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題目 スフィアアンカーマップによる

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(1)

平成

19

年度

筑波大学第三学群情報学類

卒業研究論文

題目 スフィアアンカーマップによる 大規模

2

部グラフの

3D

可視化と閲覧方法

主専攻

知能情報メディア

著者名 伊藤 隆朗

指導教員 田中二郎 三末和男 高橋伸 志築文太郎

(2)

要旨

2

部グラフは現実世界の様々な場面で現れ,これらを視覚化することは関係構造の把握を助ける.

そのため,効果的な描画手法の研究が盛んに行われており,特に大規模グラフの描画手法の開発が望 まれている.アンカーマップは,一部のノードを

2D

の円周上に等間隔に配置して固定することで関 係構造の把握を助ける描画手法である.しかし,

2D

のアンカーマップでは,大規模グラフを描画し た際に可読性が低くなる問題が生じる.

本研究では,大規模グラフの描画の際に広い空間を確保するため,アンカーマップを

3D

空間に拡 張し,一部のノードを球面上に配置する描画手法「スフィアアンカーマップ」を開発した.

2

種類の レイアウト方法を考案し美的基準に従った比較を行った.また,3D空間上にレイアウトしたグラフ の閲覧方法として被写界深度を用いた表現を行った.

3D

空間へ拡張することにより,大規模

2

部グ ラフにおいても可読性を維持できると考えられる.

(3)

i

目次

1

序論 ... 1

1.1

情報可視化と

Graph Drawing ... 1

1.1 2

部グラフ ... 1

1.2 2

部グラフの表現手法 ... 2

1.3

アンカーマップ ... 3

1.3.1

アンカーマップ表現 ... 3

1.4 2D

アンカーマップの問題点 ... 4

1.5

本研究の目的とアプローチ ... 5

1.6

本論文の構成 ... 6

2

関連研究 ... 7

2.1 2

部グラフの可視化手法 ... 7

2.2 3D

可視化手法 ... 7

2.3

グラフの閲覧手法 ... 8

2.4

本研究の位置づけ ... 8

3

章 3D空間へのグラフレイアウト手法 ... 9

3.1

アンカーマップの

3D

化 ... 9

3.2

美的基準 ... 10

3.2.1 2D

アンカーマップの美的基準 ... 10

3.2.2

スフィアアンカーマップの描画規約 ... 10

3.2.3

スフィアアンカーマップの描画規則 ... 11

3.3

レイアウト方法 ... 13

3.3.1

レイアウト方法の概要 ... 13

3.3.2

スプリングモデル ... 13

3.3.3

レイアウト方法1 力制御法 ... 15

3.3.4

レイアウト方法2 配置探索法 ... 18

4

章 3Dグラフの閲覧方法 ... 20

4.1

閲覧方法の必要性 ... 20

4.2

表示方法 ... 21

4.3

グラフ・カメラの操作 ... 21

4.4

被写界深度を用いた閲覧方法 ... 22

4.4.1

被写界深度表示 ... 22

4.4.2

焦点・被写界深度の操作 ... 23

4.5

ラベルの表示 ... 23

(4)

ii

4.5.1 Circular

表示 ... 25

5

開発した描画ツールの機能 ... 27

5.1

ツールの概要 ... 27

5.2

機能説明 ... 28

5.2.1

データの読み込み・保存 ... 28

5.2.2

自動レイアウト ... 30

5.2.3

閲覧方法 ... 32

6

評価と考察 ... 35

6.1

レイアウト方法の評価と考察 ... 35

6.1.1

アンカー分散の評価 ... 35

6.1.2

アンカーレイアウトの評価

1

正二十面体 ... 37

6.1.3

アンカーレイアウトの評価

2

実際のデータ ... 40

6.2

閲覧方法の考察 ... 44

6.2.1

回転・被写界深度表示 ... 44

6.2.2

ラベルの表示方法 ... 45

6.3 2D

アンカーマップとの比較 ... 46

7

結論 ... 50

謝辞 ... 51

参考文献 ... 52

(5)

iii

図目次

図 1

2

部グラフの代表的な表現手法 ... 2

図 2

2D

アンカーマップ ... 3

図 3 アンカーマップの特徴 ... 4

図 4 2Dアンカーマップによる大規模

2

部グラフの描画 ... 5

図 5 スフィアアンカーマップ ... 6

図 6 本研究の位置づけ ... 8

図 7 スフィアアンカーマップの利点... 9

図 8 力の制御 ... 15

図 9 フェーズ

1・2 ... 16

図 10 フェーズ

2・3 ... 17

図 11

3D

空間の配置モデル ... 21

図 12 被写界深度レンダリング ... 22

図 13 ラベルの表示方法 ... 24

図 14

Circular

表示 ... 25

図 15

Circular

ラベルの表示位置 ... 26

図 16 ツールの概観 ... 27

図 17

GraphML

の読み込み ... 28

図 18 ノード色・ラベルの設定 ... 28

図 20 アクセスログの可視化 ... 29

図 19

DBLP

共著者関係の抽出 ... 29

図 21

GraphML

の保存 ... 30

図 22 力制御法による自動レイアウト ... 30

図 23 配置探索法による自動レイアウト ... 31

図 24 スフィアアンカーマップの回転 ... 32

図 25 ズームイン・ズームアウト ... 32

図 26 焦点と被写界深度の調節 ... 33

図 27 焦点の操作 ... 34

図 28 ラベル表示の切り替え ... 34

図 29 アンカーの分散評価 ... 35

図 30 隣接するアンカー間の距離の標準偏差 ... 36

図 31 隣接するアンカー間の距離 標準偏差/平均 ... 36

図 32

G7

の可視化例 ... 42

図 33 G9の可視化例 ... 43

図 34

G8

2D

3D

との比較 ... 47

(6)

iv

図 35

G9

2D

3D

との比較 ... 48 図 36 網図形式と

2D

アンカーマップの特徴を合わせた表現 ... 49

(7)

