研究チーム報告
【社会科学研究部】
規範と制度の変動に関する研究
社会規範と制度の比較研究チーム(課題番号:0 5 4 0 0 3)
研究期間:平成1 7年4月1日〜平成2 0年3月3 1日
研究代表者:小林淳一 研究員:岩隈 敏、水島茂樹、長谷川正国、平田 暢、鴨川武文
社会規範と制度の構造と機能については、哲学や 倫理学はもちろん、法学・社会学・経済学などの社 会諸科学において広く議論されてきた問題である。
本研究は、規範とはなにか、制度とはなにかを基本 的な問いとして設定し、規範と制度の成立と変動の メカニズムを明らかにすることを目的とした。研究 成果と研究業績は以下のとおりである。
【研究成果】
小林淳一(統括および進化ゲーム理論の研究)
社会制度が成立するメカニズムを、進化ゲーム理 論の観点から明らかにしようとした。具体的には社 会制度を、1.協調ゲームから成立する社会制度、
2.囚人のジレンマ・ゲームから成立する社会制度、
3.シカ狩りゲームから成立する社会制度、という 3つの類型に分け、とくに1の型の社会制度に注目 した。
恋人たちの語らい(battle of sexes)に代表される 協調ゲームが、ある種の制度が成立する母体となり うることは、従来からも指摘されてきた。しかしそ れが、どのようなメカニズムにもとづいて可能とな るのかについては、明確な提言はされてこなかった。
この点に関し小林は、協調ゲーム型の進化ゲームに おいては、 「相関戦略」こそが ESS になりうること に注目し、そのモデルづくりに努めた(未完) 。
岩隈 敏(哲学的・倫理学的観点からの規範研究)
カントによれば、道徳の普遍的形式的法則は、 「君 の意志の格率がつねに同時に普遍的立法の原理とし て妥当しうるように行為せよ」である。しかし、こ の法則から、自殺の禁止、約束の履行、自己の完成、
慈善等の義務を導出する『基礎づけ』 『実践理性批 判』の議論には無理があることから、カントの倫理 学は内容なき形式主義だと批判されてきた。
これに対し岩隈は、カントのつぎのような論理構 成に注目した。つまり理性的存在者一般に妥当する 普遍的形式的法則は、理
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!という経験的概念を介して、先ず「法の形而上学 的原理」へと種別化される。次に普遍的形式的法則 は、格率の質料(目的)に関わる「徳の形而上学的 原理」へと種別化される。そして、反省的判断力の 美感的形式的合目的性の原理が、道徳の普遍的形式 的原理と結びついて、それに対する道徳の普遍的質 料的原理となることによって、上記の二つの形而上 学的原理から、諸々の規範(法則)が導出され、ま た体系化されるのである。
長谷川正国(現代国際法の論理的前提としての自然
法論)
現代国際法の論理的前提としての自然法論という 観点から、現代の国際法学者の中で珍しく自然法論 的立場を堅持した元オックスフォード大学教授 D.
P.O’Connell の国際法理論を研究した。オコーネル
がトマス・アクィナスを出発点とする中世神学の伝 統を受け継ぎながら、特にスアレスの法理論を.現 代国際法を基礎づける中核的な理論として再構成し たことを論証した。この理論に対する現代実証主義 学派からの批判の検討は、今後の課題である。
水島茂樹(慣習と制度の原理的研究)
作業の中心は、社会科学の常識的認識、すなわち 慣習や制度は不確実な状況のもとで行動する諸個人 にとって−動物にとっての本能に取って代わって−
拠りどころとなるものにほかならないという認識か ら出発して、資本主義における諸個人の行動と慣 習・制度の動態とのかかわりについて、流行や市場 心理のダイナミクスにかんするヴェブレンとケイン ズの古典的業績の再検討を通じて考えることであっ
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た。結論としてたどり着いたのは、慣習や制度の独 特の性質をとらえるためには、 「ノモスとピュシス」 、 それに「意図せざる結果」という、社会認識におけ る古典的概念を根本的に再検討する必要があるとい う認識である。
平田 暢(現代社会における信頼感と信頼性)
本課題に関しては、並行して福岡市との共同調査 を平成1 5年度から1 8年度にわたって行っている。調 査における信頼性の対象は、従って個人ではなく地 域行政ということになるが、その限りにおいて、信 頼感が高いほど信頼性も高まるという関係を見いだ すことができた。信頼性と信頼感の相関は、地域に おける社会関係量が極めて小さい場合、特に強い。
無論、各施策の向上は、信頼される側(客体)の特 性として信頼性を高める。他方、信頼感は地域にお ける社会関係やコミュニティ・モラール等、地域の コミュニティ性とも結びつきが強い。コミュニティ 性と信頼感の関係は、必ずしも前者が原因というわ けではなく、 循環的な関係を想定すべきだが、 コミュ ニティ性の向上が信頼感を高め、 (地域行政に対す る)信頼性も高めうることも明らかになった。
鴨川武文(地場産業における伝統と革新)
地場産業にあっては、景気動向、労働力不足や後 継者難など多くの問題点があるが、これらを含めて 地場産業の将来に関わる本質的な問題点として、!
人口減少に伴う需要の減退 " 海外から輸入されて いる安価な類似品の流通 # 市場および社会の成熟 などを指摘できる。
このような状況から現在および将来を見すえた
「モノづくり」にとっての基本的な問いは、 「消費 者に支持される商品・モノづくり」とは何かという ことである。 「モノづくり」の長い歴史があり、こ れを背景として成熟社会に向けた新しい価値の提供 が 求 め ら れ、始 ま っ て い る 長 崎 県 の 窯 業 地 域 を フィールドにして、この問題にとりくんだ。革新は 伝統に対抗するものではなく、革新が結果として伝 統を守っていくものであると考えている。
【研究業績】
岩隈 敏 2 0 0 6〈私〉の現存在の分析論としての演
繹論( 『カント全集別巻 カント哲学案内』岩波 書店)
岩隈 敏 2 0 0 6 実践的判断力について−カントに おける善と美$―『福岡大学人文論叢』第3 8巻第 3号
長谷川正国・大久保昭 2 0 0 8(印刷中) 「ダン・オ コーネルにおける国際法の基礎理論」
長谷川正国 訳 2 0 0 8 シャルル・ド・ヴィシエー ル著『国際法における理論と現実』成文堂 平田 暢 2 0 0 6『平成1 7年度福岡市政に関する信頼
度調査』福岡市市長室広聴課
平田 暢 2 0 0 7『平成1 8年度福岡市政に関する信頼 度調査』福岡市市長室広聴課
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研究チーム報告
【社会科学研究部】
新会計基準の総合的研究
会計教育研究チーム(課題番号:0 5 4 0 0 9)
研究期間:平成1 7年4月1日〜平成2 0年3月3 1日
研究代表者:中村信博 研究員:池田健一、井上教之、太田正博、古賀 勉、長束 航、中村信博、山内 進、渡辺 剛
【チームとしての研究成果】
近年、会計に対する関心は著しく高まっているが、
そのきっかけは2 0 0 0年3月決算情報から実施されて いる会計ビッグバンであることに着目し、 「新会計 基準の教育」を中心とした研究を行った。研究の進 展とともに、最新ルールを単独で教育するのではな く、伝統的ルールの根底にある基本概念を理解させ、
新旧のルールを相互に関連づけて理解させることが 重要であるとの結論を得た。会計教育に関する本研
究チームの研究成果を反映さた公開講座(エクステ ンションセンター市民カレッッジ、全1 0回、毎週土 曜日、1 3:0 0〜1 6:0 0)を、研究会構成メンバー全 員で企画・実施した。なお、平成1 7年から中村およ び長束によりプレスタートさせ、受講者の理解状況 を把握しながら構成員全員で企画を練り上げた。完 成版会計学応用講座(平成1 9年度実施)の内容は下 記の通りである。
[開催日] [テーマ] [担当者]
