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平成 29 年 5 月 第 761 号 平成 28 年度次世代宇宙プロジェクト推進委員会報告 (HTS 衛星地球局及び携帯端末に関する調査報告書 ) 次世代宇宙プロジェクト推進委員会では 宇宙利用の拡大 発展と我が国の宇宙産業の国際競争力強化を目的として 平成 15 年から世界の宇宙利用計画や宇宙開

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平成29年5月  第761号 1. はじめに 近年、衛星コンステレーションの計画が多 く発表され、従来よりも情報通信量が大きい HTSが多数打上げられている。これらの人工 衛星の軌道がGEO(静止軌道: Geostationary Earth Orbit)やMEO(中軌道: Medium Earth Orbit)、LEOのいずれであったとしても、地 上との間にデータの送受信が発生する。ス マートフォンや各種機器の性能向上が顕著で ある事から、個人で扱うデータ量が月に数ギ ガバイトを超えることも珍しくない。またセ ンサー単体の性能が向上したことにより、送 信するデータ量が爆発的に増加している状況 にある。

平成28年度次世代宇宙プロジェクト推進委員会報告

(HTS衛星地球局及び携帯端末に関する調査報告書)

次世代宇宙プロジェクト推進委員会では、宇宙利用の拡大・発展と我が国の宇宙産業 の国際競争力強化を目的として、平成15年から世界の宇宙利用計画や宇宙開発動向など の調査および我が国が目指すべき次世代宇宙プロジェクトについての検討を行ってきた。 古くは「成層圏飛行船」「再使用型飛行システム」「宇宙ロボット」「宇宙太陽光発電」 であり、最近では「次世代商用衛星通信サービス」「全電化推進衛星」「衛星コンステレー ション」などである。 平成28年度の研究テーマとしては「HTS*1衛星地球局及び携帯端末*2」を取り上げ、 この分野におけるビジネス及び技術動向等を検討することとした。近年、通信の分野で O3b社やOneWeb社に代表されるLEO (低軌道:Low Earth Orbit)衛星コンステレーショ ン*3による事業が本格化して、HTSの需要が高まり、打上げ機数も増えた。これらの新

たなシステムや衛星を活用するためには対応する地球局の整備や携帯端末が重要と考え、 これをテーマとして委員会を開催してきた。今般この検討結果をとりまとめたので、そ の概要を以下に述べる。

注;*1 HTS(High Throughput Satellite)とは、データの送受信に従来用いられていたC帯やKu帯ではなく、 主にKa帯を使用する大容量通信衛星のこと。静止通信衛星では100GBpsの衛星が打上げられて おり、1TBpsの衛星も計画されている。

  *2 本稿の「携帯端末」は「移動衛星通信システム地球局及び端末」を意味する。

  *3 衛星コンステレーションとは、多数の衛星を打上げ、一つのシステムとして運用を行う方法。 O3b社やOneWeb社は衛星を低軌道で運用する。

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工業会活動 このような変化に対応するため、放送・通 信、ブロードバンドネットワークは大容量通 信が可能なKa帯に対応した機器を導入する ことでHTSを活用する動きもあり、高速通信、 低遅延、高信頼性を目指す5G(第5世代移動 通信システム)の検討に際しては、その一部 として人工衛星を活用する検討も進められて いる。 本委員会では、世界各国で現在使用されて いる衛星地球局及び携帯端末の現状、市場、 技術動向等を調査し、今後の発展に必要な技 術や地上の放送・通信、ブロードバンドネット ワークとの将来的な棲み分けや統合について 分野別に整理し、さらにユーザからの要望等 について討議を重ね、検討結果を報告書とし てまとめた。 2. 衛星地球局に関する国内外の動向 衛星地球局の定義と一般的な構成について 整理し、さらに海外と国内の動向調査を行っ た。衛星地球局はゲートウェイ局、ハブ局、 NOC(Network Operation Center)、VSAT(Very Small Aperture Terminal)ユーザ局等を調査の 対象とした。海外の動向調査は「衛星地球局 の運用動向および主な運用業者の概要」「衛 星地球局設備市場と製造業者の動向」「衛星 地球局の機器・設備に使用されている技術の 概要と動向」「HTS向け衛星地球局に対する 企業の動向」「光衛星通信に関連する地上ネッ トワーク構想の検討例」を対象とした。 表1 WTAが発表したTop Teleport Operators of 2016(左:Global Top 20、右:Fast 20)

