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いま保険とは何かを考える

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Academic year: 2021

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いま保険とは何かを考える

平成20年度大会共通論題

質 疑 応 答

[司会・石名坂邦昭]質問をたくさん頂戴しておりますが順番に回答をさせ ていただきたいと思います。まず,江澤先生に松崎先生からご質問がきてお ります。

[江澤雅彦]東日本国際大学の松崎先生から頂きました。いろいろ書かれて おりますけれどもまず一番目は,協同組合共済の中で,三大生協共済に言及 されているだけで労組・自主・公益法人共済には目配りされていない。表題 は広過ぎるというご指摘を頂きました。

これは 保険と共済の 境界 について というタイトルに比べて考察し ている対象が,いわゆる大規模生協共済に限定されているだろうというご批 判でございまして,これは私の表題を付ける際に大き過ぎるタイトルを付け たということで,これは全く先生のおっしゃるとおりです。ただ,今回考察 した対象は生協共済ということになります。これは先生のご指摘のとおりで ございます。

それから協同組合保険とあるが協同組合共済であろう。協同組合保険とい う把握をすると共済と保険の差が量的な程度の差になり相対化し,稀釈化さ れるというお話でございます。本日,私の発表の趣旨は,いわゆる共済とい うのは協同組合保険であって,相互会社,株式会社による保険がいわゆる会 社保険であるということでございます。

その意味で保険の仕組みを使って組合員の方に行う保障事業が共済である という,共済協会のファクトブックを引用しました。保険という意味では共

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通しているが,実施する主体が相互会社,株式会社,協同組合によって,若 干の境界が生じてくると考えています。それがいわゆるアイデンティティー の問題なのだという趣旨で申し上げております。

私の本日の発表では,共済イコール協同組合保険という意識でもって発表 させて頂きました。そこでアウトサイダーだけでなく,競合相手であるとい う表現であるが,全労済,全生協も同一歩調であるのか。共済はやはり,あ くまでも外部者に留まるという先生のご意見,ご指摘でございます。

いわゆる法的な環境や,あるいは一般の顧客の考え方,いわゆる掛金が安 いがゆえに共済を選んだというようなアンケート結果があるということを申 し上げましたけれども,そういう点ではやはり,もはや,会社,いわゆる私 の用語でいう会社保険と協同組合保険,特に3つの生協共済については,や はり,もはや競争相手になっているのではないかというふうに考えておりま す。保険市場を構成する一部に大規模生協共済がなったというふうに私自身 は認識をしております。

それから事実上,保険事業,実質的な保険事業について,共済と保険の異 同をどのように判別していますか。共済は事実上,実質的な保険であると決 め付ける根拠は何ですかというご質問ですが,私がレジュメの中で,共済と いってもその範囲が広く,それをレジュメの注1に示しております。これは 押尾先生のご著作ですが,これが①から⑤まで分けられていて,今回,私も 採り上げたのが,④の協同組合保険形態に当たる,というふうに考えており ます。その意味では保険を実施するという意味では今日私が取り上げた大規 模生協共済と会社保険とに相違はないというふうに考えております。

それから,元 戸大学の刀禰先生から 一律掛金,一律保障 が協同組合 保険のアイデンティーとして謳われ,現実に日生協で7割,全労済でも6割 の掛金収入を占めているということですが,英国の生命保険史でアミカブ ル・ソサエティーが発足後まもなく行き詰まった例を見るまでもなく年齢別 死亡率を無視した 一律掛金,一律保障 は加入者間に著しく公平性を欠い ている商品であると思いますが,大規模協同組合保険で通用している現実を

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どのように理解したらよろしいでしょうか,というご質問を頂きました。

たとえば全労済のこくみん共済等は1年の短期の保険ですし,ある程度,

共済掛金,共済金を,制限することによって,そういったリスクを抑えると いうような工夫もなされていると思います。またすべてが一律保障,一律掛 金の商品ではなくて,個別保険料型の商品も含めることによって,そういう リスクに対応しているというふうに考えればいいと思います。

