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日本のエコミュージアムと山梨

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日本のエコミュージアムと山梨

十 菱 駿 武

私は遺跡・文化遺産の保存活用、文化財科学、博物館学に関心を持ってきた。1 9 9 3 年の文化財保存全国協議会佐賀大会で「遺産・史跡の保存と活用」の報告をし、1 9 9 4 年におおいた文化財フォーラムで「博物館と文化財を生かしたまちづくり」の講演を した。この間、東京都あきる野市横沢入の近世石切り場遺跡と里山の自然文化財保 存運動に取り組んで、住友財団の1 9 9 6年度環境研究「秋川流域エコミュージアム」助 成を受け、日本各地の里山保全事例とヨーロッパ各国の博物館とエコミュージアムの 現地巡検調査を重ねた。2 0 0 0年に横沢入の里山保全が決まり、運動は成功し、里山保 全の具体的構想を現実にする必要に迫られて、伊奈石の会の現地調査と研究会をもっ ている。また山梨では生涯学習事業、県立博物館建設、湯之奥金山博物館講座、山梨 の歴史文化公園連絡協議会で「エコミュージアムと歴史文化公園」 (1 9 9 8年5月の講 演)などでエコミュージアムの効用を論議している。さらに、岩手・宮城・埼玉・千 葉・神奈川・滋賀・島根・徳島・佐賀・大分県などの実地を巡検した。この報告では 国内の実地調査できたエコミュージアム事例を紹介するとともに、山梨でのエコ ミュージアム構想実現の提案をしたい。

1.エコミュージアムとは

エコミュージアム ecomuseum とは、生態学 ecology と博物館 museum の合成語 で、 「生活・環境博物館」と日本エコミュージアム研究会により訳されている。

フランスの博物館学者ジョルジュ―アンリ―リヴェールらは、フランスの地方分権と 地方自然公園整備計画の中で、野外博物館を人間と環境の関わりを扱う「家の博物 館」概念として、 「エコミュゼ ecomusee」という用語を1

9 7 1年から使い出した。1 9 6 7 年グランドランド・エコミュゼで農村型エコミュージアム、1 9 7 1年クルゾー・モン ソー・エコミュゼで都市型エコミュージアムが誕生し、各地の新しい博物館が創設さ

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れた。その後、リヴェールはフランス民族誌博物館長や国際博物館会議 ICOM の会 長ともなり、 『博物館 La Museologie』1 9 8 9年刊で、エコミュゼの理念・事例を大成 した。

フランス文化省の「エコミュージアム憲章」1 9 8 0年では、エコミュージアムとは、

ある一定の地域において住民の参加により、研究、保存、展示、伝承されてきた生活 環境、生活様式の代表的な文化と自然の調和を図り活用することを、永久的な方法で 行う文化機構であると定義している。

そして、活動は a)ミュージアムの自然遺産・文化財のリスト作成、b)地域の収 蔵品・資料の保存・展示、c)展覧会の企画、普及活動、d)購入、遺贈、募金の実 施、遺産の所有者との契約、e)文化遺産、景勝地の自然遺産の調査・研究、f)自然 遺産の保護の方法の提案、g)教育研究機関との協力で調査・研究の実践、住民指導、

h)専門家(館長・学芸員・教員・技術者)の養成、i)調査データの保管と報告、j)

学校の協力による普及活動の実行、k)テリトリー地域の教育的紹介、である。

エコミュージアムの管轄は、地域団体、公共機関、合同組合、協会、財団が行い、

学術委員会、利用者委員会、管理委員会を組織し、活動を検討する。

エコミュージアムの基本要素は、①地域:一定の文化圏を形成し、自然と遺産を現 地で保護・育成できるテリトリー。②遺産:展示・収集資料、地域の産業、伝統的建 造物、天然記念物、動植物、無形遺産など広い概念で捉える。③住民:行政と住民が 一体でつくり、住民が企画に参加し、遺産を保護し未来に継承する重役を果たす。④ 教育:地域の理解のために、地質学・地理学・経済学・生態学・生物学・考古学・農 学・民族学・歴史学・社会学・建築学などの総合的教育と、地域の発展に寄与する研 究。⑤民主的運営:エコミュージアムは利用者委員会、学術委員会、管理者委員会の 3つで運営され、相互に還元させる。

エコミュージアムの全体は、地域の生活環境をテーマに、地域の空間に分散した自 然・文化・歴史・産業・人間を現地で公開する施設=サテライトミュージアムと、地 域の成り立ち、地域の失われた記憶を再現する「時間の博物館」の機能を持つ中核施 設=コアミュージアム、そしてコアとサテライトをつなぎ自然・文化・歴史の発見の 径=ディスカバリートレイル、3種で構成される。それぞれのネットワーク化によっ てより大きな力を発揮する。

フランスから始まったエコミュージアムは、カナダや野外博物館本家の北欧、スペ

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イン、ポルトガルにもひろがり、ナショナルトラスト方式で自然・文化遺産を保護し てきたイギリスにも同じ考えのミュージアムがあり、日本にも1 9 9 1年から朝日町エコ ミュージアムはじめ広がり、日本エコミュージアム研究会ができている。

世界のエコミュージアム(日本エコミュージアム研究会 1 9 9 7に追加)

フランス 7 0 ポルトガル 4 スペイン 3 イタリア 3 ベルギー 3 ギリシャ 2 スイス 1 ドイツ 2 イギリス 6 ノルウェー 6 スウェーデン 3 デンマーク 4 ロシア 1 カナダ 1 5 アメリカ 2 ブラジル 2 メキシコ 1 ベネズエラ 1 インド 3 ネパール 1 日本 7 5(構想計画中を含む)

図1 エコミュージアムの概念図 (丹青 1 9 9 6)

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2.日本のエコミュージアム

日本のエコミュージアムについては、1 9 9 5年からの日本エコミュージアム研究会 で、フランスのエコミュゼ憲章に倣って日本型エコミュージアムの定義と組織原則を 作ることになり、2 0 0 1年の大会で採択された。 「日本エコミュージアム憲章2 0 0 1」で は次のように規定している。

「 〈定義〉エコミュージアムは、環境と人間との関わりを探る博物館システムであ る。それは、ある一定の地域において、住民の参加により、研究・保存・展示を行う 常設の組織であり、地域社会の持続的な発展に寄与するものである。 〈対象〉エコ ミュージアムは、ある一定の地域の多様な自然環境とそこにおいて成立した有形無形 の生活・文化・産業の遺産や記憶・様式等を、過去・現在・未来を通じて、総合的・

