- 43 - 専 攻 人間教育専攻
自ら運び、自ら作るということ ー『らしさ』に陽する一考察ー
コース 現代教育課題総合コース
氏 名
石 橋 晃指導教員 太 田 直 也
はじめに問題の所在 て、サルトノレの思想、を参照して考察していく。
「らしさ」という言葉は、あるものの特徴を
大まかに捉えて表現できる言葉として使われて 第
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章 『らしさ』とはいる。様々な「らしさ」が存在する中で、人間 サルトルの「実存は本質に先立つ」、ボーヴォ に最も密接に関わっている「らしさ
J
は、男「ら ワールの「人は女に生まれない、女になるのだ」しさ」・女「らしさ」である。この「らしさJは、 という言葉からも分かるように、人聞は初めか それが規範であるかのように人間に押し付けら ら男「らしさ
J
・女「らしさJ
を兼ね備えている れている。その理由は、「男・女だからこうであ わけではなく、それはそう振る舞うことによっ る」という考えが多数の人間に当たり前のもの で身に付けていくものである。人間は周囲との として捉えられているからである。 関わりによって、男「であるJ
・女「である」と サルトルの「実存は本質に先立つ」という思 いう「本質」を自覚し、その「本質」を少しず 想に基づけば、人聞は生まれると生物学的に男・ つ受け入れながら行動することで強化していく。女に区分されるが、その時点では「実存
J
して その強化された「本質」に従ってノ行動すること いるだけであり、成長する過程の中で、男「で が性役割を果たすことになり、男「らしさ」・女 ある」・女「である」という「本質」を身に付け 「らしさ」として表象されているのである。ていくのである。しかし、全ての人間が同じ「本
質」を同じように身に付けるというわけではな 第
2
章悼強制の形成川にもかかわらず、男・女という性のみを基 福富は、性役割の形成には、1.性役割行動の 準にした「らしさ」が押し付けられている。本 習得、
2 .
性役骨蹴の形成、3 .
性役割同→主の確 論では、男・女「らしさ」がどのようにして身 立という3つのレベルがあると述べている。に付いていくのかということ、な明虫い力を持 まず、男・女に割り当てられた役割を当たり つて押し付けられているのかということについ 前のものとして受け入れていく。次に、受け入
- 44 - れてきた性役割に自分なりの考えを含ませて性 役害蹴を形成していく。最後に、確立した自我 意識を柾会からの性役割期待や自分の性役害観 に照らし、自己像を浮き彫りにしで性役割同一 性を確立していく。この 3つのレベルの中で、
人間仕性役割を形成し、捉え直してし、く。しか し、捉え直した性役割は「こうあるべき」とい う通念には必ずしも合致しない。にもかかわら ず、男・女という性のみを基準にした「らしさ」
が強し、力を持って押し付けられている。
第
3
章 『らしさ』の押し付けサルトノレによれば、人聞は「自由」である。
そして、「自由」であるが故に不安を感じる存在 でもある。
自らの行動が、周囲の人間との共通認識とし ての「こうあるべき
J
という基準から逸脱する ことで、向性の人間と同じでなくなってしまう ということに不安を感じ、「自己欺繭」に陥って しまう。つまり、男・女「らしくjあることを 意識的・無欝梯句に演じるのである。これが「内」から押し付けられている「らしさ」である。
他者からの「まなざし」は、自分が何もの「で ある」かを決定付けるが、それは他者という存 在によって「自由」が失われているということ である。人聞は、他者からの「まなざL‑Jによ って失われた「自由」を取り戻すために、決定 付けられたらしさ」を受け入れ、そう振る舞
うことで「自由」を取り戻そうとする。これが
「外」から押し付けられている「らしさ」であ る。
このように、「らしさ」は「内」と「外jから 押し付けられている。
第
4
章個人の遺択と世会の変化性のみを基準にした「男は住事、女は家事」
という役割から逸脱した「イクメン」や「キャ リアウーマン」と呼ばれる人間の登場からも、
性役割に関する従来の基準が揺らいで、いる。
サルトノレによれば、「こうするべき」と決定す る道徳はあらかじめ存在せず、人聞が「自由J に選択することで、作っていくものである。その 選択は、社会に変化をもたらす契機になる。な ぜなら個人の選択は、人類全体をその
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劃央の方 向に一歩推し進めるからである。お わ り に 結 論
男「らしさ」・女「らしさ」に縛られてしまい、
性役割に関する従来の基準から逸脱することを 恐れて行動できなくなるのではなく、自らどの ように行動したいのかを選択することが世界に 変化をもたらす契機になる。どのような行動を 選択しても、それが新しいことであるならば批 判されることも十分にありうるが、強い信念を 持って選択し続けることで世界を少しずつ作っ
ていくことが可能になるのである。