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イギリス法におけるプライベート・ニューサンスの不動産との関連性

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(1)

イ ギ リ ス 法 に お け る プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ0サ ン ス の 不 動 産 と の 関 連 性 63

〈論 説 〉

イ ギ リス 法 に お け る プ ラ イ ベ ー ト ・ ニ ュ ー サ ンス の 不 動 産 との 関 連 性

ニ ュ ー サ ン ス の ハ ラ ス メ ン ト事 案 へ の 適 用 の 当 否 を め ぐっ て 一

宮 嫡 淳

第1章 は じ め に

第2章 プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス の ハ ラ ス メ ン ト事 案 へ の 適 用 第1節Khorasandjian事 件 の 概 要

第2節Khorasandjian判 決 の 意 義

第3章 プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 不 動 産 と の 関 連 性 第1節Hunter事 件 の 概 要

第2節Hunter事 件 に お け る 貴 族 院 の 見 解 1テ レ ビ 電 波 の 受 信 障 害 に つ い て

2プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 訴 権 に つ い て (1)Goff卿 の 見 解

(2)Hoffmann卿 の 見 解 (3)Cooke卿 の 見 解 第4章 む す び に か え て

第1章 は じ め に

プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス(privatenuisance)と は 、 土 地 の 利 用 も し く

j}

は享 有 に対 して 不 当 に侵 害 す る条 件 また は行 為 で あ る。 こ こ数 年 、 イ ギ リス 法 に お い て プ ライ ベ ー ト ・ニ ュー サ ンス の本 質 に か か わ る議 論 が な され て き た 。 そ の ひ とっ は 、 プ ライ ベ ー ト ・ニ ュ ーサ ンス を不 動 産(土 地)と は離 れ て 一 般 的 な 生 活 利 益 の保 護 法 理 と して 適 用 し う るか 否 か とい う問 題 で あ る。 か か る問 題 の 背 景 に は、 身 体 的 また は精 神 的 疾 患 に及 ぼ な い単 な る苦 痛 を もた らす バ ラ

(2)

64

ス メ ン ト(不 動 産 とは関 係 性 の な い 一 般 的 な生 活 利 益 の侵 害)か ら被 害 者 を 救 済 す る不 法 行 為 の類 型 が 、 コモ ン ・ロ ー に は存 在 しな い とい う事 情 が あ る。

ハ ラス メ ン トの事 案 が プ ライ ベ ー ト ・ニ ュー サ ン ス訴 訟 と して提 起 され た 典

2)

型 的 な事 例 は、1993年 のKhorasandjianv.Bush事 件 で あ る。 控 訴 院(Court ofAppeal)は 、 本 件 に お い て 、 ハ ラス メ ン トの被 害 を受 けた原 告 は、 母 親 の住 居 に合 法 的 に居 るの で あ るか ら プ ラ イ ペ ー ト ・ニ ュ ー サ ンス に基 づ い て 訴 え う る と判 断 した 。 つ ま り、 原 告 が 母 の住 居 と して の 不 動 産 上 に合 法 的 に存 在 して い れ ば、 原 告 は その 不 動 産 との 関連 性 を有 す る と解 し、 ニ ュ,..̲...サンス の訴 えが 基礎 づ け られ る とい うの で あ る。 この考 え 方 は 、従 前 よ り判 例 が 従 って きた 見 解 とは、 一 線 を画 す る。 伝 統 的 な 立 場 に よれ ば 、 プ ラ イベ ー ト ・ニ ュ ー サ ンス 訴 訟 は、 不 動 産 に関 す る権 利 を 有 す る人 に よっ て 提 起 され う る と考 え、 自 由土

3}4}

地 保 有 権 者(freeholder)、 賃 借 人(tenant)ま た は 排 他 的 占有 を 伴 っ た 立 入 権

5)

者(licensee)の よ う な 、 不 動 産 に 関 し て 排 他 的 占 有(exclusivepossession)

s)

の 権 利 を 有 し て い る人 の み が 訴 え る こ とが で き る と解 さ れ て い る 。 そ こ で 、 貴 族 院(HouseofLords)は 、Khorasandjian判 決 で 判 示 さ れ た 準 則 を容 認 し

7)

て 、 原 告 の 不 動 産 との 関 連 性 の 要 件 につ い て緩 和 す る こ とを承 認 す るの か 、 そ

&)

れ とも伝 統 的見 解 を維 持 す るのか が注 目され て いた。 この問題 に応接 した のが

 ラ

第3章 で 詳 述 す るHunterv.CanaryWharfLtd.判 決 で あ る 。

本 稿 で は 、 ま ず プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス を ハ ラ ス メ ン トの 事 案 に 適 用 し たKhorasandjian事 件 を 取 り上 げ 、 ハ ラ ス メ ン トに 関 す る 事 案 が ど の よ う に ニ ュ ー サ ン ス 訴 訟 と し て 主 張 さ れ 、 そ れ に 対 し て 控 訴 院 が い か に 判 断 し た か に つ い て 考 察 す る。そ して 、テ レ ビ電 波 の 受 信 障 害 の ケ ー ス で プ ライ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 訴 権 に つ い て 判 示 したHunter判 決 を 詳 細 に 検 討 す る こ と に よ っ て 、 ニ ュ ー サ ン ス の ハ ラ ス メ ン ト事 案 へ の 適 用 の 当 否 に つ い て 考 究 し、 プ ラ イ ベ ー

ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 不 動 産 との 関 連 性 の 問 題 に つ い て 解 明 し て い き た い 。

(3)

イ ギ リス 法 に お け る プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 不 動 産 と の 関 連 性 65

第2章 プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス の ハ ラ ス メ ン ト事 案 へ の 適 用

第1節Khorasandjian事 件 の 概 要

ハ ラ ス メ ン トの 事 案 で あ るKhorasandjianv.Bush事 件 に プ ラ イ ベ ー ト ・ ニ ュ ー サ ン ス の 法 理 を 適 用 し う る か 否 か とい う 問 題 は 、 誰 が ニ ュ ー サ ン ス の 訴

10)

権 を有 す るか とい う問 題 で あ り、 ニ ュ ー サ ン ス の 本 質 に か か わ る重 要 な論 点 で あ る。

プ ライ ベ ー ト ・ニ ュー サ ン ス は 、 伝 統 的 に不 動 産 に関 す る利 益 を保 護 す る不 法 行 為 の類 型 で あ り、 不 動 産 に 関 す る利 益 を有 す る者 の み が そ の 訴 訟 を提 起 す る こ とが で き る と解 され て きた が 、 この 伝 統 的 準 則 は、 不 動 産 の 利 用 また は享 有 につ い て 広 く保 護 が 与 え られ るべ きで あ る との 考 えか ら緩 和 され る傾 向 に あ る。 しか し、 ひ とた び ニ ュー サ ン スが この よ うな 制 限 か ら完 全 に解 放 され る な ら ば、 その 性 質 は根 本 的 に変 化 して しま う こ とに な る。 つ ま り、 ニ ュ ー サ ンス は不 動 産 に 関 す る利 益 を保 護 す る もの で は な く、 他 人 の 利 益 を不 合 理 に侵 害 す る行 為 につ い て 一 般 的 に規 制 す る不 法 行 為 とい う性 質 を 帯 び る こ とに な る の で あ る。 この よ うに ニ ュー サ ンス の 適 用 を拡 大 し、 そ の 質 を転 化 させ る こ と は妥 当 で あ ろ うか。 す な わ ち、 ニ ュ ー サ ンス を不 動 産 とは関 係 性 の な い一 般 的 な 生 活 利 益 の 享 有 を侵 害 す る場 合(ハ ラス メ ン ト等 の 事 案)に まで 適 用 し、 そ れ を 一般 的 な 生 活 利 益 の 保 護 法 理 と して 機 能 させ る こ とに合 理 性が あ るの か 、 とい う大 きな 問 題 意 識 がKhorasandjian事 件 の 背 後 に存 在 す る と思 わ れ る の で あ

jl)

る。

不 動 産 に 関 す る利 益 を 有 す る者 の み が プ ラ イ ベ,̲̲̲ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 訴 訟 を

l2)