統合的に対象とする。 〈組織〉エコミュージアムは、住民と行政が協働し、住民の 参画のもと、広義の非営利組織がおこなう。推進にあたっては、各分野からの参加に よる企画運営の委員会、専門家との連携による学術的研究の委員会、利用者の委員会 をそれぞれ組織する。 〈学校〉エコミュージアムは、地域を学び知り、地域をつく る担い手を育む住民の学校として、展示、教育、普及活動をおこなう。 〈研究所〉

エコミュージアムは、地域のための研究所として、専門家と共に科学性をふまえ学際 的な調査・研究をおこなう。 〈保存機関〉エコミュージアムは、地域環境の多様な 遺産や生活文化の保存機関として、記憶の収集および保全をおこなう。 」

日本型のエコミュージアムでは、行政機関・NPO 法人・研究会・民間任意団体が 組織主体となり、多様な方式で対象となる遺産等を守り育てる実践が行なわれてい る。フランスの方式に比べると、地域づくり・観光振興の面が多く、ことに1 9 9 0年代 後半以降の長期不況経済のもとで、地方自治体財政が圧縮され、大きな財政的負担な しに進めうる地域振興計画として、また地方分権・市町村合併を追い風として2 0 0 0年 以降各地の取り組みが増えてきている感がある。

エコミュージアムは、その目的から、地域づくり系、自然公園系、観光振興系、文 化遺産系、里山保全系などに分類できる。私が提案しているのは文化財保存活動の中 で、文化遺産系の野外博物館(フィールドミュージアム)や地域まるごと博物館や里 山エコミュージアムとして、地域のまちづくりを構築し、地域の記憶を保存継承して

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いきたいと思うからである。以下、分類別に現地調査してきた事例を紹介し、所見を 述べる。

1 地域づくり系エコミュージアム 朝日町エコミュージアム(図2)

山形県朝日町は朝日連峰の中山間地域で、町全体2 0 0平方㎞を対象にした日本最初 のエコミュージアムである。フランスのエコミュゼを見学した民間の「朝日町エコ ミュージアム研究会」の自然観察会・郷土学習活動の蓄積、環境保全のモニュメント としてブナ林のなかに鏡をおく、空気神社建立の運動などにより、町政理念を自然と 人間の共生「楽しい生活環境観」とした。町と研究会の共同により「朝日町エコミュー ジアム基本構想」が1 9 9 1年策定された。サテライトとして、朝日連峰ブナ林・最上川 渓谷・大沼の浮島・佐竹家住宅・高田集落・ワイン工場・りんご資料館・りんご温 泉・ビーズファーム・果実流通センター・朝日自然観・のんぽかの森ができている。

図2 朝日町エコミュージアムのサテライト分布 (日本エコ研 1 9 9 7)

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文化遺産、自然遺産をつなぐ発見の径もでき、看板とサインポストで案内している。

コア施設については2 0 0 0年にエコミュージアムセンターを生涯学習センターを兼ねて 設置した。住民の文化遺産・生活環境に対する理解を深めながら、住民が楽しく誇り をもって生活できる町を目指している。 (朝日町 1 9 9 1、日本エコ研 1 9 9 7)

全体の実現には2 0年かかる長期の構想であり、新たな発想を採りこんだ町行政の先 見性はすばらしく、住民の活動も実績を蓄積している。1 9 9 5年には町で「日本型エコ ミュージアムのあり方を探る」国際シンポジウムを催すなど、理念の啓発と研究がさ れている。

イーハトーブ・エコミュージアム(図3)

岩手県東和町は花巻市と遠野市に隣接する中山間地域である。花巻市で生誕した宮 沢賢治は農村の地学者・教育者として、童話作家として著名だが、賢治が目ざした田 園理想郷が「イーハトーブ」岩手県であった。1 9 9 0年にふるさと創生事業の一環でで きた民間 NPO 法人・空山川総合研究所がエコミュージアム理念を知り、 「東和町の まちづくりとエコミュージアム」研究学習を重ねた。町のグリーンツーリズムや生涯 学習構想の策定に参画するなかで、1 9 9 3年から「イーハトーブ・エコミュージアム」

の策定と実践に入った。 「イーハトーブ・エコミュージアム」は東和町を主なテリト リーとして、将来は岩手県全域を目標にしている。町総合情報センターにエコミュー ジアムセンター(空山川研究所)をおき、萬鉄五郎美術館、毘沙門堂、成島和紙工芸 館、町歴史民俗資料館、安俵遺跡、早池峰神楽、南部曲家、田崎湖、霊湯東和温泉、

東和ふるさと村、フォルクローロ東和、街並み、農園、社会福祉施設などの自然資源・

歴史・文化資源をサテライトにしている。活動は、イーハトーブ文化圏の資源調査、

イーハトーブ自然体験の場づくり、こどもエコクラブ、姫神縄文合唱団、地区ごとの コミュニティプランづくり、農村型生涯学習システムづくりなどを通して、魅力ある 自然・文化遺産・産業のまちづくりをめざしている。

2 0 0 1年には日本エコミュージアム研究会東和大会が開かれ、私はシンポジウムや資 源の巡検に参加した。温泉は良質でゆったりと田園の心地良さを味わったし、無農薬 で農園を経営している百姓家族と交流し、遺跡や資料館を歩いた。まほろばの郷、賢 治の描いた田園理想郷をめざす町民、エコミュージアムセンター職員の意欲には感動 したが、まだ町内のネットワークが充分でなく、また花巻市にある宮沢賢治童話村や 宮沢賢治記念館への集客力と比べると、見劣りがして、花巻市や周辺地域自治体をま

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きこんで初めて「イーハトーブ・エコミュージアム」が完成するという感を強くし た。

大滝村エコミュージアム(図4)

埼玉県秩父郡大滝村は、秩父地方の山村で過疎化の道をたどっている。民間の環境 教育団体であり、東京学芸大学環境教育学科を中心とする自然文化誌研究会は、大滝 村で子供のための冒険学校を実践するなかで、都市と農山村の交流をし、1 9 9 2年に大 滝村エコミュージアム研究委員会を設けた。村役場職員・青年団・民宿住民・営林 署・環境教育研究者で組織し、調査活動を始めた。大滝村中津川の旧公会堂をビジ ターセンターにし、イベント案内・展示・自然文庫・交流作業室とした。そこを起点 にして歴史・信仰・生活・産業の1 3ポイントをめぐる生活文化トレイル、樹木の観察 をしながらめぐる木のディスカバリートレイルを設け、炭焼き・植林・甘酒づくり・

図3 イーハトーブエコミュージアムの構成 (日本エコ研 1 9 9 7)

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栃餅づくり・蕎麦打ち・源流探検など体験プログラムを子供を中心に実践している。

(自然文化誌研究会1 9 9 4)

