ジャロンディフの時・アスペクト価値
著者 阪上 るり子
雑誌名 金沢大学歴史言語文化学系論集 言語・文学篇 =
Study and Essays : Language and Literature
巻 2
ページ 29‑46
発行年 2010‑03‑25
URL http://hdl.handle.net/2297/23819
金沢大学歴史言語文化学系論集言語・文学篇 第2号2010年29~46
ジェロンディフの時・アスペクト価値
阪上るり子
1.はじめに
フランス語のジェロンデイフは、その形態的・統辞的特徴からそれが依存している動詞 と関連づけて同時の行為を表すと説明されることが一般的である。しかし、ジェロンデイ フが表す行為の内容、その時・アスペクト意味価値は、それが依存する動詞に応じて読み 取れ、直説法の個々の動詞時称形に匹敵する内容と言える。主節と同時の事柄を表すと説 明されるが、実際には前後する行為も表す発話例もある。そして、その用法の説明は、手 段、条件、様態や原因など主に文脈における意味面に注目したものが多い。主節の動詞が 表わす行為とジェロンデイフが表す行為どうしの関係にはどのようなものがあるのかを、
一定の方法論に基づいて記述することは、この形態素の特徴の解明に貢献すると考えられ る。また、ジェロンデイフはフランス語学習者にとって習得しやすい形態であるため、フ ランス語学習者向け初級教本などでも必ず取り上げられている。ジェロンディフが表す 時・アスペクト意味価値をより詳しく記述することは、この形態素の教授法に関しても応 用可能な手がかりを示唆してくれるであろう。
本稿は、GA&Cl)の方法論に基づき、現代フランス語のジェロンディフを伴う発話に 表される主節動詞との時・アスペクト関係の記述を試みるものである。まず、2でこの 形態の一般的記述を概観し、3.で今回のコーパスと分析手順を提示した後、4.で収集
した発話例の分析を試みる、という順で進める。
2.従来の記述
一般的な文法書におけるジェロンデイフの記述は、概ね次のような内容である。形式的 にはe"+現在分詞という動詞の副詞的形態の表現で、状況補語としての役割を果す。複合 形の存在は認められてはいるが珍しい。ジェロンデイフが依存する動詞に対して副次的な 同時生起の行為を示す。ジェロンデイフ自体は時期を示す機能はもたず、それが依存する 動詞と同じ時期を示すので、過去/現在/未来のいずれの時期の表現とも共起できる。M Arriv6は、ノノ〃α”/iajre〃ノ卯"/so〃ノo"7"αノにおいて、二つの事行は同時であり、e〃
Che”んα"Mbscharaig"es,〃j〃"V6〃〃chα〃jg"o〃においては、ジェロンデイフにお かれている動詞の事行の内部に発見という行為が位置づけられているので、包含関係にあ
-29-
る同時を表すと述べている。また、MRiegelは、現在分詞と同様のアスペクト的および 時間的価値を持ち、依存する動詞が表わす事行に対して実現過程にある事行を表すと述べ、
ジェロンデイフが行為の展開に関する意味を担っていることを指摘している。そして、そ の状況補語的役割に関する記述においては、もっぱら同時を示す2)と記している。他方、
ジェロンデイフが示す時間的内容以外については、文法書によって法的価値と名付け時間 的価値と区別しているものもあるが、文脈によって手段・方法、条件、原因・理由、対立 などを表すという意味レッテルを挙げて説明している。
同時性という概念は、例えば直説法半過去形の価値についても援用されることがある。
半過去形も、それが密接に関与する別の動詞時称形の意味価値に応じて、さまざまな種類 の同時を表す。ジェロンデイフの場合も同様の多様性が確認できるかを調査することは、
その特徴の一端を示唆してくれると推測できる。
ジェロンデイフを総合的に扱っているOHalmEIy(2003)は、さまざまな観点からこの 形態素の使用実態を記述し、豊富な例を挙げながらその特徴を浮き彫りにしている。第一 に、この形態素は他のゲルマン系言語やロマンス語系言語には存在しないという特殊`性を 明示した上で、現代フランス語における形式、すなわち、前置詞e〃と現在分詞という組 み合わせが固定されたのは、ほぼ13世紀から15世紀頃であろうという通時的観点からの 分析結果も示している。上でも指摘したが、文法書等では現在分詞と並べて記述されるこ とが多い。OHalmDyは現在分詞と統辞的に置換可能である場合も示しているが、基本的 には現在分詞とは区別すべきという立場をとっている。分析過程の記述において、ジェロ ンデイフの統辞的特徴、文中においてさまざまな位置に登場し状況補語の役割を果す、と いう説明だけでは捉えきれないような意味機能(テーマ的、あるいはレーマ的であったり、
時間的基準を示す等)を担うかなり複雑な面をもつ表現形式であると述べている。また、
文法書等で言及されることは稀であるジェロンデイフの行為主体への指向関係にも触れて おり、さらには競合関係にあると言えるような不定法表現などとの差異の分析も示してい る。最終的に0.HalmDyが主張するジェロンデイフの特徴は次のように要約できる。
前置詞e"と-α"/で終る動詞の不変化形との組み合わせ形式で、副詞的(状況補語)役割 を果す連続要素である。近い関係にある印欧諸語において相当する形態は存在しない。ま た、フランス語内部においても独自の位置を占める。その用法は非常に多様であり、動詞 や文全体、あるいは発話行為にもかかり得る。また、e〃αがe"。b"4e〃sz{pposα"/などいく
つか,慣用語法化している表現もある。その意味役割は、論理的方向`性3)の有無によって大 きく二つに分類できる。一つは、依存する動詞に対し常に論理的先行`性を示す場合である。
このとき、ジェロンディフは時間的価値、原因、手段等を表し、依存する動詞が表わす抽 象的な行為・意味に関する具体例を表す。もう一つは、依存する動詞に対する論理的方向 付けはない場合で、依存する動詞と同時を示し、その事行に対していわゆる様態を表す。
