X病棟における転倒転落予防フローチャートの改善とその有用性の検討
キ ー ワ ー ド 転 倒 転 落 予 防 フ ロ ー チ ャ ー ト
I .はじめに
X
病棟では、年間を通して転倒転落がイン シデントの上位を占めている現状がある。し かし、転倒転落に関しては入院時の転倒転落 スコアで危険度を判定しているのみで、あった。そこで、平成
24
年度に転倒転落予防フロー チャートを作成し、転倒後に使用するものとして導入したが、転倒転落件数は減少しなか った。その要因として、
X
病棟では、入院時 に転倒転落スコアで転倒転落の危険度を判定 しているが、看護師の経験年数や力量により、危険度の判定や転倒転落予防対策に差が生じ ていることが考えられた。松本ら
1
)は、「中 堅、達人の看護師は、患者の離床に対する意 欲や言動、性格的要素など多面的な観察を基 に患者を全人的に捉え、それを生かした援助 を行っている」と述べており、経験年数によ って、転倒転落予防対策に差が生じていることが先行研究で明らかとなっている。
また、内田ら
2
)の研究より「転倒アセスメ ントスコアシートと転倒予防フローチャート の併用で、同じ基準を持って、統ーした適切 な予防対策の選択が行われたことが、転倒転 落件数の減少に繋がった」との報告があった。及川ら
3
)の研究では、入院、転入時にフロー チャートを使用しており、「転倒転落を予測し、未然に防ぐためには、適切なアセスメントが 必 要J と述べている。
X
病棟では転倒転落後 にフローチャートを使用していたため、先行 研究結果から入院時に転倒転落スコアと転倒 転落予防フローチャートを併用することが適C棟 8階
O
上 回 奈 緒 美 氏 原 藍 小 林 絢切ではないかと考えた。そこで今回は、転倒 転落後の対策として導入したフローチャート を、入院時に転倒転落スコアと併用して活用 できるように改善し、その有用性について明
らかにしたいと考えた。
I l .
研究の目的転倒転落予防フローチャートを改善し、そ の有用性を明らかにする。
IIL研究の方法
1 .
対象A
病院X
病棟の看護スタッフ30
名2 .
期間2014
年9
月から1 0
月の約1
か月3 .
調査方法自記式解答用紙を用いた留置法で
2
回事例 検討を行った。研究対象者に転倒転落スコア のみを使用した場合の事例検討を行ってもら い、次に同じ事例で転倒転落スコアに加えて フローチャートを使用した場合の事例検討を 千子ってもらった。事例検討用紙には転倒転落スコアの点数と 危険度、転倒転落の危険因子、転倒転落予防 策を記載してもらった。
転倒転落スコアは転倒転落発生要因を項目 ごとのスコアを集計し、危険度と判定するも のであり、
A
病院独自のものを使用した。4 .
倫理的配慮本研究は、奈良県立医科大学附属病院看護 研究倫理委員会の承認を得て実施した。本研
Q U
F同
u
究では、研究対象者の看護師経験年数を間わ
ず、個人が特定できないように配慮した。 回目の叡
1 2
回目の数4 1 4
2 1
2 1 1
211 18
2 1 2
2 1 2
1 6 1 14
1 2 1 8
2 1 2
1 1 1
1 1 0
1 1 1
1 1 2
2 1 8
足腰の弱り 高齢
童図星亙笠 年齢
監重量
5 .
分析方法まず、事例患者の転倒転落スコアの点数と 危険度を単純集計した。
次に、転倒転落の危険因子と転倒転落予防 策の記載内容をコードとして抜き出し、それ ぞれのコードを単純集計して、事例検討用紙
16 2
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刊 一 0
7−
07
3
。
4
一一
同一
1 −
2 1
一O
4
3
。
16 補助具使用
疾患、治療 E 量素使用中 活動領鼠
認識力
の回収数で割合を出した。
1回目の転倒転落スコアのみを使用した場 合の事例検討と、
2
回目の転倒転落スコアに 加えてフローチャートを使用した場合の事例 検討の、転倒転落予防策の項目数と割合を前 後比較した。信用性と妥当性を高めるために、
抜き出す際に、統ーした見解が得られるまで 研究者間で協議を重ねた。
コードを
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6
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結果
事例検討回収率は、配布人数
30名中、 1
回目は 28名 で 93%、2回目は 23名 で 77%I V .
2 .
