研究チーム報告
【人文科学研究部】
生成文法と隣接科学領域の総合的理論研究
生成言語科学研究チーム(課題番号0 4 3 0 0 1)
研究期間:平成1 6年4月1日〜平成1 9年3月3 1日
研究代表者:青木文夫 研究員:伊藤益代、久保善宏、古賀恵介、多田浩章、安井 篤、山田英二
【研究概要及び研究成果】
生成言語科学研究が、 「原則と媒介変項の理 論」を経て、現在の「極小理論」に至り、隣接 する領域の研究も多岐にわたる中で、この研究 チームは2 0 0 4年4月から2 0 0 7年3月までに理論 の中核分野と主要な隣接諸科学の研究成果を提 示し理論的な流れに多少なりとも貢献をするこ とができた。その意味で、研究調査(出張調査、
インフォーマントとの面接、データベースの構 築、研究交流など)に取り組み、最終的には、
理論と隣接領域の接点を追究する成果(2 0 0 6年 の論説集「福岡大学研究部論集:人文科学編6
−5」の刊行)に至った。
その成果をまとめる意味で、ここでは各委員 の3年間の主な成果について絞って述べる。
(青木委員)スペイン語の対格前置詞 a の出 現に関して、スペイン語において
aによって具 現化される有生性が統語的な素性として派生に 関わるのかどうかついての研究を続けている。
その成果の一部は上記論説集において、 「ESTA
TARDE VI GENTE CORRER:対格前置詞 a の省 略と意味について」として発表した。その論旨 は、 極小理論の
Inclusivenessの条件から、 統語的 には最大限、矛盾が無い程度に過剰生成できる ようなメカニズムを構築して、実際の消去には 運用の諸要素が関連しているという立場である。
(伊藤委員) 「取りたて詞「さえ」の習得につ いて「前提」の解釈の点から」というテーマで、
日本語を母語とする子供が取りたて詞「さえ」
をいかに解釈するのかについて実験を行い調査
した。その結果、日本語児は「さえ」がもつと される含意
existential implicatureや
scalar impli- cature(Karttunen and Peters 1979)に敏感ではないことを明らかにし、さらに追試においては子 供が語用論的情報量の強弱を認識できないとす る
Noveck(2 0 0 1)の報告を支持することになっ た。次に、 「日本語児による束縛変項の解釈:
動詞句削除文の点から」というテーマでは、動 詞句削除(VP ellipsis)を含む等位接続文にお いて、日本語獲得の初期段階における子供がい かに空要素や照応詞「自分」を解釈するのかを 実験により調査した。具体的には、空項や照応 詞「自分」が指示名詞句や量化名詞句を先行詞 としてもつ場合に、正しく束縛変項の解釈をす ることができるかどうかを調査した。その結果、
代名詞(英語)であろうと照応詞(日本語)で あろうと、音形をもつ束縛変項を
QNPと関連 づけるのは困難であることが明らかとなった。
(久保委員)英語の普遍性と個別性の解明の視 点から、生成文法、とりわけミニマリスト・プ ログラムの枠組みにおいて、英語のいくつかの 統語事象(等位構造、同格、関係詞節、話題化 構文、左方転位文、分裂文)を取り上げ、他の 言語と対照しながら考察した。その結果、英語 という言語の普遍性と個別性に迫った。生成文 法理論、特にミニマリスト・プログロムの枠組 みで、英語と他の言語における等位構造を中心 に考察し、世界の諸言語の等位構造の類型論を まとめた。英語と他の言語間にみられる統語的 差異は、顕在的等位接続詞の有無とその構造上
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の位置であることが観察され、顕在的等位接続 詞を用いる言語(英語)においても、顕在的等 位接続詞が生起しないことがあることから、等 位接続詞の派生について、等位接続詞は従来の 仮説のように統語部門で併合によって派生に導 入されるのではなく、PF 部門で併合によって 派生に導入されることを提案した。
(多田委員)統語論と意味解釈部門のインテー フェイスに関して、 「部分的な統語計算の段階 で解釈をおこなう」という主張をする二つの関 連するが独立した仮説(Chomsky の
Phase理論
と
Chierchiaの再帰語用論)の検討を課題とし
てきた。
Phase理論に関しては、
vp, CPの各phaseは そ れ ぞ れ
Hale&Keyserの 項 構 造 の 領 域 と
Cinque
の機能範疇構造に対応するが、vp で実
際に解釈部門への転送がなされるかどうかは外 項の存在に依存することを立証した。またその 議論の帰結として項構造は語彙統語論という別 個の領域を仮定する必要はなく、派生的統語論 の枠組みにおいては
phaseによる転送のタイミ ングどりで説明が可能であることも示した。再 帰語用論に関しては、スカラー含意を中心に、
部分解釈に反対する全体論者(Sauerland, Spec-
tor)とChierchia
のそれぞれの論拠を検討した。
形態論的現象と結び付けられる
Phase理論と異 なり、この問題は意味論−語用論インターファ イス内部での議論となり、決着をつけることは 困難である。スカラー含意の計算法の妥当な定 式化から意味論の全体的設計をもとにした議論 を構築する必要があるという見通しを得た。
(山田委員)英語の副次強勢配置の理論的研究 として次ぎのような研究をした。英語の副次強 勢配置現象の説明は、従来の韻律理論の枠組み においても、また最近注目を浴びている最適性 理論の枠組みにおいても、いずれの枠組みにお いても、満足のいく説明は得られていない。故 に、韻律理論、最適性理論のいずれにも属さな い第三の理論を構築し、この現象の解明をする
ことが、本研究の最終目標であった。その成果 として、英語の副次強勢配置に関する一連の論 考で、韻律音韻論の不備を指摘した。また、い くつかの論考では韻律音韻論に対抗して出現し た最適性理論の不備を指摘した。更に、この二 つの理論的枠組みを比較・検討したのが、山田
(2 0 0 6
b):「英語の副次強勢をめぐって:最適 性理論
vs.韻律理論」であることを示しておく。
(安井委員)この研究チームでは下記にまとめ た内容の論説を発表した。“Objective Study of
Vocal Disorders Using Spectrograph”では、サウンド・スペクトログラムには声の音声成分の特徴 が音声波形として現れることから、日本語を母 語とする日本人男性4人の五母音(アイウエ オ)を分析した。被験者4人は、正常音・粗雑 音・無力音・緊張音の各音声特徴を有する者で ある。スペクトログラムは喉頭部位の状態を反 映するため、主観的な聴覚印象と客観的な波形 の観察を併用することにより対症療法が可能で あることを示した。次に「長音符号の功過」で は、の本の英語教育では旧来
D.Jonesの音声表 記を導入して行われてきたことについて、その 中で母音に長音符号を附記する表記法はネイ ティブスピーカーの発音と異なる音になるため、
特に入門期の学習者には誤解を植え付けること になることを、Jones の表記法は音声記号の数 を減らし簡略化している長所はあるが、英語国 民の発音と音声記号とに違いを生じるため安易 に使用することには危険性があることから論じ、
Jones
表記と
IPA表記を比較し、ネイティブス
ピーカーが実際に発音した音声を分析すること によって、幾つかの矛盾点を指摘した。早期英 語教育が熱を帯びている昨今、音声教育への警 鐘としたい。
紙数の関係で、各委員の業績は省略するが、
本学が公表している各委員の研究者情報を参照 されたい。
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現代マクロ経済学の課題と方法の再検討