しばしば、発言を表す意味の動詞と共起する。この二つの意味役割は、ジェロンディフが
-30-
登場する文中における位置と一定の傾向を示す。
ジェロンデイフが表す多様な意味に関して、テーマ的レーマ的という観点からの分析は 確かに興味深いが、時間的指標という用語も含め、それぞれの分析概念に関する定義が明 示されていない。そして、副詞的役割を果すとあるが、動詞の様態を表す場合もあれば、
状況補語としての機能を持つ場合もあるという記述もあり、副詞と状況補語との区別も明 らかではない。また、状況補語がテーマ的役割を果すことがあるのか等、疑問点も少なく ない。統辞的特徴を示してはいるものの、それと意味的特徴との対応関係がいまひとつ明 快ではない印象も否定できない。それぞれの疑問点を絨密に検討するのは別の機会に譲る こととし、今回はOHalmlBIyが述べる論理的先行性という特徴に注目する。ジェロンデ イフが時間的に先行する行為を表すという明確な表現はみあたらないが、論理的先行性と 時間的先行性とは密接な関係があると考えられる。さまざまな同時関係も、特定の方法論 に基づく自然言語によらない表象方式を採用することによってより正確に記述することが できるし、同時以外の関係が確認できるか否かも一貫した表象方式に基づいてこそ可能で ある。次章でGA&Cの時・アスペクト意味価値の表象方法を適用し、発話例に読み取れ る行為間関係の記述を試みていくことにする。
3.コーパスと分析手順
31コーバス
OHalmC1yも指摘しているように、ジエロンデイフの多用を好む現代作家も多いので、
手近にあった次の三作品をコーパスとした。新聞・雑誌など多様なジャンルのものも含め るべきであるが、さまざまな制約のなかでの最初の試みであり、今後、さらなる例の収集 が必要であることは言うまでもない。今回のコーパスから抽出できたジェロンデイフを含 む発話の生起数は次の通りである。
Smpe"7α舵加6/eme"な,AmelieNothomb46 Jb〃IC〃vαis,JeanEchenoz l57 P/α/q/b7me,MichelHouellebecq l84
統辞的特徴は分析を始めるための重要な手がかりであるので、ジェロンデイフが登場す る発話内部における位置に注目した。そして、ジェロンデイフが依存する動詞を含む節に 対して後置か前置かに二分4)し、それぞれにおいて主節5)の動詞時称形6)を調査した。
その結果は次頁の表1に示す。
ジェロンディフ後置のうちのAutresに分類したものは、接続法を伴う従属節中に用 いられている、あるいは複雑な構文の発話に登場している例である。いずれの作品におい ても後置の方が多いという結果になったが、一般的傾向か否かを断定するにはより多くの 例を収集し検証する必要がある。
-31
表1ジェロンディフの生起数
32分析手順
語順はさまざまな問題に深く関与する現象であり、時.
語順はさまざまな問題に深く関与する現象であり、時・アスペクト関係の記述に関して も同様という理由から、あらかじめ全てを二分した。この二分に従い、ジェロンディフが 主節に対して後置されている場合から二つの行為がどのような関係にあるかを記述してい く。行為どうしの時・アスペクトの関係の記述は、J・-P、Descl6s提唱の文法モデルGA&C のインターヴァル図式を用いて表していく7)。なお、動詞時称形の意味価値記述の研究は、
過去領域が中心で未来領域にはまだ進展していない。したがって、単純過去形、大過去形、
-32-
G6rondifenpostposition Stupeuret Jemienvais Platefbrme
PS 19 38 84
PQP 0 4 8
IMP 5 13 15
PC 0 9 3
PR 1 39 8
Cond、PR 1 4 5
Cond・PA 1 0 2
Infmitif 6 13 13
Imp6ratfif 1 0 0
Autres 0 4 1
Tbtal 35 125 139
G6rondifenant6position Stupeuret Jem1envais Platefbrme
PS 4 7 26
PQP 0 0 5
IMP 7 7 14
PC 0 5 0
PR 0 12 1
Cond、PR 0 1 0
Tbtal 11 32 46
TOTAL 46 157 184
半過去形、複合過去形、現在形の5つを含む発話を分析対象とする。
原則として、理解・解釈は文字を追う順に応じて進む。本稿では解釈をする立場から記 述を進めるので、動詞が登場する順に応じて行為の展開をそれぞれ1本の軸に図式して並 べ、二つの関係を3本目の軸で表す形で記述していく。すなわち、主節の行為をP軸に、
次にジェロンディフの行為をG軸に、その下に二つの関係を表す図式をR軸で表す。ジェ ロンデイフが前置の場合は、G軸を上に表記する。
4時・アスペクト関係
4.1PS-GERONDlF
この組み合わせの例がもっとも多い.単純過去形は「イヴェント」の価値しかもたない 時称形である。収集できた発話例において読み取れる関係の大半は、先に提示された「イ ヴェント」が、ジェロンデイフにおかれている動詞事行が展開中に生起したという包含的 同時関係である。いくつか例をみてみよう。
(1) Jeretournaialaphotocopieuse処1皿11ユlquej'avaisdfjmalplacerlespages danslIavaleuse.(Nothomb,A,Smpe"7er舵励陀加e伽,p33)
(2)Ehbien9avacommevousvoyez,山Ferrerfautedemieuxensouriant maigrement,d6signantdiungestevaguelioxyg6nateuretlaperfilsion.