提 起 し う る とい う伝 統 的 準 則 は、Malonev.Laskey判 決 を リー デ ィ ン グ ・ケ ー ス と して 、 後 続 の 諸 判 決 に よ っ て 判 示 さ れ て き た 。 す な わ ち 、 原 告 は 不 動 産 の 占 有(possession)に つ い て 法 的 権 利 を 有 す る 必 要 が あ る の で 、 不 動 産 賃 借 人 (tenant)は ニ ュ ー サ ン ス の 訴 権 を 有 す るが 、 訪 問 者(ViSitOr)や 不 動 産 へ の 立

i3)

入 権 者(licensee)は 訴 権 を 有 し な い と解 さ れ て い る 。

Khorasandjian判 決 は 、 か か る伝 統 的 な 見 解 を 批 判 し、 「住 居 」 と い う新 し

(4)

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い視 点 か ら原 告 の不 動 産 との 関 連 性 の 問題 を検 討 した もの で あ る。

当 該 判 決 は 、 ハ ラ ス メ ン トの事 案 を プ ライ ベ ー ト ・ニ ュー サ ンス 訴 訟 と して 提 起 した ケ ー ス で あ る。 本 件 の事 実 の概 要 は、 以 下 の 通 りで あ る。 原 告 の 女 性 (18歳)と 被 告 の 男 性(23歳)は 、1990年 に知 り合 い 、 付 き合 い は じめ た が 、 ま も な く関 係 は破 綻 し、 原 告 は被 告 に二 度 と会 い た くな い と告 げ た 。 しか し、

1991年 か ら92年 にか け て被 告 は、 原 告 を見 る と攻 撃 的 に振 る舞 い、 跡 を つ けて は 叫 ん で 虐 待 し、 原 告 を暴 力 の 脅 威 に さ ら した 。 また 、 被 告 は、 原 告 の 親 や 祖 母 の 自宅 に繰 り返 し電 話 を して 困 惑 させ た 。1992年1月 に は、 被 告 は原 告 の 思 い 出 の 品 と して保 持 す るた め 、 ハ ン ドバ ッグ を 盗 み 出 した 。 この よ うな 原 告 に 対 す る脅 迫 や 虐 待 的 行 為 の 結 果 、 被 告 は 同 年3月 に逮 捕 され た(後 に条 件 付 き で 釈 放)。 さ ら に 同年5月 に は、 被 告 は原 告 を殺 す と脅 追 した た め約6週 間 、 収 監 さ れ た 。 電 話 に よ る ハ ラ ス メ ン ト に つ い て は 、1984年 電 気 通 信 法 (TelecommunicationAct1984)に 基 づ い て起 訴 され 、 有 罪判 決(罰 金)が さ れ て い る。 これ らの 刑 事 上 の 訴 追 に もか か わ らず 、 被 告 の 攻 撃 的 なi振る舞 い が 止 む こ とは な く、 電 話 に よ るハ ラ ス メ ン トも継 続 して な され た の で あ る。

か か る状 況 に お い て 、1992年5月 、 原 告 は、 被 告 に 対 して次 の よ うな 中 間 的 イ ンジ ャ ン ク シ ョン(interlocutoryinjunction)を 得 た。 す なわ ち、 原 告 に対 す るハ ラ ス メ ン トまた は侵 害 行 為 な らび に原 告 の両 親 の 住 所 ま た は原 告 が居 住 し うる他 の住 所 か ら200ヤ ー ド以 内 に立 入 る こ とを禁 じた の で あ る。 とこ ろが 、 被 告 が これ に違 反 した た め 、 原 告 は被 告 を収 監 す る 申立 て を した 。

1992年7月 、Barnet県 裁 判 所(CountyCourt)のStockdale裁 判 官 は、 原 告 の 申 立 て を退 け、 被 告 が 原 告 に 対 して暴 力 を行 使 した り、 ハ ラ ス メ ン トを な した り、 い か な る方 法 に お い て も連 絡 を と る こ とを禁 止 す る 中 間 的 イ ン ジ ャ ン クシ ョン を あ らた め て 命 じた 。 これ に対 して 、 被 告 は 、 当該 イ ン ジ ャ ン ク シ ョ ン に よ っ て 禁 止 され た 行 為 は 、 法 が 不 法 行 為 と認 め て い るわ け で は な い うえ、

イ ン ジ ャ ン クシ ョン は原 告 の 法 的権 利 を保 護 す るた め に の み 付 与 され うる の で あ るか ら、 裁 判 官 はか か る行 為 を 禁 ず る権 限 を有 しな い 、 と主 張 し、 上 訴 した の で あ る。

控 訴 院 裁 判 所 のDillonお よ びRose両 裁 判 官 は 、原 告 の主 張 を容 認 して 、被

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告 の 上 訴 を棄 却 した 。

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イ ギ リ ス 法 に お け る プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 不 動 産 との 関 連 性 67

Dillon控 訴 院 裁 判 官 は、 ニ ュ ー一サ ンス の 訴 権 に つ い て の 伝 統 的 見 解 を批 判 し て、 以 下 の よ うに論 じ る。

私 の考 え に よれ ば、 現 代 に お いて 、 あ る人 に対 して嫌 が らせ の電 話 を執 拗 に して ハ ラス メ ン トを故 意 に 行 っ た 者 は 、 電 話 の受 取 人 が それ を受 取 っ た とこ ろ の不 動 産 につ い て 自由 土 地 保 有 権(freehold)ま た は不 動 産 賃 借 権(leasehold)に 関 す る利 益 を偶 然 に有 す る場 合 にの み 、 民 事 裁 判 所 に訴

I5}

え られ う る とす る 法 が あ る な ら ぼ 、 そ れ は 滑 稽 な こ とで あ る 。」

こ の あ と、 同 裁 判 官 は 、 プ ラ イ ベ,...̲ト・ニ ュ ー サ ン ス の 起 源 お よ び そ の 本 質 に つ い て 、 次 の よ う に 説 述 す る 。

本 事 案 に つ い て の 訴 訟 と して 提 起 さ れ た プ ラ イ ベwト ・ニ ュ ー サ ン ス と い う不 法 行 為 が 、 不 動 産 の 利 用 も し くは 享 有 に 関 連 す る 私 的 財 産 ま た は 財 産 権 を 保 護 す る た め に 当 初 は 発 展 さ せ ら れ た とい う こ と は 、 歴 史 的 に 間 違 い の な い こ と で あ る と理 解 し て い る 。Clerk&、 乙勿4s6〃onTortsl6th

(1989)1354頁24‑OIパ ラ グ ラ フ に お い て 、 『ニ ュ ー サ ン ス の 本 質 は 、 土 地 の 利 用 も し くは 享 有 に 対 し て 不 当 に 侵 害 す る条 件 ま た は 行 為 で あ る 』 と論

16)

述 さ れ て い る 。」

そ して 、Dillon裁 判 官 は 、1976年 に カ ナ ダ の ア ル バ ー タ 州 高 位 裁 判 所 上 訴 部 (theAppellateDivisionoftheAlbertaSupremeCourt)に よ っ て 下 さ れ た

i7)

Motherwellv.Motherwell判 決 を 引用 す る。 す な わ ち 、

結 局 、Malonev.Laskey判 決 の 存 在 に もか か わ らず 、[カ ナ ダ の ア ル バ ー タ州 高 位]裁 判 所 は、[住 居 の]所 有 者 の妻 は夫 婦 の住 居(rnatrimonial home)へ の電 話 に よ るハ ラス メ ン トを制 止 す る権 利 も有 して い る と判 示 し た の で あ る。 当該 裁 判 所 の判 決 を下 したClement上 訴 裁 判 官 は、78頁 に お い て 次 の よ う に論 述 した 。 す な わ ち、

『こ こに夫 婦 の住 居 で ハ ラ ス メ ン トを受 け た一 人 の 妻 が 存 在 す る。 彼 女 は、 自分 の 夫 や 子 供 た ち と一 緒 に そ こで 暮 らす 地 位 、 つ ま り権 利 を 有 す るの で あ る。 夫 婦 の 住 居 に お け る妻 の 現 実 の 占有 は ニ ュ ー サ ンス の 訴 え を提 起 す る に は十 分 で は な い と考 え る こ とは不 合 理 で あ る と思 わ れ る。