薬剤
1回目
1 6
点以上 で、あった。転倒転落スコアの点数と危険度は、
は、
6
〜15
点の危険度E
は14
名、19 百
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27 22
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の危険度亜は
14
名であり、2
回目は、6
〜1 5
点の危険度目は1 1
名、1 6
点以上の危険度E
は1 1
名、無回答1
名で、あった。転倒転落の危険因子と転倒転落予防策の集 計結果は、以下の通り(表
l , 2
、図1 , 2
)であった。
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表
1
転倒転落危険因子 亘耳~耳語一一年齢 65 蔀以上 土日産
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図2 転倒転落予防策
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転倒転落危険因子 図 1
表
2
転倒転落予防策力ァゴリ サブカァゴ
lJ コ ド
ベッドのストッパーの確認 ストッパー 1 1 1
ベッドのストッ/{ー確認 10 10
ベッドを適切な高さに調節する ベッドの高さ調節 3
ベッドを適切な高さに調節する 。 7
ベッド環境 ベッド{岳床 ベッド怪床 6 15
ベッド禍の設置( 3 点)閉鎖式にレ、関股したままにする 。
ベッド柵 2 点 or3 点の使用 1 。
ベッド椀 3 点禍使用 。 12
4 点柵 2 。
!柵設置 。
N s コールを手元に重量〈 Ns コー J しを手元に置く 2 11
トイレ歩行時コールしても b いだいことの必要性について説明する 1 1
N s コール Ns コールしてもらっょっ説明 5 2
歩行時、必要時 Ns コールを押すように説明 ベッドから離れる隠は必ず Ns コール世押すょっ指導 4 9
トイレ時 Ns コールしてちっょっ説明 9 3
トイレなど移動時 Ns コールしてちらつ 4 2
環境整備 。 3
ベッド周囲の環債整備 8 12
ベッド周囲の環境整備 床の確認 1 。
ベッド z わり、ベッドからトイレまでの床なと整備 。 1
ベ ッ ド 周 囲 、 患 者 復聞のフイト調整 1 1
の環境整備 適切な履き物の選択 。 10
適切な履き物の選択 履き物の確認(滑りにくいちの) 1 。
履き物はくつにする 2 3
履き物の工夫 1 。
ベッド周囲に必要物昆を設置 ベッド周囲に必要物品設置 。 10
巡視 鎮固な巡視 鎮回巡視 6 12
夜間の頻固な問視 2 2
P トイレの使用を検討する 1 4
室内トイレ or 手すり付き P トイレ使用横討 P トイレ使用 。 1
夜間は P トイレ使用を勧める 3 。
室内トイレ or 手すり付き P トイレ使用検討 。
4ヰ
夜間尿器使用 9 。
尿器使用検討 患者了承される場合はベッドサイドでの尿器使用 。
尿器の使用検討 。
訪室の様、トイレ誘導を行う 2 。
排池介助 排尿誘導を定期的に行う 。
排池パターンに基づいたトイレ誘導 適宜トイレ誘導 1
トイレ誘導 2 7
排?世パターンに基づいたトイレ誘導 。 5
トイレ歩行時付き添い 5 2
トイレ歩行E 寄付き添い 歩行時紺き添い 。 3
ふらつきないか男守り幽要時介闘する 。 1
トイレ使用時は傍を離れない トイレ使用時は傍を離れない 。 8
排?世時見守り
()2
壁側にベッドをつける
つ10
ベッドを壁側に寄せる
ベッドを~側に寄せてスペースを確保する1 。
ベッド移動 1 。
一 一
ベッドを詰所の近くに移動検討 ベッドを詰所の近くに移動倹討 。 7
ベッドの位置 ベッドを詰所の l a くにする 。 1
トイレに近いベッドに移動する 14 2
ベッドをトイレの近くに移動検討 トイレの近くにベッド移動検討 。 2
ベッド(部屋の配置)を蓄えるこ今{也の患者へ移動をお願いする 。
トイレまでの距離を近く 1 。
センサーマット債討 4 。
センサーマット使用 。
転倒ムシ考慮 2 。
転倒転港予防具 センサーマット。 r 転倒ムシ使用検討 協力を得られないようであれば転倒ムシ使用 2 。 協力を得られない跨は、センサーマットや転倒ムシの使用を検討する 6 。
センサーマット o 崎王倒ムシ使用 。 10
センサーマット o 南倒ムシ使用検討 。 4