マクロ経済学のパースペクティブ研究チーム(課題番号0 4 4 0 0 2)
研究期間:平成1 6年4月1日〜平成1 9年3月3 1日
研究代表者:山崎好裕 研究員:藤田之彦、中島章子【研究概要及び研究成果】
本研究チームでは、現代のマクロ経済学を多 方面から分析する研究者を集め、その展開の可 能性についてできるだけ一般的に検討すること を目指してきた。今回の研究期間を通じて、多 様に見える展開の中にも、諸問題の焦点になる 研究領域がいくつかあることが明らかにできた と考えている。たとえば、それはマクロ変量と いう集計量を扱うことから離れて、産業連関分 析に見られるような経済構造研究を重視しなく てはならないということであったり、労働とい う生産要素の特殊性を考察することが当該分野 の理論の態様を指し示すことになるという視点 であったりした。 それは、 今後の研究にも繋がっ ていくものであるが、本報告ではテーマにある パースペクティブという観点から、現時点で見 たマクロ経済学の研究状況についての一視点を 提示することにしたい。
マクロ経済学は1 9 3 0年代の世界的な大不況期 に、 イギリスの経済学者ケインズの著書 『雇用・
利子および貨幣の一般理論』の出版が契機とな り、誕生・発展したとされている。しかし、実 際には、それ以前から現在のマクロ経済学と同 様の研究は行なわれていたし、ケインズの同時 代にもやはりそうであった。ただ、いわゆるケ インズ革命によって、それまでのマクロ研究に 強く見られた成長という視点から循環という視 点への転回が行なわれたと見ることができる。
そのことはまた、経済成長動態の客観的な分析 からはしばし離れて、景気の後退や不景気の長
期化をいかにして防ぐかという政策論的な分析 内容が導入されることをも意味していた。
だが、1 9 7 0年代以降の世界経済に見られた激 変とケインズ経済学の政策への利用という潮流 の後退とによって、現在、再びマクロ経済学の 分析主題は、ここで言う成長の視点へと回帰し ていると捉えることができるのである。なお、
こうしたマクロ経済学説史の詳細については、
山崎好裕「成長と循環の融合−マクロ経済学史 への代替的視点」 ( 『経済学史研究』第4 8巻第1 号、1 1 0 ‐ 1 2 3ページ、2 0 0 6年6月)を参照 さ れ たい。
とは言っても、もちろん、現在のマクロ経済 学において、経済政策をいかに行うかという議 論が重要でないということではない。むしろ、
各国ともにマクロ経済政策の実施とその効果と の関係が不透明さを増すのに反比例するように、
政策論への期待は高まっていると言えよう。
現代のマクロ経済学の学派的配置は、実物的 景気循環論とニュー・ケインジアン・エコノミ クスの並存ということにまとめられるというの が大方の見解である。両派の教科書的解説につ いては、斉藤誠『新しいマクロ経済学−クラシ カルとケインジアンの邂逅[新版] 』 (有斐閣、
2 0 0 6年1 0月)を参照されたいが、両者の間では かつてのイデオロギー的とも言える対立よりは、
合理的期待仮説を前提とし、マクロ経済学のミ クロ的な基礎を重視するなど、共通点の方が目 立つようになっている。
ただし、事が経済政策観となるとその違いは 研究チーム報告
【社会科学研究部】
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大きい。前者は、景気循環の経済に内在的な性 格と、循環の各時点でのパレート最適性の成立 を主張する結果、マクロ経済政策の有効性どこ ろか弊害の方を強調する傾向がある。これに対 して、後者のニュー・ケインジアンは、市場清 算的に働く価格メカニズムが、当事者の合理的 行動ゆえにこそ阻害され、価格の硬直性が生じ てしまうことを説明する研究に重きをおいてき た。そして、そうした硬直性を有する市場では 需給が一致しない状況が発生するので、経済政 策の有効性が現れる余地はあるとするのである。
それでは、ニュー・ケインジアンはどのよう なマクロ経済政策を具体的に主張するのであろ うか。 この点について、 我が国ではこれまでサー ヴェイが行なわれることは少なかった。しかし、
日本の実際の経済政策運営においては、既にそ の視点が導入されていると考えられるので、こ の点を明確化しておくことは重要である。
ニュー・ケインジアンにおいては、マクロ経 済政策の目的が物価変動を適度な枠内に収める、
あるいは、目標インフレ率を実現するというこ とにある。この点、オールド・ケインジアンと は異なり、完全雇用国民所得水準が少なくとも 長期的には自動的に達成可能であるという、新 古典派マクロ経済学の特徴を備えていることが 理解されよう。したがって、その政策論におい て、財政政策は、短期的な補正の役目を除けば 重視されることはない。
彼らのマクロ・モデルもまた、財市場をバラ ンスさせる国民所得と金利の組み合わせを示す、
右下がりの
IS曲線を構成要素としていること は従来と変わらない。しかし、それと一緒にさ れるのは、貨幣市場のバランスを示す、右上が りの
LM曲線ではなく、中央銀行が政策金利を 設定できることを表す、水平な
MP曲線である。
その結果、ニュー・ケインジアンの総需要曲線 は垂直となり、右上がりの総供給曲線との交点 で決まるインフレ率を目標水準に持っていくた
めに金融政策が行なわれることになる。
従来、外生的貨幣供給と貨幣需要が金利に反 応しないことを前提にした垂直な
LM曲線が仮 定されることはあったが、ニュー・ケインジア ンの仮定はそれと対照的なものなのである。
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研究チーム報告
【理工学研究部】
西南日本の顕生代環境変動史
西南日本の顕生代環境変動史研究チーム(課題番号:0 4 5 0 0 1)
研究期間:平成1 6年4月1日〜平成1 9年3月3 1日
研究代表者:上野勝美 研究員:鮎沢 潤、石原与四郎、奥野 充、杉原 薫、!山哲男、田口幸洋、柚原雅樹
【研究の背景と目的】
日本列島は、古生代以降典型的な付加型造山 帯として発達してきた地域である。特に、西南 日本には日本列島の地質学的な形成史や、固体 地球内部あるいは表層での環境変動に関する数 多くの情報が残されている。本研究では、主に 岩石記録として残されているこれらの情報を、
様々な地球科学的研究手法を用いて定量的に解 析する。特に、島弧変動帯における地殻および マントルの物質循環様式の解明、顕生代生物相 変遷と地球表層環境の相互作用の解明、島弧域 での堆積盆の発達過程と堆積・続成作用の解明、
という3点を中心課題とし、西南日本における 顕生代環境変動の歴史を総括することを目的と している。
【研究成果】
・島弧変動帯における地殻およびマントルの物 質循環様式研究グループ (奥野、田口、柚原)
活地熱系の地表付近に発達する酸性変質帯の 形成機構を明らかにするため、大分県八丁原地 熱帯を中心に調査を行った結果、活地熱帯の地 表にしばしば認められる酸性変質帯には、従来 考えられてきた蒸気加熱水が関与したもののほ かに、初期に高温の火山性流体が関与し、その 後に蒸気過熱水による作用が加わったものがあ ることが明らかとなった。
また、北部九州における白亜紀火成活動の成 因の解明と火山直下の珪長質マグマ溜まりにお ける諸現象の把握のため、志賀島花崗閃緑岩お
よび添田花崗閃緑岩分布域を中心に地質調査を 行い、 採取試料の化学分析、 同位体比分析を行っ た。その結果、両岩体の構成岩石の化学組成が 蓄積されるとともに、新たに両岩体において苦 鉄質マグマと珪長質マグマの共存を示す地質学 的産状を発見した。
さらに、断層近傍の岩石の破壊過程を解明す るために、北部九州各地の地質調査と構造解析 を行った結果、これまで報告例のなかったカタ クレーサイト、断層ガウジ等の断層岩を見出す と共に、これらの切断関係からいくつかのス テージの断層運動を識別することができた。
