二次元的検出器イメージングプレートを用いた粗大 結晶粒または集合組織を有する材料のX線測定法開 発に関する基礎的研究
著者 後藤 時政
発行年 1999‑03‑25
URL http://hdl.handle.net/2297/30594
一
博士論 文
二次元的検出器イメージングプレートを用いた 粗大結晶粒または集合組織を有する材料の X線測定法開発に関する基礎的研究
金沢大学大学院自然科学研究科 物質科学 専攻
材料物性講座
学籍番号
氏 名
指導教官
94_2007
後藤 時政 広瀬 幸雄
目 次
第1章 緒 論
参考文献
1
7
第2章 2.1 2.2 2.2.1
2.2.1.
2.2.1.
2.2.1.
2.2.2 2.2.3 2.3 2.3.1 2.3.2 2.3.3 2.4
1
2 3
イメージングプレートを用いたTiA1金属間化合物のX線応力 測定における粗大結晶粒対策および加工表面への適用限界 緒 言
実験方法
Ipを使用したX線応力測定
回折環全局を利用したX線応力解析理論(cosα法)
回折画像のデータ処理方法 粗大結晶粒材料への対策 供試材および試験片 X線回折条件
実験結果および考察 TiA1母材のX線測定結果 Ti刈加工材のX線測定結果 各試験片の残留応力値 結 言
参考文献
8 9 9 9 12 13 14 16 17 17 22
26 3031
第3章 3.1 3.2
3.2.1
3.2.2
2.2.2.
2.2.2.
2.2.2.
3.2.3
3.33.3.1
3.3.1.
3.3.1.
3.3.2
1
2
31
2
イメージングプレートを用いた粗大結晶粒がつ配向を有する Ni.A1のX線応力測定
緒 言 32
実験方法 33
試料および試験片 33
Ni.A1のX線応力測定 34
X線測定条件 34
試料平面揺動条件 36
配向を考慮した応力解析法 37
機械的弾性定数の測定 38
実験結果および考察 39
Ni.A1鋳造材の組織的特徴 39
結晶組織 39
配向状態 41
試料平面揺動法による回折環の測定結果 44
3.4
第4章
4. 1
4.2 4.2.1 4.2.2 4.3 4.3.1 4.3.2 4.4 4.4.1 4.4.2 4.4.3 4.4.4 4.5
第5章 5.1 5.2 5.2.1 5.2.2 5.3 5.3.1 5.3.2 5.4 5.4.1 5.4.2 5.5 5.6
第6章
結 言
参考文献
イメージングプレートを用いた極点図作成方法の提案 緒 言
イメージングプレートによる極点図測定
測定方法
デッドゾーンの検討
実験方法 測定条件
回折画像の処理 実験結果および考察 回折環の回折強度 極 点 図
極点図に対する回折環の回折強度曲線平滑 化処理の効果
極点図に対するデータ点数の影響 結 言
参考文献
52 6.1 53 6.2 6.3 54 6.3.1 55 6.3.2 55 6.4 58 6.4.1 60 6.4.2 60 6.4.3
63 6. 4. 3. 1 66
66 6. 4. 3. 2
68 6.56.5.1 71 6.5.2 74 6.6
77 78
イメージングプレートを用いた複数極点図の同時測定
緒 言 79
Ipを使用した極点図測定方法 80
極密度測定方法 80
測定範囲に及ぼすX線入射角度と回折角度の関係および 複数極点図の同時測定 83
実験方法 85
試料および試験片 85
X線観察条件 86
実験結果 88
粗大結晶材料の極点図測定における画像処理の効果 88 複数極点図の同時測定結果 92
者 察 96
結 言 99
参考文献 100
イメージングプレートを用いた反射法のみによる完全極点図
策7章 7.1 7.2 7.3 7.3.1 7.3.2 7.4 7.5 7.6
第8章
緒 言
IPを用いた反射法による完全極点図測定および 集合組織の三次元解析用データの抽出法
実験方法
試料および試験片 X線観察条件
実験結果
極密度分布の多項式関数近似の結果 極点図測定結果
集合組織の三次元解析への適用
級数展開法による集合組織の三次元解析法
(Bungeの方法)
二相ステンレス鋼圧延板の解析結果 考 察
回折強度の補正について
二相ステンレス鋼圧延板の変態集合組織 結 言
参考文献
0DFを用いた二相ステンレス鋼圧延板のプレス 成形性評価の検討
緒 言
rイ直 (Lankfordイ直)
Tay1or理論に基づいたr値の理論的予測法 Tay1or理論
二相ステンレス鋼のr値解析条件
引張試験によるr値の圧延面面内異方性測定法 結果および考察
結 言
参考文献
結 論 謝 辞
101
102 105 105 106 109 109
111116
116 119 126 126 129 134 135
136 137 138 138 141 142 143 144 145
146
149
第1章 描 論
宮原ら(1)〜(3)によって開発された,二次元のX線検出器であるイメージングプ レート(IP)は,そもそも医療用として開発された.医療用としてのX線検出 器の開発段階での目標は, 患者の被爆をできる限り避ける ということである.
したがって,IPはX線による回折像を高速かつ高感度に測定することが可能で
ある.
