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福井平野の地震動特性と堆積層表面波

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(1)

福井平野の地震動特性と堆積層表面波

著者 小嶋 啓介, 鳥海 勲

雑誌名 福井大学地域環境研究教育センター研究紀要 「日

本海地域の自然と環境」

巻 5

ページ 17‑28

発行年 1998‑11‑01

URL http://hdl.handle.net/10098/7811

(2)

No. 5, 17-28, 1998 

福井平野の地震動特性と堆積層表面波

Earthquake ground motion and surface wave properties in  Fukui plain 

小嶋啓介志

(福井大学工学部環境設計工学科) 鳥海 勲“

(福井大学名誉教授)

.はじめに

先の兵庫県南部地震では,震災の帯と名付けられた地震被害が特に大きい領域が存在したがへそ の原因の一つに,表層地形および基盤岩の潜在形態に起因した地震動の集中があげられている.一方,

鳥海らの研究 2) , 3) から,大阪平野や福井平野では,主要動に続いて,振幅がやや小さく,比較的長 い周期特性を持ち,継続時間の長い堆積層表面波,いわゆる「あとゆれJ の存在が確認されている.

堆積層表面波は,その周波数特性と長い継続時間故に,中高層構造物に軽視できない影響を与え,兵 庫県南部地震の際には,揺れが比較的小さいといわれた大阪平野で,エレベータのケーブルが外れる 等の被害が多発している.以上のような現象はいずれも,通常の重複反射法が扱えるような基盤から 入射した地震動の堆積層による増幅のみでは予測し得ないものである.

福井平野は北側を除いて周囲を山地で取り固まれ,盆地状の基盤の上に厚い洪積層と軟弱な沖積層 が堆積した地形を有しており,堆積層表面波が発生し易い条件にあり,鳥海らの研究 4) によって,

あとゆれの存在が確認されている.福井平野では主要動の到達後十数秒前後遅れて現れ,主要動が収 束しでも長く残存し,周期 0.7~ 1. 5sec 前後の周波数特性を有する地震動であり,山地の境界から平 野部に入射する表面波であるといわれている.

福井大学では,グラウンドに設置された地震観測鉛直アレーシステムにより,長期にわたる地震観 測を継続している 5) 地震観測アレーは,地表面から GL・ 175m の基盤岩に達する長大なものであり,

福井県内の平野部では唯一,基盤岩から表層までの地震動を計測できるものである.本研究では,は じめに,蓄積されている観測地震動に基づいて,福井平野の地震動の一般的特性を示す.次に,非定 常パワースベクトルを中心とした解析方法により,堆積層表面波の存在および特徴を明らかにすると

ともに,防災科学技術研究所が展開する KNET による福井市周辺の観測地震動と比較することによ り,堆積層表面波の地形・地盤への依存性について検討する.

2. 地震観測システムと福井平野周辺の地盤特性

平成 6 年度に福井大学の地震観測システムが更新され,地表面ならびに基盤である GL・175m の地 震動のデジタル記録が観測できる態勢が整備された.地震観測システムは,大学に併設したグラウン ド内に設置されている. Fig.1 の左側は GL・ 175m の地震計を設置した際に求められた土質柱状図に,

地震計の設置位置を併記したものである.図のム, 0 ,口印が地震計の設置位置を示し,ムは NS , EWおよび UD 方向の 3 成分,口は水平 2 成分, 0 は水平 1 成分のピックアップであることを示し ている. Fig.2 は地震観測システムの概要であるが,観測機器は(株)勝島製作所製である.地表面の

3 成分検出器のみが SDA・ 230 型であり,地盤内部は水平方向加速度検出器 PTK・ 130H 型が埋設さ キーワード(地震観測アレー,堆積層表面波,福井平野,非定常パワースベクトル)

*Keisuke KOJ1MA, Faculty of Engineering, Fukui University, F叫mi , 910・8507JAPAN 

**lsao TORIUMI, Professor Emeritus, Fukui University 

(3)

小嶋啓介・鳥海

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Fig. 1 Soil profile of the array site 

Fig. 2 Earthquake observation system 

Fig. 3 Geomorphologicalland  classification map 

(a) Plan 

地質断面図(羽 -VI 断面)

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福井大学

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福井土本事務所

of Fukui plain  (同 Section

れている.パーソナノレコンビュータを介してデジタルデータレコーダ DATOL・ 100 を操作すること により,地震観測条件の設定,観測データのフロッピーディスクへの収録が行われる.地表面の 2 方 向水平方向加速度と基盤の水平方向加速度を組み合わせてトリガを設定しており,サンプリング時間 は 0.01sec,収録時間は 3 分を標準に設定し,運用している.なお,埋設年代の古い GL・ 18.5m と,

GL-33m の検出器の信号ケーブルに劣化の兆候が見られることから,現在は使用を見合わせている.

