保険販売の今後を考える
⎜⎜ 創立70周年記念大会シンポジウム ⎜⎜
パネルディスカッションおよび質疑応答
[司会・岡田太志]定刻より15分ほど押しております。引き続きパネルディ スカッションの方に入らせていただきたいと思います。
今年度のシンポジウムでは, 保険販売の今後を考える というテーマを いただきました。全員でミーティングを持ちまして,それぞれのパネリスト にそれぞれのご意見を,またご研究を披露していただいたわけですが,先ほ どの部をお聞きいただいて,ほぼご理解いただけますとおり,いくつかキー ワードと問題が出てまいりました。1つは 情報 の問題であります。そし て, 比較 という問題であります。これにつきましてはミーティングを持 った際にも,われわれは,競争が必要ではないか,比較が必要ではないか,
では,その前提として比較情報はどうあるべきか,ということが重要である というコンセンサスを得たところでありまして,また,本日のご報告にもつ ながったところであります。他に,ベストアドバイスでありますとか,共同 プラットフォーム等の話,また,今日の午前中のお話にも関係する内容です けれども,サービスの品質,品質の比較等のお話もミーティングで出ており ました。
ご承知のように昨年の学会におきましても,またその前もでしょうか,保 険の自由化を検証するという作業を学会で行いました。いみじくもその時に 大きなテーマとなりました保険販売のあり方の問題というものが,今回,再 びわれわれの大きなテーマになったわけです。販売のみならず,高い視座か ら改めて保険制度改革,保険システム改革の意味を考えますと, 自由化 ないし 改革 という言葉がしばしば使われてきたわけですけれども,おそ
らく自由化とか改革は,それを行うことそれ自体が社会にとっての目的では なくて,おそらくそれは社会にとって何らかの目的を達成するための手段,
ないしは何らかの問題を改善するための手段であろうと考えます。ならば,
自由化の時代を迎え,果たしてわれわれがかつて議論したような社会,ない しは市場構造,市場成果を,われわれは今日,実現しているのか否か。実現 していないとするならば,それはなぜなのか。おそらく,保険の販売につき ましても,そういったところから問われていくのであろうと考えます。おそ らくキーワードといたしましては, 情報の問題 。そしてまた,抽象的な表 現でございますけれども,いわゆる不払い,未払いの問題にも見られますと おり,自由化による市場透明性の低下という問題も重要と考えます。それで は引き続きましてパネルディスカッションの方に入らせていただきたいと思 います。
[出口治明]最初に,規制緩和と規制強化ということ,この2つの問題を指 摘したいと思います。
私は,正しい比較情報を得るためには,材料をマーケットに出さなければ いけないと。つまり免許事業であれば,約款と保険料表をオープンにするべ きだと思います。でもそれは,メーカーサイドのインセンティブが働かない のだから,むしろ行政が強制すべきだと。こういうことを監督官庁にも申し 上げたら,大きい流れは規制緩和ですから,規制強化というのはどうも気が 進みません,というお答えをいただきました。
ただ私は,大きい流れで規制緩和になるのであれば,それは保険業法改正 の精神そのものである,あるいは1940年体制から金融を自由な世界へ移して 商品・サービスの競争に資するのであれば,規制強化もあり規制緩和もある 中で,全体として緩和であればいいのではないかと,こういうふうに考えて いますので,今日の私の提案は約款と保険料表を強制すべきだと,規制強化 につながるようなお話をしたのですが,それは大きく規制緩和ということを 唱えているという文脈でご理解いただければありがたいと思います。
[樫原英男]今のお話で,私が勤務している日本生命の例でいきますと,約 款についてはホームページ上で開示されています。契約のしおり等も開示さ れておりますので,商品の内容という意味では十分ご理解いただけるような 情報提供はできていると思っておりますが,保険料表については開示をして ございません。日本生命で開示しているのは商品の提案画面というか,年齢 とかを入力いただいて保険料を計算いただく,画面は
HP
で提供していま すが,その前提となる保険料表については開示をしてございません。今日のご報告にもありましたように,生命保険というのはいろいろな要素 がご指摘のとおりあると思います。年齢・性別によって違いますし,商品に よってももちろん保険料は違います。あと保険期間,保険料の払込期間とか 保険金額,いろいろな要素があって保険料が決まっていますので,ご説明に もあったように保険料のレートも一律ではありませんので,なかなか料表か ら実際のコストである保険料と解約金を正確に導き出すというのは非常に難 しいと思っております。
今日ご発表いただいたように乗合代理店の方が代理店として情報を入手い ただいて,その情報というのは,例えば,提案書といったものをベースに作 成されていますので,販売条件の中で正確な保険料が導き出せると,こうい うことになっておりますが,具体的な料率,料表というのを開示して,それ が誤解なく正当な保険料として表示をされるかどうかというのが非常に私ど もとしては懸念をされるところかなあと,そういうふうな課題認識を持って ございます。以上であります。
[司会]亀甲さん,実質的な比較になっていないというご発言があったかと 思います。今のご意見についていかがでしょうか。
[亀甲美智博]日常生活の中で,われわれは毎日いろいろなものを比較して 商品を購入しているのだと思うのですね。スーパーに行きましても百貨店に 行きましても,日常生活の中で選択をしているわけですね。大きなテーマで
言うと職業の選択も,それから最初は大学の選択も,人生そのものが選択だ らけですね。毎日選択しています。しかしながら保険というものの選択をす る時に,ではわれわれにどれだけの金融リテラシーがあって,それを理解し 得て序列をつけて選ぶことができるかというと,それは日常の買い物とは違 いますから,なかなか一般の消費者の方がそういうことができるということ はないと思うのですね。
そこで比較情報の中に,私は2つ性格があると思います。1つは定量的な ところの比較。もう1つは定性的な部分の比較で,それがごっちゃに議論さ れるものですから,比較すること自体が,本来は難しいという議論で終わっ てしまうのですけども,少なくとも定量モデルに関しては条件をそろえてし まえば比較がしやすくなると思うのです。それには先ほど日本生命さんのご 説明の中に,商品をシンプル化して分かりやすくしたというお話がありまし たけども,全部それを,医療保険の特約をセットにしてシンプルにしてしま うと,まさに個別のものが見えなくなって,逆に比較しにくいというような 問題が起きてきて,意図しておられることと実際の消費者が感じる部分が,
落差が生じているのではないかなという気がしまして。特に定性的な比較を どうするかというのが非常に難しい課題です。
私どもでも,先ほどお見せいたしましたシステムは,もうシンプルに基本 の部分だけ,もう枝葉を全部捨ててしまって,逆にあれは捨てる技術だと思 っております。どんどん捨てて,幹の所だけでまず比較をしようではないか と。で,パターンが50パターンあっても幹だけで比較をすればある程度のラ ンキングが見えてきて,大変失礼な言い方ですが,下位のグループの所を比 較しても,もう幹が最初から根本的に違えば比較の対象にならないだろうと。
