平成24年12月26日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官 平成21年(ワ)第26053号 著作権侵害差止等請求事件 口頭弁論終結日 平成24年10月15日 判 決 東京都世田谷区<以下略> 原 告 A 神奈川県藤沢市<以下略> 同 B 東京都三鷹市<以下略> 同 C 東京都府中市<以下略> 同 D 上 記 4 名 訴 訟 代 理 人 弁 護 士 大 谷 郁 夫 同 鷲 尾 誠 同 復 代 理 人 弁 護 士 神 谷 将 史 山梨県北杜市<以下略> 被 告 E 同 訴 訟 代 理 人 弁 護 士 埴 原 一 也 同 新 里 清 高 主 文 1 被 告 は , 別 紙 被 告 仏 画 目 録 2 記 載 の 番 号 (1)① , (5)① , (7), (12),(13)①,(14)の各仏画を販売,頒布,展示してはならない。 2 被 告 は , 別 紙 被 告 仏 画 目 録 2 記 載 の 番 号 (1)① , (5)① , (7), (12),(13)①,(14)の各仏画を使用した書籍,パンフレット,ホー ムページ画像を制作してはならない。 3 被告は,別紙被告書籍目録記載の書籍から,別紙被告仏画目録2
記載の番号(1)①,(5)①,(7),(12),(13)①,(14)の各仏画を掲 載した箇所を抹消せよ。 4 被告は,別紙被告仏画目録2記載の番号(13)①を掲載したパンフ レットを廃棄せよ。 5 被告は,原告A,同B,同Cのそれぞれに対し,各13万948 3円及びうち13万3183円に対する平成21年8月29日から, うち1913円に対する平成23年3月31日から,うち637円 に対する平成23年12月31日から,うち3750円に対する平 成24年2月29日から各支払済みまで年5分の割合による金員を 支払え。 6 被告は,原告Dに対し,9万9483円及びうち9万3183円 に対する平成21年8月29日から,うち1913円に対する平成 23年3月31日から,うち637円に対する平成23年12月3 1日から,うち3750円に対する平成24年2月29日から各支 払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 7 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 8 訴訟費用はこれを25分し,その23を原告らの負担とし,その 余を被告の負担とする。 9 この判決は,第5,6項に限り,仮に執行することができる。 事 実 及 び 理 由 第1 請求 1 被告は,別紙被告仏画目録1及び2記載の各仏画を販売,頒布,展示しては ならない。 2 被告は,別紙被告仏画目録1及び2記載の各仏画を使用した書籍,パンフレ ット,塗り絵用下絵,ホームページ画像を制作してはならない。 3 被告は,別紙被告仏画目録1及び2記載の各仏画を使用した書籍,パンフレ
ット,塗り絵用下絵,ホームページ画像を廃棄せよ。 4 被告は,原告らそれぞれに対し,各922万4500円及びこれに対する平 成21年8月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告は,朝日新聞の全国版に,別紙謝罪文目録記載の謝罪文を,掲載スペー スが2段抜き左右20センチメートル,活字の大きさが表題12級ゴシック, 本文9級明朝体,記名・宛名10級明朝体で1回掲載せよ。 6 第4項につき仮執行宣言 第2 事案の概要 本件は,仏画家であるF(雅号はF’。以下「F氏」という。)の相続人で ある原告らが,被告に対し,別紙被告仏画目録1記載の各仏画(以下,それぞ れ「被告仏画1(1)」などといい,これらを併せて「被告仏画1」という。) 及び同目録2記載の各仏画(以下,それぞれ「被告仏画2(1)」,「被告仏画 2(5)①」などといい,これらを併せて「被告仏画2」という。なお,(3), (4),(8)及び(9)は欠番である。以下,被告仏画1と被告仏画2を併せて「被 告各仏画」という。)は,F氏の制作に係る別紙原告仏画目録1記載の各仏画 (以下,それぞれ「原告仏画1(1)」などといい,これらを併せて「原告仏画 1 」 と い う 。 ) 及 び 同 目 録 2 記 載 の 各 仏 画 ( 以 下 , そ れ ぞ れ 「 原 告 仏 画 2 (1)」などといい,これらを併せて「原告仏画2」という。なお,(3),(4), (8)及び(9)は欠番である。以下,原告仏画1と原告仏画2を併せて「原告各仏 画」という。)を複製又は翻案したものであるから,被告各仏画を販売し,頒 布し,展示し,又は上記被告各仏画を使用した書籍,パンフレット,塗り絵用 下絵,ホームページ画像を制作することは,原告らが相続により取得した原告 各仏画の著作権(複製権,譲渡権,展示権又は著作権法28条に基づく二次的 著作物の利用に関する原著作者の権利)を侵害すると主張し,著作権法112 条に基づき,被告各仏画の販売,頒布,展示の差止め,これらの仏画を使用し た書籍等の制作の差止め及び同書籍等の廃棄を求めるとともに,原告仏画1及
び原告仏画2の著作権侵害及び著作者人格権侵害の不法行為責任に基づく損害 賠償として,原告らそれぞれに対し,各922万4500円(4名合計368 9万8000円)及びこれに対する本訴状送達日の翌日である平成21年8月 29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の支払を求め,さ らに,被告が,原告各仏画を無断で複製又は改変した上,これを被告の作品で あると表示して展示等をした行為は,F氏の著作者人格権(氏名表示権及び同 一性保持権)の侵害となるべき行為であると主張し,F氏の死後における人格 的利益の保護のための措置(著作権法60条,116条1項,115条)とし て,謝罪広告の掲載を求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実以外は,証拠等を末尾に記載する。) (1) 当 事 者 等 ア 原 告 ら (ア ) 原 告 A ( 以 下 「 原 告 A 」 と い う 。 ) , 原 告 B ( 以 下 「 原 告 B 」 と い う 。 ) 及 び 原 告 C ( 以 下 「 原 告 C 」 と い う 。 ) は F 氏 の 子 で あ り , 原 告 D ( 以 下 「 原 告 D 」 と い う 。 ) は F 氏 の 長 男 で あ る G の 子 で あ る ( 甲 3 , 4 , 1 0 な い し 1 5 ) 。 (イ ) F 氏 は 昭 和 5 9 年 8 月 5 日 に 死 亡 し , 同 人 を そ の 妻 で あ る H , そ の 子 で あ る 原 告 A , 同 B , 同 C 及 び G が 相 続 し た ( 甲 1 な い し 4 ) 。 (ウ ) H は 平 成 1 0 年 2 月 2 日 に 死 亡 し , 同 人 を 原 告 A , 同 B , 同 C 及 び G が 相 続 し た ( 甲 4 な い し 1 4 ) 。 (エ ) G は 平 成 2 1 年 1 月 2 7 日 に 死 亡 し た が , 同 人 の 相 続 人 間 に お け る 一 部 遺 産 分 割 協 議 に よ り , 同 人 の 相 続 財 産 中 , 被 告 に 対 す る 著 作 権 侵 害 に 基 づ く 侵 害 行 為 差 止 請 求 及 び 損 害 賠 償 請 求 権 は 原 告 D が 取 得 す る も の と さ れ た ( 甲 1 4 , 1 5 , 1 6 の 1 な い し 5 ) 。 イ 被 告 は 仏 画 家 で あ り , 平 成 7 年 4 月 に 山 梨 県 北杜市<以下略>(被
告住所地)においてE美術館(以下「被告美術館」という。)を開設し ている。 (2) F 氏 に よ る 原 告 各 仏 画 の 制 作 ア F 氏 は , 昭 和 1 6 年 頃 か ら 昭 和 3 6 年 頃 ま で に か け て , 原 告 仏 画 1 (1)な い し (9)を 制 作 し , こ れ ら の 仏 画 は , 「 復 原 國 寶 佛 画 」 ( 昭 和 4 4 年 1 0 月 3 0 日 発 行 , 株 式 会 社 佼 成 出 版 社 ) に 収 録 さ れ た ( 甲 4 6 , 4 7 ) 。 ま た , F 氏 は , 昭 和 4 9 年 頃 , 原 告 仏 画 1 (10)を 制 作 し , 同 仏 画 は , 「 復 原 高 雄 曼 荼 羅 」 ( 昭 和 5 0 年 4 月 2 2 日 発 行 , 株 式 会 社 佼 成 出 版 社 ) に 収 録 さ れ た ( 甲 4 8 , 4 9 ) 。 原 告 仏 画 1 (1)な い し (10)の 内 容 は , 別 紙 原 告 仏 画 目 録 1 の 添 付 1 な い し 1 2 の と お り で あ る ( 甲 4 6 な い し 4 9 ) 。 原 告 仏 画 1 (1)な い し (10)は , そ れ ぞ れ 下 記 (ア )な い し (コ )の 国 宝 又 は 重 要 文 化 財 と し て 指 定 さ れ て い る 仏 画 又 は 曼 荼 羅 を 原 図 と し ( そ の 内 容 は 別 紙 原 図 目 録 記 載 1 な い し 1 0 の と お り で あ る 。 ) , こ れ を 復 原 す る 意 図 で 制 作 さ れ た も の で あ る 。 (ア ) 原 告 仏 画 1 (1) F 氏 が 東 大 寺 か ら 提 供 を 受 け た 大 仏 蓮 弁 毛 彫 ( 国 宝 ) の 拓 本 ( 以 下 「 原 図 1 」 と い う 。 甲 1 0 1 , 1 0 2 の 1 な い し 1 2 , 1 0 3 な い し 1 1 0 ) (イ ) 原 告 仏 画 1 (2) I 氏 所 蔵 の 国 宝 ・ 釈 迦 金 棺 出 現 図 ( 以 下 「 原 図 2 」 と い う 。 甲 5 9 ) (ウ ) 原 告 仏 画 1 (3) 高 野 山 金 剛 峯 寺 所 蔵 の 国 宝 ・ 仏 涅 槃 図 ( 以 下 「 原 図 3 」 と い う 。 甲 6 0 ) (エ ) 原 告 仏 画 1 (4) 東 京 国 立 博 物 館 所 蔵 の 国 宝 ・ 普 賢 菩 薩 像 ( 以 下 「 原 図 4 」 と い う 。 甲 6 1 ) (オ ) 原 告 仏 画 1 (5) 法 華 寺 所 蔵 の 国 宝 ・ 阿 弥 陀 三 尊 及 童 子 図 ( 以 下 「 原 図 5 」 と い う 。 甲 6 2 )