Fig.3 は福井平野の表層地質分布と南北方向の断面図的を示している.福井平野は,東の越前中央 山地と西の丹生山地の聞に挟まれ,北側の洪積台地も考慮、に入れた場合,河川中下流域に広がる平野 でありながら,基盤岩は盆地状を呈しており,厚い洪積および沖積層が堆積した地形を有しいること が読みとれる. 1948 年福井地震では,建物の被害率と地盤種別には密接な関係、があったことが広く 知られているが 7), B} ,福井市より北部における被害率 30%以上の領域は, Fig.3 で示した沖積地にほ ぼ対応している.

同図中には,福井大学および防災科学技術研究所が展開する KNET の 3 カ所の地震観測点,なら

(4)

Table 1 Outline of the observed earthquake 

年月日 深さ 震源地 震央距離 規模 震度合

A 1994/5/22  N35 ・ 57.9' ,E135' 35.1'  13  福井県沖 57  4.9  2  B 1994/5/28  N35' 19.4' ,E136' 16.9'  44  滋賀県中部 83  5.2  2  C 1994/6/28  N35' 07.9' ,E135' 39.2'  15  京都府中部 116  4.6  DI 1994/10パ 4 N36 ・ 09.2' ,E136' 02.6'  7  福井県沖 19  3.5  2  EI 1995/1/17  N34' 35.7' ,E135' 02.2'  16  明石海峡 194  7.2  4  FI1995/1/17  N34 ・ 40.5' ,E135' 09.1'  9  明石海峡 183  4.9  2  G 1995/4/13  N36' 23.0' ,E136' 33.0'  7  石川県南部 47  3.9  H 1995/8/15  N35 ・ 31.7' ,E136' 16.7'  40  滋賀県 60  4.0 

1996/7/30  N35 ・ 24.0' ,E136' 19.0'  16  滋賀県 74  4.1  1996/10/22  N36' 07.0' ,E136' 28.0'  9  徳井嶺北 23  3.4  KI 1998/4/10  N36' 20.1' ,E135' 58.1'  10  福井県沖 38  3.3  2  L 1998/4/12  ~J35' 58.2' ,E136' 20.0'  10  緬井嶺北 15  3.5  2  M 1998/4/22  N35' 09.9' ,E136' 34.2'  10  岐阜美;漫 105  5.4  3 

*福井市における震度

びに深層ボーリング調査が行われた福 井土木事務所の位置を併記した. Fig.1  に示したように,福井大学地震観測地 点は,砂質土と粘性土が複雑に堆積し ているが,大きく見ると表層の約 19m の沖積層が,厚い洪積層上に堆積して おり,沖積平野の典型といえる層構成 を示していることが判る, Fig.1 の中 央は,ボーリング資料および表層と基 盤との主要動の観測地震波から推定さ れたせん断波速度の深度方向分布であ り,右側は平成 7 年度に.福井県が行っ た深層ボーリング,および PS 検層結 果から求められたせん断波速度の深度 方向分布を示す.この調査は,地震観 測アレーから南東に約:3 .5km の福井 土木事務所敷地内で行われており,同 地点における沖積層厚は 25.8m ,甲 楽城火山岩層からなる基盤岩の露出深 度は 146.5m という結果が得られてい る.地震観測アレ一地点と福井土木事 務所で行われた,深層ボーリング調査 から得られた沖積層厚および基盤深度 は, Fig.3 の地質断面図と調和的であ る.

Fig. 4 Distribution of epicenter 

3. 観測地震動

Table 1 は 1994 年度から, 1998 年 7 月末現在までに観測されている 13 個の地震の概要一覧である.