であるならば,幹の太い,強い,上から5本の木を見つけてきて,それに枝 葉を付けて,あとは各社の設計システムがありますから,代理店サイドとし ては最終的には各社の情報,きちっとした商品の情報を入手して5つ,もし くはもっと絞って3つぐらい,ベスト3の幹の所の情報を出せば,少なくと も大きな選択の間違いは起きないだろうと。こういうやり方で私どもは考え
ておりますが。少なくとも量的な部分はこれで解消が可能ではないかなと思 っております。
あと,定性的なところも,先ほどは出口さんが約款の開示というお話をさ れましたが,おそらく契約者の方に約款を配っても読む方はほとんどいらっ しゃらない。この中に約款を全部読んだという経験のある方はいらっしゃる でしょうか。多分,いらっしゃらない。あ,いらっしゃいますか。奇特な方 だと思うのですね。ほとんどの方はこれを読まないと思うのです。それを逐 一,星取表のように比較表をつくったからといって,では,この保険会社の 約款でいくと,これは給付金の対象になるけど,これはならない,という星 取表をつくって,それで正しい情報として判断ができるかというと,これま た非常に難しいですね。
ですから私どもは定性的なところもある程度お客さまのニーズを聞いて,
ここからが私は乗合代理店の存在意義だと思うのですけども,各社さんの対 応について経験や情報の集積によりまして判断ができますから,そこで営業 としての役割,乗合代理店としての役割が発揮できるのであって,今の乗合 代理店というのは,そこまでまだ至らない。定性的な部分も全くできていま せんし,その前の定量モデルも全く解決できていない。それは先ほど,代理 店側の責任ではなくて保険会社がそういうのをつくらないからだというよう な,少し過激な話もしましたけれども,それはこれから一緒にどうやったら 保険業法の精神である消費者保護という観点から,業界として何ができるの か,代理店として何ができるのかということをこれから進めていかなければ いけないのかなというふうに思っています。
[出口]2点コメントしたいと思います。世の中にある商品で100%比較され ているものなんてないのですね。正しい比較というのは,森の姿がきちんと 見えればいいわけで, 個々の木々まで書いてないから,これは不正確 な んてことは言えないのではないか。保険業法の求めている比較というのは基 本的にはきちんと大元を誤解の与えないようにしなさいということで,ほか
の商品にはあり得ないことを保険業法は求めていないと思います。
2点目は,私も業界人ですが,約款というのは機能ごとの約款で,亀甲さ んが言われたように医療特約ではなくて,その内訳も通院とか手術とか全部 個々の約款で構成されている訳です。その個々の約款に対応した保険料を開 示して,消費者はどれだけ誤解をするのでしょうか。約款と保険料を対比し て開示すると消費者が誤解をするとか,かえってまちがった情報を与えると いうような話はときどき聞きますが,私には全く理解できない話です。ここ のところは皆さんも多分同じだというふうに思いますけれども。
[樫原]今,比較について一定の割り切りがあればいいと,こういうお話を いただいているかと思うのですけれども,まさにそこだと思うのですね。今,
亀甲さんからお話しいただいたように,なかなか支払いの条件まで,すべて 完全に比較することなんてできないということかと思います。
今日の比較の中でも,例えば配当の有無とかというのは比較表には入って おりません。現状のように低金利下においては,配当の状況というのは,あ まり実際に影響はしてないのですが,長期の生命保険という意味においては 金利水準の変動に応じて配当がなされるというのは今後,今みたいな低金利 水準が続くかどうかということもありますので,今後大きな影響を持ってく るということもあります。従って,要は幹の部分をどう判断するのかという のは非常に難しくて,今おっしゃっていただいたように,まさにそこがノウ ハウで,その知恵の結集が今日ご披露いただいたものというふうに思ってお ります。
ここの,幹をどう判断するのかというのは本当に難しいと思っていまして,
比較表というのはわれわれが販売する上では非常に強力なツールなのですね。
比較表を出して ベスト3です とか, これが人気ナンバー1です とか,
売れ筋です という話をすると,ほとんどの方というのはその先入観で,
この商品はすごく良いね という話になります。したがって,比較をする 前提を,どう幹の部分をそろえるかというのは非常に難しいのですけれども,
そのことが公正にされるかどうか,今やっていただいているように,公正に 常にされるかどうかというのが極めて難しいので,なかなか一律的にはいか ないということで現状に至っているのではなかろうかと,こういうふうに理 解をしております。
[司会]他にありますでしょうか。
[大塚英明]おそらく今日の私以外の方々の発表で,比較情報という話題が 深まったことと思います。ただ,僕は,比較情報の 開示 のその後がある と思う。つまり,比較情報を開示して消費者がそれを認識しても,保険の場 合はかなりの度合いで情報を咀嚼する能力を持たない人が多いと思うのです。
例えば,情報開示の分野で進んでいると思われる金融商品取引法では(そ の論理が今,保険にも導入されようとしているわけですけど),適合性の原 則というのがよく言われますよね。プロ・アマ論議とか適合性の原則とか言 われるとき,金融商品取引法の場合には商品特性から,そのことがしっかり 当てはまるわけです。つまり,投資家のうち,プロとアマをはっきり分け,
プロの場合には こんなことまで開示しなくてもいいんだから というよう に論議を進めている。あるいは募集形態にしても,私募と公募を分け,情報 開示の徹底は公募の方が厳しいだとか。そのような話が金融商品にはぴった りと当てはまります。しかし,家計保険の場合,プロが買うということはま ずない。家計保険を考えたときに,基本的にはみんなアマなのだろうと思う のですね。そこで例えば適合性原則を入れようと言ったとして, じゃ,言 わなくても分かってるってヤツはだれなんだ。もともとアマばっかりじゃな いか ということになってしまうわけですね(だから,保険販売で論議され ている適合性原則の導入というのは非常におかしいのではないだろうかと疑 っているのですが)。
もっと言えば,保険の商品の特性として単純に言うと,情報開示をした後 に,その情報を説明する人がいないと分からない。ここのところにいろいろ
問題が,トラブルが出てくる一番の原因があると思うのです。開示をした,
さあ,これでどうだ で済むのでしょうか? 例えば,先ほどの亀甲さん のサイトは私すごいなと思って,憧れを持って見ているサイトの1つなので すけどもね。私は,残念ながらパスワードがないので入れてもらえないので すが…。今日見るとあらためて おおっ と思ったのです。だけどよく考え てみると,いかに亀甲さんが条件設定を細かく工夫しても,極端な話, だ から何なの? と感じるのです。 だから最終的にはどうしたらいいの?
