性感染症に関する特定感染症予防指針に基づく対策の推進に関する研究
―センチネルサーベイランスの施行について 平成27年から平成29年の3年間の調査研究―
【研究協力者】 谷畑 健生 (神戸市保健福祉局)
【研究協力者】 伊藤 晴夫 (千葉大学)
五十嵐辰男 (聖隷佐倉市民病院)
三鴨 廣繁 (愛知医科大学感染症科)
安田 満 (岐阜大学医学部附属病院泌尿器科)
金山 博臣 (徳島大学大学院医歯薬学研究部泌尿器科)
A.研究目的
本研究は千葉県・岐阜県・兵庫県・徳島県の4 県における4県産婦人科・泌尿器科・皮膚科・性 病科を標榜する医療機関を症状があって受診し た患者のうち以下の感染症全数調査を行い(梅毒,
淋菌感染症,性器クラミジア感染症,非淋菌非ク ラミジア感染症,性器ヘルペス,尖圭コンジロー マ),本研究は平成27年より平成29年間の3年 間,性年齢階級・県別の性感染症の動向をわが国 における蔓延状況を明らかにすることを目的と した。
B.研究方法
調査票は感染者の性別・年齢・感染疾患(梅毒・
淋菌感染症・性器クラミジア感染症・非淋菌非ク ラミジア感染症・性器ヘルペス・尖圭コンジロー マ),受診日,住所地を調査項目とした。
さらに検査陽性率を求めるため,梅毒・性器ク ラミジア感染症は妊婦健診と性行為による全検 査数,陽性数を調査項目とした。淋菌感染症は全 検査数・陽性数を調査項目とした。
千葉県・岐阜県・兵庫県・徳島県の4県産婦人 科・泌尿器科・皮膚科・性病科(本年は徳島県の 全泌尿器科も調査対象とした)を標榜する医療機 研究要旨
平成29年度の4県産婦人科・泌尿器科・皮膚科・性病科を標榜する医療機関を受診した以下 の感染症全数調査を行った。梅毒,淋菌感染症,性器クラミジア感染症,非淋菌非クラミジア 感染症,性器ヘルペス,尖圭コンジローマを対象とした。疫学解析は実測値を人年法により安 定化させ,男女比較などあらゆる比較を可能とした。
本研究は前期平成 24年(2014-2017年)より継続しており,6年間の梅毒,淋菌感染症,性 器クラミジア,性器ヘルペス,先圭コンジロームについて検討した。また梅毒,淋菌感染症,
性器クラミジアについては各医療機関での検査の陽性率は平成28年からの2年間を検討した。
検討した結果梅毒は著しく増加した。淋菌感染症及び性器クラミジア感染症の動向は変動範 囲内であった。一方で男の年齢階級 15-19 歳及び 20-24 歳の淋菌感染症の動向は減少傾向にあ ることがわかった。またこの二つの年齢層では女性の淋菌感染症及び性器クラミジア感染症は 増加傾向にあることと,この二つの感染症に感染した女性はほとんど無症状であることから,
本研究で示した結果よりもさらに多くの女性が感染していることが推定される。またわが国の 青年層男の性行動は縮小しており(国立社会保障・人口問題研究所研究),事実青年層の淋菌 感染症は減少トレンドにあった。一方で青年層女の性行動はこれまでと変わらないこともあり,
性感染症の減少トレンドは見られなかった。男女の性行動の異なることが原因で,性感染症の 罹患率,減少・増加トレンドの違いに現れることが推察された。
本研究は国の定点動向調査報告をトレンドだけではなく,男女・年齢階級・県別比較等が可 能な自由度の高い調査研究が出来る基礎的な疫学研究である。本研究の自由度の高さは国の性 感染症定点調査(わが国を一つとする傾向の調査として設計されており,男女比較が出来ない・
県別比較が出来ないなどの制約がある)と互いに補完するものであり,わが国の性感染症蔓延 の実態を示すことを可能な研究である。
関に症状があって受診した以下の感染症全数調 査を行い(梅毒,淋菌感染症,性器クラミジア感 染症,非淋菌非クラミジア感染症,性器ヘルペス,
尖圭コンジローマ),あらかじめ送付した調査票
(別紙)に診療・診断した医師に記入をお願いし た。調査期間は平成27年,28年,29年各年の10 月1日から31日とし,地区責任者(千葉大学・
岐阜大学・神戸大学・徳島大学)が督促を2回行 った。本研究は各県医師会の協力があった。
4県の調査票の回収,電子化は個人情報が含ま れていることから,平成25・26・29年,平成28・