(Echenoz,J・上腕'e〃γαis,pl51)
それぞれの具体的行為は、(1)では考えながら戻った、(2)では微笑みつつ発言したとい うことなので、ジェロンデイフにおかれている事行の意味価値は「プロセス」と解釈する のが妥当である。「イヴェント」の事行とジェロンデイフのそれが同時開始かどうかまで読 み取れないのでデフォルト値的に同時開始とみなすことにする。左から順に読み進めて自 然に読み取れることを図式すると次のようになる。8)
図1Concomitancel
P---[//]-------[--- G---[/////"///////////"////[---[--- R---[//]/////////////////////[---[---
T1°
次の2例も上のタイプと同様とみなして良いと考えられるが、具体的に行為の実現状況 を考えると、「プロセス」の開始は主節動詞のそれより以前と位置づけられるかも知れない。
(3)Ilmeracontatoutcelaunesemaineplustard,suruntondiautoaccusation assezpenible,Cnmedemandantdenerienrev61eraVal6rie. (Houellebecq,
M.P/are/b7腕e,p284)
(4)Unsoir,jerencontraiLionelensortantdemontravail;jemeliavaisrevu depuislecircuitTropicThaf,presqueunanauparavant.(Ibja.,p289)
-33-
発言行為を二つ同時に行うことは不可能なので、(3)では話を始める前にヴァレリーには 何も言わないように依頼したのであろうし、(4)では事務所を出た後の帰宅途中でリヨネル と出くわしたのであろうから、厳密にはジェロンディフの事行の開始が先行する。これら の関係を考える際に問題となるのは、二つの動詞事行のタイプである。demanderやsortir という動詞が意味する行為は、何かしらが完結されるタイプのものであるが、これらの発 話では、<仕事を終えた後で出くわした/依頼してから話した>を言語表現として示して いるわけではないので、ジェロンデイフにおかれた事行のアスペクトは「プロセス」と解 釈した方が適切であろう。あえて厳密に図式化すると次のようになる。
図2Concomitance2
P---[//]--------[--- G---[/////////////////////////////[---[--- R---[////[//]/////////////////////[---[---
Tl・
二つの「イヴェント」が同時生起を表している場合もある。
(5)JamaisjenefUsaussinipponequ1enremettantmad6missionaupr6sident.
(Nothomb,A,Smpe"re/舵肋/eme伽,p、44)
主節動詞がetreであることと、、e…queの制限表現と組合わさっていることから、社 長へ辞職を表明したという行為のやり方全体を包括的に日本人的と述べている。図式する
と次のようになる。
図3Simultaneit6strictl
P---[//]-------[--- G‐---[//]----------[--- R---[//]---[---
T1°
4.2PQP-GERONDlF
主節動詞が大過去形である例は、表1にも示してあるようにさほど多くはない。今回の コーパスにおける例の大過去形の意味価値は、次の2例のようにすべて「イヴェント」で あった。
(6)Mettez-vousdlaplaceducollectionneur,avaitinsistQFerreravoixbasse皿 エ且p'四L型surleboutondelaminuterie.(Echenoz,J、,上腕'e〃M8,p、38)
(7)Jeles2】Z旦垈d6ja…]11型enarrivant,ellesetaienttrapuesetr6sistantes,
〃toutendentsetengraisse,parlaientincroyablementfbrt:…(Houellebecq,
M、,P/are/b7me,p208)
それぞれの発言や指摘という行為が、ボタン操作をしたりある場所に到着するという動 作の遂行過程においてなされたという関係を表しており、4.1の冒頭で挙げたタイプと同
-34-
様である。この図式は図1と同様であるので省略する。
4.31MP-GERONDlF
基本的に未完了を表す半過去形の動詞にジェロンデイフが依存して登場する場合をみて いく。多くは次のように主節の行為が「プロセス」タイプで、その行為が別の「プロセス」
タイプの行為を伴ってなされたことが表されている。例に続いて図式も示す。
(8)Ferrernedisaitrien,lesdeuxguidesユ:山』ユ上且」ユー旦旦」ユ且』ユ且幽工desplaisan- teriesintraduisibles.(Echenoz,J,,上腕セ〃M3,p76)
(9)Pr6sdIeux,troisadolescentesrussesparvenuesaudernierdegr6delap6tas- seriesefbrtillaienten6coutantleurghe"o-6/as/e7;ellessetordaientetse roulaientlitt6ralementsurplace,lessordidespetitessuceuses.(HoueUebecq,
M,Pmrq/b'me,p341)
図4Silnultan6it6strict2
P---[////////////////////////[---[--- G---[////////////////////////[---[--- R‐------[////////////////////////[---[----------
T'・
半過去形は習'慣や反復行為を表すことも多い。そのタイプの行為のなされ方を描写す るジェロンデイフも同様に反復的な意味価値をもつと解釈できる。下に例と図式を挙げる。
(10)Ainsi,enconsignantlesfactures,je山ビユ且souventlatetepourreveren
admirantlesibeau visagedemadenonciatrice.(Nothomb,A,Smpe"7ej 舵加肌加e伽,P59)
Detempsentemps,jesortaisenrasantlesmurs,j'allaisjusquiaum""腕α'たα
●(11)
acheterdespistachesetdesbouteillesdeM6kong.(Houellebecq,M、,
P/are/bγ腕e,pl28)
図5Simultan6it6strict3
P---[*************[---[--- G---[*************[---[--- R---[*************[---[---
T'・
今回の収集例のなかには少なかったが、半過去形におかれた主節の動詞が「状態」を 表し、その状態に付加的な記述を加えるようなジェロンデイフが伴われているものがある。
(12)LieauduHeuve6taitverteavantdevireraubleu山§且-1ユュ】ユLdansl1oc6an.