! .9月2 9日 + 「会計ビッグバン総論 −今なぜ会計が変わるのか?−」 中村信博
".1 0月6日+ 「金融商品会計およびキャッシュ・フロー会計」 〃
# .1 0月1 3日 + 「連結会計」 池田健一
$.1 0月2 0日+ 「国際会計および M&A の会計」 〃
% .1 0月2 7日 + 「知的財産会計(ブランドを中心として) 」 渡辺 剛
& .1 1月1 0日 + 「退職給付会計」 太田正博
' .1 1月1 7日 + 「監査報告書の読み方」 長束 航 ( .1 1月2 4日 + 「経営分析の着眼点」 井上教之
).1 2月1日+ 「税効果会計」 山内 進
* .1 2月8日 + 「経営のための新経理」 古賀 勉 なお、上記講座は応用編としての性格を有するた
め、それに先立ち、会計学基礎講座を企画(全9回、
毎週木曜日、1 8:3 0〜2 0:3 0、於:天神ガーデンパ レス)し、中村および渡辺が担当、実施した。
【個別研究成果および研究業績】
池田健一
「企業結合および無形資産の会計」という研究課 題について研究を行った。わが国には、まだ包括的 な無形資産の会計基準がないため、諸外国の会計基 準の動向も考慮しながら、今後、無形資産の会計基 準を整備していく必要があると考えられる。そこで 2 0 0 5年から欧州で国際財務報告基準(IFRS)が連
結会計上で強制適用になったこととの関連で、 IFRS における無形資産の会計基準の研究を行った。さら に、欧米の会計基準とわが国の会計基準の1つの大 きな相違点であるとされているのれんの会計処理に ついて考察を行った。
「IFRS の無形資産会計基準とその課題」 『福岡大学 商学論叢』 第5 1巻第2・3号、2 0 0 6. 1 2、pp. 2 1 1 ‐ 2 3 1
「研究開発費の会計処理に関する一考察」 『福岡大学 商学論叢』 、第5 1巻第4号、2 0 0 7. 3、pp. 4 9 3 ‐ 5 1 0
「のれんの会計処理に関する一考察」 『福岡大学商学 論叢』 、第5 2巻第1号、2 0 0 7. 6、pp 7 9 ‐ 9 7
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井上教之
会計教育という場合、企業内部においていかに会 計が利用されるのかを教育することは重要である。
通常は会計教育においては財務会計と経営分析の関 係が議論されるが、さらに発展させて、経営分析の 管理会計に対する役立ちをいかに教育すればよいか について研究した。すなわち、管理会計における経 営分析の活用シミュレーションである。その研究成 果は、下記において発表した。
西村・大下編著『ベーシック管理会計』中央経済社、
2 0 0 7年、井上教之稿、第1 3章「経営分析」pp. 1 8 7 ‐ 2 0 8
太田正博
次の二つのテーマで調査研究を行った。 ! 会計専 門職大学院のカリキュラムのあり方。資料収集およ び関係者への聴き取り調査により、特に会計実践能 力開発プログラムの重要性を認識した。"企業にお ける CSR 関連教育実践の研究。我が国企業の CSR の実態把握および EU およびスイスの金融機関にお ける社会責任報告の実体、推進のための組織および 企業内における教育プログラムのあり方について認 識を深めた。
「税効果会計基準の合理的対応阻害要因とその除 去」 『福岡大学商学論叢』 、第5 1巻第4号、2 0 0 7. 3、
pp. 3 3 3 ‐ 3 4 9
古賀 勉
管理会計教育の調査研究:大分大学経済学部:伝 統的な原価計算論・管理会計論の設置のみであり、
進展する企業実践に対応する新カリキュラムは見ら れなかった。立命館アジア太平洋大学(APU):教 育プログラムは目新しいが、講義内容は従来のもの であった。別府大学:2 0年度申請の国際経営学部の 新設で APU 以上の斬新性が期待されている。
長束 航
財務報告の変革に関する研究に取り組んだ。とり わけアメリカにおいて進展し、わが国においても現 実味を帯びてきている「改善型ビジネス・リポー ティング(EBR) 」プロジェクトに関する研究を集 中的に行った。本プロジェクトにおいては、会計情
報の理解可能性の向上およびウェブ経由での会計情 報伝達の促進が中心的テーマとなっており、会計教 育上もきわめて大きなインパクトを有するものと考 えられる。
『連結会計入門(第4版) 』共著 2 0 0 6年9月、中 央経済社、総頁数3 5 7頁中4 0頁担当
「第1部 # 企業結合会計の意義と連結財務諸表」
(3 9 ‐ 4 6頁) 「第2部 $ 企業結合会計基準と連結財 務諸表作成のプロセス」 (pp. 1 9 4 ‐ 2 2 5)担当
『偶発事象会計の展開』共著、2 0 0 7年4月、創成社、
総頁数2 1 2頁中1 8頁担当
「第1 6章 資 産 撤 去 義 務 の 会 計 処 理」 (pp. 1 5 7 ‐ 1 7 4)担当
「負債概念における「債務性」に関する一考察」単 著、2 0 0 6年9月、 『会計プログレス(日本会計研究 学会) 』 、第7号、総頁数1 4頁(pp. 1 8 ‐ 3 1)
「負債概念の再検討――収益認識基準の再検討に関 連して――」単著2 0 0 7年3月『福岡大学商学論叢』 、 第5 1巻第4号、総頁数1 7頁(pp. 5 6 7 ‐ 5 8 3)
中村信博
会計ビッグバン全体の教育に関する研究を行い、
教育内容として新会計基準単独と捉えるのではなく、
日本版ビッグバンを契機とする、企業の株式所有構 造、投資家、資金調達方法、金融行政、規制理念、
株式会社法制、企業統治制度などの変化を包含する ことが重要であると考え、制度変更に伴う修正を盛 り込んだ著書改訂を行った。
山下正喜編著『新版財務会計論(第2版) 』創成社、
2 0 0 8. 4. 担当部分、第7章 「純資産」 (pp. 9 3 ‐ 1 1 4) 、 第1 2章企業会計原則一般原則(pp. 2 0 5 ‐ 2 2 3) 、第1 4 章環境会計(pp. 2 4 9 ‐ 2 6 6)
山内 進
海外の影響を受け、また国内では会社法等の影響 を受け多様に改正が行われている税務会計や税法に 関する会計教育の研究を、日本の災害税務とアメリ カの災害税務との比較や、ゴーイング・コンサーン の注記開示及び監査制度に関する国際比較の視点か ら検討し、現在の GC 制度の限界、問題点を整理し た。
「ゴーイング・コンサーンの注記開示・監査制度に
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関する一考察」 『福岡大学商学論叢』 、第5 1巻第4号、
2 0 0 7. 3、pp. 4 6 5 ‐ 4 9 1
「災害税務に関する日米比較」 『福岡大学商学論叢』 、 第5 2巻第3・4号、2 0 0 8. 3、pp. 4 4 9 ‐ 4 8 7
渡辺 剛
XBRL(eXtensible Business Reporting Language)
による財務報告制度に関する研究を行った。それは、
各種財務報告用の情報を作成・流通・利用できるよ うに標準化された XML ベースの言語で行うもので ある。XBRL 自体は単なる財務諸表作成のための手 段にすぎないが、その利用により、財務諸表の利用 可能性および利便性が大きく高まるものと期待され ており、今後の会計教育においても利用が予想され る。
渡辺 剛、長束 航他訳「無形資産の評価」中央経 済社、2 0 0 8年。
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研究チーム報告
【社会科学研究部】
現代社会における諸問題に対する法理論的研究
現代社会と法理論に関する研究チーム(課題番号:0 5 4 0 1 2)
研究期間:平成1 7年4月1日〜平成2 0年3月3 1日
研究代表者:武居一正 研究員:岩倉正博、立木謙介、生田敏康、森永淑子、玉蟲由樹、北坂尚洋、梶山(小谷)真理、
石川友佳子
【研究概要】
現代社会のあらゆる分野では、国際化・IT 化・
