 つ多 彩な 生物 活性 は抗 腫瘍 作 用 と の 関 連 で 注 目 さ れ 、 様 々 な 報 告 が 見 ら れ る 。特 にBifidobacterium thermopねmlm
( 以 下 且 めe閲0p.Mu面 が 非 特 異 的 血 中 抗 体 を 上 昇 さ せ る こ と は 動 物 種 の 違 い は あ る も の の ニ ワ ト り の ヒ ナ や モ ル モ ッ ト を 用 い た 実 験 か ら 明 ら か に さ れ て い る 。 本 研 究 は 腸 内 フ ロ ー ラ で 優 位 を 示 し 、 安 定 し て い るBf鮒u菌 の う ち ブ タ 由 来B. 幽e珊0p.Mumの 細 胞 壁 構 成 成 分 ペ プ チ ド グ リ カ ン ( 以 下PG) が 、 免 疫 応 答 を 賦 活 す る か 否 か を 検 討 し た 。 す な わ ち 、 ブ タ 由 来B. 曲 ―0pM脚 のPGの 経 口 投 与 が 子 豚 の 加 齢 に 伴 っ て 起 こ る 免 疫 応 答 能 の 変 化 に ど の よ う に 作 用 す る か を 腸 管 局 所 の 免 疫
グロ プリ ン( 以下Ig)産生 細胞の 推移 で調 べ、 あわせて子豚離乳期の腸管感染症の 防圧 に効 果が 期待 されるかを検討した。また全身性の感染に対する防御効果ならび に細 胞性 免疫 の賦 活効果を検討するため、種々の免疫学的解析をマウスを用いて実 施し、以下の結果を得た。
(1)且thermopカ ロumのPGを生 下時 から5日齢 まで 、お よび3週齢 の子 豚に それぞ れ経 口投 与し 、そ れらの小腸各部粘膜固有層におけるIg保有細胞数およびりヽ腸内 大 腸 菌 数 を 調 べ 、PG非 投与 群に おけ るそ れら の成 績と 比較 した。PG投 与後 の5お よび6週 齢時 にお ける 小腸 中部お よび 回腸 粘膜 固有層のIg保有細胞数は非投与群に 比較して有意(Pく0.01)に多かった。また、PG投与および非投与群におけるIgAおよ びIgM保 有細 胞数 の比 率で みると 、前 者で はIgA保有細胞数がIgMのそれを上回った 反面 、後 者で はそ の比率が逆転していた。っまり、PGの投与はIgのクラススイッチ を早 め、 未熟 な免 疫細胞を早期に成熟させることが明らかとなった。さらに、小腸 各部 位に おけ る大 腸菌数が減少し、臨床的に下痢症が減少することが確認された。
以上 の成 績か ら、 哺乳 子豚 にお けるP(般 与に より、子豚の消化管局所の免疫応答 能が増強されることが示唆された。
(2)PG経 口 投 与 に よ る 感 染防 御能の 増強 を検 討す るた め、34日 齢のSPF‐ICRマ ウ ス に 各 濃 度 のPGを1回 経 口 投 与 し 、24時 間 後 に 子 豚 肺 由 来 大 腸 菌 を尾 静 脈 に 接 種 し 、 そ の 後7日 間 観 察 し、 生残率 を求 めた 。適 正濃 度のPG経 口投 与群 は非 投 与群 に比 較し て、 有意 に高 い生 残率 が得 られ たが 、適 正濃度 以上 のPGを投 与する と逆 に生 残率 が減 少し た。PG経 口投 与マ ウス にお ける 大腸菌 感染 防御 能の 持続時 間 を 検 討 し た と こ ろ 、PG経 口投 与 群 は1日 後 か ら7日 後 に大 腸菌 を接 種し ても そ の生 残率 は非 投与 群に 比べ 有意 に高 い結 果が 得ら れた 。大腸 菌接 種24時間 後のマ ウス 末梢 血、 肝臓 および脾臓の大腸菌数はPG経口投与群では非投与群に比較して、
末梢 血お よび 肝臓 中の 大腸 菌数 が有 意に 少な かっ た。 また、PG経 口投 与群 の脾臓 由来 単核 細胞 の幼 若化反応は非投与群のそれよりも高まることが明らかとなった。