Fig.1−1にIPのX線記録原理(4)を示す.IPは,輝尽性蛍光体(BaFBRr:Eu2+)
の微結晶(粒子サイズ:4〜5μm)が,ポリマーバインダーとともにプラスチッ クベース上に高密度に充填塗布されたものであり,Fig.1−2に示すような柔軟な フィルムとなっている.IPにX線が入射すると,蛍光体中に準安定な一種の着 色中心(F中心)が形成される.この後,蛍光体に可視光を照射すると着色中心 は消失し,そこに蓄えられていたX線は蛍光として放出される.収束させた He−Neレーザー光(波長:633nm)を蛍光面状で二次元的に走査して,発生する 蛍光強度を電子増倍管(PMT)で時系列信号として測定すると,蛍光面上に記 録されたX線像を読み出すことができる.この蛍光(波長=390nm)は,2価の Euイオンの5d→4f許容遷移によるものである.また蛍光寿命がO.8μsec程度で あるため,高速の画像読み出しが可能である.光電子増倍管の出力は,対数ア ンプで増幅されたあとA−Dコンバーターでディジタルかされ,コンピュータに 取り込まれ,コンピュータによる画像処理が行える.なお,一度の走査で約80%
の着色中心が読みとられ消去されるが,残ったX線像は読み出したあと,IPの 可視光を均一に照射することにより,X線を完全に消去することができる.その ため,同一のIPが物理的に破損しない限り,何度も繰り返して使用することが
できる.
医療用として開発されたIPではあるが,もちろん工学的分野への適用も可能 である.Tab1e1−1に現在までのIPの工学的分野への適用状況をまとめた.吉岡
らは,IPを使用したX線材料強度学研究を最初に行った{5)〜(9).彼らは,そもそ も写真法時代に平,田中らが細束X線研究用として開発した。osα法(lo)を,IP によるX線応力測定法に適用し,その可能性を実証した.続いて佐々木らは,
IPによるX線三軸応力測定(ll),応力勾配測定(12),マクロ・ミクロ応力測定(13)(14)
の可能性について検討し,さらに,IPによる粗大結晶粒から成る材料の応力測 定(15)およびコンピュータ・トモグラフィー(CT)による応力分布測定(16)につい ても検討を行っている.IPの工学的分野への適用の歴史はまだ日が浅いが,以 上のように様々な検討が為されている.ともあれ,これらの適用が可能になっ たのは,IPによるX線測定法が現在の最も標準的な方法であるディフラクトメ ーターを使用したX線測定法と比較して,次のような特徴を有するところに負
Phosphor(BaFBrEu1)
△△△△△△△△△
△△△△△△△△△△
X−ray
Base
△△△△△△△△△
△△△△△△△△△△ eXρ0S〃re
Hc一ドe Ia∫cr 一一一宙黶ォ一一一・一一◆
「 ノ 〃〃ωce肌・c
△ 1△△△△△△△
△△△△△△△△△△ re0伽9
Visibleligh−
l ll 1、
△ 一△ △△△△一△
△△△△△△△△△△ n 〃0〃Ze
Fig.1−1 X−ray record princip1e ofimaging Plate.
Fig.1−2 Imaging p1ate.
IPをはじめとする二次元的検出器をX線測定に使用した場合の利点を挙げる と・(1)単一入射によるX線回折測定が可能であり,しかもIPの検出感度が良好 なために測定時間が短い・(2)光学系が簡単(ピンホールカメラ法)であるため,
測定装置が比較的簡単に設計・製作できる.(3)複数の回折環の測定が可能であ
Table I−1 Historical studies concerning IP.
1970 年代
1980 隼代
1990 年代
lPl二関する研究の流れ 1977年 平らが。osα法を発表
1986年 雨宮らによりイメージングプレート(lP)陸生 1989年 吉岡らがlPをX線材料強度学分罫に適用 (cosα法のlPX続応力測定への適用)
1995年 佐々木ら一1Plこよる ・X線三舳応力解析 ・応力勾配測定
・マクロ・ミケロ応力東
1997年 佐々木ら.粗大給品粒材料の応力測1定
佐々木ら.コンピュータトモグラフィを用いた応力分布測定
本研究の位置づけ
1997年 記向を有し.かつ日大な材丼に責用(Ni3^1
金口間化合構)
1998年 標点回選定に選用
録されたX線情報はディジタルデータとして使用できるため,コンピュータを 用いた画像処理が用意に適用できる.が考えられる.これらの特徴を上手に利 用すれば,現在,工学的分野で行われている種々のX線測定の能率化を計るこ
とができ,特にX線応力測定分野においては,適用領域の拡張が可能となり,
今まで不可能とされてきた集合組織や粗大結晶粒を有する材料の応力測定が可 能となることも期待できる.
そこで本研究では,まず,IPを用いたX線応力測定法(17)のNi.A1およびTiA1 金属間化合物への適用を行った(18〕(19)一金属間化合物(20)は次期耐熱材料として期 待される新材料である.また金属間化合物は,それ自体は非常に脆いために,
介在物として析出すると材料の強度を著しく低下さたり,成形性の面で難点を 生じさせる.したがって,利用するよりもむしろ排除する目的での研究が為さ れてきた.しかし近年,高効率化された航空機のジェットエンジンや発電用ガ スタービン,スペースシャトルやスペースプレーンのエンジン,機体構造およ び機体表面に使用される新素材として,金属間化合物をべ一スとする新素材開 発の気運が高まってきた.規則的結晶構造を持つ金属元素の化合物は,化学結 合様式の点で金属とセラミックスの中間に位置し,多様な性質を有する.特に Ni.A1は温度に対する強度の逆依存性といった特異な性質を有し,またTiA1金属 間化合物は軽量であり,かつ高温においてアルミニウムの酸化物が表面に緻密 な保護性皮膜を形成し,優れた耐酸化性を示す.