サービス化が急速に進むのと同時に、1つの分野で は完結しない複数の分野にわたる問題に直面してい る。
例えば、商取引の分野では、国際取引が日常化し、
インターネット取引や証券のペーパーレス化などが 進む一方で、環境保護が重視されるに伴い、環境へ の配慮という視点から商取引について考えることも 重要となっている。
また家族関係においても、生殖医療技術の急速な 進歩を例に取れば、代理母による子の懐胎などの問 題が生じている。この問題は、もとより民法分野で の重要な課題の一つあり、憲法学では人間の尊厳や 学問の自由に関わり、刑事法では先端医療技術に対 する刑事規制の問題としてアプローチされ、それら はまた行政による規制対象として捉えられるもので あって、国際的な動向を把握することを必要とする。
さらには、 これら法律学的な問題と哲学的 (倫理的)
な問題とが交錯するところでもある。したがって、
現代社会の諸問題を検討するに当たっては、様々な 観点からの検討がますます重要になっていると言え よう。
本研究チームはこのような問題意識から、 憲法 (武 居[代表] ・玉蟲) 、行政法(小谷) 、刑事法(石川) 、 民法(生田・森永)商法(立木) 、国際私法(北坂) 、 法哲学(岩倉)といった多様な法領域を専門とする 研究者が集まり、各研究分野の個別研究に加えて、
他の専門分野の視点を交えた総合研究を進めること を目的として発足したものである。公法と私法の関 係を意識し、さらに法哲学的な観点からの研究を行 うと共に、本研チームのメンバーの多くが有する海 外研修経験を踏まえた比較法的な観点からの考察を 行い、平成1 7年4月1日〜平成2 0年3月3 1日までの
研究期間に次の「研究業績」に挙げる成果を得るこ とができた。
本研究チームが設置された3年前に比べると、現 代社会はさらに急速なグローバル化の進展をみせて おり、国際的な流動性が高まっている。科学技術の 飛躍的な進歩と社会の高度化、複雑化は、過去に蓄 積された知見や技術のみでは対応が困難な新たな諸 課題を生じさせている。法はもはや固定的・終局的 なものではなく、可変的・暫定的なものとなった。
この意味から、次期の研究チームにおいては、本研 究チーム同様に多様な観点からのアプローチにより、
現代社会における動態的なプロセスに注目した総合 的な研究を進めていくつもりである。
【研究業績】
武居一正「BHV 選挙区分割の憲法的問題点−ベル ギーにおける言語的少数者保護の一側面」政策科学
(立命館大学政策科学会)1 3巻3号3 3 ‐ 1 1 7頁(2 0 0 6 年) 、 『法学部新入生のための法学ナビ』 (法律文化 社・2 0 0 6年) 、 『ガイドブック憲法』4 2 ‐ 6 1頁、1 0 5 ‐ 1 2 3頁、2 4 9 ‐ 2 7 0頁(嵯峨野書院・2 0 0 7年) [共編]
岩倉正博『近代政治哲学入門』 法政大学出版会 (2 0 0 2 年) [共訳]
立木謙介「インコタームズの変遷とインコタームズ 2 0 0 0について ! 」福岡大学法学論叢5 0巻1号8 3 ‐ 1 1 3
頁(2 0 0 5年)
生田敏康「注文者の協力義務−コンピュータソフト 開発契約をめぐる最近の判例を中心に−」福岡大学 法学論叢5 2巻4号3 7 9 ‐ 4 0 5頁(2 0 0 8年) 、 「電算シス テム開発契約における注文者の協力義務と請負人の プロジェクトマネージメント義務−東京地判平成1 6 年3月1 0日判例タイムズ1 2 1 1号1 2 9頁−」福岡大学 法学論叢5 2巻4号4 7 1 ‐ 4 9 0頁(2 0 0 8年)
玉蟲由樹「人間の尊厳保障の絶対性?」福岡大学法
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学論叢5 0巻4号6 0 1 ‐ 6 5 2頁(2 0 0 6年) 、 「開かれた人 権解釈と個人の尊重」福岡大学法学論叢5 1巻3・4 号2 1 1 ‐ 2 6 1頁(2 0 0 7年) 、 「刑 事 手 続 に お け る DNA 鑑定の利用と人権論!・"」福岡大学法学論叢5 2巻 2・3号3 2 7 ‐ 3 5 8頁、5 2巻4号4 4 3 ‐ 4 6 9頁(2 0 0 7年−
2 0 0 8年)
北坂尚洋「離婚事件の国際裁判管轄権の決定におけ る管轄原因としての国籍」福岡大学法学論叢5 0巻3 号2 9 3 ‐ 3 2 7頁(2 0 0 5年) 、 「第1 3章 親族関係の諸問 題」 、 「第1 4章 相続・遺言」 、 「第1 8章 国際家事事 件」 、 『国際関係私法入門』2 2 9 ‐ 2 4 5頁、2 4 6 ‐ 2 5 7頁、
3 2 4 ‐ 3 4 2頁(有斐閣・2 0 0 7年) 、 「オーストラリア法 における国際離婚事件の管轄権」福岡大学法学論叢 5 2巻4号4 0 7 ‐ 4 4 2頁(2 0 0 8年)
小谷真理「条例による土壌汚染対策」 『ま ち づ く り・環境行政の法的課題』 3 3 5 ‐ 3 5 1頁(日本評論社・
2 0 0 7年) 、 「Legal Research〜法 律 情 報 検 索 入 門」
『ケースブックアメリカ法概説』2 3 9 ‐ 2 6 2頁(雄松 堂出版・2 0 0 7年) 、 「Norton v. Utah Wilderness Alliance, 542 U.S. 55 (2004)」アメリカ法2 0 0 6 ‐2、3 7 1 ‐ 3 7 6頁
(2 0 0 7年) 、 「駅前広場駐車施設使用不許可決定取消 請求事件(富士見市) 」判例地方自治9 1 ‐ 9 5頁(2 0 0 8 年)
石川友佳子「着床前診断に関する一 考 察」 『セ ク シュアリティと法』1 4 1頁〜1 9 3頁(東北大学出版 会・2 0 0 6年) 、 「生殖医療技術をめぐる刑事規制 (一) 、
(二・完) 」法学(東北大学法学会)第7 0巻6号1 8 ‐ 7 5頁、第7 1巻1号1 2 8 ‐ 1 9 0頁(2 0 0 7年)
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研究チーム報告
【社会科学研究部】
情報技術革新下のグローバルな生産・流通システムの構築
情報技術革新と現代企業研究チーム(課題番号:0 7 4 0 0 6)
研究期間:平成1 9年4月1日〜平成2 0年3月3 1日(1年間)
研究代表者:木幡伸二 研究員:石上悦朗、村上剛人
【研究成果】
今回の研究は、インターネットなどの情報通信技 術の発展とそのビジネス分野での活用が加速する中 で、グローバルな調達 (アウトソーシング) 、グロー バルな価値連鎖(バリュー・チェーン)及びグロー バルな SCM (サプライ・チェーン・マネジメント)
の進展状況を分析するとともに、その中で、どのよ うな課題が見いだせるのか、考察することを目的と して開始された。
各研究分担者の研究分担は以下の通りであった。
石上は、インドの代表的ソフトウェア企業の発展に ついて実証的研究を行なう。また、近年活発になっ ているアメリカの IT・ソフトウェア活用産業のイ ンド進出も取り上げ、バンガロールを事例にいかな るクラスター発展が進展したかを検討する。更に、
インド企業の日本進出と日本での適応についても触 れる予定である。村上の担当では、インターネット を利用したマーケティング活動を行う際の戦略の方 向性を確認しながら、インターネットを介しての日 本企業のグローバルに効率よい SCM の仕組みを構 築するための現状ならびに問題点を抽出し、今後ア ジア地域などの企業との連携を深めていくために求 められる仕組みはなにか、企業連携の有り様につい て考察を進める。木幡は、世界の主要メーカーが拠 点を置く中国自動車産業の最新動向を検討する。ま た、世界の主要メーカーは自動車部品のグローバ ル・アウトソーシングを本格化させているが、そこ での中国企業の位置づけに関する分析も行う。
初年度においては、前回領域別研究で行った点を 踏まえながら、ソフトウェア、流通、製造の分野に おけるグローバルな研究開発・調達・アウトソーシ ング、企業連携など、各研究分担者の分野における 先行研究の整理を行うと同時に、本研究の共通な分 析フレームを構築できるように、共通認識の醸成に
