• 検索結果がありません。

看護短大生の性認識と看護援助

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "看護短大生の性認識と看護援助"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

The Bulletin of Saitama Prefectural University

■ 実践報告 ■

Key words:nursing college students, recognition of sexuality and gender, nursing practice 

看護短大生の性に関する意識は、学習前は人間にとって重要な問題という認識が低い。しかし、人間の性に関する学 習を受けることで人間の性への理解が深まり、性認識は高くなる。そして、学習後は、対象の性に関わる問題を考えよ うとする態度がみられるようになり、在宅看護の援助指導を行う場面においても伝統的な性役割に基づくジェンダーバ イヤスがなくなり適切に判断するようになっている。

キーワード:看護短大生、性認識、看護援助

埼玉県立大学保健医療福祉学部看護学科

Department of Nursing, School of Health and Social Services, Saitama Prefectural University 原稿受付日:平成17年11月30日

看護短大生の性認識と看護援助

―講義前後の調査から―

筑後 幸恵

Nursing College Students ,

Recognition of Sexuality and Gender and Their Nursing Practice:

Results of research before and after lectures

Yukie Chikugo

(2)

1.緒 言 

人間にとって性とは、人間らしく生きていくための基 盤である。看護師自身が人間の性について理解を深める ことは、人間としての尊厳を保つ援助を実践するために は不可欠であると考える。しかし、看護は人間を対象に しながらも日本の看護教育に性についての教育が取り入 れられたのは1990年からであり、歴史は浅く、まだ学 問領域として体系化していない。

これまでの研究では、臨床において看護師の約4割が 患者のセクシュアリティの問題に遭遇し、拒否的な感情 で戸惑う状況が報告されており1)、看護学生についても 約3割が経験している2)。臨床における看護援助は性的 な反応が生じ易い場面が多い。しかしながら、援助する 看護師側の性認識は低く、患者の性の問題を考える能力 は養われているとはいえない。日本における性について の教育は、特に女性には思春期における生理への対応や、

エイズなど性問題に対応した教育が主な内容であったた め、人間の性に対しては、むしろ雑誌やメディアの影響 をうけることの方が多いと思われる。そのために、患者 の性に関わる問題に遭遇しても対応できず、戸惑いや否 定的な感情に看護師自身が悩む結果になっていると考え られる。また、看護職は長年女性の職業として認識され てきたことで、看護師自身の内面には、ステレオタイプ 的な意識が内在し、その意識が援助にも影響しているの ではないかと考えた。

この研究は、今後、看護基礎教育にける性に関する学 習の必要性や今後の学習課題を検討することを目的にし ている。これまでの研究では、看護学生の性に関わる性 認識については、セクシュアリティ、ジェンダー意識な ど捉え方はさまざまであり、性認識を明確にした調査は ない。また、性認識が援助にどのように影響を及ぼして いるのかを調査した研究は見当たらない。

今回は、性認識をイメージ、ジェンダー意識におき、

学生の性認識が、患者の性に関わる看護場面にどのよう に影響するのかを明らかにしたいと試みた。「人間の性」

に関する講義を行い、学習前後で認識に変化がみられる のか、そして認識の変化は、具体的な看護援助に影響を 及ぼすのかについて考察をした。

2.方 法

1)研究の枠組み

性についての認識は、性に対する感じ方(性に対する イメージ)、ジェンダー意識(伝統的な性役割意識に対

する意見)とした。

性に対するイメージが悪い場合は、患者の性的反応に 対し、戸惑いや嫌悪感を抱き易い。ステレオタイプ的な 意識は、育児や介護支援において影響すると考え、具体 的な援助場面を設定した。

性に対するイメージが影響する援助場面は、①男性患 者の性的反応が出る事例にした。また、ジェンダー意識 が影響すると考えられる場面は②母親指導、在宅看護支 援の場面とした。

2)調査期間 

(1)2004年7月12日〜20日(学習前)

(2)12月20日〜25日(性の学習2コマ実践、5ヶ月後)