これら金属間化合物に対して機械的性質などに関する多くの研究が為され,
最近では実用化されるものも出現してきた.例えば一方向凝固法によって作成 されたNi3A1は,ジェットエンジンのタービンブレードに使用されることを目的
用条件にさらされる.金属間化合物は結晶粒界が弱く,遠心力によって結晶粒 界の向きによっては,粒界滑りにより,ブレードに伸びや割れが生じる.それ を避けるために,遠心力の働く方向に粒界を揃えた材料が一方向凝固材である.
このような新素材に対して,X線応力測定法は,材料の強度評価をする上で非常 に有力な手段と成り得る.しかしながら,一方向凝固法によって作成されたNi.A1 には,凝固によって生じた結晶方位の優先的配列(集合組織)が存在するとと もに,結晶粒径も比較的粗大となる.したがって,次のX線応力測定を適用す るための仮定からの逸脱によってその適用が困難となる.すなわち,
仮定1 対象とする材料は多結晶体であり,巨視的に等方均質な材料であ る.すなわち,個々の結晶粒は方位を無秩序にしていること.
仮定2 X線照射領域内には,十分な数の結晶粒が存在する.通常の条件 では,結晶粒径が数10μm以下の微結晶であること.
の2つの仮定である.また,TiA1金属間化合物については,わずかにTi過剰(例 えばTi−48mo11%A1)のTi.A1−TiA1二相合金をべ一スとした合金の組織制御とそ れら組織材の機械的性質に関する研究が精力的に為されてきた.しかしながら,
これらTiA1組織材の結晶粒径も,製造過程で10μmより一つか二つ上のオーダ ーの大きさになり,仮定2からの逸脱によってその適用が困難となる.
粗大結晶粒材料のX線応力測定では,回折に寄与する結晶粒の統計数の不足 によって,回折角度(2θ)を決定するのに十分なX線回折像が形成されなくな る.試料平面揺動法は粗大結晶粒から成る材料より,十分な精度で回折角度決 定が行えるX線回折像を得るために考案された方法であり,この方法を,IPを 用いたX線応力測定に適用すると,粗大結晶粒材料からも回折角度を決定する のに十分耐えうるX線回折像が得られるようになる.
また,集合組織が存在する場合は,たとえそれが多結晶材料であっても,単結 晶の弾性異方性を受け継いでしまい,X線で測定するひずみも方位によって異方 性が生じる.このような場合は,極点図から結晶方位の分布状態を見極め,単 結晶の弾性コンプライアンスを用いて,測定座標系において弾性異方性の影響 を受けない方位(理想方位)を見つける方法が採られる.一般的に同一晶帯上 にある結晶面は弾性異方性の影響を受けないため,これらの回折線を使用し,
応力値を計算することができる(21) (26).本法では粗大結晶粒対策法を適用したIP
によるX線応力測定によって,回折角度を決定するのに十分耐えられるように なったX線回折像に対して,この方法を適用した.そして,妥当と思われる応 力値およびX線的パラメータを得るとともに,結晶粒が粗大でかつ集合組織を 有する金属問化合物のX線応力測定法を確立した.
さらに,本研究ではIPの材料強度評価への適用の一環として,極点図測定へ
なわち集合組織を有する材料の結晶配向状態を見極めるには大変重要な指標と なる.また,前述したX線測定におけるIPの利点を極点図測定の場合にあては めると,特に,(1)回折環全体の記録ができることから多方向の極密度分布測定 が可能となる.(2)複数の回折環が測定可能であるとき,複数の結晶面の極点図 が一度に測定できる.が考えられる.現在,極点図測定にはパルスカウンター などの零次元検出器が使用されており,数時間かけて極点図測定を行っている のが現状である.IPを極点図測定に利用すれば,これらの特徴によって能率的 な極点図測定が可能になることが期待できる.
ところで集合組織とは,前述したように多結晶体中の結晶粒の方位が特定の 方向に優先的に並んだもので,単結晶の性質を受けて材料の物理的性質に異方 性を生じさせる.このような金属材料の異方性は,ある場合には有効に利用で きるが,ある場合には有害なこともある.したがって,集合組織を適当に制御 することができれば,同一成分の材料であっても良い特性を与えたり,好まし くない性質を抑制することも可能となる.金属材料の集合組織は,凝固,塑性 変形,焼きなましによる再結晶,変態などの種々の工程の影響を受けるため,
有効な集合組織の制御をおこなうためには各段階での集合組織を正確に評価し,
各プロセスにおける集合組織の変化の過程および形成機構を極点図等により解 明することが重要となる.
ただし,集合組織は本来三次元的な方位分布を有しているが極点図はこれを 二次元情報として測定する.そのため結晶方位分布に関する定性的なデータし か得られず,集合組織の三次元的解析法が必要となる.この解析手法としては,
級数展開法を利用したBunge(27)やRoe(28)の方法や,逐次近似法による代数的方法 を使ったWi11iam(29)やRuer−Baro(30)の方法などが発表されている.いずれにせよ
これら集合組織の三次元解析を行うためには,十分な精度で能率的なX線極点
図測定が必要である.
本研究では,IPを用いた極点図測定方法の能率化を目的とし,lPを用いた極 点図測定方法の提案,測定システムの構築を行うとともに,本極点図測定法の いくつかの優れた点について明らかにした.また得られた極点図の結果から集 合組織の三次元解析が十分な精度で行い得るかの確認を行うため,得られた解 析結果に対して集合組織学的見地からの考察を行う.なお,先のTab1e1−1には,
本研究で開発したIPによるX線測定法の功績に対して,その位置づけを行った.