大滝村エコミュージアムでは村外の都市住民が動機づけ、住民と交流しながら農山 村エコミュージアムを構築しつつある。行政主導でなくとも比較的狭い地域の資源を ネットワークする発想の転換と環境教育者の実践力で、住民のエネルギーをひきだせ ば大滝村の伝統的な生活を継承できるようになる。このことは民間団体主導で進めて いる横沢入のエコミュージアム活動にも到達可能な先進例と言えるだろう。但し、大 滝村現地には草の根の動きが少なく、住民には根付いてない嫌いがあり、大滝村自治 体の改善が望まれる。

2 観光振興系エコミュージアム 富浦エコミューゼ(図5)

千葉県南房総の富浦町が先導して進めている。リゾート開発がバブル経済崩壊で撤 退して、町は県のアグリリゾートの指定を受けた。アグリリゾートをエコミュージア ムの手法でつくるために「富浦エコミューゼ研究会」を発足させ、歴史遺産・産業遺 産・行事・アイデアを探し、富浦ウォッチングをした。1 9 9 3年に町全額出資の株式会 社を設け、コア施設である「枇杷倶楽部」を建設した。サテライトは大房岬・陸軍砲 台遺跡、里見氏の岡本城跡、花摘み園、イチゴ摘み園、房州うちわ工場、唐棧織工場 などを整備した。農業体験型観光で年間4 0万人の客が増え、農地荒廃に歯止めがか

図4 大滝エコミュージアムの中津川山村トレイル (日本エコ研 1 9 9 7)

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かった。富浦エコミューゼは経済活性化とともに、人形劇フェスティバル、サロン、

細密画教室、伝統工芸実演など文化活動も行っている。富浦エコミューゼは首都圏の 集客力を利用しながら行政主導で成功した例である。サテライトはまだ整備が十分で なく、大房岬の戦争遺跡は町文化財として指定され、地下の探照灯や弾薬庫など戦争 遺跡をふくむエコミュージアムとして先進例である。しかし歴史・自然系の町立博物 館はまだできていない。観光課が主体となっているだけに、生涯学習の面では不足が 目立つ。私が訪れた早春の時期には南房総の花摘みの観光客が必ず訪れる観光地とし て、枇杷倶楽部はにぎわっていた。観光振興の面では大成功であるが、文化遺産の保 存活用では歴史の散歩道を設けるとか、ガイド案内人やパンフレットを充実するな ど、課題が多いと感じた。

あさんライブミュージアム(図6)

徳島県の阿讃山脈山麓から吉野川流域の土成町・上板町・板野町が連携して、生き た広域青空博物館にしようとする、あさんライブミュージアムは3町の行政と住民代 表が1 9 9 4年に運営協議会を組織し、行政先導の地域活性化策がスタートした。地域の

図5 富浦エコミューゼの枇杷倶楽部 (枇杷倶楽部パンフ)

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さん

テーマを「彩・技・餐」とし、テーマセンターは板野町歴史文化公園に歴史史跡を展 示する「彩りの館」 、朱工房・古代復元建物がある。上板町の「技の館」では藍染・

さん

阿波和三盆糖の体験工房、藍・サトウキビの温室が設置され、土成町の「餐の館」で はたらいうどん・草木染の体験工房がある。サテライトとして、秋月城跡・大坂越ト レイル・黒谷川郡頭遺跡・阿波藍製造所・阿波和三盆糖製造所・たらいうどん・宮川 内谷川周辺トレイルが設定されている(日本エコ研 1 9 9 7) 。その後、3町のコア施設 として板野町に「あすたむランド」ができ、あさんライブミュージアムの映像やガイ ダンス・情報検索を行なう施設ができている。

日本のエコミュージアムではひとつの自治体がテリトリーになるのがほとんどで あって、数自治体の共同運営は難しいのであるが、ここでは徳島県行政戦略の阿讃地 域にそって、広域テリトリーとなり、各自治体のテーマを個性化し、県の支援もあり

図6 あさんライブミュージアムの概念図 (あさんライブ 1 9 9 8)

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連携を成功させている。

3 自然公園系エコミュージアム 多摩川エコミュージアム(図7)

神奈川県川崎市の市制7 0周年の1 9 9 4年多摩川記念事業を契機に、市企画局と市民団 体の協同作業として1 9 9 7年から多摩川エコミュージアム構想づくりが進められ、2 0 0 1 年に「多摩川エコミュージアムプラン」がまとめられた。また河川を管理する国交省 京浜事務所が進める「多摩川流域リバーミュージアム」モデル事業の一環として、

二ヶ領宿河原堰管理事務所の半分を提供して、 「二ヶ領せせらぎ館」が1 9 9 9年に開設 された。多摩区登戸にあるせせらぎ館は、多摩川流域の航空写真・宿河原堰模型・環 境情報検索パソコンを備えた展示室、資料室、会議室があり、職員が常駐している。

市民団体の多摩川エコプロジェクトチームは情報、まちづくり、多摩川環境学習、歴 史・文化、多摩川植樹、水循環市民活動、丘陵市民活動のチームに分かれ、行政とと もに「多摩川エコミュージアム推進協議会」を構成してきたが、2 0 0 2年に NPO 法人

「多摩川エコミュージアム」として自立した。環境学習や歴史文化遺産散策、水辺の 釣り・カヌー体験、昔の多摩川の生活を語る集い、せせらぎ館の展示活動、情報誌や 散策ガイド刊行をしている。二ヶ領用水は江戸時代に小泉次太夫によって新田開発の ために開削された用水で、堰・石橋・円筒分水・供養塔・水車跡などが散策できる水 辺のウォーキング路になっている。多摩川エコミュージアムのテリトリーは川崎市の 多摩川水系流域で、各地区に分布する自然環境、歴史遺産、産業遺産を、河川軸・旧 街道軸・歴史散策路などでつなぎ、市民活動による水と緑のネットワークで、快適環 境づくりの実現をめざしている。

博物館施設としては小さなせせらぎ館を核として、行政の支援と人の交流でつな ぎ、多摩川全体の行政・学校・市民団体の情報交流をめざしている。多摩川源流の山 梨県小菅村の情報も検索できる。行政主導でなく住民が程良く提携して、長期的な見 通しで活動を続けていることは、各地のエコミュージアム運動のモデルとなると思わ れる。ただし、展示は貧弱でもっと充実が必要だし、利用者への奉仕・配慮や各サテ ライトの充実が、市民に愛着される機構になるため、今後の課題であろう。

滑川町エコミュージアムセンター(図8)

埼玉県比企郡滑川町の溜池や小川で、絶滅したといわれてきた国指定天然記念物ミ

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図7 多摩川エコミュージアム概念図(川崎市 2 0 0 1) 、せせらぎ館の全景と展示室