(カ ) 原 告 仏 画 1 (6) 高 野 山 有 志 八 幡 講 一 八 箇 院 所 蔵 の 国 宝 ・ 阿 弥 陀 聖 衆 来 迎 図 ( 以 下 「 原 図 6 」 と い う 。 甲 6 3 ) (キ ) 原 告 仏 画 1 (7) 甚 目 寺 所 蔵 の 重 要 文 化 財 ・ 不 動 明 王 像 ( 以 下 「 原 図 7 」 と い う 。 甲 6 4 ) (ク ) 原 告 仏 画 1 (8) 醍 醐 寺 所 蔵 の 国 宝 ・ 不 動 明 王 像 ( 以 下 「 原 図 8 」 と い う 。 甲 6 5 ) ( ケ ) 原 告 仏 画 1 (9) 醍 醐 寺 三 宝 院 所 蔵 の 国 宝 ・ 訶梨帝母 像 (以 下 「原図9」という。甲66) (コ) 原告仏画1(10) 神護寺所蔵の国宝・高雄曼荼羅胎蔵法曼荼羅(以 下「原図10」という。乙14)。ただし,F氏は,原告仏画1(10)を 制作するに当たり,原図10を参照したほか,約400体の諸尊の形状 及び配置に関し,「三本両部曼荼羅集」(大村西崖著,佛書刊行會発行, 甲90,100の1ないし11)を参考にし,また,諸院を区切る枠 (文様帯)内の模様(文様),外金剛部院の外側の模様(外縁装飾)に ついては,「研究報告書『高雄曼荼羅』高雄曼荼羅の研究」(東京国立 文化財研究所著,吉川弘文館発行,甲91)を参考にした(甲49)。 イ F 氏 は , 昭 和 4 4 年 頃 ま で に か け て , 原 告 仏 画 2 を 制 作 し , こ れ ら の 仏 画 は , 前 記 「 復 原 國 寶 佛 画 」 に 収 録 さ れ た ( 甲 4 6 , 4 7 , 7 3 ) 。 原 告 仏 画 2 の 内 容 は , 別 紙 原 告 仏 画 目 録 2 の 添 付 1 3 , 1 4 , 1 7 な い し 1 9 , 2 2 な い し 3 1 の と お り で あ る ( 甲 4 7 , 7 3 ) 。 (3) 被 告 に よ る 被 告 各 仏 画 の 制 作 , 頒 布 , 書 籍 の 出 版 等 ア 被 告 各 仏 画 の 制 作 被 告 は , 昭 和 5 0 年 頃 か ら , 順 次 , 被 告 仏 画 1 及 び 被 告 仏 画 2 を 制 作 し た ( 被 告 本 人 ) 。 被 告 仏 画 1 の 内 容 は , 別 紙 被 告 仏 画 目 録 1 の 添 付 1 な い し 1 0 の と
お り で あ り , 被 告 仏 画 2 の 内 容 は , 別 紙 被 告 仏 画 目 録 2 の 添 付 1 , 2 , 5 な い し 7 , 1 0 な い し 1 9 の と お り で あ る ( 甲 1 7 な い し 2 4 , 7 4 , 乙 1 の 1 8 ・ 1 9 ・ 2 4 ・ 2 5 , 2 7 , 2 8 , 2 9 の 1 な い し 9 ) 。 被 告 仏 画 2 (1)① 及 び ② , (2), (6), (7), (10)な い し (12), (13)① 及 び ② , (14)は , 前 記 「 復 原 國 寶 佛 画 」 に 掲 載 さ れ た 原 告 仏 画 2 (1), (2), (6), (7), (10)な い し (14)に そ れ ぞ れ 依 拠 し て 制 作 さ れ た も の で あ る ( た だ し , 被 告 は , 被 告 仏 画 2 (10) に つ い て は , 原 告 仏 画 2 (10)の ほ か 他 の 仏 画 〔 乙 1 6 の 1 , 1 6 の 4 〕 も 参 照 し た も の と 主 張 し て い る 。 ) 。 被 告 仏 画 2 (16)な い し (19)は , 被 告 が 制 作 し た 紺 紙 金 泥 画 を 撮 影 し た モ ノ ク ロ 写 真 で あ る ( 乙 1 の 1 8 , 1 9 , 2 4 , 2 5 ) 。 イ 被 告 各 仏 画 を 掲 載 し た 書 籍 の 出 版 等 昭 和 5 7 年 こ ろ か ら 順 次 出 版 さ れ た 次 表 記 載 の 書 籍 ( 以 下 , そ れ ぞ れ 「 被 告 書 籍 (ア )」 な ど と い い , こ れ ら を 併 せ て 「 被 告 各 書 籍 」 と い う 。 ) に は , 次 表 記 載 の 被 告 仏 画 が そ れ ぞ れ 掲 載 さ れ て い る ( 「 掲 載 仏 画 」 欄 記 載 の 番 号 は , 被 告 各 仏 画 の う ち , 当 該 書 籍 に 掲 載 さ れ た 仏 画 の 番 号 を 示 す 。 ) ( 甲 1 7 な い し 2 4 , 1 1 3 ) 。 番 号 ・ 被 告 書 籍 名 掲 載 仏 画 ( ア ) 「 あ な た 自 身 の み 仏 に 出 会 う た め の 図 説 写 仏 の す す め 」 ( 甲 1 7 ・ 昭 和 5 7 年 1 月 1 日 初 版 発 行 ) 2 (2), 2 (5)① , 2 (10), 2 (14) ( イ ) 「 写 仏 下 絵 図 像 集 第 三 巻 / 不 動 明 王 」 ( 甲 1 8 ・ 平 成 1 3 年 3 月 3 1 日 第 5 刷 発 行 ) 1 (7), 1 (8)① , 1 (8)② (ウ ) 「 あ な た 自 身 の み 仏 に 出 会 う た め の 図 説 写 仏 教 室 」 ( 甲 1 9 ・ 昭 和 6 1 年 2 月 1 日 初 版 発 行 ) 1 (9), 2 (1)① ( エ ) 「 写 仏 下 絵 図 像 集 第 四 巻 釈 迦 如 来 」 ( 甲 2 0 ・ 昭 和 6 3 年 4 月 1 日 初 版 発 行 ) 1 (3) (オ ) 「 新 ・ 写 仏 の す す め 」 ( 甲 2 1 ) ( 旧 版 ・ 新 版 ) ( 平 成 9 年 6 月 2 0 日 旧 版 初 版 発 行 ) 2 (1)② , 2 (2), 2 (5)① , 2 (10)
(カ ) 「 シ ル ク ロ ー ド 仏 画 ぬ り 絵 」 ( 甲 2 2 ・ 平 成 1 9 年 3 月 3 1 日 第 1 刷 発 行 ) 1 (6), 2 (1)① , 2 (12), 2 (13)① (キ ) 「 写 仏 下 絵 図 像 集 第 1 巻 観 世 音 菩 薩 」 ( 旧 版 ) ( 甲 1 3 1 ) 2 (13)② ( ク ) 「 新 装 普 及 版 写 仏 下 絵 図 像 集 第 1 巻 観 世 音 菩 薩 」 ( 甲 2 3 ・ 平 成 1 9 年 6 月 1 日 新 装 普 及 版 第 1 刷 発 行 ) 1 (6)② , 1 (6)③ , 2 (6) , 2 (7) , 2 (11), 2 (13)① (ケ ) 「 写 仏 下 絵 図 像 集 第 2 巻 阿 弥 陀 如 来 と 十 三 仏 」 ( 甲 2 4 ) ( 旧 版 ・ 新 装 普 及 版 ) ( 平 成 1 9 年 6 月 1 日 新 装 普 及 版 第 1 刷 発 行 ) 1 (5), 1 (6)① , 2 (5)① , 2 (5)② , 2 (15) ウ 被 告 美 術 館 に お け る 展 示 被 告 は , 被 告 美 術 館 に お い て , 被 告 の 制 作 し た 仏 画 を 展 示 し て い る 。 エ 被 告 美 術 館 パ ン フ レ ッ ト の 配 布 等 被 告 は , 被 告 美 術 館 の パ ン フ レ ッ ト を 作 成 し , 頒 布 し て い る と こ ろ , 平 成 2 1 年 よ り 前 に 制 作 ・ 配 布 さ れ た も の ( 乙 4 5 の 1 ・ 2 ) に は , 被 告 仏 画 1 (1), 1 (4), 2 (13)① が 掲 載 さ れ て お り , ま た , 被 告 仏 画 1 (2)の 一 部 が 写 り 込 ん で い る 。 平 成 2 1 年 な い し 2 3 年 に か け て 作 成 ・ 配 布 さ れ た も の ( 乙 4 6 ) 及 び 平 成 2 4 年 以 降 に 作 成 ・ 配 布 さ れ た も の ( 乙 4 7 ) に は , 被 告 の 制 作 し た 仏 画 が 掲 載 さ れ て い る が , 被 告 各 仏 画 の 掲 載 又 は 写 り 込 み は 認 め ら れ な い ( 乙 4 6 , 4 7 ) 。 被 告 は , ほ か に , 被 告 の 制 作 し た 仏 画 を ポ ス タ ー , 絵 は が き 等 に 掲 載 し て い る 。 オ 被 告 美 術 館 ホ ー ム ペ ー ジ に お け る 仏 画 の 掲 載 被 告 は , 平 成 2 1 年 5 月 3 0 日 時 点 に お い て , 被 告 美 術 館 の ホ ー ム ペ ー ジ に , 被 告 の 制 作 し た 仏 画 を 掲 載 し て お り , 上 記 掲 載 仏 画 に は , 被 告 仏 画 1 (1), 1 (2), 1 (10)が 含 ま れ て い る ( 甲 2 5 ) 。 カ 仏 画 教 室 の 開 催 等 被 告 は , 各 地 に お い て 仏 画 教 室 を 開 催 し , 同 教 室 に お い て , 被 告 の 制 作 に 係 る 仏 画 下 絵 等 を 配 布 し て い る ( 甲 2 7 , 被 告 本 人 ) 。 (4) 消 滅 時 効 援 用 の 意 思 表 示