・顕生代生物相変遷と地球表層環境の相互作用 研究グループ(上野、
!山、杉原)
現世サンゴ礁域の礁斜面にみられる造礁サン ゴ群集の垂直分布とその緯度変化を検討するた め、琉球列島のサンゴ礁において調査を行った。
その結果、八重山海域〜奄美海域では礁斜面で の優占種に違いは認められなかったものの、付 随種については奄美海域のほうが八重山海域よ りも明らかに種多様性が低かった。また、種子 島海域の造礁サンゴ群集は、種構成はその他の 海域と類似していたが、優占種は異なっていた。
さらに、サンゴ礁礁池内における大型底生有孔 虫群集の調査結果も、造礁サンゴ群集と同様の 傾向を示した。こうした群集構造の違いは、主 に緯度の増加に伴う年平均表層海水温の低下に 関係していると思われる。
一方地質時代における生物相研究の一環とし
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て、宮崎県五ヶ瀬町祗園山地域など九州の黒瀬 川帯で野外調査を実施した。その結果、シルル
−デボン系から多数の新産出化石群を見出すと ともに、その化石群集が南部中国との強い古生 物地理学的関連性をもつことを明らかにした。
また、秋吉帯の海山型石灰岩である秋吉石灰岩 において、生層序学的、堆積学的、同位体地球 化学的調査を実施した。特に、秋吉台東部に開 口する竪穴型鍾乳洞である桐ヶ台の穴において、
洞内で採集された石灰岩試料を検討し、石炭紀 最後期からペルム紀前期にかけての年代的にほ ぼ連続した4フズリナ群集を見いだした。それ をもとに、当該地域における秋吉石灰岩の逆転 構造を確認した。
・島弧域での堆積盆の発達過程と堆積・続成作 用研究グループ(鮎沢、石原)
西日本における埋没谷充填堆積物を解析する ための手法の検討および比較のため、東京低地 と中川低地の地下に分布する沖積層を対象とし て、ボーリングコアの解析および3次元地質モ デルの構築を行った。その結果、海水準変動に 対応した埋没谷充填堆積物の形成過程を明らか にするとともに、地下地質分布の可視化に成功 した。
一方、堆積物中に含まれる固体有機物の賦存 状態および物性変化に着目し、それに基づく環 境変動の解析を実施した。その結果、西南日本 の白亜紀以降の古地温勾配は東北日本に比べて 著しく高いこと、有機−無機続成指標間の対応 が西南日本と東北日本では異なることが明らか になった。これらの背景としては、白亜紀と古 第三紀の間での有機物給源の変化に加えて、短 期間での広域的な古地温条件の変化が示唆され る。
【主な研究業績】
五島直樹・奥野 充・藤沢康弘・鮎沢 潤・小
林哲夫、2 0 0 5. 含水比、乾燥密度、全炭素お よび全窒素含有量、鉱物組成および色調から みた由布火山北麓に分布する腐植質土壌層の 集積過程.福岡大学理学集報、3 5 (2) 、3 3 ‐ 4 0.
Hachiohe, S., Kimura, K., Nakanishi, T., Ishihara, Y.
& Tanabe, S., 2006. Geological/Geotechnical In- formation System: An Example of Boring Data- base for Saitama Prefecture, Japan and its Appli- cations. Transactions, Japanese Geomorphologi- cal Union, 27(3), 349-366.
長谷義隆・平城兼寿・中原功一朗・岩内明子・
松島義章・奥野 充・中村俊夫、2 0 0 6. 堆積 物、花粉・珪藻化石解析および
14C年代測定 に基づく熊本平野および有明海南東海域の後 期更新世〜完新世環境変遷.地質学論集、5 9 号、1 4 1 ‐ 1 5 5.
Ikeda, Y., Iryu, Y., Sugihara, K., Ohba, H. & Yamada, T., 2006. Bathymetry, biota and sediments on the Hirota Reef, Tane-ga-shima the northernmost coral reef in the Ryukyu Islands. Island Arc, 15, 407-419
稲永康平・奥野 充・高島 勲・福島大輔・鮎 沢 潤・小林哲夫、2 0 0 6.南九州、入戸火砕 流堆積物の熱ルミネッセンス年代.福岡大学 理学集報、3 6 (1) 、2 5 ‐ 3 0.
石原与四郎・木村克己・中島 礼・宮地良典・
田辺 晋・中山俊雄・斎藤文紀、2 0 0 4. 東京 低地と荒川低地から得られた3本のボーリン グコアの堆積相と放射性炭素年代:DK コア
(江東区新砂) 、TN コア(足立区舎人公園) 、
HAコア(東綾瀬公園) .地質調査研究報告、
5 5、2 2 1 ‐ 2 3 5.
石原与四郎・木村克己・田辺 晋・中島 礼・
宮地良典・堀 和明・稲崎富士・八戸昭一、
2 0 0 4. 埼玉県草加市柿木地区で掘削された沖 積層ボーリングコア(GS ‐
SK‐1)の堆積相・
堆積物物性と放射性炭素年代.地質調査研究 報告、5 5、1 8 3 ‐ 2 0 0.
―2 2―
石原与四郎・徳橋秀一、2 0 0 5. 房総半島安房層 群最上部安野層の堆積様式―前弧堆積盆を埋 積するタービダイト・システムの一例―.地 質学雑誌、1 1 1、2 6 9 ‐ 2 8 5.
木戸絵里香・
!山哲男、2 0 0 5. 宮崎県五ヶ瀬町 祇園山層から産出するシルル紀四放サンゴ化 石群.福岡大学理学集報、3 5 (1) 、1 1 ‐ 2 9.
Kido, E., Sugiyama, T. & Mukai, T., 2007. Early Carboniferous corals found in the limestone ex- posed on the southern slope of Mt. Chunobori- dake, Gokase-cho, Miyazaki Prefecture, South- west Japan. Fukuoka University Science Reports, 37(1), 79-91.
木村克己・石原与四郎・宮地良典・中島 礼・
中西利典・中山俊雄・八戸昭一、2 0 0 6.東京 低地から中川低地に分布する沖積層のシーケ ンス層序と層序の再検討.地質学論集、5 9号、
1‐ 1 8.
木村靖幸・鮎沢 潤、2 0 0 4. 大辻層群遠賀層か ら産出する琥珀.日本琥珀研究会報、5、1 ‐ 5.
木村靖幸・鮎沢 潤・佐々木和久、2 0 0 5.岩手 県久慈地域に分布する琥珀胚胎層の堆積環境 と続成.福岡大理学集報、3 5 (2) 、3 1 ‐ 4 0.
清 崎 淳 子・及 川 和 彦・田 口 幸 洋・千 葉 仁、
2 0 0 6.大分県八丁原地熱帯小松地獄の温泉水 の地球化学的特徴.福岡大学理学集報、 3 6 (1) 、 1 5 ‐ 2 3.
清崎淳子・田中佳奈・田口幸洋・千葉 仁・武 内浩一・本村慶喜信、2 0 0 6.八丁原地熱帯の ハイポジーン酸性変質帯−明礬石変質からの 解明−.日本地熱学会誌、2 8、2 8 7 ‐ 2 9 7.
清崎聖一・清崎淳子・牧野隆吾・田 口 幸 洋、
2 0 0 5.福岡県星野村の地すべり地帯における 地下水の化学および同位体組成の特徴.Get 九州、No. 2 6、1 0 ‐ 1 3.
小林 淳・萬年一剛・奥野 充・中村俊夫・袴 田和夫、2 0 0 6. 箱根火山大涌谷テフラ群―最
新マグマ噴火後の水蒸気爆発堆積物.火山、
5 1、2 4 5 ‐ 2 5 6.
小林哲夫・奥野 充・成尾英仁、2 0 0 6. 鬼界カ ルデラ7. 3
cal kyr BP噴火−カルデラ噴火にお ける玄武岩質マグマと地殻応力の役割−.月 刊地球、2 8、7 5 ‐ 8 0.