努めた。また、それぞれの担当分野での文献資料の 収集およびその整理を行った。必要に応じて、関連 する分野での企業や研究者などのヒアリングなどを 実施し、仮説抽出に努力した。
このチームは、全メンバーが平成2 0年度に開始さ れた総合科学研究 ! 「九州におけるコーポレート・
チェーンの延長・拡大に関する動態的研究」チーム
(代表:川上義明商学部教授)に参加することと なったため、規定により解散した。同チームでは、
企業と顧客(企業)との関係、企業と消費者(市場)
の関係及びそれらの総体を「コーポレート・チェー ン」という新しい視点から捉えなおし、九州企業の 成長・発展を九州域内、アジアへの延長・拡大とい う観点から検討する。 石上は 「コーポレート・チェー ン」の南アジアへの延長・拡大に関する研究を、村 上はその国内外における結節点に関する研究を、木 幡は、その対外延長・拡大(特に、中国)に関する 研究をそれぞれ分担する。
このように、現代企業研究チームの研究成果は、
総合科学研究チームに引き継がれることになる。
【研究業績】
Ishigami, Etsuro, “Government Policy and Small Indus- try in India”, in Odaka, Konosuke and Yukihiko Ki- yokawa eds., Small and Midium Scale Industries in In- dia and the Model of Japan, Chapter 4, Allied Publish- ers, New Delhli, 2008, pp.82-107.
石上悦朗「インド経済の高成長と産業発展の特徴―
グローバル経済と新興知識経済の統合的発展」 、
『アジア経営研究』No. 1 3、2 0 0 7年6月、5 1 ‐ 6 4頁。
村上剛人「One-to-One マーケティングから共創型 マーケティングへ―インターネットがマーケティ ングの前提条件を変える―」 、 『福岡大学商学論 叢』第5 2巻第3・4号、2 0 0 8年3月。
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研究チーム報告
【理工学研究部】
光を使った物質の構造物性に関する研究
光物質科学研究チーム(課題番号:0 5 5 0 0 4)
研究期間:平成1 7年4月1日〜平成2 0年3月3 1日
研究代表者:永田潔文 研究員:匠 正治、西村秀樹、脇田久伸、栗崎 敏、香野 淳、田尻恭之
【研究成果】
物性研究でよく使われる光(電磁波)の波長は、
マイクロ波領域からX線領域まで広範囲に及び、使 用する光の波長に応じて物質のそれぞれ異なった構 造領域と性質を観ることができる。ここではX線領 域から遠赤外領域での分光学的研究を種々の物質に 対して行い、物質の構造と電子状態や物性との関係 を明らかにした。
[1]高圧下のセレンの構造と光物性
半導体セレンは、約3GPa でセレンタイプの半導 体からテルルタイプの半導体へと相転移することが X線測定より示唆されてきた。それを確かめるため、
高圧下でのセレンの光吸収測定を行った。その結果、
3GPa で吸収端の圧力依存性に明らかな変化が観測 された。
[2]テトラアザ化合物の電子状態解析
今回我々はポルフィリンやナフタロシアニンなど の各種テトラアザ化合物を用いて、軸配位子、中心 金属、配位原子である N に注目して、XPS(X-ray Absorption Spectroscopy)と XANES (X-ray Absorption Near Edge Structure)法を用いそれぞれの原子の電 子状態解析を行った。
ポルフィリン化合物の N 1 s XPS スペクトルは、
それぞれ二つの山を持つ形状を示した。それらは高 結合エネルギー(BE)側から、配位に関与し Hと 結合した N(NH) 、配位に関与する N(Ncor)にそれ ぞれ帰属される。またフタロシアニンおよびナフタ ロシアニンについては三つの山を持つ形状を示した。
)にそれ ぞれ帰属される。またフタロシアニンおよびナフタ ロシアニンについては三つの山を持つ形状を示した。
それらは高 BE 側から、配位に関与し H と結合した NH、配位に関与しない N (N
out) 、配位に関与する Ncor
にそれぞれ帰属される。ポルフィンとジフェニルポ ルフィンのスペクトルの比較から、芳香環が増える ことで NH、N
corのピークが高エネルギー側にシフト することがわかった。これは、芳香環が増えたこと
で N原子周りの電子密度が低下したためと考えられ
る。一方、ジフェニルポルフィンとテロラフェニル ポルフィンのスペクトルを比較すると、ピークのシ フトはほとんど観測されなかった。これは中心のポ ルフィン骨格に対して、芳香環が傾いて付いている ため、π軌道の相互作用が小さいためと考えられる。
次にテトラフェニルポルフィンとテトラベンゾポル フィンのスペクトルを比較すると、テトラベンゾポ ルフィンの NH、N
corのピークは高エネルギー側にシ フトした。これはテトラベンゾポルフィンの芳香環 が、中心のポルフィン骨格に直接付いているため N 原子との相互作用が容易になるためと考えられる。
これらの結果から、芳香環の位置はN 原子の電子状 態に重要な影響を与えることが示された。テトラベ ンゾポルフィンとフタロシアニンについて比較する と、N
H、N
corの両方のピークはフタロシアニンの方 がテトラベンゾポルフィンより高 BE 側にシフトし た。これはフタロシアニンの Noutの共役系へ電子が 流れ込むことにより、フタロシアニンの各ピークが、
高エネルギー側にシフトしたと考えられる。フタロ シアニンとナフタロシアニンを比較すると、N
Hと Noutのピークはナフタロシアニンの方が高 BE 側に シフトした。この原因は、芳香環に電子が流れ込み、
N 原子周りの電子密度が低くなったために高 BE 側 にピークシフトしたと考えられる。よって芳香環の 数が増えるほど、 N原子周りの電子密度が低くなる ことが示された。中心金属が Al 原子であるフタロ シアニン錯体に対してそれ ぞ れ Al 2 p、N 1 s、Cl 2 p の XPS スペクトル測定を行ったところ、Al 2 p と Cl 2 p のスペクトルは、芳香環が増えるにしたがって、
ピークは高 BE 側にシフトした。しかし、N 1 s につ いてはどの錯体のピークも、同じ位置であった。こ のことから、中心に Al 原子が配位すると、 N 原子 は中心金属へ電子的影響を伝えるトンネルのような
―24―
役割をしていることが明らかとなった。また、Al K
XANES スペクトルにおいても、XPS スペクトルの
結果を反映する結果が得られた。以上の結果から、
XPS スペクトルと XANES スペ ク ト ル、DV-Xα 分 子軌道計算法を組み合わせることにより、π電子数 や中心金属、軸配位子の異なる様々なテトラアザ化 合物の電子状態変化を追跡できることが明らかと なった。
[3]多結晶薄膜の構造と電子物性に関する研究 半導体電子デバイスの高性能化・高機能化におい て重要となる誘電体、強誘電体材料の薄膜、特に、
多結晶薄膜を対象として、X線回折、反射率、光電 子分光などの分光手段を駆使し、薄膜の結晶構造、
配向、電子構造、原子結合状態を分析し、薄膜の物 性とともに界面の構造と電子状態を明らかにしてき た。また、薄膜の電気的特性、界面電子状態を改善 するプロセスを開発した。具体的は次の通りである。
! Si 基板上での SrBi
2Ta
2O
9(SBT)薄膜の結晶化 過程について、結晶構造変化、グレイン成長、界面 層の形成などを明らかにした。結晶化中のガス雰囲 気を制御することにより膜中電荷、界面電子状態を 改善できることを明らかにした。H
2O/N
2雰囲気で 結晶化すると薄膜の電気特性が良くなるが、一方で、