という決断が分からない(亀甲さんすみませんね,言い方きつくて…)。
これって払い込んだ分,返してくれるの? 60歳まで行ったら投資効率 すごく良いんだよね と認識できたとします。でも,そのことを何と比較す るのでしょうか? 家計保険の購入者は,投資効率がすごく良いのがいいの か,はたまた年々の保険料が安いのがいいのかの比較判断さえできないわけ ですよね。そこのところが,例えば投資商品に関して言われるような投資家 とはまったく別の人が家計保険を買うのだと思うのです。そのような意味で,
開示の 次 に何かがあると…。今まで法律の分野で俗に 説明義務 とか 言われてきたもの(義務という言い方はおかしいと常々感じているのですが
…),そこに問題があるのだろうと思うのですよ。契約者が例えば代理店の 情報分析を信頼して家計保険を買ったという場合,まさに情報開示の 次 が表面化するんだろうと思っています。
[出口]私は保険料表と約款をまず開示しろと言ったのですが,一時期は生 命保険文化センターとか生命保険協会の中でプラットフォームをつくるのが 多分,理想のような気がしていました。でも,数年前に亀甲さんにお会いし て意見が変わりました。考えてみたら今までの発想はメーカー主導で,メー カーがどういう開示が正しいだろうかと考えるということです。それはそれ ですごく大事なことだと思いますが,保険商品やサービスを消費者を中心に 考えるべきではないかと。きのうお会いした名古屋の
FP
の方は,約款と保 険料表が手元にあったら,私のお客さまには私がきちんとアドバイスができる,そういうマーケットの中には知恵がある方がたくさんいらっしゃる。そ うであれば開示した後は,生命保険文化センターとか生命保険協会がプラッ トフォームをつくる努力とあわせて,マーケットの中におられる亀甲さんの ような代理店の方,あるいは
FP
の方,あるいは今日集まっていらっしゃる ような大学の先生方が切磋琢磨して良い比較表をつくっていく,それが市場 化というものではないだろうかと。そのためにも情報開示というのは最低限 の義務ではないかと,私は思います。開示したものを良くしていくのも競争 原理が働くべきではないでしょうか。いかがですか。[亀甲]ありがとうございます。プラットフォームをつくるというのは私も 前から出口さんにもお話ししておりましたし,生保業界が金融業者として自 ら情報開示をしていくというスタンスに立つならば,これは生命保険協会と いう一つの団体をお持ちのわけですから,ここで問題を協議して,どういう かたちで一般消費者に保険情報を出したらいいのかということ,これはやは りやるべきだろうと思うのです。実際やっておられるかどうか知りませんけ れども,今現在はまだ実現していないというところを見ると,いろいろな困 難な問題があると思います。と言いますのは当然,情報を出すということは,
そこにランキングが出て,自社の商品の優位性が発揮できる保険会社さんは 積極的になるだろうし,そうでない保険会社さんは逆にそういうことを阻止 したいと,これが人間の情だと思うのですね。という中で利害が対立して進 んでいないというのが現実ではないかなと思います。
片や,乗合代理店という制度が1996年からスタートして,もうすでに10年 以上経過しておりますけども,この業界の中でもこういう流れができていな い,これも問題だと思います。こういうシステムを私どもだけがやっている のではなくて,あと数社同じようなシステムをつくってやっております。と ころが,これがなかなか普及しない原因がいくつかあります。それは代理店 サイドにも大きな問題があるのです。と言うのは,情報が全部開示されてし まいますと,今月のキャンペーン商品が売れないのですね(笑)。全部のラ
ンキングが出てキャンペーン商品が5番目に位置すると困るのですね。それ をお客さま情報で出したくない,こういうことが大きいのです。
それと,このシステムは私どもだけで使っているのではなく,実はクラブ をつくりまして全国の代理店さん,現在,約100社ございますけども,トー タスクラブというクラブを私が主宰をしまして代理店さんに,要は情報を提 供しております。加入するときの唯一の条件は,保険会社の代理店ではなく,
お客さまの代理店としてお客さまに最適な情報を出すという,この志だけで つながっているグループなのですけども。中にはですね……中にはと言うよ り圧倒的に多いのですが, このシステムの中に手数料のランクを入れてく れ とか, これを売ったらいくら儲かるか という手数料のランキングを 出してくれという不 と言うか,とんでもない代理店が多いのですね。なぜ そういうふうになっているかというと,実は代理店経営が非常に今,苦しく なっているという問題があります。
あまり本題と関係ありませんけど,乗合代理店が抱えている問題の中に,
複数の保険会社を扱えば扱うほど,困難な状況に陥るという現状があるとい うことを認識していただきたいと思います。と言いますのは,私どもは25社 扱っております。当然,ランキングは出て,上からお客さまが選択していく と,下の保険会社を選択するチャンスはほとんどないのですね。ところが保 険会社は当然,代理店に対して商品を販売してもらいたいですから圧力がか かります。 年間,これだけやってください と, 年間,これだけの売り上 げをつくってください と。そうしますと,代理店は悪いと思っている商品 を売らないといけないというジレンマが起きてきます。それができない代理 店,私どもはそれができないので,うちの息子たちに一生懸命医療保険入れ て,業界用語で 自爆 と言うのですけども,資格を維持するためには,そ れをやらざるを得ないと。 父ちゃん,またかい? と息子が言うのですよ ね。
また,保険契約は,25カ月は維持しないと,これまた継続率という大変な 指標がありまして,手数料のランクが落ちてしまう。5ランクぐらいあった
りするのですね。手数料のランクが一番上だと,一番いいコミッションをい ただけますが,下になると半分以下になります。そのランクに1回落ちてし まうと,這い上がることができないのです。最初から半分以下の手数料と分 かっている商品を, いくらパフォーマンスがいいからといって売るか?
という問題です。
代理店はいつもこういうようなしがらみと,それと良心と闘いながらやっ ているのですが,この解決策は1つしかないのです。それは私どもが開示す る情報を使って,一切,コミッションを見ないで営業する,これしかないの です。これができるかどうかというところなのですが,なかなか今の経営環 境下では踏み切れないという代理店が多くて仲間が増えていかないのですね。
こういう志の高い代理店は,全国にいっぱいあると思うのですが,保険会社 との力学において,それが維持できなくなっているということで,代理店サ イドでもなかなか情報開示に対しての動きが進んでいかない原因がここにあ るのかなと思います。
[北尾敏明]お隣の業界のことを非常に興味深くお聞きしていたのですけれ ども。損保でも最大の商品である自動車保険については,いわゆる機能に応 じた価格の比較というのは今,かなり正確にできるようにはなっているので はないかなと思っております。その中で先ほどもお話ししたようにダイレク ターのプロフィッタビリティーは,非常に厳しい状況にはなっているのです が。
一方で,機能と価格と言えば,例えば価格.