たとえば全労済のある方がおっしゃるには,そうした一律掛金だからとい って,その共済契約者間で別に特に不満があるといった話は聞いたことはな いということでございます。ただ,仮にさらに大規模化が進んでいったとき に,そういった意見が契約者の間に出てくれば,共済団体側もプライシング において,平均保険料主義から個別保険料主義に軸足を移していかなければ ならない,ということを考える可能性はあろうかと思います。本日,言及を しませんでした

JA

共済,これも大規模共済ですが,JA共済は基本的には,

すべて個別保険料主義の共済になっています。一律掛金,一律保障をもって 共済の特徴だと言い切れない面を,JA共済の存在が示しております。そう いう意味でも,報告対象がかなり限定されていたという先程の松崎先生のお 叱りはもっともかと思います。私からは以上です。

[司会]続きまして松島先生から梅津先生に質問です。その他,佐野先生,

村田先生からも質問が来ておりますので梅津先生にお答え頂きたいと思いま す。

[梅津昭彦]ご質問ありがとうございます。ただ今,ご紹介にありましたよ うに明治学院大学の松島先生に次のようなご質問を頂戴しています。保険者 に要請される最大善意性の義務は,ア)保険事故発生時のみならず,イ)保 険事故が発生しなかった場合,つまり契約が有効に存続する場合も考えられ ると思いますが,イ)の場合の保険者の最大善意義務として具体的にどのよ うな義務を考えられるのか,ご教授ください。

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恐らく同趣旨だと思うのですが,東日本国際大学の松崎先生からも善意契 約性の相互性として,特に保険者の義務,または一般条項として考えるとし ても保険者の義務として何が具体的に想定されて,何に役立つかというとい うご質問です。同趣旨のご質問と承ってよろしいですか。

[東日本国際大学・松崎良]はい。

[梅津]ご質問の点については,私も一番困っているところではあったので すが,イギリス法,あるいはアメリカ法の比較法的な勉強をする上で,保険 事故発生時,あるいは保険契約が有効に継続している間に保険者側に認めら れる義務について具体的に何か判決例があってですね,参考になるようなも のがないか,いうふうにいろいろ考えてみました。

レジュメには載せなかったのですが先ほどの報告,発表の時に,この善意 契約性の問題を契約法の議論として考えるか,それとも業法規制の中で何か 具体的な効果を導くのかということについては私自身,あんまり詰められて はいないのですが。例えばということで本当に恐縮ですが,やはり,責任保 険の分野でよく言われる保険者に防御義務を認め,そのことの効果如何を契 約法の問題として一定の義務化ということをちょっと考えていいのかな,と いうふうには思っております。

他方で,業法規制の分野で言いますと,保険業法もございますし,それか ら金融庁のガイドラインもございますから相当程度進んでいて,いわゆる契 約者保護,被保険者保護のためにも積極的なコミットをするようなかたちに なっていると思うのですが。決してそれだけではなく, いま,保険とは何 かを考える というなかで,どうしても昨年,本学会でもシンポジウムがあ りましたように,不払い問題が少し頭にあったものですから,できれば,そ ういう不払問題が発生しないように何か積極的に保険会社,保険者側が,契 約者等にコミットするということを考えられないかなということを今,思っ ている段階です。

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そうですから,それ以上に具体的なことは今のところ想定しておりません けれども,ただ実はあとのご質問と関連するのですけども,最大善意の契約 を認めることによって,やはり法的な要件とか効果を考えることで,何らか のよりよい方向に契約両当事者関係が向かうのかな,というふうに私は考え ているところです。

ほかにもたくさんご質問を頂いて,順不同で恐縮ですが福岡大学の佐野先 生,最大善意性から保険者に他の一般契約上の義務を認める根拠として保険 契約の特性は存在するのでしょうか。指摘されるような保険者の義務は信義 則や,消費者契約における消費者保護の理念などから説明可能であり,保険 契約に特有のものとは思われませんが。というようなかたちでご質問,疑問 を提示して頂きました。