(Echenoz,』.’ん"セ〃M,,p、200)
(13)Commeild6ambulaitainsi,desjoursdurant,sansautrebutparticulierqu1un evenementdehasard,tachantd1inventoriertouslesquartiers,ilfinitparse
-35-
fatiguerunpeudecettevilletropgrandeenmemetempsquetroppetite,otl lIonn16taitjamaisstirdi6treotllionetaittoutennelesachantquetrop.(Ibjd,
p200)
図6Simultan6it6strict3
P---]////"//////////////////[---[--- G---]////////////////////////[---[--- R---]///////"/"////////////[---[---------
T1゜
いわゆる絵画的半過去形と呼ばれる、動詞の事行を完了したものとして表す意味価値 とジェロンデイフが組合わさる場合がある。
(13)Ellesrentraientpresqueencourantdanslachambre,s1aimaientuneseconde fiois.(Houellebecq,M,P/α'Q/b7me,p、60)
この文脈において、部屋へ戻るという行為は、それが進行過程にあるのではなく、完了 したことを示している。この意味価値をGA&Cのモデルでは「新たな状態」9)と呼び、事 行の前後の「状態」、とくに事行の成立後に続く「状態」が対比的に際立っているという効 果に注目し次のように表す。時・アスペクト関係図式も上でみてきたものとは異なるタイ プの同時を表すものである。
図7Chevauchement
<-----><--->
P‐--]---[//]---[----[--------
G---[///////////////////[---[---
<-----><---------->
R-]---[/////[//]//////"//[/////////[---[--------
T1°
4.4PC-GERONDlF
複合過去形は、基本的に発話行為時空間の記述に用いられる活用形である。今回のコー パスの中には「イヴェント」を表すもののみであった。
(14)Laissantdeuxgrossesvalisesboucl6espresdelaportedustudioparfaitement range,commesiilsiappretaitaviderleslieuxsouspeu,Baumgartnera bmsquementf目1m自laporteensortant.(Echenoz,J、,上腕'e〃MS,pl31)
J1且id6ambul6danslespiecesdurez-de-chauss6e即grignotantunsabl6au (15)
magnesium.(Houellebecq,M,P/α/q/b'腕e,plO)
(14)の主節動詞のドアを閉めるという行為が完了したものと示された後で、それが出が けになされたということが表わされている。ジェロンデイフにおかれているsortirの本来 の意味は、ある場から別の場への移動という完結的行為を表すので、未完了を表す時称形
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におかれるときは「プロセス」の価値を表すことも多い。ここでも、ジェロンデイフの部 分だけで出るという行為が遂行されたと読み取ることができるわけではない。閉めるとい う動作が行われていた間に同時進行していたことだけを示しているのだから、ジェロンデ ィフの事行は「プロセス」として解釈することも可能である。(15)のジェロンデイフの意 味価値は、より「プロセス」と読み取りやすい。部屋のなかをぶらぶら歩いていたその間 にサブレ-枚を食べ切ったのではなく、歩く行為をサブレをかじりつつ遂行していたので ある。このタイプの関係は、主節を「イヴェント」、ジェロンデイフを「プロセス」と読み 取って図式化することもできることを指摘しておくにとどめ、現段階では4.1でみた Simultan6it6strictlの関係とみなす。図式は、基準点表示が異なる(図3のTI・をT・
とする)だけなので、省略する。
4.5PR-GERONDlF
この組み合わせの多くは、現在形におかれた事行が発話時におよぶ「プロセス」を、ジ ェロンデイフがそれに伴う別の「プロセス」を示し、この二つが同時進行しているという
関係を表す。
(16)Ferrerarriveetsefaituncaf巴,absorbedeuxEfferalgan,ouvresoncourrier dontiljetteliessentiel,皿旦旦旦unpeuauxpapiersquitrafnentetpatiente jusquMixheuresenluttantvaillammentcontrelIid6ed1unepremierecigarette.