本研究論文の構成は,本章を含めて8章で構成されている.以下に,各章の
概要を記述する.
まず第2章では,TiA1金属間化合物に対して,X線応力測定法を適用するた めの基礎的研究を目的とし,加工変質層を除去したTi−48mo11%A1母材から得ら れる斑点状化した回折環に対して,粗大結晶粒対策法を適用したIPによるX線 応力測定を行った.また加工材から得られるブロードになる回折環に対しては,
比較して,P/B比(Peaktobackgroundratio)の良好な回折プロファイルが得られた という理由から,従来法であるシンチレーションカウンターよる測定を行った.
そして,X線応力測定が困難となったなったTiA1各種表面の妥当な残留応力値 を得るとともに,それらに対する最適な測定方法を推奨する知見を得た.
第3章では,集合組織を有し,かつ結晶粒が粗大なNi.A1金属問化合物に対し て,まず粗大結晶粒対策としてIPを用いた試料平面揺動法を適用した.その結 果,比較的均一な回折環が得られるようになり,回折角度およびX線的ひずみ の測定精度が確保できることが判明した.そこで次に,得られた回折データに 対して配向を考慮した応力解析法を適用した.その結果,本材料のX線弾性定 数および応力定数を求めることに成功した.最後に実験的に得られたX線的弾 性定数について,Ni,A1単結晶の弾性コンプライアンスより計算した理論値と比 較検討した.
第4章では,IPを極点図測定に適用するための基礎的検討を目的とし,二 次元的検出器による極点図測定方法を提案した.そして,IPによる極点図測 定システムを構築し,実際にアルミニウム圧延板の{111}極点図測定を行い,
得られた結果を従来法による結果と比較することにより,本法の測定精度の
確認を行った.
第5章では,IPによる極点図測定上の優れた点に着目し,二相ステンレス鋼圧延板 に対して,四つの極点図の同時測定を行った.またIPの光学系はピンホールカメラ法 であり,装置の構造が簡単となる利点がある一方で,X線照射領域が比較的狭くなる 難点がある.そのため,結晶粒が比較的大きな材料では回折環が斑点状化し,それよ り得られた極密度データは極点図作成に影響を与える.そこで,IPが回折環の画像を ディジタルデータとして利用でき,コンピュータによる画像処理に適している点に着
目して,IPを用いた応力測定で既に有効性が認められたソフトウェア揺動法を適用し,
画像処理法による粗大結晶粒対策法の有効性についても検討を行った.
第6章では,IPを使用して反射法のみによって完全極点図を得ることを目的と し,二相ステンレス鋼圧延板のフェライトおよびオーステナイトの各相に対して 完全極点図測定の検討を行った.また,Bungeの方法によって各相の結晶方位分 布関数(Crysta1ori㎝tationDistributionFunction;ODF)を求めることにより,本 法によって得られた完全極点図の極密度データの集合組織の三次元解析への適 用についても検討した.
第7章では,第6章で得られた二相ステンレス鋼圧延板のODFの結果から,
Tay1or理論に基づいてr値(Lankford値)の圧延面面内異方性を各相ごとに計算 した.さらに,r値の面内異方性を引張試験により求め,実験値と各相の理論 値との比較を行うことによって,二相ステンレス鋼に対するr値の理論的予測の 可能性について検討を行った.
第8章は,第2章から第7章までで得られた主要な結論を示すとともに,本研
参考文献
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(14)佐々木敏彦,広瀬幸雄,材料,44.1138(1995).
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(18)佐々木敏彦,後藤時政,田畑裕之,広瀬幸雄,材料,46,756(1997).
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(25)吉岡靖夫,松井久明,材料,37.1234(1988).
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第2章イメージングプレートを用いたTiA1金属間化合物のX線応力 測定における粗大結晶粒対策および加工表面への適用限界
2.1 絡 言
金属間化合物であるTiA1は次世代の軽量耐熱材料への応用が期待されること から,現在までに精力的な研究がなされてきた.主に研究の対象となってきたの は,TiA1単相材よりもわずかにTi過剰の組成で得られるTi,A1(α2)一TiA1(γ)二相 合金である.この二相合金の組織は熱処理により二相等軸組織,完全ラメラ組織,
またはそれらの混合組織(Dup1exstructure)に制御可能であり,各々に対して機械 的性質および延性,靭性などの力学特性が調査されてきた.しかし近年,これら に関するデータも十分に集積され,実用化されるものも出現してきたため,TiA1 の残留応力測定および強度評価に対するX線応力測定の必要性がますます高く
なってきた.
しかしながらTiA1は,その製造過程において結晶粒が粗大化する性質を有し ており,X線測定で得られる回折像が斑点状化することから,基礎的研究の時分 よりX線応力測定の適用が困難とされてきた.一方,実用材の表面は研削,切 削等の機械加工により仕上げられることが考えられるが,これらの仕上表層から 得られる回折像もまた,強度が弱い上に正方晶特有の2重線のブロードになり,
応力解析が困難となる.
ところで最近,二次元の積分型X線検出器であるイメージングプレート(IP)
(1)一(14)を使用したX線応力測定が盛んに行われるようになった.これらの研究の うち著者らは,粗大結晶粒対策法であるソフトウェア揺動法および試料平面揺動 法を,IPを使用したX線応力測定に適用することにより,粗大結晶粒材料の正 確な応力値を得ている(12).この方法は,本材料の粗大結晶粒によるX線応力測 定法の適用限界を拡張できるものと考えられる.