参考:https://worldteleport.site-ym.com/?TopOps_2016_Global 方法。O3b 社や OneWeb 社は衛星を低軌道で運用する。

1.衛星地球局に関する国内外の動向

衛星地球局の定義と一般的な構成について整理し、さらに海外と国内の動向調査を行った。衛 星地球局はゲートウェイ局、ハブ局、NOC(Network Operation Center)、VSAT (Very Small Aperture Terminal) ユーザ局等を調査の対象とした。海外の動向調査は「衛星地球局の運用動 向および主な運用業者の概要」「衛星地球局設備市場と製造業者の動向」「衛星地球局の機器・ 設備に使用されている技術の概要と動向」「HTS 向け衛星地球局に対する企業の動向」「光衛星 通信に関連する地上ネットワーク構想の検討例」を対象とした。 「衛星地球局の運用動向および主な運用業者の概要」では、衛星地球局に関する近年の運用 動向と主要な運用業者について企業概要やビジネス戦略等の調査を行った。近年の運用動向と しては、総合メディア・サービスの大手企業が、世界の主要都市にテレポートを多数所有・運用し、 全世界的サービスを提供するケースが増えてきている。また衛星サービス・プロバイダはテレポー ト運用業者から必要な設備を借り、自社名でネットワーク運用を行う VNO(Virtual Network Operator)が増加する傾向が見られる。主要な衛星地球局運用業者として、衛星を所有・運用して いる Intelsat 社、SES 社、Eutelsat 社と衛星を所有・運用していない Harris CapRock 社、GlobeCast 社、EMC 社を対象に事業動向を調査した。

表 1: WTA が発表した Top Teleport Operators of 2016 (左:Global Top 20、右:Fast 20)

参考:https://worldteleport.site-ym.com/?TopOps_2016_Global Th e Global Top Twe n ty

順位 事業者名 国名

1 Intelsat S.A. Luxembourg

2 SES Luxembourg 3 Eutelsat France 4 EchoStar Satellite Services USA 5 Telesat Canada 6 GEE/EMC USA

7 Harris CapRock USA 8 Telespazio S.p.A. Italy 9 Sing Tel Satellite Singapore 10 Thaicom Public Company

Ltd Thailand

11 Encompass Digital Media USA

12 Hispasat Spain

13 Arqiva Broadcast &

Media UK 14 Optus Australia 15 AsiaSat China 16 SpeedCast China 17 Globecomm USA 18 MEASAT Malaysia

19 Telenor Satellite Norway 20 Telstra Corporation Australia

※網掛けは衛星を運用していない企業(Independent)

Th e " Fast Twe n ty”  

順位 事業者名 国名 成長率 1 GEE/EMC (Emerging Markets Communications) USA 48% 2 SpeedCast China 38% 3 Global Data Systems USA 29% 4 Belgacom Int'l Carrier

Services (BICS) Belgium 23% 5 Gazprom Space Systems Russia 21% 6 Satellite MediaportServices UK 15% 7 STN Slovenia 14% 8 MEASAT Malaysia 13% 9 PlanetCast Media

Services India 12% 10 Milano Teleport S.p.A. Italy 11% 11 Media Broadcast Germany 10% 12 Hispasat Spain 9% 13 Santander Teleport Spain 6%

14 du UAE 6%

15 Thaicom Public Company

Ltd Thailand 5% 16 SES Luxembourg 5% 17 Telenor Satellite Norway 5% 18 Onlime Germany 4% 19 Eutelsat France 4% 20 Telstra Corporation Australia 3% ※網掛けは衛星を運用していない企業(Independent)