1

1

序論

1.1

情報可視化と

Graph Drawing

情報可視化(Information Visualization)とは,コンピュータグラフィックスを活用して抽象的な データを人間が直接見ることができる形で表現し,人間のデータ理解を支援することを目的とした研 究分野である.

コンピュータサイエンスにおける可視化の研究には,科学技術計算の結果をコンピュータグラフィ ックスで表現する科学的可視化(Scientific Visualization)と呼ばれる研究分野がある.この技術を科 学技術分野だけではなく,より広い抽象的なデータを対象にした研究分野が情報可視化である.

抽象的なデータの関係や構造を表現するためにグラフがよく使われる.グラフを適切に可視化する ことにより,抽象的なデータの関係を人間が理解しやすいように表現することができる.しかしなが ら,データ量が多くなると人の手だけでレイアウトを行うことは困難となる.そのため,グラフを計 算機によって人間が理解しやすいように自動的に描く手法が求められており,情報可視化の中でも特 にグラフ描画問題(Graph Drawing)と呼ばれている.本研究は,このグラフ描画問題を研究対象とし ている.

1.1 2

部グラフ

顧客とその顧客の購入した商品,論文と著者,Web ページとそのページの閲覧者など,実社会の 様々なところで

2

つの集合間の関係が現れる.このような

2

つの集合間の関係構造は

2

部グラフと して表現すことができる.

2

部グラフとは,ノードを二つの集合に分割し,各集合内のノード同士にエッジが無いようにでき るグラフのことであり,以下のように表すことができる.

グラフ:

G = ( V , E )

ノード:

V = AB

ただし,

AB =

φ エッジ:

EA × B

顧客とその顧客の購入した商品を例に挙げると,顧客をノードの集合 A の要素,商品をノードの 集合 B の要素とし,顧客とその顧客の購入した商品のノード間にエッジをつなぐことで,顧客と商 品との関係を

2

部グラフとして表現することができる.

(8)

2

1.2 2

部グラフの表現手法

2

部グラフの代表的な表現手法を紹介する.図 1 は商品と購買者の関係を

3

つの表現方法を用い て表した例である. (a)は行列形式である.購買者が買った商品の欄に購入した数を記入している.

売り上げ数など細かな情報を読み取ることができるが,商品間の関係など関係構造の直感的な把握に 向いているとは言い難い.次に,(b)のような

2

層形式で表現したものが挙げられる.2 層形式はネ ットワーク図の表現でよく用いられる網図形式の中でも

2

部グラフに特化した表現である.片方の 列に購買者を,もう片方の列に商品を並べて書き,購入者と買った商品をエッジでつないだものであ る.商品と購買者の描かれる領域がはっきりと分かれているため,視覚的な区別がしやすいと言える.

2

部グラフの表現としては最もオーソドックスなものである.(c)はスプリングモデル[1]による網図 形式で表現したものである.この表現は関連性の全体的な構造が視覚的に把握しやすい.しかしなが ら,商品と購買者のノードが混在しているためそれらの区別が明確ではない.

図 1

2

部グラフの代表的な表現手法

オレンジ

ジュース 紅茶 コーラ りんご

ジュース お茶 野菜

ジュース コーヒー

A さん 0 1 0 1 2 1 0

B さん 3 2 0 4 0 3 0

C さん 2 0 11 0 0 0 5

E さん 4 2 2 1 2 0 1

F さん 0 2 0 2 3 0 0

(a)行列形式

(b)2

層形式 (c)スプリングモデルによる 網図形式

(9)

3

1.3

アンカーマップ

1.3.1

アンカーマップ表現

2

部グラフの効果的な描画手法としてアンカーマップがある[2][3].アンカーマップとは,グラフ 描画スタイルの

1

つで,一部のノードに対してレイアウトの制約を課し,それ以外のノードは座標 系の制約を受けない自由レイアウトを行うものである.

現在提案されているアンカーマップの描画手法は,

2

部グラフの片方の集合のノードをアンカーと して

2D

の円周上に等間隔にレイアウトして固定し,もう片方の集合のノードをフリーノードとし,

スプリングモデルを利用して隣接するアンカーとの関係において適切な位置にレイアウトするもの である.これ以降,本論文では,アンカーに制約を課した

2

部グラフの描画スタイルを「アンカー マップ」,2Dの円周上にアンカーをレイアウトするアンカーマップを特に「2Dアンカーマップ」と 呼ぶ.図 2 は先の商品と購買者の関係を

2D

アンカーマップによって表現したものである.先の

2

部グラフの表現手法と比べると,ノードの区別が明確であり,なおかつ商品同士の関連性など全体的 な構造も視覚的に把握しやすい.

図 2

2D

アンカーマップ

2D

アンカーマップには以下のような特徴がある.

z アンカーを基準としたフリーノードの位置の把握

フリーノードはスプリングモデルによって関連のあるアンカーの近傍にレイアウトされる.アンカ ーは等間隔に固定されているため,アンカーを基準としてそのフリーノードがどのあたりに位置する かを視覚的に把握することができる(図 3(a)).