観測地震動のうち, 1995 年 1 月 17 日の兵庫県南部地震の本震のみがマグニチュード 7.2 としづ大地 震であり,その他はマグニチュードが 3 , 3""'5.4 という比較的小規模な地震であるといえる. Fig .4は

(5)

1994/5/2

観測された地震の震 2 2  i l J   ‑

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央の分布を示してい言 。』“凪刷凶山ル山山1vJ,j,~

る.震央距離が 15 ~

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で,やや南側に偏つ 10・ 。聞い 1 た分布をしている)

Li14  ゴ Fig.5 は観測地震 g oh柑畑酬酬怖州州附岬仲吋附吋

動のうち典型的な特~ t  'UII門川 G印刷 3 徴を示す 4 個の地震 刊白

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ME師、."""'J 1994/5/2 の加速度地刻歴を示_'C' 10(:  ・ , , ・ 4 

している.図 (a) は喜 仁 山叫川 =1

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1994 年 5 月 28 日の~ ~司""'r'...~-・ヲー トゴ

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地震 B であり,上か『 -mト.vo  , 20 , , ー→4ゆ

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である.基盤に設置司ー「.vo  20 40 

された水平方向加速 TIme(目。

度ピックアップは南 北/東西方向とは約 300 時計方向にずれ て設置されているた め,以後, N30 E  および S600 E 方向 の加速度ピックアッ プによる観測値をそ れぞれ, B 1 および B2 と呼ぶこととす る.

図 (b) から (d) は,

1994 年 10 月 14 日 の地震 D , 1995 年

1 月 1 7 日の兵庫県 南部地震である地震 E ,およびその余震 である地震 F の観測 加速度時刻歴である.

基盤に入射した地震 動は,厚い堆積層に よる重複反射の結果,

振幅が基盤の 2"'-'3 倍程に増幅され,か

っ長周期成分が卓越した震動性状に変化していることが明らかである.地表面の NS 方向の観測記録 に注目すると,地震 D を除いて主要動が収束した後も,周期が 1 秒前後で,振幅が主要動の 1/3 か ら 1/2 程度の震動が,顕著な減衰を見せずに継続していることが読みとれ,堆積層表面波の存在が

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啓介・鳥海 小嶋

1995/1/17 After Shock 

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(d) 17 January 1995(After Shock)  Acceleration records 

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(c) 17 January 1995  Fig.5  (a) 28 May 1994 

(6)

示唆される観測結 果であるといえる.

堆積層表面波の存 在がほとんど認め られない地震 D は,

マグニチュード 3.5 で震央距離 19kw という,近 距離の小地震であ ることに留意する 必要があろう.

Fig.6 の上段は Fig.5 に示した地 震の観測加速度の フーリエスベクト ノレを示している.

フーリエスベクト ノレを作成する際に は,ノ〈ンド幅 O.3Hz の Parzen ウインドウによる 平滑化を行ってい る.地表面の水平 方向成分に着目し た場合,規模が小 さい地震 D では,

6Hz 以上の高周波 領域に卓越周期が 存在するのに対し,

地震 B と地震 F で は, 2Hz および 4Hz 前後の成分が多く 見られるようにな

り,兵庫県南部地 震である地震 E で は, 1Hz 付近の単 一のピークを持つ ような性状となっ ている.兵庫県南 部地震の際の,観 測加速度の最大値 は 30gal 前後であ

るが,その場合,地盤内部に生じるひずみは 10-4 のオーダーであり,地盤材料の非線形性が顕著と なるレベルには達していない.また,基盤の水平方向加速度のフーリエスベクトノレにおいても,地表 面で見られた特徴がやや薄められた形ながら確認できることから,兵庫県南部地震で認められる挙動 は,断層運動などの発震機構の寄与が大きいものと考えられる.