(Echenoz,J、,ん"セ〃M3,p、15)
(17)E11esmIontexpliqU6quemaintenantellesnefaisaientplusleurscoursesque comme9a,c16taitplusstlr:ellesrentrentdeleurboulot,etellesSebalTicadent
chezellesenattendantlelivreur. (Houellebecq,M、,P/、ご/bγ碗e,p、259)
(16)では、フェレールが書類に触れるという動作を行っている間中、煙草をがまんし続け ているのである。(17)では配達人を待ちはするがしっかりと戸締りをする、という二つの 行為が密接に関連づけられた発話時空間においてそれが持続していることが示されている。
行為どうしの関係は43でみたものと同類であるが、図式化すると次のようになる。
図8Simultan6it6strict2
P‐---[/////////////////////////////////[一一一一---- G---[////////"/////////////////"//"[--- R---[/////"//////////////////////////[-------
T・
他に確認できた意味価値の組み合わせは、主節が「状態」を表し、その範囲においてジ ェロンデイフにおかれた事行が展開していく、という関係である。
(18)D1autantplusdifHcilequelebois,souscesclimats,nvexistepratiquementpas:
onn1entrouvepasplusquetoutlerestemaiscommetoujourstout型possible enmettantleprix. (Echenoz,J・’ん加七"Ms,pp87-88)
-37-
(19)MaisluinI且pasliairm6contentEユー且ニーユユg型ユLversunfenetredustudio:peu dechosesavoir,Baumgartnerouvrelafenetre:peudesons,deuxchants dioiseauxquisecourentapres,unelointainebrumedetraficautomobile.
(16M,pl21)
「状態」と「プロセス」とでは「状態」の方が広い概念を表すので、図式化する場合、
「プロセス」の事行の開始は「状態」の内部と位置づけると、次のようになる。
図9Simultan6it6partiellel
P‐---]/////////////////////////////////[--- G-----------[///////////////////////////[---‐
R‐---]/////[///////////////////////////[--- T・
4.6GERONDIF-PS
この節からは、ジェロンデイフが主節に対して前置されている場合をみていく。基本的 な解釈||頃に従うと、冒頭あるいは主要部分に先行して登場する状況補語は、次に続く内容 の枠組みを提示する役割を果す、と読み取れる。したがって、自然な解釈がなされる順に 時・アスペクトの意味価値関係を正確に表象しようとすると、二つの意味価値の組み合わ せは同じであっても、ジェロンデイフが前置の場合は、後置の関係とは異なるものがある ことが予想できる。今回のコーパスにおける前置ジェロンデイフの生起数は後置の場合の 三分の-弱にすぎないが、まずは単純過去形との組みあわせ例からみていく。
最も多かったのは、次の2例のように「プロセス」を意味する行為が提示され、その中 で「イヴェント」を表す行為が起こったことを示すものである。
(20)Enmetirantparlebras,eUem1entrafnaversl1ext6rieur.(Nothomb,A,
団叩e"7e/舵加肌加e伽,p66)
Enremontantverslapasserelle,ongユ旦旦unepartieder6quipagequisortait
 ̄●(21)
delachapelle,parmiquoileradiot616graphistedissimulantmalsond6pit.
(Echenoz,J,,上腕'e"Ms,p48)
この関係は41でみた、ジェロンデイフ後置の場合と同様の関係、Concomitance2であ る。図式化も図2のP軸とG軸を入れ換えるだけで同様なので省略する。
今回のコーパスでは次の例しか確認できなかったが、ジェロンデイフが事行の「状態」
の価値を表す場合もある。
(22)Meme且』ユーJL-迦1ユlmoinssouvent,jeconstataipourtantquelescadresdela sectionproduitslaitiersniavaientpasreprisleurshabitudesau quarante-qUatrieme6tage:sousliimpulsiondeleurchefleurboycottsepour‐
suivait.(Nothomb,A,Smpe"7e'舵励/eme伽,ppl48-9)
35階に居る「状態」の中で語り手が確認するという「イヴェント」が起こったことが表さ
-38-
れているが、文脈から反復的に生じたことであることも読み取れる。この関係を図式化す ると次のようになる。
図10Concomitance3
G---]*//*//*//*//*//*//*//*[---[一一一一一一一 P---[*]---[--- R----]*//[*]*//*//*//*//*//*[---[---
Ti・
今回は反復的「状態」であったが、そうでない「状態」と「イヴェント」の組み合わせ の例も推測できる。いずれにせよ、一定の枠組みの中での「イヴェント」生起という Concomitance関係のヴァリエーションの一つである。
次は二つの「イヴェント」が連続生起と解釈できる発話である。
(23)Enarrivantdanslebungalowjemed6shabillai,puisjemIallongeaipour attendreVal6rie.(Houellebecq,M、,P/α/e/b'me,p、212)
EnsortantduminibusjetombaisurLionel,qui6taitarriv61aveille.(ルノc/L,
(24)
p299)
それぞれの文脈から、ジェロンデイフの意味価値は、(23)ではバンガローに到着してか ら衣服を脱ぐ動作を行った、(24)ではバスを降りた後でリオネルにぱったり会ったという
「イヴェント」と解釈できる。2例ともジェロンデイフ節とその主節との間にヴイルギュ ルが打たれていないことは、この二つの行為の生起の密着性を表す手段と推察されるが、
ジェロンデイフの事行を「プロセス」と解釈するのは不適切であろう。今回のコーパスに おいては多くはなかったが、他にも同様の発話はいくつかある。ジェロンディフが必ずし
も主節と同時を表すわけではないことを示している。図式化は次のようになる。
図l1Successionl
G‐---[//]------------------[--- P---[//]---[--- R---[//]---[//]---[------
T'。
4.7GERONDlF-PQP
この組み合わせの発話は5例のみで、全てが「プロセス」におかれた事行のなかで主節 の「イヴェント」の事行が位置づけられる、という4.1や46でみたConcomitance2の 関係を表す。例を挙げるにとどめる。
(25)Ensortantdutravaila22heuresl5,elleavaitd6cid6dIattraperletrainde22 heures21,enpensantque9airaitplusvitequed1attendreuntaxi.(Ibjc/Lp、
191)
(26) Lioneletaitmortlaveille;entraversantlecouloirj…i旦垈unregardsur
-39-
soncadavre,envelopp6dansunlinceuL(Ibjap327)
4.8GERONDIF-llVlP
ジェロンデイフ後置の場合と同様に、半過去形が表す意味価値に応じて、時・アスペク ト関係も複数のものが認められた。まず、ジェロンデイフにおかれた事行が「プロセス」
を、半過去形のそれも「プロセス」を表し、二つが同時進行で起こっていることを表す発 話からみていこう。
(27)且ユー山g旦辿versledebarcadere,ill旦旦g旦旦illedispensairepeintenjaune,le bureaudepostevert,lesupermarch6rougeetlegaragebleudevantlequel sIalignaientdesrangsdeskidoos.(Echenoz,J・上腕セ〃M3,p88)
(28)Envieillissantil堂E1PllX且i1davantagelebesoinderesterchezlui,desIoccUper desafamille-ilsavaientdeuxenfants-etdetravaillerseulsonjeudebatterie.