com
とかの比較サイトで,い ろいろなコモディティや家電商品等を皆さん買われるときに一覧で比較して 見られる,そういうサービスは,ECサイトにいろいろあるわけですけれど も,保険のダイレクターで言うと,品質面の比較というのは非常にしにくく,また出せないというところで,これから ダイレクターでも品質がいいのだ よ という情報をどうやって出していくのかが,われわれの業界では今後の 課題かなと考えております。単に機能と価格だけではないのだというところ
を皆さんに知っていただきたいと考えております。
[大塚]いろいろ出てきたところで,先ほどからもやもやとした疑問があり ます。いわゆる 製販分離 では,まず製造サイドの情報開示が存在すると 思います。それでは亀甲さんのところは製造サイドが開示した情報を単に 整理 しただけなのでしょうか? 亀甲さんの努力は 整理の努力 に過 ぎないのでしょうか? しかし,製販分離を徹底して理解すると,亀甲さん のところから発信される比較情報が,新たな情報開示としての意味を持つ可 能性を秘めている。つまり代理店・販売者としての独自の情報開示という価 値ですよね。それは,製販分離を徹底して,それぞれの情報開示を区別して 捉えることにかかっていると思います。亀甲さんのところと言うのは,やは り代理店としての販売者独自の情報開示ですよね。
[亀甲]おっしゃるとおりです。ああいうふうに皆さんに見ていただいたフ ォームを決めるために何年もかかっているのです。今日はゆっくりお見せで きなかったのですが,例えば個人のがん保険というのをやると収まりきれな いのですね,その比較する情報が。ですからあの倍ぐらいの画面をスクロー ルして,もっと横長の比較表になっているのです。と言いますのは,保険会 社によって最初からパッケージになっていると,着脱不能なものがいっぱい 出てきます。それをどう処理するか。要するに条件をそろえない限り比較が できないとするならば,着脱できない保険会社は比較の対象にならないと。
それでは商品選択に非常に困るということで,その情報も入れた上で判断を お客さまに委ねるという手法しかないのですね。ですから,正しく情報を提 供して判断してもらうためには,正直言いまして約款のすべての条文を入れ ないと正しい情報ではないということは認識しています。
しかし,情報の過多は決して正しい判断につながらないというのもまた現 実だと思うのです。それを絞り込む技術,さっきは 捨てる と言いました けども,代理店サイドはそれを絞り込んでいかなければいけないのですが,
それは最大公約数的なところの論理を入れていくしかない。多くの方が知り たい情報,多くの方がこれをもって判断するという,優先度の高い情報をそ の中に入れていくということにせざるを得なくて,おそらく出口さんも先ほ どおっしゃっていたように, これで全部正しい情報がつかめる というよ うな情報開示も比較情報もないと思うのです。どこかで恣意性と言いますか,
代理店サイドでつくれば,その代理店の考え方が出てしまいます。ですから 私どもでは解約返戻金のデータをいれております。契約者が,自らの意思で 保険会社からお金を取り戻す技術というのは解約返戻金しかないのです。
保険というのはある意味,丁半ばくちです。毎月,保険料という掛け金で すよね。これは掛け金と言いますけど,ばくちの掛け金と似ています。掛け るのです。死ぬ方に掛ける。病気になる方にずっと掛け続けて,最後まで死 ななければ胴元の保険会社さんが,ぐーっとかっさらうという仕組みですね。
これが保険の基本的な仕組みなのです。しかし,そこに死ななくても,病気 にならなくても回収する技術を入れようとすると,先ほど言いました解約返 戻金,キャッシュバリューを使って,自分のお金を意図的に戻すことができ ます。それを優先するのか保証を優先するのか,これはお客さまの考え方で,
われわれがそこに立ち入ることはできない。しかし,その理論,ロジック,
投資回収理論に基づいて保険を選択するならば,こういう方法がありますよ と。それには解約返戻金を入れて,回収率を入れて,それは60歳で回収した 方がいいのか,死ぬ間際に回収した方がいいのか,またまた考え方はいくら でも出てきます。
あえて言いますと,先ほど60まで払ってという話をしましたが, いや,
そんな長く払いたくない。私は50で払い終わって回収したい , いやいや,
70で… ,もうそういうふうに言うと無限大にケースが出てきて収拾がつか なくなりますから,こういうシステムにおいてはある程度 あたりをつけ る というところで収めないとしょうがないですね。あたりをつけて近似値 のところを打ち出して情報を取り出して,各保険会社さんの正しい情報に接 続して,それで比較をしていくと。こういうステップを踏まない限り絞込み
ができないので,先ほどお見せしたものは代理店サイド,ディーラーサイド の考え方で成り立っています。ですからこれをメーカーサイドでもしやると すると,全く違う観点から情報開示がなされると思いますし,ある意味,消 費者はその2つの情報開示を両方から取って,ご自身で自分の考えを決めて いくという,こういうスタンスが望まれるのではないかなと思います。
[出口]Linuxのように亀甲さんにはぜひこの比較テーブルをきちんと世の 中に出していただきたい。もちろん営業の問題があるので,これは半分冗談 ですが。でも,そういうことができれば保険会社の方も対抗して何かをつく るでしょうし,あるいは,きのうお会いした名古屋の
FP
のような方も参考 につくられるでしょう。逆に言えば生命保険業界も比較情報を頑張らなけれ ばいけないと言い出すかもしれません。やはりこうしたデータを公開してい くことによって比較情報についても競争原理が働き,良貨が悪貨を駆逐して いくと,楽観的すぎるかもしれませんが,そう思います。それから,話を単純化するために,約款と保険料表の開示と言っています が,有配当保険については私は当然,解約返戻金も行政が開示を強制すべき だと考えていることを付け加えさせていただきます。