これ らの こと からPG経 口投 与に よっ て血 中や 脾臓 、肝 臓での 大腸 菌殺 菌能 が亢進 し、結果的にマウス生残率が上昇することが示唆された。
(3)PGをSPF‐BALB/Cマ ウスに 経口 投与 した ところ、脾臓由来好中球や腹腔およ ぴ肺 胞マ クロ ファ ージなどの貪食能が活性化され、異物処理能が増強した結果が得 られ た。 また 、貪 食能 効果 発現 のPG至適 濃度 が確 認さ れ、そ れ以 上の 高濃 度PGの 投与は貪食能を抑制することも認められた。
(4)PGをSPF.C57BL/6CrSlcマウスに経口投与し、ナチュラルキラー(NK)細胞、
腹腔 内細 胞障 害性Tリ ンパ 球(CrL) およ びコ ンカナバリンA刺激リンパ球の細胞障 害 活 性 を 測 定 し 、PG非 投与 群と 比較 検討 を行 った 。PG添加 飼料を3週 間連 続給 与
し た マウ スの 脾臓 および 腸間 膜リ ンバ 節のNK細 胞はPG非 投与 対照 群の それ に比較 し て、 .細 胞障 害活 性が 有意 に高 まっ た。 しか しなが ら、PG1回経口投与ではPG非 投 与 対 照 群 の そ れ と 差 が み ら れ なか った 。PG添加飼 料を2週 間連 続給 与し たマウ ス の 腹腔 に肥 満細 胞腫細 胞を 接種 して1週 間感 作後、 腹腔 内CTLの 細胞 障害 活性を 測 定 し た 。 そ の 結 果 、PG添 加 飼 料を 給与 した マウス の腹 腔内CTL活性 は、PG非投 与 群 に比 較し 有意 に高い 値を 示し た。 また 、PG添加 飼料 連続 給与 群の コン カナバ リンA刺激リンパ球の細胞障害活性はPG非投与群に比較して、高い活性がみられた。
こ れ らの 結果 から 、PGの 経口 投与 はマ ウス の免 疫系 細胞 の細 胞障 害活 性を 高める ことが確認された。
以上から本研究において、Bifidobacterium thermop轟ロum由来PGの経口投与が局所 的 およ び全 身的 に免 疫賦 活作用を有し、若齢動物の未熟な免疫機能を早期に成熟さ せ るこ とが 確認 され た。 すなわち、新生期から哺乳期後半に至る一定の生長過程の 中 で胎 子性 の免 疫応 答が 腸内フローラによる抗原刺激を介して正常な免疫ネットワ ークシステムを確立していくものと考えられた。
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S t u d i e s o n a n i m m u n o p o t e n t i a t i o n o f p e p t i d o g l y c a n
d e r i v e d f r o m B i f i d o b a c t e r i 笹 蓬 t h e 丶 蓬 o p h i l u m
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給与したマウスの腹腔内CTL活性は、PG非投与群に比較し有意に高い値を示した。また、
PG添加飼料連続給与群のコンカナバリンA刺激リンバ球の細胞障害活性はPG非投与群に 比較して、高い活性がみられた。これらの結果から、PGの経口投与はマウスの免疫系細 胞の細胞障害活性を高めることが確認された。
以上のように申請者は、B. thennoptulum由来PGの経口投与が局所的および全身的に免 疫賦活作用を有し、若齢動物の未熟な免疫機能を早期に成熟させることを明らかにした。
これらの成果は離乳期の家畜の腸管感染症制圧に大きく貢献する。よって審査員一同は 佐々木隆志氏が博士(獣医学)の学位を受けるに十分な資格を有するものと認めた。