図8 滑川町エコミュージアムセンターの全景と展示

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ヤコタナゴが1 9 8 5年に発見されたことから、滑川町は「谷津の里づくり」まちづくり の拠点施設として文化庁補助事業として、町役場に隣接した滑川沿いに「滑川町エコ ミュージアムセンター」を2 0 0 0年建設した。エコミュージアムセンター(7 9 9㎡)に は、ミヤコタナゴと町内の文化財の展示室、エコミュージアムに関するライブラ リー、タナゴの保護繁殖室、タナゴ観察池、セミナーハウスを備え、野外には溜池の タナゴ観察施設、水田、観察路がある。センターには年間8 0 0 0人の入館者があり、タ ナゴ池の整備、ザリガニ釣り、緑米の田植え・稲刈り、ソバの種まき・収穫、サツマ イモ・落花生の収穫、凧づくり、七夕馬づくり、餅つき大会などの事業を行なってい る。体験学習の核になるのが、町職員・社教委員・小学生からなる「滑川町なんでも 体験隊」で、生き生きした経験が展示と記録になっている。

町内には、国営武蔵丘陵森林公園、2 0 0カ所の池沼、マツカサガイ、五厘沼窯跡、

月輪古墳群、泉福寺の仏像、下福田の獅子舞、盆やぐら、ブルーベリーの観光農園な どの資産が分布し、町では「滑川町まるごと博物館」として、活用しようとしている。

センターは3人の職員で町の文化財保護・生涯学習施設もかねているが、町全体のエ コミュージアム化、サテライトとのネットワーク化にはまだ距離があり、教育委員会 だけでなく企画政策課などの職員の活力と、住民団体の組織化など、今後の滑川町ま るごとエコミュージアムの進展にはまだ課題が多いと感じた。

河口湖フィールドミュージアム

山梨県南都留郡河口湖町の富士山麓に設けられた、富士山熔岩樹型・自然・人文資 源を生かした町立のエコミュージアムである。エコミュージアムの理念を採用して、

河口湖町は自然遺産の発見・保全を通して、町民の生涯学習活動と観光の振興をめざ して河口湖フィールドセンターを1 9 9 4年に設置した。フィールドセンター内では、船 津胎内の熔岩樹型・樹木・動物などをオリエンテリングしたり、地学・生物の学習を する。子ども・学生・一般市民にあわせたガイドツアーやクラフト体験もあり、富士 北麓の環境と自然の魅力を学べるようになっている。

「河口湖フィールドミュージアム計画」では、美術館、大石紬保存工芸館、ハーブ 館などをふくめて、富士河口湖ふるさと振興財団が運営する計画で、研究学習拠点の 設置が不可欠とされた(河口湖町 1 9 9 3) 。現在、各施設に自然共生研究室が設けら れ、小立総合公園などにはビオトープも設けられ、河口湖町全域の自然環境(火山・

溶岩・動植物・景観)と文化環境(歴史・伝統工芸・美術・民俗文化・生活環境・産

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業)をゾーンごとの特色を生かして、整備する事業が進められている。時間をかけ て、町内の資源を生かす努力が続けられている。

4 文化遺産・里山系エコミュージアム 鉄の歴史村

島根県飯石郡吉田村は中国山地の一角で、砂鉄が産出し、古代からたたら製鉄が盛 んであった。吉田村は和鋼の風土を保存し、国指定の菅谷たたらの文化遺産を継承す るために、 1 9 8 6年に「鉄の歴史村宣言」を行い、 1 9 9 0年代から菅谷たたら高殿の復元、

山内生活伝承館、鉄の歴史博物館、グリーンシャワーの森、オープンエァーミュージ アム、鉄の未来科学館、鍛冶工房を建設した。鉄の歴史博物館は山林王田部家住宅を 利用した施設で、たたら製鉄と技法、鉄山経営と鍛冶集団、について展示している。

鉄の未来科学館では、菅谷たたら製鉄炉の地下構造、江戸時代末の洋式高炉、イギリ スの1 9世紀コークス高炉を展示、体験できる。毎年「鉄の歴史村フォーラム」を実施 し、世界の鉄文化、和鉄の歴史、鉱山の技術について研究イベントを行なっている。

たたらを動態的に生かす歴史系・科学技術系博物館を中心に、温泉宿舎、釣り場をつ なぎ、見る・学ぶ・遊ぶ・憩うの要素を備えて、 「吉田村まるごと博物館」の文化遺 産系エコミュージアムとして、進化発展が期待される。

狭山丘陵エコミュージアム構想

埼玉県所沢市を中心とした狭山丘陵では、大学や民間の宅造を契機に自然保護運 動・文化財保存運動が盛り上がり、開発を里山保存の方向へ向けた。狭山丘陵は所沢 市・入間市・東村山市・東大和市・武蔵村山市・瑞穂町の6市町にまたがり、落葉広 葉樹の森、野鳥・哺乳類・ホタル・オオムラサキなど昆虫・タナゴ・ドジョウなど淡 水魚など豊富な自然環境で覆われている。文化財も旧石器〜近世の遺跡2 3 0ヶ所があ り、神社・仏閣1 2 9ヶ所、路傍の石仏などの石造文化財も多数分布している。 「トトロ のふるさと財団」が設立され、国民の募金によりトトロの森の土地を買い上げるナ ショナルトラスト運動が進んでいる。

保存運動の過程で1 9 8 6年に狭山丘陵を市民の森にする会が「雑木林博物館」を提案 して、行政や住民へ里山の保全を提案した。埼玉県は所沢市・入間市にまたがる狭山 丘陵北西部8 5ha を公有地化し、保全湿地と自然観察路・展望広場・案内所を設け、

「さいたま緑の森博物館」として1 9 9 0年代から里山の保存活用策に転換した。さら

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に、トトロのふるさと財団は、民間の研究者・保全団体として積極的な自然学習や文 化財調査を進め、エコミュージアムの事例調査や住民の意識調査を行ない、1 9 9 9年度

『里山におけるエコミュージアムの実現に関する調査研究』をまとめた。報告書では

「里山の自然や文化・文化財・伝承文化を、人々の交流・市民運動を通して、地域型 社会と都市型社会の融和を基本とした地域づくりをめざす」として、狭山丘陵の里山 を核としたエコミュージアム構想を実現する研究をした(トトロのふるさと財団 2 0 0 0) 。テリトリー内の土地のトラストによる確保、雑木林での不断の調査研究活

動、里山の管理活動、そして構想の提案と実現に向けての行動など、里山エコミュー ジアム実現への活動が積極的に進められている。

横沢入里山エコミュージアム構想(図9)