萬年一剛・小林 淳・奥野 充・笠間友博・山 下浩之・袴田和夫・中村俊夫、2 0 0 6. 箱根火 山の噴火史−最近の知見に基づく再検討.月 刊地球、2 8、3 5 5 ‐ 3 6 2.
宮地良典・木村克巳・石原与四郎・田辺 晋・
中島 礼・堀 和明・中山俊雄・斉藤文紀、
2 0 0 4.東京都江戸川区小松川地区で掘削され た沖積層ボーリングコア(GS-KM-1)の堆 積相・堆積物物性と放射性炭素年代.地質調 査研究報告、5 5、2 0 1 ‐ 2 1 9.
中島 礼・木村克巳・宮地良典・石原与四郎・
田辺 晋、2 0 0 4.東京都江戸川区小松川と埼 玉県草加市柿木において掘削した沖積層ボー リングコアから産出した貝化石群集.地質調 査研究報告、5 5、2 3 7 ‐ 2 6 9.
中島 礼・田辺 晋・宮地良典・石原与四郎・
木村克己、2 0 0 6.沖積層ボーリングコアに見 られる貝化石群集変遷−埼玉県草加市柿木と 東京都江戸川区小松川の例−.地質学論集、
5 9号、1 9 ‐ 3 3.
Nakazawa, T. & Ueno, K., 2004. Sequence bound- ary and related sedimentary and diagenetic facies formed on Middle Permian mid-oceanic carbon- ate platform: Core observation of Akiyoshi Lime- stone, Southwest Japan. Facies, 50, 301-311.
奥野 充、2 0 0 5.最近1 0, 0 0 0年間の噴火史編年 と
14C年代測定.火山、5 0、S2 0 9 ‐S2 1 7.
奥野 充、2 0 0 5.樫原湿原の堆積物から環境変 動を読む.歴史読本、5 0 (2) 、2 2 1 ‐ 2 2 3.
奥野 充・前垣内勇作・高島 勲・中村俊夫・
稲永康平・小林哲夫、2 0 0 5.放射性炭素およ び熱ルミネッセンス年代測定による鍋島岳火
―2 3―
山の噴火年代の検討.福岡大学理学集報、3 5
(1) 、4 1 ‐ 4 8.
奥野 充・森 勇一・上田恭子・中村俊夫・長 岡信治・鮎沢 潤・藤木利之・此松昌彦・稲 永康平・水田利穂、2 0 0 6.北部九州、樫原湿 原でのボーリングコア(KS 0 3 0 4)の堆積物 物性と放射性炭素年代.福岡大学理学集報、
3 6 (1) 、3 1 ‐ 4 1.
尾関信幸・奥野 充・小林哲夫、2 0 0 5.雲仙火 山、眉山の形成過程.火山、5 0、4 4 1 ‐ 4 5 4.
瀬戸間洋平・木村勝彦・奥野 充、2 0 0 4.北部 九州、脊振山地の雷山南斜面から出土したカ ヤの樹木年輪.福岡大学理学集報、3 4 (2) 、 5 9 ‐ 7 1.
Sugihara, K., Masunaga, N. & Kazuhiko, F., 2006.
Latitudinal changes in larger benthic foraminif- eral assemblages in shallow-water reef sediments along the Ryukyu Island, Japan. Island Arc, 15, 437-454.
田口幸洋、2 0 0 4.温泉からみた金鉱床―鹿児島 県北薩金銀鉱床区の例―.地質ニュース、 5 9 9 号、5 5 ‐ 5 8.
田口幸洋・木戸絵里香・塚本直子・
!山哲男、
2 0 0 5.流体包有物から明らかになった秋吉石 灰岩における古熱水活動.秋吉台科学博物館 報告、4 0号、3 5 ‐ 4 9.
筒井正明・奥野 充・小林哲夫、2 0 0 7.霧島・
御鉢火山の噴火史.火山、5 2、1‐ 2 1.
Ueno, K., 2006. The Permian antitropical fusuli- noidean genus Monodiexodina: Distribution, tax- onomy, paleobiogeography, and paleoecology.
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上野勝美・藤川将之、2 0 0 6.桐ヶ台の穴洞内の 秋吉石灰岩.桐ヶ台の穴学術調査団編、秋吉 台桐ヶ台の穴石灰洞学術報告書、2 3 ‐ 3 6.
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吉川美由紀・須藤靖明・増田秀晴・吉川 慎・
田口幸洋、2 0 0 5.地震波速度構造から推定し た大岳・八丁原地熱地域の深部地熱構造.日 本地熱学会誌、2 7. 2 7 5 ‐ 2 9 2.
柚原雅樹・鮎沢 潤・大平寛人・西奈保子・田 口幸洋・加々美寛雄、2 0 0 5. 福岡県福津市渡 半島に分布する白亜紀花崗岩類の放射年代か ら見た熱水活動の時期.岩石鉱物科学、3 4、
2 7 5 ‐ 2 8 7.
柚原雅樹・宇藤千恵・小路泰之・川 野 良 信、
2 0 0 6. 那珂川上流、五ヶ山地域の白亜紀花崗 岩類に発達する断裂系.福岡大学理学集報、
3 6 (1) 、5 5 ‐ 6 7.
柚原雅樹・他2 4名、2 0 0 4. 福岡県津屋崎、北崎 トーナル岩中に発達する断裂系(その2) . 福岡大学理学集報、3 4 (2) 、7 3 ‐ 8 8.
柚原雅樹・他2 0名、2 0 0 5. 福岡県志賀島南端部 の白亜紀深成岩中に発達する断裂系.福岡大 学理学集報、3 5 (2) 、6 7 ‐ 8 4.
柚原雅樹・他2 1名、2 0 0 6. 福岡市志賀島北西部 の志賀島花崗閃緑岩中に発達する断裂系.福 岡大学理学集報、3 6 (2) 、6 3 ‐ 8 1.