(10)

4

z アンカーとの関係に基づくフリーノードクラスタの把握

アンカーとの接続関係により,フリーノードをクラスタに分けることができる.そのようなクラス タの存在およびそれらがどのアンカーとの接続によって形成されるかを把握することができる(図

3(b)).

図 3 アンカーマップの特徴

1.4 2D

アンカーマップの問題点

図 4(a)は,

52

個のアンカーと

1137

個のフリーノードを描いた例であり,図 4(b)は

210

個のアン カーと

697

個のフリーノードを描いた例である.図 4(a)では,フリーノードの分布に偏りがあるこ とはわかるものの,ノードがエッジを覆ってしまうため左側にある大きなフリーノードクラスタがど のアンカーにつながって構成されているかなどの連結関係を見ることが難しい.また,この大きなク ラスタは複数の小さなクラスタによって構成されていると考えられるが,それらが混合してしまい視 覚的に区別することができない.図 4(b)では,フリーノードが中心に無いということは分かるもの の,円周上にはアンカー,アンカーのラベル,フリーノード,エッジが集中して描画されてしまい非 常に読みづらい.このように,2Dアンカーマップでは大規模グラフを可視化した際に可読性が低下 してしまう問題がある.

(a)

アンカーを基準としたフリーノードの 位置の把握

(b)

フリーノードクラスタの把握

(11)

5

4 2D

アンカーマップによる大規模

2

部グラフの描画

1.5

本研究の目的とアプローチ

本研究は,大規模な

2

部グラフを描画した際にも可読性を維持し,人間のグラフの関係構造理解 を支援することを目的とする.そのために,従来

2D

空間上で描かれていた

2D

アンカーマップを

3D

空間に拡張する(図 5).2D 空間から

3D

空間へと拡張することで広い空間をレイアウトに使うこ とができ,大規模なグラフの描画に対応できると考えられる.3D空間へ拡張を行う際,アンカーの レイアウト方法と

3D

構造を読み取るための閲覧方法が必要となる.本研究ではこの

2

つの方法の 開発を目標とする.

(a)フリーノードクラスタの混合

(b)アンカー周辺の関係が読み取りづらい

(12)

6

5

スフィアアンカーマップ

1.6

本論文の構成

本論文の構成は以下のとおりである.本章では,

2

部グラフの表現手法と問題点を説明し,研究の 目的とアプローチを述べた.第

2

章では関連研究を述べ,第

3

章では開発した

3D

空間へのグラフレ イアウト方法を述べる.第

4

章では,3D空間にレイアウトしたグラフの閲覧方法を述べ,第

5

章で 開発したツールを紹介する.第

6

章で評価と考察を述べ,第

7

章で結論を述べる.

(13)

7

2

関連研究

2.1 2

部グラフの可視化手法

Fößmeierらは, 2部グラフの片方の集合のノードを直線状にレイアウトし,もう片方の集合のノー

ドを直線の上か下に制約を持たせない形でレイアウトするTwo-Sides Freeモデルを提案し,与えられ た2部グラフをTwo-Sides Freeモデルでエッジ交差なしにレイアウトすることはNP困難であるこ とを証明した[4].また,

Zheng

らは,

2

部グラフの片方のノード集合を直線状にレイアウトし,も う片方を直線より上の空間にレイアウトする

One-Layer-One-Cluster

モデルと

2

部グラフのそれぞ れの集合を重ならない領域にレイアウトする

Two-Cluster

モデルを提案し,これらのモデルに関 してエッジ交差最小のレイアウトを行うことは

NP

完全問題であることを証明した

[5]

Newton

らは

2

部グラフの

2

層表現における直線上でのノードの並び順の決定方法として,エッジ交差の最小 化を指標としたヒューリスティックなレイアウトの探索方法を提案した

[6]

Giacomo

らは,

2

部グラ フを二つの平行な曲線上にエッジが交差しないようにレイアウトする手法を提案した[7].このよう に,2部グラフの可視化手法に関する研究の多くが2層形式やそれを拡張したモデルでのエッジ交差 最小化についての定理を証明したものや,交差を最小化するようなレイアウトを目指したものである.

これに対し本研究は大規模2部グラフにおいて高い可読性を維持するための新たな表現方法を開発 するものである.

2.2 3D

可視化手法

Robertson

らは,木構造を

3D

空間上にレイアウトすることで大規模グラフ描画時にも可読性を保

つことのできる描画手法

Corn Tree

を開発した[8].また,Munznerらは

Corn Tree

を改良し,3D ハイパボリック空間上に木構造をレイアウトすることで

Focus+Context

的な要素を持たせ,さらに 大規模なグラフの描画にも対応することができる描画手法

H3

を開発した[9].

Hong

らは

Sugiyama

method

を拡張し有向グラフを

3D

空間上の

2

つの平行な平面に分けてレイアウトすることで視覚的

な混雑を軽減する描画手法を開発した[10].本研究はこれらと同様に

3D

空間上にグラフをレイアウ トすることにより大規模なグラフ描画に対応しようというものであるが,

2

部グラフを扱うという点 で異なっている.

Dwyer

らは

2D

平面に描いたネットワーク図を

3D

空間上に平行に並べることでネットワークの重

要性を比較しやすくする描画手法を開発した[11].