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平成29年5月  第761号 「衛星地球局の運用動向および主な運用業 者の概要」では、衛星地球局に関する近年の 運用動向と主要な運用業者について企業概要 やビジネス戦略等の調査を行った。近年の運 用動向としては、総合メディア・サービスの 大手企業が、世界の主要都市にテレポートを 多数所有・運用し、全世界的サービスを提供 するケースが増えてきている。また衛星サー ビス・プロバイダはテレポート運用業者から 必要な設備を借り、自社名でネットワーク運 用を行うVNO(Virtual Network Operator)が 増加する傾向が見られる。主要な衛星地球局 運用業者として、衛星を所有・運用している Intelsat社、SES社、Eutelsat社と衛星を所有・ 運用していないHarris CapRock社、GlobeCast 社、EMC社を対象に事業動向を調査した。 「衛星地球局設備市場と製造業者の動向」 では、地球局ネットワークを構成する設備等 について、その市場規模の現状と将来を調査 すると共に、設備を製造している企業の概 要、代表的な製品、市場シェア等の調査を行っ た。世界の宇宙産業全体に占める地上機器分 野の割合は、衛星サービス分野に続いて高い (2015年度で28%、589億ドル)。設備の主要 販 売 企 業 は イ ス ラ エ ル の Gilat Satellite Networks 社、米 国 の Harris CapRock 社、 Hughes Network Systems 社、Viasat 社、VT iDirect社であり、これら企業の概要と事業戦 略、代表的製品例等を調査した。 「衛星地球局の機器・設備に使用されてい る技術の概要と動向」では、衛星地球局の製 品と設備に使用されている技術の概要及び動 向調査を行った。具体的にはアンテナ、BUC (Block Up Converter)、HPA(High Performance

Amplifire)、VSAT、その他の運用技術に関す るもの等について近年の傾向と技術開発例等 を示した。 「HTS向け衛星地球局に対する企業等の動 向」では、HTS衛星およびKa帯衛星に対して、 主 要 企 業 が ど の よ う な 取 組 み や 戦 略 等 を 図1 HTSサービスのバリューチェーンとサービス形態 出典:iDirect H.P.より 「衛星地球局設備市場と製造業者の動向」では、地球局ネットワークを構成する設備等につい て、その市場規模の現状と将来を調査すると共に、設備を製造している企業の概要、代表的な製 品、市場シェア等の調査を行った。世界の宇宙産業全体に占める地上機器分野の割合は、衛星 サービス分野に続いて高い(2015 年度で 28%、589 億ドル)。設備の主要販売企業はイスラエルの Gilat Satellite Networks 社、米国の Harris CapRock 社、Hughes Network Systems 社、Viasat 社、 VT iDirect 社であり、これら企業の概要と事業戦略、代表的製品例等を調査した。

「衛星地球局の機器・設備に使用されている技術の概要と動向」では、衛星地球局の製品と設 備に使用されている技術の概要及び動向調査を行った。具体的にはアンテナ、BUC(Block UpConverter)、HPA(High Performance Amplifire)、VSAT、その他の運用技術に関するもの等に ついて近年の傾向と技術開発例等を示した。 「HTS 向け衛星地球局に対する企業等の動向」では、HTS 衛星および Ka 帯衛星に対して、主 要企業がどのような取組みや戦略等を有しているかを調査し、対応する製品や技術動向等を整 理した。HTS の登場を契機に、地上インフラの設置場所や、展開、管理方法に変化があり、HTS のサービス形態は、垂直統合モデル、管理型サービスモデル、ハブ・コロケーションモデル、VNO モデル等に分類される。ここでは各形態についての詳細及び具体例として Eutelsat 社の Tooway と O3b 社の地上網について調査を行った。 出典:iDirect H.P.より 図 1: HTS サービスのバリューチェーンとサービス形態