私 の 見 解 に よれ ば 、 彼 女 は 、 夫 つ ま り[被 告 の]兄 と同様 な 法 的 救 済 を

18)

受 け る権 限 を 有 す る の で あ る。』」

(6)

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さ ら に続 け て 、Dillon裁 判 官 は、Motherwell判 決 を支 持 して 、 次 の よ うに 論 説 す る。

私 は、 謹 ん で 同意 を示 し、 そ して 、 私 の 判 断 にお いて 本 裁 判 所 に 同様 の ア プ ロ ー チ を採 用 す る権 限 を与 え るの で あ る。 当 裁 判 所 は変 化 した 社 会 の 諸 事 情 に 照 ら して初 期 の判 決 に つ い て と き と して 再 考 しな けれ ば な らな い。

(中 略)[住 居 の]所 有 者 の 妻 に対 して 電 話 に よ るハ ラス メ ン トに関 す る訴 え を提 起 す る権 限 が 与 え られ る な らば、 両 親 と一 緒 に住 居 で 生 活 して い る 子 供 に 対 して 、 なぜ 同 様 の こ とが 当 て は ま るべ きで は な い の か 、 私 に は理

19?

解 で きな い ので あ る。」

つ ま り、Dillon裁 判 官 は、Motherwell判 決 を理 論 的 な根 拠 と して、 住 居 の 所 有 者 の 妻 に 対 して 訴 権 を認 め て い るの で あ る か ら、 親 の住 居 で 一 緒 に生 活 し て い る子 供 に対 して 訴 権 を認 めな い の は筋 が 通 らな い と論 を展 開 す るの で あ る。

最 後 に、 同裁 判 官 は、 「電 話 に よ るハ ラス メ ン トは 、 原 告 が 合 法 的 に存 在 す る (lawfullypresent)財 産 に つ い て の 通 常 か つ 合 理 的 な利 用 お よび 享 有 に対 す る

Za)

訴 え う る侵 害 で あ る」 と述 べ 、 ニ ュ ー サ ンス 法 の 視 座 か ら電 話 に よ るハ ラ ス メ ン トの 性 質 に つ い て 説 示 す る。 す な わ ち、 電 話 に よ るハ ラス メ ン トは、 原 告 が 不 動 産 上 に合 法 的 に存 在 して い れ ば、 そ の不 動 産 との 関 連 性 が あ る と解 し、 プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス を 構 成 す る と論 及 し た の で あ る 。 要 す る に 、 Motherwell事 件 の事 案 の よ うに原 告 が住 居 として の不 動 産 の所 有 者 と同居 して い な くて も、 不 動 産 上 に合 法 的 に存 在 して い るだ け で ニ ュー サ ン ス の 訴 権 を有 す る と捉 え、 訴 権 を有 す る者 の範 囲 を拡 大 した と理 解 で き るの で あ る。

他 方 、Gibson控 訴 院 裁 判 官 は、 当該 論 点 につ い て 、 以下 の 通 り異 論 を述 べ 、 伝 統 的 立 場 を 踏 襲 す る。

私 は、 不 動 産 に関 す る利 益 を有 しな い者 また は不 動 産 を 占有 す る権 利 を 有 しな い者 に対 して プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ンス の訴 え を提 起 す る こ とを 許 容 した 先 例 は存 在 しな い と認 識 して い る。 ニ ュ ー サ ン ス 訴 訟 の 目的 が 不 動産 の 利 用 お よ び 享 有 につ い て の権 利 を保 護 す る こ とに あ る とす る な らば (中 略)、 単 な る立 入 権 者(licensee)ま た は この よ うな権 利 を有 しな い者 が プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュー サ ン ス の 訴 え を提 起 し う る と解 す る こ とは 、 原 則

21)

と して 間 違 っ て い る と考 え られ る の で あ る 。」

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イ ギ リ ス 法 に お け る プ ラ イ ペ0ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 不 動 産 と の 関 連 性 69

Gibson裁 判 官 は、 ニ ュ ーサ ンス 法 の 起 点 に立 ち返 り、 「ニ ュ ー一サ ンス 訴 訟 の 目的 が 不 動 産 の利 用 お よ び 享 有 にっ い て の権 利 を保 護 す る」 こ とに あ る か ら、

不 動 産 に 関 す る権 利 を有 しな い者 は ニ ュ ー サ ン ス訴 訟 を提 起 す る こ とは で き な い と伝 統 的見 解 を支 持 し、被 告 の 上 訴 を認 容 した の で あ る。

第2節Khorasandjian判 決 の 意 義

当 該 事 案 の よ うな 電 話 に よ るハ ラス メ ン トの場 合 に お い て 、 訴 訟 当 事 者 の0 方 が 配 偶 者 ま た は 同 棲 者(cohabitees)で あ るな らば、 家庭 内暴 力 お よび 婚 姻 手 続 法(DomesticViolenceandMatrimonialProceedingActI976)が 用 され 、 裁 判 所 はハ ラ ス メ ン トに対 して イ ンジ ャ ン ク シ ョン を許 与 す る権 限 を 有 す る こ とに な る。 しか し、 本 件 の両 当事 者 は単 な る友 人 同 士 で あ っ て 、 同棲 の 事 実 も存 在 しな い た め 、 同法 を適 用 す る こ とは で き な い。 この よ うな 状 況 に お い て 原 告 の 法 的 救 済 が 認 め られ るた め に は 、原 告 が 被 告 の 行 為 につ い て 法 的 に 訴 訟 を基 礎 づ け る に足 る もの で あ る こ とを立 証 しな けれ ば な らな い 。 電 話 の 頻 繁 な コー ル に よ っ て 原 告 を 困 惑 させ る こ とは、 概 して 刑 法 上 の 犯 罪 で あ る脅 迫(assault)と は な らな い 。 それ は、 原 告 に対 して 身 体 的 危 害 の 脅 威 を与 え る わ け で は な いか らで あ る。 一 方 、 被 告 の行 為 が 不 動 産 の 利 用 また は 享 有 に 対 す る侵 害 を伴 う場 合 に は、 コモ ン ・ロー の プ ライ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ンス に基 づ い て 救 済 され る余 地 が 出 て くる。 しか しなが ら、 伝 統 的 見 解 に よれ ぼ プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ンス が 成 立 す る た め に は、 原 告 は不 動 産 につ い て法 的利 益 を 有 し な けれ ば な らず 、 か か る準 則 を 当該 事 案 に つ い て 厳 格 に適 用 す る な らば 、 ハ ラ ス メ ン トを制 止 す るイ ン ジ ャ ン ク シ ョン は認 容 され な い こ とに な ろ う。 そ こで 控 訴 院 は、 こ の よ う な結 果 を 回避 し原 告 をハ ラ ス メ ン トか ら救 済 す る た め に、

ニ ュ ー サ ン ス の訴 権 につ い て の伝 統 的見 解 を覆 し、 不 動 産 に関 す る権 利 を 有 し

22)

な い 者 に も訴 権 を与 えた の で あ る。

Dillon裁 判 官 は、 プ ライ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 伝 統 的 見 解 に従 うな ら ば、

原 告 を保 護 で きな くな り不 合 理 な 結 果 を もた らす こ とに な る と論 及 し、 指 導 的 判 例 で あ るMalorle判 決 に依 拠 す るの で は な く、 夫 婦 の住 居 を所 有 す る者 の 妻 は 電 話 に よ る ハ ラ ス メ ン トを制 止 す る権 利 を 有 す る と判 示 し た 、 カ ナ ダ の

(8)

70

Motherwell判 決 を 引用 し、 本件 に お け る原 告 は母 親 の住 居 として の 不動 産 上 に 居 る子 供 で あ るか ら、Motherwell判 決 の示 した準 則 を拡 大解 釈 して 、 か か る子 供 を保 護 す べ きで あ る と導 出 した。 これ に反 して、Gibson裁 判官 が 異議 を唱 え、

ニ ュー サ ンス 訴 訟 にっ い て は不 動 産 に 関 して排 他 的 占有 を有 す る者 が提 起 し う る とす る伝 統 的 見 解 を支 持 し、 結 果 と して 原 告 を 救 済 しな か っ た 点 を 見 逃 して は な らな い 。

本 判 決 は 、 現 在 の イ ギ リス法 に お い て ハ ラ ス メ ン トに対 応 す る不 法 行 為 の 類

23)

型 は 存 在 し な い と控 訴 院 が 判 示 したPagelv.Pagel判 決 を 再 考 し、 プ ラ イ ベ ー

24)

ト ・ニ ュ ー サ ン ス を根 拠 と して ハ ラ ス メ ン トに対 す る法 的保 護 を認 めた 点 に お

25)

い て 、 注 目 さ れ た判 決 で あ る。 つ ま り、 ハ ラ ス メ ン ト(不 動 産 とは 関係 性 の な い一 般 的 な 生 活 利 益 の侵 害)の 事 案 に対 して プ ライ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ンス の 法

2&?