善意契約性が認められるかどうか,というところの根拠の問題だというふ うに思います。私がレジュメの本文の中で,言われ尽くされているところか もしれませんがレジュメの最後の算用数字の4の⑴から⑵において,いわゆ る保険契約といえども保険の特性として指摘しうることが善意契約性の根拠 になるのではないかというふうに考えております。それから注の番号で言い ますと48になるのですが,継続的契約関係という民法の議論を参考にして保 険契約にも継続的契約関係を認めることができるのであれば,やはりそこか らも善意契約性を認める根拠が導き出されるのではないか,というふうに考 えております。そのことを私としては強調したいと思っていた次第です。

次に,日本生協連の小塚さんから,今回,成立した保険法では検討会の審 議経過では善意契約性をめぐる議論が行われたようであるが,最終的には法 制化されなかった。梅津先生はこのことにどのように評価されていますか,

というご質問を頂きました。

強いて言えばレジュメの最終の注に52でコメントしているのですが, 保 険契約が(最大)善意契約であること,または保険契約の当事者が信義に従 い誠実に行動しなければならないことが強く要請されるものであることを立 法において文言化しなければならない(ならなかったか)については,報告

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者はそのことが注意・確認的規定の意味しかもたないものであっても肯定的 な意見を持つものである というように私は考えております。

ご承知のとおり,審議過程でいろいろ議論はあってですね,とりわけ,や はり一般原則のような扱いをするのが悪いと言ったらおかしいですけれども,

要件効果が明確でないものは書く必要はないのだとか,あるいはそのときは 善意契約性というよりも信義則の議論だったと思いますけれども,そのこと の機能なり効果なりがまだ固まっていないような,いないわけじゃないです か,いないような状況で,やっぱり立法するのはよろしくないという方向に 行ったのだと,そのときに私は思ったのですが,ここに書きましたように,

それが注意・確認的規定であっても,私のように善意契約性を認める立場か らすると何らかのそういった規定の存在が必要であったのではないかという ふうに考えております。

それから,三井住友海上の村田さんからのご質問です。契約者(被保険 者)と保険者間の善意契約性について論じる上では情報の非対称性への観点 も重要ではないか。保険に関する技術的,理論的な情報は保険者に,リスク に関する情報は被保険者に偏在する。前者については説明義務の問題として 整理が可能であるが,それだけではないし,後者については告知義務の問題 としてだけ処理することが妥当ではないかと思われる。

ご質問の趣旨といいましょうか,私は何を答えたらいいか分からないので すが,もしよろしければ三井住友海上の村田さん,ご発言頂いてよろしいで しょうか。

[三井住友海上・村田毅]保険実務をしている人間から見ると一番最初に思い 浮かぶ論点かと思っていたのですけれども,情報の非対称性の観点での論点 提示はあまりなかったので,(本日の報告の中でのご説明に関連して,保険 実務の感覚では)違います,そこはそうじゃないのですかという指摘として 質問しています。それから,行為規制との牽連性をいうときに,誰に義務を 課すかを論議するのかと考えると,契約法の議論ですから,一応,対等の当

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事者間の双方に継続的な契約関係の中で,契約期間中において義務を課すと いうことになるということで(保険者側に監督規制上の義務を課す行為規制 とは論点がことなるはず)。また,行為規制とか告知義務というのは契約を するときにしか発生しないので,そこから後ろについては当然違います。

(契約時の義務違反が契約期間中の権利義務関係に対して)どんな要件,

効果を生んでくるのかということについてのご見解を伺いたいと思ったのは,

そういうところでして。中途半端で失礼しました。

[梅津]ありがとうございます。お答えになるかどうか分かりませんけれど も,今,おっしゃいましたように,告知義務とか,説明義務の契約締結段階 あるいは契約締結前に,一方当事者に如何なる義務が認められるか,課せら れるかという問題と,契約が有効に成立してから,有効に存続している間に 両当事者にどういう義務ないし権利が発生するかという問題は,私は連続し て考えて良いのだだと思っておりまして。それが先ほど言いましたように継 続的契約関係のスタート時点と,継続中にも認められると。その根拠に善意 契約性というのがもってこられないかなという発想なのですね。

先ほど一番最初のご質問になかなか明確に答えられなくて恐縮なのですが,

そこでどういう義務が,あるいはどういう権利が発生するかということに関 して言いますと,ちょっとまだ考察の途中なのですが,基本的には契約の成 立から終了に至るまでの全体を通じて,私は善意契約性が認められて,そこ に何らかの義務が,おっしゃるとおり両当事者に課せられるということを今,