―2 4―
表1 化学物質過敏症と診断された患者
集合住宅 戸建て住宅
OK邸(31才、女性)
HI邸(38才、女性)
YW邸(48才、女性)
MR邸(25才、男性)
IS邸(39才、女性)
TK邸(5才、男性)
KT邸(51才、女性)
KW邸(61才、女性)
MY邸(55才、女性)
NG邸(4才、女性)
MZ邸(69才、女性)
YG邸(29才、女性)
表2 HCHO 濃度が高かった家具類 システムキッチン KT邸
食器棚 KT邸、MY邸、NG邸、
MZ邸、IS邸、TK邸
タンス KW邸、IS邸
押入 MZ邸、IS邸
クローゼット、靴箱 TK邸
床下収納 HI邸
研究チーム報告
【理工学研究部】
室内における化学物質による汚染の実態調査とその対策
室内の化学物質の調査と対策研究チーム(課題番号:0 4 5 0 0 9)
研究期間:平成1 6年4月1日〜平成1 9年3月3 1日
研究代表者:須貝 高 研究員:石田 卓、田中隆一、櫻井 誠【研究成果】
ホルムアルデヒド(HCHO) ・BTXなどの濃 度を独立行政法人国立病院機構F病院にて化学 物質過敏症と診断された患者の住宅(集合住宅 6件と戸建て住宅6件の合計1 2件)の実態調査
(平成1 6年5月〜平成1 8年6月)を行った(表 1) 。
その結果、室内の
HCHO濃度は一部の室内 と大半の家具類の内部を除くと低く、BTX 濃 度はいずれの場合も低かった。また、安心して 居住できる化学物質過敏症の患者のための建築 的な対策として、得られた結果を以下に列記す る。
1)経過年に伴い室内の
HCHO濃度は大幅 な減少はなく、BTX 濃度は大幅に減少した(M Y邸、HI邸) 。
2)密閉空間となる家具類から揮発する化学 物質の影響が大きく(表2) 、それらには濃度 の指針値がないので設定する必要があると思わ れた。つまり、密閉空間から室内に流入してく ることへの対策としては、
!使用している建材 に天然系塗料を塗ること(皮膜形成)による揮 発を阻止すること、
"使用している建材を化学
物質の揮発しない建材に変更すること、
#家具 類を含めた住宅内の換気の計画が必要であるこ と、が挙げられた。
3)2 4時間換気システムの可動による
HCHO濃度は低減した。しかし、2 4時間換気システム の換気扇に粉塵の堆積・付着により停止するこ とがあった(MY邸) 。つまり、その対策とし ては、
!メンテナンスし易い換気扇の構造にす ること、"定期的に換気扇のフィルターの清 掃・交換をすること、が必要であると思われた。
4)防虫剤からの揮発への対策としては、防 虫剤にナフタリンやパラジクロロベンゼンやピ レスロイド剤は使用せず、天然系の月桃あるい は樟脳を使用することが望ましかった(KT邸、
KW邸) 。
5)遠赤外線パネルヒーターやレンジフード からの電磁波による汚染への対策としては、低 い電磁波の器具(電磁波対策を行っている電気 カーペットやルームエアコン)に変更すること が必要であった(YW邸) 。
6)アンケート調査(健康度・汚染度チェッ ク、室 内 化 学 物 質 空 気 汚 染 調 査 研 究 委 員 会
―2 5―
表3 アレルギーの検査の結果
! " # $ % & ' ( ) * KT邸 ● ○ ○
OK邸 ● ○ ● KW邸 ○ ○ ○ ○ ○
MY邸 検査なし
HI邸 ● ● ○ ○ ●
YW邸 ● ○ ○ ○ ○
NG邸 ● ●
MZ邸 ○ ○ ○ ○ MR邸 ○ ○
IS邸 ○ ○ ○ ○ ○
TK邸 ● ● ○ ○ ○ ● ● YG邸 ● ● ○ ○ ○ ○
!スギ、"ヤケヒョウヒダニ、#ホルマリン、$ネ コヒセツ、%ハウスダスト、&イヌヒセツ、'卵白、
(カモガヤ、)ミルク・小麦・大豆・ブタクサ・ト マト・ヨモギ・ラテック ス・リ ン ゴ・米、*ヒ ノ キ・エビ・ゴマ
(IAPOC)が作成した問診票、化学物質過敏症 用問診票(QEESI) )により、全ての患者には 不定愁訴と呼ばれるような様々な症状があった。
その中でもMR邸は多岐に亘る症状があった。
7)総
IgEが成人の基準値以上を示した患者 が半分、存在した。総
IgEの高い順に、NG邸、
YG邸、HI邸、KT邸、OK邸、IS邸であっ た。
8)アレルギー(RAST 法)の陽性反応(●
印) 、陰性反応(○印)を示したのは、表3で あった。
9)今後の課 題 と し て は、
!HCHO濃 度 を 0. 0 2
ppm未満(臨床影響が著しい影響がない)
を可能とするために、低濃度であってもどこか ら発生しているかを把握する必要がある。さら に、化学物質過敏症の悪化を防ぐためにも、換 気と電磁波の関係、他の化学物質やダニ類やハ ウスダストなどからの影響を検討することが必 要であること、
"様々な環境因子(日射の強さ、
隙間からの換気など)の影響が考えられること、
#
化学物質過敏症の患者は室内だけでなく、患
者の行動範囲を把握し、室外との関連性を一層 深く考えて提案をすること、が挙げられた。
【研究業績】
1)石田 卓、須貝 高、田中隆一、櫻井 誠、関口博史:ホルムアルデヒド・BTX の揮 発による室内空気汚染 その6、福岡大学工学 集報、第7 3号、平成1 6年9月、pp. 7 9 ‐ 1 0 4
2)石田 卓、須貝 高、田中隆一、櫻井 誠、関口博史:ホルムアルデヒド・BTX の揮 発による室内空気汚染 その7、福岡大学工学 集報、第7 5号、平成1 7年9月、pp. 6 3 ‐ 9 5
3)石田 卓、須貝 高、新名裕一:ホルム アルデヒド・BTX の揮発による室内空気汚染 その6 経過年の違いと2 4時間換気システムの 検討、 日本建築学会大会学術講演梗概集 (近畿)
環境工学
+D‐ 2、平成1 7年9月、pp. 9 3 1 ‐ 9 3 2 4)石田 卓、須貝 高、田中隆一、櫻井 誠、関口博史:ホルムアルデヒド・BTX の揮 発による室内空気汚染 その8、福岡大学工学 集報、第7 7号、平成1 8年9月、pp. 5 1 ‐ 8 2
―2 6―
情報数理に関連する応用研究
情報数理研究チーム(課題番号:0 4 5 0 1 0)
研究期間:平成1 6年4月1日〜平成1 9年3月3 1日
研究代表者:福嶋幸生 研究員:柴田勝征、濱田龍義、森 和子【研究成果】
この研究チームは情報数理をキーワードに、
情報科学の応用分野である言語情報処理・機械 翻訳の開発実験および基礎的な理論の研究をす る柴田、基礎的な理論である数学を主として研 究している福嶋と、対話式幾何学ソフトウェア の新たなる応用を開発および研究している濱田 と
RDBMSで あ る
Accessを 用 い てSQLの 演 習への教育学習システムの実証および開発をして いる森の共同作業によって行われた。以下、各 自の研究成果をそれぞれ報告する。
柴田:担当する英和・和英機械翻訳の分野にお いては、平成1 6年度から開始した英和機械翻訳 における文脈依存性に関するデータ分析の研究 および福岡大学英語学科及び理学部応用数学科 の6 3人の学生・院生アルバイトによる辞書デー タ登録作業 を 継 続 し、2 0 0 6年4月1 4日 時 点 で 5 0, 2 8 1単語・熟語であった辞書データを2 0 0 7年 2月8日には1 0 1, 5 9 8単語・熟語にまで増やす ことができて、英字新聞記事、科学技術論文な どの英文を翻訳させると、ほとんど辞書未登録 語が現れなくなってきている( [3] ) 。また、特 に数学用語に強い英和・和英の大規模機械翻訳 辞書の構築と数学論文を正しく翻訳できるシス テムの構築に向けても、かなり前進した。和英 機械翻訳辞書への熟語登録の仕掛けについては、
言語処理学会全国大会で発表した( [4] ) 。
福嶋:ここ数年、正則写像や多重調和関数の正
則包への接続問題について研究してきた。この 結果を多重調和写像なるものを新たに定義し、
この多重調和写像について、正則包への接続問 題を調べている。n次元複素空間のある領域D からm次元複素空間への多重調和写像はDの正 則包に接続できることを示した。これを複素多 様体上への拡張を調べている。また、情報の言 語教育の一つとして、Java言語に注目し、話題 となっている数独(別名ナンバー・プレイス)
について、その解法プログラムを開発している。
濱田:対話式幾何学ソフトウェアの新たな応用 と可能性について検証を行った。対話式幾何学 ソフトウェアとは、コンパスや定規の代わりに、
コンピュータと対話をしながら図形を描くソフ トウェアである。図形の性質を保ったまま、変 形、回転、移動や2点の距離や角度なども計測 できる。これまで、対話式幾何学ソフトウェア は主に教育に利用されてきたが、微分、極限、
複素数など、数学的な概念の表現手段としても 活用できることに注目した。特に平面曲線の動 的な構成について再構築、整理を行った。また、
その研究成果 の 配 布 手 段 と し て、CD 起 動 型
Linux
の一種である
KNOPPIXに注目し、他の
数学ソフトウェアとの連携を試みている。
森:デ ー タ ベ ー ス 言 語
SQL(Structured Query Language)はリレーショナルデータベースマネージメントシステム(RDBMS)において、
データの操作や定義を行うための言語である。
研究チーム報告
【理工学研究部】
―2 7―
SQLの演習をMicrosoft
社製のスタンドアロー
ンな
RDBMSであるアクセスを用いて行う為の
学習システムを考えた。また、アクセス利用法 の学習及びデータベースを設計する場合に必要 な基本知識を習得する為の演習支援を行い、関 係データベースの重要な概念がアクセスでどの ように実現し、それを利用できるかを考察した。
【研究業績】
[1]K. Shibata: Dependence on Context in case of
English-Japanese Machine Translation I-4.Fukuoka University Science Reports, vol.36 No.2.