理 を拡 大 して 適 用 す る こ とに よっ て 、 被 害 者 を救 済 した の で あ る。 ニ ュー サ ン ス の訴 権 の 視 点 か らみ れ ば、 訴 権 を有 す る者 の範 囲 につ い て 不 動 産 に関 す る権 利 を有 して い る者 に 限 るの で は な く、 合 法 的 に不 動 産 上 に居 る者 に まで 拡 張 し

27)

て解 釈 した と言 え よ う。 しか し、 当 該 判 決 の 示 した伝 統 的 な要 件 の 緩 和 が 、 プ ラ イ ペ ー ト ・ニ ュー サ ン ス の本 質 に 照 ら して 妥 当 で あ るか 否 か につ いて は、 大

28)

き な 問題 とな っ て き た。 次 の 章 で 扱 うHunter判 決 は 、 か か る問 題 につ い て 貴 族 院 が 接 応 した もの で あ る。

第3章 プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 不 動 産 との 関 連 性

第1節Hunter事 件 の 概 要

Hunter事 件 は 、 テ レ ビ 電 波 の 受 信 障 害 が プ ラ イ ペ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス に あ た る と主 張 す る 訴 え(Hunterv.CanaryVITharfLtd.:以 下 で は 、 電 波 障 害 訴 訟 と 呼 ぶ)と 、 道 路 の 建 設 現 場 か ら の 過 剰 な 粉 塵 に よ っ て 損 害 を 被 っ た 住 民 が プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス に よ っ て 救 済 さ れ る とす る訴 え(Hunterv.London

DocklandsDevelopmentCorporation:以 下 で は 、 粉 塵 訴 訟 と呼 ぶ)の2っ の 訴 訟 か ら構 成 さ れ て い る 。

(9)

イ ギ リス 法 に お け る プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 不 動 産 と の 関 連 性 71

電 波 障 害 訴 訟 に関 す る事 実 の概 要 は、 以 下 の 通 りで あ る。 原 告 は、 都 市 開 発 地 域 お よび企 業 地 区 と して 環 境 大 臣 に よ っ て 指 定 され た、 ロ ン ドン ・ ドッ ク ラ ンズ地 域 に居 住 して い た 。被 告 が 、 企 業 地 区 を管 轄 す る当局 か ら特 別 に与 え ら れ た 計 画 の 認 可 に基 づ い て 、 高 さ250メ ー トル 、 縦 横50メ ー トル を超 え る大 き さ の カ ナ リー埠 頭 タ ワー(CanaryWharfTower)を 建 設 した と こ ろ、 原 告 の 住 居 に お い て テ ーレビ電 波 の 受 信 障 害 が 生 じた 。 当 該 地 域 の テ レ ビ電 波 の 送 信 源

は、 ク リス タル ・パ レス に あ るBBCの 送 信 機 で あ る。そ こで、原 告 は、 カ ナ リ,..,...

埠 頭 タ ワ ー が ク リス タ ル ・パ レ ス か らの テ レ ビ電 波 信 号 を 遮 断 し、 受 信 障 害 を 生起 させ て い る と主 張 した 。 当 時 、 す べ て の原 告 は、 テ レビ電 波 障 害 のた め 「 の地 域(theshadowarea)」 と呼 ば れ て い た 、 ア イ ル ・オ ブ ・ドッ グ ズ(the IsleofDogs)地 域 に居 住 して い た。 原 告 は 、 当該 タ ワ ー の建 設 中 の1989年 受 信 障 害 が 始 ま っ た と主 張 した の で 、 そ の 後 、 この受 信 障 害 を 解 決 す るた め 、 中継 送 信 機 が建 設 され 、1991年4月 か ら稼 動 す るに い た った 。 そ こで 、 原 告 は、

電 波 の 受 信 障 害 は プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ンス を構 成 す る と し、 受 信 障 害 が 生

29)

じた期 間 の 電 波 受 信 侵 害 に対 す る損 害 賠 償 を請 求 した の で あ る。

一 方、 粉 塵 訴 訟 は、1989年11月 か ら1993年5月 にか けて 被 告 が 建 設 した 、 ライ ムハ ウ ス ・リン ク ・ロ ー ド(LimehouseLinkRoad)と して知 られ る全 長 約1800メ ー トル の 道 路 の 建 設 に よ っ て 、 限 度 を超 えた 粉 塵 が 排 出 され た た め 、

当 該 地 域 に居 住 して い た原 告 の 快 適 な生 活 環 境 が 損 な われ た と して 、 ニ ュ ー サ

30)

ン ス お よ び ネ グ リジ ェ ンス に基 づ い て そ の 損 害 の賠 償 を請 求 した もの で あ る。

これ らの訴 訟 で争 われ た論 点 は、テ レ ビ電 波 の 受信 侵 害 が プ ライ ベ ー ト・ニ ュー サ ンス を構 成 す るか 否 か とい う点 と、 プ ライ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ンス の訴 え に は 、 不 動 産 に関 す る原 告 の 利 益 が 必 要 と され るか 否 か、も しそ うで あ るな らば、ニ ュー サ ン ス が 成 立 す る要 件 と して 不 動 産 に関 す るい か な る利 益 が 原 告 に要 求 され る の か とい う点 で あ る。 電 波 障 害 訴 訟 で は、 前 者 お よび後 者 の 両 論 点 が 問 題 とな

り、 粉 塵 訴 訟 で は、 後 者 の論 点 が 検 討 さ れ た。

電 波 障 害 訴 訟 の 第1審 にお い て 、Havery裁 判 官 は、 テ ーレビ電 波 の 受 信 障 害 に つ い て プ ライ ベ ー ト ・ニ ュー サ ン ス お よ び パ ブ リ ッ ク ・ニ ュー サ ンス を構 成 し う るが 、 プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス に基 づ い て 訴 訟 を提 起 す る た め に は 、 原 告 は不 動 産 に 関 す る利 益 を有 す る こ とが 必 要 で あ り、 その 不 動 産 に つ い て 排 他

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的 占有(exclusivepossession)の 権 利 を有 しな けれ ば な らな い と判 示 し、 原 告 の訴 え を 退 けた 。 粉 塵 訴 訟 の 第1審 に お い て も、 同裁 判 官 は、 電 波 障 害 訴 訟 と同様 に 、 プ ライ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ンス の訴 え を提 起 す る に は、 原 告 は不 動 産 に関 す る利 益 を有 す る こ とが 必 要 で あ り、 そ の不 動 産 につ い て排 他 的 占 有 の 権 利 を 有 しな け れ ば な らな い と判 断 して 、 原 告 の請 求 を認 め な か っ た 。

控 訴 院 のPill裁 判 官 は、 電 波 障 害 訴 訟 に お い て 、 テ レビ電 波 送 信 機 と他 人 の 不 動 産 との 間 の視 界 線 上 の建 物 の 建 設 ま た は存 在 を、 そ の 不 動 産 の 利 用 お よび 享 有 の 侵 害 と して プ ライ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス に基 づ い て 訴 え る こ とはで き な

3l)

い と判 示 し、 原 告 の上 訴 を棄 却 した 。 しか し、 粉 塵 訴 訟 に お い て は、 住 居 と し て の(asahome)不 動 産 の現 実 の 占有(occupation)は 、 そ の 占有 者 に対 し て プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 訴 え を 可 能 に す る た め の 実 質 的 な 関 連 性