Marco

らは

2D

平面に描いたグラフを時系列に沿 って

3D

空間上に並べることで動的グラフの描画を行う手法を開発した[12].また,Hoらはクラス タグラフの各クラスタを

2D

平面にレイアウトし,クラスタの親となるグラフを

3D

空間にレイアウ

(14)

8

トすることで可読性を向上する描画手法を開発した[13].これらは,複数の

2D

グラフを

3D

空間上 にレイアウトし情報を付加することで

2D

グラフ間の比較することや,2Dグラフでは難しいような グラフ構造の把握を行いやすくしたものである.

2.3

グラフの閲覧手法

Ahmed

らは,

3D

空間上にレイアウトしたグラフを閲覧するためのカメラパスの自動生成方法[14]

2.5D

グラフのナビゲーション方法[15]を提案した.アンカーマップに関する閲覧手法の取り組み として,佐藤らは

2

部グラフを類似度情報に基づいてクラスタリングしておき,縮退表示や等類似 度線表示といった表示をインタラクティブに調節することにより,大規模

2

部グラフ描画時のアン カーマップの可読性向上を行った[16].

2.4

本研究の位置づけ

本研究の位置づけを図 6に示す.本研究は,2.1 で述べた

2

部グラフの可視化研究と

2.2

で述べ

3D

可視化研究のうちの特に大規模グラフの可視化に焦点をおいた研究に属するものである.

6

本研究の位置づけ

(15)

9

3

3D

空間へのグラフレイアウト手法

3.1

アンカーマップの

3D

本研究では

2D

アンカーマップの特徴を維持したまま,より大規模な

2

部グラフに対応できるよう

2D

の円周上という制約を

3D

の球面上という制約に変更し,

3D

空間上にグラフをレイアウトする手 法を開発した.球面以外にも,アンカーの制約の仕方にはいろいろなバリエーションが考えられるが,

第一の試みとして円から球という拡張を行った.球状のアンカーマップであることから,このような 描画手法をスフィアアンカーマップと呼ぶ.

スフィアアンカーマップは

2D

アンカーマップと比べてより多くのレイアウトスペースを使用す ることができる.これによって,2Dアンカーマップの大規模化の際の問題に対処することができる と考えられる(図 7(a)).アンカーに関しては

1D

であったものが

2D

に拡張されることによってよ り多くのアンカーをレイアウトした場合にも可読性を維持することができ,位置関係の表現に広がり を持たせることができる(図 7(b)).

図 7 スフィアアンカーマップの利点

(a)フリーノードクラスタ混合の解消

(b)アンカー間の関係表現の広がり

(16)

10

3.2

美的基準

スフィアアンカーマップのレイアウト方法を開発するにあたり,美的基準の設定を行った.一般的 にグラフ描画問題では美的基準を設定しそれを満たすようなレイアウト方法を開発する.スフィアア ンカーマップの美的基準は,2Dアンカーマップで用いられている美的基準をもとに,スフィアアン カーマップに適合する形に拡張することによって設定した.

3.2.1 2D

アンカーマップの美的基準

まず,スフィアアンカーマップの美的基準のもととなる

2D

アンカーマップの美的基準を紹介する.

2D

アンカーマップの美的基準は以下の通りである.

z

(E1) [描画規約]

直線配線:エッジを直線で描く

z

(E2) [描画規約]

複合座標系:2部グラフG = (A ∪ F, E) に対して,Aの要素(アンカー)は

円周上に等間隔(正多角形の頂点上)にレイアウトする.Fの要 素(フリーノード)は位置の制約を受けない.

z

(E3) [描画規則]

隣接ノードの近接化(=エッジ線長の最小化)

z

(E4) [描画規則]

エッジ交差の最小化

z

(E5) [描画規則]

同一のフリーノードを共有するアンカーの近接化

z

(E6) [描画規則]

同一クラスタに属するフリーノードの近接化

このうち描画規約とは必ず守るべき制約であり,描画規則とは良い描画の基準となるものである.

3.2.2

スフィアアンカーマップの描画規約

スフィアアンカーマップの描画規約は以下の通りである.

z

(C1)直線配線:エッジを直線で描く

z

(C2)複合座標系:2

部グラフG = (A F, E)に対して,Aの要素(アンカー)は球面上にレイア

ウトする.Fの要素(フリーノード)は位置の制約を受けない.

p(n)をノードnの位置を表す

3

次元ベクトル,rを球の半径とすると,

(式 1) p( a ) = r

aA

スフィアアンカーマップの特徴的な部分は

C2

の「アンカーを球面上にレイアウトする」という表

(17)

11

現である.2Dアンカーマップでは

E2

描画規約に含まれていた「等間隔に」という表現が削られて いる.2Dアンカーマップでは,円周上に等間隔にレイアウトすることは正多角形の頂点のように一 意に定めることが出来るため描画規約となっていた.しかし,任意の数の点を球面上に等間隔にレイ アウトすることは出来ない.そのため,スフィアアンカーマップではこの「等間隔」という条件を描 画規約から外すこととした.

