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電荷密度波相の臨界圧力近傍における

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 安 塚 周 磨

学 位 論 文 題 名

電荷密度波相の臨界圧力近傍における     NbSe3 の電子輸送現象

学位論文内容の要旨

  近 年、 低 次元 電子 系に おけ る基 底状 態に 関心が寄せられている。そ の理由は、量子 ホール効果や電荷・スピンのスト ライプ相など新規量子現象が相次いで発見され、その 展開 が重 要 視さ れているためである。一次 元電子系の基底状態は、電荷密度波(CDW)、 スピ ン密 度 波(SDW)およ び超 伝導 であ る ニと が、g‑ologyによって示さ れてしヽるニれ らの 基底 状 態間 の移り変わりは、系の相互 作用定数(g)の変化による量 子相転移として 捉 え ら れ て い る。 実際 に 多く の擬 一次 元導 体に おい て、CDW、SDW、超 伝導 など が 観 測 さ れ 、CDW(SDW)一超 伝 導の 相転 移が 圧カ や磁 場の 変化 によ って 生じ るこ とが 知 ら れて いる 。 しか しながら、これらの現象は 、g‑ologyよりも、むしろ平 均場理論(フェ ルミ面のネスティング効果)に基 づぃて説明され、圧カや磁場は電子系の相互作用定数 を 制 御 す る よ り 、 次 元 性 を 制 御 す る 変 数 と し て 理 解 さ れ て い る 。   圧 カは 電 子系 の一 次元 性を 弱め 、磁 場は 一次元性を強める効果を持 つ。実際、圧カ に よ り 消 失 し たSDW相 が 磁 場 に よ り 誘 起 さ れ て い る ( 磁 場 誘 起SDW)。 一方 、CDW系 に お い て は 、 圧 カ に よ り 消 失 し たCDWが 磁 場 に よ っ て 誘 起 さ れ る 磁 場 誘 起CDW相 は、 理論 的 予測 はさ れて いる もの の、 実験 的確 証は 得ら れて いな い 。CDW相が消失す る臨 界圧 カ にお いて 、CDWカi磁場 によ って 誘起されるか、という基本 的な問題が残さ れている。

  臨 界圧 カ にお いては、CDW・超伝導の相転移は低温で実現するため、 ぷ―ologyカt示 すような量子ゆらぎによる量子相 転移が期待される。CDWカi対角秩序(粒子性)、超伝 導が非対角秩序(波動性)である ことから、圧カが電子系の次元性だけでなく、粒子性 と 波 動 性 を 制 御 し て い る 可 能 性 も あ る 。 さ ら に 臨 界 圧 力 近 傍 のCDW状 態は 、CDW転 移 温 度 は 低 く 、CDWの 有 効 質 量 は 軽 い こ と か ら 、CDW特 有 の 並 進 運 動 にお いて も 量 子 効 果 が 期 待 さ れ る 。 ま た 多 数 の ノ ー マ ルキ ャリ ア が存 在す るた め、 それ らとCDW との間の散乱や遮蔽効果も重要と 考えられる。従って、臨界圧力近傍は、平均場理言侖 で説 明さ れ る現 象以 外に 、量 子ゆ らぎ を始 めとする量子効果に強く関 連した現象が期 待され、非常に興味深い。

  そ こで 本 研究 では 、CDW相 と超 伝導 相 が競 合す る臨 界圧 カに おけ る電 子状態、およ

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び磁場効果を実験的研究から調 べるニとを目的とした。実験は、代表的な擬― 次元導 体NbSe3の 低 温CDW相 の 臨 界 圧 カ に 注 目 し 、 臨 界 圧 力 近 傍 の 電 気 抵 抗 お よ び磁 気抵 抗の温度. 磁場依存性の測定 を行った。

  本論文の内容は以下の通りで ある。

  第1章 で は 、 擬 一 次 元 導 体 の 研 究 の 背 景 に つ い て 述 べ た 。 特 にCDW相 と 超伝 導相 の競 合 問題 の解 釈と して 、平 均場 近似 に基 づくYamaiiモデルと一次元系の弱結合理 論 に基づくg−ologyとの本質的な 違いを指摘し、本研究の位置付けと目的を述べた。また、