pp.83-86, 2006
[2]K. Shibata: Dependence on Context in case of
English-Japanese Machine Translation I-5.Fukuoka University Science Reports, vol.37 No.1.
pp.93-103, 2007
[3]柴田勝征:機械翻訳用大規模英和辞書開発 の取り組みと学生への語学指導−「貧者の銀 行」をモットーにして−、信学技報、TL 2 0 0 6
‐ 6 1,SP 2 0 0 6 ‐ 1 4 9,WIT 2 0 0 6 ‐ 9 3(2 0 0 7 ‐ 0 1),
pp.
2 5 ‐ 3 0
[4]柴田勝征: 「〜して〜する」の英訳文生成 パターンの分類−拡張された複合動詞句の活 用−、言語処理学会第1 3回全国大会、March
2007[5]Hamada, T., Suzaki, K., Iijima, K. and Shikoda,
A. KNOPPIX/Math:Portable and distributable collection of mathematical software and free documents, Mathematical Software--ICMS 2006, Lecture Notes in Computer Science, Springer, 4151, (2006), 285-290[6]濱田龍義:「対話式幾何学ソフトウェアの 可能性」研究集会数式処理と教育京都大学数 理解析研究所、November 2006
[7]山田直記、福嶋幸生、吉田 守、田中尚人:
「理工系のための実践的微分積分」 (学術図 書出版社)第1版2 0 0 5年、改訂第1版2 0 0 6年
―2 8―
神経の形成と機能獲得機構の解析
神経形成機構解析研究チーム(課題番号:0 4 6 0 0 3)
研究期間:平成1 6年4月1日〜平成1 9年3月3 1日
研究代表者:景浦 宏 研究員:下東美樹、岩崎雅行、古賀正明【研究成果】
動物の神経系は、胚の背腹軸決定後背側にお ける神経誘導作用によって形成される。背腹軸 決定や神経系形成機構に関わるいくつかの遺伝 子が昆虫と脊椎動物で共通に働いていることか ら、昆虫と脊椎動物とでこれらの形成機構の起 源が同一である可能性が浮上している。我々は、
両生類と昆虫を材料にして、神経形成機構につ いて以下の研究を行った。
1 両生類神経系形成域決定における初期過程 の解析
"
背側決定因子の解析
アフリカツメガエル胚の背腹軸決定機構を明 らかにするために、8細胞期背側表層に転写さ
れたポリ
A RNAが局在するとして単離された
遺伝子2 2 1
R’について解析した。その結果、22 1
R’はアフリカツメガエル原腸胚の前方神経外胚
葉から単離された遺伝子
XL4 4 6
h1 8
exと同一で あり、またヒトの推定的
NF κ B活性化タンパ ク 質 に 相 同 で あ る こ と が わ か っ た。2 2 1
R’の mRNAは、初期胚と原腸胚で発現量が多かっ た。8細胞期では
mRNA分子は背腹にほぼ均 一に分布するが、ポリ
A付加が背側で多く、翻 訳効率が背側でより高いことが推定された。
NF κ Bは、昆虫や魚で背決定に重要な役割を果た すことがすでに明らかにされている。2 2 1
R’が背側特異的なポリA 付加を通じて
NF κ Bを背 側で活性化することによって背決定に関わるこ とが示唆される。
#
遺伝子発現パターンからみた背側中胚葉誘
導機構の解析
オーガナイザーは、外胚葉に作用して神経板 を形成させる。オーガナイザーでは、原腸胚後 期に胚の前側で
gsc、後ろ側でXbra遺伝子が 発現する。この前後軸に沿った遺伝子発現パ ターンが細胞間相互作用で生じ得るのかどうか を、割球移植実験により調査した。予定オーガ ナイザー割球を予定表皮割球で置き換えた胚で、
予定表皮割球の子孫細胞の分布と、gsc と
Xbra遺伝子の発現域を調査した。予定表皮割球の子 孫細胞はオーガナイザー全域に見られ、正常胚 と全く同様に
gscを前側に
Xbraを後側に発現 し た。こ の こ と か ら、前 後 軸 に 沿 っ た
gscと
Xbra遺伝子発現パターンは細胞間相互作用で 生じることが明らかとなった。
2 昆虫中枢神経系の後期発生過程および生理 機能の解析
"
昆虫の脳の形態形成に及ぼす環境因子の影
響解析
フタホシコオロギでは、単独飼育されたもの は集団飼育されたものと比較して、大型で体色 が濃く、攻撃性が顕著に高くなることが金沢工 業大学の長尾らによって報告されている。我々 は、フタホシコオロギを使って、飼育密度によ る成長パターンと脳内構造の違いを調べた。底 面積5 4 2. 5
!の飼育ケージ内に、高密度飼育は 1 0 0匹、低密度飼育は1 0匹を入れて飼育した。
体長は、低密度飼育コオロギ成虫が、高密度飼 育の1. 1倍、体重は1. 2倍であり有意な差があっ た。脳内構造を比較したところ、どれも統計学 研究チーム報告
【生命科学研究部】
―2 9―
的な差はなかったが、前大脳ニューロピルの断 面積は低密度飼育コオロギの方が大きい傾向が みられた。しかし、中心体の断面積やキノコ体 傘部の大細胞領域、小細胞領域の体積は、逆に 低密度飼育の方が小さい傾向がみられた。そし て、キノコ体α葉は低密度飼育の方が、太くて 短い傾向がみられた。
"
行動リズムペースメーカーニューロンの発
達
フタホシコオロギは幼虫期には昼行性の、成 虫になってからは、夜行性の行動リズムを示し、
このリズムは体内時計によって駆動される概日 リズムであることがわかっている。行動リズム の出力ペースメーカーニューロンの発達と行動 リズムの転換との相関をみるため、ふ化直後か ら成虫に至るまで、体の大きさを計測しながら、
視葉に存在する行動リズムの出力ペースメー カーニューロン、Pigment Dispersing Hormone
Neuron(PDF Neuron)の発達過程を観察した。
飼育室において
LD条件下で飼育したフタホシ コオロギを使用した。1 8アミノ酸ペプチドから なる
PDFに対するウサギポリクローナル抗体 を使い、蛍光が結合した2次抗体で可視化した 後、共焦点レーザー顕微鏡により画像取得した。
PDF Medulla
細胞の数の変化、軸策が脳のどこ
で終末しているかに着目し、精査した。その結 果、次の知見を得た。
フタホシコオロギの体長は、ふ化時には約3
!