被 告 は , 原 告 ら に 対 し , 平 成 2 3 年 1 2 月 9 日 の 本 訴 第 1 3 回 弁 論 準 備 手 続 期 日 に お い て , 原 告 各 仏 画 の 著 作 権 侵 害 に 基 づ く 損 害 賠 償 請 求 権 に つ き , 消 滅 時 効 を 援 用 す る 旨 の 意 思 表 示 を し た ( 当 裁 判 所 に 顕 著 ) 。 2 争 点 (1) 原 告 仏 画 1 の 著 作 権 侵 害 の 成 否 ア 原 告 仏 画 1 の 著 作 物 性 イ 被 告 仏 画 1 は , 原 告 仏 画 1 を 複 製 し た も の に 当 た る か 。 (2) 原 告 仏 画 2 の 著 作 権 侵 害 の 成 否 ア 被 告 仏 画 2 (5)① 及 び ② , 2 (13), (16)な い し (19)は , 原 告 仏 画 2 (5), 2 (13), 2 (16)な い し (19)に 依 拠 し て 作 成 さ れ た も の か 。 イ 被 告 仏 画 2 は 原 告 仏 画 2 を 複 製 又 は 翻 案 し た も の に 当 た る か 。 ウ F 氏 に よ る 許 諾 の 有 無 (3) 差 止 め 及 び 廃 棄 請 求 の 可 否 (4) 著 作 権 侵 害 に よ る 損 害 賠 償 請 求 権 は , 消 滅 時 効 又 は 除 斥 期 間 の 経 過 に よ り 消 滅 し て い る か 。 (5) 著 作 権 侵 害 に よ る 損 害 額 (6) 著 作 権 法 1 1 6 条 1 項 に 基 づ く 名 誉 回 復 等 の 措 置 請 求 の 可 否 ア 被 告 各 仏 画 を 被 告 書 籍 に 掲 載 す る こ と 等 は , 「 著 作 者 人 格 権 を 侵 害 す る 行 為 」 又 は 「 著 作 権 法 6 0 条 に 違 反 す る 行 為 」 ( 「 著 作 者 が 存 し て い る と し た な ら ば そ の 著 作 者 人 格 権 の 侵 害 と な る べ き 行 為 」 ) ( 著 作 権 法 1 1 6 条 1 項 ) に 該 当 す る か 。 イ 名 誉 回 復 等 の 措 置 と し て の 謝 罪 広 告 の 適 否 第 3 争 点 に 対 す る 当 事 者 の 主 張 1 争 点 (1)ア ( 原 告 仏 画 1 の 著 作 物 性 ) に つ い て ( 原 告 ら の 主 張 ) (1)ア 原 告 仏 画 1 は , い わ ゆ る 模 写 作 品 で あ る と こ ろ , 模 写 作 品 が 単 に
原 画 に 付 与 さ れ た 創 作 的 表 現 を 再 現 し た だ け の も の で あ り , 新 た な 創 作 性 が 付 与 さ れ た も の と は 認 め ら れ な い 場 合 に は , 原 画 の 複 製 物 で あ る と 解 す べ き で あ る 一 方 , 模 写 作 品 に , 原 画 制 作 者 に よ っ て 付 与 さ れ た 創 作 的 表 現 と は 異 な る , 模 写 制 作 者 に よ る 新 た な 創 作 的 表 現 が 付 与 さ れ て い る 場 合 に は , 上 記 の 意 味 の 「 模 写 」 を 超 え る も の で あ り , そ の 模 写 作 品 は 原 画 の 二 次 的 著 作 物 と し て 著 作 物 性 を 有 す る も の と 解 す べ き で あ る 。 イ F 氏 に よ る 原 図 の 復 原 方 法 は , 下 記 (2)に 述 べ る と お り , 従 来 行 わ れ て き た 模 写 の 方 法 と は 異 な る 極 め て 独 特 の も の で あ り , 原 告 仏 画 1 に は , 原 図 の 創 作 的 表 現 と は 異 な る , 新 た な 創 作 的 表 現 が 付 与 さ れ て お り , 原 告 仏 画 1 は , 原 図 か ら 感 得 さ れ る 創 作 的 表 現 の み が 模 写 作 品 か ら 覚 知 さ れ る に す ぎ な い も の に 当 た ら な い 。 (2)ア す な わ ち , 従 来 行 わ れ て き た 古 画 の 模 写 方 法 に は , 「 敷 き 写 し 」 ( 原 画 の 上 に 薄 紙 を 載 せ , そ れ に 透 か し て 原 画 を 写 す 方 法 ) と 「 揚 げ 写 し 」 ( 原 画 の 上 に 透 き 通 ら な い 程 度 の 稍 紙 を 載 せ , 一 端 を 文 鎮 で 押 さ え , 一 端 を 細 巻 き に し , 紙 を 上 下 し な が ら 原 画 の 残 像 の 消 え な い う ち に 紙 に 写 す 方 法 ) が あ る が , こ れ ら の 方 法 は , で き る だ け 正 確 に 原 画 を 模 写 す る た め の 方 法 で あ る た め , 原 画 の 線 描 が 制 作 当 時 の ま ま 残 っ て い る 場 合 に は , 模 写 作 品 に は こ れ と 全 く 同 じ 線 描 が 再 現 さ れ , ま た , 原 画 に 剥 落 が あ る 場 合 に は , こ の 部 分 を 模 写 す る こ と は で き ず , 仮 に 剥 落 部 分 の 線 描 や 色 彩 を 想 像 し て 描 い た 場 合 に は , 剥 落 し て い な い 部 分 と 剥 落 部 分 を 想 像 で 描 い た 部 分 と の 整 合 性 を 保 て ず , 木 に 竹 を 接 い だ よ う な 画 と な っ て し ま う と い う 特 徴 が あ る 。 イ こ れ に 対 し , F 氏 の 復 原 方 法 は , 復 原 の 対 象 と な る 仏 画 を , こ れ を 所 蔵 し て い る 美 術 館 等 に お い て 長 時 間 に わ た り じ っ と 観 察 し , そ の 線 描 と 色 彩 を 紙 に 臨 模 し , こ れ を 自 宅 に 持 ち 帰 っ て , 臨 模 し た 紙 に 基 づ
い て 復 原 す る と い う 方 法 で あ っ た 。 す な わ ち , F 氏 の 復 原 方 法 は , 原 画 に 触 れ る こ と な く , 自 ら の 理 念 と し て 脳 裏 に 刻 み 込 み 消 化 し た 上 で , そ の 思 想 的 表 現 と し て 新 た に 仏 画 を 描 き 起 こ す と い う 方 法 で あ り , 原 画 を 機 械 的 に 模 写 す る の で は な く , 臨 模 し た 紙 に 記 載 さ れ た 線 描 と 色 彩 の 情 報 を 元 に , 専 ら F 氏 自 身 の 経 験 , 仏 教 や 仏 画 に つ い て の 知 識 , 卓 越 し た 技 術 等 を も っ て 新 た に 仏 画 を 描 き 起 こ す の で あ る 。 し た が っ て , 原 画 の 線 描 や 色 彩 が 制 作 当 時 の ま ま 残 っ て い る 場 合 で あ っ て も , 復 原 し た 作 品 の 線 描 や 色 彩 は , 原 画 と 全 く 同 じ に は な ら ず , 随 所 に 相 違 点 が 見 ら れ る こ と に な る 。 ま た , 復 原 作 品 に は , 制 作 当 時 の ま ま 残 っ て い る 部 分 と 剥 落 部 分 の 区 別 は な く , 模 写 し た 部 分 と , 想 像 で 描 い た 部 分 と の 整 合 性 が 保 て な い な ど と い う 問 題 も 生 じ な い 。 F 氏 の こ の よ う な 復 原 方 法 及 び こ れ に よ り 復 原 さ れ た 画 の 独 自 性 に つ い て は , 前 記 「 復 原 國 寶 佛 画 」 出 版 当 時 の 文 化 庁 文 化 財 保 護 審 議 会 委 員 , 愛 知 県 芸 術 大 学 学 長 , 京 都 近 代 美 術 館 館 長 ら に よ り , 「 氏 の 復 原 仏 画 に は 部 分 の 破 綻 が な く , 復 原 に し て 復 原 に あ ら ざ る 気 品 と 生 気 が 感 ぜ ら れ る 。 」 , 「 そ の で き る 道 程 に し て も , 出 来 上 が っ た 結 果 に し て も , 単 な る 模 写 と は い え ぬ 。 い わ ば 起 源 に 遡 っ て の 模 写 で あ り , ま た 創 作 で あ る と も い え る 。 … 画 面 の 奥 に 潜 む 本 質 を つ か み , こ れ を 再 び 画 面 に 再 現 せ ん と す る の で あ る 。 」 , 「 黒 く な っ た り 汚 れ た り し た 原 画 で は と て も 弁 別 で き な い 多 く の 細 部 が 驚 く ほ ど 明 確 に 表 現 さ れ て い る 。 … 原 画 で は 味 わ い 得 な い 細 部 の 鮮 明 な 表 現 は , 金 棺 出 現 図 で も , そ の 他 の 仏 画 で も , さ ま ざ ま に 実 現 さ れ て , F ’ 氏 独 自 の 復 原 世 界 を 形 成 し て い る 。 」 な ど と 評 さ れ て い る と お り で あ る 。 ウ 以 上 の と お り , 原 告 仏 画 1 は , 上 記 の 復 原 方 法 に 起 因 し て , 原 図 の 具 体 的 表 現 に 大 幅 な 修 正 , 増 減 , 変 更 を 加 え , 新 た に 思 想 又 は 感 情 を 創 作 的 に 表 現 し た も の と な っ て お り , 原 図 と は 別 の 新 た な 創 作 的 表 現