実 験 と し て 擬 一 次 元導 体NbSeユ にお ける 低温CDW相 の臨 界圧 力近 傍を 調べ るこ と カi 適切である理由を述べた。

  第2章で は、 まず ー次元電 子系に関する基本事項について、朝永‐ラッティンジャ ー 液体、呂―ology、Yamaji理言侖から得られる知見を述べた。これらの基礎事項に基いて、

磁 場 誘 起CDWの 可 能 性 を 検 討 し た 。 更 に 、 臨 界 圧 カ で のCDW相 と 超 伝 導 相 〃) 競合 問 題 に つ い て 、g−010鑒yの 観 点 か ら 量 子 相 転 移 の 可 能 性 を 指 摘 し た 。   第3章で は、 これ まで に明 らか に され てき たNbSe・ の物 性を 圧力 効果 と磁場効果 を 中心 に まと めた 。特 に、NbSe、の 低温CDW相 で出 現す る特 有の 異常 磁気 抵抗につい て 詳し く 述ベ 、異 常磁 気抵抗び、)観測が臨界圧力近傍のCDW相の有無を検証する上で 、 有カな手段となるニとを指摘し た。

  第4章で は、 実験 方法 につ いて 述 べた 。特 に低 温で の幾 っか の高 圧発 生法と圧力 較 正法 に つい て、 超伝 導マ グネ ット を用 いた 強磁 場発生、および高圧と強磁場を同時 に 実現させる多重極限環境技術に ついて述べた。

  第5章で は、 実験 結果 と考 察に つ いて 述べ た。 電気 抵抗 の温 度依 存性 、磁気抵抗 の 温度 依 存性 、お よび 磁場 依存 性の 結果 を示 し、 データの解析を行った。特に磁気抵 抗 をKohlerの 規 則 の 観 点 か ら 解 析 を 行 い 、CDW相の 有 無の 検証 、CDWギ ャッ フrの 温度 依存性に′)し丶て詳細に説明Lた。解析の結果、本実験に おし丶て磁場誘起CDW相は出 現し な いニ とを 明ら かに した 、ま た、 磁気 抵抗 の振る舞いから、従来の臨界圧力以 上 に お い て も 、CDW相 が 存 在 し て い る ニ と を 示 し た 。 そ のCDW状 態 は 、 不 純 物等 によ ルピン止めされた状況とは異な り、微小電場でスライディング可能なCarIson‐Goldman モー ド が実 現し てい る可 能性 を示 した 。こ のこ とは 、CDWの運 動状 態に おける量子 効 果やノーマルキャリアによる遮 蔽効果が重要な役割を演じていることを示唆している。

  第6章では、本研究の結諭を総括した。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

電荷密度波相の臨界圧力近傍における     NbSe3 の電子輸送現象

  近年、低次元電子系における基底状態に 関心が寄せられている。それは、量子ホール 効果やスピン・電荷のストライプ相など新 規量子現象が相次いで発見され、その展開が 重要視されているためである。一次元電子系の基底状態は、g‑ologyによれば、電荷密度 波(CDW)、スピ ン密度波(SDW)および超伝導 であることが示されている。これらの基底状 態問の移り変わりは、系の相互作用定数(みの変化による量子相転移として捉えられてい る。実際に多くの擬一次元導体において、C,DW、SDW、超伝導などが観測され、(:DW (SDW) 一超伝導の相転移が圧カや磁場によって生 じることが知られている。しかしながら、こ れらの現象は、g‑ologyよりも、むしろ平均場理論に基づぃて説明され、圧丿Jや磁場は電 子系 の相 互作 用定 数を 制御 するより、次元性を制御する 変数として理解されている。

  圧カは電子系の一次元性を弱め、磁場は 一次元性を強める効果を持つ。尖際、圧カに より消失したSDW相が磁場により誘起されている(磁場誘起SDW)。一方、CI)W系において は、圧カにより消失したCDWが磁場によって誘起される磁 場誘起C,DW相は、理論的予測 はされているものの、実験的確証は得られていない。CDW相が消失する臨界圧カにおいて、