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工業会活動 有しているかを調査し、対応する製品や技術 動向等を整理した。HTSの登場を契機に、地 上インフラの設置場所や、展開、管理方法に 変化があり、HTSのサービス形態は、垂直統 合モデル、管理型サービスモデル、ハブ・コ ロケーションモデル、VNOモデル等に分類 される。ここでは各形態についての詳細及び 具体例としてEutelsat社のToowayとO3b社の 地上網について調査を行った。 「光衛星通信に関連する地上ネットワーク 構 想 の 検 討 例 」 で は 、 L a s e r L i g h t Communicaitons社とBridgeSat社等の光衛星通 信地上ネットワーク構想を示した。 国 内 の 動 向 と し て、ス カ パ ー JSAT 社、 JSAT International社、アイピースタージャパ ン、KDDI、NTTドコモ、ソフトバンクの最 新事業動向と地球局の調査を行った。また、 地球局設備の製造企業として三菱電機、日本 電気、富士通の事業概要と動向等を示した。 3. 携帯端末に関する国内外の動向 携帯端末について、陸上/携帯移動地球局、 船舶地球局、航空機地球局の市場と動向を調 査した。また携帯端末関連技術として、移動 衛星通信システム地球局アンテナの技術動向 と最新製品の動向調査と整理を行った。 携帯端末は陸上/携帯移動地球局(可搬型 地球局及び携帯端末)、船舶地球局、航空機 地球局に分類されるが、商用移動衛星通信分 野の世界市場内訳をユニット数でみると、陸 上移動用ユニットが大半を占めている。帯域 別 推 移 に み る と、Ku帯 の 伸 び も 大 き い が GEO及びMEOのHTS向け端末の伸びが著し い。陸上用の可搬型/車載型VSATは災害時 にも大きな役割を果たしている。 移動衛星通信システム地球局アンテナにつ いては、近年目覚しい進歩がある。ビームス テアリング、ビームフォーミング、モバイル アンテナシステム等の新技術は移動体(特に 航空機用)Ku/Ka帯衛星ターミナルの低コ スト化を可能にした。これらの代表的な製品 とには、ディッシュ型(パラボラ型)アンテ ナ、フラットパネル型アンテナ、電子走査型 平面アンテナ、メタマテリアル型アンテナ等 の種類があり、中でもフラットパネルの需要 が大きく伸びている。 4. HTS地球局及び携帯端末に関する技術動向 及びビジネス展望 HTS衛星地球局及び携帯端末に関する技術 「光衛星通信に関連する地上ネットワーク構想の検討例」では、Laser Light Communicaitons 社 と BridgeSat 社等の光衛星通信地上ネットワーク構想を示した。

国内の動向として、スカパーJSAT 社、JSAT International 社、アイピースタージャパン、KDDI、 NTT ドコモ、ソフトバンクの最新事業動向と地球局の調査を行った。また、地球局設備の製造企業 として三菱電機、日本電気、富士通の事業概要と動向等を示した。 2.携帯端末に関する国内外の動向 携帯端末について、陸上/携帯移動地球局、船舶地球局、航空機地球局の市場と動向を調査 した。また携帯端末関連技術として、移動衛星通信システム地球局アンテナの技術動向と最新製 品の動向調査と整理を行った。 携帯端末は陸上/携帯移動地球局(可搬型地球局及び携帯端末)、船舶地球局、航空機地球 局に分類されるが、商用移動衛星通信分野の世界市場内訳をユニット数でみると、陸上移動用 ユニットが大半を占めている。帯域別推移にみると、Ku 帯の伸びも大きいが GEO 及び MEO の HTS 向け端末の伸びが著しい。陸上用の可搬型/車載型 VSAT は災害時にも大きな役割を果た している。 移動衛星通信システム地球局アンテナについては、近年目覚しい進歩がある。ビームステアリ ング、ビームフォーミング、モバイルアンテナシステム等の新技術は移動体(特に航空機用) Ku/ Ka 帯衛星ターミナルの低コスト化を可能にした。これらの代表的な製品とには、ディッシュ型(パラ ボラ型)アンテナ、フラットパネル型アンテナ、電子走査型平面アンテナ、メタマテリアル型アンテナ 等の種類があり、中でもフラットパネルの需要が大きく伸びている。 出典: GATR 社 HP 図 2 : 米国 KYMETA 社の平面アンテナ(左)、GATR 社の 4m アンテナ(右) 図2 米国KYMETA社の平面アンテナ(左)、GATR社の4mアンテナ(右) 出典: GATR社HP