を 感 得 す る こ と が で き る も の と な っ て い る 。 そ れ ゆ え に , 原 図 と 原 告 仏 画 1 に は 表 現 上 の 実 質 的 同 一 性 が な く , 原 告 仏 画 1 か ら は , 原 図 か ら 感 得 さ れ る 創 作 的 表 現 を 超 え る , 独 自 の 創 作 的 表 現 が 覚 知 さ れ る も の で あ る 。 (3) 下 記 ア な い し コ の と お り , 原 告 仏 画 1 に よ っ て , 原 図 に 加 え ら れ た 修 正 , 増 減 , 変 更 等 の 具 体 的 内 容 及 び こ れ に よ り 感 得 さ れ る べ き 新 た な 創 作 的 表 現 の 内 容 を 個 別 に み て も , 原 告 仏 画 1 に 独 自 の 創 作 性 が あ り , 著 作 物 性 が 認 め ら れ る こ と は 明 ら か で あ る 。 ア 原 告 仏 画 1 (1)( 大 仏 蓮 弁 毛 彫 ) (ア ) 原 告 仏 画 1 (1)は , 奈 良 県 東 大 寺 の 大 仏 ( 盧 舎 那 仏 座 像 ) の 台 座 の 蓮 弁 に 線 刻 さ れ た 仏 画 ( 蓮 弁 毛 彫 ) を 再 現 す る 意 図 で 制 作 さ れ た も の で あ り , F 氏 が 東 大 寺 か ら 提 供 を 受 け た 蓮 弁 毛 彫 の 拓 本 で あ る 原 図 1 の 線 描 を 参 考 に 制 作 さ れ た も の で あ る 。 原 図 1 に は 不 鮮 明 な 部 分 や 打 ち む ら が あ る 上 , 蓮 弁 毛 彫 に 存 在 す る 丸 形 の 打 刻 に よ り 欠 損 し て い る 部 分 や 汚 損 部 分 も そ の ま ま 写 し 取 ら れ て い る た め , こ れ ら の 部 分 の 線 描 は う か が い 知 る こ と が で き な い 。 ま た , 実 際 の 蓮 弁 に は 膨 ら み が あ る が , 拓 本 は こ れ を 平 面 に 写 し 取 っ た も の で あ る か ら , 蓮 弁 と の 間 に 多 少 の 歪 み や 違 い が 生 じ る 。 さ ら に , 実 物 の 蓮 弁 の 中 央 最 上 部 は わ ず か に 凹 型 に 下 が っ て い る が , 拓 本 に す る 際 に は そ の 部 分 に 紙 を 当 て る た め , 原 図 1 で は 最 上 部 が 凸 型 に 写 し 取 ら れ て い る 。 欠 損 又 は 汚 損 部 分 を 具 体 的 に み る と , 原 図 1 は , 中 央 に 釈 迦 如 来 , 左 右 に そ れ ぞ れ 1 1 体 の 菩 薩 , そ の 周 囲 に 飛 雲 す る 化 仏 が 線 描 さ れ て い る 「 釈 迦 説 法 図 」 ( 上 層 部 ) , 2 6 本 の 横 線 に よ り 2 5 区 に 分 か れ た 部 分 を 7 つ の 須 弥 山 が 支 え て い る 様 が 線 描 さ れ て い る 「 須 弥 山 世 界 図 」 ( 中 層 部 ) , そ の 下 の 「 大 蓮 華 図 」 ( 下 層 部 ) に 大 別 で
き る が , 上 層 部 に お い て , 2 2 体 の 菩 薩 中 , 数 体 の 頭 部 , 宝 冠 , 飾 り , 右 肘 及 び 天 衣 の 様 子 が 見 え な い 部 分 が あ る 。 ま た , 中 層 部 に お い て も , 汚 損 及 び 欠 損 に よ り , 見 え な い 部 分 が 存 在 す る 。 (イ ) こ れ に 対 し , 原 告 仏 画 1 (1)は , 上 層 部 に お い て , 菩 薩 の 頭 部 , 宝 冠 , 飾 り , 肘 及 び 天 衣 の 様 子 を 仔 細 に 描 き 加 え て い る 。 な お , 菩 薩 の 頭 飾 り は , そ れ ぞ れ 異 な っ て お り , 一 つ と し て 同 じ も の は な い 。 ま た , 中 層 部 に お い て , 見 え な い 部 分 を 描 き 加 え る な ど し て お り , こ れ に よ り , 楼 閣 及 び 菩 薩 頭 部 の 数 や 配 置 が , 原 図 1 と は 異 な る も の に な っ て い る 。 (ウ ) F 氏 は , そ の 知 識 及 び 経 験 に 基 づ き , 上 記 (ア )で み た 原 図 1 の 欠 損 部 分 等 を 上 記 (イ )の と お り 補 い , 原 告 仏 画 1 (1)を 制 作 し た も の で あ り , こ の よ う に 欠 損 部 分 を 細 か く 描 き , 全 体 を 詳 細 に 細 部 ま で 明 ら か に し た こ と で , 美 的 な 表 現 を 創 出 し て い る も の で あ っ て , 原 告 仏 画 1 (1)に は 創 作 性 が あ る 。 イ 原 告 仏 画 1 (2)( 釈 迦 金 棺 出 現 図 ) (ア ) 原 図 2 は , 剥 落 や 色 の 脱 落 が 進 ん で お り , 全 く 見 え な い か 不 鮮 明 な 部 分 が 存 在 す る 。 (イ ) 原 告 仏 画 1 (2)は , 原 図 2 に お い て 見 え な い 部 分 又 は 不 鮮 明 な 部 分 に つ い て , 別 紙 図 面 1 ( 釈 迦 金 棺 出 現 図 構 成 尊 像 略 図 ) に 表 示 さ れ た 各 尊 の う ち 番 号 , ○63の 眉 , ○の 兜 , ○, ⑥ , ⑱ の 顔 , ③ , ⑫ の 衣 服 を 明 確 に 描 き , ○の 右 上 に 花 を 2 輪 , ○の 右 下 に 大 き な 花 を 1 輪 描 き , ○の 右 肩 部 分 に 飾 り を 描 き , 四 隅 に 至 る ま で 明 確 な 線 描 と 色 彩 を も っ て 人 物 や 花 を 描 き 入 れ , ○の 顔 の 色 , ② の 半 襟 の 色 ・ 着 衣 の 文 様 及 び 花 紋 ・ 肩 の シ ョ ー ル 状 の 着 衣 の 形 状 や 色 な ど に つ い て 鮮 や か な 着 色 を 施 し て い る 。 ○, ○の 毛 髪 に つ い て は , 原 図 で は 1 本 ず つ 描 か れ て い る の を ま と め て 描 い て い る 。 ま た , ① の 左 側 の
木 の 枝 の 形 状 や 袈 裟 の 花 紋 を 描 き , 祭 壇 に 明 る い 着 色 を 施 し , か つ , 祭 壇 の 上 面 と 側 面 の 色 を 同 色 と し て い る 。 こ の よ う に , 原 告 仏 画 1 (2)は , 原 図 2 に お い て 全 く あ る い は ほ と ん ど 見 え な い , 細 部 の 表 現 や , 画 の 右 上 の 地 形 や 波 な ど に つ き , 隅 々 ま で 描 線 を 明 確 に 描 き 込 み , 思 い 切 っ た 着 色 を 施 す こ と に よ り , 明 る い 釈 迦 の 光 背 と 相 俟 っ て , 中 央 に 位 置 す る 釈 迦 を 華 や か に 際 立 た せ , 全 体 を 明 る い 印 象 の も の と し て い る 。 ま た , 上 記 し た 祭 壇 の 着 色 は , 祭 壇 を 周 囲 か ら 明 確 に 区 別 す る 効 果 を も た せ て い る 。 こ れ ら が 総 合 さ れ て , 原 告 仏 画 1 (2)に は 作 品 全 体 に 新 た な 美 的 表 現 が 付 加 さ れ て お り , 同 仏 画 に は 創 作 性 が あ る 。 ウ 原 告 仏 画 1 (3)( 仏 涅 槃 図 ) (ア ) 原 図 3 は , 剥 落 や 色 の 脱 落 が 進 ん で お り , 全 く 見 え な い か 不 鮮 明 な 部 分 が 存 在 す る 。 (イ ) 原 告 仏 画 1 (3)は , 原 図 3 に お い て 見 え な い 部 分 又 は 不 鮮 明 な 部 分 に 関 し , 別 紙 図 面 2 ( 仏 涅 槃 図 登 場 人 物 一 覧 ) に 表 示 さ れ た 各 尊 の う ち ○の 顔 の 細 部 を 描 き 込 み , ○の 右 側 の 宝 床 台 や 牀 台 下 部 の 飾 り ・ 敷 布 の 縁 や 内 側 の 花 紋 等 を 描 き 入 れ , ○に 顕 著 に み ら れ る と お り , 着 衣 の 模 様 や 柄 が 不 明 な 部 分 に つ い て も 細 部 ま で 描 き 込 み 大 胆 に 着 色 し て い る 。 ま た , ○右 の 沙 羅 双 樹 の 木 を 原 図 よ り も 左 に 傾 け , ○や ○, ○ら の 位 置 を 原 図 3 よ り も や や ① か ら 遠 ざ け る こ と に よ り , 釈 迦 の 左 側 に ゆ っ た り と し た 印 象 を 与 え て い る 。 ま た , 左 右 上 辺 の 地 形 や 雲 海 を 明 確 に 描 き 込 ん で い る 。 こ れ ら の 総 合 効 果 に よ り , 原 告 仏 画 1 (3)に は 気 品 と 生 気 が 与 え ら れ , 原 図 3 に 比 べ , よ り 中 央 の 釈 迦 に 焦 点 が 与 え ら れ る と い う 美 的 効 果 が 付 与 さ れ て お り , 原 告 仏 画 1 (3)に は 創 作 性 が あ る 。 エ 原 告 仏 画 1 (4)( 普 賢 菩 薩 像 )
(ア ) 原 図 4 は , 剥 落 や 色 の 脱 落 が 進 ん で お り , と り わ け 白 象 の 顎 の 向 か っ て 左 側 下 部 の 前 脚 や 他 の 脚 の 膝 か ら 下 部 分 は , 剥 落 の た め 見 え な い 状 態 と な っ て い る 。 (イ ) 原 告 仏 画 1 (4)は , 原 図 4 で は 見 え な い 又 は 明 確 で は な い 部 分 で あ る 菩 薩 の 着 衣 ( 肩 か ら 掛 け て い る 条 帛 , 足 か ら 蓮 華 座 に か け て 垂 れ て い る 天 衣 等 ) や 白 象 の 鞍 飾 り の 文 様 を 明 確 に し , か つ , 着 色 を 施 し , 一 部 は 原 図 4 と 異 な る 色 と し , ま た , 薄 色 の 天 衣 ( 菩 薩 の 蓮 華 座 の 左 右 か ら 白 象 の 頭 部 ・ 臀 部 に か け て 垂 れ て い る も の ) を 描 い て い る 。 ま た , 白 象 に つ い て , 鼻 に 皺 を 描 い て 表 情 を 明 確 に し , 首 回 り や 顎 , 臀 部 付 近 か ら 垂 れ て い る 飾 り を 明 確 に 描 き 入 れ , か つ , 脚 及 び 足 下 の 踏 割 蓮 華 を 新 た に 描 き 起 こ し て い る 。 