一度思い起こしてほしいということなのです。

ですから,これまでの善意契約性の議論が先ほど,報告の中でも言いまし たように,どちらかというと,契約者サイドにある一定の行為が,やはり一 定の義務を課すという議論を中心に行われてきたのを,やはりもう一度,善 意契約性の相互性ということを思い出してみたらいかがかという発想であり ます。

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[司会]続きまして松澤さんに,刀禰先生,村田先生からの質問がございま す。

[松澤登]はい。ご質問ありがとうございます。まず,三井住友海上の村田 さんからのご質問にお答えしたいと存じます。私の発表では英国と日本とで 規制そのものには大きな差異はないとまとめているが,英国と日本との規制 の差異の大きい部分もあるわけで,このような差異が生じた背景について少 し補足願いたいというご質問です。具体的には,例えば

FSA

による強い差 止権限や,それに対応して業者側が金融サービス市場不服申立審判所(the

Financial Services and Markets Tribunal  

)で争えるといったようなもの

や,あるいはルールに関する観念や透明性などのレベルの違いなどに注目す べきとご指摘をされております。

大変難しい課題を頂きまして,回答に当たって,本当はしっかりと研究し ないといけないのですが,現時点で思い当たる点をいくつかお話ししたいと 存じます。

まず政治的な背景ですが,英国は金融立国を目指して大胆な改革を進めて きています。壮大な実験として過去との断絶を恐れず制度変更をしているこ とがありまして,たとえばご存知のとおり,最近では保険の募集を行う主体 として独立仲介者と会社の代理人しか認めないという二極化ルールを廃止す ることも行っております。すなわち,英国では過去の制度との連続性を犠牲 にすることを辞さないという素地があると思われます。

この点,財務省の担当官は

FSA(金融サービス機構)をつくった意味は

規制上の問題が生じた場合に政府が責任を負わないためとも述べておりまし て,FSAは政治とは一線を画しながら,かなり踏み込んだことをやること が制度的に担保されていると思われます。

次に,FSA設立の経緯を見ますと,FSAの母体というのは

SIB(証券投

資委員会)という証券業の自主規制団体が中核になっています。そのため証 券規制的な考え方を生命保険に適用しやすかったとも思われます。

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あわせて,英国の生命保険商品も特徴的でして,金融商品の販売シェアの 5割が生命保険になっております。この理由は,集団投資スキームを英国で は主に生命保険に組み込むかたちで売っているからで,したがって英国では 比較的証券規制的な考え方が生命保険にもなじみやすい面があるといえると 思われます。この点,日本では最近は変額年金のような商品も増えてまいり ましたが,主には,集団投資スキームを投資信託として販売していることと 比較して大きな特徴となっています。

別の視点ですが,最近話題のプリンシプル・ベースの規制であるとか,あ るいは重要役職員について

FSA

に事前登録をして,不適正行為があると課 徴金を課すというようなことをやっているのは,おそらく規制対象となる業 者がものすごく多いということがひとつの要因ではないかと思われます。

保険分野で言いますと,日本では実態として,金融庁は保険会社に募集人 の指揮監督をさせる前提で監督を行っています。英国では指定代理人以外に は保険会社に指揮監督の責任がなく,FSAがすべて直接監督する建前にな っておりますので,そういう意味で実態的に規制下にある業者数がものすご く多い。したがって日本の保険監督のように経営の中身にまで踏み込んで丁 寧に監督をするということが取りえなかったというようなこともあるのでは ないか,というふうに思います。

ほぼ感想となってしまうのですけれども,要は社会的背景であるとか,売 っている商品であるとか,また,政治的な背景もあったでしょうし,そうい ったことで日本とはだいぶ違っている。今後の議論に当たってはそういった 背景も含めて考えていく必要があるのではないかなと思います。だから,簡 単に英国流を導入すればいいのだというような,そんな判断ではなくて,し っかりと議論するということが必要なのではないかというふうに考えます。