3.2.3

スフィアアンカーマップの描画規則

スフィアアンカーマップの描画規則は以下の通りである.描画規則はスフィアアンカーマップの評 価基準やレイアウトの基準として利用するため式の定義を行った.

p(n)は ノ ー ド n の 位 置 を 表 す

3

次 元 ベ ク ト ル ,|A| = m と し た と き の ア ン カ ー の 集 合 を

{ a a a a

m

}

A =

1

,

2

,

3

, K ,

|F| = tとしたときのフリーノードの集合を

F = { f

1

, f

2

, f

3

, K , f

t

}

,エッジの集

合をE,ノードnに接続するh個のノードの集合を

L( n ) = { l

1

, l

2

, l

3

, K , l

h

}

,rを球の半径とする.

z

(R1)隣接ノードの近接化(=エッジ線長の最小化)

(式 2)

(

)

E f a

f a

,

) ( p ) (

p

の最小化

z

(R2)同一のフリーノードを共有するアンカーの近接化

(式 3) ∑ ∑

<

⎟ ⎟

⎜ ⎜

⎟⎟ ⎠

⎜⎜ ⎞

⎛ •

F

f l l f i j

j i

j

i

r

l l

), ( L

, 2

1

p ( ) p ( )

cos

の最小化

z

(R3)

アンカーを球面上に一様にレイアウト

(式 4)

i j m

a

i

a

j

<

1

min

の最大化

(18)

12

z

(R4)

同一クラスタに属するフリーノードの近接化

(式 5)

( )

( ) ( ( ) )

( )

( ) ( ( ) )

<

<

<

t j i

j i t

j i

j i t j i

j i j

i

d f f s

f f

d f f s f f

1

2 1

2 1

, d ,

sim

, d ,

sim

の最小化

( )

) L(

) L(

) L(

) , L(

sim f f

f f f

f ∪ ′

∩ ′

′ =

, d ( f , f ) = p( f ) p( f )

( ) ( )

<

=

t j i

j

i

f

t f s t

1

, 1 sim

2

, ( ) ( )

<

=

t j i

j

i

f

t f d t

1

, 1 d

2

R1

は,E3 をもとにして設定した基準である.この基準は一般的なグラフ描画でも良く用いられ る美的基準であり,スフィアアンカーマップでも採用した.

R2

は,E5をもとにして設定した基準であり,2Dアンカーマップの大きな特徴の一つであるため 採用した.R2の式は,フリーノードに接続するアンカー間の弧の長さの総和を表しており,スフィ アアンカーマップ用に新たに定義した.この値が小さいということは同じフリーノードを共有するア ンカーが近くにレイアウトされていることを表す.

R3

は,元々E2 にあったがスフィアアンカーマップでは描画規約から外した「等間隔にレイアウ ト」を描画規則としたものである.ここで用いた式は,球面をn個の同じ半径の円が重ならないよう に敷き詰める問題に使用される指標であり[19],スフィアンアンカーマップの「アンカーを一様にレ イアウトする」という条件として適当であると考え採用した.

R4

E6

をもとに設定した基準である.

R4

の式はフリーノード間の類似度と距離との相関係数を 最小化することを示している.つまり,類似度と距離が逆相関になることを基準としている.類似度 にはジャッカード係数を用いた.

2D

アンカーマップの描画規則

E4

はスフィアアンカーマップの描画規則では考慮に入れていない.

3D

空間の場合,線分が交差することのほうが稀である.そのため,E4 は基準として適当でないと 判断し採用しなかった.

(19)

13

3.3

レイアウト方法

3.3.1

レイアウト方法の概要

スフィアアンカーマップの可読性は主にアンカーのレイアウトで決まる.そのため,描画規則を満 足するようなアンカーのレイアウト方法が重要となる.

2D

アンカーマップでは,アンカーの順序を入れ替えながら定めた基準の値を小さくするような順 序を探索していく方法を用いている.この方法は正多角形の頂点のようにアンカーの配置候補となる 位置があらかじめ定まっており,なおかつアンカーの並びという

1D

の関係を考えるものである.し かし,スフィアアンカーマップではアンカーの配置候補となる位置が定まっていない上,アンカーは 2Dのレイアウトを考える必要があるため,

2D

アンカーマップで用いている方法を直接利用するこ とはできない.

そこで,本研究では

2

種類のアンカーのレイアウト方法を開発した.ひとつは,スプリングモデ ルの力の制御を行うことでレイアウトを求める方法である.初期配置としてノードをランダムな位置 に配置し,スプリングモデルを用いてレイアウトを行う.その際,働く力を

3

つのフェーズに分け て制御することにより,描画規則を満足するようなアンカーのレイアウトを求めるという方法である.

もうひとつは,アンカーをスプリングモデルの力の制御によって球面上に一様に分散させて配置候補 を決めた後,アンカーの位置を入れ替えながら描画規則の式の値を小さくようなアンカーのレイアウ トを探索していく方法である.

3.3.2

スプリングモデル

アンカーのレイアウト方法を述べる前に,スフィアアンカーマップのレイアウトに使用されるスプ リングモデルについて述べる.スプリングモデルは力指向アルゴリズムの一種である.グラフをスプ リングや電磁力の働くような力学モデルと考え,シミュレーションを行うことによりモデルの安定状 態を求めレイアウトを決定するものである.

スフィアアンカーマップ中では,

2

部グラフG = (A F, E)に対してノード同士の斥力とスプリン グの収縮力が働く.n,n’(n

n’)をノード,p(n)をノードnの位置を表す

3

次元ベクトル,k1を斥力 係数,k2 をスプリング力係数とするとき,スフィアアンカーマップ中で働く力を以下のように表す ことができる.