(Houellebecq,M,P/α/e/b7me,p249)
4.6の冒頭で述べたが、前置状況補語が続く事柄に対する枠組みを提示している場合、次 に続く行為の開始を提示状況の開始後と解釈することも可能であろう。しかし、文脈から 開始が明らかにその後であると確認できない限りは同時開始と解釈して、4.3でみたもの と同じ関係Simultaneit6strict2を表していると捉えて良いと考えられる。図式も既に提 示してあるので省略する。
次も同様に、ジェロンデイフが後置の場合でみた関係、二つの「習'慣・反復プロセス」
が同時進行関係Simultan6it6strict3にあること表す発話である。例を挙げるにとどめる。
(29)Ainsi,且」ユー291ユ且191型l11esfactures,jerelevaissouventlatetepourreveren
へadmirantlesibeauvisagedemad6nonciatrice.(Nothomb,A、,Smpe"7e/
か℃励陀me伽,p59)
(30)Engen6ral,ensortantdubureau,j'且'1型旦faireuntourdansunpeep-show.
(Houellebecq,M、,P/are/bJw0e,p22)
一方の意味価値が「状態」で他方が「プロセス」の場合も確認できた。(31)ではジェロ ンデイフが「プロセス」を、(32)では「状態」を表している。これらも既に45でみた Simultaneitepartielleの関係を表すものなので、図式は省略する。
(31)Enfait,処]山g且』ユュ」工depluspr6s,ily型辿pasmaldecouplesmixtessur cetteplage.(16M.p、218)
(32)Enrestant,jeluiLl型且unbontour.(Nothomb,A、,Smpe"γα舵肋/e腕e伽,
pl38)
半過去形がGA&Cで呼ぶ「新たな状態」の意味価値を持つ発話も、ジェロンディフ前 置の場合では3例確認できた。表す関係は4.3でみたChevauchementであり、後置の場 合でみたものと同じである。図7のジェロンディフと主節の軸を入れ換えれば図式できる ので、例のみを全て挙げておく。
-40-
(33)Enattendant,cedimanched1et6,lesilencedeParis辺Iユ、且'且l1celuidela banquise,saufqueceni6taitpluslaglacemaislegoudronquelesoleilfnisait fbndresuperficiellement.(Ibid,plO2)
(34)EnfinUユーUlJg)[且』ユLunmarin,ilslユュエユヒ旦旦且lElユmdebarquersurleurfle‐situ6e dansunereservenaturelle,etdoncenprincipeinaccessible.(Houellebecq,
M、,P/α/q/b7me,p299)
(35)JacquesChiracavaitaussit6tfaituned6clarationon,tout且l1-E2Lpエ1m旦巫son horreurdevantlIattentat,il且119m辿旦且ille《<comportementinacceptablede certainsdenoscompatriotesal16tranger》》.(16ノユp329)
4.9GERONDlF-PC
この組み合わせの例は4例しかない。ジェロンデイフが進行過程にある「プロセス」を 表し、その枠のなかで主節事行の「イヴェント」が起こったことを表すという4.1でみた Concomitance2のタイプの関係を表すものが3例ある。3例ともattendreがジェロンデ ィフにおかれている。前後の文脈から、単純過去形が表すような時空間ではなく、発話時 を中心とした時空間に位置づけられる内容を表すので、図式化は図4のT1゜をT・と表示 すれば良いだけなので省略する。
(36)Enattendant、il且_且』ユ匹l2g旦旦touteslesantiquit6sdansunplacardquifermea clefaufbnddelIarri6re-boutiqueegalementverrouill6e.(Echenoz,』.,、上 腕セ"Ms,pll7)
(37)Enattendantquetouslesdetailsdecelogementsoientaupoint,ons1estmisa recevoirdumonderuedIAmsterdam.(IbjcノL,p216)
次の例は上でみたものと異質である。
C1estenlisantUbWquej'且i-2gmE型且pourlapremierefbisquIunlivre,cen16tait (38)
passeulementunr6cit,unehistoire,maisaussideseffetsdelitt6rature,queje neretrouvaispasdanslaBibliothequeverte,memes1ilsy6taientpeut-etre,
maisqui,avecUb",mIontvraimentexploseauvisage.(11)icZ,pp248-249)
この文脈では、二つの事行の時間的生起関係を、発話者の理解がなされたのは読書の進行 過程においてではなく読了後、と解釈する方が自然であろう。したがって、この発話もジ ェロンデイフが先行する「イヴェント」を示し、その後に複合過去形の事行が成立したと いう継続関係を表す例である。この発話例は、作家がインタヴューに答えて発言したもの である。その状況からも、複合過去形の意味価値は単なる「イヴェント」を示すだけでは なく、その理解成立の余韻が発話時まで影響していることも表す「結果状態」である。図 式すると次のようになる。
-41-
図12 Succession2