14 October 1994 

Frequency (Hz) 

14 October 1994 

Frequency (Hz) 

Frequency (Hz)  (b) 14 October 1994 

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Frequency (Hz)  (a) 28 May 1994 

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Frequency (Hz)  Frequency (Hz)  (c)  17 January 1995  (d) 17 January 1995 (After Shock)  Fig. 6  Fourier spectrum and amplification of the acceleration records 

(7)

小嶋啓介・鳥海

次に,地震観測地点周辺の堆積層による重複反射や,地盤の非線形特性に応じた効果を明らかに するために,地表面と基盤の加速度応答倍率を求めたものが, Fig.6 の下段に示した増幅スベクトル である.増幅スベクトルのピークは, 0.8Hz, 1. 8Hz, 4. 1Hz, 6.5Hz と 8Hz 付近に認められ,その傾 向は NS および EW方向とも概ね同様であることが判る.また,ピークの大きさにはややぱらつきは 認められるものの,増幅スペクトルの形状は,ここで観測された地震の範囲では似通っており,地盤 の応力一ひずみ関係の非線形性が顕著になるようなせん断変形は受けなかったことを示しているもの と思われる.観測地点付近の堆積層の基本振動数を, GL-175m の岩盤上面,工学的基盤と判断するこ とが多い S 波速度 500皿/sec を持つ層の上面,および洪積層上面を,それぞれ基盤面とみなして求め ると, 1. 67Hz,

o .  

77Hz および 0.63Hz と算出され,増幅スベクトルの低次から 2 番固までにほぼ対応 している.このことから,道路橋示方書などで提示されている地盤の特性値 T

G

により,地盤種別を

評価することが,福井大学周辺地盤に対しても妥当な結果を与えることを示すものである.

4.  非定常パワースペクトル

(1)非定常パワースベクトルの算出手法

構造物の地震応答解析・耐震設計に際し,強震記録の果たしている役割は極めて大きいが,強震動 は振幅のみならずスベクトル特性についても非定常なものと認識される. 主要動部のみに着目し,地 震動を定常波として耐震設計を行うことも可能であるが,構造物の進行性破壊,液状化や繰返し載荷 に伴う地盤の劣化などを考慮する場合には,強震動の非定常性の導入は不可欠である.強震動の非定 常性なスベクトル特性を扱った研究には, Priestley の Evolutionary Power Spectrum ベ神山の瞬 間フーリエスベクトノレ 1 0) など多数の手法が計算されているが,ここでは以下に示す亀田の方法 11)  を援用する.亀田の手法は,線形 1 自由度系を狭帯域フィルターと見なし,その応答の全エネルギー によって非定常パワースベクトル求めるものであり,直感的にも理解し易く,計算効率にも優れた手 法である.

x(t) を加速度入力とする線形 1 自由度系の運動方程式は周知のごとく次式で与えられる.

(t) 

+  2h, 。

ω

oý(t) + ω5y(t) = 

X(t) 

ここに , y(t) は振動系の相対変位 , h

O

' ω。はそれぞれ減衰定数および固有円振動数を表す.この線

形 1 自由度系の運動方程式で与えられる出力を用いて,次式で定義されるエネルギーをフィルターの 出力として採用する.

q ( t )  ̲ ̲  

_.2 タ(t)

r(t) = ーァ =y~ (t)+ 一一 (2) 

kl乙 ω;

ここに , r (t) は時刻 t における振動系の全エネルギー , k はパネ定数を示す.減衰定数が小さい 場合には , r (t) は y(t) の包絡線を表すなめらかな曲線となる.スベクトル特性の変動が,フィ ルターの応答レベルで十分追随できる程度であるとすると,非定常パワースベクトノレ G(t , ω 0) は,

上式のアンサンプル平均を求めることによって,次式のように算出される.

2hω;r2

( t )  

G (t, ω。)三 u-- π

(3 ) 

非定常パワースベクトルの算出に際し,線形 1 自由度系をフィルターとして用いているが,その減衰 定数の選択には注意が必要である. G(t , ω 0) の誘導において,その応答が緩やかであると仮定さ れているが,この仮定が成立のためには,フィルターの過渡特性ができるだけ弱いこと,すなわち減 衰定数 h 。を大きくする必要がある.一方,狭帯域フィルターという観点からは , h 。は小さいこと

(8)

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10  15  20  25  30  35  40  Time (sec) 

10  15  20  25  30  35  40 

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(a) 28 May 1994  (b) 14 October 1994 

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(c) 17 January 1995  (d) 17 January 1995 (After Shock)  Fig. 7  Nonstationary Power Spectrum 

(9)

が望ましい.これらは互いに相反するものであり,その最適値の理論値などは求められておらず,妥 協的に求めざるを得ない.本研究では,亀田の薦めている h 0=0.05 をすべてのケースで採用する.