CDWが 磁 場 に よ っ て 誘 起 さ れ る か 、 と い う 基 本 的 な 問 題 が 残 さ れ て い る 。   臨界圧カにおいては、CDWー超伝導の相転移は低温で実現するため、量子ゆらぎによる 量子相転移が期待される。CDWが対角秩序(粒子性)、超伝導が非対角秩序(波動性)である ことから、圧カが電子系の次元性だけでな く、粒子性と波動性を制御している可能性も ある。さらに臨界圧力近傍のC,DW状態は、CDW転移温度は低く、CDWの有効質量は軽いこ とから、CDW特 有の並進運動においても量子効果が期待される。また多数のノーマルキャ リアが存在するため、それらとCDWとの問の散乱や遮蔽効果も重三要と考えられる ,従つ て、臨界圧力近傍は、平均場理論で説明さ れる現象以外に、量子ゆらぎを始めとする量 子効果に強く関連した現象が期待され、非常に興味深い。

  そこで本研究では、cDW相と超伝導相が競合する臨界圧カにおける電子状態を電子輸送 現象の実験的研究から明らか にすることを目的としたものである。本論文は全6章から なり、その主要な成果は以下のように要約される。

  第1章で は、 擬一 次元 導体 の研究の背景にっいて述べた。特にCDW棚と趨伝導棚の競

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義 司

恒 啓

山 中

中 田

授 授

教 教

査 査

主 副

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合問題の解釈として、平均場近似に基づ くYama.jiモデルと一次元系の弱結合理論に基づ くg‑ologyとの本質的な違いを指 摘し、本研究の位置付けと目的を述べた。また、実験 として擬一次元導体NbSe3における低温CDW相の臨界圧力近傍を調べることが適切である 理由を述べた。

  第2章で は、CDWと『ologyに関 する 基礎にっいて述べた。 更に、Yama.ji理論から得 られる知見を述べ、磁場誘起CDWの可能性を検討した。

  第3章では 、これまでに明らかにされてきたNbSe3の物性を圧力効果と磁場効果を中心 にまとめた。特に、NbSeヨの低温C,DW相で出現する特有の異常磁気抵抗にっいて詳しく述 べ、 異常 磁気 抵抗の観測が臨界圧力近傍のCDW相の有無を検証する上で、有力撥手段と なることを指摘した。

  第4章で は、実験方法にっいて 述べた。特に低温での高圧発生法と圧力較正法にっい て、超伝導マグネットを用いた強磁場発 生、および高圧と強磁場を同時に実現させる多 重極限環境技術にっいて述べた。

  第5章で は、実験結果と考察に っいて述べた。電気抵抗の温度依存性、磁気抵抗の温 度依存性、および磁場依存性の結果を示し、データの解析を行った。特に磁気抵抗をKohler の規則の観点から解析を行い、CDW相の有無の検証、CDWギャップの温度依存性にっいて 詳細に説明した。解析の結果、本実験に おいて磁場誘起(:DW相は出現しないことを明ら かにした。また、磁気抵抗の振る舞いから、従来の臨界圧力以上においても、(:DW相が存 在し てい るこ とを示した。そのCDW状態は、不純物等によルピン止めされた状況とは異 なり、微小電場でスライディング可能なCarlson−Goldmanモードが実現している可能性 を示した。このことは、CDWの運動状態において量子効果とノーマルキャリアによる遮蔽 効果が重要な役割を演じていることを示唆している。

  最後に第6章で本研究から得られた知見を概観し、本研究の持つ意味と彳殳割つ丿いて 総括した。

  これを要するに著者は、磁気抵抗の測 定から臨界圧力近傍において電荷密度波状態の 存在を明らかにするとともに、その運動 状態にはCarlsonーGoldmanモードが実現してい る可能性を提唱し、量子現象に新知見を 得たものであり、応用物理学および量子物理工 学の進展に貢献するところ大なるものがある。

  よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるヰ、〔7)と認める。

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