原 告 仏 画 1 (4)は , 上 記 の 各 点 を 含 め , 全 体 に 線 描 と 色 彩 を 明 瞭 に す る こ と に よ り , 原 図 4 に 比 べ て 画 全 体 の 表 現 を 明 確 に し て , 看 者 に 強 い 感 興 を 与 え る も の と な っ て お り , 創 作 性 が あ る 。 オ 原 告 仏 画 1 (5)( 阿 弥 陀 三 尊 及 童 子 図 ) (ア ) 原 図 5 は , 阿 弥 陀 仏 の 印 相 の う ち , 人 差 し 指 と 中 指 の 形 が 不 明 で あ る な ど , く す ん で 判 然 と し な い 箇 所 が あ る 。 ま た , 全 体 に 赤 み が か っ て お り , 各 部 分 の 色 の 差 異 が 明 瞭 で は な い 。 (イ ) 原 告 仏 画 1 (5)は , 阿 弥 陀 仏 の 中 指 が 人 差 し 指 よ り も 内 側 に 折 ら れ , 指 の 間 に は 水 掻 き が 描 か れ て い る 。 ま た , 両 親 指 の 背 の 上 に , 胸 筋 の 端 と 思 わ れ る 線 が 描 か れ て い る 。 原 告 仏 画 1 (5)は , こ の よ う に 原 図 5 で は 判 然 と し な い 箇 所 に つ い て 明 確 な 描 線 を 加 え て い る 上 , 光 背 の 色 を 複 数 に 塗 り 分 け , 全 体 を 明 る い 色 調 と し て , 画 全 体 に 気 品 と 威 厳 を 与 え て お り , 原 告 仏 画 1 (5)に は 創 作 性 が あ る 。 カ 原 告 仏 画 1 (6)( 阿 弥 陀 聖 衆 来 迎 図 ) (ア ) 原 図 6 は , 色 の 脱 落 等 に よ り , 菩 薩 の 持 つ 楽 器 や 着 衣 の 模 様 ,
顔 等 に つ き , 見 え な い 又 は 判 然 と し な い 部 分 が あ る 。 (イ ) 原 告 仏 画 1 (6)は , 別 紙 図 面 3 に 表 示 さ れ た 各 尊 の う ち , 番 号 ⑬ の 太 鼓 台 座 の 前 面 の 模 様 を , 原 図 6 と 異 な り 全 て 同 じ 色 彩 で 描 き , ま た , 原 図 に お い て ほ ぼ 見 え な い 部 分 で あ る , ⑩ , ⑪ の 楽 器 の 弦 や 柱 , ② , ③ , ⑪ の 着 衣 や 飾 り の 模 様 , ② , ③ の 蓮 華 座 の 模 様 , ○の 菩 薩 の 顔 を 細 部 ま で 明 確 に 描 き 込 ん で お り , ○の 菩 薩 の 顔 の 右 上 部 分 を 明 確 に 描 い て い る 。 ま た , ○の 持 物 ( 旗 ) の 竿 の 帯 状 の 模 様 や , ③ の 飾 り な ど に つ い て 大 胆 な 着 色 を 施 し て い る 。 原 告 仏 画 1 (6)は , こ れ ら に よ り , 原 図 6 に 比 べ て , 画 全 体 を 華 や か な 印 象 の も の と し , 看 者 に よ り 強 い 美 的 印 象 を 与 え て お り , 創 作 性 が あ る 。 キ 原 告 仏 画 1 (7)( 不 動 明 王 像 ) (ア ) 原 図 7 は , 明 王 の 額 が 広 く 面 長 で あ り , 衣 服 ( 条 帛 〔 じ ょ う は く 〕 ) の 襞 の 様 子 や 装 身 具 の 詳 細 に つ い て 不 明 な 箇 所 が あ る 上 , 瑟 瑟 座 ( し つ し つ ざ ) 側 面 の 色 は 脱 落 が 激 し く , 赤 色 と 黄 色 以 外 は 判 別 不 能 で あ る 。 (イ ) 原 告 仏 画 1 (7)は , 明 王 の 額 を 狭 く 丸 顔 に 描 い て お り , ま た , 衣 服 の 襞 を 数 層 に 描 き , 装 身 具 ( 正 面 腹 部 付 近 , 左 右 の 膝 頭 の 下 ) を 丁 寧 に 描 き 込 み , さ ら に , 瑟 瑟 座 に 赤 , 黄 色 以 外 に 青 や 緑 を 使 用 し , 配 色 を 再 構 成 し て い る 。 原 告 仏 画 1 (7)は , 上 記 の と お り 明 王 の 顔 を 額 が 狭 く 丸 顔 と し た こ と 及 び 瑟 瑟 座 の 配 色 を 再 構 成 し た こ と に よ り , 全 体 に 原 図 7 よ り 明 る い 印 象 を 与 え る も の と な っ て お り , ま た , 着 衣 や 装 身 具 を 明 確 に 描 い た こ と に よ り , 明 王 の 華 麗 さ を 際 立 た せ る と と も に 美 的 効 果 を 生 み 出 し て お り , 創 作 性 が あ る 。 ク 原 告 仏 画 1 (8)( 不 動 明 王 像 〔 五 大 尊 の 内 〕 )
(ア ) 原 図 8 は , 波 , 岩 座 , 不 動 明 王 の 瓔 珞 ( よ う ら く ) 等 の 位 置 , 形 状 , 色 等 が 明 確 で は な く , 明 王 の 頭 髪 の 形 状 ( 顔 向 か っ て 右 側 に 垂 れ て い る 髪 の 編 み 方 等 ) は よ く 見 え な い 。 ま た , 左 右 の 童 子 の 肌 の 色 や 顔 の 表 情 等 は 不 明 確 で あ り , 足 首 や 上 腕 に 巻 か れ た 布 の 色 も 不 明 で あ る 。 ま た , 明 王 が 右 手 に 持 っ て い る 剣 は 細 長 い 。 (イ ) 原 告 仏 画 1 (8)は , 岩 座 や そ の 周 辺 の 波 を 明 確 に 描 い て 着 色 を 施 し , ま た , 左 右 の 童 子 の 着 衣 に 青 色 で 着 色 し , 右 側 の 童 子 の 顔 の 表 情 も 描 線 を 描 き 入 れ て 明 確 な も の と し , か つ , 肌 の 露 出 部 に つ い て , 顔 の 色 と 同 じ 着 色 を 施 す な ど し て , 童 子 の 存 在 を 際 立 た せ て い る 。 ま た , 明 王 の 髪 の 編 み 方 や 形 状 , 頭 髪 内 部 の 形 状 を 明 確 に 描 く こ と に よ り 質 感 を 与 え , 衣 服 の 模 様 や 瓔 珞 を 明 確 に 描 き 込 み , 左 手 の 人 差 し 指 に つ い て は 原 図 8 よ り も 長 く す る ( 第 一 関 節 か ら 下 も 描 く ) こ と に よ り , 長 く し な や か な 印 象 を 与 え る 一 方 , 右 手 に 持 つ 剣 は 原 図 8 よ り 太 く 短 く す る こ と に よ り , た く ま し い 印 象 を 与 え て い る 。 こ れ ら に よ り , 原 告 仏 画 1 (8)は 全 体 的 に 独 自 の 美 的 表 現 を 生 み 出 し て お り , 創 作 性 が あ る 。 ケ 原 告 仏 画 1 (9)( 訶梨帝母像) (ア) 原図9は,画面左下の童子の左手の親指が他の指とそろい,手のひ らと訶梨帝母の袖口の花弁とが接近している。また,訶梨帝母の襦袢の 裾から見える模様は不明であり,襟が直線的かつ鋭角的で,両肩にまと う天衣の裾が,画面右下において台座の角と接着している。さらに,抱 かれている童子が握る枝が指に隠れて一部見えない。 (イ) 原告仏画1(9)は,原図9と比較して,左下の童子につき,親指を 他の指と離すことで強い感情表現を感得させるものとなっており,また, 手のひらと訶梨帝母の袖口付近の花弁との間隔を離すことで,原図9よ りも童子の存在が強く感じられるものとなっている。また,訶梨帝母の
着衣に花紋を描き入れ,青い襟を原図9よりも柔らかくゆったりした感 じとし,白い襟の角度も緩やかにすることにより,ゆったりした印象を 与えている。また,抱かれている童子の持つ枝も全て見せるなど,全体 的に大胆な着色を施したことと相俟って,人物の表情,たたずまい等が 明確になり,美的表現が創出されており,創作性がある。 コ 原告仏画1(10)(高雄曼荼羅) (ア) 原告仏画1(10)は,胎蔵界曼荼羅である原図10を復原したもので あって,「大日経」に説かれている悟りの真実のあり方を図示し,大日 如来を中心とした仏教的な宇宙観を図画的に表現したものである。した がって,原図10を復原するに当たっては,曼荼羅を構成する400体 以上の諸尊のみならず,諸院を区切る枠(文様帯)や文様帯の中の模様 (文様)まで含めて,細部に至るまで統一的かつ精緻に描く必要がある。 しかし,原図10は損傷が激しいため,約400体の諸尊の形状,文 様帯と文様,外縁装飾の具体的表現を原図10から把握することは困難 である。また,「三本両部曼荼羅集」からは,諸尊の形状は把握できる が,中台八葉院の背景の模様,諸尊の光背,釈迦院の中央の東方初門, 文殊院と外金剛部院との間の門は描かれておらず,その形状を把握でき ない。さらに,F氏が文様帯,文様及び外縁装飾部分の制作に当たり参 照した「研究報告書『高雄曼荼羅』」には,文様の一描写例が掲載され, 文様帯の配置の概説及び文様の形状と配置の説明がされているのみで, 文様の形状の細部にわたる具体的表現や基本単位となる文様の大きさは 不明であり,また,各文様帯の中に,文様をどのような大きさでいくつ 描いていくかは,一部を除いて不明である。加えて,外縁装飾について は,描写例を掲載したものはなく,上記研究報告書にも,配置の説明及 び筆者の推論が記載されているのみであり,具体的表現は明らかにされ ていない。