[樫原]情報提供をしていくということについては,まさにそのとおりだと いうふうに思っております。亀甲さんのところでほんとに緻密にされている のですけれども,25社が乗り合っていらっしゃって,これが47社の生命保険 会社の全ての生命保険の中身を理解しながら適切に比較を行い提案をしてい く,この技術というのは非常に求められるのかなあというふうに思いますの で,やはりそういったところの情報だけが出てしまって,勘違いされて,そ れでもそのうちに良くなるというのは,やはり生命保険という長期性の商品 であったり,再加入困難性があったりとか,複雑ですぐに効能を実感できな いといった,今申し上げたとおりの生命保険の特性を考えると,一旦出して しまって,その上で精度を高めていくということはなかなか難しいのかなと
いうふうに思っております。
やはり,乗合ということの40数社,私どもは1社の商品しか扱っていない わけですけれども,なかなか自社の商品だけでも,説明をするということに おいてはかなり,やはりスキルが求められますので,そういった募集人のス キルアップみたいな話もございましたけれども,生命保険募集人は,1社か 乗合に関わらず,取扱商品を正確に理解をして説明していく体制,こういっ たものを構築していかないといけないのではなかろうかというふうに思いま した。
あと1点だけ少しご説明をさせていただきたいのですけれども,生命保険 の募集人は100%に近い合格率だというお話がございましたけれども,私ど も日本生命の取り組みでは,最近は業界でもそういった会社が増えていると 思うのですが,試験を受ける前に会社としての採用試験をやっています。会 社としての採用試験に合格した方,それにプラスして適正試験を行って,そ の後,2週間きっちり研修した上で試験を受けさせている,こういった背景 もございますので合格率というのは高まっているのかなと考えております。
いずれにしましても,そういった取り組みをしながら募集人の資質というの をしっかり高めていって,いろいろな情報を適切に提供できる体制を整えて いかないといけないというふうに思っております。
以上です。
[亀甲]情報を,先ほど定性,定量というお話をしたのですけど,もう1つ 実は 裏情報 というのがあるのですね。お客さまの知りたい情報の中で,
この保険会社,大丈夫ですか? とか, 私4年前にがんになっているので すけど入れますか? とか,
BMI
,26.3なのですけど… とか,いろいろ なやり取りをしながら商品を最終的に選んでいくのですが,必ずしも保険料 でもない,必ずしも品質でもない。 入れる保険会社はどこですか? とか。でも,A社は駄目でもB社は
OK
というのが実際にあるのですね。こうい うのは,各社毎の内規だと思います。ですから約款に書いてない情報というのもあるのですね。
この情報は経験値の高い営業マンは自らどんどんそれが蓄積していて,お 客さまがそういうご自身の体調の問題とか希望を言われた時に,先ほどのラ ンキングを出して, この保険は一番ですけれども,お客さまはこれに入る のは大変です。この保険会社では引き受けないです。でも,5番目のこの保 険会社さんでしたら,実はがんになったという告知を,5年経過したら告知 しなくていいんです。 という会社があれば,5年経過すればがんになった 方でも入れる医療保険があります。そういう情報をわれわれは知っています ので,お客さんに応じて臨機応変に……これが乗合代理店の役割,本来の役 割ですね。この情報はどこにも書いてない。だれも教えてくれない。各代理 店が一生懸命自分で囲うのです。その情報を私どもはこれからオープンにし ようと思って,今日は時間がなかったのでお見せしませんでしたけども,定 量モデルのほかに ノウハウ集 というモデルを今つくっているのです。
各保険会社の横比較をして,例えば 妊娠26週の方が入れる保険会社はど こか とか,各社の約款を分解して,それを横比較するようなモデルをつく っています。こういうモデルがなかったら乗合代理店は基本的に正しい情報 をお客に伝えることはできません。聞かれてから調べに行くようでは,25社 の保険会社に電話していたらお客さん帰っちゃいますね。こういう裏情報 と申し上げましたが,実は情報の中にはそういった情報もあって,これをど う処理するかというのは,これは保険会社もできない,代理店サイドで共通 のネットでやるというのもなかなかできない,こういうものも情報の中にあ る。だから,皆さんが保険に本当にいい商品を入手したいと思ったら,そう いった経験値が高くて,できるだけ多くの保険会社を扱っていて,きちんと した情報,そういう情報が出るような,一言で言いますとうちみたいな会社 に⎜⎜(笑)来ていただくと一番…。PRさせていただきました。
[大塚]今,亀甲さんがおっしゃったことと深く関わるのですけど,先ほど 私が申しました情報開示の 次 というのは,亀甲さんがおっしゃるコンサ
ルに当たる部分ではないかと思うのです。亀甲さんのところに来た消費者に,
亀甲さんが じゃ,今やりますから… って見せた段階では,まず情報開示 ですよね。ところが,消費者が わたし4年前にがんやったんですが って 言った場合,締約前のがんが大丈夫な保険と大丈夫でない保険がありますか ら,それらを取捨選択する。その上で比較情報を提供していくと,どんどん コンサルに踏み出していくことになる。ここに開示情報の 咀嚼 が行われ るきっかけがあるのではないかと思っています。
保険業法自体は平成7年の改正の時に,ブローカーという募集人を想定し た設計を取り入れました。ブローカーが家計保険分野にも大量に進出してく るだろうと考えたのですね。私がシンポジウムの発表でも申し上げた賠責も ブローカーについてはこの時に保険業法で法定されました。ところが,この 間の事情はよく知られていると思いますけども,ブローカーは家計保険には 全く進出しなかったという日本の状況がございます。だからこそ私は現行保 険業法,せっかく平成7年に改正されたけれども,この点では手落ちがあっ たのだろうと思います。ただ,コンサルを行う主体こそブローカーを念頭に 置いていたとはいえ,保険業法自体,家計保険にコンサルを導入することそ のものは認めていたんだろうと思うのですよ。
情報開示の 次 ,コンサルを考えるとき,現在はどうなのでしょうかね。
やはりブローカーはできても代理店はできないのでしょうか? 亀甲さんが 今見たような,コンサルティングに入った途端に,代理店では禁止されてし まうのかどうか…。やはり,コンサルはやっていい,いやそれ以上に,やる べきなのでしょうね。代理店という販売チャンネルこそ現在は主流なわけで すから,ここにコンサルを禁止するというのはやはり違和感がありますよね。
代理店はコンサルをやってはいけないのでしょうか?