東京都あきる野市の横沢入地区は、秋川流域の谷戸の沢地と山に囲まれた里山であ る。伊奈石といわれる砂岩が産出し、南北朝時代から近代まで、板碑・五輪塔・石臼 などに使われてきた。沢にはゲンジホタル・トウキョウサンショウオ・ホトケドジョ ウが生息し、山にはオオタカ・キツネ・ウサギが営巣している、東京で残された最大 の里山である。横沢入地区の JR 東日本の宅造開発計画について、里山保全の自然文 化財保存運動が続けられ、五日市の自然を大切にするまちづくりを考える会の「横沢 入ふれあいの里構想」1 9 9 3、横沢入地区土地利用検討委員会里山部会「里山環境保全 構想検討報告書」1 9 9 6、伊奈石研究会の1 9 9 6年『伊奈石』で、 「秋川流域エコミュー ジアム構想」が提起されてきた。十菱・伊奈石研究会の「秋川流域エコミュージアム と伊奈石遺跡・横沢入環境保全方法の研究」住友財団環境研究では、さらに、当面横 沢入に絞り、エコミュージアムを設定するともに、横沢入をコアとして、流域の自然 資源・文化遺産・教育産業施設のネットワーク化を考えた。2 0 0 0年、開発主体の JR 東日本が宅造を白紙に戻し、あきる野市は「ふれあいの里」として保全することを決 めたが、財政難のため、都環境局の里山保全地区としての公有化が遅れており、JR 東日本と自然保護団体が協議しながら、環境学習や遺跡巡検、ビオトープ湿地の最低 限の整備を行なっている。

「横沢入里山エコミュージアム構想」の基本コンセプトは次のようである。対象地 域を、当面横沢入に絞り、短期計画で「横沢入里山エコミュージアム構想」とする。

対象テリトリーは横沢入ゾーン6 5ha とその周辺の秋川ゾーン、大悲願寺ゾーン、砂 沼ゾーン、初後沢・三内ゾーン、伊奈西ゾーンを含む。この地域は湿生地、雑木林、

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伊奈石石切場遺跡、寺町と石造物の豊富な歴史環境、伊奈市と地場産業、秋川の水辺 空間、環境教育の要素がある。横沢入はあきる野市五日市地域の生活・環境を維持 し、多摩の伝統的な里山景観を良好に保っている。横沢入の環境を損壊しないよう、

ビジターセンターや石臼・そばを備えた休み処、伊奈石石切場史跡整備を設け、水 田、雑木林、ホタル・トンボ池、遺跡、石仏などを復元活用し、人為的な自然に手を 加えて育成することにより、価値はさらに高まる。横沢入里山エコミュージアムとし ての利用により、五日市・多摩の伝統的な生活とアイデンティティを維持・回復・発 展することができる。長期計画では、 「秋川流域エコミュージアム構想」として、あ きる野市全域・日の出町など秋川流域を対象に拡大し、テリトリーの自然資源・文化 財・博物館・公園・産業施設をネットワーク化し、コアミュージアムを実現させてい きたい。

この構想を実現するためには、1)自然と文化のふれあいの里としてのコンセプ ト:西多摩最大の都自然保護条例の里山保全地区候補として、観光振興、文化遺産の 保存、自然環境の保全、生活伝統の継承を目的とする。2)土地の公有地化あるいは JR、トラスト財団の保全管理:横沢入地区は、東京都が里山保全地区として公有地

図9 横沢入里山エコミュージアム構想図

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化し、都か市が管理し、民間団体が運営するのが理想的である。3)地域住民、管理 団体(横沢入エコミュージアム協会)による維持管理、運営:西多摩地域・住民主体 の運営母体を育成する。既存の郷土研究会、市民団体、学校、青少年団体、シニア団 体、婦人会に依拠できる。学術委員会、利用者委員会にあたる組織を持続させる。ボ ランティアの住民参加が鍵である。4)地域の自然環境・歴史環境・生活の博物館を 育成できる住民意識の高揚:伊奈朝市、横沢入ホタル観察会、伊奈臼そば体験会など イベントの持続的実施。5)秋川流域エコミュ−ジアムへの拡大:五日市郷土館、二 宮考古館、高尾公園、草花公園トンボ池、網代城山公園、秋川渓谷などあきる野市・

日の出町の博物館・エコパーク・自然資源・文化観光資源・生活産業施設・地域公民 館のネットワーク化。既存の歴史的資産、文化的資産、自然景観、産業施設、宿泊施 設、公園施設をエコミュージアムのサテライトとして位置付ける。緊密なネットワー ク化のために公園全体の看板・案内表示やパンフレットを置く無人ポストなどを設置 する。各サテライトをつなぐ「里山発見の道(ディスカバリートレイル) 」を整備し、

また横沢入への交通手段を整備し、利用者の拡充を図る。サテライトや地域博物館、

ビジターセンター、公民館などで動態的な展示、体験学習、製品の生産など多様な活 動を行う。これらの措置により住民の公園利用、文化的要求、環境保護活動を高める とともに、国民の身近な歴史文化めぐり、グリーンツーリズムの活動と結びつけ、観 光客の質的変化と、量的拡大を図る。

以上の構想を提案しているが、今後のエコミュージアム構想の実現には、行政・地 権者・町会などの学習と密接な連携が必要であり、管理運営・調査研究の主体となる 団体の新設と NPO 法人化も必要である。

塩山エコミュージアム構想(図1 0)

山梨県塩山市は「甲州の鎌倉」といわれ、恵林寺・放光寺・向嶽寺・菅田天神社・

甘草屋敷のある歴史遺産・文化財1 6 3件の豊富な市である。県立博物館誘致運動の中 で、1 9 9 8年に「博物館都市・塩山」構想が策定されたが、県博は御坂町に決った。し かし市教育委員会では、甘草屋敷整備事業と生涯学習都市宣言をしていることもあ り、文化遺産を中心に生涯学習のネットワーク整備を進めている。2 0 0 1年に開設され た「薬草の花咲く歴史の公園―甘草屋敷」では江戸時代の建物を修復し、屋内で「ひ な祭りと桃の花まつり」を実施し、年間2万人の観光客がある。於曽屋敷・向嶽寺・

恵林寺・松里など市内の「塩山ふるさとウォーキング」を季節ごとに催したり、樋口

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一葉に因む朗読会・講演会、観光ボランティアガイド養成講座など多彩な活動を進め ている。大菩薩峠・黒川金山・雲峰寺をふくめて、市民の文化遺産学習を推進するこ とが、観光振興へつなげることになる。博物館施設としては、市民文化会館の歴史民 俗資料室があるが、新設の甘草屋敷を核にネットワークしていく文化遺産系エコ ミュージアム構想である。塩山市観光振興ビジョンではエコミュージアム手法を導入 し、甘草屋敷を拠点に、社寺と歴史ゾーン、健康と収穫のゾーン、山岳と土木のゾー ン、金山と山の暮らしのゾーンからなる「塩山エコミュージアム」の実現を目指し、

コア施設として「塩山地域づくり博物館」の整備を検討するという計画を策定してい る。 (塩山市教委 2 0 0 1、塩山市 2 0 0 1)