32)

(substantiallink)を 十 分 に提 供 して い る と判 示 して 、原 告 の 上訴 を認 容 した。

これ に対 して貴 族 院 は、 電 波 障 害 訴 訟 に お い て、 隣 接 地 上 の 建 物 の建 設 に よっ て採 光 、 通 風 また は 眺 望 が 阻 害 され た 場 合 と同様 に、 建 物 の 建 設 に よ る テ レ ビ 電 波 の 受 信 障 害 につ い て もニ ュー サ ンス は成 立 しな い と論 及 した 。 ま た、 プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュー サ ン ス の 訴 権 に つ い て は、 ニ ュー サ ン ス は不 動 産 に 対 す る不 法 行 為 で あ るか ら、 原 告 は不 動 産 に関 す る利 益 を有 しな けれ ば な らな い と して 、 被 告 の 上 訴 を容 認 した の で あ る。 以 下 で は 、貴 族 院 の 見 解 につ い て詳 述 す る。

第2節Hunter事 件 に お け る貴 族 院 の 見 解

1テ レ ビ電 波 の 受 信 障 害 につ い て

本 判 決 は、 テ レ ビ電 波 の受 信 障 害 が プ ライ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ンス を構 成 す る か とい う問 題 と、 誰 が プ ラ イベ ー ト ・ニ ュー サ ン ス の 訴 え を提 起 し う るか とい

う問題 の2つ の大 き な 論 点 に言 及 して い る。

まず は 、 テ レ ビ電 波 の受 信 障害 の 問題 を 考 究 し よ う。

貴 族 院 の裁 判 官 諸 卿 は、 カ ナ リー埠 頭 タ ワ ー の 建 設 に よっ て 生 起 した 電 波 障 害 に つ い て プ ライ ベ ー ト ・ニ ュー サ ン ス を構 成 しな い と全 員 一 致 で 判 断 した 。 そ の理 由 に つ いて 、Goff卿 を除 く4人 の裁 判 官 は、隣 接 地 上 の建 物 の 建 設 に よっ て採 光 、 通 風 、 眺 望 が 阻 害 され た 場 合 の 控 訴 院 の分 析 を肯 定 的 に受 け止 め 、 こ

(11)

イ ギ リス 法 に お け る プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー一サ ン ス の 不 動 産 との 関 連 性

の種 の侵 害 が ニ ュ ー サ ンス 法 に よっ て 救 済 され な い の と同 様 に、 建 物 建 設 に よ るテ レビ電 波 の 受 信 障 害 も救 済 に値 しな い と判 示 した の で あ る。

これ に対 してGoff卿 は、 テ レ ビ電 波 障 害 が ニ ュ ー サ ンス に該 当 す るか 否 か と い う問題 につ い て 、 異 な った ア プ ロ.̲̲̲チを試 み る。 す な わ ち 、 当 該 問題 を扱 っ

33}

た1965年 のBridlingtonRelayLtd.v.YorkshireElectricityBoard判 決 を 取 り上 げ、 本 事 案 との 相 違 を指 摘 して 、 以 下 の よ う に検 討 す る。

「BridlingtonRelayLtd .事 件 に お け る問 題 は 、 隣 接 地 上 の建 築 物 の存 在 に よ っ て の み 生 じた の で は な く、 被 告 で あ る電 力 局 の 活 動 に起 因 す る電 気 的 侵 害 に よ っ て 惹 起 さ れ た の で あ る か ら、 本 判 決 の 事 案 とBridlington RelayLtd.事 件 の ケ ー ス とは 区 別 され るべ きで あ る。

一 般 的 準 則 と して 、 現 今 で は 必 然 的 に計 画 管 理 に 関 す る制 度 に服 す る も の の 、 何 人 も 自己 が 所 有 す る土 地 上 に建 物 を建 設 す る権 限 を 有 す るの で あ る。 さ らに 、 一 般 的 準 則 と して 、 自 己 の 土 地 上 に 建 物 を建 設 す る権 利 は、

その建 物 の 存 在 それ 自体 が 隣 人 の土 地 の享 有 を侵 害 し うる とい う事 実 に よ っ

34)

て 制 限 を受 け な い の で あ る。」

つ ま り、 土 地 の 所 有 者 は 自己 の土 地 に 自 由 に建 物 を 建 設 す る権 利 を 有 して い る の で あ っ て 、 そ の 土 地 上 の 建 物 の 存 在 が 、 隣 接 す る土 地 の享 有 を侵 害 す る結

35}

果 を もた ら した と して もや む を得 な い こ とで あ る と論 及 す るの で あ る。

そ して 、Goff卿 は プ ライ ベ ー ト ・ニ ュ ー一サ ンス が 成 立 す るた め の要 件 につ い て 、 次 の よ うに説 述 す る。

地 役 権 が設 定 され て い な い場 合 に、 訴 え う る プ ライ ベ ー ト ・ニ ュー サ ン ス を成 立 させ るた め に は、 隣 接 す る建 物 が 単 に 存 在 して い る こ と以 上 の も の が 要 求 され るの で あ る。 実 際 、 原 告 の 土 地 の 享 有 に 対 す る侵 害 に 関 して

プ ライ ベ ー ト ・ニ ュー サ ンス が 成 立 す る た め に は、 一 般 的 に被 告 の 土 地 か ら発 散 され る何 か が 生 じ る こ とが 必 要 で あ ろ う。 か か る発 散 は、 騒 音 、 粉

ss}

塵 、 煙 霧 、 悪 臭 、 振 動 の よ うな 多様 な形 態 とな ろ う。」

す な わ ち、 プ ライ ペ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス が 成 立 す るた め に は、 被 告 の 土 地 上 に建 物 が 存 在 して い るだ け で は十 分 で は な く、 そ こか ら発 散 さ れ る何 か が な け れ ば な ら な い と述 べ 、 積 極 的 侵 害 の必 要性 に論 及 す る の で あ る。

そ れ で は、 プ ライ ベ ー ト ・ニ ュー サ ンス の 成 立 に は被 告 の 土 地 か ら発 散 さ れ

(12)

74

る何 か の 存 在 を 要 す る と解 す る な ら ば 、̲̲̲.見、 そ の よ うな 発 散 が 存 在 し な い よ う に 思 わ れ る ケ ー ス に お い て ニ ュ ー一サ ン ス の 成 立 を 肯 定 し た 、BankofNew

37)

Zealandv.Greenwood判 決 を どの よ うにi理解 す れ ば よ い の で あ ろ うか 。 BankofNewZealand事 件 は、 被 告 が 所 有 す る建 物 の ベ ラ ンダ の ガ ラス 製 屋 根 に よ っ て太 陽 光 が 反 射 して 、 隣 接 地 の建 物 に そ の 光 線 が 入 り、 耐 え難 い 眩 し

さ に困 惑 した 原 告 が 、 ニ ュ ー サ ンス の訴 え を提 起 した 事 案 で あ る。

Goff卿 は 、 本 件 の 眩 しさ は、 単 な る太 陽光 の反 射 で はな く、 一 定 の角 度 で 太 陽 光 を偏 向 させ る こ とに よっ て 生 じ、 そ れ は人 間 の 眼 に は耐 えが た い ほ ど明 る

く、 そ れ が 隣 接 の 建 物 に 直 接 進 入 して い る と述 べ た う えで 、 専 門 家 の 意 見 を取 り上 げ、 ベ ラ ン ダ の屋 根 の ガ ラ ス は、 あ た か も多 数 の鏡 の よ う に光 を乱 反 射 さ せ 、 とて も強 烈 な 眩 し さ とな り、 それ は極 端 に見 る こ とを 困 難 に させ た と説 明 した 。 そ して 、 同卿 は 、 「この よ うな理 由 に基 づ き、 当 該 事 案 は 、 隣 接 地 上 の 建 物 の 単 な る存 在 が 問題 とな っ た 場 合 とは 峻 別 され う るの で あ る。 い ず れ に して も、 被 告 の 土 地 上 の 建 物 が 邪 魔 に な っ て 、 何 か の原 告 の 土 地 へ の 到 達 が 妨 げ ら