、6〜7回の脱皮を経て約6 0日後の成虫脱皮 時には2 5〜3 0
!になる。PDF Me 細胞はふ化時 には片方の視葉に9個あり、中脳に軸索を伸ば し前大脳で終末する。ふ化直後の脳では、中脳 の軸索には両側を結ぶ神経繊維が観察されな かったが、2齢以降の幼虫では両側を結ぶ神経 繊維が観察された。幼虫期の約半分の時期に、
PDF Me
細胞の数が1 0個に増加し、その数は終
齢幼虫まで変わらなかった。軸索終末の形態も、
2齢以降はほとんど変化なかった。成虫になる
と
PDF Me細胞の数が1 4個に増加した。同時に
幼虫時には観察されなかった後大脳領域に新し い軸索が観察された。すべての観察で解剖は同 じ時刻、すなわち、ZT 9 : 0 0に行った。幼虫の 観察では、免疫染色のシグナルが大変強いこと がわかったが、成虫では、それに反して、シグ ナル強度が大変弱かった。すなわち、PDF 神 経ペプチドの発現には日周性があり、その発現 の位相は幼虫と成虫では異なることが推測され た。後大脳は直接胸部神経節と神経連絡する領 域であるので、PDF ニューロンは、成虫では、
行動リズムのペースメーカーとしての機能のほ かに、別の機能が新しく加わることが推測され た。
【研究業績】
1.Honda T, Matsushima A, Sumida K, Chuman Y,
Sakaguchi K, Onoue H, Meinertzhagen IA, Shi- mohigashi Y, and Shimohigashi M (2006) Struc- tural isoforms of the circadian neuropeptide PDF expressed in the optic lobes of the cricket Gryllus bimaculatus: Immunocytochemical evidence from specific monoclonal antibodies J.Comp. Neurol vol 499:404-421.2.Matsushima A, Takano K, Yoshida T, Takeda Y,
Yokotani S, Shimohigashi Y, and Shimohigashi M (2007) Journal of Biochemistry in print.3.Koga M, Kudoh T, Hamada Y, Watanabe M and
Kageura H A new triple staining method for dou- ble in situ hybridization in combination with cell lineage tracing in whole-mount Xenopus embryos.Dev. Growth Differ. in print.
―3 0―
ガン細胞増殖能のリズムマーカーの同定と時間薬物療法の構築
ガンの時間薬物治療研究チーム(課題番号:0 5 6 0 0 1)
研究期間:平成1 7年4月1日〜平成1 9年3月3 1日
研究代表者:小柳 悟(平成17年10月31日まで)、吉田秀幸(平成17年11月1日から)
研究員:吉田 都、吉田秀幸、藏元佑嘉子(平成18年4月1日から)
【研究成果】
1.腫瘍移植マウスの血清中には少なくとも数 種類の増殖因子に日周リズムが認められ、こ れら因子が腫瘍増殖の日内変動に関与してい ることが明らかとなった。また、これら因子 の中には腫瘍による血管新生過程にも深く関 与するものも含まれていたことから、これら 日周リズムを示す増殖因子には、がん細胞に 対して直接的な増殖促進作用を示すもののみ ならず、周辺組織に対し腫瘍の増殖を助長す るような働きを担っている因子も含まれてい ることが明らかとなった。
2.上記増殖因子の中で、血小板由来増殖因子
(PDGF:platelet-derived growth factor)及び 血管内皮増殖因子(VEGF:vascular endothe-
lial growth factor)は、血清中のみならず腫瘍組織内においても2 4時間周期のリズミカルな 発現を示し、更に腫瘍組織内における
mRNAの発現にも明瞭な日周リズムが認められたこ とから、本増殖因子の発現リズムは転写レベ ルで制御されている可能性が示唆された。
3.様々な生体機能の日周リズムに伴い、細胞 の増殖能は一日の中の特定の時間帯に亢進す るが、がん細胞の増殖能は正常細胞とは異な る時刻にピークを示す。本研究の結果、がん 細胞の増殖リズムは、PDGF の働きによって 正常細胞とは異なる独自のリズムを刻みだす ことが明らかとなった。
4.腫瘍血管新生において中心的な役割を担う
VEGFの遺伝子発現には明瞭な日周リズムが
認められ、このリズムは生体リズムを司る時 計遺伝子の働きによって直接的に制御されて いることが明らかとなった。VEGF の発現リ ズムは
VEGF受容体のリン酸化の日内変動 と高い相関性を示したことから、本因子が腫 瘍血管新生のリズムマーカーとなる可能性が 示唆された。実 際、血 清 中 の
VEGF濃 度 の リズムを指標に血管新生阻害薬の抗腫瘍効果 に及ぼす投与タイミングについて検討を行っ たところ、VEGF 発現量が増大する時間帯に 血管新生阻害薬を投与することで、より高い 抗腫瘍効果が得られることが明らかになった。
【研究業績】
1.Effect of Haloperidol on mPer 1 Gene Expres-
sion in Mouse Suprachiasmatic Nuclei; J. Viyoch, N. Matsunaga, M. Yoshida, H. To, S. Higuchi, S.Ohdo; J. Biol. Chem., 280 (2005) 6309.
2.Chronopharmacological study of antidepres-
sants in forced swimming test of mice; K. Ushi- jima, H. Sakaguchi, Y. Sato, H. To, S. Koyanagi, S. Higuchi, S. Ohdo; J. Pharmacol. Exp. Ther., 315 (2005) 764.3.Glucocorticoid hormone regulates the circadian
coordination of micro-opioid receptor expression in mouse brainstem; M. Yoshida, S. Koyanagi, A.Matsuo, T. Fujioka, H. To, S. Higuchi, S. Ohdo; J.
Pharmacol. Exp. Ther., 315 (2005) 1119.
4.Antiproliferative Constituents from Umbellif-
erae Plants VII. Active Triterpenes and Ros-研究チーム報告
【生命科学研究部】
―3 1―
marinic Acid from Centella asiatica; M. Yoshida, M. Fuchigami, T. Nagao, H. Okabe, K. Matsu- naga, J. Takata, Y. Karube, R. Tsuchihashi, J. Kin- jyo, K. Mihashi, T. Fujioka; Bio. Pharm. Bull ., 28 (2005) 173.
5.Cell
cycle dependent pharmacology of methotrexate in HL-60;A. Yamauchi, T. Ichimiya, K. Inoue, Y. Taguchi, N. Matsunaga, S. Koyanagi, T. Fukagawa, H. Aramaki, S. Higuchi, S. Ohdo; J.Pharmacol. Sci., 99 (2005) 335.
6.Screening Method of Organic Aciduria by
Spectrofluorometric Measurement of Total Dicar- boxylic Acids in Human Urine Based on Intra- molecular Excimer-forming Fluorescence Deri- vatization; H. Yoshida, J. Sonoda, J. Araki, H. No- hta, J. Ishida, S. Hirose, M. Yamaguchi; Anal.Chim. Acta, 534 (2005) 177.
7.A Simple Liquid Chromatographic Method
Based on Intramolecular Excimer-forming Deri- vatization and Fluorescence Detection for the De- termination of Tyrosine and Tyramine in Urine; H.Yoshida, H. Nohta, Y. Harada, K. Todoroki, M.
Yamaguchi; J. Chromatogr. B , 821 (2005) 88.
8.HPLC Determination of Acetaminophen in Sa-
liva Based on Precolumn Fluorescence Derivati- zation with 12- ( 3,5-Dichloro-2,4,6-triazinyl ) benzo[d ]benzo[1’,2’-6,5]isoindolo-[1,2-b ][1,3]thiazolidine; H. Fujino, H. Yoshida, H. Nohta, M.
Yamaguchi; Ana.l Sci., 21 (2005) 1121.
9.Simultaneous Liquid Chromatographic Meas-
urement of Melatonin and Related Indoles through Post-column Electrochemical Demethyl- ation and Fluorescence Derivatization; K. To- doroki, K. Ishimaru, H. Yoshida, T. Yoshitake, H.Nohta, M. Yamaguchi; Anal. Sci., 22 (2006) 281.