そこで本章では,TiA1金属間化合物に対してX線応力測定法を適用するため の基礎的検討を目的とし,加工変質層を除去したTi−48mo11%A1母材から得られ る斑点状化した回折像に対して,上述の粗大結晶粒対策法を適用したIPによる X線応力測定を行った.また加工材から得られるブロードになる回折像に対して は,強度は弱いながらも環全体でほぼ均一であったこと,また後述するように IPを使用した測定と比較してP/B比(Peaktobackgromdratio)の良好な回折プロ ファイルが得られたという理由から,従来法であるシンチレーションカウンター よる測定を行った.そして,X線応力測定が困難となったなったTiA1各種表面 の妥当な残留応力値を得るとともに,それらに対する最適な測定方法を推奨する 知見を得ることができた.
2.2 実験方法
2.2.1 IPを使用したX線応力測定法
2.2.1.1 回折環全局を利用したX練応力解析理論(cosα法)( 5)
Fig.2−1に示すように入射X線ビームの方向がφ。および・Ψ。により定まる場合に ついて,この入射X線によって材料から発生する回折環について考える.Fig.2−
2に示される中心角αの方向の回折ビームを生じる結晶群の格子面法線方向(L、
軸とする)を表す方向余弦をn、、(ただしi=1,2,3,以下同様)とすると,φ、,=Oのとき
次のようになる.n31=COSηSinΨo−SinηCOS ΨoCOSα n32=SinηSinα
n33=COSηCOSΨO+SinηSinΨoCOSα
Y
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L3 Z εα
→
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POint
(2−1)
式(2−1)〜(2−3)よりε、を応力表示すると次式となる.
一〆仲 ̲εα γ を・、
、/ \α 刃(
\ 1ψ。
ダ
R(αジ e
一、.
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圭
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身
㍉、επ・α一.、 」勾 帖〜㎞帖 /@、〆ε I πIα拮..、〆
一〆 主
L一一≒
lma度in£Pate
Imagl ng Plate
PeClmen
ゾ
Fig.2−2 X−ray strains used for stress ca1cu1ation.
試料座標系をS、とし,S、軸をL、軸と一致するように座標回転してできる座標系 を実験座標系L、とする.L、方向の縦ひずみε、、Lをε、と書くと次式となる.
し 5
εα=ε33 ;n3in3jεij (2−2)
ζ十)い)・i・・Ψ…τ一・…ψ・1・i・・1…α
(2−6)
ただし,通常の表記方法に従って応力成分の添字11をxと書き,同様に33をz,
σ、3S ㌦とそれぞれ書いた.また,座標系に関する添字のSは省略した.次に平
面応力状態の場合(σ、=㌦=O)を考えると式(2−6)より次式が得られる.
い/ξ)、∴、…;、。(∂lll、)
(2−7)
式(2−7)の関係を用いれば1個の回折環の全体の情報を使用して,それからζ対 CoSα関係の傾きを求めることにより応力σが得られることが分かる.
X
ここでε、j5は試料座標系のひずみを表す.等方弾性体のとき試料座標系の応力σゴ に対して次式が成立する.
㍉5一 i㌢)1ij5州いぺ・ぺ) (2−3)
ここでδ、jはクロネッカのデルタ,またs、,s、/2はX線的弾性定数を表し,ヤング 率(E)とポアソン比(v)を用いて次式より得られる・
v s. 1+v
SI=一.・一=
E2 E
(2−4)
Fig.2−2に示されるように,回折環の中心角がそれぞれ一α,九十α,九一αである ような回折ビームから得られるX線的ひずみを考え,それぞれε.、,ε、、、,ε冗.、と 表し,これらのひずみから次のようなパラメータε、を導くことを考える.
ζ量土[(ε、一ε打.、)・(1.、一1元、、)1
(2−5)
2.2.1.2 回折画像のデータ処理方法
IP上に撮影された回折環のデータの読み取りにはFig2−3に示すよな市販の 装置を使用し,通信ケーブルRS−232Cを介してHEWLETTEPACERD社製のワ ークステーション(WS)で制御した.得られた回折環データを1140×1150pixe1 の画素からなる画像データとしてWS上のハードディスクに保存した.次にデ ィスプレイ上に表示された回折環データから入射X線の粗中心を決定し,さ らにビーム中心位置決定法を用いて真中心を求めた後,回折環すべての半径方 向の回折線図形およびピーク位置を決定した.これにより得られた結果を使用
し,パソコン(NEC,PC9821)にて応力計算を行った.
なお,ビーム位置の決定は次のように行った.真鍮にて作成した円盤を,コ リメータの中心と円盤の中心が一致するようにIP上に置き,その部分だけが 露出することを防いだ.露出した領域としなかった領域の回折強度の差によっ てできた円を真円と考え,αがπ異なる回折環の2点を結ぶ直径の中心が円の 中心であることを利用した.すなわち,α=ガ間隔で180個の直径の中点の平 均値から円の中心を求め,その点を原点として全データの座標を修正した.次 に全データを関数近似した後,その近似式からα=ゴ間隔の座標点を計算して 求めた.このような操作を中心移動量がO.1μm以下となるまで繰り返し,最 後に得られた中心位置を入射X線位置とした.