界面層が厚くなる問題があることが分かった。
" Bi
4−xLa
xTi
3O
12(BLT)薄膜の結晶状態と BLT/Si 界面構造を明らかにし、その BLT/Si 界面の電子状 態を調べた。界面の電子トラップおよび膜中の固定 電荷が低温酸素雰囲気のポストアニールで大幅に改 善できることを見出した。さらに、シンクロトロン 光を用いたX線回折により、薄膜中では BLT 結晶 のc軸が表面面内方向に優先配向すること、その優 先配向状態が結晶化温度に依存することを明らかに した。BLT の配向状態の違いが Au/BLT/Si 構造の 強誘電性ヒステリシスのシフト幅の違いとして現れ ることを示した。
# 絶縁膜 Tetraethylorthosilicate から形成した SiO
2薄膜および SiO2/Si 界面の特性が高圧 H2O 雰囲気熱 処理により大幅に改善されることを示すとともに、
O 雰囲気熱 処理により大幅に改善されることを示すとともに、
光電子分光および赤外吸収分光を用いた分析により、
その改善効果を結合状態、電子状態の観点から明ら かにした。
$ エレクトロルミネッセンス素子中の poly(3 ‐
hexylthiophene)薄膜の熱処理による構造変化をX 線反射率解析により明らかにした。
【研究業績】
1)Pressure-Induced Phase Transition of Trigonal, Rhombohedral, Orthorhombic, and α-Monoclinic Se- lenium
M. Takumi, K. Nagata
J. Phys. Soc. Jpn. Suppl.A, Vol.76 17-18, 2007.
2)First Experiment of a Structural Studies Beamline BL15 of a Compact Synchrotron Light Source (SAGA -LS) Newly Constructed with High Cost Performance Y. Chikaura, T. Okajima, Y. Soejima, K. Hara, Y.
Suzuki, N. Hiramatsu, A. Kohno, K. Nagata, H. Se- toyama, D. Yoshimura and M. Tabata
Advances in X-ray Analysis, Vol.50 2007.
3)三方晶,菱面体晶,斜方晶,α ‐単斜晶セレン の圧力誘起構造相転移
匠 正治,永田潔文
福岡大学理学集報,第3 7巻第1号,1‐ 1 3,2 0 0 7.
4)The Design and Performance of Beamline BL15 at SAGA Light Source.
T. Okajima, Y. Chikaura, Y. Suzuki, M. Tabata, Y. Soe- jima, K. Hara, R. Haruki, K. Nagata, N. Hiramatsu, A.
Kohno, M. Takumi, H. Setoyama, D. Yoshimura AIP Conference Proceedings, Vol.879 (Synchrotron Radiation Instrumentation), 820-823, 2007
5)Effect of Dissolved Oxygen and Lanthanide Ions in Solution on TiO2 Photocatalytic Oxidation of 2- propanol
N. Sakaguchi, S. Matsuo, T. Kurisaki T. Matsuo, and H.
Wakita
Res. Chem. Intermed ., 32 (2), 95-102 (2006)
6)The Origin of Enhanced Photocatalytic Decomposi- tion of ATP on TiO2Powders as Induced by Surface Modification with Lanthanide Ions
N. Sakaguchi, S. Matsuo, K. Yamada, T. Matsuo, and H. Wakita
Res. Chem. Intermed ., 32 (2), 171-182 (2006)
7)XPS 法によるテトラアザ配位子を用いたπ電 子雲拡張効果の電子状態分析
山重寿夫,井上芳樹,松尾修司,栗崎 敏,脇田
―25―
久伸
X線分析の進歩,
37,2 1 3 ‐ 2 2 2(2 0 0 6)
8)Reaction of Thiones with Propiolic Acid
K. Okuma, M. Koda, S. Maekawa, K. Shioji, T. Inoue, T. Kurisaki, H. Wakita, and Y. Yokomori
Organic and Biomolecules, 4, 2745-2752 (2006) 9)佐賀県立九州シンクロトロン光研究センターに
おける軟X線利用分析ビームライン(BL 1 2)
鎌田雅夫,脇田久伸,古屋謙治,橋本秀樹 日本結晶学会誌,
49,1 4 1 ‐ 1 4 5(2 0 0 7)
1 0)Multinuclear NMR and DFT Studies of the Structure and Fluxionality for MIII-ethylenediamine-tetraacetate Complexes (M (EDTA)
−, M=Al, Ga and In) in Solu- tion
R. Jószai, M. Purgel, I. Pápai, H. Wakita, and I. Tóth J. Mol. Liquids, 131-132, 72-80 (2007)
1 1)X-ray Absorption Spectroscopic Study on Polymeri- zation of Aqueous Aluminate by DV-Xα Molecular- Orbital Method
S. Matsuo, and H. Wakita
Adv. Quantum Chem., 54, 193-207 (2008)
1 2)Evaluation of Laboratory Ultra Soft X-Ray Absorp- tion Spectrometer by Li-K XANES Measurements and their DV-Xα Calculation
T. Kurisaki, Y. Nakazono, S. Matsuo, R. C. C. Perera, and H. Wakita
Adv. Quantum Chem. 54, 315-323 (2008)
1 3)Coprecipitation of Gold (III) Complex Ions with Manganese (II) Hydroxide and their Stoichiometric Reduction to Atomic Gold (Au (0)) : Analysis by Mössbauer Spectroscopy and XPS
M. Yamashita, H. Ohashi, Y. Kobayashi, Y. Okaue, T.
Kurisaki, H. Wakita, and T. Yokoyama J. Colloid Interface Sci., 319 (1), 25-29 (2008) 1 4)Crystallization and Structural Phase Transformation
in Sub-100-nm-Thick SrBi
2Ta
2O
9Thin Film A. Kohno, H. Sakamoto and K. Matuo
Japanese Journal of Applied Physics, 44 (4A), 1928- 1931, 2005.