[亀甲]いえいえ,そういうことはないと思いますね。コンサルティングと いうのはようするにお客さまのニーズと言いますか,要求をきちっと受け止 めて,それに対してファイナンシャルプランニングという立場も当然ありま
すし,保険という立場だけではなくて,総合的に人生のゴールに至るプロセ スを保険という金融商品を使って,どういうふうにリスクマネージメントし ていくかという技術ですから,当然それには税制も絡めば,日本の福祉制度,
こういったものもベースに出てきますので,総合的なコンサルテーションの 能力がなければ,商品の販売業だけになると, 掛け捨てでこれが一番安い から,これでいいんじゃないですか? という乱暴な販売手法になってしま います。
私はコンサルテーションの部分は経験値を含め,個人的な能力に負うとこ ろが非常に大きいと思います。ただし,商品を選定していく,絞り込む技術 においては,これはほとんど
IT
の技術を使ってできる世界だと思っていま す。ですから作業の部分,これは実際の話ですけども,相談に行かれてその 場で商品が決まるということは基本的にないのです。決まったらおかしいの ですね。と言うのは,データベースを持ってない限り,その場で優劣を出す ことはできませんから,ほとんどの相談する場所は,1回目の話は情報だけ 取って,お客さまが帰った後,一生懸命作業をやります。試し打ちというの をやります。 ああでもない,こうでもない をやるのです。保険会社の数 が20も30もあったら大変な作業になりますが,その知恵は1回ずつ必要なの です。Aさんのためにつくった,試し打ちしたデータはBさんのためには使われ ません。その知恵は捨てられます。ということでいつも知恵が無駄になって,
作業,作業,作業ですから,生産的なコンサルテーションの世界になってい かない。その部分を
IT
の技術を持って数量的な処理をして,それで定性的 な部分もできれば処理ができるようになればコンサルテーションの世界は一 気に高まって,販売する側の代理店のパワーも上がるし能力も上がるのでは ないかなと思っております。コンサルテーションは必須項目だと思います。[司会]ありがとうございます。議論は尽きませんが,パネルディスカッシ ョンの時間が随分押しておりますので,続きましてフロアとの質疑応答の方
に移らせていただきたいと思います。
まず質疑応答の初めに,いただいております質問票に関しまして,時間の 関係でまとめてお一人ずつお答えいただいて,その後,フロアと質疑応答を させていただきたいと思います。
[大塚]まず私からご回答をさせていただきたいと思います。いただいた質 問の中で一番多かったのは,大塚が2番目に考えた, 保険会社独自の責任 というのはどういうことだ? というご質問を大分いただいておりまして,
ご質問状の中には そんなものはない というご意見もございました。端的 に申しまして,私自身,その点を詳しく書けなかったのは,自分自身の中で まだ理論解決してないからなのですけれども。
ご想起していただきたい事件がございまして,地震による火災は火災で持 たないという,ありましたですね,アレ,かなりいろいろなとこで訴訟が起 こりまして。で,面白いことにあの訴訟に代理店は全然出てないのですね。
地震による火災は火災では持たない,地震を直接の原因とする火災は地震特 約を付けとかなければいけない。地震特約というのは自動付帯だから入って いるのが当然だろうというのが裁判所の考え方で,それはまず契約者と保険 会社が原告,被告になって争う事件ばっかりだったのですが,一方の判決は,
そんなもの,そうなってるのに読まない契約者が悪いに決まってるじゃな い と言っているものもあります。
ところが逆の結論をとる判決の場合,あるいはこの種の訴訟で原告側の主 張というのは必ずそうなのですが, 保険会社はそんな分かりにくいものつ くって,どうしてくれるんだ。見たって分からないじゃないか 。代理店が 売っているのに,この場合代理店の説明義務は一切問題にならない。つまり,
この事件を想起していただくと,保険会社独自の責任というのは分かってい ただけると思うのです。
先ほど私,複雑な約款規定であればそうなるだろうと言いましたけど,複 雑でも何でもありません。つくった者・保険会社にとっては簡単なのですけ
ども, 世間に全く受け入れられないぐらいボタンの掛け違いがある約款 という意味です。私の言う 複雑 というのは,細かいところで複雑という ことではなくて,保険会社の常識は世間に通じない常識,そういう約款があ った場合ということを申し上げたらよろしいでしょうか。この責任をどう構 成するかについて,私まだ一生懸命考えている最中ですので,確定的には申 し上げられなかったということでございます。
[樫原]ご質問いただいていました,商品をシンプル化して保険料を一定に する,要はリスク細分化型みたいな商品の方が比較はしづらいのだけど,お 客さんにとってはいいのではないかというご意見と,あと,商品について協 会で一定の型みたいなものをつくって,それに各社がプラス
αで保障を足
していくことで競争してはどうかと,こういったご意見をいただいておりま す。現在,保険会社における商品開発というのは,各社いろいろなデータとか を基に工夫をしながらつくっていて,それが市場に受け入れられるかという ことで競争しているというのが現状であろうかと思います。今日ご紹介させ ていただいた3大疾病保険なんかも,平成4年に初めて生前給付型というこ とで導入されたわけですけれども,ご覧いただいたように少し分かりづらい 面もあるのですが,実際,発売以降多くの支払実績がございまして,販売現 場での経験としても,お客様から大きな病気をして非常に保険金をいただい て助かりますということで社会の役に立っているのかなというふうに実感を しております。したがいまして,今後とも分かりやすい商品,かつ,保障内 容が充実した商品というのを提供していくべく研究開発をしていかなければ いけないなというふうに思っております。
以上でございます。
[亀甲]2つご質問をいただきました。1つは, そういうふうに比較をする ということが一般化して,消費者が情報を取るようになった場合に,保険会
社さんもいろいろ工夫をして,商品の多様化というのが起きますか? とい うご質問をいただきました。これはまさにそのとおりになると思います。と 言うのは,今現在,先ほどの出口さんのアンケート調査を見ると,68%の方 が購入先を単一の保険会社のセールスの方からお買いになると。こういう動 きが多分,大きく変わって,ご自身で選ぶようになると。 医療保険はこの 保険会社で買いましょう , 終身保険はこの保険会社 。こういうふうにな ると大きく仕組みが,販売のあり方が変わりますから,当然,保険会社もそ れに対応した手を打っていきますので,さまざまな商品,今まで世の中にな かったような対応というのが,起こり得るのではないかなと私は思います。
もう1つのご質問は,3番目のプレゼンテーションの中に,実質保険料ベ ースで60歳時点の解約返戻金と返戻率,そういうのを出しました。片や,ず っと掛け捨てで払うという商品と比較したときに当然,返戻率が高いわけで すから,よく見えますから,実質保険料が安くて済むということで,それを 選択する人が増えるだろうと。しかしながら,それは貨幣の価値という時間 的な価値のものを考慮していないのではないか。ようするに平たく言います と物価上昇率,CPI,消費者物価上昇率とか,インフレ係数とか,そういう ものを加味してないのではないか。だから,正しい貨幣価値で表示されてい ないのではないかなというご指摘です。それはまさにおっしゃるとおりだと 思います。
こういうシステムの限界がありまして,例えばここに年金原価係数を入れ て何%で割り引くかということを選択できるようにして,それを表示すると いうこともやれば,これは技術的なことですから簡単です。しかし,これを やると逆に話を説明する側が,意図的にそれを変えてしまうことにつながる 恐れも出てきますので,あえて一切そういう操作はせずに,お話の中で そ の時の貨幣価値によっては不利になることがありますね という,運用面で 対応できるというふうに考えておりまして,全てをあの中に情報を……例え ば貨幣価値の動きまで入れて表示するとなると,やや説明する側の難しさも ございまして,あの中では入れておりません。ですから金銭の時間軸が違う
とおっしゃるご指摘はそのとおりだと思います。
できるだけ分かりやすいシステムにしようということで,一切,私どもで 意図的な操作はしないで,運用者がそれをどういうふうに表現していくかと いうか,モデルにしております。それが良いかどうかですけれど,私は,例 えば保険について星取表をやったり,AランクとかBランクとか,私どもが 評価したり,そういうことは一切しないモデルにしたかったのです。要する に,ありのままを開示して,それを使う代理店さんなり営業者の方が,どう それを使うかはお任せしたい。でなければ,どこへ行っても同じような話に なってしまうので,やはり個性というものが営業には発揮されますので。こ のモデルは,私は 肉のハナマサモデル と言っているのですが, プロに 素材は提供する。どう味付けするかはその人の勝手 というモデルと考えて おります。