29・30年度全省庁統一資格において「役務の提供 等B又はCの等級に格付けされ,かつ財団法人日 本情報処理開発協会の認定するプライバシーマ ーク(JISQ15001)を取得した調査会社とし,一 般財団法人中央調査社を本研究の調査票の送 付・回収・電子化の役務を担った。これは個人情 報の保護のためである。
調査票は一般社団法人中央調査社に送られ,電 子化した。谷畑は電子化したデータを結果にある とおり,判りやすいように男女・年齢階級(5歳)
の性感染症罹患率(Incidence rate)を人年法で 示した。すべてのグラフの縦軸の単位は人年であ る。
本報告書では重要な感染症である梅毒・淋菌感 染症(男性尿道炎・女性頸管炎)・性器クラミジ ア感染症(男性尿道炎・女性頸管炎)を取り上げ た。
比較方法は4県罹患率合計,前回の研究班で性 感染症罹患率の高かった千葉県及び兵庫県と岐 阜県及び徳島県を比較し,さらに各県の比較も行 った。
比較は平成24年から今回の平成29年までの6 年間とした。
またすべてのグラフ縦軸の単位は人年法を用 い,10万人年とした。
C.研究結果
(1) 調査対称性感染症罹患率3年比較
((単位人年))
性感染症の3年間の動向を示した。対象とし た性感染症のうち全てに渡って最も罹患率が
高いのは20-24歳であり,感染症としては性器
クラミジアが多いことがわかった。また梅毒は 3年間増加傾向であった。
平成27年度調査結果(男左,女右)
平成28年度調査結果(男左・女右)
平成29年度調査結果(男左・女右)
人口10万人対・人年 人口10万人対・人年
0 50 100 150 200 250 300
15- 20- 25- 30- 35- 40- 45- 50- 55- 60- 65+
梅毒 淋菌感染症 クラミジア感染症 非淋菌非クラミジア感染症 性器ヘルペス 尖圭コンジローマ
334.7 817.3 467.3
0 50 100 150 200 250 300
15- 20- 25- 30- 35- 40- 45- 50- 55- 60- 65+
梅毒 淋菌感染症 クラミジア感染症 非淋菌非クラミジア感染症 性器ヘルペス 尖圭コンジローマ
男 女
人口10万人対・人年 人口10万人対・人年
0 50 100 150 200 250 300
15- 20- 25- 30- 35- 40- 45- 50- 55- 60- 65+
梅毒 淋菌感染症 クラミジア感染症 非淋菌非クラミジア感染症 性器ヘルペス 尖圭コンジローマ
817.3 494.8
0 50 100 150 200 250 300
15- 20- 25- 30- 35- 40- 45- 50- 55- 60- 65+
梅毒 淋菌感染症 クラミジア感染症 非淋菌非クラミジア感染症 性器ヘルペス 尖圭コンジローマ
男 女
梅毒男 左配偶者あり・右配偶者なし 全年齢
4県で6年間で増加傾向が明らかで,男は地域 変動は,配偶者なしに少なかった。また徳島県 では梅毒の発生少なかった。
梅毒女 左配偶者あり・右配偶者なし 全年齢
女梅毒は罹患率が高くなり、観察6年間で著 増した。また配偶者無しに多かった。県別には 岐阜・兵庫の順に多かった。
配偶者無しの女の梅毒は男より明らかに多か った。
淋菌感染症男 左配偶者あり・右配偶者なし 全年齢
男淋菌感染症(全年齢)は兵庫・岐阜の順に 多く,「配偶者なし」は「配偶者有り」に比べ て3倍以上感染者が多かった。
淋菌感染症女 左配偶者あり・右配偶者なし 全年齢
女淋菌感染症罹患者は男の半分以下である。
また兵庫・岐阜の順に多く,「配偶者なし」は
「配偶者有り」に比べて3倍以上感染者が多か った。淋菌感染症は男に多い感染症といえた。
性器クラミジア感染症男
左配偶者あり・右配偶者なし 全年齢
男性器クラミジア感染症罹患者は徳島・兵庫 の順に多く,「配偶者なし」は「配偶者有り」
に比べて2倍以上感染者が多かった。
性器クラミジア感染症 女
左配偶者あり・右配偶者なし 全年齢
女の性器クラミジア感染症罹患者は兵庫・岐 阜の順に多く,「配偶者なし」は「配偶者有り」
に比べて約4倍程度感染者が多かった。
男と比べて「配偶者なし」は若干高いが,「配 偶者あり」は2倍程度多かった。性器クラミジ アは女性に多い感染症であるといえる。
性器クラミジア感染症 20-24歳 女 左配偶者あり・右配偶者なし
20-24歳の女を観察した。配偶者無し女の罹患
率は極めて高い。この年代では岐阜・徳島に多 いことが明らかになった。