1 5) Defect Reduction Treatment for Plasma- Tetraethylorthosilicate-SiO2by High-Pressure H
2O Va- por Heat Treatment
H. Watakabe, T. Sameshima, T. Strutz, T. Oitome and A. Kohno
Japanese Journal of Applied Physics, 44 (12), 8367- 8370, 2005.
1 6)Electrical Properties of Au/ Bi
4−xLa
xTi
3O
12Thin Film /Si Structures and Reduction of Interface States A. Kohno and H. Tomari
Materials Research Society Symposium Proceedings, 902E, T03. 45. 1-6, 2006.
1 7)Si 基板上に形成した多結晶 Bi4−xLa
xTi
3O
12薄膜の 容量−電圧(C−V)ヒステリシス特性と界面状 態の評価
香野 淳、西川武蔵、泊 博幸
電子情報通信学会技術研究報告,
106(5) ,5 1 ‐ 5 6,
2 0 0 6.
1 8)Structural and Electrical Study on Interface between Bi4−xLa
xTi
3O
12Thin Film and Si Substrate
A. Kohno
KEK Proceedings, 2006-3, 89-92, 2006.
1 9) Annealing effects of poly (3-hexylthiophene) films on the EL performance of ITO/polymer/Alq3/Mg-Ag devices. Evidences for structure changes of the poly- mer layer on ITO by XRR analyses
J. Ohshita, Y. Tada, A. Kunai, Y. Harima, A. Kohno, Y.
Kunugi
Synthetic Metals, 157, 104-108, 2007.
2 0)Preferred Crystal Orientation of Sol-Gel Derived Bi4−xLa
xTi
3O
12Thin Films on Silicon Substrates T. Tajiri, K. Sumitani, R. Haruki, and A. Kohno IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control , 54, 2574-2578, 2007.
2 1)Interfacial Layer Formation during Crystallization of Sol-Gel Derived SrBi2Ta
2O
9Thin Films on Silicon A. Kohno and K. Matuo
Transactions of the Materials Research Society of Ja- pan, 32 (1), 255-258, 2007.
―26―
研究チーム報告
【理工学研究部】
都市ごみ焼却灰の有効利用に関する研究
一般廃棄物焼却灰の有効利用研究チーム(課題番号:0 6 5 0 0 7)
研究期間:平成1 8年4月1日〜平成2 0年3月3 1日
研究代表者:添田政司 研究員:大和竹史【はじめに】
現在、都市ごみ焼却灰は、その大部分が最終処分 場に埋め立てられている。しかし、最終処分場残余 年数は切迫しており、加えて環境保全の面から新た な用地の確保や建設が困難な状況となっている。ま た、建設分野では良質な天然骨材の枯渇が深刻な問 題となり、安定供給が可能な代替骨材の選定が急務 となっている。そこで本研究は焼却灰を建設資材と して有効利用することにより環境負荷低減を図るも のである。しかし、焼却灰を有効利用するにあたり、
その用途における強度や耐久性等の要求性能を満足 しても、重金属、塩類を多く含むなど、環境安全性 が懸念される。そこで、焼却灰を制御型低強度材料 に用い、強度・耐久性等の要求性能を満足した供試 体について塩分・重金属類の溶出試験を行い、環境 安全性について検討を行ったので報告する。
【使用材料の物理・化学的特性】
表−1に焼却灰と海砂の物理・化学的特性試験結
果と規格値を示す。結合材として普通ポルトランド セメント(密度:3. 1 6 & / $ 、略号 C)を、混和材 として JIS A 6 2 0 1のフライアッシュ!種(密度:2. 3 6
& / $ 、比表面積4 2 0 0 # / & 、略号 FA)を、細骨 材 として発生場所の異なる焼却灰 A、B(以下、 A灰、
B 灰)と B 灰に簡易水洗処理を施したもの(以下、
WB灰)及び海砂の計4種類を、粗骨材として 6号 砕 石(粒 径5〜1 3 " 、密 度2. 6 5 & / $ 、吸 水率1. 0 3%、略号 G1)及び7号砕石(粒径2. 5
〜5 " 、密 度2. 6 1 & / $ 、吸 水 率1. 1 0%、略 号 G2)を、混和剤として高性能 AE 減水剤及び起 泡剤を用いた。なお、本研究で用いた焼却灰は あらかじめ4. 7 5 " ふるいを通過したものを使用 した。
【実験概要】
φ5 0×1 0 0 " の供試体を作製し、材齢7日まで封
緘養生した後、土木学会により提案されている「硬 化コンクリートからの微量成分溶出試験方法試案」
1)に準拠し、供試体から溶出する塩類及び重金属類の 溶出量を測定し、周辺環境へ及ぼす影響を明らかと した。なお、本試験方法は、オランダの環境影響評 価に採用するタンクリーチング法を盛り込んだ試験 方法であり、コンクリート構造物の供用条件を最も よく反映させた試験方法と考えられている。
【実験結果】
図−1、図−2に制御型低強度材料における供試
体から溶出する塩分と供試体に含有する塩化物イオ ンの関係を示す。焼却灰は B 灰及び WB 灰を使用 し、FA 置換率は7 0%で検討した。焼却灰単体では 高濃度の塩化物イオンが含有していることから、焼 却灰を用いた供試体の塩化物イオン含有量は、無混 和(海砂)と比較して高く、B 灰を用いた供試体は 含有量の規定値(0. 3 ' / % )を満足しなかった。し かし、焼却灰を用いた供試体の塩分溶出量は、B 灰 及び WB 灰に関わらず、焼却灰無混和(海砂)と 同様な溶出傾向を示しており、含有量との相関関係 は見られなかった。このことから、焼却灰中の高濃 度の塩化物イオンは、セメントで固定化することで
表−1 焼却灰の物理・化学的試験結果
試験項目 試 料
海砂 A 灰 B 灰 WB 灰 規定値
密度( & / $ ) 2. 5 7 1. 7 4 1. 7 3 1. 7 3 ≧2. 5
吸水率(%) 1. 5 9 3 9. 3 2 3 6. 8 6 3 6. 8 6 ≦3. 0 粗粒率 2. 4 1 3. 6 9 3. 2 9 3. 2 9 − 塩化物イオン
含有率(%) − 0. 6 6 0. 2 3 0. 2 3 ≦0. 0 2
―27―
サイクル数(日)
1 4 8 12 16 20
塩分溶出量(%) 塩化物イオン含有量(㎏/m 3)
溶出量
含有量
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
0 0.5 1 1.5 2 2.5
FA70B灰
FA70B灰
FA70海砂
FA70海砂
サイクル数(日)
1 4 8 12 16 20
塩分溶出量(%) 塩化物イオン含有量(㎏/m 3)
溶出量
含有量
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
0 0.5 1 1.5 2 2.5
FA70WB灰
FA70WB灰
FA70海砂
FA70海砂
溶出がされにくい状態となり、 制御型低強度材料 (無 筋)の建設資材として用いた場合、実環境上問題な いと考えられる。
表−2に微量成分溶出試験結果を示す。検討項目
は、重金属類(カドミウム、六価クロム、総水銀、
