• 検索結果がありません。

学位論文題名Study on the Formation of Amyloid Fibrils and its Application to Nanomaterials

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "学位論文題名Study on the Formation of Amyloid Fibrils and its Application to Nanomaterials"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 理 学 ) 浅 海 裕 也

     学位論文題名

Study on the Formation of Amyloid Fibrils and     its Application to Nanomaterials

(アミロイド繊維形成およびそのナノ材料への応用に関する研究)

学位論文内容の要旨

    アミロイド線維は、アミロイドーシスとして知られるアルツハイマー病やパーキンソン病等の多くの疾 患に関係する、タンパク質およびペプチドの特徴的な形態である。現在、アミロイド線維形成は医学的観 点のみならず、タンパク質科学の観点からも注目されており、多くの研究が報告されている。しかしながら、

アミロイド線維形成がアミロイドーシス以外の疾病に及ばす影響は明らかとなっていない。また、アミロイド 線 維はそ の自己組 織化能 や安定 た線維 構造、 機能化 修飾の 容易さ 等により 、機能 性自己 組織化ナノワ イ ヤーの 構築に有 用であ る。し かし、 アミロイド線維のナノ材料への応用において重要な線維形成の制 御 は非常 に困難で あった。本論文では、ヒト肺がん由来変異型p53ペプチドのアミロイド線維形成メカニ ズ ムの解 明と、そ の知見 を基盤 として アミロイド線維形成を効果的に制御する新規方法の開発研究を実 施した。

1. 生 理 的 条 件 下 に お け る が ん 抑 制 タ ン パ ク 質 p53‑G334V変 異 体 ペ プ チ ド の 凝 集 機 構     が ん抑制 タンパ ク質p53は 遺伝毒 性スト レスに 応答し て細胞 周期を調 節する 転写因 子であり、p53 遺 伝子の 変異はヒ ト悪性 腫瘍中 最も高 頻度に 見られ ること から、p53の変異とがん化の関係が注目され て いる。 これまで に、p53四量体 形成ドメ インのターン部分に位置するGly334のVal変異がヒト肺がんに お いて報 告されて おり、 本論文 では、 この変 異を含 む四量 体形成 ドメインベプチド(G334V)の構造の安 定 性 を 詳細 に 解析 した。 構造変 化測定 および アミロイ ド線維 形成観 察の結 果、G334Vは低温条 件下で は 天 然 型p53四 量 体 形成 ド メ イ ンペ プ チ ド(WT)同 様の 四 量 体 構造 を形成 するが 、生理 的pH、温 度条 件 下でB優 位構造 の凝集前駆体へと構造変化し、アミロイド様線維を形成することを見出した。また分子 モデリングにより、アミノ酸置換が側鎖の立体障害によるターン構造の不安定化を引き起こすことが示唆 さ れた。 このター ン構造 の不安 定化がp優位構 造の凝 集前駆 体へと 構造変化にっながると考えられた。

さ ら に 興 味 深 い こ と に 、G334VはWTと へ テ ロ 四 量 体 を 形 成 しWTはG334Vと 共 に 凝 集 す る 一 方 、 G334VへのWTの 混合 に よ っ てG334Vの 凝集形 成が抑 制され ること を見出 した。 これは 、ヘテ ロ四量体 形 成 に よる 四 量体 構造の 安定化 による ことが 示唆され た。こ のよう に、p53四 量体形 成ドメ イン中 の G334V変異 が 生 理 的pH、 温 度条 件 下 に おいてp優位構 造の凝 集前駆体 を介し たアミ ロイド 線維形 成を 引 き起こ す事を明 らかに した。 さらに 、WTG334Vの へテロ 四量体 形成がアミロイド線維形成に大きく影 響する事から、アミロイド形成においてアミノ酸置換とペプチドの混合が大きく影響し得ることが示唆され た。

    ―1170ー

(2)