Imagi皿g Plate R醐doot System
沖
T㎜5iliom5値8e
PMT
l−16−N6LAS1≡二R CIi11dric山■miπor
、
㌔.タ」
ヒ・
{ψ
2.2.1.3 粗大結晶粒材料測定への対策( 2)
粗大結晶粒材料に対するIP測定では回折環が斑点状となるため,連続的な 回折環を得ることがCOSα法により正確な応力値を求める上で重要となる.ソ フトウェア揺動法および試料平面揺動法は粗大結晶粒材料から連続的な回折 環を得るために考案された方法である.ソフトウェア揺動法とは,IPによっ て得られる回折環のデータがディジタルデータであることを利用し,コンピュ ータを用いた画像処理によりソフトウェア的な揺動処理を行うことである.そ の原理はFig.2−4で示すように,回折環の中心角αについて前後n度における データを移動平均処理することで,回折環半径方向の回折図形を均一化し,こ れにより回折ピークの測定精度の向上を図る.この方法は,得られた回折環が 軽度の斑点状となる場合に有効である.また,粗大でない一般的な材料に対す る応力測定においても,回折環に潜在的に含まれるノイズの影響を緩和する効 果があり,常に安定した応力値が得られるようになる.
また試料平面揺動法とは,Fig.2−1において照射点以外の光学系条件を一定に 保ったままの状態で,試料をXY平面に平行に移動し,測定の際の回折に寄与 する結晶粒数を増加させる方法である.Fig.2−1中の矢印は,X線照射点の移 動例である.このとき,照射点固定時には斑点状となる回折環が得られる場合 に対しても,揺動面積が十分であれば,滑らかな回折環が得られるようになる.
したがって,十分な照射点移動距離が得られるような試験片面積が存在する場 合であれば,原理上,任意の粗大結晶粒材料の応力測定が可能になる.
α十n
α
α■n
2.2.2 供試材および試験片
インダクション・スカル溶解によりTi−48mo11%A1インゴットが溶製された.
溶製後のインゴットの化学組成はTab1e2−1のようであった.インゴットは次 に,1473Kで3hr加熱された後,直接押し出しによる熱間押し出しが行われた.
このときの押し出し比は5で,インゴットは約φ20×/50mmの丸棒とされた.
本研究ではこの丸棒を出発材として,ワイヤー放電加工機を用いて,3.OtX7.Ow
×45.O〜mmの試験片を切り出した.さらに切り出した試験片に対して,アルゴ ン雰囲気中で1473K−3hr→炉冷または1673K−O.75hr→炉冷の熱処理を施す ことにより,二相等軸組織または完全ラメラ組織から成る試験片を各3本づつ 準備した.各組織材の結晶粒径はFig.2−5に示したように,二相等軸組織では 20〜100μm程度とやや粗大であり,完全ラメラ組織では100〜500μm程度と かなり粗大であった.なお,二相等軸組織では微細な結晶粒から成る領域が少 量混在していた.
次に,組織制御された試験片に対して表面加工を行った.X線応力測定に際 し準備された表面状態は,各組織材に対して,加工変質層を除去した表面およ び研削,切削の機械加工を施した表面の3種類である.このとき加工変質層の 除去は,試験片をエメリーぺ一パーの粗いものから細かいものへ順次研磨をし た後,バフ研磨をして鏡面仕上げとし,さらに電解研磨をすることによって行 った.なお,バフ研磨は研磨材として1μm直径のアルミナ粒子を用い,バフ 盤による手動研磨を行い,電解研磨は約一30℃の電解液(6vo1.%過塩素酸十 34vo1.%ブタノール十60vo1.%メタノール)中で電流密度約2.OmA/mm2にて行 い,表面を50〜60μm程度研磨した.また,研削(湿式,平面研削)は砥石回転 速度2000rpm,定盤送り30mm/minで行い,切削(横フライス)は切削速度 122.5m/min,切り込み深さO.1mmで一定とし,送り速度O.33mmで行った.
なおこれらの機械加工は,加工方向が試験片横方向と一致するようにして行っ
た,
(a)Dua1phase equiaxed structure.
≡鍛
(b) Fu111ame11ar structure.
Fig.2−5 Microstructures ofTi−48mo11%A1.
Tab1e2−1 Chemica1composition of Ti−48mo11%A1ingot.
Samp1e
Ti−48mo11%A1
A1(mo11%)
47.63
O(mo11%)
O.046
2.2.3 X線回折条件
TiA1の結晶構造は。軸がわずかに長い正方晶で,Y−W.Kimによれば,a:4.OOO A,c/a=1.o15である(16).この値を用いてCr−Kα線による各回折面の回折角2
0を計算すると,2θ高角側ではTiA1311(2θ:142,881deg)とTiA1113回折線
(2θ=139,370deg)が正方晶特有の二重線となって現れることがわかった.これ
らの回折線うちTiA1311はTiA1113と比較して,多重度因子が2倍と回折強 度が強いことから,本研究ではX線応力測定にこの回折線を使用した.なお,
応力測定は各試験片に対して長手方向(σ、)および横方向(σy)の2方向につい て,3回ずつ行った.