鉛、ヒ素、セレン)及びホウ素、フッ素の8項目と した。配合条件は FA 置換率9 0%の A 灰、この条件 に海砂を5 0%置換したもの及び FA 置換率7 0%の B 灰の3水準とした。A 灰は4 6号法試験において基準 値を上回る鉛の溶出(0. 1 5 9≧0. 0 1)が確認された が、焼却灰を用いた供試体からの溶出は見られず、
鉛の安全性が確認された。その他、基準値を上回る 溶出は見られず、本研究で使用した A 灰及び B 灰 を建設資材として用いた場合の安全性が確認された。
【まとめ】
・焼却灰を用いた供試体は高濃度の塩化物イオンが 含有しているものの、塩分溶出量と含有量の関係に は、相関関係が見られなかった。
・A 灰は4 6号法試験において基準値を上回る鉛の溶 出(0. 1 5 9≧0. 0 1)が確認されたが、焼却灰を用い た供試体からの溶出は見られず、安全性が確認され た。
【参考文献】
1)土木学会 コンクリートからの微量成分溶出に 関する現状と課題、コンクリートライブラリー1 1 1
表−2 微量成分溶出試験結果
単位:!/L 分析項目 FA90% FA70%
A灰 A灰−50% B灰 環境基準
Cd <0.0001 <0.0001 <0.0001 0.01 Cr6+ 0.01 0.01 0.01 0.05 T-Hg <0.00005 <0.00005 <0.00005 0.0005 Pb <0.001 <0.001 <0.001 0.01 As <0.006 <0.006 <0.006 0.01 Se <0.002 <0.002 <0.002 0.01 B <0.03 <0.03 <0.03 1
F <0.5 <0.5 <0.5 0.8
図−1 塩分溶出量と含有量の関係(B灰)
図−2 塩分溶出量と含有量の関係(WB灰)
―28―
研究チーム報告
【生命科学研究部】
肝内膵島グラフト傷害における凝固系と自然免疫の クロストークの解析と、その制御に関する研究
膵島移植成績向上のための研究チーム(課題番号:0 5 6 0 0 2)
研究期間:平成1 7年4月1日〜平成2 0年3月3 1日
研究代表者:中野昌彦 研究員:安波洋一、小野順子、波部重久
【研究概要】
膵島移植はインスリン依存糖尿病(IDDM)の新 しい治療法として、2 0 0 0年から欧米で本格的な臨床 応用が開始され、我が国でも2 0 0 4年4月に京都大学 病院において第一例目が行われた。福岡大学病院は 全国に7カ所ある膵島移植認定施設の一つとして、
九州・沖縄地区を担当しているが、2 0 0 6年1 1月に九 州で初めての臨床膵島移植を実施した。その後、
2 0 0 7年2月に同じ症例に2回目の移植を行い、必要 インスリン量の減少と血糖の安定化が得られるなど、
移植の効果は認められたが、インスリン注射からは 離脱出来なかった。欧米の報告では臨床例において 肝内に移植された膵島の残存率が2 0〜3 0%と低いた め、インスリン注射からの離脱には2〜3名のド ナーからの膵島が必要であることが報告されている。
この原因として移植後に膵島が拒絶反応のみでなく、
非特異的反応によっても破壊されることが推定され る。その機序として外来の異物に対する初期応答と しての自然免疫が考えられる。また、近年、自然免 疫と凝固系は相互に活性化しあうことが報告された。
本研究では膵島の移植部位である肝臓において膵島 生着に対する自然免疫と凝固系の相互作用を明らか にし、自然免疫と凝固系のクロストークにおいて重 要な役割を果たしているとされる活性化プロテイン C(APC)が膵島の生着改善効果を有するかを検討 した。
【研究成果】
本研究では拒絶反応の影響を除外するために C 5 7 BL/6マウスの同種同系肝内膵島移植モデルを用い た。薬剤によって糖尿病を誘発したレシピエントに 2 0 0個の膵島を移植した場合、対照群では全例(n=
8) が移植後6 0日間、高血糖のまま推移したが、 APC
投与群(APC 4 0 " を移植直前と移植後2時間、4時 間後にレシピエントに静注)では全例(n=7)が 移植後5. 4±1. 4(mean±SE)日で正常血糖になっ た。抗 EPCR(endothelial protein C receptor)抗体に よって APC の作用を抑制すると、全例(n=3)で 高血糖が持続した。
膵島を移植した肝臓の組織学的検索において、対 照群では移植後6時間、2 4時間共に膵島グラフトの 周囲には広範囲に変性した肝細胞が見られたが、
APC 投与群では変性した肝細胞の範囲は比較的狭 かった。対照群では移植後2 4時間で、膵島グラフト 内に組織因子(TF)を発現した単核球の浸潤が多 数見られたが、APC 投与群では TF 陽性の単核球の 浸潤が抑制されていた。両群でレシピエントマウス の肝臓全体の連続切片5 0枚(厚さ5 ! )を作成し、
同一膵島を重複して数えないように最初と最後の切 片の膵島数を数えたところ(n=6) 、移植後6時間 で1 3. 3±4. 7 vs 7. 7±2. 4、 2 4時 間 で1 0. 0±1. 5 vs 3. 8±
0. 4と、ともに APC 投与群の方が対照群より残存す る膵島が多かった。
膵島を移植した肝臓をホモジネートして FACS で 解析したところ、Gr ‐1陽性 CD 1 1 b 陽性単核球が移 植後6時間では、対照群でも APC 投与群でもナイー ブマウスに比べて増えていた。また、APC 投与群 では Gr ‐1陽性または CD 1 1 b 陽性の単核球のうち で TNF ‐ α 陽性、IFN ‐ γ 陽性の細胞の割合が対照群 と比べて著明に低下していた。
移植後6 0日目にレシピエントの耐糖能試験を行 なったところ、移植無しの薬剤誘発性糖尿病マウス と高血糖のまま推移した対照群の耐糖能は無処置の ナイーブマウスに比べて、著明に低下していた。移 植後に正常血糖となった APC 投与群はナイーブマ ウスと差が無いほど耐糖能が保たれていた。
―29―
以上の結果より、APC が TF の発現を契機とする 凝固反応を抑制し、かつ、移植後早期の浸潤単核球 による炎症性サイトカインの産生を抑制したことに よって移植された膵島の傷害を軽減し、APC 投与 群では残存する膵島数が多く、血糖の改善につな がったと思われる。
【研究業績】
1.Katsuta H, Koyanagi-Katsuta R, Shiiba M, Anzai K, Irie T, Aida T, Akehi Y, Nakano M, Yasunami Y, Ha- rada M, Nagafuchi S, Ono J, Tachikawa T. cDNA microarray analysis after laser microdissection in proliferating islets of partially pancreatectomized mice. Med Mol Morphol 38: 30-35, (2005)
2.Yasunami Y, Kojo S, Kitamura H, Toyofuku A, Sa- toh M, Nakano M, Nabeyama K, Nakamura Y, Mat- suoka N, Ikeda S, Tanaka M, Ono J, Nagata N, Ohara O, Taniguchi M. Valpha14 NK T cell- triggered IFN-gamma production by Gr-1+CD11b+
cells mediates early graft loss of syngeneic trans- planted islets. J Exp Med 202: 913-918, (2005) 3.Toyofuku A, Yasunami Y, Nabeyama K, Nakano M,
Satoh M, Matsuoka N, Ono J, Nakayama T, Taniguchi M, Tanaka M, Ikeda S. Natural killer T- cells participate in rejection of islet allografts in the liver of mice. Diabetes 55: 34-39, (2006)
4.Satoh M, Yasunami Y, Matsuoka N, Nakano M, Itoh T, Nitta T, Anzai K, Ono J, Taniguchi M, Ikeda S.