次に元 戸大学の刀禰先生からのご質問です。本日のテーマに関連し,昨 日シンポジウムで疑問を感じた 不招請勧誘の禁止を生命保険のすべての商 品(主力の保障性商品を含む)にも及ぼすべきである という説について,

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見解はどうかということでございます。

まず,海外の事情を申し上げます。英国では,不招請勧誘の禁止という規 定があるのですが,非常にレバレッジが効いたものだけに限定されています。

生命保険ではそこまでリスクの高い商品はあまりないようでして,生命保険 に不招請勧誘の禁止が適用されているということは聞いたことがありません。

また,米国にも不招請勧誘があると普段言われますが,あれは電話である とか,FAXに関してだけです。米国ではジャンク

FAX

と言いまして,オ ートダイヤラーという機械を使ってアトランダムに電話をかけて,さまざま な商品の勧誘

FAX

をどんどん送る。そうするとオフィスに月曜日に出てく ると

FAX

の紙が切れていて,本当に必要な書類が届いていないといった相 当ひどいことになっているということがありました。これに対処するための 法でして,この法は訪問販売を禁止していません。

現在,秋田で条例をつくろうという話があって,初めは,何もかも全部禁 止するみたいなことを言っていたのですが,仮にそんなものが入りますと生 命保険に訪問販売を禁止する,おそらくは全世界で唯一の規制ということに なります。これはさすがにないだろうと思います。

生命保険というのは,発表の中でも言いましたが,契約者を多数集めるこ とによってリスクを平準化することが本質であることからしますと,やはり 一定程度新契約の確保というのは重要なことです。

その中で不招請勧誘を禁止するということは,これは業界の存亡にかかわ る,あるいは,生命保険制度が崩壊するかどうかということに近いような気 がします。また仮に訪問販売を禁止した場合にはどうなるかと言いますと,

テレビ

CM

や,新聞広告が生保の宣伝で埋め尽くされることになります。

そうじゃないと保険制度が維持できません。

賛成論者はそういうことにあんまりご認識がない中での議論ではないのか なと推測しております。基本的には不招請販売の禁止というのは今の金商法 でも投資元本がゼロになったうえで,さらに損が出るほどのリスクがある商 品に関して,通常の適合性原則の適用においては適正販売が確保できないだ

(11)

ろうと考えられるものについてのみ適用するというのが法律のスタンスでご ざいます。現行の金商法の現行の考え方を前提として,また現行商品のよう な生命保険を前提と致しますと,不招請勧誘の禁止が適用される余地はない と思っております。以上です。

[司会]続きまして後藤さんに日本大学の岡田先生,あいおい基礎研究所の 島田さんからご質問が来ています。

[後藤和廣]ご質問どうもありがとうございます。まず,岡田先生のほうか らお答えしたいと思います。

ご質問の趣旨は オンバランスシート・キャピタルの調達コストはオフバ ランスシート・キャピタルの調達コストよりも常に高いと言えるのかどう か ,ということです。

ご親切に ハリントン&ニーハウス氏の本を参照されたらどうですか と アドバイスを頂きましたが,この本は,手元に置いてありますが,精読して いませんので,もう少し読んでから再検討するかもしれません。今日は取り あえず,オンバランスシートの方がオフバランスより高いと申し上げており ます。

その背景を申しておきますとオフバランスシートは現行,使われているも のはリスクを特定している。例えばある一定の地震が起きた場合といった具 合に,リスクの大きさがオンバランスシートと違うんで,オンバランスのほ うが高いと申し上げました。しかし,例えばMM理論の背景になっているよ うな,理想的なマーケットが出てきますと,ご指摘のとおり,オンバランス とオフバランスのキャピタルコストは一致してくると思います。

ただ,今日の説明は現実の世界から行っていますので,理想的なマーケッ トは存在しないという前提で行っていますので,オンバランスのほうが常に 高いと申し上げました。なお,ハリントンさんの本を見て,再検討を続けた いと思います。

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それから,もう1つご質問がありました。 付加保険料を考えた場合,保 険を利用した方が調達コストが大きくなり,株価を下げてしまうことになる のでは? とのご指摘です。これはもうご指摘のとおりでして,ちょっと弁 解がましくなりますけれども,説明の中で狭義のリスクキャピタルコストと 広義のキャピタルコストを明確に説明していなかったことが原因と思います もので補足させて頂きます。これまでの説明と今から申し上げる説明と多少 違ってくるかもしれませんけれども。