G---[//]-------[--- P‐-------[//]"////////////"//[--- R---[//]---[//]//"////////////"[---
T・
4.10GERONDlF-PR
表1で示した最後の組み合わせ例をみていく。二つの行為が表す関係そのものは、基本 的に既に45でみたものと同じもの、それも大半が次の例のように二つの「プロセス」が 並行するタイプである。ジェロンデイフが前置されている場合、それが表す発話全体の枠 組みとして先行する「プロセス」の開始後に主節の事行が開始すると解釈する方が自然で ある。図8で示される関係のヴァリエーションとも言えるが、下のように表象できる。
(39)亘L且11旦旦旦迦quelIeauchauffb,Baumgartnercherchedusucreenvai、
r6c叩erefautedemieuxlesreliefSducitronpendantqueleradio-cassettes continuedetuerletemps.(16雌p82)
(40)Tbutenmarchant,leFl6tan型、ユエ且mieuxquetoutdlIheure.(Ib秘pll9)
図13Simultan6it6partielle2
G---[/////////////////////////////////[--------
P‐---[/////////////////////////[--- R---[///////[/////////////////////////[---
T・
次の現在形は、いわゆる物語現在と呼ばれるような意味価値を表す。動詞時称形がもっ ぱら表しているのは、事行がなされた結果の状態が発話時において持続して存在すること である。
(41)Enarrivantalagalerie,Ferrerestretenuunmomentparunartistequivientde lapartdeRajputeketdesireexposeraFelTersesprQjets.(16〃,p、129)
フェレールが-人の芸術家につかまったのは、ギャラリーに着くまでの途中経路ではな くて、到着してからである。主節は、つかまった状態にいることが基準時まで持続してい る「現在の状態」であることを表す。このジェロンデイフも主節に対して先行する行為を 示している。図式は次のようになる。
-42-
Succession3 G P R 図14
---[//]---[----
---[]//////////////////[--- ---[//]---[]//////////////////[一一一一
T。
4111NFlNlTlFとGERONDlF
前節までで直説法の主要な過去時称形と共起している例をみてきた。不定法は、それ自体 に時期的情報を含まない形態で、GA&Cのモデルにおいても分析が進められているわけ ではない。しかし、個々の動詞が本質的に内在している語彙的意味の表象に関しては、モ デル独自の方法論による記述の試みはなされており、それと関係する問題である。ここで 分析結果として不定法とジェロンデイフとの関係記述を示すわけではないが、時・アスペ
クトの問題との関連を示唆しておくために、例を挙げて触れておくことにする。
表1に生起数をあげてあるタイプは、次の(42)のような不定法にジェロンデイフが直接、
関係している場合である。
(42)旦山mesnombresElユーエ且g旦幽lmabeaut6,cI6taitlebonheur.(Nothomb,A,
励叩e"γα舵加肌me伽,p,60)
(43)JecmsmourirderireenconstatantquIilsiagissaitdureglementduclubde golfdontmonsieurSaito6taitl1afmi6.(IbjdL,p、35)
(42)のジェロンデイフは同時進行過程にある関係を表しているが、(43)では認識したから こそ笑うという行為が誘発されたのであるから、継続生起的関係である。不定法そのもの は時期的情報を示さないが、展開に関わる前後関係には他の時称形と同様のヴァリエーシ ョンを表し得る。それは不定法という形態から由来するというよりも動詞そのものが内在 する意味、および使用されている文脈における各要素の統辞的役割などが関係して起こる 現象なので、それら全てを考慮して分析すべきことであろう。
また、主節の動詞が不定法を伴って複合的な事行を表し、それにジェロンディフが関わ っているという構造の発話は珍しくない。不定法を伴う動詞にはpouvoir,vouloir,devoir,
などモダリテイの問題にも及ぶものも多いが、次のようなタイプのものもある。
(44)Valeriemejetaunregardsurpris:c1etaitbienlapremierefbisquej竺旦l旦上且1且_JE rireenlisantLiEtranger.(Houellebecq,M、,P/are/br腕e,,pl42)
(45)EnattendantquIarrivesonvehicule,Ferrer…]2辿旦」ユ上旦mnouveaudans lasalled1attenteduCentrespiritueL(Echenoz,』.,上腕七〃Ms,pp、100-101)
(44)ではジェロンデイフが直接、関係している動詞グループに前置詞が介在しているので、
動詞と不定法とを切り離して捉えることも可能かも知れないが、「笑い出す」という行為を ひとまとまりとしてとらえ、それに対して読む行為がその原因となっていると読み取るべ きである。また、(45)でも二つの動詞が表す行為、戻って待つ、という行為が一体となっ ている意味とジェロンデイフは関係しているので、ジェロンデイフが直接、依存している 動詞の単位についても、一つの活用形だけに注目するのでは不十分な点があると言える。
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5.おわりに