3)対象 看護短大生1学年 77名

4)具体的な方法

協力が得られた学生に、質問紙を直接配布し、無記名 にて回収した。回収率97.4%、有効回答率97.4%。

(2)学習前と後のアンケート結果を比較する。

5)講義内容:学科目「看護学原論」、単元「人間の性」

90分2コマ

(1)人間の性:セックス、セクシュアリティ、ジェンダ ーについて

(2)性と看護援助:①患者の性の問題、アセスメント方法、② 援助の方向性

6)調査内容

(1)性に関する意識①性のイメージ、②性役割意識 (2)看護援助に対する意見①患者の性的反応に対する看 護援助、②母親に対する看護援助に関する意見③男性患 者への清潔ケアの援助に関する意見

3.倫理的配慮

学生には集計結果は授業内(クラスごとの集計結果)

で報告することを事前に説明した。また研究以外には活 用しないこと、成績には影響がないこと、個人の特定は しないこと、回答は強制ではないことを説明した。説明 文(同意書)を調査書につけて同意を得られた学生に依 頼した。

(3)

4.結 果

1)看護短大生の性に関わる意識

性に対するイメージについて自由に記載してもらった 結果、学習前は「男と女」以外はあまり浮かばない状況 だが、学習後は「愛」「生殖」「コミュニケーション」な どが多くあがっていた(図1)。

しかし、性別役割分業意識は、育児は男性も平等に行 うという意識は8割以上の学生が思っているものの、学 習後も母親は子どもが小さいうちは家事優先という意見 が7割以上をしめていた(図2)。

2)性意識が影響する看護場面と援助 (1)清拭援助場面での性的反応に対する対応

事例は、脳動脈奇形の手術をした男性31歳の患者が 清拭中に陰部を露出するような反応をしました。あなた はどのように対応しますかという質問である。自由回答 をカテゴリー化した。また、アンケートを学習前と後に 集計した(図-3・4)。

(2)育児指導が必要な事例

事例は、分娩後1ヶ月健診で訪ねた2児の母親が、最 近言うことを聞かなくなった4歳の長男が可愛くない。

という訴えに対してどのように対応するかという質問で ある。回答は、自由に記述してもらい、援助の対象者を 集計した(図5)。

その結果、8割以上の学生が母親のみを対象に指導内 容を考えており、夫や周囲の家族や地域支援などを考え る学生は少なかった。

(3)介護指導が必要な事例への対応

事例は、男性高齢者85歳の在宅ケアにおいて、下記 のような家族背景において、清拭の指導を誰に行うかと いう質問である。援助の対象者を学習前と後に分けて集 計した(図6・7)

図-1 性のイメージ

図-2 性別役割分業意識(学習後)

図-3 性的反応に対する援助(学習前)

図-4 性的反応に対する援助(学習後)

図-5 育児指導の対象(学習後)

(4)

[家族背景]

配偶者84歳、長男54歳(自営業)、長男の嫁48歳(教 員)、孫長男22歳(フリーター)、孫次男19歳(高校生)、

長女50歳(主婦パート勤め:車で1時間の距離に住む)

とした。

その結果、学習前は条件が悪くても女性を選択する学 生が多かったのに対し、学習後は男性をあげる学生が増 えていた。

5.考 察

1)看護短大生の性認識と援助 

看護学生の性に関する認識について、学習前の性に対 するイメージは「男と女」という以外はあまり浮かばな い状態であったが、学習後は「愛」などのいいイメージ から「生殖」「コミュニケーション」などイメージも広 がっている。そして、臨床で遭遇する患者の性的反応に 対しては、学習前は、「厳しく注意する」「無視」など否 定的な対応が多かったが、学習後は「ユーモア」「相談 する」など患者の心を気遣ったり、問題解決をしようと いう姿勢がうかがえる。学習前は、患者の性的反応に対 し、戸惑う学生は半数おり、嫌悪感を抱く学生も3割存 在していた。しかし、講義後は、患者の気持ちを尊重し たり、状況を考えようとする態度が多くなっている。こ

れは、学生自身、性行動のコントロールは大脳皮質であ り、身体的な機能障害で反応が生じやすいこと、また性 的反応も人間として基本的な欲求であり、重要な意味を もつという講義内容に理解を深めたからと考えられる。