[出口]4人の方から8問いただいたのですが,大きく3つにまとめてお答 えします。
1つは, ベストアドバイス義務について,販売手数料の開示がほんとに 一番いい方法でしょうか? 。私も100%の自信はありません。これは皆さん に問題提起をしたわけで,ベストアドバイス義務を担保するためのニューヨ ーク州法の考え方は優れた考え方の一つだと思いますが,日本の法制でどう 取り組んでいくか,これからの一番大きい問題だと思っているということに 尽きます。これに関連して, 販売手数料の開示なんて,保険業界だけ先走 ってやっていいのか。ほかの業界でこんなことをやっているのか? という ご質問もありましたが,これは現実を見れば,すぐわかります。不動産はい かがですか? オープンにしています。投資信託はどうでしょうか? 銀行 の窓口に行けば変額年金保険も販売手数料を開示していることはご存じのと おりです。
2つ目の質問は 相互会社について世界的に見れば答えは出ているという ことについて,もう少し説明してほしい ということでした。世界の大きい
流れとして,アメリカ,オーストラリア,英国,ほとんどの国で,日本も含 めて相互会社から株式会社への転換例は数多くみられますが,逆がまったく ないということは,答えが出ているとグロスで見るべきだと思います。
3点目の質問は,ほんとにメーカーが複雑な情報をどんどん開示していっ て,消費者に無用のあつれきが生じ,消費者に却って害を及ぼすのではない かというご質問です。私は,これはメーカーと消費者がいかにあるべきかの 哲学観に根ざす問題だと思います。私は,多少のまちがいがあっても消費者 やマーケットは,長い目で見れば正しい判断を下せると思います。メーカー と消費者の役割は,メーカーは基礎的な情報をきちんと出すこと。約款と約 款に対応した保険料と解約返戻金をきちんと出すこと。それを料理するのは 亀甲さんであり,あるいは
FP
の方であるべきです。私は,メーカーの基本 的な義務はきちんと情報を開示し,一所懸命良い商品とサービスの開発競争 をやっていくことに尽きると考えています。良い商品を供給し,良いサービ スで頑張り,それを選ぶのはお客さまです。同じように基礎的な情報を出し,それを加工されるのもマーケットでありお客さまだと思いますし,それが95 年の保険業法の改正の大きい方向であり,グローバルな世界の金融サービス が目指す方向であると,私自身は考えています。
[北尾]今日は一番人気がありませんで,1件もご質問をいただかなかった のですけれど。つらつら考えていて,お隣の業界ではなかなか比較のビジネ スモデルというのが厳しい状況だというお話なのですが。
どうして自動車保険の業界では,保険料比較サービスが10年間も育ってき たのかなあと少し考えてみました。一つは,お客さまの契約手続きのフリー クエンシーが,自動車保険は基本的に1年毎だと。先ほど大手5社の数字の 統計を出しましたけれども,実は大手5社だけで4,000万件の契約がある。
ダイレクター4社では,今300万件ぐらいですよね。ですからダイレクター だけでも300万件が毎年毎年ウェブで皆さんに契約手続きをしていただいて いるわけです。そういうフリークエンシーの問題が大きいのではないか……
実は比較サイトに情報提供するというのは,ただではできなくて,システム 面でもものすごいコストがかかりますので,そういうビジネス上のボリュー ムというのは,保険料比較サービスが普及するためのひとつの前提としてあ るのではないか,というふうに考えました。
それから先ほど生保代理店さんのアンダーグラウンド情報で,どこの保険 会社だったら引き受けてくださるかというような話がありました。生保さん の場合は審査というのがあるので難しいのでしょうけれども,自動車保険の ダイレクターの場合は, 例えば の例ですけれども,損害率の高い一部の 地域にお住まいで,ベンツに1,000万円の車両保険を付けたい,等級も2等 級か3等級だというお客さまの場合,20社の見積もりは絶対取れません。せ いぜい1社か2社。いわゆる地域別料率を採っているような特定の会社しか 保険料見積は出てこない。どこの保険会社が引き受けできるか,これはすぐ その場で分かる,そのくらいお客さまの利便性は高くなっているということ です。
[質問](山野嘉朗)愛知学院大学の山野でございます。
先ほど一部ご回答がありましたが,大塚先生に質問します。私も一番分か らなかったのはレジュメの6ページの,約款が保険会社に有利に解釈される ようなことがあって,その場合には保険金請求が不可能となるが,解釈の混 乱によって損害を被ったとして,保険契約者は損害賠償請求を行うことがで きるはずであるという部分です。約款が有効と判断されているのだけれども,
損害を被ったとして保険会社に損害賠償請求できるのだと。この部分がどう いう法律構成なのかよく理解できませんでした。例えばそのような,解釈の 混乱を招くような約款をつくったこと自体に過失があって,それに違法性が 認められた。その結果,なんらかの損害を被ったというように考えるのか,
あるいは,先ほど地震免責条項のところで説明がありましたけども,説明義 務違反のことをおっしゃっているのか,それとも別の法律構成なのか。
説明義務違反ということなら分かります。こういう免責条項があるのだけ
れども,十分な説明がなかったので損害を被った。免責条項について十分な 説明をしてくれていたら,このような保険に加入するかしないかの判断が正 しくできたのに,それができなかったのであるから,自己決定権が侵害され,
精神的損害を受けた。以上のような場合の賠償請求の可能性は,大とは思え ませんが,あり得ないわけではないでしょう。しかし, 解釈の混乱 とは 何なのだろうか。仮に契約者に不利な免責条項をつくったということであれ ば,消費者契約法10条の適用や,信義則とか公序良俗といった民法の一般条 項の適用により,免責条項を無効として保険金を支払わせるというような法 律構成も可能でしょう。その辺どういう法律構成なのか,教えていただけれ ばと思います。
[大塚]先生がおっしゃったところ,考えてはいるのですけど…。やはり実 例を見るのが分かりやすいと思って先ほど地震の話をしたのです。そこでは 事件における原告側当事者の主張あるいは裁判所の解釈が,先生の今のよう な詳細な分析を加えると微妙にずれてきます。そもそも直接には会社に説明 義務違反はないわけですよね。代理店が直接に契約者に対峙しているわけで すから…。私はそこから深読みをしておりまして,本当に言いたいことは単 なる説明義務違反ではないのではないかと考えております。だって,代理店 がいるのに会社に説明義務違反を負わせるというには,これはようするに会 社自体に何らかの責任根拠があるんだろうと思って,説明義務違反以上のも のがあるだろうと思っております。ですから山野先生がおっしゃった会社の 説明義務というだけで問題を解決できるとは思っていないのですが。ただそ の後,私自身が強気になれないのは,だったらどういう責任だろうかと悩ん でしまうからなのです。今のは,消費者契約法10条の話になりますけど,個 別条項つまり免責条項を無効にするだけで,支払いができるのだったら私は 何でもいいと思うのです,具体的にはそうした処理をするにしても,背景に は会社の 何らかの民事責任 を考えなければならないかと…。
例えばもう1つ例を出させていただきますと,損保会社各社は,少し細か
い話で恐縮ですけど,請負賠償責任保険の管理財物の範囲を非常に頻繁に変 えるのですね。管理財物に入るか入らないかっていうのは,ほんとに時の運 みたいなところがある。それを,ちょうど入らない管理財物に損害が出たと きに, あれ? 何故これ持たないの というケースが非常に多い。それを 考えると, こんなに頻繁に変えるの,合理性があるの? 。会社はそういう 約款の管理財物の範囲を動かすについて合理性がないのだったら,それによ ってちょうど約款改訂の エア・ポケット に入ってしまった契約者は,損 害賠償を請求できる余地があるのではないでしょうか。今の山野先生のお話 について,地震免責条項の説明義務の話と,今の請賠の話は共通項があるの かどうかを現在鋭意勉強中でございます。そのため,ここに書いてあるのが 先生のご指摘どおりあいまいだと言われると,それは申しわけございません と謝るしかないのです…。くどいようですが,おそらく何らかの会社の責任 の根拠があるのだろうと思っております。しかもそれは損害賠償を正当化す るほどの…。
[山野]その根拠は不法行為なのですか?