以上で、今回のコーパスの発話例を分析対象に、ジェロンデイフとそれが依存する動詞 が表す時・アスペクト関係をGA&Cの方法論に依拠して記述してきた。確認できた関係 は14種類に及ぶ。ほとんどが二つの事行の展開が時間的に同時生起していることを表すも のであったが、継続生起、すなわちジェロンディフが時間的に先行する行為を示し、それ
と主節とが同時でない関係も表すことが明らかとなった。
二つの行為の関係を試みるためにこの方法論を最初に適用したのは、時間的状況を表す 副詞節を伴う複文構造の発話、すなわちquand,lorsque,alorsque,aumomentotlなどを 含む発話の主節と従属節の関係を正確に記述するためであった。今回、ジェロンディフを その従属節のようにみたてて同様の試みを行ったが、この方法論による記述だけでは十分 に表しきれない点も現れているようである。例えば、41の(3)(4)など、ジェロンデイフ におかれている動詞が完結型の場合、それを単に「プロセス」と表すだけでは不十分さが 残る。ジェロンディフを伴う発話を動詞活用形とその行為主体を明示する複文構造に書き 換えることは可能であるが、ジェロンデイフ構造の発話で表されている二つの行為の緊密 さには、複文構造と同様では表しきれないものが読み取れる。今回のコーパスに限っても、
ある時称形におかれている動詞が別の不定法動詞を伴っていて、その動詞グループにジェ ロンデイフが関与しているという場合が少なくない。また、一つの発話のなかに前置ジェ ロンデイフと後置ジェロンデイフが共起しているもの、さらにはそれに現在分詞グループ も伴うものなどもある。発話を生産する立場から考えると、複文構造ではなくてジェロン デイフ構造を選択する理由は、それが表すことができる行為どうしの時・アスペクト関係、
あるいは他の意味効果があるからこその結果という推測ができる。
ジェロンデイフと競合関係にあるものとして、OHalmEIyは不定法表現および現在分詞 による表現を挙げている。原則として、ジェロンデイフを伴う発話において、その行為主 体は主節のそれと同じである。しかし、従属節を伴う複文構造において、主節と従属節の 行為主体が同じ発話は、上に列挙した接続詞を含む発話でもかなり存在する。二つの行為 を表す手段としての複文構造とジェロンディフ構造との差異についても、他の競合関係の 中でとらえ、それらがどのような体系を成しているのかを明らかにしていく必要もあると 考えられる。その他の問題も含め、今後の課題としたい。
注
1)適用認知文法(GrammaireApplicative&Cognitive)の概要および動詞時称形の価値の主なも のについては、阪上(1998)で紹介した。また、複文に関する図式方法については、阪上
(1999)および阪上(2003)において簡略化した表記を用いたので、今回もそれに準じた
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表記を採用する。
2)不定法あるいは分詞構造による状況補語表現の項目のなかで、ジェロンディフが表し得る 状況的価値のひとつとして、temps:exclusivementsimultan6(p510)とある。
3)OHalmDyの表現はⅡ…:soitlarelationentreleg6rondifetleVRestorient6e(chrono)-
logiquement…'’となっており、時間的先行性について断言しているわけではない。なお、
VRはverber6gissantの省略記号である。
4)発話内部においてジェロンデイフが登場し得る位置は多様で、後置あるいは前置の二通り ではない。今回の収集例のなかにはほぼこの二つのタイプしか確認できなかったので、二 つの分類に収めた。
5)冒頭の導入部において既に主節という用語を用いたが、表現の狸雑さを避けるため、本稿 ではジェロンディフが依存している動詞を含む節のことを主節と呼ぶ。発話全体の主節を 意味するものではない。
6)表などにおける動詞時称形の名称は,一般に用いられている略号を用いて表す。CondPRは ConditionnelpresentをCondPAはConditionelpass6を示す。
7)複文に表される二つの行為の記述に関して、注1)でも述べたように、本稿でも阪上(1997;
1999;2003)で用いた簡略化表記を採用する。本文中でも示したが、P軸は主節の、G軸は ジェロンディフの時・アスペクト意味価値を表し、それらを組み合わせた関係をR軸が表 す。また、動詞時称形の意味価値についても、上の先行記述と同様に「」でそのラベル 名称を示す。図式における行為の展開を位置づけるための基準は、過去時空間の場合はT1°
で、発話時空間の場合はT゜で示す。
8)時・アスペクト関係を表す名称は、原則として阪上(1997)のものを採用した。多様な同 時関係を区別しながらそれぞれを表すフランス語のラベル名称をつけるため、一方と他方 とが別種類の価値(GA&Cのモデルにおける時・アスペクト価値は大きく3種類「イヴェ ント」「プロセス」「状態」である)であるときはConcomitanceを、同種類であるときと「プ ロセス」と「状態」の組み合わせのときはSimultan6it6を、それ以外の場合にはChevauchcment を用いた。これらの名称に続く番号や形容詞は、これらの関係の下位区分種類であること を示す。
9)OA&Cでのフランス語名称はNouvelEtatである。
コーパス
Echenoz,Jean(2001M℃"'e〃Ms,LesEditionsdeMinuit Houellebecq,Michel,(2001),Pノare/b7me,Flammarion
Nothomb,Am6rie(2007),Smノワe"rerr花励/eme"'s,AlbinMichel
-45-
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