また本研究では,IPおよびシンチレーションカウンターの2種類の検出器を 使用してX線応力測定を行った.このうちIPによるX線応力測定では,回折 環の撮影に特性X線Cr−Kα線を使用した.このとき,管電圧30kV,管電流 10mA,IPと試験片間の距離(L)50mm,露光時間600sec,ピンホール径φ1.5mm,
X線の入射角(ψ。)30dcgとした.なお,IP測定に適用した試料平面揺動は,研 究室で作成したXYステージをパソコン(PC−9801)により制御し,揺動範囲を7
×40mm2として行った.また,シンチレーションカウンターによるX線応力 測定では,Cr−Kα線を30kV,10mAで使用した.光学系は平行ビーム法で,
側傾法によりψ=O,13,18,23,27,30,33,36,39,42,45,48,51dcgの13点測定 を行った.このとき照射領域はビニールテープにてマスクすることによって7
×7mm2に制限した.
2.3 実験結果および考察
2.3.1 TiA1母材のX練測定結果
加工層が除去された両組織材の試験片表面から得られたTiA1311回折環を Fig.2−6に示した.このようにTiA1の母材から得られる回折環は各組織材の結 晶粒の大きさに対応し,二相等軸材では軽度の斑点状に,ラメラ組織材では著 しい斑点状になることがわかった.また,これらの試験片に対して従来法であ るシンチレーションカウンターによるX線応力測定を行ったところ,得られ
た2θ一sin2ψ線図はFig.2−7(a)で示したように,両組織材において良好な直線関
係は得られなかった.この原因は粗大結晶粒の影響によりX線回折に寄与す る結晶粒数が不足し,回折プロファイルの形成が不完全(回折環においては斑 点状化)となったためである.そこで次に,この測定に±3。のψ角揺動を適 用し,X線回折に寄与する結晶粒数を多くする試みを行った.ψ角揺動適用後 に得られた2θ一sin2ψ線図をFig.2−7(b)に示す.この結果,二相等軸組織材に対 しては辛うじて直線近似できる程度まで改善されたが,完全ラメラ組織材にお いては直線近似できるできるまでには至らなかった.このことから,Sin2ψ法
(17)による応力の算出は不可能となり,従来法を用いたTiA1金属間化合物のX 線応力測定での粗大結晶粒による適用限界が確認された.
(a) Dua1phase equiaxed (b) Fu111ameIlar
そこで,これらの試験片に対して粗大結晶粒対策法を適用したIPによるX 線応力測定を試みた.まず,Fig.2−6で示したTiA1311回折環が軽度の斑点状と なった二相等軸組織材の回折環に対して,何の揺動法も適用せずにピーク位置 決定を行った結果をFig.2−8(a)に示した.これよりピーク位置はばらついてい るものの,その程度はそれほど著しくないことが判明した.そこで,この回折 環の画像データに対して揺動名n=30。のソフトウェア揺動法を適用してみた ところ,ピーク位置はFig.2−8(b)に示したように十分滑らかで,かっ連続的に なることが明らかとなった.このことから,結晶粒径20〜100μm程度のTiA1
二相等軸組織材の測定では,試料平面揺動法までの適用は必要なく,ソフトウ ェア揺動法の適用で十分応力解析が可能になることがわかった.また,2.2.
1.1節の(2−7)式を用いて,cosα法より残留応力を決定する場合に最終的に 必要となるε、と。osαの関係もFig.2−8(c)示したように良好な直線関係が得ら れ,応力値が精度良く求められることがわかった.これらの結果よりTiA1二 相等軸組織材の母材に対するX線応力測定では,ソフトウェア揺動法を適用
したIPによるX線測定が有効に適用できることが明らかとなった.なお,ソ
ア440
、遵
、μ30
、 意〜7420
書
ア47.0
00 0ア 02 03 04 05
舳2ψ
Dual phase equiaxed
StruCture06
、
遵μ30
ミ
さ7420
〜
薯舳
00 07 02 03 04 05 06
舳2ψ Fu111ame11ar
StruCture
50
一50
一50
50 伽mジ
50
(a)Peak position of Debye Scherrer ring without software osci11ation.
一50
一50
50 伽mノ
(b) Peak position of Debye−
Scherrer ring Performed software osci11ation.
(a) 2θ一sin2ψdiagram of non osci11ation.
7440
、遣
、7430
べ さ
〜ア4210 塁
ア47.0
●
●
● ・ ●
●
00
σ7 02 03 04舳2ψ
05 06
、遵7430
ミ
さ7420
〜
薯舳
●
● ・ ● ・
● ●
● ○
●
●
00 07 02 03 04 05 06
舳2ψ
Dual phase equiaxed Fu1I lame11ar
StruCtuI e StruCture
(b) 2θ一sin2ψdiagram,ψosci11ation was app1ied.
Fig.2−8
0004
0002
1ご・…
一0002
一0004
0〃∂!ρカ∂5θθσμ后xεd5 〃6f〃rθ 8∂5θ ηεf∂!
00 02 04 06 08
005α
(c)ε、 vs・cosαp1ot・
ア、0
Experimenta1resu1ts for specimen whose Debye−Scherrer
フトウェア揺動は回折環を真円に近づける作用があるため,過度の揺動は応力 値を実際よりも小さくしてしまう恐れがある.しかし,今回の測定で採用した 揺動名30。は,測定応力値のバラツキを極小にするとともに,その絶対値にさ ほど影響を与えない最適揺動角度であることが佐々木らによって報告されて
いる(12).