啓介・鳥海 小嶋

以上の導出過程から明らかなように非定常パワースベクトルは,特定の時刻 t における地震動主(/) 中

の各調和成分の自乗平均パワーを示し,その時間推移を調べることによって,強震動中の特定の周波 数成分の非定常性を明らかにすることが可能となる.

( 2 )観測地震動の非定常パワースベクトル

以下で示す非定常パワースベクトルの算出に際しては,フィルターの固有周期としては, 0.2sec 

から O.lsec おきに 2.5sec までの 24 個を設定し,時間方向については,サンプリング時聞が O.Olsec であるのに対し, O.lsec ごとの移動平均を取って微細な変動を除去している. Fig.5 に加速度波形を 示した観測地震のうち,地表面の NS および EW方向の加速度記録の非定常パワースペクトルを Fig.7 に示す. 同図は等高線の形で表記しているが,本来は 24 種類の固有周期を持つ 1 質点系について,

その応答の自乗平均パワーの時間的推移を示す 24 本のグラフを縦に並べて,上から傭敵したものと 理解されたい.また,図の上部には加速度時刻歴も併せて表示している.

(a) の地震 B の非定常パワースペク トルに着目すると, 5sec から 15sec 付近の主要動部分では, O.2sec

~1. 5sec の範囲の成分が同時に襲来していることが読みとれる. また主要動が収束したと考えられ る 15sec 以降では, 0.7sec および1. 2~ 1. 3sec 付近の成分が, ほとんど減衰しないまま 35sec 付近ま で現れており,この傾向は NS 方向成分に顕著であることが明瞭に読みとれる. (c), (d) で示した兵 庫県南部地震およびその余震である,地震 E , F では,主要動の卓越周期も長周期側にシフトしてお り,主要動収束以後顕著となる周期は1. 5sec および 2.1sec 付近となり,地震 B に比べてより長周期 側成分の割合が多くなっている.地震 B , E, F の非定常パワースペク トノレで分離されたように, lsec 

前後の狭い周期幣域で,主要動が収束した後まで残存する成分は, 堆積層表面波の到達によるものと 思われる. 一方,近距離で規模の小さい地震 D では, O.5sec 付近の成分が残存しているよ うに見え るが,その値はパワーのピーク値に比べると 1%以下のものであり,堆積層表面波として構造物に影 響を及ぼすようなレベルではない.

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Fig.8  一20

(10)

K-NET による観測値との比較

防災科学技術研究所が展開する強震観測網である KNET による観測データは,インターネットを 通して公開されており,一定の制限のもと研究活動に利用することが可能となっている.福井県内に は 6 カ所の KNET 観測地点が存在するが,ここではそのうち,福井平野およびその周辺に位置する ものとして, Fig.3 に示した三国,福井および武生の観測データを,福井大学の記録と比較する. Fig.8  は K阻T の 3 地点の土質柱状図ならびに標準貫入試験による N 値,せん断波速度の深度方向分布で ある.図より, KNET 福井は福井大学と同様に,福井平野の中心付近に位置し,表層の 20m 程度が 粘土およびシノレトからなる沖積層からなる軟弱層からなるの地盤であるのに対し,三国および武生は 表面の 3m 程度を除いてすぐに洪積の礎質土が現れる台地およびその麓に位置していることが判る.

Fig.9 は 1998 年 4 月 22 日の地震M の福井大学と, KNET の 3 地震観測点における観測加速度時 刻歴である.福井大学と KNET 福井の観測記録は類似性が強く, 15sec~33sec の主要動が収束した 後も,堆積層表面

波と思われる震動 が 60sec まで記 録されていること が読みとれる.こ れに対し,堅固な 地盤からなる三国 および武生のデー タでは,振幅が小 さく,主要動の継 続時聞がlOsec 前後と短く,短周 期成分が目立つ波 形となっている.

また,主要動が収 束した後に見られ る波にも,長周期 側にシフトするよ うな堆積層表面波 の特徴は認められ ない.