性器ヘルペス感染症 全年齢 左男 右女
性器ヘルペスは男に比べて女に多く,全年齢 では増加した。また兵庫・徳島に多かった。性 器ヘルペスは女に多い感染症であった。
尖圭コンジローマ 全年齢 左男 右女
尖圭コンジローマは,男は増加傾向にあるが,
全体として女が男よりも多かった。他の性感染 症とは異なる動向であった。尖圭コンジローム は女がわずかに男よりも多かった。他の性感染 症とは異なる動向であった。県差はあるが,男 は増加傾向女は減少傾向にある。
(2) 早期青年層(15-19歳、20-24歳)
早期青年層(15-19歳、20-24歳)を比較し た。
淋菌感染症 15-19歳 左男 右女
15-19歳の淋菌感染症は男の千葉・兵庫が岐
阜徳島に比べて多いが,4県で観察すると,男 に淋菌感染症が多かった。
淋菌感染症 20-24歳 左男 右女
20-24歳では男の淋菌感染症は女に比べて
非常に高くなった。15-19歳と20-24歳はわず か5年の開きではあるが,男の感染者が著増し た。
次に性器クラミジアを比較観察した。
性器クラミジア感染症 15-19歳 左男 右女
性器クラミジア感染症 20-24歳 左男 右女
15-19歳の若年青年層であっても女の性器
クラミジア感染症は男よりも多かった。次の五 歳階級である20-24歳で15-19歳よりも男女と もに2倍以上増加した。この5年間での性行為 交渉の変化がうかがわれた。
性器ヘルペス 15-19歳 左男 右女
性器ヘルペスは,男は散見する程度ではある が,女性はこの年齢層でも多く,増加傾向であ る。
性器ヘルペス 20-24歳 左男 右女
性器ヘルペスの15-19歳と20-24歳のグラフ では縦軸は前者に比べて後者は3倍であるこ とに注意を要するが,20-24歳においても男は 散見する程度であるが,女は感染者が多く,増 加傾向にあった。
尖圭コンジローマ 15-19歳 左男 右女
尖圭コンジローマ 20-24歳 左男 右女
尖圭コンジローマも性器ヘルペスの15-19
歳と20-24歳のグラフでは縦軸は前者に比べ
て後者は2.5倍であることに注意を要する。
15-19歳と20-24歳で比較すると男の感染者罹 患率の増加に比べて女の増加がはるかに大き い。
(3) 青年層の淋菌感染症,性器クラミジア感染 の6年間の動向
淋菌感染症6年間動向15-19歳 左男右女
赤線は二次近似曲線
淋菌感染症6年間動向20-24歳 左男右女
赤線は二次近似曲線
15-19歳男の20-24歳男の罹患率は半分では あるが,明らかに減少傾向にある。一方で女性 は15-19歳では減少傾向であるが,20-24歳で は増加している。
性器クラミジア感染症6年間動向15-19歳 左男右女 赤線は二次近似曲線
性器クラミジア感染症6年間動向20-24歳 左男右女 赤線は二次近似曲線
性器クラミジアは15-19歳以外が増加傾向 にあると考えられる。
性感染症の病原体によって罹患者の動向が 異なる強い証拠であると考えられる。
(4) 梅毒,淋菌感染症,性器クラミジア感染症 の検査 2016年と2017年の比較
梅毒の検査はカルジオリピンを抗原とした梅 毒血清反応(RPR等)で16倍以上(自動測定法 では16単位/ml以上)とした。
梅毒検査 左梅毒陽性者数 右梅毒検査実数
梅毒検査 陽性率2016年2017年比較
梅毒検査実数は2016年に比べて2017年は少 ないが,陽性者率は2016年に比べて2017年は 高い。梅毒の検査で陽性率は低いが,検査で約 10%は陽性と診断される。
妊婦検診での梅毒陽性率2017年
また妊婦健診で梅毒と診断されることは少 ないが皆無とはいえなかった。
梅毒陽性率 性行為による
妊婦検診に比べて性行為による陽性率は高 かった。
淋菌感染症の検査は,性器に感染を認め,淋 菌の菌体を顕鏡・培養・PCR法又はSDA法・TMA 法等で確認した。
検査淋菌感染症 2年間の比較
検査を行った地域差は大きかった。また淋菌 感染症検査陽性はきわめて低く,2年間に大き な違いは無かった。
クラミジアの検査は,性器に感染を認め,ク ラミジアの抗原(EIA法・PCR法又はSDA法・TMA 法によりクラミジアを確認した症例
検査性器クラミジア実施者数と陽性者数2年比較
検査性器クラミジア陽性者率
性器クラミジア検査数は2016年と2017年で 変わりはないが,2017年陽性率が高かった。