3$)

れ た とい う単 な る事 実 は、'r的 に言 っ て本 件 の 目的 のた め に は十 分 で は な い。」

と論 述 す る。

同 卿 は、 ベ ラ ン ダ の屋 根 の ガ ラス が 単 に受 動 的 に太 陽 光 を反 射 させ た の で は な く、 多 数 の鏡 を集 めた よ うに光 を偏 向 させ た とい う根 拠 に基 づ い て 、Bankof NewZealand判 決 の ケ.̲̲.スとHunter判 決 の 事 案 を識 別 して 考 察 す べ きで あ

る と考 え た 。 そ して 、 隣 接 地 上 の建 物 の 存 在 に よ っ て 、 原 告 の不 動 産 に何 か が 到 達 す る こ とが 阻 害 さ れ た だ け で は、 ニ ュ ー サ ンス は成 立 しな い と導 出 した の で あ る。

Goff卿 が 、 本 判 決 の 事 案 とBridlingtonRelayLtd.判 決 お よ びBankof NewZealand判 決 の ケ ー ス を比 較 し、 ニ ュー サ ン ス が成 立 す る態 様 を詳 細 に 検 討 す る こ とに よ っ て 、 そ の成 立 要 件 を明 らか に しよ う と した試 み は評 価 され るべ きで あ ろ う。 特 に、 ニ ュ ー サ ン ス が成 立 す る た め に は、 被 告 の 土 地 か ら発 散 さ れ る何 か が 存 在 しな け れ ぼ な らず 、 そ の 土 地 上 の建 物 の存 在 に よっ て 何 か の原 告 の 土 地 へ の 到 達 が 阻害 さ れ た だ けで は十 分 で は な い と述 べ 、 積 極 的 侵 害

39)

の必要性 に論及 した考察 は、 明快 な分析 で あ る と思 われ る。

(13)

イ ギ リ ス 法 に お け る プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 不 動 産 と の 関 連 性 2プ ライ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス の訴 権 につ い て

次 に、 プ ライ ベ ー ト ・ニ ュー サ ンス の訴 権 につ い て 、 つ ま り誰 が プ ラ イ ペ ー ト ・ニ ュ ー サ ンス の訴 え を提 起 す る こ とが で き るか とい う問 題 に っ い て 論 究 し よ う。 この 問 い は、 ま さ に本 稿 が 主 題 とす る プ ライ ベ..̲.ト・ニ ュ0サ ン ス が 成 立 す るた め に は 、 原 告 は不 動 産 と どの よ うな 関 連 性 に あ るべ きか 、 す な わ ち訴 え の原 告 は 不 動 産 に 関 す る い か な る利 益 を有 す る こ とが 必 要 か とい う論 点 につ いて検 討 す る もの で あ る。 以 下 にお い て 、Hunter判 決 の多 数 意 見 を形 成 して い るGoff卿 お よびHoffmann卿 の見 解 、 な らび に それ に異 議 を 唱 えたCooke卿

4a)

の 意 見 を考 察 す る。

(1)Goff卿 の 見 解

Goff卿 は、 この 問題 に 関 して 、 まず ニ ュー サ ンス の本 質 的特 徴 に つ い て 言 及 す る 。 す な わ ち 、Newark教 授 の 古 典 的 論 文 「ニ ュ ー サ ン ス の 境 界(The

41}

BoundariesofNuisance)」 を 引 用 し 、 ニ ュ ー サ ン ス の 本 質 は 土 地 に 対 す る

42)

不 法 行 為 」 で あ り、 「『ニ ュー サ ン ス 』 とい う用 語 は、 正確 に は 土 地 に 関 す る権 利 の原 告 に よ る享 有 に対 す る侵 害 とな る訴 訟 を基 礎 づ け る に足 る土 地 の 利 用 者

に 対 し て の み 適 用 さ れ る に す ぎ な い の で あ る 。」 と論 じ る 。 そ し て 、 同 卿 は 、

ニ ュ ー サ ン ス とい う不 法 行 為 は、 不 動 産 に 対 す る原 告 の 権 利 の 享 有 に つ い て 定 め る 不 法 行 為 の ひ とつ で あ る か ら、 プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 訴 え は 、 当 該 不 動 産 の 自 由 土 地 保 有 権 者 も し く は 賃 借 人 、 ま た は 不 動 産 の 排 他 的 占 有 (exclusivepossession)を 伴 う立 入 権 者(licensee)の よ う な 、 そ の 不 動 産 の 現 実 の 占 有(actualpossession)を 有 す る者 に よ っ て 通 常 、 提 起 さ れ る で あ ろ

響 。」 と具 体 的 に説 述 す る。

さ ら にGoff卿 は 、 「不 動 産 に 関 す る権 利 を 有 し な い 者 は プ ラ イ ペ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 訴 え を 提 起 し え な い と い う 準 則 は 、 長 年 に わ た り確 立 さ れ た も の と し て 考 え ら れ て き た 。 本 準 則 に つ い て は 、1907年 のMalonev.Laskey事 件 に お

け る 控 訴 院 の 判 決 を 引 用 す る の が 通 常 で あ る 。(中 略)ニ ュ ー サ ン ス に 関 す る Malonev.Laskey事 件 の 判 決 は 、 以 来 、 多 くの 事 件 で 追 従 さ れ て き た 。(中 略)

しか しな が ら、 最 近 、Khorasandjianv.Bush事 件 に お い て 控 訴 院 は 、 こ の 先

45)

例 の 一 連 の 流 れ か ら 逸 れ る 判 断 を し た 。」 と 述 べ 、 前 章 で 取 り扱 っ た

(14)

76

Khorasandjian判 決 の位 置 づ け に つ い て 詳 細 に検 証 す る。

同卿 は、Khorasandjian判 決 につ いて カ ナ ダ の ア ルバ ー タ州 高 位 裁 判 所 上 訴 部 が 下 したMotherwell判 決 に依 拠 して い る とす る。 本 裁 判 所 は、 当 該 判 決 に お い て 、 住 居 の 所 有 者 が プ ライ ベ ー ト ・ニ ュー サ ン ス に基 づ い て 、 そ の 住 居 へ の 電 話 に よ るハ ラス メ ン トを制 止 す るイ ンジ ャ ン ク シ ョン を得 る こ とが で き る の み な らず 、 住 居 に関 す る利 益 を全 く有 しな い住 居 所 有 者 の妻(原 告)に 対 し て も同様 の法 的 救 済 が 開 か れ て い る こ とを判 示 した 。 それ 故 、 同卿 は、 「夫 婦 の 住 居 につ い て 利 益 を有 しな い が 、 そ こ に居 住 して い る妻 は、 そ の 住 居 の享 有 に 対 す る侵 害 に 関 して プ ライ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ンス の訴 え を提 起 す る こ とが で き る と したMotherwe11v.Motherwell判 決 の根 拠 につ い て 、 考 察 す る こ とが 必

46)

要 で あ る。」 と述 べ 、 当判 決 に っ い て 論 究 す る。

Motherwell事 件 の事 実 の概 要 は、 次 の通 りで あ る。 す なわ ち、被 告 は偏 執 症 を 患 っ て い た た め 、 義 姉 と父 親 の 家 政 婦 が 自分 の こ とで 兄 と父 親 を怒 らせ て い る と誤 信 し、 兄 お よ び 父 親 の 自宅 に執 拗 に過 多 の 電 話 を し、 そ こで 義 姉 と父 親 の家 政 婦 を 口汚 く罵 倒 した とい う事 案 で あ る。 州 高 位 裁 判 所 上 訴 部 のClement 上 訴 裁 判 官 は、 自宅 の 自由土 地 保 有 権 者 と して 兄 お よび 父 親 に対 して 、 被 告 の 行 為 を プ ライ ベ ー ト ・ニ ュー サ ンス に基 づ い て 制 止 す るイ ン ジ ャ ン クシ ョン を 認 定 した の み な らず 、 夫 の住 居 に居 住 して い る だ けで あ っ て そ れ に関 して 何 ら の利 益 も有 しな い妻(被 告 の 義 姉)に つ い て もイ ンジ ャ ン ク シ ョ ンを 肯 認 した。