2. Apベプチド末 端へのアミノ酸付加による アミロイ黼赫隹形成の制御

    ナノテクノロ ジー、ナノ材料の開発には 、自己組織化に基づくボトムアップ式の原子・分子の積み重 ねが重要であると 考えられている。原子や分 子の配列をナノスケールで自 在に制御する技術の開発や、

望み の 性質 を持 つ材 料 、望 みの 機能 を発 現するデバイスを実現するた めには、ナノサイズの分子 の自 己組 織 化の 制御 が必 須 であ る。 特に 、ア ミロイド線維はその自己組織 化能や安定な線維構造、機 能化 修飾の容易さ等に より、機能性自己組織化ナ ノワイヤーの構築に有用であると期待されている。しかしな がら、アミロイド 線維をナノ材料としての応 用するためには、線維の長さ、幅、形などの線維構造の制御 が不可欠であり、構造を自在に制御できる手法が必須である。本論文では、アミロイドペプチドとしてアミ ロイド‑pペプチド(Ap(10‑35))を用い、その末 端にそれぞれ性質の異なる側鎖を有するアミノ酸を付加す ることでアミロイド線維形成を変化させ、さらにそれらを組み合わせることで線維形成の制御を行った。非 常に 興 味深 いこ とに 、3残基 のり シ ンをN末 端に 付加 した ベプ チ ド(K3‑Ap)は20 pm以 上の極めて 長い 線維を形成した。これは、これまでに報告されている中で最も長いアミロイド線維であり、ナノ材料ーの応 用に お いて 極め て有用である。一方、1残 基のりシンを付加したベプチ ドは短い線維のみが観察さ れ、

付加するアミノ酸の数が異なると形成する線維の構造が異なることが示唆された。また、リシンと同じく正 電荷 を 側鎖 に持 つヒ ス チジ ン、 アル ギニ ンを3残基N末端に付加したベ プチドも同様に長い線維(20 ym 以上)を形成し、N末端への塩基性アミノ酸の付加が長い線維の形成に有効であることを見出した。一方、

酸性アミノ酸であ るグルタミン酸の付加ペプ チド(E3‑Ap)は非修飾のAp(10‑35)に比べ線維形成が速く、

アミノ酸付加は線 維構造のみではなく線維形 成速度にも影響することが示 された。他の各種アミノ酸の 付加ペプチドにっ いても観察を行った結果、 付加したアミノ酸がアミロイ黼泉維の構造および形成速度に 大きく影響するこ とが明らかとなり、ペプチ ド末端へのアミノ酸付加が線維形成の制御に有用である事が 示唆された。さら に、異なる付加ペプチドを 混合することにより線維構造、線維形成速度のさらなる制御 が可能になること を見出した。これらの手法 を用いて、導電性ナノワイヤーへの応用を目指し、構造を制 御し た 線維 上へ の金 ナ ノ粒 子(AuNP)の結 合 を行 った 。Au‑S結 合 を介 して アミ ロ イド 線維上にAuNPを 固定 す るた め、aリ ポ酸 をK3‑ApのN末端 に付 加し た ベプ チド(Lip‑K3 ‑Ap)を 用い た。Lip‑K3‑Ap単独 では短い線維のみ 形成したが、他のアミノ酸 付加ペプチドと混合することで、導線として有用な長い線維 を形成した。さら に金コロイド溶液とインキ ュベーションすることで線維上ヘAuNPを結合させ整列するこ とに成功した。

    アミロイド線維 形成のメカニズムの解明と 線維形成の制御は、多くの重篤な疾患との関連のみなら ずアミロイド線維の ナノ材料への応用においても重要である。本論文では、ヒト肺がんにおいて報告され たp53のG334V変異を 含むペプチドのアミロイド形成を見出し、そのアミロイド形成メカニズムを示した。