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日本のエコミュージアム一覧表

塘路湖エコミュージアム 北海道標茶町 釧路湿原の塘路湖の自然観察とカヌー体験のできる エコミュージアムセンター

川湯エコミュージアム 北海道弟子屈町 阿寒国立公園の川湯地域の自然をガイドするエコ ミュージアムセンター

図10 塩山エコミュージアム構想の資源分布 (塩山八景十名所パンフ)

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中川町エコミュージアム 北海道中川町 化石・自然史博物館をかねた研修宿泊施設をエコ ミュージアムセンター

洞爺湖周辺地域エコミュージアム構想 北海道壮瞥町・伊達市・豊浦町・虻田町・洞爺村・大 滝村 有珠山噴火の火口群・鉄橋跡・病院跡・地殻変動跡などの火山遺構を、観光と自然学習 の場にする壮瞥町の構想が、洞爺湖地域の自然・歴史・観光振興へ発展

はまなかエコミュージアム構想 北海道浜中町 民間 霧多布湿原・漁業・農業・生活の風景 などの資源を生かした交流型のまちづくり

十二湖エコミュージアム 青森県岩崎村 白神山地の十二湖の自然を体験するエコミュージア ムセンター湖郷館

イーハトーブ・エコミュージアム 岩手県東和町 民間・空山川研究所 自然・文化遺産・産 業のまちづくり

北上川エコミュージアム 岩手県北上市・町村 北上川中流域の自然環境・歴史・文化をサイ クリング・ウォーキングロードでつなぐ生きた博物館・地域づくり

三陸ふるさとまるごと博物館構想 岩手県三陸町 いわてデジタル・エコミュージアム 岩手県

長走風穴館 秋田県大館市 秋田山地の長走風穴高山植物群落の保全のための天然記念物整理 事業のビジターセンター

朝日町エコミュージアム 山形県朝日町 人と自然を大切にするまちづくり 山形県西川町 あずまエコミュージアム構想 茨城県東町 地域計画構想

たくみの里農村公園 群馬県新治村 山村の民俗・作業体験の村営公園

志木まるごと博物館河童のつづら 埼玉県志木市 志木の自然環境・文化遺産の資源を継承す る住民 NPO 法人「エコシティ志木」がエコツァー・ガイドブックなどの活動を実践。施設未設 置、ネットワークが主力。

滑川町エコミュージアムセンター 埼玉県滑川町 ミヤコタナゴの保護繁殖のための町立博物 館、谷津の里まちづくりの拠点

狭山丘陵エコミュージアム構想 埼玉県所沢市・東京都東大和市など5市町 狭山丘陵の自 然・文化遺産を対象に民間財団による保存運動の過程で提案された構想

大滝村エコミュージアム 埼玉県大滝村 中津川での自然体験学習・子どもの環境学習に力点 富浦エコミューゼ 千葉県富浦町 町出資の枇杷倶楽部、観光振興と文化遺産を連携 千葉市エコミュージアム構想 千葉県千葉市 千葉市の都市づくり基本計画

新宿区ミニ博物館 東京都新宿区 区内の林芙美子記念館、染めの里二葉苑、目白学園遺跡、

つまみ簪博物館、熊野神社、染色工房、須賀神社三十六歌仙絵、太宗寺の文化財をネットワー ク化した地域まるごと博物館

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三鷹市エコミュージアム構想 東京都三鷹市 市の緑と水の基本計画のなかで水車経営農家の 整備、出山横穴墓や東京天文台もネットワーク化。

横沢入里山エコミュージアム構想 東京都あきる野市 伊奈石の会構想、里山の自然・遺跡を 保全

巨樹の郷エコミュージアム構想 東京都奥多摩町 町立の巨樹館を中心にした観光振興計画 八丈島エコミュージアム 東京都八丈町・青島村 八丈島と青島にある観光資源をまとめた観 光振興計画。自然資源、風力発電、戦争遺跡、歴史民俗資料館、流人墓地を観光マップでまと めた。

多摩川エコミュージアム 神奈川県川崎市 せせらぎ館を核とした水と緑と歴史のネットワー クを、市行政と NPO 法人でめざし、実践中。

真鶴エコミュージアム構想 神奈川県真鶴町まちづくり条例をつくった真鶴町を真鶴岬の樹 林・観光農園・近代建築・小松石採石場などを資源として民間で構想中。

愛川エコミュージアム構想 神奈川県愛川町 民間のあいかわエコミュージアム研究会が構想 中

浅草山麓エコミュージアム 新潟県入広瀬村 越後三山只見国定公園の浅草山麓の自然資源を 生かし、ビジターセンター・森の教室・観察広場を設けた県立エコミュージアム。

妙高四季彩博物館 新潟県新井・頸南地域 妙高山麓の自然・歴史・産業・文化を対象とした 広域地域づくり。この行政計画をバルビゾン・エコミュージアムと称する。

沢スギ自然館 富山県入善町 黒部川扇状地の沢杉の保全と水生動物を展示する町立博物館。

中池見湿地トラスト 福井県敦賀市 中池見湿地と生物・文化財を守る運動で保全し、大阪ガ スの保全湿地「ウエットミュージアム」と合わせ、里山の活用を実践中。

塩山エコミュージアム構想 山梨県塩山市

河口湖フィールドミュージアム 山梨県河口湖町 富士山熔岩樹型・自然・人文資源を生かし た町立のエコミュージアム

都留市まるごと博物館構想 山梨県都留市 ミュージアム都留を中心に尾県教育資料館・宝鉱 山・ムリネモの森をネットワーク化。

松代エコミュージアム構想 長野県長野市 松代町の真田藩学校・資料館・松代大本営をつな ぐ構想

松本まるごと博物館構想 長野県松本市 既存の松本市博物館を中核に開智学校・松本城・司 法博物館・窪田空穂記念館・中田家住宅・弘法山古墳・美ヶ原高原など文化遺産・産業遺産・

自然資源をテーマ施設とする、2 0 0 0年の市の構想 美麻遊学舎エコビレッジ 長野県美麻村

エコミュージアム関ケ原 岐阜県関ケ原町 湿地・トンボ池・野鳥観察小屋に設けられたビジ ターセンターのフィールドミュージアム

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海上の森エコミュージアム構想 愛知県瀬戸市 愛知万博予定地、海上の森保全のための里山 エコミュージアム

