博 士 ( 理 学 ) 黒 河 内 政 樹
学位論文題名
Novel metods for functional proteomics and glycomics based on natrix‑assisted laser desorption/ionization time of flight (MALDI‑TOF) mass spectrometry
(MALDIーTOF質 量 分析 法 を 基礎 と する
新 し い プロ テ オミ ク ス ・グ ラ イ コミ ク ス解 析 法に関す る研究)
学位論文内容の要旨
生体内における多くの蛋白質は 糖鎖付加を受けた糖蛋白質とし て存在しており、発生・分化・
癌・感染・老化・生殖などの多 くの生命現象において、糖鎖が 極めて重要な役割を担っている ことが知られてきた。このよう な背景の下、複合糖質における 糖鎖の重要性がこれまでになく 広く認識され、機能糖鎖解析す なわちグライコミクスに関する t竺 ニ 三 : = : ニ ニ 竺 J ` JIJIVin! 豐 型 = . . J 糖 鎖 の 構 造 解 杼 ペプチドの配蒭解析研究が世界規模で急速に展開さ
ぺプチドの配列懈析 糖鎖の構造解析 糖競結台部位の同定れている。しかしながら、
、■l ‑従来法一瓣,私の解析戦略 Fig.1 糖蛋白質は性質の異なる糖鎖と ぺプチドで構成されているため、
効率よく糖ペプチドを解析する技術はいまだ確立しておらず、従来法では、主として糖蛋 白質から酵素消化により糖鎖とベプチド鎖を分けて分析する手法が取られてきた(Fig.1)。
しかし、この場合は糖鎖結合部位情報の欠落が起こるため、蛋白質のどの部位にどの糖鎖 MS/MS解 析
(a)遅 いフ ラ グ メン ト 化 ( 従来 法 )
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分 子 内 工 ネ ル ギ ー に よ る 巌 壊 分 子 内 エ ネ ル ギ ー 縫 和 中 性 分 子 の ロ ス ト ル ギ ー イ オ ン の 分 離
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(b) 早 い フ ラ グ メ ン ト 化 ¢ , 。 争 。 よ
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分 子 内 工 ネ ル ギ ー に よ る 崩 壊 イ オ ン の 分 鰹 慧 ″ ・
Fig.2
構 造 が結 合 し て いる か 同定する 事がで きなぃ。 本論文で は、糖 蛋白質の 結合部 位情報を 保 持 し たま ま の 糖 ペプ チ ドを直接 解析す る事を研 究目標と した。 その解析 の手法 として、 高 感 度 かつ 簡 便 なMS( 質量 分析)を 用いて 糖ベプチ ドから ぺプチド 配列・糖 鎖結合 部位・糖 鎖 構 造 情 報 を 得 る ブ ロ テ オ ミ ク ス ・ グ ラ イ コ ミ ク ス 解 析 法 の 開 発 を 行 な っ た 。
A‑ glycosylated fragmeru O de‑glycosylatad fragment Fig. 3
従 来 のMS/MS分 析 は 、崩 壊 エ ネル ギ ー の 制 御 を行 っ て 分析 す る 方 法が 主流 であ り 、 崩 壊す る 際 の分 子 内 エ ネル ギー の緩 和 に よ る分 子 崩 壊を 考 慮 し てい なか った
(Fig. 2a)。申請 者は分子 内エネ ルギー が 緩 和 する 時 間 (イ オ ン が 崩壊 して 分離 さ れ る 時間 ) に 着目 し 、 分 子エ ネル ギー 緩 和 が 起こ ら な い時 間 軸 の フラ グメ ント イ オ ン を 検 出 す る た め にMALDI―LIFT TOF/TOF測 定 法 を 用 い てこ の 現 象の 確 認 を 試 み た(Fig. 2b)。 最 初 に 、ほ ぼ 同 じ 崩 壊 エ ネル ギ ー を用 い た 時 の〇 結合 型糖 ペ プ チ ド のMALDI―PSDとMALDI一LIFT TOF/TOFのスベクトルを比較した(Fig3)。
分 子 内 緩 和 に 関 わ る 時間 は 、 通常PSDで はysec、TOF/TOFで はnsecオ ー ダー で あ る。フラグメントノくターンは、MALDI−PSD モ ードで は様々な もの(A,B,Y,Aー17, B―17)が 検 出 さ れ る がTOF/TOFモ ー ドは 一 定 のも の(B,Y)が検出 された (F'ig3 のA部 分)。 前者では 、分子エ ネルギ ー緩 和による過度のフラグメン卜化(B,Y→A,A―17,B−17)が起きている事を示す。後者では、
過 剰のフ ラグメン トピー クが検出 されな いので、 スペクト ルの解析がしやすい事がわかる。