順番を追って説明しますと,非金融会社のマーケットにおける自社の狭義 の資本コストを計算し,その後,広義のリスクキャピタルの調達コストを計 算する。具体的に言うと資本を発行して,いくら掛かるかということを計算 して,その後,保険料のコストと比べることになると思います。比較をする と,ご指摘のように,保険を利用した方が調達コストが多くなることが,有 り得ると思います。

今申し上げましたように,ご指摘の点は,十分には説明していませんでし たけれども,現実には,出てくる可能性があると認識しております。以上で よろしいでしょうか。

それからもう1つ,あいおい基礎研究所の島田さんからいただいています。

ご質問の趣旨は, 昨今の金融危機からクレジット・デリバティブの問題点 が指摘されている。今後,この分野の発展はあるのか,またはなくなるのか,

ということについて展望を示してください ということです。この分野は非 常に揺れている分野でして,私も十分な情報を取っていませんので,あくま でも私見ということでちょっとお話しさせて頂きたいと思います。クレジッ ト・デリバティブのマーケットの混乱というか,クレジット・クランチと言 う現象は相当前から始まっているようです。今年の5月に金融機関の方と話 す機会がありまして,もうその時に,クレジット・デリバティブのマーケッ トはほとんど取引停止の状態だと聞きました。最近は,リーマンと

AIG

の 問題以前に既にマーケットがかなり大幅に縮小していたと聞いています。今 後どうなるのかについては,全く今は分からないですけれども,しばらくは

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市場もほとんどない状態が続くと思います。

今,規制の問題が論議されはじめますけれども,規制の内容如何では,デ リバティブ,クレジットデリバティブは,魅力のないものになるのではない かと思います。将来は全くだめかというと,かなり長い時間がかかるかもし れませんが,この種のものは必要ですから,形や規模が今とは異なることに なるかもしれませんけれども,また,復活する可能性が高いのではないかと,

私は考えています。以上でよろしいでしょうか。

[司会]質問ありがとうございました。

共通論題が いま保険とは何かを考える ということで,江澤先生からは 保険と共済の 境界 というテーマでご報告がございました。企業形態が 変わるだけでこの両方とも異なることはないというようなお話だったかと思 います。

それから梅津先生からは 保険契約の法的性質 ということで,特に強調 されていたのは最大善意という問題だったかと思います。

それから松澤さんの 生命保険は金融商品として規制すべきか というテ ーマでお話し頂きました。結論的に申し上げますとイギリスと日本とは相違 無いというお話を頂けたと思います。

それから後藤さんからは,後藤さんのお考えになられました リスク・サ ービス産業 ですが,この言葉は非常に言い得て妙といいますか,大変よい ネーミングだと思います。恐らく,このリスク・サービス産業というものは,

今後,拡大していくものではないかと思っております。

それから森本先生から非常に面白いご発想で,会計学的な立場も踏まえた 上で保険商品の解約オプションというお話が頂けました。将来的にはそうい うことも考えていかなければいけないのかなと考えさせられました。 いま 保険とは何か考える という,これは非常に重要なことだと思います。

私ども大学に属している人間も保険本質論とか保険学というのをまともに と言ったら怒られますけれども,基本的なことから積み重ねてきていない。

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ある意味,反省をしております。今まさに保険とは何かを保険学という立場 から考える。それから,実務の方も保険とは何かということを考える。こう いうことは大変,重要なことになってきたのだろうと思います。そういう意 味では非常に幅広い,いろいろなアプローチからご報告頂けたとも思います。

十分時間が取れませんで,報告者の先生方に大変ご迷惑をお掛けいたしまし た。ご協力頂きまして誠にありがとうございました。御礼申し上げます。

会場の方々も遅くまでお残り頂き,闊達な質問等いただきまして,本当に ありがとうございました。ますます保険学会が盛会になるようにお祈りいた しまして,本日の共通論題を終了させて頂きます。どうもありがとうござい ました。

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