また、在宅看護支援についても、伝統的な性別役割意識 に左右されずに、清潔ケアの指導者を判断するようにな っていた。

従って、人間の性について学習し、理解を深めること で、患者の性に関わる援助は変化すると考えられる。高 村ら1)の調査によれば患者の性的言動に遭遇した看護師 は全国調査で約4割は体験があり、その場合の反応はイ ライラ、驚き、嫌悪感、怒りなど否定的な反応を半数以 上が示している。また、小山田ら3)の調査でも看護学生 の3割以上が性的言動を体験し戸惑っている。セクシュ アリティの問題は学生自身が異性との関係を考える年代 であり、関心もある年代である。しかし、正しい知識で 学習させなければ、現場での看護援助は患者の人間の尊 厳をも守るどころか、看護者側も患者側も深く傷つく可 能性がある。ゆえに、基礎教育から看護師の生涯学習に おいて性に関する学習は不可欠であると考える。そして、

人間の性についての理解が深まることは患者の性を尊重 した援助実践に結びつくと考えられる。

2)ジェンダー意識と今後の課題

看護短大生のジェンダー意識については、「男女とも 育児休暇を平等にとるべき」「家事も育児も男女平等に 分担する」という意見に対し、約7割が肯定的な意識を 示しているが、育児指導の場面では、支援が母親にとど まる学生が8割以上と多かった。子育ては母親の役割と いうジェンダー意識が援助に影響していると考えられた。

性役割意識の結果では、伝統的な役割意識から解放され た意識がうかがえるものの、看護援助に結びついていな いと考えられた。これまでの調査においても短期大学入 学当初の学生は、男女平等意識はもっているものの、内 面的にはステレオタイプ的な意識を強くもっている3) ジェンダーについては、学生にとってはじめて考える学 生も多く、講義前の調査では、ジェンダーという言葉を 知っている学生は2割もおらず、2時間の講義では十分 に理解できなかったと思われる。今後、学習を重ねる必 要があると考える。

また、日本の看護教育において人間の性についての教 育は1990年からであり、まだ学問領域として体系化し ていない。今後、基礎教育においてどのように体系的に 教えていくのか検討する必要があると考える。

図-6 男性高齢者の清拭指導対象者(学習前)

図-7 男性高齢者の清拭指導対象者(学習後)

(5)

6.結 論

看護短大生の性の捉え方は、学習前は人間にとって重 要な問題という認識が低いが、人間の性について理解を 深めることで、患者の性的反応に対応する場面や、援助、

指導する場面においても相手の性を尊重したり、伝統的 な性別役割意識に左右されることも少なくなっている。

性に関する今回の学習は学生の性への理解を深め、性 的反応を示す患者、援助指導を行う際に影響すると考え られる。

7.おわりに

今回は、性に関わる意識をイメージや性役割意識で捉 えたが、性認識をもっと多面的に捉える必要があると考 える。また、どのような意識が具体的な援助に影響する のかについても調査をすすめ、基礎教育における課題と 学習方法を検討していく必要がある。

文 献

1)高村寿子,松本玲子,西本勝子.全国調査に見る看 護婦のセクシュアリティ認識.看護教育(1992);

33(10):737-743

2)筑後幸恵.看護職員と看護短大生のジェンダー意識 が就労意欲に及ぼす影響.山梨県立看護大学短期大 学部紀要(1997);5(1):77-87

3)小山田信子,及川一枝,高林俊文.東北大医短部紀 要(2002);11(2229-235

参照

関連したドキュメント

今回のアンケート調査①~④により、入院生活の安心

4 )

また, 新人以外の病院に勤務する看護職の 離職率は, 12.3% (2005年度) であり,

学生が記述した内容の分析は,研究者間で看護に対す

 老年看護学実習前における認知症高齢者イメージの 特性 1)

臨床看護師の演習参加による成人看護学実習指導での効果 4.調査内容

GID者が医療機関を受診できるようになり,受診者数も 2004 年以降増加している

-研究報告- 造血幹細胞移植を選択する患者への看護師の意思決定支援と影響要因 ―医師からの移植説明時における看護援助の実際―