2017年妊婦性器クラミジア健診感染症陽性率
左症候性 右無症候性
妊婦健診時に医師がクラミジアとして診断 したもののうち,症候性のある陽性率は無症候 に比べて低かった。しかし無症候ではあるが,
検査をすることによって約1.5%の妊婦が性器 クラミジアに感染していることが判った。また
症候性陽性者を加えると約2%の妊婦が性器ク ラミジアに感染していることが判った。
性器クラミジア陽性率 性交後陽性率
左症候性 右無症候性
性行為を行った後検査を行ったところ症候 性のある者の陽性率は無症候性に比べて明ら かに高い。性行為後性感染症に不安でアルなら 積極的に検査を行うべきと考えられる。
(5) 本研究と国の定点調査の違い
2014 年淋菌感染症推計値(10 万人年) 男
全国推計は国立感染症研究所IDWRの全国定 点データから推計した。研究班推計は前研究班 で7県調査を元に47都道府県に割戻しして人 口当たりで推計した。
2014年性器クラミジア感染症推計値(10万人年)女
全国推計は国立感染症研究所IDWRの全国定 点データから推計した。研究班推計は前研究班 で7県調査を元に47都道府県に割戻しして人 口当たりで推計した。
淋菌感染症(男)及び性器クラミジア感染症
(女)の推計値は研究班推計がIDWRデータよ りも若年層で淋菌感染症・性器クラミジア感染 症が多いことを推計した。
(6) 近年の日本人青年層の性行動について
国立社会保障・人口問題研究所 現代日本の結婚と出産
─ 第15 回出生動向基本調査(独身者調査ならびに夫 婦調査)報告書─ 2017年3月31日
わが国の青年層男の性行動が縮小傾向にあ る。このため性感染症に罹患する機会が減少し ている。女の性行動は縮小傾向にはないため性 感染症に罹患する機会は十分にある。
D.考察
(1) 本研究は2期6年間の調査結果であり,男 女・配偶のありなし・年齢階級全てで比較 可能であるよう設計した研究である
全国を一つとした国の定点調査とは異な る大きな利点である。国の定点調査は国全 体の傾向を明らかにするために設計されて
おり,また法によって定め得られた調査で あることから,長期にわたる動向が分かる 利点が強いところである。しかし本研究は 分析の自由度が高いように設計している。
性感染症以外の季節性感染症・全数報告が 必要な感染症では国の調査で十分であるが,
性感染症は人の性行動によって左右される 感染症であることから,分析に自由度が求 められる。本研究はこれを満たしながら,
国の定点調査を補完しながら,性感染症の 動向を明らかにすることが出来る。
(2) 性感染症は女性に多い
本調査研究の6年の結果より性感染症は 女性に多い感染症であることが明らかにな った。
(3) 性感染症は若年層に多い
これまでの疫学調査と同様,性感染症は 若年層に多い。男性に比べ,女性性器クラ ミジア感染症罹患率が30-34歳以降著明に 下落することから,女性の性行動は同年代 以降下がると考えられる。罹患率を観察す ると男性の性行動は45-49歳まで活発と考 えられる。
(4) 配偶者なしに多い
婚姻は性感染症罹患の強い足かせとなっ ていると考えられる。特に女性の罹患率は 低くなる。しかし男性の性行動45-49歳ま で活発で,婚姻家庭外での性感染が多いと 考えられる。
(5) 平均婚姻年齢までの性行動が活発時期に淋 菌感染症と性器クラミジア感染症が極めて 多い
観察したところ,平成22年人口動態統計 特殊報告より女性の婚姻年齢は20-29歳ま で性感染症罹患者が多く,性行動が活発で あることがわかった。
淋菌感染症・性器クラミジア感染症は女 に無症状であることが多く,このため感染 していても医療機関に受診することは無い と考えられる。
一方で20-29歳までの性行動が活発な年
代では,特に男女ともに感染罹患率は極め て高いことが明らかになった。
女性の淋菌感染症・性器クラミジア感染 症は無症状であることからi,性行動が活発
な年代では本疫学調査よりも罹患率は高い と言える。
その他の性感染症においても男に比べて,
20-24歳の罹患率はきわめて高いことが明
らかになった。
このような比較ができるのは本研究の全 数調査が定点調査と異なることから明らか にできたことである。
(6) 中高年男の性行動は女より活発である