(20)

14

z 斥力

(式 6)

3

) p(

) p(

) p(

) 1 p(

1)

rep( n n'

n' k n

n,n',k

= −

z スプリングの収縮力

(式 7) spr( n,n',k 2 ) = k 2 ( p( n )p( n' ) )

斥力は同じ電荷を持った荷電粒子が反発する際の振る舞いを表している.また,スプリングの収縮 力では描画規則

R1

からスプリングの自然長を

0

としている.スフィアアンカーマップでは,アンカ ー,フリーノード間の斥力はレイアウトへの影響の少なさと計算コストの理由から無いものとしてい る.

各ノードに対してこれらの力の合力を計算し,そのノードを合力の方向に大きさに比例した微小な 距離だけ移動を行う.スフィアアンカーマップではアンカー,フリーノードに別の力の係数を用いて 計算を行う.ノードnの接続するノードの集合を

L(n )

εを微小係数,

ra,sa,rf,sf

を力の係数とする とき,アンカー,フリーノードの移動量は以下のように表すことができる.

z ノード

n

の移動量

(式 8)

のとき    

 

のとき    

 

⎪ ⎪

⎪ ⎪

⎟⎟ ∈

⎜⎜ ⎞

⎛ +

⎟⎟ ∈

⎜⎜ ⎞

⎛ +

=

∑ ∑

∑ ∑

F n n,a,

n,f',

A n n,f,

n,a', n

n f F

f a

n a A

a f n

' ,

' L(n)

' ,

' L( )

) sf spr(

) rf rep(

) sa spr(

) ra rep(

) dis(

ε ε

以上の移動量を元に各ノードの位置を更新する.球の半径をrとするとき,ノードnの新しい位置 p’(n)は以下のように表すことができる.

z ノード

n

の更新位置

(式 9)

⎪ ⎩

⎪ ⎨

∈ +

+ ∈ +

=

のとき    

 

のとき   

 

F n n

n

A n n

n

n r n

n

) ( dis ) ( p

) dis(

) p(

) dis(

) p(

) ( p'

アンカーは常に半径rの球面上に位置される.このプロセスを繰り返し,安定状態を求めることで スフィアアンカーマップのレイアウトを求める.

(21)

15

3.3.3

レイアウト方法1 力制御法

まず試みたのは,ノードの安定状態を見ながら力の係数

ra,rf,sa,sf

を段階に応じて制御することに より,描画規則を満足するようなレイアウトを求める方法である.この方法を「力制御法」と呼ぶ.

初期配置としてアンカーは球面のランダムな位置に,フリーノードは球内部のランダムな位置に配 置する.その後,スプリングモデルと力の制御によってレイアウトを求める.力の制御は,主に

3

つのフェーズに分けて行う.フェーズ

1,2

では主にアンカーのレイアウトを求め,フェーズ

3

で最終 的なフリーノードの位置を決定する.フェーズの移行は,ノードの安定状態を見ながら行う.各フェ ーズの力の制御は図 8に示すように行われる.

図 8 力の制御

フェーズ

1

R1

の「エッジ線長の最小化」と

R2

の「同一のフリーノードを共有するアンカーの 近接化」を満たすようなアンカー同士の位置関係を求めるフェーズであり,フェーズ

2

R3

の「ア ンカーを球面上に一様に配置」を満たすようなレイアウトを求めるフェーズである.

フェーズ

1

は,raの値が小さく,sa>0の状態である.このとき,アンカーはスプリングの力の影 響を強く受けるため,同一のフリーノードを共有するアンカーが近くに配置されることとなる.また,

スプリングは収縮しようとするためエッジ長の短い位置関係に配置される(図 9 上段).

フェーズ

2

では,raの値が大きく,sa =0の状態である.ここでは,アンカーにはスプリングの影 初期配置 フェーズ1 フェーズ2 フェーズ3

ランダム 配置

フリーノードを共有するア ンカーの近接化

アンカーを球面上に一

様にレイアウト 配置完了

rf ー rf=0 rf=0 rf>0

ra ー ra>0 ra>>0 ra>>0

sf ー sf>0 sf>0 sf>0

sa ー sa>0 sa=0 sa=0

安定 安定

(22)

16

響が無く,互いに反発するだけの状態となる.球面上への頂点分散のひとつとして頂点を荷電粒子と して各粒子のエネルギーを最小化するという指標があり[19],フェーズ

2

の状態はこの球面上の荷電 粒子の振る舞いのシミュレーションに相当する.そのため,このフェーズでは球面上にアンカーが一 様に分散していくこととなる(図 9 下段).

図 9 フェーズ

1・2

フェーズ

1

から

2

への移行は,フェーズ

1

がある程度安定状態になったときに行う.安定状態の 判定には様々な方法が考えられるが,本研究ではアンカーの総移動距離が閾値

ps

より小さくなった ときに行うこととした.

ps

はアンカー数に比例する.

z フェーズ

1

の安定状態の判定

(式 10) ∑ dis ( ) ps

<

A a

a

z フェーズ

1

の閾値

ps

(式 11) ps = c A

c

0

以上の定数)

フェーズ

2

sa=0

であるため,アンカーへのフリーノードの影響は無い.つまり,フリーノード からみた場合にアンカーは固定されたものとなる.そのため,フェーズ

2

ではアンカーが球面上に 分散していくに従って,フリーノードはアンカーに引っ張られる.フェーズ

3

では

rf>0

として,フ

初期配置 ランダムに配置

フェーズ1

フェーズ2

スプリングの力の 影響を受けフリー ノードを共有する アンカーは近くに レイアウトされる

フェーズ

1

の位置関 係をある程度保った まま球面上に一様 にレイアウトされる

アンカーへのスプ リング力を

0

にする

(23)

17

リーノード同士を反発させて重なりをなくし,フリーノードクラスタを視覚的に確認できる形にレイ アウトする(図 10).