また、アミロイH形成においてアミノ酸置換とペプチドの混合が大きく影響し得ることが示唆された。この結 果は、いわゆるアミロイドーシス以外の疾病にもアミロイド線維形成によるタンパク質機能の不全が関与し ていることを示唆す るものであり、p53のG334V変異体をターゲットとした抗がん剤の開発において重要 な知見となると期待される。さらに、この知見を踏まえ、各種アミノ酸の付加によルアミロイドペプチド末端 の電荷等の物理的性 質を変え、さらに数種のペプチドを混合することにより、アミロイド線維の構造およ ぴ形成速度を制御し 得ることが示唆された。さらに、本手法により構造を制御したアミロイド線維上への 機能 性 分子 の結 合が 可能となり、自己組織化 に基づく機能性ナノワイヤー の構築に非常に有用である

‑ 1171

(3)

事が 示唆された。この手法を展開することで、構造を制御したアミロイド線維の空間的に制御された新規 ナノ 材料への応用が期待される 。

1172

(4)

学位論文審査の要旨 主 査    教授    坂口和 靖 副 査    教授    魚崎浩 平 副査   教授    石森浩一郎 副査   准教授   今川敏明

     学位論文題名

Study on the Formation of Amyloid Fibrils and     its Application to Nanomaterials

(アミロイド繊維形成およびそのナノ材料への応用に関する研究)

  アミロイド線維は、アミロイドーシスとして知られるアルツハイマー病やパーキンソン病等の 多くの疾患に関係する、タンパク質およぴペプチドの特徴的な形態である。現在、アミロイド 線維形成はタンパク質科学の観点からも注目され多くの研究が報告されており、アミロイド ーシス非関連タンパク質のin vitroでのアミロイド形成が多数報告されている。しかし、アミロ イド線維形成がアミロイドーシス以外の疾病に及ばす影響は明らかとなっていない。また、ア ミロイド線維は自己組織化に基づく機能性ナノワイヤーの構築に有用であると期待されてい るが、ナノ材料への応用において重要な線維形成の制御は非常に困難であった。そこで申 請者は、アミロイドーシス非関連タンパク質であるp53由来変異型ペプチドのアミロイド線維 形成メカニズムの解明を行い、そこで得た知見を基盤としてアミロイド線維形成を効果的に 制御する新規方法の開発研究を実施した。

  本論文は四章で構成されている。

  第1章では、アミロイド線維形成と疾患との関連、アミロイド線維の構造、線維形成のメカ ニズム、アミロイド線維の材料科学への応用等に関して現在までに報告された研究につい て 総 括 し て い る 。 さ ら に 、 本 研 究 の 目 的 を 示 し そ の 重 要 性 を 述 べ て い る 。   第2章では、がん抑制タンパク質p53由来変異型ペプチドのアミロイド線維形成メカニズ ムの解明を行っている。初めに、ヒト肺がんにおいて報告されたp53四量体形成ドメイン中の 変 異に注 目し、こ の変異 を含むペプチド(G334V)の構造安定性を詳細に解析している。構 造 変 化 測 定お よ びア ミロイド 線維形 成観察の 結果、G334Vは低 温条件 下では天 然型p53 四 量体形 成ドメイ ンペプ チド(WT)同様 の四量 体構造を形成するが、生理的pH、温度条件 下でロ優位構造の凝集前駆体ーと構造変化し、アミロイド様線維を形成することを見出し ている。また分子モデリングにより、アミノ酸置換が側鎖の立体障害によるターン構造の不安 定 化を引 き起こす ことが 示唆され 、この ターン構 造の不安定化がロ優位構造の凝集前駆

‑ 1173

(5)

体 へと構造 変化に っながる凝集メカニズムを明らかにしている。さらに興味深いことに、

G334Vが 野 生型 ペ プ チド(WT)と へ テ ロオ リ ゴマーを 形成し 、WTがG334Vと共に 凝集する ことを見出している。本研究で得られた知見は、p53のG334V変具体をターゲットとした抗が ん 剤の開発 への展 開が期待される。また、単独ではアミロイド形成能を有していないWTが G334V存在下において凝集する事から、ペプチドの混合がアミロイド形成に大きく影響する こ とに着目 し、ア ミロイド 線維形 成の新規 制御法 の開発へ の展開に ついて 述べている。