男性は45-49歳まで活発であり,先に述
べたとおり,婚姻家庭外での性感染が多い と考えられる。
現在わが国では性行為のあるソープファ ンド,フェラチオのみのファッションヘル ス,ピンサロは都道府県警察の強い規制を 受けており,この形態による性感染は減少 していると考えられる。しかし警察による 規制に難しい,デリバリーヘルス,出会い 系サイト等での個人売春は増加しているii ことから,男性の性感染症が減少し難いと 考えられる。
(7) 梅毒・淋菌感染症・性器クラミジア感染症 の陽性率が低い
規定された検査方法で検査陽性となるこ
とは10%にも満たない。多くは臨床医の臨
床診断による治療が主流と考えられる。
一方で多くの淋菌感染症は薬剤耐性とな っておりiii一般的な淋菌検出だけでなく,
薬剤耐性にかかる検査も必要であると考え られる。
(8) 妊婦健診で性器クラミジア感染症が発見さ れる
約2%とはいえ,通常に行われる性器クラ
ミジア感染症が発見された。性器クラミジ ア感染症の多くは新生児に障碍を残すこと は無いにしても,安全とはいえない。
また梅毒も妊婦健診で発見されている。
梅毒が増加していることから,健診でも注 意を要する。
妊婦健診で積極的に性感染症の発見と治 療,さらに妊婦のパートナーにも性感染症 の診察及び検査は必要であると考えられる。
(9) 全数届出と感染者推計
今回の調査から,全数報告である梅毒感 染者数を推計したが,実際の国(国立感染 症研究所)のデータと比べてきわめて低い
ことがわかった。梅毒は東京都・大阪府の 届出が多いことから,このずれが生じたと 考えられる。
一方で定点報告である淋菌感染症,性器 クラミジア症は本研究による推定値が,国 のデータよりも極めて高い値を示している。
本研究は全数届出の性感染症について,
正しい推定は出来ないが,国(国立感染症 研究所)の定点調査より正しい推定が可能 であると考えられる。
一方で本研究は東京都・大阪府・愛知県 を含んでいないことから,推定罹患率は,
わが国の実態よりも低い値であるといえる。
性器クラミジア感染症は女性に多い性感 染症であるにもかかわらず,東京都の定点 報告は女性よりも男性に多いと報告されて いる。これは定点の選択に問題があると考 えられる。
わが国の性感染症の実態を把握するため には,国と補完しながら,より正しい実態 把握が必要であり,可能である。本研究は ごく少数の「県」の調査であるが,国とデ ータを相互に共有しながら,より正しいわ が国の性感染症の実態を明らかにしていく 必要に迫られていると考えられる。
(10) わが国の青年層の性行動の縮小
わが国の青年層男の性行動は縮小してい るが,青年層女の性行動は縮小していない。
感染症に罹患する機会は減少していると考 えられる。淋菌感染症は本研究では青年層 男の罹患者が明らかに減少していることか ら,このことは説明できる。
また女性の性行動は縮小しておらず,性 感染症も減少傾向とは言えないことから,
性感染症は限られた男集団と一般女性集団 で広がっているのではないだろうか。
i Bennett JE, et al. Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases: 2-Volume Set, 8e. 2014. Elsevior.
ii坂爪真吾. 性風俗のいびつな現場 (ちくま新書) 新書. 2016.
iii Trembizki E, et al. The Molecular
Epidemiology and Antimicrobial Resistance of Neisseria gonorrhoeae in Australia: A
Nationwide Cross-Sectional Study, 2012. Clin Infect Dis. 2016 ;63(12):1591-1598.
E.結論
本研究により,若年者の性感染症の罹患が多い ことが明らかになった。また妊婦健診より梅毒・
性器クラミジア感染症感染妊婦が少なからず発 見された。
本研究は国(国立感染症研究所)とデータを相 互に補完しつつ,より正しいわが国の性感染症の 実態を明らかにすることが可能であり,必要であ る。
F.研究発表 なし
G.知的財産権の出願・登録状況 (予定を含む。)
なし