[大塚]いえ,不法行為にはならないです。不法行為であれば簡単にそれは 出てくるのですけど,不法行為でないから,どこの根拠なのだろうと非常に 迷っているのです。一つ考えているのは,プロダクト・ライアビリティーに ヒントを求める理論構成ですが,まだ…。
[司会]続いてご質問の方はございますか。
[質問](刀禰俊雄)元 戸大学の刀禰です。大塚先生にお伺いします。本日 配布されました赤い表紙の 報告要旨 の5ページの4行目に 所属保険会 社は…損害保険募集人が保険募集につき,保険契約者に加えた損害を賠償す る責目に任じなければならない… とあります。大塚先生がその中で,いく
つかの事例をパワーポンイトで説明されました中に,代理店は何も損害を与 えていないが,判決では,信義則を持ち出して理由付けをしているという趣 旨を述べられましたので,そこのところについて質問をいたします。
代理店から契約更改の時期が近づけば,火災保険なり自動車保険の更改の 案内を送ってきますよね,所管の契約者に対しては更改を取り次ぐという責 任が代理店にはあるだろうと思います。それをお客さんとちょっとトラブル があったからということで,うるさいお客さんだからと放っておいたと。そ の期限切れ後に火事になって契約者が損害を被った事例ですね。それはやは り代理店の不作為による不法行為ではないかと思うのですけども…。その点 についてそういう理解は無理があるかどうかについて大塚先生のご意見お聞 かせいただいたらありがたいのですが…。
[大塚]ご質問状にいただいた,不作為によって契約更改手続きを怠ったと いう責任というのが法律的に何の責任であろうと思ったときに,不法行為で は無理という判断を裁判所が下しました。しかたがないので,信義則違反と いうのを出してきたのですね。私もきっと不作為によって契約更改手続きを 怠ったというのは不法行為にはならないだろうと思っていますので,そこの 点については判例に賛成しております。信義則で行くしかないだろうという ことです。
[刀禰]不作為による責任というのは,本来はないのですか。不作為の犯罪 というのがありますよね。やらなかったことによって,結果として相手に損 害を与えたというのが世の中によくありますよね。そういう点はあまり問題 にならないのでしょうか。
[大塚]いえいえ,ここは具体的な行為としては不作為であった,やらなか ったことが責任の根拠になっておりますが,法律的な根拠として信義則を出 すしかないということです。
[刀禰]どうもありがとうございました。
[質問](小泉孝之)社会保険労務士の小泉と申します。
保険業法が改正された時にブローカーに道が開かれて,今後の比較情報は,
保険会社でなく,保険業界でなく,乗合代理店でなく,やはりブローカーが 提供していくのが最適ではないのかと思っていたところがあります。しかし,
残念ながら家計分野にブローカーは入ってこなかったということなのですが,
大塚先生には,ブローカーが入ってこなかった理由として,どのようなこと が考えられるのかということをお伺いします。
もう1つは, 顧客のための代理店 を目指していらっしゃる力のある乗 合代理店が,どうしてブローカーを目指さないのか,何か障壁があるのかと いうことを,亀甲社長にお聞きしたいと思います。
[大塚]手短に私の方から。
ブローカーについては,やはり当初予定したようなコンサル業務を担って,
契約者のためであるし同時に保険会社の利益にもなるということでやりたか ったのですけど,移行は非常に難しいですね。代理店はやはり会社の代理商 ですのでね。私は常から, コンサル業務をやればいい と代理店業界には 言っているのですけど,そのことで金を取るという発想が全くないのですね,
これまでの日本には。契約者の側も自分の保険にコンサルをしてもらっても 金を払うという気が全くないのですね。これがブローカーという両方から金 が入るという制度が日本に入って来れなかった最大の理由になります。
[亀甲]代理店がなぜブローカーを目指さないか。答えは1つですね。乗合 代理店でやるのもブローカーでやるのも,結局,同じ料率の保険しか販売で きない。ようするに,保険会社がブローカー料率というものを提示していた だければ,これは当然,消費者にとってもメリットがありますから,多くの 代理店がブローカーというものを目ざすと思います。ただし日本では乗合代
理店で,私どもで25社。ブローカーがやっても結果としては同じことができ てしまうというところがあるのではないかなと思います。少なくとも私ども ではそういうふうに考えおります。
[小泉]ありがとうございました。
[司会]最後に。お願いします。
[質問](村田敏一)立命館大学の村田ですが,出口社長にお尋ねいたします。
商品情報に関する比較情報開示と提供の前進ということを訴えられ,そこで は,比較情報開示の中で,商品情報すなわち保険料水準であるとか免責条項 であるとか,そこに焦点をあてておられます。その一方で,特に保険期間が 一般に長期であり,将来債務性を有する生命保険の場合ですと,将来,破綻 せずに保険金を支払って,はじめて販売責任が全うされるという側面もござ います。そうした意味では,保険会社のソルベンシーマージン比率であると か,自己資本比率の水準であるとか,そういう各社の健全性に関する比較情 報開示の前進ということもセットで議論されるべきと考えられます。すなわ ち,健全性水準に関する比較情報開示と,商品内容の比較開示というものは,
いわば車の両輪として,セットで議論されるべきものです。しかし,なかな か,健全性情報の比較開示の前進という点についてはネガティブな意見もあ る訳です。この点につき,やはり,両者はセットの議論であるというふうに 認識されているかどうか,お聞きしたいと思います。
[出口]そのとおりです。なぜ今日は商品の情報に限ってお話をしたかと言 えば,会社情報については
○○生命の現状 という小冊子が出ていますが,
あれを丹念に読めばかなりの程度まで分析ができる程度に情報公開が進んで いると思っています。ですから,会社情報に比べれば商品やサービスの基本 である約款や保険料表の開示があまりにも遅れているので,むしろ追いつく