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平成29年5月  第761号 動向及びビジネス展望をまとめた。HTS衛星 地球局及び携帯端末に関する技術の整理を行 い、今後の発展に必要な技術と地上の放送・ 通信、ブロードバンドネットワークとの将来 的 な 棲 み 分 け や 統 合 に つ い て、「端 末 編」 「フィーダリンク編」「地上ネットワーク編」 に分けて検討した。 技術については、打上げ機数が増加してい るHTSやKa帯衛星への適応という観点から、 重要となる技術/装置の調査と開発課題の整 理・明確化を行い、ネットワーク・マネジメ ント関連技術、マルチビーム関連技術、ゲー トウェイ/フィーダリンク関連技術、ユー ザーターミナル関連技術、Ka帯関連技術の カテゴリ別に、キーとなる重要関連装置や技 術を示し、現状の製品や開発品等の実例をあ げた。 「端末編」では、「比較的短距離の場合の高 速通信」と「遠距離通信での低速通信」の二 極化が注目されているため、「高速化」、「IoT (Internet of Things)端末の同時通信の収容」、 「地上通信との連接」の観点から、サービス や衛星通信システム、端末のあり方について 検討する必要があると判明した。また、ニー ズの観点からは多様化に対して柔軟に対応す ることで端末販売の規模拡大が可能であると 考えられており、スケールメリットを志向し た端末やフレキシブルな運用のための地上系 システムや端末を訴求する必要があるが、通 信方式の連接性を考慮することも重要である と判った。また共通技術課題としては、高速 追尾技術やビームハンドオーバ技術等につい ての開発が必要であることを識別した。 「フィーダリンク局編」では、HTS衛星通信 システムに期待されるサービスモデルとして、 「IP接続サービス」、「IP接続をバックホール として用いる携帯網接続サービス」、「衛星/ 端末間の直接接接続による携帯網接続サービ ス」、「リアルタイム型メッセージ通信サービ ス」、「蓄積型メッセージ通信サービス」を上 3.HTS 地球局及び携帯端末に関する技術動向及びビジネス展望 HTS 衛星地球局及び携帯端末に関する技術動向及びビジネス展望をまとめた。HTS 衛星地球 局及び携帯端末に関する技術の整理を行い、今後の発展に必要な技術と地上の放送・通信、ブ ロードバンドネットワークとの将来的な棲み分けや統合について、「端末編」「フィーダリンク編」「地 上ネットワーク編」に分けて検討した。 技術については、打上げ機数が増加している HTS や Ka 帯衛星への適応という観点から、重要 となる技術/装置の調査と開発課題の整理・明確化を行い、ネットワーク・マネジメント関連技術、 マルチビーム関連技術、ゲートウェイ/フィーダリンク関連技術、ユーザーターミナル関連技術、 Ka 帯関連技術のカテゴリ別に、キーとなる重要関連装置や技術を示し、現状の製品や開発品等 の実例をあげた。 「端末編」では、「比較的短距離の場合の高速通信」と「遠距離通信での低速通信」の二極化が 注目されているため、「高速化」、「IoT (Internet of Things ) 端末の同時通信の収容」、「地上通信 との連接」の観点から、サービスや衛星通信システム、端末のあり方について検討する必要があ ると判明した。また、ニーズの観点からは多様化に対して柔軟に対応することで端末販売の規模 拡大が可能であると考えられており、スケールメリットを志向した端末やフレキシブルな運用のた めの地上系システムや端末を訴求する必要があるが、通信方式の連接性を考慮することも重要 であると判った。また共通技術課題としては、高速追尾技術やビームハンドオーバ技術等につい ての開発が必要であることを識別した。 図 3: 地上通信との連接も含めた衛星通信 一般的な想定利用シーン 図3 地上通信との連接も含めた衛星通信 一般的な想定利用シーン

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工業会活動 「フィーダリンク局編」では、HTS 衛星通信システムに期待されるサービスモデルとして、「IP 接 続サービス」、「IP 接続をバックホールとして用いる携帯網接続サービス」、「衛星/端末間の直接 接接続による携帯網接続サービス」、「リアルタイム型メッセージ通信サービス」、「蓄積型メッセー ジ通信サービス」を上げ、それぞれについて検討した。また、HTS 衛星地上局に求められるフィー ダリンク局を構成する機能と構成例の検討を実施した。求められる技術としては、多値変調と高 効率符号化による帯域利用効率の改善技術、適応イコライザ技術による多値変調方式の復調特 性改善技術、干渉波キャンセル技術による復調特性の改善、GBBF (Ground Based Beam Forming ) への対応技術、Ka 帯への対応技術、Q/V 帯への対応技術等であることが判明した。 図 4: IP 接続サービスの例 グローバルIP網 ルーラルネットワーク デジタルデバイド地域 フィーダリンク局 HTS 「地上ネットワーク編」では、HTS によるサービスは、サービスエリアの広域性、移動通信サポー ト、広帯域通信サポート、低速通信サポートが特徴であり、「いつでも・どこでも・だれとでも・すば やく・かくじつに」提供できることが目標であることを明確にした。これに伴いユーザとしては、地上 ネットワークと連接した通信環境の構築、移動体端末との通信環境構築、通信インフラが整備さ れていない環境での通信環境整備等を行う必要が生じる。ネットワークサービスへの課題として は、マルチプロトコルへの対応や降雨減衰に左右されないサービス品質の維持、信頼性・冗長性 の確保、高速通信と低速通信混在下での通信品質保証等が挙げられることが判った。 図 5: HTS 衛星利用に係わる全体システムの概要