図 10 フェーズ

2・3

フェーズ

2

から

3

への移行も,フェーズ

2

がある程度安定状態になったときに行う.ただし,フ ェーズ

1

から

2

への移行とは異なり,アンカーとフリーノードの両方の総移動距離が閾値

ps '

より小

さくなったときに行うこととした.

ps '

はスフィアアンカーマップ中のノード数に比例する.

z フェーズ

2

の安定状態の判定

(式 12) ∑ dis ( ) ps '

<

F A n

n

z フェーズ

2

の閾値

ps '

(式 13) ps ' = c ' AF

c '

0

以上の定数)

フェーズ

1

2

でフリーノード間の斥力を

0

にしているのは,計算量を抑えるためである.この

2

つのフェーズの目的はアンカーのレイアウトを求めることであるため,できる限り早く安定状態にな ることが望まれる.そこで,フリーノード間の斥力の計算を行わず高速に安定状態が求まるよう工夫 した.

力制御法は,実装が容易であり,アンカーを球面上にレイアウトする場合だけではなく,半球や円 柱といった他の形状に制約を課した場合にも容易に応用が可能であると考えられる.しかしながら,

完全に自動的にレイアウトを行う場合にはスプリングモデル特有のノード振動によって安定状態に ならないことや,力の係数や安定状態判定の定数の決定が難しいといった問題がある.

フェーズ2 フェーズ3

フリーノード間の 斥力を働かせる

フェーズ2でフリーノードのレイ アウトもほとんど求められる

フリーノード同士の 重なりを無くす

(24)

18

3.3.4

レイアウト方法2 配置探索法

次に試みたのは,2Dアンカーマップで用いられているアルゴリズムをスフィアアンカーマップ用 に拡張した方法である.まず,スプリングモデルの係数を常に

sa=0

としてアンカーを分散させ,ア ンカーの配置候補となる位置を求める.アンカーがある程度安定状態になったら,配置探索アルゴリ ズムを実行し,美的基準を満足するような(描画規則で定義した式の値を最小化するような)アンカ ーのレイアウトを探索する.この方法を「配置探索法」と呼ぶ.

アンカーの配置候補を決定したとしても,アンカーの配置パターンはアンカー数の階乗通りある.

また,アンカーの配置候補となる位置には球面上で歪みが生じているため,円順列のように回転など を考慮してパターンを減らすことができない.アンカーの数が多い場合,全てのアンカーの並びを評 価することは膨大な計算量を要する.そこで,2Dアンカーマップで用いられている配置探索アルゴ リズムを拡張しアンカーの配置の中から美的基準に関する準最適配置を探索する方法を考案した.

配置探索アルゴリズムでは,アンカーを適当な順番で探索していき,あるアンカーとそのアンカー から最も遠いアンカー(d番目に近いアンカー)の位置を入れ替え,ペナルティと呼ばれる基準を計 算し,アンカーを入れ替える前よりも小さくなっていた場合にその配置を採用する.全アンカーを探 索しても,このペナルティが減少しなくなった場合,

d

を半分にし,あるアンカーとそのアンカーか

d

番目に近いアンカーを入れ替え,ペナルティを計算し小さくなった場合にその配置を採用する.

このような処理を

d=0

となるまで繰り返す.d=0となるまでの処理を

1

ステップとし,さらにペナ ルティが減少しなくなるまでこのステップ繰り返す.Algorithm 1を以下に示す.

ペナルティには描画規則の

R1, R2, R4

を用いる

3

つのパターンが考えられる(R3はアンカー分 散の基準であるためペナルティとしては不適である).

R2

はアンカーの位置のみに依存した評価式で あるため,アンカーを入れ替えた際にもすぐに計算することができる.しかし,

R2, R4

はアンカー 入れ替え後のフリーノードの位置にも依存する.そこで,アンカーを入れ替えた際のフリーノードの 位置は,そのフリーノードがつながっているアンカーの座標の重心とした.これは,スフィアアンカ ーマップのスプリングは全て同じ強さであり自然長が

0

であるため,フリーノード間の斥力がない 場合は接続するアンカーの重心にレイアウトされるためである.

この方法は,実装が多少複雑になる一方,力制御法で問題となった係数の設定やノードの振動によ る安定判定の難しさといった問題を回避できるという利点がある.