Successful islet transplantation to two recipients from a single donor by targeting proinflammatory cytokines in mice. Transplantation 83: 1085-1092, (2007)
―30―
研究チーム報告
【生命科学研究部】
種々のストレスと熱ショック蛋白を介した2型糖尿病 発症の関係に関する疫学研究
2型糖尿病に関する疫学研究チーム(課題番号:0 5 6 0 0 5)
研究期間:平成1 7年4月1日〜平成2 0年3月3 1日
研究代表者:今任拓也 研究員:畝 博【はじめに】
糖尿病は、WHO により HIV と並んで2 1世紀の感 染症と名付けられ、大きな社会問題となっている。
これまでに糖尿病の発症には、酸化ストレスや炎症 反応など様々な報告がなされているが、原因は未だ 明らかとなっていない。
熱ストレス蛋白(HSP)は、原核生物から真核生 物に至るまできわめて良く保存された一群のタンパ ク質であり、ストレスに対する細胞防御に関与する とともに、平常時においてもタンパク質の生合成や 高次機能の形成、膜輸送、また、蛋白質分解過程な どに必須の役割を担っている。最近では、自己免疫 疾患や感染症をはじめ、アルツハイマー病などにも 関与しているとの報告があり、熱ストレス蛋白のひ とつである HSP 6 0については、高血圧症などの循 環器疾患との関連も報告されている。しかしながら、
2型糖尿病との関連についてはほとんどなされてい ない。
そこで、本研究は、2型糖尿病と HSP 6 0との関 連について疫学研究を実施した。
【方法】
福岡県下の健康保険組合に加入している被保険者 で2 0 0 5年から2 0 0 7年に健康診断を受診した男性の中 から、ケース8 3名、コントロール1 6 1名を対象者と した。ケースは HbA 1 c が6. 5%以上または糖尿病の 治療歴がある者とした。コントロールは、HbA 1 c が5. 9%以下で、糖尿病の治療歴のない者とし、無 作為に選び出した。対象者には本研究の主旨を説明 し、健康診断での血液データの使用およびアディポ ネクチン、HSP 6 0、炎症性サイトカインの測定の同 意を書面にて得た。喫煙習慣、飲酒習慣などの生活 習慣および既往歴等のデータは、面接方式による自
記式質問票より得た。HSP 6 0濃度、アディポネクチ ン濃度、インターロイキン6(IL ‐ 6)および TNF ‐ α 濃度の測定には ELISA キットを用いた。糖尿病 と HSP 6 0濃度、アディポネクチン、IL ‐ 6および TNF
‐ α との関連については、ロジスティック回帰分析 を 用 い た。有 意 差 検 定 は、両 側、P-value<0. 0 5を 統計学的に有意とした。解析には SAS(Statistical Analysis System version 9.1)を用いた。
【結果】
まず始めに、我々は糖尿病患者と健常者との基本 的属性について比較した。BMI、収縮期・拡張期血 圧、高血圧治療者の割合、高脂血症治療の割合は、
コントロールに比べて、ケースのほうが有意に高 かった。年齢、喫煙習慣、飲酒習慣には有意な差は 認められなかった。また、血液データの比較におい て有意な差が認められたのは、ヘモグロビン A 1 c、
HDL および血清 HSP 6 0濃度であった。それ以外に 有意な差は認められなかった。
次に、ロジスティック回帰分析を用いて、様々な 血液マーカーと糖尿病との関連を調べた。アディポ ネクチン、IL ‐ 6、TNF ‐ α は、四分位にカテゴリー 化した。アディポネクチンの cut-off point は、4. 9 2
! /mL、 7. 1 2 ! /mL、 1 1. 6 9 ! /mL、 IL ‐ 6の cut-off point は、1. 4 5 pg/mL、2. 4 1 pg/mL、3. 7 2 pg/mL、TNF ‐ α の cut-off point は、 0. 1 0 pg/mL、 1. 6 0 pg/mL、 2. 7 8 pg
/mL と し た。血 清 HSP 6 0濃 度 は、全 体 の4 8. 0%が 検出限界以下であるため、定量可能と検出限界以下 にカテゴリー化した。
血中アディポネクチン濃度が最も高い人に比べて、
最も低い人は糖尿病のリスクが4. 8 1倍高いことが認 められた。また、BMI や年齢を補正しても、血清 HSP 6 0濃度が検出限界以下の人は、定量可能の人に
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比べて、2. 0 3倍糖尿病のリスクが有意に高いことが 示唆された。IL ‐ 6濃度と TNF ‐ α 濃度には糖尿病と の有意な関連は認められなかった。
【考察】
種々のストレスに保護的に働くと考えられている HSP のひとつである HSP 6 0と2型糖尿病との関連 を明らかにするために本研究を行った。これまでの HSP に関連する研究は、ほとんどが動物実験であ り、ヒトを対象とした研究についても1型糖尿病や 虚血性心疾患に関する調査はいくつかあるが、2型 糖尿病との関連について調査した疫学研究は見あた らない。ゆえに本研究が最初となる。
HSP 6 0は以前より感染症や1型糖尿病などの自己 免疫疾患との緊密な関連が示唆されている。近年で は、高血圧や動脈硬化症といった循環器疾患との関 連も報告されている。我々の研究では、コントロー ルに比べて、ケースの方が平均血清 HSP 6 0濃度は 有意に低かった。さらに、ロジスティック回帰分析 の結果より、血清 HSP 6 0濃度が定量可能の人に比 べて、検出限界以下の人は、糖尿病のリスクが2. 0 3 倍有意に高いことが認められた。Xu らの調査では、
HSP 6 0濃度が≧2 8 0 ng/mL のグループに比べて、<
2 8 0 ng/mL のグループは、糖尿病の割合が高いこと
が認められた。しかしながら、有意ではなかった (Xu.
et. al Circulation1 0 2:1 4 ‐ 2 0,2 0 0 0) 。また、Chen ら の糖尿病モデルラットでの動物実験では、diabetic myocardium において有意に HSP 6 0量の減少が認め られたという報告もある(Chen. et. al Diabetes 5 4:
1 7 5 ‐ 1 8 1,2 0 0 5) 。HSP 6 0は糖尿病発症に重要な役割 を果たしているかもしれない。
さらに本研究では、糖尿病の発症に関与している と考えられているアディポサイトカインのひとつで あるアディポネクチンや炎症性サイトカインについ ても測定も行った。アディポネクチンと糖尿病の関 連については多くの研究により一致した結果が得ら れており、本研究も血中アディポネクチン濃度が最 も高い人に比べて、最も低い人は糖尿病のリスクを 4. 8 1倍高くすることが認められた。また、本研究で は HSP 6 0濃度と TNFα など炎症性サイトカインお よびアディポネクチンとの相関は認められなかった。
HSP 6 0はアディポサイトカインとは独立して、糖尿
病発症のメカニズムになんらかの寄与があると考え られる。
本研究にはいくつかの限界がある。まず、これま での研究において、血中 HSP 6 0濃度の分布に一致 した結果が得られていない。しかしながら、 Shamaei らが行った調査では、HSP 6 0濃度が検出限界以下の 者は、全体の4 6%であり、我々の研究とおよそ一致 している。また、本研究は、横断研究であるため、
因果関係について言及することができない。さらな る前向き研究が必要である。
本研究は、HSP 6 0と糖尿病の関連について調査を 行った。ロジスティック回帰分析の結果から、血清 HSP 6 0濃度が検出限界以下の人は、定量可能な人に 比べて、糖尿病のリスクが約2倍高いことが認めら れた。HSP 6 0濃度は、糖尿病の発症に何らかの重要 な役割を果たしている可能性が示唆された。
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