犬山市全市博物館構想 愛知県犬山市 市内の犬山城 桃太郎神社・里山と窯跡・明治村・羽 黒城跡・青塚古墳・犬山祭をつなぐ発見の小径を設定し、生涯学習のまちづくり。

川根エコミュージアム 静岡県川根町・中川根町・本川根町

みさくぼフィールドミュージアム 静岡県水窪町 カモシカと森の体験館

鳥羽エコミュージアム生活環境博物館 三重県鳥羽市 鳥羽湊街並みと岩田家を、みなとまち 文学館として、江戸川乱歩の世界を復元する。

宮川流域エコミュージアム 三重県宮川流域 伊勢の宮川水系1 4市町村をテリトリーとした民 立の生活博物館。大杉谷・斎宮池の自然資源、林業・田園・製茶の産業資源、伊勢の蔵町・城 郭・普賢菩薩・猪垣の文化資源を宮川流域案内人が導く。

エコリゾート赤目の森 三重県名張市 赤目の滝を核にしたエコツーリズム構想

琵琶湖博物館 滋賀県草津市 湖国まるごとエコミュージアムの核となる県立自然科学系博物 館。琵琶湖の魚・植物の調査、体験学習を実践。

エコミュージアム伊吹 滋賀県伊吹町 薬草温泉・伊吹山麓の自然資源などの地域づくり、町 主導

甲西エコミュージアム 滋賀県甲西町 琵琶湖南岸の里山・自然・文化遺産をつなぐ甲西町ま るごと博物館。町とエコミュージアム研究会が協力。

五個荘ふるさとまるごと博物館 滋賀県五個荘町 近世の歴史建築を保存する近江商人博物館 をコアに、湖東の自然・産業・文化と、町内の商家をサテライトにして、歴史と文化のまちづ くりを整備中。

京エコミュージアム構想 京都府京都市 京都の文化遺産・風土をつなぐ京エコミュージアム 研究会の構想、巡検・調査を重ねている。

平野町ぐるみ博物館 大阪府大阪市平野区 平野まるごと博物館、民間

ちはや星と自然のミュージアム 大阪府千早赤阪村 府立千早園地のなかに星天体の観測と自 然観察の府立金剛山エコミュージアムセンターが設けられている。

コウノトリの郷博物館 兵庫県豊岡市 コウノトリの生息地の保存・増殖のための県立コウノ トリの郷公園の核となる自然系エコミュージアム

北はりま田園空間博物館 兵庫県北播磨地域1市4町 播磨地域の自然・文化遺産・産業を、西 脇市に設けられた道の駅・北はりまエコミュージアムをアンテナに、地域まるごと博物館に。

洞川エコミュージアム 奈良県天川村 吉野山の鍾乳洞とコウモリの観察・保存のためのビジ ターセンター

熊野フィールドミュージアム 和歌山県新宮市・熊野地域 熊野の自然・仏像・歴史・伝説・

風土をテリトリーにした熊野フィールドミュージアム研究会の構想

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瑞穂ハンザケ自然館 島根県瑞穂町 瑞穂町まるごと博物館としてまちづくりの核としたオオ サンショウウオの観察館

鉄の歴史村 島根県吉田村 鉄の歴史村博物館、鑪などの鉄の文化遺産の保護継承のための野 外博物館

三瓶フィールドミュージアム 島根県大田市 大山隠岐国立公園三瓶山に設けられた県立三瓶 自然館(展示室・プラネタリウム)を核とした島根県のフィールドミュージアムのコア施設 高島・旭竜エコミュージアム 岡山県岡山市 アユモドキ・デンジソウの里山、森林公園、古 代吉備文化遺跡をつなぐ民間のまるごと博物館構想

津山まるごと博物館 岡山県津山市 津山城下町の武家屋敷・町屋・寺町、近代建築を生かす 城西築地区の民間都市型エコミュージアム構想

エコミュージアム川根 広島県高宮町 川根地区の自然観光の研修施設

秋吉台エコミュージアム 山口県美東町 秋吉台国定公園に設けられた鍾乳洞・自然・文化を エコミュージアムセンターとエコフィールドで観察する県立ビジターセンター

あさんライブミュージアム 徳島県板野町・上板町・土成町 美郷ほたる館 徳島県美郷村

四万十・足摺エコミュージアム構想 高知県 四万十川流域・足摺地区のエコツーリズムを計画 京築エコミュージアム 福岡県京築地域1 1市町村 神楽の息づく里をコンセプトに地域の文化 遺産・資源を生かした地域づくり

しまばら薬園の里 長崎県島原市 史跡島原藩薬園を整備し、薬用植物園、観光振興の核とし て市内の薬草・医学文化・健康保養施設とネットワークを組んでいる。

荒尾・玉名地域エコミュージアム構想 熊本県荒尾市・玉名市 2市8町の都市計画構想で、

里山・田園文化伝承、菊池川の歴史、西南の役戦跡、田園空間博物館、近代産業とゾーニング して、既存の博物館・資源を位置づけた地域戦略事業。

阿蘇たにびと博物館 熊本県白水村

悠木の里づくり 熊本県小国町 森林資源を生かした林業の振興と地域に愛着をもつ地域づく り

えびのエコミュージアム 宮崎県えびの市 霧島連山・えびの高原の自然をガイドする環境庁 立の自然博物館

屋久島オープンフィールド博物館 鹿児島県屋久島

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3.山梨県の「エコミュージアム構想」実現のために

山梨県では自然公園系の「河口湖フィールドセンター」 、文化遺産系の「塩山エコ

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ミュージアム構想」 、地域づくり観光振興系の「清里キープ協会」 「都留市まるごと博 物館構想」など、エコミュージアム運動が行なわれている地域である。しかし、日本 型のエコミュージアムの取り組みが始まって1 0数年たち、文化遺産・自然遺産に恵ま れている県の割には、全体としての取り組みは顕著ではない。

その原因として次のことが挙げられる。第1に、県行政の縦割り行政の弊害があ る。県環境局主管の「やまなしの歴史文化公園」では、 「古代甲斐の里春日居」 「木喰 のふるさと下部」など2 5の歴史文化公園を指定しているが、指定して看板を設置する に留まり、積極的な環境活用は不充分である。山梨森林浴コースが6 0設定されてい る。企画局、林務部の「グリーンツーリズム」 「森林の文化公園」の設定はされてい るが、学校教育や生涯学習との連携は充分ではない。教育庁学術文化財課では国史跡 1 1件・県史跡2 3件など市町村指定文化財を含めると総計2 0 1 9件の指定文化財があり、

「山梨県文化財マップ」 『歴史の道ガイドブック』で紹介されているが、環境行政と の連関は充分ではない。第2に、上からの行政で、市町村行政、文化団体、環境保護 団体、地域住民の下からの力が発揮されていない。第3に、箱もの行政に流れ、人の 活用やソフト面が配慮されない。大きな施設を新設することより、既存の文化施設を 活用する。第4に、理念が不足しており、日本各地や広く世界の先進地域の研修・視 察により、進んだ理念・理論を採用する必要がある。