Fig.10 は Fig.9 に対応するフーリ エスベクトルであ る.福井大学と KNET 福井では,

2Hz 付近の成分 が極めて優勢で,

6Hz 付近に第二 のピークは存在す るもののその,そ のエネルギーは相 対的に小さい.一 方,武生および三

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(a) Fukui University 

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(11)

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および 7Hz 付近言 にピークが散在し三 ており, 5Hz 以 54

上の高い周波数成身 分の寄与が大きい包

ことがわかる. S 

Fig.11 は地震M 民

の 4 観測地点の水 平 2 成分に関する,

非定常パワースベ クトノレの等高線を宮 示している.福井三 大学記録では,

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で減衰割合が小さく,残存していること.が読みとれる.また, lsec 付近の第二のピークは,福井大 学で 7----9sec, KNET 福井で 4.5----6sec 程度遅れて現れている.両観測地点が越前中央山地から約,

5.8km および 4.2km 離れた地点にあるとして,堆積層表面波の速度を求めると,それぞれ, 640‑‑‑‑ 830m/sec,および 700----930m/sec と計算される.これらの値は,鳥海らが大阪平野での観測値から 求めた 600m/sec よりはやや速い結果となっている.

福井平野に位置する福井大学と, KNET 福井における観測結果に対し,岩盤および洪積砂磯層に 属する武生と三国の記録では, 15----20sec 程度の主要動以外の成分が持つエネノレギーは僅かしか検出

されておらず,堆積層表面波がほとんど存在しないことが確認された.

小嶋 啓介鳥海

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1998‑4/22 

Frequency (Hz)  (a) Fukui University 

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1998‑4/22 

Frequency (Hz)  (b) KNET Fukui 

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10  Frequency (Hz)  Frequency (Hz) 

(c) KNET Takefu  (d) KNET Mikuni  Fig. 10  Fourier spectrum of the earthquake M 

5 .  

まとめ

福井大学グラウンドに設置された鉛直アレーシステムにより観測地震動と,防災科学技術研究所 が展開する強震観測網である KNET による観測地震動を基礎データとし,①福井平野で観測される 地震動の一般的特性の検討,②非定常パワースベクトルを中心とした解析方法による堆積層表面波の 抽出・分析,③同一地震の複数の地震観測地点における観測データを比較することにより,地震動の 地盤依存性の検討などを行った.以下に,本研究で得られた主な知見を示す。

1.福井平野で観測される地震動の卓越振動数は, O. 8Hz, 1. 8Hz, 4. 1Hz, 6. 5Hz, 8Hz 付近である.

2 福井大学の地震観測アレーは,周囲を山地に固まれた平野の中心付近に位置し,基盤深度が GL・ 175m という厚い堆積層上にあるため,観測される地震動のほとんどに堆積層表面波の影響 が確認された.

3 線形 1 自由度系を狭帯域フィルターと見なし,その応答の全エネルギーによって非定常パワー

(12)

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(c) KNET Takefu 

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(d) KNET Mikuni  Fig. 11  Nonstationary Power Spectrum of ea パhquake

(13)

小嶋啓介・鳥海

スベクトル求める方法は,直感的にも理解し易く,計算効率にも優れた手法である.

4. 観測地震動の非定常パワースペクトルを求めることにより,地震動の時間の経過に伴う周波数特 性の非定常性を明確に抽出することができることを確認した.

5. 福井大学と KNET による同ーの地震の同時観測記録を比較した結果,堆積層表面波が明確に現 れるのは,従来からいわれているように,周囲を山地で固まれた厚い堆積層上に位置する地点で あることが検証された.

6.堆積層表面波は, 0.7~ 1. 2sec の周期成分が卓越し,伝播速度は約 800m/sec であることが確認 された.

本研究では,福井大学グラウンドで観測された地震のレビューと,非定常パワースペク トルによる 堆積層表面波の抽出に主眼をおいたが,今後は,観測時震動のより詳細な分析と,波動伝播のシュミ

レーション解析などを実施し,堆積層表面波の成因,伝播経路等を明らかにする予定である.

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Table 1  Outline o f  the observed earthquake  年月日 震 源 深さ 震源地 震央距離 規模 震度合 A  1 9 9 4 / 5 / 2 2  N35 ・ 57.9' , E135'  3 5

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