つ ま り、 同 裁 判 官 は、 「こ こ に夫 婦 の住 居(matrirnonialhome)で ハ ラス メ ン トを 受 けた 一 人 の妻 が 存 在 す る。 彼 女 は、 自分 の 夫 や 子 供 た ち とiに そ こ で暮 らす 地 位 、 つ ま り権 利 を 有 す る の で あ る。 夫 婦 の住 居 にお け る妻 の 現 実 の 占有(occupancy)は ニ ュー サ ンス の 訴 え を提 起 す る に は十 分 で は な い と考 え る こ とは不 合 理 で あ る と思 わ れ る。 私 の 見 解 に よれ ぼ 、 彼 女 は 、 夫 つ ま り[被

47)

告 の]兄 と 同 様 な 法 的 救 済 を 受 け る権 限 を 有 す る の で あ る 。」 と判 示 した の で あ る 。

Goff卿 は 、 「こ の[Motherwell判 決 の]結 論 は 、Fosterv.Warblington

9$)49)

UrbanDistrictCouncil事 件 に お け る控 訴 院 の 判 決 に 広 く基 づ い て い る」 と述 べ 、 そ れ は 、 「CIement上 訴 裁 判 官 が[Foster判 決 に つ い て]『 単 に 存 在 して い る(merelypresent)』 者 と 『実 質 的 性 質 と して の 現 実 の 占有(occupancyof

(15)

イ ギ リ ス 法 に お け る プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 不 動 産 との 関 連 性 77

aSUbStantialnatUre)』 の 状 態 に あ る者 と の 区 別 を 確 立 し、 後 者 の 場 合 に は 占 有 者 に プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 訴 え を 提 起 す る 権 限 が 与 え られ る と理 解

5Q)

し た 。」 か ら で あ る と言 及 す る の で あ る 。

そ して 、 同 卿 は 、 次 の よ う に 論 を展 開 す る 。 す な わ ち 、

私 の 意 見 で は、Fosterv.WarblingtonUrbanDistrictCouncil判 は 、 配 偶 者 の 住 居 に 居 住 し て い る 妻 ま た は 夫 の よ う な 単 な る 立 入 権 者 (licensee)の 地 位 に あ る人 が この よ う な 訴 え を 提 起 し う る権 限 を 有 す る と い う命 題 に つ い て 先 例 と は な ら な い と思 わ れ る 。 こ の 誤 解 は 、 こ の 点 に 関 す るMotherwellv.Motherwell判 決 の 先 例 と して の 権 威 を 傷 つ け る に 違 い な い 、 と懸 念 す る の で あ る。 そ して 、Khorasandjianv.Bush事 件 の 控 訴 院 判 決 がMotherwellv.Motherwell判 決 に 基 づ い て 判 断 され て い る 限 り、Khorasandjianv.Bush判 決 も ま た 同 様 に そ の 先 例 と して の 権 威 を 損

5I}

な わ れ て い るの で あ る。」

つ ま り、 同卿 は、Khorasandjian判 決 の依 拠 して い る判 例 を遡 り、 その 起 点 とな っ たFoster判 決 につ いて の誤 った 解 釈 を指摘 し、 そ の解 釈 に基 づ いて 判 断 され たMotherwell判 決 、 そ して 、 このMotherwell判 決 に基 礎 を置 い て 判 断 され たKhorasandjian判 決 の不 当 性 を導 出 して い るの で あ る。

さ らに、Goff卿 は、Khorasandjian判 決 の事 案 の本 質 お よび そ の位 置 づ け に つ い て 、 次 の よ うに論 述 す る。

「Khorasandjianv .Bush判 決 に お け る 自家 保 有 者(householder)の

娘 の よ うな 原 告 が 、 迷 惑 電 話 に よっ てハ ラス メ ン トを受 け た場 合 、 そ の 主 張 の最 も重 要 な 点 は 、 虐 待 また は プ ライ バ シ ー の侵 害 とな るハ ラス メ ン ト を受 けた とい う こ とで あ っ て 、 そ れ を受 け た と こ ろが 母 親 宅 で あ ろ うが 、 夫 の 自宅 で あ ろ うが 、 友 人 と共 に住 ん で い よ うが 、 勤務 先 で あ ろ うが 、 自 動 車 の 中 で の携 帯 電 話 で あ ろ うが 大 した 問 題 で は な い 。 実 際 に、 控 訴 院 が

な そ う と した と思 わ れ る こ とは、 住 居 で な され るハ ラ ス メ ン トに不 自然 な 形 で 限 定 され る とい う点 で 部 分 的 に しか 効 果 的 で な い 、 ハ ラス メ ン トに 関 す る不 法 行 為 を裏 口の使 用 に よ って創 出 す る た め に 、 プ ライ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス 法 を利 用 した こ とで あ っ た 。 特 に 当 該 判 決 の よ う に採 用 され た 手 段 が 控 訴 院 の他 の 判 決 と矛 盾 す る場 合 に は、 この よ うな 利 用 は 法 の 発 展 に お

(16)

78

52)

いて 満 足 の い くよ うな 方 策 で は な い と、 私 自 身 、 顧 慮 す る の で あ る。」

また 、 同卿 は、Hunter事 件 にお いて 控 訴 院 が 示 した よ うに伝 統 的立 場 か ら一 歩 踏 み 出 す な ら ば、 訴 権 を有 す る人 の 範 囲 を 画 定 す る問題 に 直 面 す るで あ ろ う

と警 告 す る。 す な わ ち 、 「控 訴 院 は、 不 動 産 を 『住 居 と して(asahome)』 有 す る者 を 当 該 目 的 の た め に 十 分 な 関 連 を有 して い る と考 え、 不 動 産 に つ い て

実 質 的 関連(substantiallink)』 を有 す る者 とい う容 易 に は識別 し え な い範 囲

53)

を採 用 した 。」 と説 示 し、 具 体 的 に は誰 が この範 囲 に含 まれ るの で あ ろ うか 、 と 疑 義 を 投 げ か け る。 夫 、 妻 、 子 供 や 同居 の 親 族 は 比 較 的 簡 単 に 実 質 的 関 連 を有

す る者 と理 解 で き るが 、 問 借 人 や 同 居 の看 護 人 の よ うな人 まで も実 質 的 関連 を 有 す る者 と解 し う る の か 否 か を判 断 す る こ とは 困 難 で あ る、 とい うの で あ る。

そ して 、 同 卿 は、 次 の よ うに論 及 し、 不 法 行 為 の 拡 大 に つ い て 否 定 的 な見 解 を 開 陳 す る。

「とに か く、 この よ うな[控 訴 院 が判 断 した]不 法 行 為 の拡 大 は、 ニ ュー サ ンス を不 動 産 に対 す る不 法 行 為 か ら人 に対 す る不 法 行 為 へ と変 質 させ る で あ ろ う。 そ して 、 そ こで は 、 身 体 的 侵 害 に まで は及 ば な い 損 害 に つ い て も賠 償 され う る し、 責 任 の 判 断 基 準 は ネ グ リジ ェ ン ス に基 づ くも の で は な く、 そ の不 動 産 の利 用 につ い て 隣 人 間 の 利 益 衡 量 に基 づ い て 判 断 さ れ る の で あ る。 私 の意 見 に よれ ば、 これ は法 を 発 展 させ るた め の 許 容 し う る方 策

54)

で は な い の で あ る。」

上 述 した よ うにGoff卿 は、本 件 の控 訴 院 の 判決 に は 同意 しえな い理 由 と して、

主 に2つ の 根 拠 を 挙 げ て い る 。 第 一 に 、 本 控 訴 院 判 決 が 引 用 し て い る Khorasandjian判 決 の 妥 当性 につ い て 、 当 該 判 決 が 依 拠 して い る判 例 を遡 り、