  第3章では、アミロイド線維形成の新規制御手法の開発を行っている。ナノテクノロジー、

ナ ノ材料の 開発に は、自己組織化に基づくポトムアップ式の原子・分子の積み重ねが重要 で あると考 えられ ており、原子や分子の配列をナノスケールで自在に制御する技術の開発 や、望みの性質を持つ材料、望みの機能を発現するデバイスを実現するためには、ナノサイ ズ の分子の 自己組 織化の制御が必須である。特に、アミロイド線維はその自己組織化能や 安 定な線維 構造、 機能化修飾の容易さ等により、機能性自己組織化ナノワイヤーへの応用 が期待されている。しかしながら、アミロイド線維をナノワイヤーとするためには、線維の長さ、

幅、形などの線維構造の制御が不可欠であり、構造を自在に制御できる手法が必須である。

本論文では、アミロイドベプチドとしてアミロイド‑B由来のAB(10‑35)を用い、その末端にそ れぞれ性質の異なる側鎖を有するアミノ酸を付加することでアミロイド線維形成を変化させ、

さらにそれらを組み合わせることで線維形成の制御を行っている。非常に興味深いことに、3 残 基 の りシ ン をN末端 に付加し たペプチ ド(K3‑A口)が20 Um以上 の極めて 長い線 維を形 成する事を見出している。これは、これまでに報告されている中で最も長いアミロイド線維で あり、ナノ材料への応用において極めて有用と期待される。一方、グルタミン酸付加ペプチド は非修飾のAロ(10‑35)に比ベ線維形成が速く、アミノ酸付加が線維構造のみではなく線維 形成速度にも影響している事を示唆している。他の各種アミノ酸の付加ペプチドについても 観察を行った結果、付加したアミノ酸がアミロイド線維の構造およぴ形成速度に大きく影響 することを示し、ペプチド末端へのアミノ酸付加が線維形成の制御に有用である事を明らか にした。さらに、異なる付加ペプチドを混合することにより線維構造、線維形成速度を効果 的に制御可能であることを見出している。これらの手法を用いて、導電性ナノワイヤーへの 応 用を目指 し、構 造を制御 した線 維上ーの 金ナノ 粒子(AuNP)の結合を行っている。本研 究 では、Au‑S結合を介 してア ミロイド 線維上にAuNPを固定 するた め、&リ ポ酸をK3‑Aロ のN末端 に付加 したペプ チド(Lip‑K3‑Aロ)を 用いて いる。Lip‑K3‑Aロ単独では短い線維 しか形成しなぃのに対し、他のアミノ酸付加ペプチドと混合することで、導線として有用な長 い線維を形成している。さらに金コロイド溶液とインキュベーションすることで線維上へAuNP を結合させ整列することに成功している。これをさらに展開することで、導電性ナノワイヤー への応用が期待される。

  第4章 で は 、 本 研 究 で 得 ら れ た 結 果 の 総 括 と、 今 後 の 展開 に つ いて 述 べ てい る 。

  本論文で行ったアミロイド線維形成のメカニズムの解明と線維形成の制御は、アミロイド 線維形成と多くの重篤な疾患との関連や、アミロイド線維自己組織化に基づく機能性ナノワ イ ヤーへの応用において重要な知見であり、新規抗がん剤等の創薬やボトムアップ式のナ ノテクノロジーの発展ヘ貢献するところ大なるものがある。関連原著論文は2編あり、英文で 国 際誌に掲載されている。よって審査員一同は、申請者が北海道大学博士(理学)の学位 を授与される資格あるものと判定した。

    ‑ 1174―

参照

関連したドキュメント

1.はじめに

氏名 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目

添付)。これらの成果より、ケモカインを介した炎症・免疫細胞の制御は腎線維

 この論文の構成は次のようになっている。第2章では銅酸化物超伝導体に対する今までの研

氏名 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目

氏名 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目

瓦礫類の線量評価は,次に示す条件で MCNP コードにより評価する。 なお,保管エリアが満杯となった際には,実際の線源形状に近い形で

影響はほとんど見られず、B線で約3