(25)

19 Algorithm 1(C#2.0)

---

double p0 = penaltyFunction();

double oldPenalty = double.MaxValue;

while (p0 < oldPenalty)

{

int d = AnchorList.Count - 1;

oldPenalty = p0;

while (d > 0) {

//入れ替え対象のノードを設定

AnchorList.ForEach(delegate(GraphNode anchor) {

//近い順にソート

anchorNodes.Sort(delegate(GraphNode gn1, GraphNode gn2) {

return (int)Math.Sign((gn1.Position - anchor.Position).Length - (gn2.Position - anchor.Position).Length);

});

anchor.SwapNode = anchorNodes[d];

});

bool c = false;

do {

c = false;

for (int i = 0; i < AnchorList.Count; i++) {

GraphNode targetAnchor = AnchorList[i];

GraphNode swapAnchor = targetAnchor.SwapNode;

SwapPosition(ref targetAnchor, ref swapAnchor);

double p1 = penaltyFunction();

if (p1 < p0) {

p0 = p1;

c = true;

} else {

SwapPosition(ref targetAnchor, ref swapAnchor);

} }

} while (c);

d = d / 2;

} }

---

(26)

20

4

3D

グラフの閲覧方法

4.1

閲覧方法の必要性

2D

空間から3D 空間へと拡張することで広い空間をレイアウトに使用できるようにし,より大規 模なグラフの描画に対応できるようにした.また,一般的にグラフレイアウトにおいて問題となるエ ッジの交差もほぼ無くすことができる.そのため,複雑なグラフの関係を見抜きやすいという利点も ある.

しかし,

3D空間上に効果的なグラフレイアウトが行えたとしても,人間に対しては最終的に2Dで

表示する必要がある.2Dで表示することで,手前のオブジェクトによって奥のオブジェクトが遮ら れて見えないことや,オブジェクトの前後関係(奥行き情報)がわかりづらくなってしまうことがあ る.単に3D空間にグラフをレイアウトしただけでは人間に対してレイアウトしたグラフの情報を完 全に伝えることはできない.そのため,レイアウトしたグラフの構造を人間が読み取るための閲覧方 法が必要となる.

C. Wareらは「動き」や「立体視」は閲覧者の奥行き情報の読み取りを支援し,3D空間にレイアウ

トしたグラフの構造を把握しやすくできることを実験によって示した [17].そこで,レイアウトし たスフィアアンカーマップを回転させることや被写界深度を用いた表現を行い,焦点や被写界深度を 調節することでレイアウトしたグラフの構造の読み取りを支援する閲覧方法を開発した.

(27)

21

4.2

表示方法

レイアウトしたスフィアアンカーマップを

3D

空間に配置し,標準的な

3D

グラフィックスを用い

2D

で表示を行う.図 11にレイアウトしたスフィアアンカーマップとそれを撮影するカメラのモ デルを示す.スフィアアンカーマップの球の中心は

3D

空間の原点(0,0,0)に配置する.カメラはカメ ラの位置ベクトル,上方向ベクトル,向きベクトルの

3

つのベクトルを制御することで行う.

図 11

3D

空間の配置モデル

4.3

グラフ・カメラの操作

閲覧者は,レイアウトしたグラフの回転とズームイン,ズームアウトを行うことができる.ある角 度では他のノードに隠れて見ることができないノードや圧縮されてしまった奥行情報も,別の角度か ら眺めることによって確認することができる.さらに,回転のアニメーションによって

3D

構造を把 握する効果もある.また,ズームイン・ズームアウトによって全体を眺めることや,細かな構造を見 ることが出来る.

閲覧者はマウスドラッグによってレイアウトしたグラフを回転させることができる.スフィアアン カーマップの球の中心を回転の中心にしてドラッグの量に比例した量だけ回転を行う.

ズームイン,ズームアウトはカメラをスフィアアンカーマップの中心へと近づける(遠ざける)こ と(図 11

z

の値を調節すること)によって行う.一般的に,ズームイン・ズームアウトはカメラ の画角を調節することで行われることが多いが,本研究では,カメラの位置を変更することによって ズームイン・ズームアウトを行うようにした.これは,球の内部からもレイアウトしたグラフを眺め

x y

z z

上方向ベクトル (0,1,0)

向きベクトル

(0,0,-1) カメラ位置ベクトル (0,0,z) 画角

視錐台

スフィアアンカーマップ

(28)

22

られるようにするためである.

回転やズーム以外にも,カメラの向きの変更やレイアウトしたグラフの平行移動などの操作も考え られるが,これらの操作と回転を同時に行うには複雑な操作体系が必要と考えられる.球の内部と周 辺にすべてのノードがレイアウトされるスフィアアンカーマップでは回転とズームで十分に構造を 把握できると考え,操作が複雑にならないよう他の操作は採用しなかった.そのため,カメラの上方 向ベクトル,向きベクトルは固定している。

4.4

被写界深度を用いた閲覧方法

4.4.1

被写界深度表示

C. Ware

らの実験では特殊な装置を用いて立体視を行うこととで,閲覧者の

3D

構造の把握を支援

することを示した.しかし,本研究では立体視のような特殊な機材を使用せず一般的な

2D

モニタを 用いて表示することを想定している.そこで,立体視の代替手段として被写界深度を用いたレンダリ ング[18]を行った.被写界深度とはカメラのピントの合う範囲のことである.被写界深度を用いたレ ンダリングは最近のコンピュータグラフィックスではよく用いられている表現の一つであり,焦点の 合っているものをはっきりと描画し,それ以外のものをぼかして描画する(図 12).これを用いる ことで焦点の合う範囲を強調して表示するような表現を行うことができる.

被写界深度を用いたレンダリングは,立体視の概念とは異なるものであるが,奥行き関係の情報表 示として自然な表現であると考え採用した.奥行きによって色を変えるといった他の表現方法も考え られたが,そういった情報を付加するような表現は人間にとって不自然なものであると考え採用しな かった.

図 12 被写界深度レンダリング

焦点を手前のノードに合わせた例 焦点を中心付近のノードに合わせた例

図  27   焦点の操作

参照

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