酸素チューブのルート整備 8 9
歩行持はルート整理をする 1 2
酸素チューブ、点商、ドレーン類がある揚合はルー 適宣ルート整理 1 4
ルート整理 ト整理 02 延長チューブをトイレまで窟くように適切な長さにレて、不使用 1
時ベッドサイドで整頓する 。
酸再チューブ、点滴、ドレーン類がある場合はルート整理 3
酸素チューブには S 字フック使用 酸素チューブには S 字フック使用 。 10
患者へ転倒リスクが高い」とを説明 3 2
指導 転倒転落リスクについて説明 転倒転渇のリスク予防についての説明 1 。
一人で歩行されているよつであれば醇ばなかった」とを注思するので 1 はなく、山配であることを伝える 。
リハビリ リハビリの盟入 リハビリの介入 5 。
洗面介朗 洗面介助をする 1 。
p
雲宮廷玉1
、?す 同 事 苗I,口当日| っ
オA D L 介助
補問具の使用、枝とか歩行器 1 。
補助具の使用
/~\らつき時には安柱台の使用を促してみる
1 。
日珂の A DL
評 価日ノマの A Q U B
目r
、一1
患 者 把 濯 の だ め の 暖眠薬の内自 E 時間の確認や効果をアセスメントする 1 。
アセスメント 眠剤の内服時間の確認や効果をアセスメント 目 民 淘 J の副作用の状況観察 1 。 寝前にレンドルミン内服されているだめ、日申に活動を促す 1 。
認知レベルの観察 認知レベルの観察 1 。
6 1
v . 考察
転倒転落スコアの危険度は全て
E、または
Eと回答できており、フローチャートは危険 度 E 、または皿の際に使用するものであるた め、回答者全員が基準を満たしていた。しか し、転倒転落スコアの点数自体にばらつきが 見られた。また、 1 回目の転倒転落予防策に もばらつきが見られた。松本ら心は「看護師 経験年数が長くなるほど多角的に患者を観察 し、患者の変化を予測した援助を実践してい た」と述べている。このことから、看護師の 転倒転落の危険予測能力や、予防策の介入に 差があり、統ーした看護が提供できていない
ことが考えられる。
転倒転落の危険因子は、
1回目の転倒転落 スコアのみを使用した場合と、 2回目の転倒 転落スコアと併用してフローチャートを使用 した場合の割合に大きな差は見られなかった が、転倒転落予防策は
2回目で統一性が上が っていた。鵜浦ら 5 )は、「フローチャートの使 用により、入院時より患者の状態に合わせた 予防対策を実施できたことは、看護師のアセ スメント能力や予防対策の不十分さを補える 有用性があったと考える J と述べている。こ のことより、看護師の転倒転落の危険予測能 力が不十分であっても、フローチャートを使 用することにより、統ーした転倒転落予防策
の介入ができると考える。
今回、フローチャートを改善したが、転倒 転落予防策に「トイレに近いベッドに移動」
「尿器使用」の項目が含まれておらず、 1回 目では回答率が多く、
2回目では減少すると いう結果となり、再度改善する必要があるこ
とがわかった。
本研究においてフローチャートの有用性は 明らかにできたため、今後はフローチャート の改善を重ね、導入することが課題と考える。
VI.
結論
1 . 看護師の転倒転落の危険予測能力に個人 差があり、予防策の介入が不十分で、あっても、
入院時に転倒転落スコアと併用してフローチ ャートを使用することにより、統ーした転倒 転落予防策の介入ができたことから、フロー チャートの有用性は明らかとなった。
2 . 今後の課題は、フローチャートの改善を 重ね、導入することだと考える。
引用文献
1 )松本格枝
e丹羽恭子@藤村麻生,他:開 腹術後患者の初回歩行時における転倒予防に 関する看護師の観察と援助の実際看護師経 験年数からの分析,日本看護学会論文集成 人看護 I, ( 4 2 ) , p . 2 0 2 , 2 0 1 2 .
2 )内田志保子@甲地泰子@馬場弘子,他:
転倒予防対策チームによる取り組みの効果,
三病医誌,
1 7
(1),p . 1 9 , 2 0 0 9 .
3 )及川結香@山名泰子:フローチャート型 転倒予防アセスメントシートを使った対策,
リハビリナース, 6 ( 3 ) , p . 2 4 ・ 3 0 , 2 0 1 3 . 4 )前掲書 1 ) , p . 2 0 2
5 )鵜浦真澄ー板倉朋世@粛藤幸江:転倒転 落予防フローチャートによる転倒予防対策の 有用性ーリスクレベル分類からの分析 ,看 護管理,( 3 6 ) , p . 4 7 0 , 2005
戸 ︒