そ し て 、 糖鎖 含 有 フラ グ メント に着目 するとTOF'/TOFスペクト ルの方が より顕 著に糖含 有 フ ラ グ メ ント が 多 く検 出 さ れて い る 事が 分 か った (Fig3のB部分) 。これ は、分子 エネル ギ ー 緩 和 によ る 糖 鎖結 合 の切断 を抑制 している 事を示す 。っま り、分子 エネル ギー緩和 に 着 目 し た フラ グ メ ント イ オ ンの 素 早 い分 離 と 検出 をMS/MS解析に用 いる概 念は簡便 詮フラ グ メント 解析と糖 鎖結合 ペプチド といっ た複雑 な分子の 解析に有効であり、さらに糖鎖結 合 部 位 の 同定 を 行 ぬう 上 で はPSDより もTOF/TOFの 方 が 優れ て い るこ と を 明ら か にした。
現 在 、MS/MS解析 @ 概 念( フ ラ グメ ン ト イオ ン の 検出 )で このよう なァプ ローチを 行なっ て い る 例 はな く 、 世界 初 の試み である 。この手 法を応用 する事 により従 来法で は解析で き な か っ た へテ ロ な 糖鎖 が 混在し た複雑 かつ不安 定な〇結 合型糖 ペプチド のぺプ チド配列 の みならず、糖鎖結合部位の同定も成功した。
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ま た 、 申 請 者 は こ の 概 念 を 基盤 と して 糖ペ プチ ドの 情報 を選 別し て抽 出・ 解析 でき る Matrix−Depedent一Selective−Fragmentation (MDSF)を開発する事によって、ペプチド配列情 報・ 糖 鎖結 合部 位同 定に 加え 、糖 鎖配 列情 報・ 糖鎖 立体 的情 報 ・の抽出・同定を行なえる 方法を確立した。
以 上 、 こ のMDSFに よ るMS分 析 法は 、 迅速 かつ 高感 度に 行う 事が でき る新 規な グラ イコ ・ プロ テ オミ クス 解析 法で あり 、生 命現 象に おけ る糖 鎖の 働き と 蛋白質の働きを解明する上 で大きな貢献を果たすと期待さ れる。 以上
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学 位 論 文 審 査 の 要旨 主 査 教 授 西村 紳 一 郎 副 査 教 授 河 野 敬 一 副 査 助 教 授 門 出 健 次 副査 特任助教授 出口喜三郎
学.位論文題名
Novel metods for functional proteomics and glycomics based on natrix‑assisted laser desorption/ionization time of flight (MALDI‑TOF) mass spectrometry
(MALDI
―TOF 質量分析法を基礎とする
新しいプロテオミクス・グライコミクス解析法に関する研究)
* glycosylated fragment lt 1
生体内における多くの蛋白質は糖鎖付加 を受けた糖蛋白質として存在しており、
発生・分化・癌・感染・老化・生殖など の多くの生命現象において、糖鎖が極め て重要な役割を担っていることが知られ てきた。このような背景の下、複合糖質 における糖鎖の重要性がこれまでになく 広く認識され、機能糖鎖解析すなわちグ ライコミクスjこ関する研究が世界規模で 急速に展開されている。しかしながら、
糖蛋白質は性質の異なる糖鎖とペプチド で構成されているため、効率よく糖ペプ チドを解析する技術はいまだ確立してお o de‑gIycosyIatedfragment らず、従来法では、主として糖蛋白質か ら酵素消化により糖鎖とペプチド鎖を分
けて分析する手法が取られてきた。しかし、この場合は糖鎖結合部位情報の欠落が起こるため、
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蛋 白 質 の ど の 部 位 にど の糖 鎖 構造 が結 合し て いる か同 定す る事 が でき ない 。本 論文 で は、 糖蛋 白 質 の 結 合 部 位 情 報 を保 持し た まま の糖 ペプ チ ドを 直接 解析 する 事 を研 究目 標と した 。 その 解析 の 手 法 と し て 、 高 感 度か っ簡 便 なMS(質 量分 析 )を 用い て糖 ペプ チ ドか らペ プチ ド配 列 ・糖 鎖結 合 部 位 ・ 糖 鎖 構 造 情 報 を 得 る プ ロ テ オ ミ ク ス ・ グ ラ イ コ ミ ク ス 解 析 法 の 開 発 を 行 な っ た 。 従 来 のMS/MS分 析 は 、 崩 壊 エ ネ ル ギ ー の 制 御を 行っ て分 析す る 方法 が主 流で あり 、 崩壊 する 際 の 分 子 内 エ ネ ル ギ ーの 緩和 に よる 分子 崩壊 を 考慮 して いな かっ た 。