そこで、日本型エコミュージアムを山梨県内に適用するためには、次の提案をした い。

第1に、 「地方分権、文化の時代」を山梨県でさらに進展させる。資産が多く、首 都圏に近く、県・市町村の行政や県民の意識を変えれば条件がある。地域振興、まち づくり、文化遺産の保存、自然環境の保全、生活伝統の継承を目的として、エコミュー ジアムを含む地域計画を設定する。

第2に、2 5の歴史文化公園のうち、条件の整うものを広域のエコミュージアムとし てコンセプトを変え、活用する。市町村や郡教育事務所または民間団体が管理運営の 主体となるが、2 0 0 3年から実施される市町村合併は、広域の行政を一元的に進める上 でやりやすくなるだろう。エコミュージアム設立後の管理・運営・育成に重点をおく ようにする。

第3に、地域・住民主体のエコミュージアム運営母体を育成する。既存の郷土研究 会、市民団体、環境団体、学校、青少年団体、シニア団体、婦人会に依拠できる。エ

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コミュージアムと地域の調査・学習を進めることが大事で、小中高大の学校教育と、

山梨学などの生涯学習がその場になりうる。その後に、エコミュージアム学術委員 会、利用者委員会にあたる組織を、最初は○○エコミュージアム研究会として立ち上 げ、できれば組織的には行政の関わる第3セクター財団か民立の NPO 法人として発 展させる。運営には、県民・住民の下からの力、ボランティアとしての住民参加が鍵 となる。

第4に、既存の歴史的資産、文化遺産、自然景観、産業施設、宿泊施設、公園施設 をエコミュージアムのサテライトとして位置付ける。緊密なネットワーク化のため に、エコミュージアム全体の看板・案内表示やパンフレットを置く無人ポストなどを 設置する。

第5に、エコミュージアムのサテライトをつなぐ発見の道(ディスカバリートレイ ル)を、歴史文化公園整備事業、甲斐の古道整備事業と連動しながら整備し、交通機 関の拡充を図る。サテライトや地域博物館、ビジターセンター、公民館などでは、動 態的な展示、体験学習、製品の生産など多様な活動を行う。

第6に、各エコミュージアムのコアは、市町村の地域博物館・美術館施設・文化セ ンター・観光施設・道の駅に置く。県全体のコア施設は県立博物館が総合展示・調査 研究・情報センターの役割を担う。県立博物館基本計画には、地域の文化財・地域博 物館・文化施設をネットワークで結ぶ「ハブ博物館」という優れたコンセプトがあ り、各地のサテライトとして対等に位置づけられれば、かつての天野県政の「やまな しカルチャーネットワーク構想」とは違う、 「島根県フィールドミュージアム」と共 通する「山梨県まるごとエコミュージアム構想」も設定できるであろう。

第7に、これらの措置により県民のエコミュージアム利用、文化的要求、環境保護 活動、地域への帰属意識(アイデンティティー)を高めるとともに、県外の国民の身 近な歴史文化めぐり、グリーンツーリズムの活動と結びつけて、観光客の質的変化 と、量的拡大を図ることができる。

各地の文化財と自然を守る運動や生涯学習のなかでも、この新しいタイプの博物館 を学習し、提案型の文化財活用計画と構想を研究者と市民運動の側から創りだしてい くことが必要と思う。エコミュージアムの考え方は、地域の資産を見直し、新しい発 想で人々の活力を引き出す文化運動でもある。 「Act Localy, Think Globaly」の姿勢 で、一歩一歩実践すれば、エコミュージアムはけっして夢でなく現実となるだろう。

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私は、山梨県民の文化と環境を愛する意志を尊重し、地域を再生する姿勢と行動力に 期待したい。

なお、資料収集・調査について、日本エコミュージアム研究会、滑川町エコミュー ジアムセンター、富浦エコミューゼ、多摩川エコミュージアム、トトロのふるさと財 団、河口湖フィールドセンター、塩山市教育委員会、あさんライブミュージアム、伊 奈石の会、犬山市教育委員会にお世話になった。厚く感謝したい。

参考文献

朝日町エコミュージアム研究会 1 9 9 1『朝日町エコミュージアム基本構想調査報告』朝日町 朝日町エコミュージアム研究会 1 9 9 6『朝日町エコミュージアムデザイン整備計画』朝日町 新井重三 1 9 9 5『実践エコミュージアム入門』 牧野出版

犬山市教育委員会 2 0 0 2『全市博物館構想』

塩山市教育委員会 2 0 0 1『塩山市文化財ガイドブック』

塩山市商工観光課・山梨総合研究所2 0 0 1『塩山市観光振興ビジョン策定事業調査報告書』塩山 市

大原一興 1 9 9 1「エコミュージアムとは何だろう?」 『エコソフィア』4号 昭和堂 川崎市総合企画局 2 0 0 1『多摩川エコミュージアムプラン』川崎市

河口湖町 1 9 9 3『河口湖フィールドエコミュージアム計画策定調査報告書』

県立博物館を迎える東郡の会 2 0 0 0『甲州まほろば紀行』

小松光一 1 9 9 9『エコミュージアム〜2 1世紀の地域おこし』家の光協会

自然文化誌研究会 1 9 9 5『農山村エコミュージアム ディスカバリートレイルガイドブック』

大滝村中津川ビジターセンター

十菱駿武 1 9 9 3「遺跡・史跡の保存と活用」 『明日への文化財』3 3号 文化財保存全国協議会 十菱駿武 1 9 9 5「地域活動と博物館」 『日本の科学者』3 1―2 日本科学者会議

十菱駿武 1 9 9 6「博物館と文化財を生かしたまちづくり」 『おおいた文化財フォーラム文化財2 1 世紀へ』 大分県文化財保存協議会

十菱駿武 1 9 9 7「エコミュージアムと文化遺産の保存」 『伊奈石』1号 伊奈石の会

十菱駿武 1 9 9 8「ヨーロッパのエコミュージアムと横沢入里山エコミュージアム構想」 『伊奈 石』2号 伊奈石の会

十菱駿武 2 0 0 2「明日の博物館〜エコミュージアムと佐賀まるごと博物館」 『吉野ケ里』2号 杉本尚次 2 0 0 0『世界の野外博物館』学芸出版社

丹青総合研究所 1 9 9 6『ECOMUSEUM エコミュージアムの理念と海外事例報告』 丹青研

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究所

トトロのふるさと財団 2 0 0 0『里山におけるエコミュージアムの実現に関する調査研究』 日 本財団

日本エコミュージアム研究会 1 9 9 7『エコミュージアム・理念と活動』 牧野出版

日本エコミュージアム研究会 2 0 0 2「あさんライブミュージアム大会」 『エコミュージアム研 究』No.7

馬場憲一 1 9 9 8『地域文化政策の新視点』雄山閣出版

上記以外に、各博物館・行政機関のリーフレット、ホームページを参考にした。

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参照

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