次に,Fig.2−6で示した著しい斑点状となった完全ラメラ組織材のTiA1311
一50
一50
繰
回折環に対しては,斑点どうしの間隔が広すぎるために,ソフトウェア揺動法 の適用だけではこれらの間の回折強度を補充することはできなかった.そこで,
試料平面揺動法の適用によって測定結晶粒数を増加させ,連続的な回折環を得 る試みを行った.Fig.2−9(a)は試料平面揺動適用後に得られた同回折環の写真 である.このように回折環は斑点状化が大幅に改善され,連続的になることが 確認できた・また,Fig.2−9(b)にはこの回折環に対してピーク位置決定を行っ た結果を,Fig.2−9(c)にはε、と。osαの関係を示したが,この場合も二相等軸組 織材の場合と同様にε、一CoSα線に良好な直線関係が得られ,応力値が精度良く 求められることが判明した.以上のことから,ψ角揺動を適用したシンチレー ションカウンターによる測定でさえ,応力値が得られなかった結晶粒径100〜
500μm程度の完全ラメラ組織材に対しても,試料平面揺動法を適用したIPに よる測定を行えば,正確な応力値が得られるようになることが明らかとなった.
なおこのとき,応力値の再現性を向上させるため,回折環にn二30。のソフトウ ェア揺動を適用した.また試料平面揺動の適用により,揺動範囲内(7×40mm2)
には約840個の結晶粒が存在するようになった.
(a) Debye−Scherrer ring performed X−Y p1ane OSCi11atiOn.
(b) Peak position of Debye−
Scherrer ring performed X−Y p1ane osci11ation。
0004
0002
1ご・…
一0002
一0004
月〃〃!∂ ηθ〃θr5f〃。f〃rθ 8∂5θη?θf∂/
00 02 04 06 005α
08 プ0
(c)ε、vs.cosαp1ot・
Fig−2−9 Experimenta1resu1ts for specimen whose Debye−Scherrer
2.3.2 TiA1加工材のX線測定結果
Fig.2−10は各組織材の研削加工された仕上表層からIpを使用して得られた TiA1311回折環である.いずれの組織材から得られる回折環も,もはや母材の 粗大結晶粒の影響による斑点状化は見られなくなり,加工により生じた微視的 な不均一ひずみ,および結晶の微細化の影響によってブロードになった.さら にFig.2−11には,Fig.2−10の完全ラメラ組織材の回折環(Fig.2−10の右側)の
α:ガ,9ガ,18ガおよび27ポ方向の回折プロファイルを抽出した結果を示 したが,ピーク位置を識別することが非常に困難であることがわかる.したが って,TiA1加工材から得られる回折環に対しては正確なピーク位置決定が行 えず,CoSα法による残留応力値の決定は不可能であった.なお,切削加工材 から得られた回折環についても同様な結果であった.
このようにTiA1加工材に対するX線応力測定では,使用されるTiA1311回 折線自体の強度がそれ程強くなく,またそれがTiA1113回折線との2重線と なることから,回折プロファイルは著しいブロードになり,P/B比の非常に低 いものとなる.このことからTiA1加工材へのX線応力測定法の適用は困難と なる.特に前述のIPによるX線測定では,検出器へのフィルター装着が不可 能であるためにバックグランドが除去できないこと,また波高分析器(pu1sc heightana1yzcr,pHA)による波高弁別ができないことがさらにp/B比を低くす
る原因となっている.したがって,このように極低P/B比となる回折線に対し てはそれらが可能なシンチレーションカウンターによる測定が有効であると 言える.また,これらの加工材から得られた回折環を良く見ると,強度は弱い ながらも環全局でほぼ均一であることがわかる.このことはX線侵入深さ内 に粗大結晶粒または加工によって形成される強い集合組織が存在していない ことを示唆しており,従来法であるシンチレーションカウンターを使用した Sin2ψ法でも応力値を得るのに問題が無いことを意味している.そこでこれら
のTiA1加工材に対して従来法によるX線応力測定を行った.
Fig,2−12は各加工材の試験片長手方向について測定を行い,得られた回折プ ロファイルの結果である.これらの中で完全ラメラ組織材の研削加工された仕 上表層から得られた回折プロファイルについて,先のFig.2−11のものと比較す ると,P/B比はIPで測定するよりも良好となり,ピーク位置決定も可能とな った.ただしFig.2−12の回折プロファイルをより詳細に観察すると,研削加工 された仕上表層から得られたものは,TiA1311回折線とTiA1113回折線が比較 的分離しており,切削加工された仕上表層から得られたものはそれらが完全に 重なっていた.そのためこれらのピーク位置決定は,研削加工材から得られる 分離した回折プロファイルに対しては半価幅中点法を採用してTiA1311回折
放物線近似によるピークトップ法を採用した.
Fig.2−12にはまた,先のピーク位置決定結果から得られた各試験片の2θ一sin2 ψ線図も示してあるが,いずれも比較的良好な直線関係となっていた.これら の2θ一sin2ψ線図中にはまた,最小二乗近似した直線の68.3%信頼限界∠1M(18)
および∠1Mに応力定数K(19)を乗じて得られたいわゆる応力値のばらつき∠1σ を示してある.これらの結果から,半価幅中点法によって得られた20−sin2ψ 線図とピークトップ法によって得られたものでは2θ値のばらつきは同程度 であり,応力値には約±30〜40MPaの誤差が含まれていることがわかる.ただ
し研削加工材から得られた2θ一sin2ψ線図については,規則的なうねりを有し ていることから,当初存在しないと考えられていた集合組織等の変形組織が加 工層内に存在し,それが格子ひずみの分布挙動に影響を与えていることが伺わ
れた.
(a) Dua1phase equiaxed (b) Fu111ame11ar
StruCtu1.e. StruCture
Fig.2−1O Debye−Scherrer ring obtained from ground surface using IP。