申 請者 は分 子内 エ ネル ギー が 緩 和 す る 時 間 ( イ オン が崩 壊 して 分離 され る 時間 )に 着目 し、 分 子エ ネル ギー 緩和 が 起こ らな い 時 間軸 のフ ラ グメ ント イオ ンを 検 出す るた めにMALDIーLIFT TOF/TOF測 定法 を 用い てこ の現象の確 認 を 試 み た 。 最 初 に、 ほば 同 じ崩 壊エ ネル ギ ーを 用い た時 の〇 結 合型 糖ペ プチ ドのMALDIーPSDと MALDI‑LIFT TOF/TOFの ス ペ ク ト ル を 比 較 し た ( 図1) 。 分 子 内 緩 和に 関 わる 時間 は、 通常PSDで はptsec、TOF/TOFではnsecオー ダ ーで ある 。フ ラ グメ ント パタ ーンは、MALDI―PSDモードでは様々 な もの (A,B,Y,A―17,B―17)が検 出されるがTOF/TOFモードは一定のもの(B,Y)が検出された
( 図1のA部 分 ) 。 前 者 で は 、 分 子 エ ネ ル ギ ー 緩 和 に よ る 過 度 の フ ラ グ メ ン ト 化 (B,Y→ A,A−17,B―17)が起きている事を 示す。後者では、過剰のフラグメントピークが検出されないので、
ス ペ ク ト ル の 解 析 が し や す い 事 が わ か る 。そ して 、糖 鎖 含有 フラ グメ ン トに 着目 する とTOF/TOF ス ペ ク ト ル の 方 が よ り 顕 著 に 糖 含 有 フ ラ グ メ ン ト が 多 く 検 出 さ れ て いる 事が 分か っ た( 図1のB 部 分) 。こ れ は、 分子 エネ ルギ ー 緩和 によ る糖 鎖 結合 の切 断を 抑制している事を 示す。っまり、分 子 エ ネ ル ギ ー 緩 和 に 着 目 し た フ ラ グ メ ン トイ オン の素 早 い分 離と 検出 をMS/MS解析 に 用い る概 念 は 簡 便 な フ ラ グ メ ント 解析 と 糖鎖 結合 ペプ チ ドと いっ た複 雑な 分 子の 解析 に有 効で あ り、 さら に 糖 鎖 結 合 部 位 の 同 定 を 行 な う 上 で はPSDよ り もTOF/TOFの 方 が 優 れ て いる こと を明 ら かに した 。 現 在 、MS/MS解 析 の 概 念 ( フ ラ グ メ ン ト イ オ ンの 検出 )で この よ うな アプ ロー チを 行 なっ てい る 例 は な く 、 世 界 初 の試 みで あ る。 この 手法 を 応用 する 事に より 従 来法 では 解析 でき な かっ たへ テ ロ な 糖 鎖 が 混 在 し た複 雑か つ 不安 定な 〇結 合 型糖 ペプ チド のペ プ チド 配列 のみ なら ず 、糖 鎖結 合 部位の同 定も成功した。
ま た 、 申 請 者 は こ の 概 念 を 基 盤 と し て 糖 ペ プ チ ド の 情 報 を 選 別 し て 抽 出 ・ 解 析 で き る Matrix―Depedent−Selective−Fragmentation (MDSF)を開発する 事に成功した。この解析法 により糖 ペ プ チ ド のMS測 定 か ら 、 糖 ペ プ チ ド 中 の ペ プ チ ド 配 列 情 報 に 加 え 、 従来 では 解析 が 困難 であ っ た 糖 鎖 結 合 部 位 ・ 糖 鎖 配 列 情 報 ・ 糖 鎖 立 体 的 情 報 の 抽 出 ・ 同 定 を 行 な え る 方 法 を 確 立 し た 。 さら に、 申 請者 はMechanismr一based―fluorescent affinity labelingという 糖加水分解酵素を 選 択 的 に 阻 害 ・ 標 識す る自 殺 基質 を用 いて 生 体内 から 任意 の酵 素 を吊 り上 げ、 同定 す る手 法の 開 発 も 行 な っ た 。 こ の手 法は 、 糖蛋 白質 や糖 脂 質と いっ た糖 鎖を 作 り出 す過 程の 中で 重 要な 糖関 連 酵素群の ーっである糖加水分解酵素の プロテオーム解析である。
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ここまで示したとおり 、申請者は生態内での糖鎖の機能を解明する上で重要な糖鎖白身のMS 解析のみならず糖鎖合成 に関与する蛋白質である糖加水分解酵素のMS解析という糖鎖を中心と した幅広いプロテオーム解析を確立した。 本研究において得られた知見は、生命現象を制御す る重要な糖蛋白質の機能解明・同定をする上で必要不可欠な解析法であり、ライフサイエンスの 解明・発展に大きく貢献するものである。よって著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与 される資格あるものと認 める。
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