(イ) これに対し,原告仏画1(10)は,F氏の長年の経験による洞察力と 仏画に関する深い知識に基づき,原図10や参考資料からは把握できな い中台八葉院の背景模様,諸尊の光背,東方初門,文殊院と外金剛部院 との間の門などを描いており,しかも,中台八葉院以外の諸院には,各 諸院内の仏画の背景に模様を描かず,各尊一体一体が背景となる紺地と の対照で浮き彫りになるように表現されている。また,文様帯及び文様 については,文様帯の位置や形状を独自に決定し,その中の文様の細部 にわたる具体的表現,基本単位となる文様の大きさ,各文様帯の中で文 様をどのような大きさでいくつ描いていくか等を独自に決定して,完成 度の高い精緻な文様帯及び文様を描き上げている。さらに,外縁装飾に ついては,上記参考資料記載の筆者の推論とも全く異なる独自の模様が 精緻に描き上げられている。 (ウ) 原告仏画1(10)は,上記のとおり文様帯及び文様を精緻に描き込む ことにより,諸院を鮮やかに区分し,連続性と均質性からなる美的表現 をより明確に現出させるとともに,曼荼羅全体に高い芸術性を与え,同 時に諸尊も全体に埋没することなく,一体一体が個性を主張し,看者を して,一つのまとまりのある宇宙を体感させ,曼荼羅本来の仏教的宇宙 観へと誘うものとなっており,原告仏画1(10)には創作性がある。 ( 被 告 の 主 張 ) (1) 原 告 ら の 主 張 は 争 う 。 (2)ア 原 告 仏 画 1 の 創 作 性 の 有 無 は , 各 仏 画 に つ い て 原 図 と の 比 較 に お い て 新 た な 創 作 性 が 付 与 さ れ て い る か 否 か で 判 断 さ れ る べ き も の で あ る と こ ろ , F 氏 に よ る 原 告 仏 画 1 の 制 作 は , 信 仰 の 対 象 と し て の 仏 画 の 復 原 で あ り , 古 仏 画 に 描 か れ た 仏 の 元 の 姿 ・ 当 初 の 描 か れ た 姿 へ の 復 原 で あ っ て , 新 た な 仏 画 の 創 作 で は な い 。 そ う す る と , 原 告 仏 画 1 は , 各 原 図 の 特 徴 的 表 現 を 変 更 し た も の で は な く , 各 原 図 に 新 た に 思
想 又 は 感 情 の 創 作 的 表 現 を 付 加 し た も の で は な い か ら , 著 作 物 に 当 た ら な い 。 な お , 原 告 ら は , F 氏 の 復 原 手 法 の 独 自 性 を 主 張 す る が , こ の 点 に つ い て は , 東 京 地 裁 平 成 1 8 年 3 月 2 3 日 判 決 が , 「 原 画 と 模 写 作 品 と の 間 に 表 現 上 の 実 質 的 同 一 性 が 存 在 す る 場 合 に は , 模 写 制 作 者 が 模 写 制 作 の 過 程 に お い て ど の よ う に 原 画 を 認 識 し , ど の よ う に こ れ を 再 現 し た と し て も , あ る い は , 模 写 行 為 自 体 に 高 度 な 描 画 的 技 法 が 採 用 さ れ て い た と し て も , そ れ ら は い ず れ も そ の 結 果 と し て 原 画 の 創 作 的 表 現 を 再 現 す る た め の も の で あ る に す ぎ ず , 模 写 制 作 者 の 個 性 が そ の 模 写 作 品 に 表 現 さ れ て い る も の で は な い 。 」 と 判 示 し て お り , 原 告 ら の 上 記 主 張 を 明 確 に 否 定 し て い る と こ ろ で あ る 。 イ 原 告 ら は , 原 告 仏 画 1 (1)な い し (9)に つ い て , 各 原 図 と の 相 違 点 を 多 数 主 張 す る が , 上 記 主 張 の 大 部 分 は , 原 図 を 仔 細 に 見 る こ と に よ り 把 握 す る こ と が で き , 又 は , 原 図 の 線 描 や 色 彩 が 残 存 し て い る 箇 所 か ら 推 測 し て 描 く こ と が で き る も の で あ る 。 ま た , 上 記 相 違 点 は , い ず れ も 細 部 に お け る 些 細 な 差 異 に す ぎ ず , こ の よ う な 差 異 が あ る こ と に よ り , 原 告 仏 画 1 (1)な い し (9)に 創 作 性 が 生 じ る も の で は な い 。 ウ 原 告 仏 画 1 (10)は , 原 図 1 0 を 忠 実 に 復 原 し た も の で あ り , F 画 伯 が 独 自 に 描 い た 部 分 は ほ と ん ど 存 在 し な い か , 仮 に 存 在 し た と し て も , 全 体 か ら み れ ば わ ず か な 部 分 に し か す ぎ な い 。 す な わ ち , 原 告 仏 画 1 (10)の う ち , 各 尊 の 形 状 , 文 様 に つ い て は , 原 図 1 0 の ほ か , 三 本 両 部 曼 荼 羅 集 , 御 室 版 曼 荼 羅 尊 像 集 に よ っ て 把 握 で き る 上 , 曼 荼 羅 に お い て は , 各 尊 の 配 置 , 中 台 八 葉 院 の 結 界 が 五 色 の 線 で 構 成 さ れ る こ と 等 の 各 種 の 決 め 事 が 存 在 す る か ら , 原 告 仏 画 1 (10)は , 原 図 1 0 に 加 え , 上 記 尊 像 集 や 他 の 曼 荼 羅 を 参 照 す る こ と な ど に よ り , 当 然 に 復 原 で き る も の で あ る 。
こ の 点 , 原 告 は , 各 種 資 料 を 参 照 し て も , 文 様 帯 の 位 置 , 形 状 等 に つ い て 把 握 で き な い 部 分 が あ り , ま た , 外 縁 装 飾 に つ い て は , 参 考 と す る こ と の で き る 資 料 が な い と 主 張 す る 。 し か し , 前 記 「 研 究 報 告 書 『 高 雄 曼 荼 羅 』 高 雄 曼 荼 羅 の 研 究 」 等 を 参 照 す れ ば , 文 様 帯 , 文 様 , 各 尊 の 形 状 , 光 背 な ど が 相 当 程 度 判 別 で き る の で あ り , 原 図 1 0 を 仔 細 に 見 れ ば , こ れ ら の 点 に つ い て よ り 多 く の 情 報 を 得 る こ と が で き る も の と 解 さ れ る 。 ま た , 外 縁 装 飾 に つ い て は , 原 告 仏 画 1 (10)の 外 縁 装 飾 部 分 は 長 谷 寺 板 ( 乙 3 5 の 2 ) に 描 か れ て い る も の と 同 様 で あ る 。 ま た , 仮 に , 参 照 す る こ と の で き る 資 料 が な く , F 氏 が 独 自 に 描 い た 部 分 が 存 在 す る と し て も , そ の よ う な 部 分 は 仏 画 全 体 か ら す れ ば わ ず か な 部 分 に と ど ま る と こ ろ , 胎 蔵 界 曼 荼 羅 は , 各 尊 や そ れ ら の 配 置 を 中 心 と し て 世 界 観 を 表 し た も の で あ り , 原 告 ら の 指 摘 す る よ う な 原 図 1 0 と の 相 違 点 を も っ て , 新 た な 創 作 的 表 現 が 付 与 さ れ た と み る こ と の で き る よ う な も の で は な い 。 2 争 点 (1)イ ( 被 告 仏 画 1 は , 原 告 仏 画 1 を 複 製 し た も の に 当 た る か 。 ) に つ い て ( 原 告 ら の 主 張 ) (1) 原 告 仏 画 1 と 被 告 仏 画 1 は , 原 告 仏 画 1 と そ の 各 原 図 と の 間 に 存 在 す る 多 数 の 相 違 点 に 関 し , 極 め て 類 似 し た 表 現 と な っ て お り , 被 告 仏 画 1 が 原 告 仏 画 1 に 依 拠 し て 制 作 さ れ た も の で あ る こ と は 明 ら か で あ る 。 ま た , 原 告 仏 画 1 の 創 作 性 の 根 拠 で あ る , 原 告 仏 画 1 と そ の 各 原 図 と の 間 に 存 在 す る 相 違 点 に 関 し , 被 告 仏 画 1 は , 原 告 仏 画 1 と 実 質 的 に 同 一 の も の と な っ て い る 。 し た が っ て , 被 告 仏 画 1 は 原 告 仏 画 1 を 複 製 し た も の に 該 当 す る 。 (2)ア 被 告 は , 原 告 仏 画 1 に 依 拠 し て 被 告 仏 画 1 を 制 作 し た こ と を 否 認 す る が , 被 告 の 主 張 に よ れ ば , 被 告 は , 被 告 仏 画 1 (1)に 関 し , 東 大
寺 に お い て 大 仏 蓮 弁 毛 彫 の 図 像 ( 白 描 画 ) を 閲 覧 し て デ ッ サ ン を 制 作 し , 大 蓮 弁 の 模 型 を 撮 影 し , 更 に 後 日 , 模 型 を 見 て 中 層 部 の 楼 閣 等 の 位 置 関 係 等 を 計 測 し て デ ッ サ ン を 修 正 し , 被 告 仏 画 1 (1)を 制 作 し た と い う の で あ る か ら , 蓮 弁 の 最 上 部 は 模 型 と 同 様 に 凹 状 と な る は ず で あ る が , 被 告 仏 画 1 (1)は , 原 告 仏 画 1 (1)と 同 様 に 凸 型 と な っ て い る 。 ま た , 中 層 部 の 楼 閣 , 菩 薩 頭 部 の 位 置 関 係 等 は , 蓮 弁 模 型 上 の 配 置 が 写 し 取 ら れ て い る は ず で あ る が , 被 告 仏 画 1 (1)の 中 層 部 の 楼 閣 及 び 菩 薩 頭 部 の 配 置 は 原 告 仏 画 1 (1)と 同 様 の も の と な っ て い る 。 さ ら に , 被 告 仏 画 1 (1)は , 模 型 に お い て 損 傷 又 は 汚 損 し て い る 部 分 に つ い て も , 原 告 仏 画 1 (1)と 同 一 の 表 現 と な っ て い る 。 こ れ ら の 点 に 鑑 み れ ば , 原 告 仏 画 1 (1)に 依 拠 し て 制 作 さ れ た も の で あ る こ と は 明 ら か で あ る 。 イ ま た , 被 告 仏 画 1 (10) に 関 し , 被 告 は , 「 御 室 版 曼 荼 羅 尊 像 集 」 ( 乙 1 4 , 3 1 , 3 3 の 1 。 以 下 「 御 室 版 」 と い う 。 ) を 主 と し て 参 照 し て 制 作 し た と 主 張 し , 原 告 仏 画 1 (10)に 依 拠 し た こ と を 否 認 す る が , 被 告 仏 画 1 (10)と 御 室 版 と の 間 に は , ① 中 台 八 葉 院 ( な お , 各 院 の 配 置 に つ い て は 別 紙 図 面 4 の と お り 。 ) の 外 側 の 五 重 線 の 有 無 , 八 葉 の 大 き さ ・ 形 状 , 背 景 模 様 の 形 状 , 四 隅 の 壺 の 形 状 , ② 中 台 八 葉 院 以 外 の 院 に お け る 背 景 模 様 の 有 無 , ③ 釈 迦 院 の 中 央 の 門 中 央 の 頭 上 の 宝 物 の 形 状 , 同 門 左 右 の 象 の 顔 ・ 宝 物 の 形 状 , 門 柱 の 長 さ ・ 形 状 ・ 模 様 の 数 , ④ 文 殊 院 の 中 央 の 門 の 上 方 の 4 体 の 侍 仏 の 位 置 , 左 右 端 の 壺 の 有 無 ・ 模 様 , ⑤ 蘇 悉 地 院 左 右 端 の 壺 の 有 無 ・ 模 様 の 点 に お い て 相 違 し て お り , か つ , 上 記 相 違 点 に 関 し , 被 告 仏 画 1 (10) は 原 告 仏 画 1 (10)と 同 様 の も の と な っ て い る 。 ま た , 被 告 仏 画 1 (10)は , 御 室 版 に お い て 光 背 が 描 か れ て い な い 仏 画 に 光 背 を 付 し , ま た , 御 室 版 に お い て 大 き さ や 形 状 の 同 じ 光 背 が 描 か れ て い る の に 対 し , 大 き さ が 不 揃 い
で , か つ , 火 焔 の 方 向 も 一 定 し な い 光 背 が 描 か れ て い る が , こ の 点 も 原 告 仏 画 1 (10)と 同 様 で あ る 。 さ ら に , 文 様 , 文 様 帯 及 び 外 縁 装 飾 に 関 し , 参 照 で き る 資 料 が ほ と ん ど 存 在 し な い こ と は 争 点 (1)ア で 主 張 し た と お り で あ る と こ ろ , 被 告 仏 画 1 (10)は , こ の 点 に つ い て も 原 告 仏 画 1 (10)と 全 く 同 様 に 描 か れ て い る ( 被 告 は , 外 縁 装 飾 に つ き , 長 谷 寺 板 を 参 照 し て 描 い た と 主 張 す る が , 長 谷 寺 板 に お け る 外 縁 装 飾 と 原 告 仏 画 1 (10), 被 告 仏 画 1 (10)を 見 比 べ れ ば 明 ら か な と お り , 被 告 仏 画 1 (10)の 外 縁 装 飾 は , 長 谷 寺 板 に お け る も の と は 全 く 異 な る も の で あ り , 原 告 仏 画 1 (10)の も の に 酷 似 し て い る 。 ) 。 な お , 被 告 は , 原 告 仏 画 1 (10)と 被 告 仏 画 1 (10)の 相 違 点 と し て 種 々 の 点 を 主 張 す る が , 上 記 主 張 の う ち , 原 告 仏 画 1 (10)に お い て 描 か れ て い な い 点 が 被 告 仏 画 1 (10)で は 描 か れ て い る と す る 点 は , 原 告 仏 画 1 (10)で も 同 様 に 描 か れ て お り , た だ 銀 泥 で 描 か れ て い る た め コ ピ ー 機 で は 写 す こ と が で き な い だ け で あ る 。 こ れ ら の 点 に 鑑 み れ ば , 被 告 仏 画 1 (10)が 原 告 仏 画 1 (10)に 依 拠 し て 制 作 さ れ た も の で あ る こ と は 明 ら か で あ る 。 ( 被 告 の 主 張 ) (1) 原 告 ら の 主 張 は , 事 実 に つ い て は 否 認 し , 法 的 主 張 は 争 う 。 (2) 依 拠 及 び 複 製 該 当 性 ア 被 告 仏 画 1 (1) 被 告 は , 奈 良 国 立 博 物 館 に お い て F 氏 作 の 大 仏 蓮 弁 毛 彫 の 図 像 ( 白 描 画 ) を 見 た 際 に , 上 記 白 描 画 が , 被 告 が か ね て よ り 描 き た い と 思 っ て い た 東 大 寺 二 月 堂 の 本 尊 の 身 光 に 似 て い た こ と か ら , 大 仏 蓮 弁 毛 彫 を 描 こ う と 思 い 立 っ た 。 そ こ で , 被 告 は , 平 成 元 年 3 月 , 東 大 寺 の 資 料 室 で 蓮 弁 毛 彫 の 白 描 画 を 閲 覧 し , 図 像 の 尺 を 測 り , そ の 場 で 原 寸 大 の デ ッ サ ン を 制 作 し , 大 蓮 弁 の 模 型 を 写 真 撮 影 し た 。 ま た , 被 告 は , 平 成 2 年 6 月 1 9 日 に も 東 大 寺 を 訪 れ , 大 蓮 弁 の 模 型 表 面 の 中 層 部 内
の 楼 閣 , 菩 薩 頭 部 の 位 置 関 係 等 を 計 測 し , こ れ に 基 づ き デ ッ サ ン を 修 正 し た 。 そ の 後 , 被 告 は , 各 尊 の 配 置 を 最 終 的 に 決 定 し , 被 告 仏 画 1 (1)を 制 作 し た も の で あ り , 原 告 仏 画 1 (1)に 依 拠 し た も の で は な い か ら , 被 告 仏 画 1 (1)は 原 告 仏 画 1 (1)を 複 製 し た も の に 当 た ら な い 。 イ 被 告 仏 画 1 (2) (ア ) 被 告 は , 常 々 , 有 名 な 仏 画 で あ る 原 図 2 ( 釈 迦 金 棺 出 現 図 ) を 描 き た い と 思 っ て お り , 「 日 本 の 仏 画 第 二 期 第 5 巻 国 宝 釈 迦 金 棺 出 現 図 松 永 記 念 館 」 ( 学 習 研 究 社 刊 , 乙 5 の 1 ) や 「 原 色 日 本 の 美 術 7 仏 画 」 ( 小 学 館 刊 , 乙 5 の 2 ) に 掲 載 さ れ て い る 原 図 2 の 釈 迦 像 を デ ッ サ ン し て 大 き さ を 決 め , 次 に , 原 図 2 に 描 か れ て い る 各 尊 を デ ッ サ ン し た 上 , 様 々 な 大 き さ の 拡 大 又 は 縮 小 コ ピ ー を 作 成 し て 釈 迦 の デ ッ サ ン の 周 囲 に 配 置 し , そ れ を 見 な が ら デ ッ サ ン を 描 く と い う 作 業 を 繰 り 返 す こ と に よ り , 最 終 的 な デ ッ サ ン を 完 成 さ せ た 。 そ の 上 で , 被 告 は , 5 年 ほ ど か け て 白 描 画 を 完 成 さ せ , 彩 色 し て 被 告 仏 画 1 (2)を 制 作 し た も の で あ り , 原 告 仏 画 1 (2)に 依 拠 し て 被 告 仏 画 1 (2)を 制 作 し た も の で は な い 。 こ れ は , 被 告 仏 画 1 (2)が , ○ の 合 掌 し た 指 の 交 差 の 有 無 , ○の 彩 色 , ○ の 瞳 の 向 き , ○ の 眉 の 形 ・ 衣 服 の 皺 , ○の 頬 の 線 や 頭 頂 部 の 頭 髪 の 有 無 ・ 肌 の 色 , ○の 毛 髪 の 色 ・ 髭 の 量 な ど , 原 告 仏 画 1 (2)と の 比 較 に お い て , 多 数 の 相 違 点 が あ る こ と か ら も 明 ら か で あ る 。 (イ ) 以 上 の と お り , 被 告 は , 被 告 仏 画 1 (2)の 作 成 に 当 た り , 原 告 仏 画 1 (2)に 依 拠 し て い な い 上 , 被 告 仏 画 1 (2)は , 原 告 仏 画 1 (2) と 多 数 の 点 で 相 違 す る こ と か ら , 被 告 仏 画 2 (1)は 原 告 仏 画 1 (2)を 複 製 し た も の に 当 た ら な い 。 ウ 被 告 仏 画 1 (3) (ア ) 被 告 は , 昭 和 5 9 年 9 月 2 日 , 弘 法 大 師 御 入 定 1 1 5 0 年 御 遠
忌 記 念 の 弘 法 大 師 展 で 原 図 3 ( 仏 涅 槃 図 ) を 拝 観 し て 感 銘 を 受 け , そ の 後 , 高 野 山 霊 宝 館 館 長 の 取 り 計 ら い で 原 図 3 を 度 々 拝 観 し た 上 , 「 原 色 日 本 の 美 術 7 仏 画 」 ( 乙 6 の 2 ) 掲 載 の 原 図 3 の 写 真 や , 細 部 に つ い て は 「 日 本 の 仏 画 第 一 期 第 五 巻 国 宝 仏 涅 槃 図 金 剛 峯 寺 」 ( 学 習 研 究 社 刊 , 乙 6 の 3 ) や 「 国 宝 応 徳 仏 涅 槃 図 の 研 究 と 保 存 」 ( 東 京 美 術 刊 , 乙 6 の 4 の 1 ・ 2 ) を 参 照 し な が ら , 被 告 仏 画 1 (3)を 制 作 し た も の で あ り , 原 告 仏 画 1 (3)に 依 拠 し た も の で は な い 。 こ れ は , 被 告 仏 画 1 (3)が , 原 告 仏 画 1 (3)と は 異 な り , 上 下 の 比 率 が 縦 長 で あ り , 各 仏 の 位 置 関 係 も 同 仏 画 と は 相 当 程 度 異 な る こ と , 被 告 仏 画 1 (3)は , 各 仏 の う ち ○の 頭 上 の 飾 り の 形 状 , 顔 の 皺 の 数 や 線 の 太 さ , 眉 ・ 髭 の 形 状 , ○が 女 性 で は な く 髭 を 生 や し た 初 老 の 老 人 と し て 描 か れ て い る こ と , 宝 床 台 の 側 面 の 幅 ・ 中 間 部 左 右 端 の 縁 取 り の 有 無 , ⑭ の 左 眉 の 形 状 , 左 手 の 数 珠 の 長 さ , ⑬ の 手 の 位 置 や 顔 の う つ む き 加 減 , ○の 冠 の 位 置 , 着 衣 の 色 彩 , 沙 羅 双 樹 の 位 置 関 係 , 幹 の 形 状 , 根 が 地 上 に 剥 き 出 し に な っ て い な い こ と な ど , 原 告 仏 画 1 (3)と の 比 較 に お い て 多 数 の 相 違 点 が あ る こ と か ら も 明 ら か で あ る 。 (イ ) 以 上 の と お り , 被 告 仏 画 1 (3)は , 原 告 仏 画 1 (3)に 依 拠 し て 作 成 さ れ た も の で は な い こ と に 加 え , 上 記 の と お り , 原 告 仏 画 1 (3) と 多 数 の 点 で 相 違 し , か つ , 被 告 仏 画 1 (3)は 紺 地 金 泥 画 で あ る の に 対 し , 原 告 仏 画 1 (3)は 彩 色 画 で あ る と い う 点 で も 相 違 す る か ら , 被 告 仏 画 1 (3)は 原 告 仏 画 1 (3)を 複 製 し た も の に 当 た ら な い 。 エ 被 告 仏 画 1 (4) (ア ) 被 告 は , 「 原 色 日 本 の 美 術 7 仏 画 」 ( 乙 7 の 1 ② ) に 掲 載 さ れ て い る 原 図 4 の 写 真 に 主 と し て 依 拠 し , 被 告 仏 画 1 (4)を 制 作 し た が , 原 図 4 に お い て 損 傷 し て い る 白 象 の 脚 部 分 に つ い て は , 原 告 仏