HTS衛星

専用回線等 キャリア内 通信網 地球局 アクセスポイント 携帯電話 Internet モバイル端末 通信端末 ユーザNW Wi-Fiアクセスポイント ユーザ局 ユーザNW ユーザ局 ユーザNW IoTセンサ 図4 IP接続サービスの例 図5 HTS衛星利用に係わる全体システムの概要

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平成29年5月  第761号 げ、それぞれについて検討した。また、HTS 衛星地上局に求められるフィーダリンク局を 構成する機能と構成例の検討を実施した。求 められる技術としては、多値変調と高効率符 号化による帯域利用効率の改善技術、適応イ コライザ技術による多値変調方式の復調特性 改善技術、干渉波キャンセル技術による復調 特 性 の 改 善、GBBF(Ground Based Beam Forming)への対応技術、Ka帯への対応技術、 Q/V帯への対応技術等であることが判明し た。 「地上ネットワーク編」では、HTSによる サービスは、サービスエリアの広域性、移動 通信サポート、広帯域通信サポート、低速通 信サポートが特徴であり、「いつでも・どこ でも・だれとでも・すばやく・かくじつに」 提供できることが目標であることを明確にし た。これに伴いユーザとしては、地上ネット ワークと連接した通信環境の構築、移動体端 末との通信環境構築、通信インフラが整備さ れていない環境での通信環境整備等を行う必 要が生じる。ネットワークサービスへの課題 としては、マルチプロトコルへの対応や降雨 減衰に左右されないサービス品質の維持、信 頼性・冗長性の確保、高速通信と低速通信混 在下での通信品質保証等が挙げられることが 判った。 5. HTS地球局及び携帯端末に関するユーザか らの要望 ユーザ視点からHTS衛星地上局への要望お よび事業展望に関する調査を行った。各種通 信規格の包含や5G通信の先を見据えたマル チプラットフォーム化の可能性等が示唆さ れ、防災用途のニーズ、移動体向けのニーズ、 その他地上端末への要望が示された。 6. HTS地球局及び携帯端末に関する展望 開発が進んでいる次期技術試験衛星につい ての技術課題及びその検討についてまとめ 図6 EsBirdサービスのネットワーク 4.HTS 地球局及び携帯端末に関するユーザからの要望 ユーザ視点から HTS 衛星地上局への要望および事業展望に関する調査を行った。各種通信 規格の包含や 5G 通信の先を見据えたマルチプラットフォーム化の可能性等が示唆され、防災用 途のニーズ、移動体向けのニーズ、その他地上端末への要望が示された。 図 6: EsBird サービスのネットワーク