1 0.On-line Photocatalytic Device for Highly Se-
lective Pre-column Fluorescence Derivatization of 5-Hydroxyindoles with Benzylamine; K. To-doroki, Y. Nakashima, H. Yoshida, H. Nohta, M.
Yamaguchi; Anal. Chim. Acta, 555 (2006) 14.
1 1.Selective Determination of Native Fluorescent
Bioamines through Precolumn Derivatization and Liquid Chromatography Using Intramolecular FRET Detection; M. Yoshitake, H. Nohta, H.Yoshida, T. Yoshitake, K. Todoroki, M. Yama- guchi; Anal. Chem., 78 (2006) 920.
1 2.Glucocorticoid Is Involved in Food-Entrainable
Rhythm of mu-Opioid Receptor Expression in Mouse Brainstem and Analgesic Effect of Mor- phine; M. Yoshida, H. Kiyofuji, S. Koyanagi, A.Matsuo, T. Fujioka, H. To, S. Higuchi, S. Ohdo; J.
Pharmacol. Sci., 101 (2006) 77.
1 3.Antiproliferative constituents from umbellif-
erae plants. IX. New triterpenoid glycosides from the fruits of Bupleurum rotundifolium; T. Fujioka, K. Yoshida, H. Shibao, T. Nagao, M. Yoshida, K.Matsunaga, J. Takata, Y. Karube, Y. Iwase, H.
Okabe, K. Mihashi; Chem. Pharm. Bull ., 54 (2006) 1694.
1 4.Glucocorticoid regulation of 24-hour oscilla-
tion in interferon receptor gene expression in mouse liver; S. Koyanagi, H. Suyama, Y. Kura- moto, N. Matsunaga, H. Takane, S. Soeda, H.Shimeno, S. Higuchi, S. Ohdo; Endocrinology, 147 (2006) 5034.
1 5.Circadian regulation of mouse topoisomerase I
gene expression by glucocorticoid hormones; Y.Kuramoto, K. Hata, S. Koyanagi, S. Ohdo, H.
Shimeno, S. Soeda; Biochem. Pharmacol ., 71 (2006) 1155.
1 6.Chronic treatment with prednisolone represses
the circadian oscillation of clock gene expression in mouse peripheral tissues; S. Koyanagi, S.Okazawa, Y. Kuramoto, K. Ushijima, H. Shimeno, S. Soeda, H. Okamura, S. Ohdo; Mol. Endocri- nol ., 20 (2006) 573.
―3 2―
【研究概要】
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)に代表 されるプリオン病は致死性の神経変性疾患であ り、中枢神経系に異常型プリオン蛋白(PrP
Sc) が蓄積し神経細胞死を引き起こすことにより発 症する。現在国内で社会問題化している汚染硬 膜移植による医原性プリオン病や牛海綿状脳症
(BSE)が原因とされる変異型
CJDの 予 防・
治療の確立は、緊急を要する重要課題である。
強力な抗プリオン作用を示す天然物由来化合物 としてペントサン硫酸(PPS)が注目されてい る。しかし、PPS は血液脳関門(BBB)を通過 しないため、脳への送達法開発が必要である。
また
PPSはグルコサミノグリカン類(GAG)
に分類されるが、GAG は様々な天然物に含ま れている。プリオン病治療薬の候補物質探索素 材として天然資源は非常に興味深い対象である。
本研究チームでは、PPS の臨床応用および抗プ リオン活性を有する天然物由来化合物の探索に 関する研究を行った。
【研究成果】
!
新規
in vitro BBBモデルの構築
薬物の脳移行性の簡便な
in vitro評価系とし て、脳血管内皮細胞の単層培養系が使用されて いる。最近、BBB の構成細胞(血管内皮細胞、
ペリサイト、アストロサイト)間のクロストー クが
BBB機能維持に重要であることが明らか となりつつある。そこでこれら3種の細胞を再 構築した新規
in vitro BBBモデルの開発を行っ
た。初代培養細胞共培養モデルを作製して、
BBB機能(密着結合能、トランスポーター発現)を 調べた。3種の構成細胞からなる共培養モデル は
BBB機能が亢進していた。この
BBBモデル は解剖学的にも生体に類似したものであり、薬 物脳移行性を簡便に評価する検定キットとして 有用である。
" PPS
濃度測定法の確立
PPS
は高分子多糖であり特異的な測定方法が ない。BBB 透過性の評価あるいは臨床試験で の生体内動態を評価するためには、PPS 測定法 の確立が必須となる。そこで細胞培養液中およ び生体試料中の
PPS濃度測定法に関する検討 を行った。細胞培養液中
PPS濃度は、市販の
Blyscan Glycosaminoglycan Assay Kit(Biocolor,
Ltd)を用いて測定可能であることが確認できた。生体試料中(髄液中および血漿中)PPS 濃 度に関しては、前処理として除蛋白操作を加え、
sGAG Alcian Blue Binding Assay Kit(Wieslab AB)を用いて検討を行った。各種神経疾患を
有する患者髄液試料に
PPSを添加し、本測定 法の利用可能性を評価した結果、いずれの試料 においても添加濃度と同等の測定値が得られた。
本測定法はヒトにおける生体試料中の
PPS動 態の評価に応用可能と考えられる。
# PPS
の低分子量化戦略
PPS
は高分子化合物かつ電荷をもつため理論 上
BBBを透過しない。動物実験においても脳 室内投与された
PPSには抗プリオン効果が認 められるが、末梢投与では効果がないことがわ
抗プリオン活性を有する天然物由来化合物の探索
抗プリオン活性天然物素材探索研究チーム(課題番号:0 5 6 0 0 3)
研究期間:平成1 7年4月1日〜平成1 9年3月3 1日
研究代表者:山内淳史 研究員:藤岡稔大、松永和久、高田芙友子
研究チーム報告
【生命科学研究部】
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か っ て い る。そ こ で ゲ ル 濾 過 ク ロ マ ト グ ラ フィー(GPC)を用いて
PPSの低分子量 分 画 を採取し、BBB 透過性および抗プリオン活性 の評価を行った。GPC によって分画・採取し た5種の低分子量
PPSは、in vitro BBB モデル での透過性が向上した。
!
海藻由来多糖成分の探索
海藻は
PPS類似の多糖成分を多く含むこと が知られている。そこで4種の海藻(カジメ、
ヒジキ、モズク、ホンダワラ)を8 0%エタノー ルで加熱抽出し得られた水溶性多糖成分につい て、抗プリオン活性を測定した。いずれの海藻 由来多糖成分も
PrPSc生成阻害作用を示した。
特にホンダワラ由来の多糖成分は、最も強い抗 プリオン活性を有することがわかった。また、
分子間相互作用測定装置(AFFINIX Q)を用い て、プリオン蛋白質との結合活性を測定した。
ホンダワラ由来多糖成分には、正常型プリオン 蛋白質との強固な結合活性が認められた。
以上の結果は、プリオン病患者に対する
PPS臨床試験実施の際に有益な技術を提供するもの である。また、低分子量化
PPSあるいは海藻 由来多糖成分の抗プリオン病治療候補薬として の可能性を示唆する基礎情報を提示するもので ある。
【研究業績】
1.Hayashi K, Pu H, Andras IE, Eum SY,
Yamauchi A, Hennig B, Toborek M. HIV-TAT protein upregulates expression of multidrug re- sistance protein 1 in the blood-brain barrier. J Cereb Blood Flow Metab. 26 (8) : 1052-65 (2006)2.Yamauchi A, Shuto H, Dohgu S, Nakano Y,
Egawa T, Kataoka Y. Cyclosporin A aggravates electroshock-induced convulsions in mice with a transient middle cerebral artery occlusion.Cell Mol Neurobiol. 25 (5) : 923-8 (2005)