そ の 起 点 とな っ たFoster判 決 の 誤 っ た解 釈 を指 摘 し、 それ に基 づ いて 判 断 され たMotherwell判 決 、 そ して 、 このMotherwell判 決 に基 礎 を置 い て判 断 され たKhorasandjian判 決 は妥 当 とは い え な い と論 及 した 。 第 二 に、 控 訴 院 が 判 示 した不 動 産 につ い て 「実 質 的 関 連 」 を有 す る者 の 具 体 的 な解 釈 につ い て 検 討 し、

訴 権 を有 す る人 の範 囲 を画 定 す る定 義 と して は 不 明確 で あ るた め適 切 で は な い と説 述 した 。 そ して 、 この よ うな 不 法 行 為 の 拡 大 は 、 プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュー サ ン ス の本 質 を変 化 させ るた め、 許 容 し得 な い と結 論 づ けた の で あ る。

(17)

イ ギ リ ス 法 に お け る プ ラ イ ベ0ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 不 動 産 と の 関 連 性 79

(2)Hoffmann卿 の 見 解

次 に 、Hoffmann卿 が 示 した 論 理 の 展 開 を 追 う こ と に し よ う。

同 卿 は 、 ニ ュ ー サ ン ス の 訴 権 の 問 題 に つ い て 、 「約20年 前 ま で は 、 何 人 も誰 が 訴 え う るか と い う こ と に つ い て 少 し も 疑 問 を も た な か っ た で あ ろ う。 ニ ュ ー サ ン ス は 地 役 権(easements)お よ び 採 取 権(profits)の よ う な 不 動 産 に 関 す る利 益 を含 む 、 不 動 産 に 対 す る不 法 行 為 で あ る 。 そ れ 故 、 原 告 は ニ ュ ー サ ン ス

55}

に よ っ て影 響 を受 けた 不 動 産 に 関 す る利 益 を 有 しな けれ ば な らな い の で あ る。」

と伝 統 的 な 見 解 を説 示 す る。 そ して 、 ニ ュ ー サ ン ス の訴 え を提 起 す る に は不 動 産 の 排 他 的 占有 を必 要 とす る と判 示 した 指 導 的 判 例 で あ るMahonev.Laskey

判 決 に言 及 した あ とで 、 ニ ュー サ ン ス は不 動 産 に対 す る不 法 行 為 で あ る とい う 考 え方 につ い て 、Khorasandjianv.Bush事 件 に お け る控 訴 院 の判 断 に よっ て 疑 義 が 生 じて きて い る と して 、 当該 判 決 に つ い て検 討 す る。

控 訴 院 は、 母 親 の住 居 に居 る原 告 に対 して 、 プ ライ ペ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス に 基 づ い て電 話 に よ るハ ラス メ ン トを制 止 す る イ ン ジ ャ ン クシ ョ ン を認 定 した 。 この判 決 は、 不 動 産 の 排 他 的 占有 の 必 要性 を示 したMalone判 決 を覆 す もの で あ るが 、 これ を否 定 す る理 由 に つ い て 、Dillon控 訴 院 裁 判 官 は次 の よ うに論 述 す る。

私 の 考 え に よれ ば、 現 代 に おい て 、 あ る人 に対 して嫌 が らせ の電 話 を執 拗 に して ハ ラス メ ン トを故 意 に行 っ た者 は、 電 話 の 受 取 人 が それ を受 取 っ

た と ころ の不 動 産 に っ い て 自 由 土 地 保 有 権 ま た は 不 動 産 賃 借 権 に 関 す る利 益 を偶 然 に有 す る場 合 に の み 、 民 事 裁 判 所 に訴 え られ う る とす る法 が あ る

な らば、 そ れ は滑 稽 な こ とで あ る。」

Hoffmann卿 は、 この よ うな 理 由づ け につ い て 、 ニ ュー サ ンス 法 が提 供 して い る救 済 方 法 に 関 して根 本 的 な誤 解 に基 づ い て い る と指 摘 し、 そ れ は、1865年

57)

のStHelen'sSmeltingCo.v.TipPing判 決 に お い てWestbury大 法 官 が 説 示 した重 要 な 区別 の 間 違 っ た 適 用 に よ っ て生 起 して い る と論 及 す る。 す な わ ち、

「St.Helen'sSmeltingCo.判 決 は、 ニ ューサ ンス につ い て、 収 穫 物 へ の 有 毒 物 質 の 排 出 また は沈 積 の よ うな 『不 動 産 に 対 す る物 質 的 侵 害 』 を も た らす不 法 行 為 と、 過 度 な騒 音 また は悪 臭 の よ うな 『知 覚 し う る身 体 的 な不 快 感 』 を もた らす 不 法 行 為 に峻 別 した も の と して 扱 わ れ る何 らか の傾 向 が

(18)

SD

あ る よ う に思 わ れ る。 第 一 の範 疇 に属 す る事 案 で は、 イ ンジ ャ ン クシ ョン また は損 害 賠 償 の どち らの方 法 で あ れ 、 法 的 救 済 は不 動 産 につ い て の 損 害 の 発 生 に 対 して な され る もの で あ る こ と は何 らの 疑 い もな い。 この よ うな 事 案 で は、 不 動 産 に関 す る利 益 を有 す る者 の み が 訴 え う る こ とは 明 白 で あ る。 しか し、 第 二 の 範 疇 に属 す る事 案 を不 快 感 に関 す る訴 え また は原 告 が 受 け た も し くは受 け そ うな 身 体 的 な侵 害 に関 す る訴 え と して 考 え る傾 向 が あ る。 こ の よ うな 見 解 に基 づ け ば、 不 動 産 に関 す る原 告 の 利 益 は 当 事 者 適 格 の条 件 また は侵 害 に 対 す る訴 え の権 限 を原 告 に与 え る出 発 点 以 上 の もの

に は な ら な い の で あ る。

Khorasarldjianv.Bush判 決 の 事 案 を第 二 の範 疇 に属 す る もの とす るな らば 、 実 際 に は、 原 告 が 不 動 産 に関 す る利 益 を有 す る こ との必 要 性 を正 当 だ と理 由づ け る こ とは困難 で あ ろ う。 私 が 引用 したDillon控 訴 院 裁 判 官 の 一 節 は、 雄 弁 な理 由 の 開 陳 で あ る。 しか しなが ら、 この前 提 条 件 は、 全 く 間 違 って い るの で あ る。 『知 覚 し う る身 体 的 な不 快 感 を発 生 させ る』 ニ ュ ー サ ン ス の 事 案 に お い て 、 そ の訴 え は、 人 に対 して 不 快 感 を もた らす た め で は な く、 第 一 の 範 疇 の 事 案 に お け る と同様 に、 不 動 産 に対 す る侵 害 を もた らす た め な の で あ る。 そ の 不 動 産 は 『知 覚 し うる』 侵 害 を受 け な か っ た こ とは確 か で あ るが 、 そ の 不 動産 の有 用 性(utility)が ニ ューサ ンス の存 在 に よっ て損 なわ れ て きた の で あ る。 占有 者(possessor)ま た は現 実 の 占有 者 (occupier)に 対 して イ ン ジ ャ ン クシ ョンの権 限 が与 え られ るの は、 不 動 産 の有 用 性 に対 す る不 当 な脅 威 か ら身 を守 る た め で あ り、 彼 ら に損 害賠 償 の 権 限 が 与 え られ る の は、 か か る有 用 性 の減 損 につ い て 救 済 す る た め な の で

あ る。」

要 す る に 、Hoffmann卿 は 、St.Helen'sSmeltingCo.判 決 に お い て Westbury大 法 官 が 説 示 した 、 ニ ュ ーサ ンス を 「不 動 産 に対 す る物 質 的 な侵 害 」 の発 生 と 「知 覚 し う る身体 的 な不 快 感 」 の 発 生 に識 別 す る解 釈 に つ い て検 討 し、

Khorasandjian判 決 の ケ ー ス を人 に対 す る不 快 感 の発 生 の事 案 と して解 す るの で は な く、 不 動 産 の 有 用 性 に 対 す る侵 害 と理 解 す る こ とに よ り、 原 告 が 不 動 産 に 関 す る 利 益 を 必 要 と す る 妥 当 性 を 導 出 し て い る の で あ る 。 そ し て 、 Khorasandjian事 件 に お け る控 訴 院 の判 断 は、 結 果 的 に は妥 当で あ った と して

参照

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