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工業会活動 た。また、次期技術試験衛星に向けた地球局 技術として、超高速インターネット衛星「き ずな」用に開発したKa帯衛星通信用地球局 な ら び に 宇 宙 光 通 信 技 術 実 証 衛 星 (SOCRATES)に搭載された小型光トランス ポンダ(SOTA)用光衛星通信地上局につい てもまとめた。 7. HTS地球局及び携帯端末に関する保険 HTS衛星地球局及び携帯端末に関する保険 についてまとめた。適用される保険分野は「財 産に関する保険」および「事業運営に関する 保険」であり、保険付保の考え方は他の財物 や事業と大きな相違や特殊性はないため、設 備ユーザー(所有者)とメーカにおける一般 的な保険加入の考え方を基に整理した。ま た、やや特殊な保険付保スキームとして製品 の保証責任のカバー、打上げ失敗に伴う損害 のカバーについてまとめ、参考としてHTSに 関する人工衛星保険の概要についても示し た。 8. まとめ 米 国 最 大 の 商 用 衛 星 関 連 の 展 示 会 Satellite2016での大きな議論のトピックとし て、「増加するHTSに対応するための地上設 備の整備」が取り上げられていた。日本では 1990年代まで人工衛星向けの地上設備の輸出 事業に力を入れており実績も積んでいたが、 その後は輸出が大幅に減少したままであり、 HTSの増加及びKa帯通信への切り替えを機 に地上設備及び携帯端末事業の活性化を期待 している。 本委員会では、海外及び日本におけるHTS 衛星地球局と携帯端末の最新動向と使用技術 の把握を実施するとともに、国内の衛星地球 局及び携帯端末製造企業、衛星ユーザ、通信 研究所、宇宙保険会社等、様々な立場や角度 から討議を重ねて将来の方向性についての検 討結果を報告書としてまとめた。 5.HTS 地球局及び携帯端末に関する展望 開発が進んでいる次期技術試験衛星についての技術課題及びその検討についてまとめた。ま た、次期技術試験衛星に向けた地球局技術として、超高速インターネット衛星「きずな」用に開発 した Ka 帯衛星通信用地球局ならびに宇宙光通信技術実証衛星(SOCRATES)に搭載された小型 光トランスポンダ(SOTA)用光衛星通信地上局についてもまとめた。 図 7: 海洋・宇宙ブロードバンド衛星通信システムのイメージ 6.HTS 地球局及び携帯端末に関する保険 HTS 衛星地球局及び携帯端末に関する保険についてまとめた。適用される保険分野は「財産 に関する保険」および「事業運営に関する保険」であり、保険付保の考え方は他の財物や事業と 大きな相違や特殊性はないため、設備ユーザー(所有者)とメーカにおける一般的な保険加入の 考え方を基に整理した。また、やや特殊な保険付保スキームとして製品の保証責任のカバー、打 上げ失敗に伴う損害のカバーについてまとめ、参考として HTS に関する人工衛星保険の概要に ついても示した。 7.まとめ 米国最大の商用衛星関連の展示会 Satellite2016 での大きな議論のトピックとして、「増加する HTS に対応するための地上設備の整備」が取り上げられていた。日本では 1990 年代まで人工衛 星向けの地上設備の輸出事業に力を入れており実績も積んでいたが、その後は輸出が大幅に減 少したままであり、HTS の増加及び Ka 帯通信への切り替えを機に地上設備及び携帯端末事業の 活性化を期待している。 本委員会では、海外及び日本における HTS 衛星地球局と携帯端末の最新動向と使用技術の 把握を実施するとともに、国内の衛星地球局及び携帯端末製造企業、衛星ユーザ、通信研究所、 船舶ブロードバンド (海洋資源調査等) 航空機ブロードバンド (機内インターネット等) ゲートウェイ回線 耐災害通信 (バックホール回線等) ・100Mbps超の高速大容量移動体通信Ka帯の利用) ・トラフィック変動に対応するフレキシブル な中継(ビーム可変、周波数可変) Ka帯 光(10Gbps級) 国際サイトダイ バーシティ・ ゲートウェイ局 #1 #2 #4 #3 #5 #6 #7 #8 #9 #10 #11 #12 #1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 #9 #10 #11 #13 #14 #15 #12 #17 #18 #16 #19 #29 #21 #22 #23 #24 #25 #26 #27 #28 #40 #30 #31 #32 #33 #34 #35 #36 #37 #38 #39 #20 #41 #42 #43 #44 #45 #46 #47 #48 #49 #50 #51 #52 #53 #54 Fixed beams Scanning beams ・EEZ+地球視野をカバー 次期技術試験衛星(ETS-IX) 図7 海洋・宇宙ブロードバンド衛星通信システムのイメージ

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平成29年5月  第761号 この先、放送・通信、ブロードバンドで HTSや携帯端末が社会的に重要な役割を果た すことになると考えられるが、本報告書に記 載された検討結果を基に我が国の宇宙産業が 国際競争力のある事業として確立、発展する 事を、工業会としても期待している。 〔(一社)日本航空宇宙工業会 技術部部長 佐古 理〕

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