画 1 (4)の ほ か , フ リ ア 美 術 館 所 蔵 に 係 る 普 賢 菩 薩 像 や , 個 人 所 蔵 の 普 賢 菩 薩 像 ( 乙 7 の 1 ・ 2 ) な ど を 参 照 し て 描 き , 更 に , 白 象 の 足 下 の 踏 割 蓮 華 の 色 に つ い て は , こ の 種 の 仏 画 の 一 般 的 な ル ー ル に 従 い , 赤 と 青 で 着 色 し た 。 し た が っ て , 被 告 仏 画 1 (4)は , 原 告 仏 画 1 (4)に 依 拠 し て 作 成 さ れ た も の で は な い 。 こ の 点 は , 光 背 が 三 重 か 七 重 か , 掌 及 び 足 裏 の 法 輪 の 有 無 , 蓮 華 座 の 下 の 雲 の 有 無 等 の 相 違 点 か ら も 明 ら か で あ る 。 (イ ) 加 え て , 被 告 仏 画 1 (4)は , 菩 薩 の 条 帛 の 文 様 ・ 色 , 菩 薩 の 足 か ら 蓮 華 座 に か け て 垂 れ て い る 天 衣 の 色 ・ 流 れ , 白 象 の 鼻 先 , 足 , 踏 割 蓮 華 の 色 合 い , 白 象 の 着 け て い る 飾 り , 身 光 及 び 散 華 の 有 無 の 点 で , 原 告 仏 画 1 (4)と は 異 な る も の で あ る か ら , 被 告 仏 画 1 (4)は 原 告 仏 画 1 (4)を 複 製 し た も の に 当 た ら な い 。 オ 被 告 仏 画 1 (5) (ア ) 被 告 は , 「 原 色 日 本 の 美 術 7 仏 画 」 ( 乙 8 の 1 ) や 「 浄 土 教 絵 画 」 ( 平 凡 社 刊 , 乙 8 の 2 ) に 掲 載 さ れ て い る 原 図 5 の 写 真 に 依 拠 し て 被 告 仏 画 1 (5)を 制 作 し た も の で あ り , 原 告 仏 画 1 (5)に 依 拠 し た も の で は な い 。 (イ ) 被 告 は , 彩 色 し た 仏 画 の 如 来 の 体 に 金 箔 を 置 き , 蓮 台 蓮 弁 を 盛 上 胡 粉 ( 胡 粉 で 盛 り 上 げ て 描 く 技 法 ) で 線 描 し , そ の 上 に 青 金 箔 を 置 き , ま た , 如 来 の 下 部 に 梵 字 で 「 観 音 菩 薩 」 と 「 勢 至 菩 薩 」 と 描 き 加 え て 三 尊 図 と し , 梵 字 下 方 の 蓮 台 内 側 に は 焼 い た 銀 箔 を 貼 り , 砂 子 を 振 っ て お り , 被 告 独 自 の 仏 画 を 制 作 し て い る も の で あ る か ら , 被 告 仏 画 1 (5)は 原 告 仏 画 1 (5)を 複 製 し た も の に 当 た ら な い 。 カ 被 告 仏 画 1 (6)① な い し ③ (ア ) 被 告 は , 原 図 6 ( 阿 弥 陀 聖 衆 来 迎 図 ) が 仏 画 の 最 高 傑 作 の 一 つ で あ る こ と か ら , 常 々 描 き た い と 思 っ て い た と こ ろ , 弘 法 大 師 展 に
て 原 図 6 を 拝 観 し て 感 銘 を 受 け , 高 野 山 霊 宝 館 館 長 の 取 り 計 ら い に よ り 原 図 6 を 拝 観 す る な ど し た 上 , 主 と し て 「 原 色 日 本 の 美 術 7 仏 画 」 ( 乙 1 0 の 1 ) や 「 浄 土 教 仏 画 」 ( 乙 1 0 の 2 ) の 原 図 6 の 写 真 を 参 照 し て 被 告 仏 画 1 (6)① な い し ③ を 制 作 し た も の で あ り , 原 告 仏 画 1 (6)に 依 拠 し て 被 告 仏 画 1 (6)① な い し ③ を 制 作 し た も の で は な い 。 こ の 点 は , 観 世 音 菩 薩 及 び 大 勢 至 菩 薩 の 蓮 華 座 の 蓮 弁 の 模 様 の 相 違 , 箏 の 弦 の 数 の 相 違 , 持 幡 菩 薩 の 幡 の 彩 色 の 規 則 性 の 有 無 等 か ら 明 ら か で あ る 。 (イ ) 被 告 仏 画 1 (6)は , 原 図 と は 画 の 縦 横 比 率 が 異 な る た め , 被 告 は , 下 方 に 描 か れ た 山 々 を な だ ら か に し , 雲 の 流 れ を 変 え , 海 上 の 花 を 描 か な い 等 の 独 自 の 工 夫 を 加 え た 上 , 切 り 箔 を 置 き , 短 冊 ( 幅 2 な い し 3 ㎜ の 箔 を 置 く 技 法 ) や 野 毛 ( 極 細 の 箔 を 置 く 技 法 ) を 施 し , 盛 上 胡 粉 の 上 に 色 箔 を 載 せ る な ど , 様 々 な 箔 の 技 法 を 用 い て , 被 告 独 自 の 仏 画 と し て 被 告 仏 画 1 (6)を 制 作 し て い る 。 し た が っ て , 被 告 仏 画 1 (6)① な い し ③ は 原 告 仏 画 1 (6)を 複 製 し た も の に 当 た ら な い 。 キ 被 告 仏 画 1 (7) (ア ) 被 告 は , 主 と し て 「 画 像 不 動 明 王 」 ( 同 朋 舎 出 版 刊 , 乙 1 1 の 1 ) に 掲 載 さ れ て い る 原 図 7 の 写 真 に 依 拠 し つ つ , 金 剛 寺 所 蔵 の 尊 勝 曼 荼 羅 に 描 か れ て い る 不 動 明 王 ( 乙 1 1 の 2 ) の 炎 の 形 や 画 全 体 か ら 受 け る イ メ ー ジ , 長 賀 法 印 筆 に 係 る 不 動 明 王 図 ( 乙 1 1 の 3 ) の 全 体 の バ ラ ン ス , 安 定 感 を 参 考 に 被 告 仏 画 1 (7)を 制 作 し た も の で あ り , 原 告 仏 画 1 (7)に 依 拠 し て 被 告 仏 画 1 (7)を 制 作 し た も の で は な い 。 こ の 点 は , 束 ね た 髪 の 先 端 の 形 状 の 相 違 , 瑟 瑟 座 の 側 面 の 色 及 び
模 様 の 相 違 等 か ら 明 ら か で あ る 。 (イ ) ま た , 被 告 は , カ ル ラ 炎 ( 不 動 明 王 の 光 背 の 炎 ) を 独 自 の 形 に 描 く な ど , 独 自 の 工 夫 を 施 し て 被 告 仏 画 1 (7)を 制 作 し た も の で あ り , 被 告 仏 画 1 (7)は 原 告 仏 画 1 (7)を 複 製 し た も の に 当 た ら な い 。 ク 被 告 仏 画 1 (8) 被 告 は , 醍 醐 寺 霊 宝 館 に 展 示 さ れ て い る 原 図 8 を 度 々 拝 観 し た こ と な ど か ら , 五 大 尊 を 全 て 描 こ う と 考 え , 「 日 本 の 仏 画 第 二 期 第 七 巻 国 宝 五 大 尊 像 醍 醐 寺 」 ( 学 習 研 究 社 刊 , 乙 1 2 の 1 ) 及 び 「 秘 宝 第 八 巻 醍 醐 」 ( 乙 1 2 の 2 ) に 掲 載 さ れ て い る 原 図 8 の 写 真 を 参 照 し , 被 告 仏 画 1 (8)を 制 作 し た も の で あ り , 原 告 仏 画 1 (8)に 依 拠 し て 被 告 仏 画 1 (8)を 制 作 し た も の で は な い 。 な お , 被 告 が 被 告 仏 画 1 (8) を 描 い た の は , 被 告 が F 氏 に 師 事 す る 以 前 の こ と で あ り , こ の 点 か ら も 原 告 仏 画 1 (8)へ の 依 拠 が な い こ と は 明 ら か で あ る 。 実 際 に も , 不 動 明 王 の 着 衣 の 模 様 , 岩 座 周 辺 の 波 の 飛 沫 の 描 き 方 等 が 異 な る 。 し た が っ て , 被 告 仏 画 1 (8)は 原 告 仏 画 1 (8)を 複 製 し た も の に 当 た ら な い 。 ケ 被 告 仏 画 1 (9) ( ア ) 被 告 は , 「 日 本 の 仏 画 第 一 期 第 九 巻 国 宝 訶 梨 帝 母 三 宝 院 国宝閻魔天像 醍醐寺」(学習研究社刊,乙13の1),「原色日本 の美術7仏画」(乙13の2)及び「秘宝 第八巻 醍醐」(乙13 の3)に掲載されている原図9の写真を参照し,被告仏画1(9)を制作 したものであり,原告仏画1(9)に依拠して被告仏画1(9)を制作した ものではない。両画においては,訶梨帝母の胸元の青い襟の形状が異 なっており,また,左側の童子の指の開き方や右側の童子の手に握ら れた枝の描き方や指先の描き方も異なっている。 (イ) 被告は,誰でも描けるような仏画とするため,背景を一切描かず,